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特開2024-65542レーザ加工装置及び補正照射位置決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065542
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及び補正照射位置決定方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240508BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240508BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/082
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174467
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(71)【出願人】
【識別番号】000161367
【氏名又は名称】株式会社アマダウエルドテック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓甫
(72)【発明者】
【氏名】加川 亮太
【テーマコード(参考)】
2H045
4E168
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045BA12
2H045CA31
2H045CA32
2H045CA63
2H045CA82
2H045CA92
2H045CA97
4E168AA00
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA06
4E168DA13
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA29
4E168EA08
4E168EA15
4E168KA08
(57)【要約】
【課題】加工対象物の面全体でレーザビームを照射しようとする位置に高精度に照射して、加工対象物を加工することができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】ガルバノスキャナ20は、加工対象物Wに照射するレーザビームの加工対象物W上の照射位置を可変させる。fθレンズ30は、ガルバノスキャナ20と加工対象物Wとの間に配置され、ガルバノスキャナ20より射出されたレーザビームを加工対象物W上に集束させる。記憶部11は、加工対象物W上の理想的な複数の照射位置における各理想照射位置に対応する補正照射位置を記述した補正ファイルを記憶する。制御装置10は、fθレンズ30より射出されたレーザビームをいずれかの理想照射位置に照射しようとするときに、fθレンズ30より射出されるレーザビームを、補正ファイルに記述されている理想照射位置に対応する補正照射位置に照射するようガルバノスキャナ20を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に照射するレーザビームの前記加工対象物上の照射位置を可変させるためのガルバノスキャナと、
前記ガルバノスキャナと前記加工対象物との間に配置され、前記ガルバノスキャナより射出されたレーザビームを前記加工対象物上に集束させるfθレンズと、
前記加工対象物上の理想的な複数の照射位置における各理想照射位置に対応する補正照射位置を記述した補正ファイルを記憶する記憶部と、
前記fθレンズより射出されたレーザビームをいずれかの理想照射位置に照射しようとするときに、前記fθレンズより射出されるレーザビームを、前記補正ファイルに記述されている前記理想照射位置に対応する補正照射位置に照射するよう前記ガルバノスキャナを制御する制御装置と、
を備えるレーザ加工装置であり、
前記レーザ加工装置が、前記ガルバノスキャナによってレーザビームを走査可能な領域内であって、前記fθレンズの有効径を示す円より小さく、前記加工対象物に外接する円より大きい前記加工対象物と相似の拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に、複数の座標点を2次元的な理想的な座標に配置した理想レイアウト画像に基づいて、所定の被照射物にレーザビームを照射して、前記被照射物上に前記理想レイアウト画像をマーキングし、
画像読取機が、前記理想レイアウト画像がマーキングされた前記被照射物を読み取って、前記理想レイアウト画像を構成する前記複数の座標点が、前記fθレンズが有する歪み特性に起因して前記理想的な座標からずれることによってマーキングされた複数の変位座標点よりなるマーキング画像を示すマーキング画像データを生成し、
計算機が、
