(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006554
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20240110BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20240110BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D24/00 F
B21D22/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107565
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】飛田 隼佑
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA02
4E137AA06
4E137AA15
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137CA24
4E137CA26
4E137CB01
4E137DA13
4E137DA15
4E137EA01
4E137EA02
4E137EA03
4E137GA03
4E137GA08
4E137GB03
4E137HA06
(57)【要約】
【課題】縮みフランジ変形によって生じるしわを十分に抑制し、曲げ成形にも適用可能なプレス成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るプレス成形品の製造方法は、凸状外周縁部3aを有する天板部3と、天板部3からパンチ肩R部9を介して連続する縦壁部5とを有するプレス成形品を目標形状とするプレス成形品1を製造する方法であって、金属板を中間成形品15に成形する第1成形工程と、第1成形工程で成形した中間成形品15を目標形状のプレス成形品1に成形する第2成形工程とを備え、中間成形品15は、パンチ肩R部29の断面曲率半径を目標形状より大きくし、少なくとも天板部3の凸状外周縁部3aに対応する部分において、天板部27の幅を目標形状よりも広くして、パンチ肩R部29の天板部27側のR開始位置が目標形状のパンチ肩R部9のR開始位置よりも凸状外周縁部3aの凸方向に離間した位置とすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁又はその一部が外方に向かって凸状に湾曲した凸状外周縁部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部とを有するプレス成形品を目標形状とするプレス成形品の製造方法であって、
金属板を、凸状外周縁部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有する中間成形品に成形する第1成形工程と、
該第1成形工程で成形した前記中間成形品を目標形状の前記プレス成形品に成形する第2成形工程とを備え、
前記中間成形品は、前記凸状外周縁部に連続するパンチ肩R部断面の曲率半径を目標形状のパンチ肩R部断面の曲率半径よりも大きくし、少なくとも該天板部の凸状外周縁部に対応する部分において、前記天板部の幅を前記目標形状よりも広くして、パンチ肩R部の天板部側のR開始位置が前記目標形状のパンチ肩R部のR開始位置よりも凸状外周縁部の凸方向に離間した位置とすることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項2】
外周縁又はその一部が外方に向かって凸状に湾曲した凸状外周縁部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部とを備えたL字断面部品、又は、前記L字断面部品の前記縦壁部の下端にフランジ部を有するZ字断面部品を目標形状としたプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、
金属板を、凸状外周縁部を有する天板部と該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有し、前記凸状外周縁部に連続するパンチ肩R部の断面曲率半径を目標形状のパンチ肩R部の断面曲率半径より大きくした中間成形品にプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品の前記パンチ肩R部の天板部側のR開始位置を、パンチのパンチ肩成形部の天板成形部側のR開始位置よりも前記凸状外周縁部の凸方向にずらして前記パンチに載置し、目標形状にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1成形工程は、絞り成形又は曲げ成形を適用し、
