(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065527
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】音声出力装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/12 20060101AFI20240508BHJP
H04R 1/32 20060101ALI20240508BHJP
H04R 1/26 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H04R3/12
H04R1/32 310Z
H04R1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174442
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 真巳
【テーマコード(参考)】
5D018
5D220
【Fターム(参考)】
5D018AC01
5D220AA11
5D220AA44
5D220AB06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でサラウンド感のある音声を作り出す音声出力装置を提供する。
【解決手段】音声出力装置1は、音声聴取空間を提供する。音声出力装置1は、第1音声信号に応じた搬送波を出力する超指向性スピーカ11と、第2音声信号に応じた音波を出力する、超指向性スピーカ11よりも指向性の広い指向性スピーカ12と、ソース音声信号を処理して、ソース音声信号の主成分を第1音声信号として生成し、ソース信号のサラウンド成分を第2音声信号として生成する音声信号処理部13とを備える。音声出力装置1は、搬送波を所定方向に向けて出力して第1音声信号による音像を定位させ、音波を所定方向に向けて出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声聴取空間を提供する音声出力装置であって、
第1音声信号に応じた搬送波を出力する超指向性スピーカと、
第2音声信号に応じた音波を出力する、前記超指向性スピーカよりも指向性の広い指向性スピーカと、
ソース音声信号を処理して、前記ソース音声信号の主成分を第1音声信号として生成し、前記ソース音声信号のサラウンド成分を第2音声信号として生成する音声信号処理部と
を備え、
前記搬送波を所定方向に向けて出力して前記第1音声信号による音像を定位させ、前記音波を前記所定方向に向けて出力する
音声出力装置。
【請求項2】
前記主成分はモノラル成分であり、前記サラウンド成分は残響音または反射音を表す成分を含む
請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記所定方向は、反射面を有する反射物が配置された方向である
請求項1または2のいずれかに記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記モノラル成分はLchとRchの合成音の成分であり、前記残響音または反射音を表す前記サラウンド成分はLchとRchの差分音の成分である
請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記超指向性スピーカと前記指向性スピーカとが一体的に構成される
請求項1または2のいずれかに記載の音声出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音声出力装置に関し、特に、超指向性スピーカを用いて音声を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性の強い音場を作ることができる超指向性スピーカが知られている(特許文献1参照)。2つの超指向性スピーカを用いてステレオ音声を提供すると、LchとRchが近い場合、搬送波同士が干渉を起こす。したがって、出力タイミングのずれや搬送波間の周波数ずれにより、うねりが発生するという問題がある。したがって、超指向性スピーカを用いる場合、ステレオ音声を扱うことが難しく、サラウンド感を出すことが難しい。
【0003】
特許文献2には、超指向性スピーカから出力した超音波を壁面等の反射物で反射させることで、反射物を仮想音源とすることが記載されている。特許文献3には、超音波スピーカから出力した超音波を視聴者の後方に位置する壁面に向けて照射することでリアスピーカとして稼働させるサウンドシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-47085号公報
【特許文献2】特許第5488732号公報
【特許文献3】特開2005-244578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載されたサウンドシステムは、Lch用の超指向性スピーカとRch用の超指向性スピーカを備える必要がある。また、残響音を超音波に乗せて壁面に照射させた場合、超音波を照射した小さいスポットから残響音が聞こえるため、聴取者にとって違和感があり、サラウンド感が少ない。なお、特許文献1および2に記載された技術では、この問題を解決することはできない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でサラウンド感のある音声を作り出す音声出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、音声聴取空間を提供する音声出力装置であって、
