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  • 特開-ウェットティシュー収納容器 図1
  • 特開-ウェットティシュー収納容器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065539
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ウェットティシュー収納容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20240508BHJP
   B65D 71/08 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B65D83/08 A
B65D71/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174464
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 秀彦
【テーマコード(参考)】
3E014
3E067
【Fターム(参考)】
3E014LA00
3E067AA12
3E067AB77
3E067BA01A
3E067BB14A
3E067BC03A
3E067CA01
3E067EA22
3E067EB17
3E067EE40
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB01
3E067FC01
3E067GC05
(57)【要約】
【課題】交換頻度の少ないボトルタイプのウェットティシュー収納容器において、収納容器の胴巻きラベルに抗菌ニスを用いた場合であっても、取り出し性が良く、容器が滑りにくく、かつ、持ち運びに優れるウェットティシュー収納容器を提供する。
【解決手段】長手方向に所定の間隔で易切断部が形成されたウェットティシュー50のロール体を収納する略円筒形の容器本体10と、容器本体の開口部に着脱自在に嵌着する蓋体20と、容器本体10の胴回り部30に巻き付けられた、抗菌性を有する胴巻きラベル40とを含む、ウェットティシュー収納容器1であって、胴巻きラベル40のラベル同士の静止摩擦係数が0.15以上0.45以下以上であり、ロール体を含むウェットティシュー収納容器1の重量は200g以上700g以下であることを特徴とする、ウェットティシュー収納容器1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に所定の間隔で易切断部が形成されたウェットティシューのロール体を収納する略円筒形の容器本体と、前記容器本体の開口部に着脱自在に嵌着する蓋体と、前記容器本体の胴回り部に巻き付けられた、抗菌性を有する胴巻きラベルとを含む、ウェットティシュー収納容器であって、
前記胴巻きラベルのラベル同士の静止摩擦係数が0.15以上0.45以下であり、
前記ロール体を含むウェットティシュー収納容器の重量は200g以上700g以下であることを特徴とする、ウェットティシュー収納容器。
【請求項2】
前記容器本体の前記胴回り部における直径が90mm以上120mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー収納容器。
【請求項3】
前記ウェットティシューを前記蓋体から取り出すときの取り出し抵抗は1.5N以上6.0N以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー収納容器。
【請求項4】
前記胴回り部における高さ方向の中央部には、上端部及び下端部のそれぞれから連続的に直径が小さくなるくびれ部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー収納容器。
【請求項5】
前記胴巻きラベルのウェットティシュー収納容器における被覆率が60%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を有する胴巻きラベルを含むウェットティシュー収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生環境への意識の高まりから、液体タイプの除菌剤や、薬液を含浸させたウェットティシューだけでなく、それらの容器や包装体にも抗菌性を持たせるニーズが高まっている。
【0003】
そのような製品のパッケージに抗菌性能を持たせるために、パッケージフィルム(ラベル)の表層に塗布するニスに抗菌剤を配合した、いわゆる抗菌ニスが知られている。
【0004】