前記第2成形工程は、曲げ成形を適用することを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項4】
前記金属板を、引張強度が590MPa以上の鋼板とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項5】
前記金属板を、引張強度が590MPa以上の鋼板とすることを特徴とする請求項3に記載のプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板部と、縦壁部とを有するプレス成形品の製造方法に関し、特に、前記プレス成形品を成形する際の縮みフランジ変形に伴うしわの発生を抑制するプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突安全性基準の厳格化により、車体の衝突安全性の向上が進む中で、二酸化炭素排出規制を受けて、燃費向上やEV化のために車体の軽量化も必要とされている。これら車体の衝突安全性向上と軽量化を両立させるために、車体構造部品への590MPa級以上の高強度鋼板(ハイテン材とも称する)の適用が進んでいる。ハイテン材を車体構造部品にプレス成形する際には、縮みフランジ変形により生じるしわの抑制が課題となっている。
【0003】
例えば、自動車部品には、AピラーアッパーやAピラーロア、バンパー部品等のように、天板部と、縦壁部と、フランジ部を有する部品がある。このような部品において天板部の外周縁又はその一部が外方に向かって凸状に湾曲した形状となっている場合、プレス成形の際に当該部位のフランジ部は縮みフランジ変形し、フランジ部の端部にしわが発生する場合がある。特にハイテン材の場合、高強度化によって座屈しやすくなり、しわが発生しやすい。また、フランジ部を有さず、天板部と縦壁部から構成される部品も同様に、縮みフランジ変形によって縦壁部の端部にしわが発生しやすい。
【0004】
そこで、特許文献1には、天板部とフランジ部とが側壁部を介して幅方向で連続しているハット形断面を有すると共に天板部及びフランジ部が長手方向に沿って天板部側に凸に湾曲した湾曲部分を有するプレス成形品を製造する方法が開示されている。特許文献1の方法は、フランジ部位置よりも外周部分にシワ押さえ領域を設定し段絞りで成形を行う段絞り工程を有し、さらにフランジ部位置の一部にもシワ押さえで押さえる付加領域を設定することにより、フランジ部で発生するしわを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のプレス成形方法は、フランジしわの発生を抑制できるものの、しわ押さえを使用するため、曲げ(フォーム)成形によるプレス成形には適用できないという課題がある。
【0007】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、縮みフランジ変形によって生じるしわを十分に抑制し、曲げ成形にも適用可能なプレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るプレス成形品の製造方法は、外周縁又はその一部が外方に向かって凸状に湾曲した凸状外周縁部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部とを有するプレス成形品を目標形状とするプレス成形品の製造方法であって、
金属板を、凸状外周縁部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有する中間成形品に成形する第1成形工程と、該第1成形工程で成形した前記中間成形品を目標形状の前記プレス成形品に成形する第2成形工程とを備え、前記中間成形品は、前記凸状外周縁部に連続するパンチ肩R部断面の曲率半径を目標形状のパンチ肩R部断面の曲率半径より大きくし、少なくとも該天板部の凸状外周縁部に対応する部分において、前記天板部の幅を前記目標形状よりも広くして、パンチ肩R部の天板部側のR開始位置が前記目標形状のパンチ肩R部のR開始位置よりも凸状外周縁部の凸方向に離間した位置とすることを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、本発明に係るプレス成形品の製造方法は、外周縁又はその一部が外方に向かって凸状に湾曲した凸状外周縁部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部とを備えたL字断面部品、又は、前記L字断面部品の前記縦壁部の下端にフランジ部を有するZ字断面部品を目標形状としたプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、