前記マーキング画像データに基づいて前記歪み特性を示すレンズ歪みモデルを作成し、
前記レンズ歪みモデルを前記理想レイアウト画像に変換するためのレンズ逆歪みモデルを作成し、
前記レンズ逆歪みモデルに基づいて、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の前記理想照射位置に対応する補正照射位置を示す補正照射位置データを生成し、
前記記憶部には、前記補正照射位置データが前記補正ファイルとして記憶されている
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記理想レイアウト画像は、前記複数の座標点における第1の方向に隣接する2点及び前記第1の方向と直交する第2の方向に隣接する2点よりなる4点が正方形の頂点に位置するように、前記複数の座標点を前記第1及び第2の方向に等間隔で並べた画像であり、
前記マーキング画像は、前記理想レイアウト画像における各正方形が前記歪み特性に起因して歪んだ画像であり、
前記レンズ歪みモデルは、前記マーキング画像を構成する前記複数の変位座標点より多い数の変位座標点を含み、
前記レンズ逆歪みモデルは、前記レンズ歪みモデルを構成する変位座標点の数と同じ数の補正座標点を含み、
前記計算機は、
前記レンズ逆歪みモデルを構成する複数の補正座標点における前記第1の方向に隣接する2点及び前記第2の方向に隣接する2点よりなる4点を、対角方向の2点を共通とした3点の第1及び第2の組に分け、
前記第1の組の3点の補正座標点の重心の位置と前記第2の組の3点の補正座標点の重心の位置に補正照射位置を設定することにより、前記拡大領域に対応する補正照射位置を求め、
前記拡大領域に対応する補正照射位置のうちの前記加工対象物に対応する補正照射位置を、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の前記理想照射位置に対応する補正照射位置として設定する
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
加工対象物に照射するレーザビームの前記加工対象物上の照射位置を可変させるためのガルバノスキャナと、前記ガルバノスキャナより射出されたレーザビームを前記加工対象物上に集束させるfθレンズとを備えるレーザ加工装置が、前記ガルバノスキャナによってレーザビームを走査可能な領域に相当する2次元的なデータ領域内であって、前記fθレンズの有効径を示す円より小さく、前記加工対象物に外接する円より大きい前記加工対象物と相似の拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に、複数の座標点を2次元的な理想的な座標に配置した理想レイアウト画像に基づいて、所定の被照射物にレーザビームを照射して、前記被照射物上に前記理想レイアウト画像をマーキングし、
画像読取機が、前記理想レイアウト画像がマーキングされた前記被照射物を読み取って、前記理想レイアウト画像を構成する前記複数の座標点が、前記fθレンズが有する歪み特性に起因して前記理想的な座標からずれることによってマーキングされた複数の変位座標点よりなるマーキング画像を示すマーキング画像データを生成し、
計算機が、
前記マーキング画像データに基づいて前記歪み特性を示すレンズ歪みモデルを作成し、
前記レンズ歪みモデルを前記理想レイアウト画像に変換するためのレンズ逆歪みモデルを作成し、
前記レンズ逆歪みモデルに基づいて、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の理想照射位置に対応する補正照射位置を決定する
補正照射位置決定方法。
【請求項4】
前記理想レイアウト画像は、前記複数の座標点における第1の方向に隣接する2点及び前記第1の方向と直交する第2の方向に隣接する2点よりなる4点が正方形の頂点に位置するように、前記複数の座標点を前記第1及び第2の方向に等間隔で並べた画像であり、
前記マーキング画像は、前記理想レイアウト画像における各正方形が前記歪み特性に起因して歪んだ画像であり、
前記レンズ歪みモデルは、前記マーキング画像を構成する前記複数の変位座標点より多い数の変位座標点を含み、
前記レンズ逆歪みモデルは、前記レンズ歪みモデルを構成する変位座標点の数と同じ数の補正座標点を含み、
前記計算機が、
前記レンズ逆歪みモデルを構成する複数の補正座標点における前記第1の方向に隣接する2点及び前記第2の方向に隣接する2点よりなる4点を、対角方向の2点を共通とした3点の第1及び第2の組に分け、
前記第1の組の3点の補正座標点の重心の位置及び前記第2の組の3点の補正座標点の重心の位置に補正照射位置を設定することにより、前記拡大領域に対応する補正照射位置を求め、
前記拡大領域に対応する補正照射位置のうちの前記加工対象物に対応する補正照射位置を、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の前記理想照射位置に対応する補正照射位置として設定する