また、フィルムの表層に後から塗布する以外にも、フィルムの製造段階で抗菌性の被覆層を形成させておく方法も知られている。
【0005】
そのような抗菌ニスの先行技術文献として、例えば特許文献1には、銀含有リン酸ジルコニウム粒子、炭素数が16~18の脂肪酸アマイド及びアクリル樹脂を含有し、脂肪酸アマイドの含有量に対する銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有量の比である、銀含有リン酸ジルコニウム粒子/脂肪酸アマイドの値が3.0~25.0である水性抗菌ニス組成物が開示されている。
また、抗菌性の被覆層を形成させる先行技術文献として、特許文献2には熱収縮性フィルムの被着体側の最表面に天然物由来の抗菌剤を含む抗菌性コーティング層が形成された積層フィルムで構成された熱収縮性包装材が開示されている。また、積層フィルムは抗菌性コーティング層を内側にして筒状に形成されていてもよく、また、熱収縮性包装材には、容器に装着する熱収縮性包装材であって、少なくとも容器の口部を被覆する部分に抗菌性コーティング層が形成されている熱収縮性包装材等が含まれる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6801137号公報
【特許文献2】特開2002-001878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの技術はニス表面から露出した抗菌剤が菌などに接触した際に、菌の繁殖を抑制する機構であり、抗菌剤が粒子である場合、ラベル表面の摩擦係数が小さくなって滑りやすくなる傾向がある。
内容物の重量が小さい場合、特に問題にはならないが、ボトルタイプのウェットティシューの胴巻きラベルに抗菌性ニスを採用する場合、製品が重く、またボトルの直径も太いため、持ち運び時に滑りやすく、落としてしまうなどの問題があることが判明した。
【0008】
さらに、ボトルタイプのウェットティシューは、取り出し口でシートを1枚ずつカットするが、このとき、一定の取り出し抵抗が必要となるため、もう片方の手でボトルを押さえてシートを取り出すことになる。このときにラベルの表面が滑りやすいと、手で押さえたボトルが滑りやすくなるため、ウェットティシューが取り出しにくくなる。
【0009】
滑りにくくするためには抗菌剤の露出量を減らす必要があるが、その場合には抗菌性能が発現しないという問題がある。また、製品の重量を小さくするためにはシートの枚数を減らすか薬液の含浸倍率を低くする必要があるが、枚数を減らすと交換頻度が多くなる問題があり、含浸倍率を減らすと拭き取り性が低下するという問題がある。
また、取り出し抵抗を小さくすると、シートが1枚ずつカットされず、連続して出てきてしまう問題もあった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、交換頻度の少ないボトルタイプのウェットティシュー収納容器において、収納容器の胴巻きラベルに抗菌ニスを用いた場合であっても、取り出し性が良く、容器が滑りにくく、かつ、持ち運びに優れるウェットティシュー収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、長手方向に所定の間隔で易切断部が形成されたウェットティシューのロール体を収納する略円筒形の容器本体と、容器本体の開口部に着脱自在に嵌着する蓋体と、容器本体の胴回り部に巻き付けられた、抗菌性を有する胴巻きラベルとを含む、ウェットティシュー収納容器において、胴巻きラベルのラベル同士の静止摩擦係数と、ロール体を含むウェットティシュー収納容器の重量をそれぞれ所定の数値範囲内とすることで、取り出し性が良く、容器が滑りにくく、かつ、持ち運びに優れるウェットティシュー収納容器とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、長手方向に所定の間隔で易切断部が形成されたウェットティシューのロール体を収納する略円筒形の容器本体と、前記容器本体の開口部に着脱自在に嵌着する蓋体と、前記容器本体の胴回り部に巻き付けられた、抗菌性を有する胴巻きラベルとを含む、ウェットティシュー収納容器であって、前記胴巻きラベルのラベル同士の静止摩擦係数が0.15以上0.45以下であり、前記ロール体を含むウェットティシュー収納容器の重量は200g以上700g以下であることを特徴とする、ウェットティシュー収納容器である。