IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西日本電信電話株式会社の特許一覧

特開2024-65543通信システム、通信方法、およびプログラム
<>
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図1
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図2
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図3
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図4
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図5
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図6
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図7
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図8
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図9
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図10
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図11
  • 特開-通信システム、通信方法、およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065543
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】通信システム、通信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/56 20220101AFI20240508BHJP
【FI】
H04L47/56
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174468
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 浩二
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030KX11
5K030LC01
5K030MB06
(57)【要約】
【課題】遅延制御を好適に行うことが可能な技術を提供すること。
【解決手段】中継装置と、前記中継装置を介して互いに通信する複数の通信装置と、を備えた通信システムであって、前記中継装置は、いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行う中継部を備え、前記通信装置は、自らの通信装置と、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御する遅延制御部、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継装置と、前記中継装置を介して互いに通信する複数の通信装置と、を備えた通信システムであって、
前記中継装置は、
いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行う中継部を備え、
前記通信装置は、
自らの通信装置と、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御する遅延制御部、
を備えた通信システム。
【請求項2】
前記遅延制御部は、各々の通信装置間で生じる遅延時間のうち、最大遅延時間を取得し、自らの通信装置と、通信先の通信装置との間で生じる装置間遅延時間を取得し、前記最大遅延時間、および前記装置間遅延時間にもとづき、通信先の通信装置との間の遅延時間が所定遅延時間となるように遅延時間を制御する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記所定遅延時間は、前記最大遅延時間である請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
中継装置と、前記中継装置を介して互いに通信する複数の通信装置と、を備えた通信システムにおける通信方法であって、
前記中継装置は、
いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行い、
前記通信装置は、
自らの通信装置と、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御する、通信方法。
【請求項5】
中継装置と、前記中継装置を介して互いに通信する複数の通信装置と、を備えた通信システムおいて前記中継装置を第1のコンピュータとして機能させ、前記通信装置を第2のコンピュータとして機能させるためのプログラムであって、
前記第1のコンピュータを、
いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行う中継部として機能させ、
前記第2のコンピュータを、自らの通信装置と、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御する遅延制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多人数同時参加のオンライン対戦ゲームや、音楽セッションなど、オンラインでの娯楽が普及し続けており、拠点間の遅延制御を活用した娯楽が今後普及すると予想される。こうしたオンラインでの娯楽において、通信の遅延時間が拠点により異なることは好ましくない。
【0003】
拠点間の遅延時間を特定の値に制御する単純な構成例について説明する。図11は、拠点A~Dの4つの拠点をフルメッシュで同一ケーブル長の通信ケーブルを敷設する構成例を示す図である。この構成例では、拠点間の距離が他の拠点間の距離と比較して短い場合には、通信ケーブルに余長を設ける必要がある。
【0004】