請求項3に記載の補正照射位置決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及び補正照射位置決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ガルバノスキャナとfθレンズとを備えるレーザ加工装置が知られている。特許文献1に記載されているレーザ加工装置は、加工対象物にマーキングを施すために用いられている。この種のレーザ加工装置は、加工対象物を溶接するためにも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-316288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、レーザ加工装置が加工対象物にレーザビームを照射して加工対象物を加工するとき、fθレンズが有する歪み特性に起因して、レーザビームを照射しようとする位置と実際にレーザビームが照射される位置とがずれることがある。加工対象物の面全体でレーザビームを照射しようとする位置に高精度に照射して、加工対象物を加工することができるレーザ加工装置及び補正照射位置決定方法の登場が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、加工対象物に照射するレーザビームの前記加工対象物上の照射位置を可変させるためのガルバノスキャナと、前記ガルバノスキャナと前記加工対象物との間に配置され、前記ガルバノスキャナより射出されたレーザビームを前記加工対象物上に集束させるfθレンズと、前記加工対象物上の理想的な複数の照射位置における各理想照射位置に対応する補正照射位置を記述した補正ファイルを記憶する記憶部と、前記fθレンズより射出されたレーザビームをいずれかの理想照射位置に照射しようとするときに、前記fθレンズより射出されるレーザビームを、前記補正ファイルに記述されている前記理想照射位置に対応する補正照射位置に照射するよう前記ガルバノスキャナを制御する制御装置とを備えるレーザ加工装置を提供する。
【0006】
前記レーザ加工装置が、前記ガルバノスキャナによってレーザビームを走査可能な領域内であって、前記fθレンズの有効径を示す円より小さく、前記加工対象物に外接する円より大きい前記加工対象物と相似の拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に、複数の座標点を2次元的な理想的な座標に配置した理想レイアウト画像に基づいて、所定の被照射物にレーザビームを照射して、前記被照射物上に前記理想レイアウト画像をマーキングする。画像読取機が、前記理想レイアウト画像がマーキングされた前記被照射物を読み取って、前記理想レイアウト画像を構成する前記複数の座標点が、前記fθレンズが有する歪み特性に起因して前記理想的な座標からずれることによってマーキングされた複数の変位座標点よりなるマーキング画像を示すマーキング画像データを生成する。
【0007】
計算機が、前記マーキング画像データに基づいて前記歪み特性を示すレンズ歪みモデルを作成し、前記レンズ歪みモデルを前記理想レイアウト画像に変換するためのレンズ逆歪みモデルを作成し、前記レンズ逆歪みモデルに基づいて、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の前記理想照射位置に対応する補正照射位置を示す補正照射位置データを生成する。前記記憶部には、前記補正照射位置データが前記補正ファイルとして記憶されている。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様においては、複数の座標点が拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に配置された理想レイアウト画像に基づいて補正照射位置データが生成されている。従って、1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、加工対象物の中心部だけでなく角部においても、レーザビームを照射しようとする位置に高精度に照射することができる補正照射位置を得ることができる。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、以下の補正照射位置決定方法を提供する。レーザ加工装置は、加工対象物に照射するレーザビームの前記加工対象物上の照射位置を可変させるためのガルバノスキャナと、前記ガルバノスキャナより射出されたレーザビームを前記加工対象物上に集束させるfθレンズとを備える。レーザ加工装置が、前記ガルバノスキャナによってレーザビームを走査可能な領域に相当する2次元的なデータ領域内であって、前記fθレンズの有効径を示す円より小さく、前記加工対象物に外接する円より大きい前記加工対象物と相似の拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に、複数の座標点を2次元的な理想的な座標に配置した理想レイアウト画像に基づいて、所定の被照射物にレーザビームを照射して、前記被照射物上に前記理想レイアウト画像をマーキングする。