金属板を、凸状外周縁部を有する天板部と該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有し、前記凸状外周縁部に連続するパンチ肩R部の断面曲率半径を目標形状のパンチ肩R部の断面曲率半径より大きくした中間成形品にプレス成形する第1成形工程と、前記中間成形品の前記パンチ肩R部の天板部側のR開始位置を、パンチのパンチ肩成形部の天板成形部側のR開始位置よりも前記凸状外周縁部の凸方向にずらして前記パンチに載置し、目標形状にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記第1成形工程は、絞り成形又は曲げ成形を適用し、前記第2成形工程は、曲げ成形を適用することを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記金属板を、引張強度が590MPa以上の鋼板とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、第1成形工程で目標形状よりも縮みフランジ変形量の小さい中間成形品を成形し、第2成形工程で中間成形品を目標形状に成形することにより、第2成形工程において縮みフランジ変形による材料移動が生じにくくてしわになりにくい。
このため、本発明は目標形状の成形品の板厚増加を抑制でき、しわのない良好な形状のプレス成形品が得られ、プレス成形における歩留まり向上に繋がる。
また、本発明はしわ押さえを必要としないので、曲げ成形にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るプレス成形品の製造方法の説明図である。
【
図2】実施の形態で対象とした部品(目標形状)の説明図であり、
図2(a)は斜視図、
図2(b)は平面図である。
【
図3】実施の形態の第2成形工程における成形過程を示す図である(その1)。
【
図4】実施の形態の第2成形工程における成形過程を示す図である(その2)。
【
図5】第1成形工程及び第2成形工程における材料流入量の説明図である。
【
図6】パンチ肩R部のR開始位置(離間距離a)を変更した中間成形品の断面形状を比較して示す図である。
【
図7】中間成形品のパンチ肩R部のR開始位置の離間距離aと、各工程における材料流入量との関係を示すグラフである。
【
図8】従来の製造方法で製造したプレス成形品の板厚増加率分布及び最大板厚増加率を示す図である。
【
図9】従来の製造方法における成形過程を示す図である(その1)。
【
図10】従来の製造方法における成形過程を示す図である(その2)。
【
図11】本発明を適用できる部品(目標形状)の他の例を示す図であり、
図11(a)は斜視図、
図11(b)は平面図である。
【
図12】
図11の部品を従来の製造方法で製造した場合に生じるしわを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態に係るプレス成形品の製造方法の目標形状であるプレス成形品について、
図2の例に基づいて説明する。
なお、本明細書において、目標形状とは最終形状とは限らない。すなわち、目標形状にプレス成形した後、必要に応じて天板部等にビード形状を付与したり、トリミングをしたり等の必要な加工を付加して最終形状とする場合もある。さらに、ハット断面部品を目標形状として成形した後、該部品を分割して二つのZ字断面部品を製造する場合もある。
また、
図2は、プレス成形品の全体又は特徴的な一部を示したものである。
図2に示すプレス成形品1は、天板部3と、縦壁部5と、フランジ部7を有するものであって、天板部3の外周縁の一部が外方に向かって凸状に湾曲した部位(以下、「凸状外周縁部3a」という)を有するものである。なお、凸状外周縁部3aと他の部位との境界は、例えば天板部3を平面視したときの凸状外周縁部3aのR止まりまでとする。
また、本例のプレス成形品1の天板部3と縦壁部5とが成す角度、縦壁部5とフランジ部7とが成す角度はそれぞれ90°とした。
【0015】
プレス成形品1における天板部3と縦壁部5の境界部は、プレス成形に用いたパンチのパンチ肩成形部の形状に対応したR形状となっているので、当該部位を「パンチ肩R部9」と称する。また、縦壁部5とフランジ部7の境界部は、ダイのダイ肩成形部の形状に対応したR形状となっているので「ダイ肩R部11」と称する。以降、本明細書において単に「パンチ肩R部9」、「ダイ肩R部11」と表記したときには金型側ではなくプレス成形品1側の上記部位を指す。
【0016】
まず、本実施の形態に係るプレス成形品の製造方法を説明するに先立って、従来の方法で
図2のようなプレス成形品1をプレス成形する場合の問題点について説明する。
図8は、従来の方法でプレス成形品1をプレス成形した場合についてFEM解析した結果であり、板厚増加率の分布を色の濃淡で示している。板厚増加率は、プレス成形後のプレス成形品1の板厚とプレス成形前のブランクの板厚との差(板厚増分)を求め、ブランクの板厚との比(割合)で表したものであり、値が大きいほど板厚が増加していることを表している。また、板厚が増加するほど、プレス成形品1の該部位にしわが発生しやすくなる。さらに、板厚増加が局所的になるほどしわになりやすい。
