(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065541
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】廃棄物又は排水処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20240508BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20240508BHJP
B01D 53/44 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
C02F1/04 D
B01D53/44 140
B01D53/44 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174466
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D002
4D004
4D034
【Fターム(参考)】
4D002BA02
4D002BA05
4D002BA08
4D002BA12
4D002CA07
4D002DA41
4D002DA51
4D002EA03
4D002GA01
4D002GB03
4D002HA08
4D004AA07
4D004AC04
4D004BA03
4D004CA27
4D004CB31
4D034AA26
4D034CA04
4D034CA12
(57)【要約】
【課題】廃棄物や排水処理の熱効率を向上させることができる廃棄物又は排水処理方法を提供しようとするもの。
【解決手段】この廃棄物処理方法は、廃棄物Mを気化させる加熱気化工程1と、気化成分Vを回収するスクラバー工程Sと、スクラバー工程S後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程Hとを有し、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにした。この排水処理方法は、排水Wを蒸発させる加熱気化工程1と、蒸発成分Vを回収するスクラバー工程Sと、スクラバー工程S後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程Hとを有し、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物(M)を気化させる加熱気化工程(1)と、気化成分(V)を回収するスクラバー工程(S)と、スクラバー工程(S)後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程(H)とを有し、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにしたことを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
排水(W)を蒸発させる加熱気化工程(1)と、蒸発成分(V)を回収するスクラバー工程(S)と、スクラバー工程(S)後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程(H)とを有し、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにしたことを特徴とする排水処理方法。
【請求項3】
前記加熱気化工程(1)の熱源と加熱熱処理工程(H)の熱源として同一の熱源を使用するようにした請求項1又は2記載の廃棄物又は排水処理方法。
【請求項4】
前記加熱熱処理工程(H)で排ガスを900℃以上に加熱して200℃以下に急冷するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の廃棄物又は排水処理方法。
【請求項5】
前記加熱気化工程(1)で廃棄物(M)又は排水(W)中の有機成分を熱分解させるようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の廃棄物又は排水処理方法。
【請求項6】
前記スクラバー工程(S)でスクラバー水にオゾン(O3)を共存させて電気分解するようにした請求項1乃至5のいずれかに記載の廃棄物又は排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄物又は排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物理化学的に処理を行う排水処理方法に関する提案があった(特許文献1)。
この排水処理方法は、排水の汚れ成分の濃度を自己処理放流水により平準化して吸着剤槽に通す吸着濾過工程を有し、前記吸着濾過工程では排水の濃度を適正処理可能な濃度域になるように自己処理放流水をフィードバックして排水原水側に混合し、自己処理放流水の濃度が放流基準値の濃度に上昇するまでの時間帯と吸着剤を賦活再生する時間帯とが重複しないようにしており、吸着剤の量をできるだけ少ない量に最適化して処理することができるので、従来よりも適正処理をすることができる、というものである。
これに対し、廃棄物や排水処理の熱効率を向上させることができる廃棄物や排水の処理方法に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、廃棄物や排水処理の熱効率を向上させることができる廃棄物又は排水の処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の廃棄物処理方法は、廃棄物を気化させる加熱気化工程と、気化成分を回収するスクラバー工程と、スクラバー工程後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程とを有し、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにしたことを特徴とする。