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のウェットティシュー収納容器であって、前記容器本体の前記胴回り部における直径が90mm以上120mm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のウェットティシュー収納容器であって、前記ウェットティシューを前記蓋体から取り出すときの取り出し抵抗は1.5N以上6.0N以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のウェットティシュー収納容器であって、前記胴回り部における高さ方向の中央部には、上端部及び下端部のそれぞれから連続的に直径が小さくなるくびれ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のウェットティシュー収納容器であって、前記胴巻きラベルのウェットティシュー収納容器における被覆率が60%以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、交換頻度の少ないボトルタイプのウェットティシュー収納容器において、収納容器の胴巻きラベルに抗菌ニスを用いた場合であっても、取り出し性が良く、容器が滑りにくく、かつ、持ち運びに優れるウェットティシュー収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るウェットティシュー収納容器の全体を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るウェットティシュー収納容器に巻き付けた胴巻きラベルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0020】
<ウェットティシュー収納容器>
本発明の一実施形態に係るウェットティシュー収納容器1(以下、単に収納容器1とも称する)は、図1に示すように、長手方向に所定の間隔で易切断部が形成されたウェットティシュー50(以下、単にシート50とも称する)のロール体(図示しない)を収納する略円筒形の容器本体10と、容器本体10の開口部に着脱自在に嵌着する蓋体20と、容器本体10の胴回り部30に巻き付けられた、抗菌性を有する胴巻きラベル40とを含むものである。
【0021】
ロール体を含む収納容器1の重量は200g以上700g以下である。重量が200g未満であると、内部のロール体も小さくなり、シート50の枚数を増やせず、ロール体の交換頻度が増加する。重量が700gを超えると収納容器1が重くなって手で持ったときに滑りやすい。
この場合における収納容器1の重量は、ロール体以外に、蓋体20及び胴巻きラベル40を含む製品としての重量を指す。重量は、電子天秤で測定する。なお、収納容器1の重量は250g以上600g以下であることが好ましく、300g以上500g以下であることがより好ましい。
【0022】
(容器本体)
収納容器1の容器本体10において、胴回り部30における高さ方向の中央部には、上端部及び下端部のそれぞれから連続的に直径が小さくなるくびれ部31が形成されている(いわゆるウェストシェイプ形状である)ことが好ましい。
片手で収納容器1を掴み、もう一方の手でシート50を上に引き上げて取り出すとき、通常は胴回り部30の中央部付近を掴む。このとき、中央部付近(掴んでいる箇所)よりも下部の直径が大きいと、上に引き上げられる抵抗があっても、引っ掛かりがあるため滑りにくい。
また、収納容器1を手で掴んで持ち運ぶときも、通常は胴回り部30の中央部付近を掴む。このとき、中央部付近(掴んでいる箇所)よりも上部の直径が大きいと、持ち運び時にボトルを手で持ち上げた時に引っ掛かりがあって滑りにくい。すなわち、上端部及び下端部のそれぞれから連続的に直径が小さくなるくびれ部31が形成されていることにより、取り出し性が良く、容器が滑りにくく、かつ、持ち運びに優れる収納容器1とすることができる。
【0023】
さらに、収納容器1において、容器本体10の胴回り部30における直径が90mm以上120mm以下であることが好ましい。直径が90mm未満であると、内部のロール体も小さくなり、シート50の枚数を増やせず、ロール体の交換頻度が増加する。直径が120mmを超えると胴回り部30が手に納まらず、手で持ったときに滑りやすい。
なお、胴回り部30における直径は94mm以上110mm以下であることが好ましく、98mm以上106mm以下であることが好ましい。胴回り部30における直径は、胴回り部30の最も細い箇所をKDSダイヤメータールールF10-02DM等で測定する。
【0024】
(蓋体)
収納容器1の蓋体20において、取り出し口の材質や形状は限定されないが、例えば図1に示すように、貫通孔21と、貫通孔21の近傍に設けられた導入孔22と、貫通孔21と導入孔22とを連通する誘導路23と、貫通孔21、導入孔22、誘導路23を開閉自在に覆う小蓋24と、を備えていてもよい。