【0017】
図2のようなプレス成形品1を従来の方法で成形する場合、例えば、目標形状に対応した形状のパンチとダイを用い、平板状のブランクを1工程で目標形状に成形する。この場合、天板部3の凸状外周縁部3aに連続する縦壁部5、及びこの縦壁部5に連続するフランジ部7は、縮みフランジ変形して材料が集中し、板厚が増加しやすい。
図2に示すプレス成形品1の場合、最も板厚が増加したのは
図8の矢印で示すフランジ部7の端部であり、最大板厚増加率は+12.5%であった。このように、局所的に板厚が増加することで当該部分にしわが生じ、問題となっていた。
図8のようにフランジ部7の板厚が局所的に増加する理由を
図9、
図10を用いて説明する。
【0018】
図9及び
図10は、上述した従来の製造方法でプレス成形品1を成形する場合の成形過程を示したものである。
図9では、ブランク13の変形過程を、正面図(
図9の上側の図、
図2(b)の矢印方向からみた図)及び断面図(
図9の下側の図、
図2(b)のA-A´断面に相当する図)でそれぞれ示している。
図10では、ブランク13の変形過程を、上面図、正面図(
図9の正面図と同じ)及び側面図でそれぞれ示している。
図10においてはブランク13の形状を分かりやすくするため、ダイ23の図示を省略した。
なお、図中の「10mmup」等の数値は、ブランク13の板厚分を考慮したパンチ21とダイ23のプレス方向の距離を示している。したがって、「10mmup」とは、パンチ21のフランジ成形部とダイ23のフランジ成形部との隙間がブランク13の板厚に+10mmを加えた状態であることを示している。また、「0mmup」は成形下死点の状態を示している。
【0019】
天板部3の凸状外周縁部3aに連続する縦壁部5(
図2(a)参照)が成形され始めると、
図9、
図10の「10mmup」の正面図に示すように、縮みフランジ変形によってブランク13の端部に例えば二つの大きな山状のしわが生じる。この二つの大きな山状のしわは、縮みフランジ変形が進むにしたがって中央に集中してくっきりした形状になる(
図10の「5mmup」「3mmup」の正面図参照)。
【0020】
成形の進行に伴って、ダイ23が下降してダイ23の下面がしわの頂部に到達すると、ダイ23がしわを押し潰すように成形が進行するが、「1mmup」まで成形が進むとブランク13はしわを残したまま拘束され、成形下死点に至る(「0mmup」参照)。
【0021】
上記のように、従来の成形過程では、パンチ21とダイ23の間の隙間で大きなしわが生じて、このしわを潰しきれないままフランジ部7を成形するため、プレス成形品1にしわが残存し、しわが生じた部分の板厚が局所的に増加していた。
【0022】
成形過程でしわが生じないようにする手段としては、フランジ部7に相当する部位にしわ押さえを用いるとよいが、しわ押さえを用いない曲げ成形には適用できない。
【0023】
また、上述した縮みフランジ変形によるしわは、
図11に示すようなプレス成形品14の場合も同様に生じる。
図11のプレス成形品14は、フランジ部を有さず、天板部3と、縦壁部5によって構成されるものであって、
図2のプレス成形品1と同様に天板部3の外周縁の一部が外方に向かって凸状に湾曲した部位(凸状外周縁部3a)を有するものである。
【0024】
図11のようなプレス成形品14を従来の方法、即ち、目標形状に対応した形状のパンチとダイを用い、平板状のブランクを1工程で目標形状に成形すると、
図12に示すように、天板部3の凸状外周縁部3aに対応する縦壁部5の端部(図中破線円で囲んだ部分)にしわが発生する。
【0025】
1工程で成形した場合に、
図2のプレス成形品1のフランジ部7や
図11のプレス成形品14の縦壁部5にしわが生じる原因は、縮みフランジ変形により、材料が凸状湾曲部位に集中して移動するからである。
縮みフランジ変形による凸状湾曲部位への金属板の集中を抑制するには、凸状湾曲部位における金属板の変形状態を変えて、プレス成形途中でひずみを局所に集中させずに分散させるとよい。また、中間成形品を成形して剛性を高くして自由変形を拘束すれば、しわが生じにくくなる。
そこで、発明者は、中間成形品を介して目標形状を成形する2工程でのプレス成形方法を用いて、各工程における縮みフランジ変形量を低減する方法について検討した。そして、縮みフランジ変形量を抑えて成形することができ、かつ、目標成形時に伸びの材料流れを生じさせて縮み方向の材料移動を低減できるような中間成形品の形状を発案した。
本実施の形態に係るプレス成形品の製造方法は上記発案に基づくものである。以下、
図2のプレス成形品1を成形する場合を例に挙げて、具体的に説明する。
【0026】
本実施の形態に係るプレス成形品の製造方法は、
図2のようなプレス成形品1を成形する方法であって、
図1に示すように、ブランク13を中間成形品15に成形する第1成形工程と、中間成形品15をプレス成形品1に成形する第2成形工程を備えている。