図12は、拠点間のケーブル本数を削減しつつ、遅延量を特定の値に制御する構成例を示す図である(特許文献1参照)。特許文献1には、リング型伝送路形態を持つ伝送装置などに関し、リング型伝送路の総中継遅延量を固定する技術が開示されている。具体的に、特許文献1は、以下の特徴を備える。すなわち、複数のノードがリング状に結線されてリング型伝送路が形成され、該リング型伝送路の各ノードは伝送フレームに多重化情報をそのフレーム位相をポインタで指し示して組み込んで下流ノードに伝送する。該複数のノードのうちの任意の一つまたは複数のノードがマスタノードとして選択され、該マスタノードはポインタ値を固定値にしてそのポインタ値に合わせて自ノード内での伝送フレームの遅延量を可変設定する。残りの他のノードは固定遅延ノードとなって自ノード内での伝送フレームの遅延量を固定値としてその固定値に合わせてポインタ値を可変設定するようにした。
【0005】
図12に示される構成において、多地点の遅延を全て一定に保とうとした場合、全拠点間で通信チャネルを確立するだけのリソースが必要となる。例として波長分割多重方式を用いる場合、拠点の組み合わせの数だけ波長を利用することとなる。図12のように、拠点数が4つで、通信の方向ごとに別波長を用いない場合には、4つの中から2つを選ぶ組み合わせの数が6通りであるため、6波長が必要となる。
【0006】
さらに、特許文献3には、Ethernet(登録商標)のネットワークにおけるスイッチングハブを用いて同期生成された複数のフローデータを多重伝送する際に、そのフローデータに対し個別に遅延制御して伝送するデータ伝送装置、データ生成装置及びデータ伝送システムが開示されている。特許文献3では、Ethernetのネットワークにおけるスイッチングハブを用いて同期生成された複数のフローデータを多重伝送する際に、そのフローデータに対し個別に遅延制御して伝送する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08-130550号公報
【特許文献2】特開2017-158163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11に示される構成例のように、同一ケーブル長の通信ケーブルを敷設することは可能ではあるが莫大な費用が必要となり、容易に実現できるものではない。また、図12に示されるような特許文献1に開示された構成において、必要となる波長は拠点数Nから2つを選択する組合せの数(N(N-1)/2)だけ必要となる。そのため必要となる波長は拠点数Nの2乗オーダーで増加することとなる。特許文献2に開示された構成では、拠点を跨る長距離伝送での遅延を固定できない。また、遅延挿入のためにバッファ用記憶装置が必要なため、トラヒック量が大きな環境での利用は困難である。
【0009】
このように、従来技術では、莫大な費用を要したり、波長数が拠点数Nの2乗のオーダーで必要となったり、さらに遅延時間を固定できないなど、遅延制御を好適に行うことが困難であった。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、遅延制御を好適に行うことが可能な技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、中継装置と、前記中継装置を介して互いに通信する複数の通信装置と、を備えた通信システムであって、前記中継装置は、いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行う中継部を備え、前記通信装置は、自らの通信装置と、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御する遅延制御部、を備えた通信システムである。
【0012】
本発明の一態様は、上記通信システムであって、前記遅延制御部は、各々の通信装置間で生じる遅延時間のうち、最大遅延時間を取得し、自らの通信装置と、通信先の通信装置との間で生じる装置間遅延時間を取得し、前記最大遅延時間、および前記装置間遅延時間にもとづき、通信先の通信装置との間の遅延時間が所定遅延時間となるように遅延時間を制御する。
【0013】
本発明の一態様は、上記通信システムであって、前記所定遅延時間は、前記最大遅延時間である。
【0014】
本発明の一態様は、中継装置と、前記中継装置を介して互いに通信する複数の通信装置と、を備えた通信システムにおける通信方法であって、前記中継装置は、いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行い、前記通信装置は、自らの通信装置と、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御する、通信方法である。
【0015】
本発明の一態様は、中継装置と、前記中継装置を介して互いに通信する複数の通信装置と、を備えた通信システムおいて前記中継装置を第1のコンピュータとして機能させ、前記通信装置を第2のコンピュータとして機能させるためのプログラムであって、前記第1のコンピュータを、いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行う中継部として機能させ、前記第2のコンピュータを、自らの通信装置と、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御する遅延制御部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、遅延制御を好適に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図2】遅延制御伝送装置202の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】送信元の端末から送信先の端末までの通信経路を示す図である。
図4】送信元の端末から送信先の端末までの通信経路を示す図である。
図5】拠点Aから拠点Bが通信する場合の経路などを示す図である。
図6】データの内容を示す図である。
図7】データの内容を示す図である。
図8】データの内容を示す図である。
図9】データの内容を示す図である。
図10】変形例を示す図である。
図11】拠点A~Dの4つの拠点をフルメッシュで同一ケーブル長の通信ケーブルを敷設する構成例を示す図である。
図12】拠点間のケーブル本数を削減しつつ、遅延量を特定の値に制御する構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態に係る通信システム10の構成例を示す図である。図1は、一例として4つの拠点A、B、C、Dに通信装置が設けられた構成例を示しているが、拠点は複数あればよく、4つに限定されるものではない。なお、拠点とは、通信装置が設置された例えば建造物である。例えば、拠点Aは京都にある建造物、拠点Bは広島にある建造物、拠点Cは松山にある建造物、拠点Dは福岡にある建造物などが挙げられる。また、後述する中継装置は、例えば大阪に設けられる。