【0010】
画像読取機が、前記理想レイアウト画像がマーキングされた前記被照射物を読み取って、前記理想レイアウト画像を構成する前記複数の座標点が、前記fθレンズが有する歪み特性に起因して前記理想的な座標からずれることによってマーキングされた複数の変位座標点よりなるマーキング画像を示すマーキング画像データを生成する。
【0011】
計算機が、前記マーキング画像データに基づいて前記歪み特性を示すレンズ歪みモデルを作成し、前記レンズ歪みモデルを前記理想レイアウト画像に変換するためのレンズ逆歪みモデルを作成し、前記レンズ逆歪みモデルに基づいて、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の理想照射位置に対応する補正照射位置を決定する。
【0012】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様においては、複数の座標点が拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に配置された理想レイアウト画像に基づいて補正照射位置データが生成されている。従って、1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、加工対象物の中心部だけでなく角部においても、レーザビームを照射しようとする位置に高精度に照射することができる補正照射位置を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工装置及び補正照射位置決定方法によれば、加工対象物の面全体でレーザビームを照射しようとする位置に高精度に照射して、加工対象物を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工装置を示す図である。
図2図2は、加工対象物の2次元的な大きさとマーキングパターンの領域との関係を示す図である。
図3図3は、理想レイアウト画像の一例を示す図である。
図4A図4Aは、理想レイアウト画像を示す概念図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す理想レイアウト画像を構成する複数の座標点が被照射物にマーキングされたマーキング画像を示す概念図である。
図4C図4Cは、図4Bに示すマーキング画像に基づいて作成されたレンズ歪みモデルを示す概念図である。
図5A図5Aは、図4Cに示すレンズ歪みモデルの歪みを除去した理想レイアウト画像を示す概念図である。
図5B図5Bは、図4Cに示すレンズ歪みモデルを図5Aに示す理想レイアウト画像に変換するための逆歪みモデルを示す概念図である。
図5C図5Cは、図5Bに示すレンズ逆歪みモデルに基づいて生成される補正照射位置データを示す概念図である。
図6図6は、図5Bに示すレンズ逆歪みモデルの座標点と、図5Cに示す補正照射位置データの座標点との関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工装置は、加工対象物に照射するレーザビームの前記加工対象物上の照射位置を可変させるためのガルバノスキャナと、前記ガルバノスキャナと前記加工対象物との間に配置され、前記ガルバノスキャナより射出されたレーザビームを前記加工対象物上に集束させるfθレンズと、前記加工対象物上の理想的な複数の照射位置における各理想照射位置に対応する補正照射位置を記述した補正ファイルを記憶する記憶部と、前記fθレンズより射出されたレーザビームをいずれかの理想照射位置に照射しようとするときに、前記fθレンズより射出されるレーザビームを、前記補正ファイルに記述されている前記理想照射位置に対応する補正照射位置に照射するよう前記ガルバノスキャナを制御する制御装置とを備える。
【0016】
前記レーザ加工装置が、前記ガルバノスキャナによってレーザビームを走査可能な領域内であって、前記fθレンズの有効径を示す円より小さく、前記加工対象物に外接する円より大きい前記加工対象物と相似の拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に、複数の座標点を2次元的な理想的な座標に配置した理想レイアウト画像に基づいて、所定の被照射物にレーザビームを照射して、前記被照射物上に前記理想レイアウト画像をマーキングする。
【0017】
画像読取機が、前記理想レイアウト画像がマーキングされた前記被照射物を読み取って、前記理想レイアウト画像を構成する前記複数の座標点が、前記fθレンズが有する歪み特性に起因して前記理想的な座標からずれることによってマーキングされた複数の変位座標点よりなるマーキング画像を示すマーキング画像データを生成する。