【0027】
図1(a)は第1成形工程の成形前の状態のパンチ17、ダイ19及びブランク13の斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)のB断面図である。
また、
図1(c)は第2成形工程の成形前の状態のパンチ21、ダイ23及び中間成形品15の斜視図であり、
図1(d)は
図1(c)のC断面図である。
なお、
図1(a)~
図1(d)の各金型は肉厚部分を無視して成形面部の形状のみを板状に図示している。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0028】
<第1成形工程>
第1成形工程は、
図1(a)、
図1(b)に示すように金属板であるブランク13を、凸状外周縁部を有する天板部27と、天板部27からパンチ肩R部29を介して連続する縦壁部31を有する中間成形品15(
図1(c))にプレス成形する工程である。
第1成形工程に用いるパンチ17は、肩部の断面曲率半径R
1が、第2成形工程で用いる目標形状に対応した形状のパンチ21の肩部の断面曲率半径R
2よりも大きくなっている(R
1>R
2)。
【0029】
第1成形工程では、
図1(b)に示すように、パンチ17の天板成形面部上面とパッド25でブランク13の一部を挟持した状態でダイ19を相対的に移動させて中間成形品15を成形する。これにより、パンチ肩R部29の断面曲率半径が目標形状のパンチ肩R部9の断面曲率半径より大きい中間成形品15が成形される。
また、中間成形品15の天板部27の幅は目標形状の天板部3の幅よりも広くする。したがって、中間成形品15のパンチ肩R部29の天板部27側R開始位置は、目標形状のパンチ肩R部9のR開始位置(以下、「目標R開始位置」という)よりも凸状外周縁部3aの凸方向に離間した位置となる。
【0030】
中間成形品15は天板部27が目標形状よりも幅広で、かつ、パンチ肩R部29の断面曲率半径が目標形状よりも大きいことから、平板状のブランク13を目標形状に成形する場合と比べて、小さい縮みフランジ変形量で成形することができる。
したがって、第1成形工程において中間成形品15の縦壁部31の端部は板厚が増加しにくく、しわが生じにくい。
【0031】
<第2成形工程>
第2成形工程は、第1成形工程で成形した中間成形品15を目標形状のプレス成形品1に成形する工程である。第2成形工程のパンチ21及びダイ23は目標形状に対応した形状であり、
図9の従来例の金型と同様であるので同一の符号を付している。
【0032】
第2成形工程では、
図1(d)に示すように、中間成形品15の天板部27において目標形状の天板部3に相当する部位をパンチ21の上面に合わせてセットする。具体的には、中間成形品15の天板部27において、目標形状のパンチ肩R部9のR開始位置(目標R開始位置)に相当する部位をパンチ21のパンチ肩成形部のR開始位置に合わせてセットする。
中間成形品15をパンチ21の天板成形面部にセットした状態では、中間成形品15のパンチ肩R部29から縦壁部31にかけての部分が、周方向に湾曲してパンチ21の縦壁成形面部から離間した状態になっており、傘を広げたような状態になっている。
この状態でパンチ21の天板成形面部とパッド25で中間成形品15の天板部27を挟持してダイ23を相対的に移動させ、中間成形品15を目標形状に成形する。
第2成形工程の成形過程の様子を
図3、
図4に示す。
【0033】
図3では、中間成形品15の変形過程を、
図9と同様に正面図及び断面図でそれぞれ示している。
図4では、中間成形品15の変形過程を、
図10と同様に上面図、正面図及び側面図でそれぞれ示している。「10mmup」等の数値の意味や、上面図、正面図及び側面図でダイ23の図示を省略した点も
図10と同様である。
【0034】
図3に示すように、「10mmup」でダイ23の肩部が中間成形品15の天板部27に接触すると、目標形状の縦壁部5に成形され始める。従来例では縦壁部5の成形時に縮みフランジ変形が生じて、パンチ21とダイ23の間の隙間で大きな山状のしわが生じていた(
図9の「10mmup」~「3mmup」参照)。
これに対し、本実施の形態の第2成形工程では、パンチ21とダイ23の隙間の大きさに関わりなく、中間成形品15の縦壁部31の下部(フランジ部7に相当する部位)がパンチ21のフランジ成形面部近傍に位置しており、しわも生じていない。これは、中間成形品15が加工硬化によって平板状のブランク13よりも剛性が高くなっているため、縦壁部31の材料が移動しにくくなっているからである。
【0035】
ダイ23が「1mmup」まで下降すると、縦壁部31の下部を目標形状のダイ肩R部11及びフランジ部7に成形し始める。このとき、フランジ部7に相当する部位の縮みフランジ変形が進み、材料移動が生じやすくなる。しかし、この時点でパンチ21のフランジ成形面とダイ23のフランジ成形面の間の隙間は板厚+1mmと小さくなっているので、フランジ部7がほとんど縮みフランジ変形することなく成形下死点に至る。したがって、成形完了後のプレス成形品1のフランジ部7にもしわが発生しにくい。