【0006】
この廃棄物処理方法は、廃棄物を気化させる加熱気化工程と、気化成分を回収するスクラバー工程と、スクラバー工程後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程とを有するので、加熱気化工程で廃棄物(例えば廃プラスチック)を気化させ、スクラバー工程(電解水や・Oラジカル水で浄化する)で廃棄物の気化成分を回収して含有される有機成分などを浄化し、加熱熱処理工程でスクラバー工程後の排ガスを例えば約650℃で熱分解してより無害化することができる。
そして、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにしたので、廃棄物処理の熱効率を向上させることができる。ここで、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用する態様として、加熱気化工程の廃熱を加熱熱分解工程で利用することや、加熱熱分解工程の廃熱を加熱気化工程で利用することを例示することができる。
【0007】
(2)この発明の排水処理方法は、排水を蒸発させる加熱気化工程と、蒸発成分を回収するスクラバー工程と、スクラバー工程後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程とを有し、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにしたことを特徴とする。
この排水処理方法は、排水を蒸発させる加熱気化工程と、蒸発成分を回収するスクラバー工程と、スクラバー工程後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程とを有するので、加熱気化工程(例えば排水を常圧で約100℃に加熱して蒸発させる)で汚れ成分として有機成分などを含有する排水を蒸発させ、スクラバー工程(電解水や・Oラジカル水で浄化する)で蒸発した排水の水分を回収して含有される有機成分などを浄化し、加熱熱処理工程でスクラバー工程後の排ガスを例えば約650℃で熱分解してより無害化することができる。
【0008】
そして、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにしたので、排水処理の熱効率を向上させることができる。ここで、前記いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用する態様として、加熱気化工程の廃熱を加熱熱分解工程で利用することや、加熱熱分解工程の廃熱を加熱気化工程で利用することを例示することができる。
【0009】
(3)前記加熱気化工程の熱源と加熱熱処理工程の熱源として同一の熱源を使用するようにしてもよい。
このようにすると、加熱気化工程の熱源(LNGバーナー等)と加熱熱処理工程の熱源として同一の熱源を使用することにより、例えば加熱熱処理工程後の排ガス(有機成分の熱分解成分であるメタン等を含む)を加熱気化工程の熱源(バーナーの燃焼ガス等)中に供給して、廃棄物処理の熱効率を向上させることができると共に、装置全体の構造をシンプルなものとすることができ、更には有機成分の熱分解成分であるメタン(温室効果ガス)等をここで燃焼させて環境への放出を阻止することができる。
【0010】
(4)前記加熱熱処理工程で排ガスを900℃以上に加熱して200℃以下に急冷するようにしてもよい。
このようにすると、加熱熱処理工程で排ガスを有機成分の分子構造がばらばらになる900℃以上に加熱し、これによりばらばらになった分子相互が再合成しない200℃以下に急冷することにより、ダイオキシン類の生成や成長を回避することができる。
【0011】
(5)前記加熱気化工程で廃棄物又は排水中の有機成分を熱分解させるようにしてもよい。
このようにすると、加熱気化工程で廃棄物や排水中の有機成分を熱分解(例えば650℃に加熱する)させることにより、廃棄物や排水中の有機成分の分子の結合が前もって分断されることとなるので、該熱分解成分のスクラバー工程での浄化性を向上させることができる。
【0012】
(6)前記スクラバー工程でスクラバー水にオゾンを共存させて電気分解するようにしてもよい。
このようにすると、加熱気化工程での気化成分や蒸発成分を取り込むスクラバー工程で、スクラバー水中にオゾン(O3)を共存させて電気分解(例えば電流密度 3-5A/dm2)することにより、生成する酸素ラジカル(・O)によって浄化性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
いずれかの加熱工程の廃熱を他の加熱工程で利用するようにしたので、廃棄物や排水処理の熱効率を向上させることができる廃棄物又は排水の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の廃棄物又は排水処理方法の実施形態1の説明図。
【