また、蓋体20は、貫通孔21を閉塞するように取り付けられ、シート50を引き出す引き出し孔25を有した、エラストマーからなる中栓26を備えることが好ましい。中栓26を備えることで、後述するシート50の取り出し抵抗を調整しやすく、取り出し性が適性化しやすい。
【0025】
(胴巻きラベル)
抗菌性を有する胴巻きラベル40は、図1に示すように、ウェットティシュー収納容器1の容器本体10の胴回り部30に巻き付けられている。
胴巻きラベル40の収納容器1における被覆率は、60%以上であることが好ましい。被覆率が60%未満であると、収納容器1(特に胴回り部30)において胴巻きラベル40で覆われていない箇所が多く、収納容器1の表面における菌の発生を抑制しきれないことがある。
なお、被覆率は65%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。被覆率は、図1に示す胴巻きラベル40の幅R1を収納容器1の高さで割った値の百分率((R1/B1)×100(%))として求める。
【0026】
胴巻きラベル40における抗菌性として、抗菌活性値が2.0以上であることが好ましい。抗菌活性値が2.0未満であると、胴巻きラベル40における抗菌性能が不足する。なお、抗菌活性値は、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましい。
抗菌活性値は、JIS Z2801:抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果に基づく黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する抗菌活性値を測定して求める。
【0027】
図2は、胴巻きラベル40の断面図である。胴巻きラベル40は、収納容器1の表面と同じ側の面(すなわち、使用者が手で触れる面)から順番に、抗菌層41、基材43、インキ層44を有する。
【0028】
胴巻きラベル40において、基材43の材質は特に限定されないが、熱収縮性フィルムであり、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられ、後述する静止摩擦係数を調整しやすいことから、ポリスチレンが好ましい。また、インキ層44は基材43と異なる材質であってもよいが、同じ材質であることが好ましい。インキ層44は、基材43との間に印字層を有していてもよい(図示しない。)
【0029】
抗菌層41は、抗菌剤42を含むニスを塗布し、形成したものであることが好ましい。
抗菌剤42としては、通常の抗菌ニスや抗菌塗料に含まれる抗菌剤であれば特に限定されず、銀イオンを担持させたリン酸ジルコニウム等の合成抗菌剤や、貝殻や甲殻類の殻、又はそれらの焼成物若しくはその水和物或いはそれらの抽出物、わさび、茶、竹、ヒノキ等の抗菌成分を含有する植物の抽出物等からなる天然抗菌剤を用いることができるが、中でも抗菌剤の粒径が均一になりやすい合成抗菌剤が好ましい。
【0030】
胴巻きラベル40全体の厚みは、25μm以上50μm以下であることが好ましく、35μm以上45μm以下であることがより好ましい。
【0031】
また、胴巻きラベル40のラベル同士の静止摩擦係数は0.15以上0.45以下である。静止摩擦係数が0.15未満であると、胴巻きラベル40が滑りやすくなり、シート50を取り出しにくくなったり、収納容器1を手で持ち運びにくくなったりする。静止摩擦係数が0.45を超えると、結果として抗菌層41において抗菌剤42の露出が少なくなり、抗菌効果が得られない。
なお、胴巻きラベル40の静止摩擦係数は、0.20以上0.40以下であることが好ましく、0.25以上0.35以下であることがより好ましい。静止摩擦係数は、JIS K7125に基づき、荷重200g、引張速度100m/minで測定する。測定には島津製作所製オートグラフAGS-500Bを使用し、胴巻きラベル40の抗菌層41同士を擦り合わせて測定する。
【0032】
(ウェットティシュー(シート))
本発明の一実施形態に係る収納容器1に収納されるウェットティシュー50(シート50)は、ロール体として、図1に示す収納容器1の内部に、軸方向が地面と垂直になるように収納されている。