【0018】
計算機が、前記マーキング画像データに基づいて前記歪み特性を示すレンズ歪みモデルを作成し、前記レンズ歪みモデルを前記理想レイアウト画像に変換するためのレンズ逆歪みモデルを作成し、前記レンズ逆歪みモデルに基づいて、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の前記理想照射位置に対応する補正照射位置を示す補正照射位置データを生成する。前記記憶部には、前記補正照射位置データが前記補正ファイルとして記憶されている。
【0019】
1またはそれ以上の実施形態に係る補正照射位置決定方法は、以下のようにして補正照射位置を決定する。レーザ加工装置は、加工対象物に照射するレーザビームの前記加工対象物上の照射位置を可変させるためのガルバノスキャナと、前記ガルバノスキャナより射出されたレーザビームを前記加工対象物上に集束させるfθレンズとを備える。レーザ加工装置が、前記ガルバノスキャナによってレーザビームを走査可能な領域に相当する2次元的なデータ領域内であって、前記fθレンズの有効径を示す円より小さく、前記加工対象物に外接する円より大きい前記加工対象物と相似の拡大領域に相当する2次元的なデータ領域内に、複数の座標点を2次元的な理想的な座標に配置した理想レイアウト画像に基づいて、所定の被照射物にレーザビームを照射して、前記被照射物上に前記理想レイアウト画像をマーキングする。
【0020】
画像読取機が、前記理想レイアウト画像がマーキングされた前記被照射物を読み取って、前記理想レイアウト画像を構成する前記複数の座標点が、前記fθレンズが有する歪み特性に起因して前記理想的な座標からずれることによってマーキングされた複数の変位座標点よりなるマーキング画像を示すマーキング画像データを生成する。
【0021】
計算機が、前記マーキング画像データに基づいて前記歪み特性を示すレンズ歪みモデルを作成し、前記レンズ歪みモデルを前記理想レイアウト画像に変換するためのレンズ逆歪みモデルを作成し、前記レンズ逆歪みモデルに基づいて、前記レーザ加工装置が前記加工対象物にレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の理想照射位置に対応する補正照射位置を決定する。
【0022】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工装置及び補正照射位置決定方法について、添付図面を参照して具体的に説明する。図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工装置100を示す。図1において、レーザ加工装置100は、制御装置10、記憶部11、レーザ発振器12、ガルバノスキャナ20、fθレンズ30を備える。ガルバノスキャナ20は、ガルバノミラー21及び23と、ガルバノミラー21及び23それぞれを所定の角度となるように回転させる駆動部22及び24を含む。駆動部22及び24はモータによって構成することができる。
【0023】
レーザ発振器12は、一例として、波長1060nm~1080nmのレーザビームを射出するファイバレーザ発振器である。レーザ発振器12より射出されてガルバノミラー21に入射したレーザビームは、ガルバノミラー21で反射してガルバノミラー23に入射し、ガルバノミラー23で反射してfθレンズ30に入射する。fθレンズ30は入射したレーザビームを集束させて、加工対象物W上に照射する。fθレンズ30は、加工対象物Wの表面に対して直交するようにレーザビームを入射させる。加工対象物Wは各種の部品または板金等である。
【0024】
なお、レーザ発振器12は、ファイバレーザ発振器の他、ディスクレーザ発振器、YAGレーザ発振器、スラブ型レーザ発振器、ダイレクトダイオードレーザ発振器(DDL発振器)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Lase)、PCSEL(Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser)等であってもよい。また、レーザビームの波長帯域は波長1060nm~1080nmのような1μm帯の他、2μm帯、ブルーレーザもしくはグリーンレーザのような400nm帯から550nm帯、スラブ型炭酸ガスレーザのような10μm帯であってもよい。さらに、複数の波長帯域のレーザビームを複合させたレーザビームが用いられてもよい。
【0025】
制御装置10は、レーザ発振器12によるレーザビームの発振を制御する。制御装置10は、加工対象物Wに照射するレーザビームの加工対象物W上の照射位置を可変させるよう、駆動部22及び24を制御する。fθレンズ30は、ガルバノスキャナ20と加工対象物Wとの間に配置されている。fθレンズ30が、ガルバノスキャナ20を収納する図示していないスキャナヘッドに装着されていてもよい。