図2】この発明の廃棄物又は排水処理方法の実施形態2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、この実施形態の廃棄物処理方法は、廃棄物M(廃プラスチックを処理した)を気化させる加熱気化工程(加熱気化槽1に低融点金属Sn(錫:融点232℃)を貯留し約650℃に昇温した)と、気化成分Vを回収するスクラバー工程(スクラバー槽S)と、スクラバー工程後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)とを有し、前記加熱気化工程(加熱気化槽1)の廃熱を加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)で利用(同一熱源)するようにした(排ガスの経路は図示せず)。
廃棄物M(廃プラスチック)は、ホッパーからスパイラルコンベアを介して加熱気化槽1の低融点金属Snの上部に供給した。
【0016】
また、加熱気化工程(加熱気化槽1)で廃棄物M中の有機成分を熱分解(約650℃に加熱)させることにより、廃棄物M中の有機成分の分子の結合が前もって分断されることとなるので、該熱分解成分のスクラバー工程(スクラバー槽S)での浄化性を向上させることができた。
【0017】
さらに、加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)で排ガスを有機成分の分子構造がばらばらになる900℃以上(LNGバーナーの炎)に加熱し、これによりばらばらになった分子相互が再合成しない200℃以下に急冷(煙道2の外周がスクラバー槽Sとなっている)することにより、ダイオキシン類の生成や成長を回避した。
【0018】
その上、加熱気化工程(加熱気化槽1)の熱源と加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)の熱源として同一の熱源(LNGバーナーB)を使用することにより、加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)後の排ガス(有機成分の熱分解成分であるメタン等を含む)を加熱気化工程(加熱気化槽1)の熱源(バーナーの燃焼ガス)中に供給して、廃棄物処理の熱効率を向上させることができると共に、装置全体の構造をシンプルなものとすることができ、更には有機成分の熱分解成分であるメタン(温室効果ガス)等をここで燃焼させて助燃剤として利用し、環境への放出を阻止した。
【0019】
また、加熱気化工程(加熱気化槽1)での気化成分Vを取り込むスクラバー工程(スクラバー槽S)で、スクラバー水中にオゾン(O3)を共存させて電解機構Eで電気分解(電流密度 3-5A/dm2)して循環することにより、生成する酸素ラジカル(・O)によって浄化性を向上させることができた。加えるに、スクラバー槽Sでは、取り込んだ気化成分Vを活性炭Cにより吸着・浄化した。
【0020】
次に、この実施形態の廃棄物処理方法の使用状態を説明する。
この廃棄物処理方法は、廃棄物Mを気化させる加熱気化工程(加熱気化槽1)と、気化成分Vを回収するスクラバー工程(スクラバー槽S)と、スクラバー工程後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)とを有するので、加熱気化工程(加熱気化槽1)で廃棄物Mを気化させ、スクラバー工程(スクラバー槽S)で廃棄物Mの気化成分を回収して含有される有機成分などを浄化し、加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)でスクラバー工程(スクラバー槽S)後の排ガスを燃焼させて無害化することができた。
そして、加熱気化工程(加熱気化槽1)の廃熱を加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)で利用(同一熱源)するようにしたので、廃棄物処理の熱効率を向上させることができた。
【0021】
(実施形態2)
次に、実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、この実施形態の排水処理方法は、排水Wを蒸発させる加熱気化工程(加熱気化槽1に低融点金属Sn(錫:融点232℃)を貯留し、排水を常圧で約100℃に加熱して蒸発させた)と、蒸発成分Vを回収するスクラバー工程(スクラバー槽S)と、スクラバー工程後の排ガスを熱処理する加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)とを有し、前記加熱気化工程(加熱気化槽1)の廃熱を加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)で利用(同一熱源)するようにした(排ガスの経路は図示せず)。
前記排水Wは、加熱気化槽1の低融点金属Sn中(内部)に注入した。
【0022】
すなわち、加熱気化工程(加熱気化槽1)で汚れ成分として有機成分などを含有する排水Wを蒸発させ、スクラバー工程(スクラバー槽S)で蒸発した排水の水分を回収して含有される有機成分などを浄化し、加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)でスクラバー工程後の排ガスを燃焼させて無害化することができた。
そして、加熱気化工程(加熱気化槽1)の廃熱を加熱熱処理工程(加熱熱処理槽H)で利用(同一熱源)するようにしたので、廃棄物処理の熱効率を向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
廃棄物や排水処理の熱効率を向上させることができることによって、種々の廃棄物や排水処理方法の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 (加熱気化槽)
H (加熱熱処理槽)
S (スクラバー槽)
V 気化成分、蒸発成分
M 廃棄物
W 排水