第1音声信号に応じた搬送波を出力する超指向性スピーカと、
第2音声信号に応じた音波を出力する、前記超指向性スピーカよりも指向性の広い指向性スピーカと、
ソース音声信号を処理して、前記ソース音声信号の主成分を第1音声信号として生成し、前記ソース信号のサラウンド成分を第2音声信号として生成する音声信号処理部と
を備え、
前記搬送波を所定方向に向けて出力して前記第1音声信号による音像を定位させ、前記音波を前記所定方向に向けて出力する
音声出力装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成でサラウンド感のある音声を作り出す音声出力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1にかかる音声出力装置の構成を示す説明する図である。
【
図2】実施形態1にかかる音声出力装置の動作を説明する図である。
【
図3】実施形態1にかかる音声信号処理部の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態1にかかる音声出力装置1の構成を説明する図である。音声出力装置1は、聴取者に音声聴取空間を提供する装置である。音声出力装置1は、超指向性スピーカ11と、指向性スピーカ12と、音声信号処理部13とを備える。
【0011】
超指向性スピーカ11は、第1音声信号に応じた搬送波を出力する。第1音声信号は、ソース音声信号の主成分を表す信号である。第1音声信号によって変調した搬送波を用いてピエゾ素子(圧電素子とも言う)を振動させることで、超音波である搬送波が出力される。超指向性スピーカ11は、十分な音量を確保するため、アレイ状(例:ハチの巣状)に配置されたピエゾ素子を含む場合がある。
【0012】
指向性スピーカ12は、第2音声信号に応じた音波を出力する。第2音声信号は、ソース音声信号のサラウンド成分(例:残響音や反射音を表す成分)を表す信号である。指向性スピーカ12の指向性は、超指向性スピーカ11の指向性よりも広い。
【0013】
指向性スピーカ12は、例えば、楕円形の振動板を有するスピーカ(異形スピーカと言われる)であってもよい。異形スピーカで発生した音は、振動板の長手方向には漏れにくい。つまり、異形スピーカは、振動板の短手方向に指向性を有している。
【0014】
音声信号処理部13は、ソース音声信号を処理する。ソース音声信号は、具体的には、LchとRchのステレオ信号である。ソース音声信号は、具体的には音楽や演奏に関する信号であり、ボーカルや楽器(例:ギター)の音を表す信号を含んでいてもよい。
【0015】
音声信号処理部13は、ソース音声信号の主成分(主音声の成分)を第1音声信号として生成し、ソース音声信号のサラウンド成分を第2音声信号として生成する。主成分は例えばモノラル成分であり、ボーカル等の音を表す成分である。サラウンド成分は例えば残響音や反射音を表す成分である。
【0016】
音声信号処理部13は、第1音声信号に応じた搬送波を変調し、変調した搬送波を超指向性スピーカ11に入力する。搬送波の周波数は、例えば、40kHzである。音声信号処理部13は、第2音声信号を指向性スピーカ12に出力する。
【0017】
ソース音声信号は記録媒体等に記録されていてもよく、他の通信装置(不図示)から通信インタフェース(不図示)を介して取得されてもよい。例えば、音声出力装置1は、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信によりソース音声信号を取得してもよい。音声出力装置1は、いわゆるブルートゥーススピーカであってもよい。
【0018】
なお、音声出力装置1は、図示しないプロセッサやメモリなどを備えている。音声信号処理部13の機能は、図示しないプログラムを図示しないRAM(Random Access Memory)等のメモリに読み込ませ、図示しないプロセッサが実行することにより実現されてもよい。また、音声信号処理部13の機能は、デジタル信号プロセッサなどの専用のハードウェアとの組み合わせなどにより実現されてもよい。
【0019】
超指向性スピーカ11は、上記搬送波を所定方向に向けて出力し、第1音声信号による音像を定位させる。所定方向は、例えば、壁面等の反射物が配置された方向である。この場合、第1音声信号は壁面等の反射物に定位する。搬送波を反射物に当てると、搬送波が崩れて可聴音となり、聴取者には反射物から音が鳴っているように聞こえる。
【0020】
超指向性スピーカ11からの搬送波を聴取者の耳に直接当てると、超音波によって耳に悪影響を与えたり、聴取者を疲れさせたりしまう場合がある。したがって、搬送波を反射物で反射させることが好ましい。反射物は、壁面には限られず、パソコン(例:ノートパソコン)のモニタ、プロジェクタのスクリーン、レジャーシート、キャンプ用机、車両のウィンドシールド等であってもよい。
【0021】