【0026】
fθレンズ30には、そのレンズ中心を通る角度ゼロの光軸に対して、ガルバノスキャナ20によって走査されることによって様々な角度を有するレーザビームが入射される。fθレンズ30は、その様々な角度を有する入射されるレーザビームを1つの平面上に集束させる。レーザビームがfθレンズ30のレンズ中心の光軸から離れた位置に入射すると、fθレンズ30より射出されるレーザビームが進行する方向は、光軸と平行とはならないことが知られている。fθレンズ30が有する歪み特性には、fθレンズ30に様々な角度で入射されるレーザビームが光軸と非平行の方向に射出されるという特性が含まれることがあってもよい。
【0027】
レーザ加工装置100が加工対象物Wにレーザビームを照射して加工対象物Wを加工するとき、fθレンズ30が有する歪み特性に起因して、レーザビームを照射しようとする位置と実際にレーザビームが照射される位置とがずれる。記憶部11には、加工対象物W上の理想的な複数の照射位置における各理想照射位置に対応する補正照射位置を記述した補正ファイルが記憶されている。
【0028】
制御装置10は、fθレンズ30より射出されたレーザビームをいずれかの理想照射位置に照射しようとするときに、fθレンズ30より射出されるレーザビームを、補正ファイルに記述されている理想照射位置に対応する補正照射位置に照射するようガルバノスキャナ20を制御する。
【0029】
以下、補正ファイルを具体的にどのように生成するかについて説明する。図2は、加工対象物Wの2次元的な大きさとマーキングパターンの領域との関係を示している。ここでは、加工対象物Wを正方形としている。加工対象物Wの平面的な大きさは領域ArWである。レーザ加工装置100によってレーザビームが照射される加工対象物W上の範囲は最大で領域ArWである。円Ce30はfθレンズ30の有効径である。領域ArWに外接する円Cw30は、領域ArWにレーザビームを照射する際に使用されるfθレンズ30の径である。ガルバノスキャナ20は、レーザビームを正方形の領域Ar20内で走査させることができる。
【0030】
1またはそれ以上の実施形態においては、ガルバノスキャナ20によってレーザビームを走査可能な領域Ar20内であって、fθレンズの有効径を示す円Ce30より小さく、加工対象物Wに外接する円Cw30より大きい加工対象物Wと相似の拡大領域ArMpに相当する2次元的なデータ領域を、マーキングパターンを含む理想レイアウト画像の大きさとする。図3は理想レイアウト画像の一例を示す。図3に示す理想レイアウト画像は、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向に等間隔の格子の交点に円を配置した画像である。
【0031】
図4Aは、複数の座標点を2次元的な理想的な座標に配置した理想レイアウト画像を概念的に示している。レーザ加工装置100は、理想レイアウト画像に基づいて、所定の被照射物にレーザビームを照射して、被照射物上に理想レイアウト画像をマーキングする。被照射物としてアルミ蒸着ガラスを用いるのが好適であるが、被照射物は理想レイアウト画像がマーキングされればよく、アルミ蒸着ガラスに限定されない。
【0032】
図4Bは、理想レイアウト画像を構成する複数の座標点が被照射物にマーキングされた状態を概念的に示している。図4Bに示すマーキング画像は、理想レイアウト画像を構成する複数の座標点が、fθレンズ30が有する歪み特性に起因して理想的な座標からずれた複数の変位座標点よりなる。光学スキャナのような図示していない画像読取機は、被照射物にマーキングされた複数の変位座標点よりなるマーキング画像を読み取り、マーキング画像を示すマーキング画像データを生成する。
【0033】
図示していない計算機は、画像読取機が生成したマーキング画像データに基づいて、fθレンズ30の歪み特性を示すレンズ歪みモデルを作成する。図4Cはレンズ歪みモデルを概念的に示している。計算機は汎用のパーソナルコンピュータでよい。計算機は、図4Bに示すマーキング画像データに基づいて、最小二乗法を使用した重回帰分析によってレンズ歪みモデルを作成することができる。図4Cにおいては、レンズ歪みモデルを直線及び曲線で表現しているが、実際には、図4Bに示すマーキング画像の変位座標点より多くの複数の座標点よりなる。
【0034】
図5Aは、図4Cに示すレンズ歪みモデルの歪みを除去した理想レイアウト画像を概念的に示している。計算機は、図4Cに示すレンズ歪みモデルを図5Aに示す理想レイアウト画像に変換するため、図5Bに示すレンズ逆歪みモデルを作成する。図4Cと同様に、図5Bにおいては、レンズ逆歪みモデルを直線及び曲線で表現しているが、実際には、図4Cに示すレンズ歪みモデルを構成する複数の座標点と同じ数の複数の座標点よりなる。図5Bに示すレンズ逆歪みモデルを構成する複数の座標点は、拡大領域ArMpに対応する複数の座標点である。