【0036】
また、第2成形工程においては、成形過程で生じるひずみを局所的に集中させずに分散させる作用が生じており、これにより縮みフランジ変形をさらに緩和できる。この点について
図4に基づいて説明する。
【0037】
図4に示すように、「15mmup」の状態では、未だダイ23が中間成形品15に接触しておらず、中間成形品15のパンチ肩R部29から縦壁部31にかけての部分が傘を広げたような形状となっている。
「15mmup」の状態からダイ23を下降させると、「10mmup」のときにダイ23が中間成形品15の天板部27に接触し、「10mmup」の側面図に示すように、屈曲部が生じて目標形状の縦壁部5が成形され始める。
【0038】
縦壁部5の成形においては、ダイ23が湾曲したパンチ肩R部29や縦壁部31を押圧することで、成形途中のひずみを周方向に分散させながら成形が進行する。これにより、材料を周方向に引き伸ばす力が作用して縮みフランジ変形に対抗し、縮み方向の材料流れを緩和させるので、縮みフランジ変形をさらに緩和できる。
【0039】
このように、中間成形品15の剛性が高いことから第2成形工程における成形過程で材料移動が生じにくくなっており、さらに、縮みフランジ変形を緩和する材料流れが生じるため、成形完了後のプレス成形品1のフランジ部7は板厚が増加しにくい。
【0040】
上記のように本実施の形態では、第1成形工程で縮みフランジ変形量の小さい中間成形品15を成形し、第2成形工程で中間成形品15を目標形状に成形することにより、局所的な板厚増加の問題を解消し、プレス成形品1のフランジ部7に生じるしわを抑制できる。
【0041】
また、本実施の形態のプレス成形品の製造方法は、しわ押さえを用いることなくフランジ部7のしわを抑制することができるので、曲げ(フォーム)成形によるプレス成形にも適用できる。即ち、中間成形品15を成形する第1成形工程で絞り成形又は曲げ成形を適用し、目標形状を成形する第2成形工程で曲げ成形を適用する場合に特に効果的である。
【0042】
さらに、本実施の形態のプレス成形品の製造方法は、縮みフランジ変形によってしわが生じやすい高強度鋼板を用いる場合に特に効果的である。例えば、金属板であるブランクを引張強度が590MPa級以上の鋼板としてもよく、その場合も十分なしわの低減効果を奏することができる。
【0043】
上記は、
図2のようなフランジ部7を有するプレス成形品1を成形する場合を例に挙げて説明したものであるが、
図11、
図12に示したようなフランジ部を有さないプレス成形品14を成形する場合にも同様の作用によりしわを低減することができる。
【0044】
なお、上述したように、本実施の形態のプレス成形品の製造方法は、縮みフランジ変形量が目標形状より小さい中間成形品15を介することで、プレス成形品1に生じるしわを低減できるようにしたものである。この中間成形品15の縮みフランジ変形量は、パンチ肩R部29のR開始位置から目標R開始位置までの距離(以下、これを「離間距離a」という)が大きいほど、より小さくなる。この点についてさらに説明する。
【0045】
図5(a)は、第1成形工程における成形前のブランク13の断面形状を破線、成形後の成形下死点における中間成形品15の断面形状を実線で示したものである。ここで、
図5(a)におけるブランク13の端部から中間成形品15の縦壁部31の端部までの距離を第1成形工程での材料流入量と定義する。
この第1成形工程での材料流入量は、パンチ肩R部29のR開始位置の離間距離aが大きいほど小さくなる。
図6にその具体例を示す。
【0046】
図6はパンチ肩R部9の断面曲率半径が4mmである目標形状に対し、パンチ肩R部29の断面曲率半径を8mm一定とし、離間距離aをそれぞれ2mm、4mm、6mm、8mmとした場合の中間成形品15の断面形状を図示したものである。上記4例の断面形状は、目標形状に成形するときにパンチ肩R部9のR開始位置となる部分(目標R開始位置)を合わせて重ねている。また、パンチ肩R部29の断面曲率半径が上記4例と同じ8mmであるが、パンチ肩R部29のR開始位置が目標R開始位置と同じ位置(離間距離a=0mm)である場合の断面形状も比較例として図示している。
【0047】
図6に示すように、パンチ肩R部29の断面曲率半径が同じである場合、パンチ肩R部29のR開始位置の離間距離aが大きい中間成形品15ほど、縦壁部31の端部が紙面右側に位置することがわかる。即ち、離間距離aが大きい中間成形品15ほど、
図5(a)に示した材料流入量が小さいと言える。
材料流入量が小さいと第1成形工程における縮みフランジ変形量が小さくなるので、中間成形品15のパンチ肩R部29の離間距離aを大きくすることで第1成形工程における板厚増加(ブランク13からの板厚増加)を低減できる。