シート50は、長手方向に所定の間隔で易切断部が形成されており、易切断部の間を1枚のシート50とする。1枚のシート50におけるシート長は特に限定されないが、100mm以上300mm以下であることが好ましく、130mm以上250mm以下であることがより好ましく、150mm以上200mm以下であることが更に好ましい。また、1枚のシート50におけるシート幅は100mm以上180mm以下であることが好ましく、120mm以上160mm以下であることがより好ましく、130mm以上150mm以下であることが更に好ましい。
【0033】
ロール体における、シート50の合計枚数は80枚以上200枚以下であることが好ましい。枚数が80枚未満であると、ロール体の交換頻度が多くなる。枚数が200枚を超えると、収納容器1が重くなり、手で持ったときに滑りやすい。
なお、シート50の合計枚数は90枚以上160枚以下であることがより好ましく、100枚以上150枚以下であることが更に好ましい。
【0034】
シート50は、ロール体の状態で薬液に含浸するが、このとき用いる薬液は、通常ウェットティシュー製品に用いられている薬液であれば、特に限定されず、水、アルコール、抗菌剤、殺菌剤、保湿剤等を含むことができる。
このとき、薬液の含浸倍率は特に限定されないが、2倍以上4倍以下であることが好ましい。含浸倍率が2倍未満であると、シート50が拭き取り性に劣り、4倍を超えると収納容器1が重くなり、手で持ったときに滑りやすい。なお、含浸倍率は、2.3倍以上3.5倍以下であることがより好ましく、2.5倍以上3.0倍以下であることが更に好ましい。
【0035】
含浸倍率の測定方法は、まずシート50の面積及び重量を測定し、その後、シート50をアルコール溶液で洗浄し、絶乾させる。絶乾後、23℃、50%RH環境下で調湿し、シート50の重量を測定する。そして、紙1gに対して含浸された薬液の重量を含浸倍率とする。
【0036】
絶乾時におけるシート50の坪量は、25g/m以上50g/m以下であることが好ましい。坪量が25g/m未満であると、シート50が薄くなり、たくさん使用するため、ロール体の交換頻度が多くなる。坪量が50g/mを超えると、結果として収納容器1が重くなって、手で持ったときに滑りやすい。また、シート50の枚数が減って、ロール体の交換頻度が多くなる。
なお、絶乾時におけるシート50の坪量は、30g/m以上45g/m以下であることがより好ましく、33g/m以上40g/m以下であることが更に好ましい。絶乾時のシート50の坪量は、JIS P 8124に基づいて測定する。
【0037】
また、ウェットティシュー50を蓋体20から取り出すときの取り出し抵抗は1.5N以上6.0N以下であることが好ましい。取り出し抵抗が1.5N未満であると、シート50がミシン目で切れにくく、連続して出てきやすい。取り出し抵抗が6.0Nを超えると、取り出すときに収納容器1を強く押さえる必要があり、滑りやすい。
なお、取り出し抵抗は1.7N以上5.5N以下であることがより好ましく、2.0N以上5.0N以下であることが更に好ましい。
【0038】
シート取り出し抵抗は、JIS P 8113の引張試験方法に準じて、引張試験機(STB-1225S、株式会社エー・アンド・デイ社製)を使用して測定することができ、JISP 8111に規定された標準条件下で行う。まず、シート50を取り出し口から10mm程度飛び出るようにセットし、手で引き抜く。その後、次のシート50が20mm程度飛び出る等に手でセットする(引き出す)。
次に、シート50をつかみ具(幅75mm)に流れ方向で20mm挟んで固定し、収納容器1が動かないように手で押さえる。そして、引張速度を100mm/minの条件で引張り、測定データを採取する。データは16.7μmおきに取得し、測定開始後の距離40mmから150mmまで(測定長110mm)のデータを平均して、これを取り出し抵抗(N)とする。ただし、測定開始後の距離40mmから150mmまでにミシン目を含んでしまう場合は、測定開始後の距離を40mmから例えば90mm(測定長50mm)のように、ミシン目を含まない範囲で短くすることができる。
測定は各サンプルに対し、5回実施し、平均値を取り出し抵抗値とする。なお、シート50が途中で切れたり、収納容器1の内部でのシート50の捻じれ等で引き抜けなかったりした場合は、測定データから除去する。
【0039】
<ウェットティシュー収納容器の製造方法>
収納容器1のうち、容器本体10及び蓋体20は、通常の樹脂製品の成型と同様に製造することができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてブロー成形や射出成形等により成型される。
胴巻きラベル40は、通常のラベルの製造方法と同様に、基材43の片面にインキ層44を形成した後に、もう一方の片面に抗菌剤42を含むニスを塗布し、抗菌層41を形成することで製造することができる。
【0040】