【0035】
計算機は、図5Bに示すレンズ逆歪みモデルに基づいて、図5Cに示すような拡大領域ArMpに対応する補正照射位置を求める。計算機は、拡大領域ArMpに対応する補正照射位置のうちの加工対象物W(領域ArW)に対応する補正照射位置を、レーザ加工装置100が加工対象物Wにレーザビームを照射するときの分解能に応じた数の理想照射位置に対応する補正照射位置として設定する。
【0036】
計算機は、図5Cに示す補正照射位置の全体である拡大領域ArMpに対応する補正照射位置のうちの領域ArWに相当する中心部の補正照射位置を抽出して、領域ArWの補正照射位置データを生成する。記憶部11には、以上のように生成された補正照射位置データが補正ファイルとして記憶されている。
【0037】
以上説明したレーザ加工装置100及びレーザ加工装置100が実行する補正照射位置決定方法によれば、領域ArW(加工対象物W)の中心部だけでなく4つの角部においても、レーザビームを照射しようとする位置に高精度に照射することができる補正照射位置を得ることができる。よって、レーザ加工装置100及びレーザ加工装置100が実行する補正照射位置決定方法によれば、加工対象物の面全体でレーザビームを照射しようとする位置に高精度に照射して、加工対象物を加工することができる。
【0038】
理想レイアウト画像は、複数の座標点における第1の方向に隣接する2点及び第1の方向と直交する第2の方向に隣接する2点よりなる4点が正方形の頂点に位置するように、複数の座標点を第1及び第2の方向に等間隔で並べた画像とするのがよい。マーキング画像は、理想レイアウト画像における各正方形がfθレンズ30が有する歪み特性に起因して歪んだ画像である。レンズ歪みモデルは、マーキング画像を構成する複数の変位座標点より多い数の変位座標点を含む。レンズ逆歪みモデルは、レンズ歪みモデルを構成する変位座標点の数と同じ数の補正座標点を含む。
【0039】
計算機は、レンズ逆歪みモデルを構成する複数の補正座標点における第1の方向に隣接する2点及び第2の方向に隣接する2点よりなる4点を、対角方向の2点を共通とした3点の第1及び第2の組に分ける。図6は、図5Bに示すレンズ逆歪みモデルの座標点と、図5Cに示す補正照射位置データの座標点との関係を概念的に示している。図6において、白丸は図5Bに示すレンズ逆歪みモデルの座標点、黒丸は図5Cに示す補正照射位置の座標点である。
【0040】
計算機は、レンズ逆歪みモデルの補正座標点B11、B12、B21、B22を4点として、その4点を、対角方向の2点である補正座標点B11及びB22を共通とした3点の第1の組(補正座標点B11、B21、B22)と3点の第2の組(補正座標点B11、B12、B22)とに分ける。計算機は、第1の組の3点の補正座標点の重心の位置である座標点C11に補正照射位置を設定し、第2の組3点の補正座標点の重心の位置である座標点C12に補正照射位置を設定するのが好ましい。
【0041】
計算機は、補正座標点B12、B22、B23よりなる第1の組の3点の重心の位置である座標点C13に補正照射位置を設定し、補正座標点B12、B13、B23よりなる第2の組の3点の重心の位置である座標点C14に補正照射位置を設定するのが好ましい。計算機は、補正座標点B13、B23、B24よりなる第1の組の3点の重心の位置である座標点C15に補正照射位置を設定し、補正座標点B13、B14、B24よりなる第2の組3点の重心の位置である座標点C16に補正照射位置を設定するのが好ましい。
【0042】
計算機はこのようにして補正照射位置を設定するので、補正座標点B21、B31、B32の3点、補正座標点B21、B22、B32の3点それぞれの重心の位置である座標点C21及びC22が補正照射位置とされる。補正座標点B22、B32、B33の3点、補正座標点B22、B23、B33の3点、補正座標点B23、B33、B34の3点、補正座標点B23、B24、B34の3点それぞれの重心の位置である座標点C23~C26が補正照射位置とされる。
【0043】
図5Bに示すレンズ逆歪みモデルに基づいて、図6に示すように補正照射位置を求めると、レンズ逆歪みモデルの各4点における隣接する2つの3点の組の間で、照射位置の補正が不連続となりにくい。よって、上記のように、レンズ逆歪みモデルの4点のうちの3点の重心の位置に基づいて補正照射位置を求めることが好ましい。
【0044】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 制御装置
11 記憶部
12 レーザ発振器
20 ガルバノスキャナ
21,23 ガルバノミラー
22,24 駆動部
30 fθレンズ
100 レーザ加工装置
W 加工対象物
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6