【0048】
図5(b)は、第1成形工程の成形下死点における中間成形品15の断面形状を破線、第2成形工程の成形下死点におけるプレス成形品1の断面形状を実線で示したものである。ここで、
図5(b)における中間成形品15の縦壁部31の端部からプレス成形品1のフランジ部7の端部までの距離を第2成形工程での材料流入量と定義する。
この第2成形工程での材料流入量は、パンチ肩R部29のR開始位置の離間距離aが大きい中間成形品15ほど大きくなる。材料流入量が大きいと第2成形工程における縮みフランジ変形量が大きくなるので、離間距離aを大きくすることで第2成形工程における板厚増加(中間成形品15からの板厚増加)は大きくなる。
【0049】
上述したように、パンチ肩R部29のR開始位置の離間距離aが大きいほど、第1成形工程での材料流入量が小さく、第2成形工程での材料流入量が大きくなる。
図6に示した5例の場合の離間距離aと各工程の材料流入量との関係を
図7に示す。
【0050】
図7に示すように、パンチ肩R部29のR開始位置の離間距離aを大きくするほど、第1成形工程での材料流入量を少なくし板厚増加を低減できるが、第2成形工程での材料流入量が多くなり板厚増加が増大する。
したがって、前述の第1成形工程での中間成形品15の剛性向上や縮みフランジ変形の緩和を考慮しつつ、第2成形工程後の板厚増加がなるべく低減するように離間距離aを設定することで、本発明はより効果的になる。
【0051】
なお、上記はパンチ肩R部29の断面曲率半径を一定とした場合の離間距離aと各工程の材料流入量の関係について述べたものであるが、中間成形品15のパンチ肩R部29の断面曲率半径を大きくした場合にも同様である。
中間成形品15のパンチ肩R部29の断面曲率半径については、目標形状のパンチ肩R部9の断面曲率半径の1.5倍~4倍程度とするのが好ましい。
【0052】
上記実施の形態は、
図2のようなZ字断面部品や、
図11のようなL字断面部品に限らず、天板部の両側に一対の縦壁部を有するコ字断面部品や、一対のフランジ部をさらに有するハット断面部品にも適用可能である。
また、上記は中間成形品の形状によって本発明を特徴づけるものであったが、目標とする部品がL字断面部品又はZ字断面部品の場合は、第1成形工程及び第2成形工程における成形の仕方、即ち成形方法によって本発明を下記のように特徴づけることもできる。
【0053】
すなわち、中間成形品15を成形する第1成形工程と、中間成形品15のパンチ肩R部のR開始位置を、パンチのパンチ肩成形部のR開始位置よりも凸状外周縁部の凸方向にずらしてパンチに載置し、目標形状のプレス成形品1に成形する第2成形工程を備える。
このように特徴づけた発明は、前述した発明と共通点が多いので、各工程を前述した
図1、
図2を参照しながら詳細に説明する。
【0054】
<第1成形工程>
第1成形工程は、金属板であるブランク13を中間成形品15にプレス成形する工程であり、第1成形工程に用いるパンチ17は、肩部の断面曲率半径R1が、第2成形工程で用いる目標形状に対応した形状のパンチ21肩部の断面曲率半径R2よりも大きい(R1>R2)。これにより、第1成形工程では、凸状外周縁部を有する天板部27と天板部27からパンチ肩R部29を介して連続する縦壁部31を有し、パンチ肩R部29の断面曲率半径が目標形状のパンチ肩R部9の断面曲率半径より大きい中間成形品15が成形される。
【0055】
中間成形品15は、パンチ肩R部29の断面曲率半径が目標形状よりも大きいことから、従来の平板状のブランク13を目標形状に成形する場合と比べて、小さい縮みフランジ変形量で成形することができる。
したがって、第1成形工程において中間成形品15の端部は板厚が増加しにくく、しわが生じにくい。
【0056】
<第2成形工程>
第2成形工程は、第1成形工程で成形した中間成形品15を目標形状のプレス成形品1に成形する工程である。第2成形工程のパンチ21及びダイ23は目標形状に対応した形状であり、
図9の従来例の金型と同様である。
【0057】
第2成形工程では、中間成形品15のパンチ肩R部29の天板部27側R開始位置について、パンチ21のパンチ肩成形部の天板成形部側R開始位置よりも凸状外周縁部3aの凸方向に離間した位置に載置する。そのため、中間成形品15をパンチ21の上面にセットした状態では、中間成形品15のパンチ肩R部29から縦壁部31にかけての部分が傘を広げたような状態になっている。
この状態でパンチ21の上面とパッド25で中間成形品15の天板部27を挟持してダイ23をプレス成形方向に相対的に移動させ、中間成形品15を目標形状に成形する。
第2成形工程の成形過程の様子は、前述と同様に
図3、
図4となる。
【0058】
図3に示すように、中間成形品を目標形状に成形する過程において、パンチ21とダイ23の隙間の大きさに関わりなく、中間成形品15の縦壁部31の下部(フランジ部7に相当する部位)がパンチ21のフランジ成形面部近傍に位置している。そして、従来例(