また、ウェットティシュー50の製造方法としては、通常のウェットティシュー製品等と同様の工程で製造することができる。具体的には、(1)抄紙及びクレーピング、(2)易裁断部加工、(3)ロール巻き取り加工、(4)薬液含浸、といった工程によって、ウェットティシュー50のロール体を得ることができる。なお、薬液含浸のタイミングはロール巻き取り加工の前後どちらでもよい。
最後に、胴巻きラベル40を容器本体10にシュリンク包装等によって巻き付けた後、ウェットティシュー50のロール体を容器本体10の内部に軸方向が垂直になるように挿入し、蓋体20を装着して、ウェットティシュー収納容器1の製品とする。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0042】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
<ウェットティシュー収納容器の作製及び評価>
表1~3に示す実施例1~22及び比較例1~9のそれぞれのウェットティシュー収納容器を作製し、容器本体の内部にウェットティシューのロール体を収納した状態で、以下の評価を行った。以下の評価以外の各パラメータは、上述した測定方法に従って行った。
なお、各実施例及び各比較例のいずれも、胴巻きラベルとしては、ポリスチレンを材質として用い、抗菌剤はサカタインクス社製 Rabコート S-242を用いた。容器本体における胴回り部の形状は、実施例18はくびれ部を有さないストレート形状、実施例19は下端部のみ連続的に直径が広くなる(大きくなる)円錐台の形状、実施例20は上端部のみ連続的に直径が広くなる(大きくなる)上下逆の円錐台の形状とした。その他の実施例及び比較例は、全て上端部及び下端部のそれぞれから連続的に直径が小さくなるくびれ部が形成されている(ウェストシェイプの)形状とした。
【0044】
(ロールの交換頻度)
モニター30名がウェットティシューを1ロール使用し、交換頻度(ロール体の交換までの期間)について、下記の4段階で評価した。
◎→交換頻度が多いと答えた人数が3人未満
○→交換頻度が多いと答えた人数が3人~4人
△→交換頻度が多いと答えた人数が5人~9人
×→交換頻度が多いと答えた人数が10人以上
【0045】
(抗菌性能)
収納容器を3日間、日常生活で使用した後のJIS Z2801:抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果に基づく黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する抗菌活性値によって測定した胴巻きラベルの抗菌活性値を、以下の4段階で評価した。
◎→使用後の胴巻きラベルの抗菌活性値が3.0以上
○→使用後の胴巻きラベルの抗菌活性値が2.5~2.9以下
△→使用後の胴巻きラベルの抗菌活性値が2.1~2.4以下
×→使用後の胴巻きラベルの抗菌活性値が2.0未満
【0046】
(収納容器の持ちやすさ)
モニター30名が収納容器を片手で持ったときの、収納容器の持ちやすさについて、下記の4段階で評価した。
◎→滑って持ちにくいと答えた人数が3人未満
○→滑って持ちにくいと答えた人数が3人~4人
△→滑って持ちにくいと答えた人数が5人~9人
×→滑って持ちにくいと答えた人数が10人以上
【0047】
(シートの取り出し性)
モニター30名が収納容器を片手で持ったときの、収納容器の持ちやすさについて、下記の4段階で評価した。
◎→シートを取り出しにくいと答えた人数が3人未満
○→シートを取り出しにくいと答えた人数が3人~4人
△→シートを取り出しにくいと答えた人数が5人~9人
×→シートを取り出しにくいと答えた人数が10人以上
【0048】
以上の各評価の結果を含めた、各実施例及び各比較例のパラメータを以下の表1~3に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
以上より、本実施例によれば、交換頻度の少ないボトルタイプのウェットティシュー収納容器において、収納容器の胴巻きラベルに抗菌ニスを用いた場合であっても、取り出し性が良く、容器が滑りにくく、かつ、持ち運びに優れるウェットティシュー収納容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 (ウェットティシュー)収納容器
10 容器本体
20 蓋体
21 貫通孔
22 導入孔
23 誘導路
24 小蓋
25 引き出し孔
26 中栓
30 胴回り部
31 くびれ部
40 胴巻きラベル
41 抗菌層
42 抗菌剤
43 基材
44 インキ層
50 ウェットティシュー(シート)
図1
図2