指向性スピーカ12は、上記所定方向に向けて音波を出力するように配置される。例えば、超指向性スピーカ11および指向性スピーカ12が音声出力装置1に一体的に構成され、筐体の形状に基づいてそれぞれ同一方向に搬送波および音波を出力するように構成されていてもよい。
【0022】
超指向性スピーカ11および指向性スピーカ12の向きはユーザにより変更可能であってもよく、予め所定の向き(例:美術館等の施設の内壁を向く向き)に固定されていてもよい。超指向性スピーカ11および指向性スピーカ12の各々の向きは調整可能に構成されていてもよい。もちろん、超指向性スピーカ11と指向性スピーカ12とが分離されていてもよい。
【0023】
なお、所定方向は、反射物が設けられた方向に限られるものではない。例えば、搬送波を聴取者が位置する方向に向けて直接出力してもよい。この場合、第1音声信号による音像は、聴取者の耳の周辺や搬送波の到来方向に定位されてもよい。
【0024】
音声出力装置1は、超指向性スピーカ11から出力した主成分(主音声の成分)と、指向性スピーカから出力したサラウンド成分とにより、簡易な構成でサラウンド感を作り出せる。サラウンド感は、疑似ステレオ、ステレオ感、立体感、空気感、包まれ感などとも言われる。
【0025】
図2は、実施形態1にかかる音声出力装置1の動作の一例を説明する図である。超指向性スピーカ11および指向性スピーカ12は一体的に構成されており、単一の筐体に収められている。
【0026】
音声出力装置1の周辺には、搬送波や音波を反射する壁面等の反射物Rが配置されている。聴取者は、例えば、反射物Rの方を向いた状態で、音声出力装置1と反射物Rの間に位置している。実施形態では、聴取者の正面となる反射物Rの方向から音が聞こえるため、より自然な音声を提供できる。もちろん聴取者の体の向きは何ら限定されず、いずれかの耳を反射物Rに向けた状態であってもよい。また、音声出力装置1が、聴取者と反射物Rの間に配置されていても構わない。
【0027】
超指向性スピーカ11は壁面等の反射物Rに向かって搬送波W1を出力する。指向性スピーカ12は、搬送波W1と同方向に音波W2を出力する。
【0028】
搬送波W1は反射物Rで反射する。第1音声信号による音像は反射位置、つまり反射物R上に定位する。位置Pは、第1音声信号による音像が定位する位置を表しており、音波W3は第1音声信号による音波を表している。この場合、聴取者からは、主成分である第1音声信号が反射物Rから出ているように聞こえる。第1音声信号による音声は、平面的な音声であり、かつ1チャンネルのモノラル音声である。したがって、第1音声信号による音声のみを使用することは、音楽用途には不向きである。実施形態では、さらに第2音声信号である音波W2を出力する。
【0029】
音波W2は、サラウンド成分を担う音波を反射物Rに向かって出力する。また音波W2も、反射物R上で反射する。なお、搬送波W1および音波W2の出力方向は、反射物Rの反射面に垂直な方向には限定されない。
【0030】
聴取者は、反射物Rから聞こえる主成分と、指向性スピーカ12から聞こえるサラウンド成分により、サラウンド感のある音を聴取できる。指向性スピーカ12を用いるため、不要な方向への音漏れが低減されるという利点がある。
【0031】
図3は、実施形態1にかかる音声信号処理部13の構成の一例を説明する図である。音声信号処理部13は、加算部131、変調部132、および減算部133を含んでいる。音声信号処理部13には、ソース音声信号に含まれるLchの入力信号とRchの入力信号とが入力される。
【0032】
音声信号処理部13は、加算部131にてLchの入力信号とRchの入力信号を加算し、LchとRchの合成音を生成する。LchとRchの合成音は、モノラル成分の一例である。変調部132は、合成音で搬送波を変調(例:振幅変調)し、変調した信号を用いて超指向性スピーカ11が有するピエゾ素子等を振動させる。
【0033】
音声信号処理部13は、減算部133にてLchの入力信号からRchの入力信号を減算し、残響音または反射音の信号成分を生成する。LchとRchの減算による差分音は、残響音または反射音を表すサラウンド成分の一例である。音声信号処理部13は、残響音または反射音の信号成分で指向性スピーカ12が有する振動板等を振動させて音波を出力させる。
【0034】
これにより、音声信号処理部13は、主成分である合成音と、サラウンド成分である差分音を生成できる。なお、主成分はLchとRchの合成音には限定されず、残響音や反射音のサラウンド成分はLchとRchの差分音には限定されない。
【0035】
最後に実施形態1が奏する効果について説明する。実施形態1によれば、超指向性スピーカで主成分を出力し、指向性スピーカでサラウンド成分を出力するため、サラウンド感のある音声を聴取者に提供できる。音声出力装置1は、1つの超指向性スピーカと1つの指向性スピーカとで構成可能であるため、簡易な構成を有している。また、サラウンド成分は、指向性スピーカで出力されるため不要な領域への音漏れが低減される。
【0036】
上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0037】
1 音声出力装置
11 超指向性スピーカ
12 指向性スピーカ
13 音声信号処理部
131 加算部
132 変調部
133 減算部
R 反射物
P 位置
W1 搬送波
W2 音波