図9、
図10)の成形過程で生じていた山状の大きなしわが生じていない。これは、中間成形品15が加工硬化によって平板状のブランク13よりも剛性が高くなっているため、縦壁部31の材料が移動しにくくなっているからである。
【0059】
ダイ23が「1mmup」まで下降すると、パンチ21のフランジ成形面とダイ23のフランジ成形面の間の隙間は板厚+1mmと小さいので、フランジ部7がほとんど縮みフランジ変形することなく成形下死点に至る。したがって、成形完了後のプレス成形品1のフランジ部7にもしわが発生しにくい。
【0060】
また、
図4に示すように、第2成形工程においては、成形過程で生じるひずみを局所的に集中させずに分散させる作用が生じており、これにより縮みフランジ変形をさらに緩和できる。すなわち、中間成形品15のパンチ肩R部29から縦壁部31にかけての部分が傘を広げたような形状となっている状態から、ダイ23が湾曲したパンチ肩R部29や縦壁部31を押圧することで、成形途中のひずみを周方向に分散させながら成形が進行する。これにより、材料を周方向に引き伸ばす力が作用して縮みフランジ変形に対抗し、縮み方向の材料流れを緩和させるので、縮みフランジ変形をさらに緩和できるわけである。
【0061】
このように、中間成形品15の剛性が高くて、縮みフランジ変形を緩和する材料流れが生じるため、成形完了後のプレス成形品1のフランジ部7は板厚が増加しにくい。
【実施例0062】
本発明のプレス成形品の製造方法における縮みフランジ変形によるしわの抑制効果について、FEM解析を用いて具体的な検討を行ったので、その結果について以下に説明する。
本実施例では、板厚1.0mm、引張強度が980MPa級の鋼板をブランクとして用い、
図2のプレス成形品1を目標形状としてプレス成形する場合について確認した。
鋼板を1工程で目標形状に成形する従来例と、鋼板を2工程で目標形状に成形する本発明例についてFEM解析を実施し、縮みフランジ変形部位の最大板厚増加率を求めた。なお、従来例の解析結果は
図8で説明したとおりであるので、以下では本発明例の解析結果について説明する。
【0063】
本発明例では、パンチ肩R部9の断面曲率半径が4mmである目標形状に対し、中間成形品15のパンチ肩R部29の断面曲率半径を8mm一定とし、かつ、パンチ肩R部29のR開始位置の離間距離aを2mm、4mm、6mm、8mmとした4例(
図6参照)についてFEM解析を行った。その結果を表1に示す。なお、表1に示す中間成形品の最大板厚増加率と目標成形品の最大板厚増加率はいずれもブランクの板厚を基準とする増加率を示したものである。
【0064】
【0065】
表1に示すように、従来例(No.1)では目標成形品(プレス成形品1)の最大板厚増加率が12.5%であったのに対し、本発明例(No.2~No.5)では目標成形品の最大板厚増加率がすべて従来例より低減した。その結果、上記のように本実施例では、本発明によって縮みフランジ変形によるフランジしわを従来よりも抑制できることが示された。
なお、前述したように、第2成形工程後の目標成形品の板厚増加がなるべく低減するように中間成形品15のパンチ肩R部29の断面曲率半径及びR開始位置の離間距離を設定することで、より効果的にしわを抑制することができる。この点について、以下具体的に説明する。
【0066】
No.2~No.5の中間成形品15の最大板厚増加率を比較すると分かるように、中間成形品15のパンチ肩R部29の断面曲率半径が一定である場合、R開始位置の離間距離aが大きいほど、第1成形工程における中間成形品15の最大板厚増加率が減少している。これは、
図6に示すように、R開始位置の離間距離aが大きい中間成形品15ほど縦壁部31の端部が紙面右側にせり出し、第1成形工程での材料流入量(
図5(a)参照)が小さくなるからである。
【0067】
また、No.2~No.5の目標成形品の最大板厚増加率を比較すると分かるように、中間成形品15のパンチ肩R部29の断面曲率半径が一定である場合、R開始位置の離間距離aが大きいほど、第2成形工程における目標成形品の最大板厚増加率も減少した。ここで、最大板厚増加率が最も小さくなったのは、離間距離aを最も大きくしたNo.5であった。
【0068】
パンチ肩R部29の断面曲率半径を一定とした本実施例では、R開始位置の離間距離aが最も大きい例が最も板厚増加率を低減した。なお、パンチ肩R部29の断面曲率半径を大きくした場合にも離間距離aを大きくした場合と同様に第1成形工程での材料流入量を低減できる。したがって、第2成形工程後の目標成形品の板厚増加がなるべく小さくなるように中間成形品15のパンチ肩R部29のR開始位置の離間距離aを設定したり、パンチ肩R部29の断面曲率半径を設定すればよく、これにより、しわ抑制効果を最大限に奏することができて効果的である。