【0019】
通信システム10は、中継装置100と、拠点Aに設けられた通信装置200A、拠点Bに設けられた通信装置200B、拠点Cに設けられた通信装置200C、および拠点Dに設けられた通信装置200Dを含む。以下の説明において、通信装置200A、200B、200C、200Dをそれぞれ区別しない場合には任意の1台を通信装置200と表現する。
【0020】
また、拠点Aには、端末210Aが設けられる。拠点Bには、端末210Bが設けられる。拠点Cには、端末210Cが設けられる。拠点Dには、端末210Dが設けられる。以下の説明において、端末210A、210B、210C、210Dをそれぞれ区別しない場合には任意の1台を端末210と表現する。端末210は、各拠点において、操作者が操作する端末である。操作者は、例えばオンラインゲームを操作する者や、オンラインの音楽セッションの演奏者など、オンラインによるサービスを享受する者である。なお、端末210は、各々の拠点で1台しか描かれていないが、1台以上であってもよい。
【0021】
以下の説明において、拠点を、端末210または通信装置200と便宜的に同一視した表現を行うことがある。例えば、拠点Aの通信装置200Aが拠点Bの通信装置200Bと通信することを、拠点Aと拠点Bが通信する、というように表現することがある。
【0022】
図1に示されるように、物理的な通信線は、拠点Aと中継装置100の間、中継装置100と拠点Bの間、拠点Bと拠点Dの間、拠点Dと拠点Cの間、拠点Cと拠点Aとの間に設けられる。そして、拠点Cは、拠点Aを介して中継装置100と通信する。拠点Dは、拠点Bを介して中継装置100と通信する。このように構成することで、通信システム10で必要となるチャネル数は、拠点数の数となる。よって、波長数は拠点数Nのオーダーで必要となるため、従来技術と比較してチャネル数を大幅に削減することができる。
【0023】
次に、中継装置100と通信装置200の構成について説明する。なお、実際の中継装置100と通信装置200には、本実施形態で説明される構成以外の構成も含まれる。本実施形態は、分散ルータ構成を用いた形態となっている。すなわち、中継装置100と通信装置200とでルータのコンポーネントを分散して備えた構成である。
【0024】
なお、図に示されるように、遅延制御伝送装置が、各々の通信装置200と中継装置100に設けられているが、これはあくまでも一例であり、基本的には通信経路上に1つあればよい。例えば、拠点Aと拠点Bが通信する場合には、拠点Aのみに遅延制御伝送装置が設けられていてもよいし、中継装置100のみに設けられていてもよい。
【0025】
中継装置100は、いずれの通信装置200間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行う。中継装置100は、ルータファブリック部110と、遅延制御伝送装置120とで構成される。遅延制御伝送装置120は、通信装置200から受信したデータをルータファブリック部110に出力し、ルータファブリック部110から出力されたデータを宛先の通信装置200に送信する。また遅延制御伝送装置120は、遅延時間の制御を行うことが可能である。
【0026】
ルータファブリック部110は、受信データに記載された宛先を表す識別子より出力ポートを判別し、遅延制御伝送装置120の宛先に対応するポートへ転送する。このとき、データをキューイングすることなく転送する。ルータファブリック部110において生じる遅延時間は、いずれの通信装置200間の中継を行う場合であっても一定である。また、遅延制御伝送装置120において生じる遅延時間も、いずれの通信装置200間の中継を行う場合であっても一定である。したがって、中継装置100は、いずれの通信装置200間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行う。以下の説明において、中継装置100で生じる遅延時間を中継遅延時間と表現する。ルータファブリック部110は中継部の一例である。
【0027】
通信装置200A、200B、200C、200Dは、それぞれルータ転送部201A、201B、201C、201D、および遅延制御伝送装置202A、202B、202C、202Dを備える。以下の説明において、ルータ転送部201A、201B、201C、201Dをそれぞれ区別しない場合には任意の1台をルータ転送部201と表現する。以下の説明において、ルータ転送部201A、201B、201C、201Dをそれぞれ区別しない場合には任意の1台をルータ転送部201と表現する。
【0028】
以下の説明では、一例として中継装置100の遅延制御伝送装置120では遅延時間を挿入せずに、送信側の通信装置200の遅延制御伝送装置202で遅延時間を挿入する例について説明する。
【0029】
ルータ転送部201は、中継装置100から受信したデータに記載されたポートを表す識別子をもとに、宛先の端末210に対応するポートにデータを出力する。遅延制御伝送装置202は、自らの通信装置200と、通信先の通信装置200との通信における遅延時間を可変制御する。具体的に、遅延制御伝送装置202は、自らの通信装置200と、通信先の通信装置200との通信における遅延時間が所定遅延時間となるように遅延時間を制御する。
【0030】
所定遅延時間は、各々の通信装置間で生じる遅延時間のうち、最大遅延時間であると、各々の通信装置間で生じる遅延時間は、いずれも最大遅延時間となるため、各々の通信装置間で生じる遅延時間を同じ時間とすることができる。さらに、最大遅延時間は、各々の通信装置間で生じる遅延時間を同じ時間とすることができる時間のうちで最小の時間である。
【0031】
遅延制御伝送装置202の処理について具体的に説明する。図2は、遅延制御伝送装置202の処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートは、通信装置200が最初に起動した時か、物理層の工事などで通信網の再構築が行われた時などに実行される。また、フローチャートにおける通信装置(i)とは、各通信装置を区別するためのインデックスを付したもので、通信装置200の台数が100台の場合には、i=1~100である。
【0032】
遅延制御伝送装置202は、全ての通信装置(i)との間で生じる遅延時間D(i)を取得する(ステップS201)。遅延時間は、例えばpingを用いて取得してもよい。次いで、遅延制御伝送装置202は、取得したD(i)の最大値を個別最大遅延時間mDとして、全ての通信装置(i)にmDを各通信装置200に送信する。この個別最大遅延時間とは、各通信装置(i)における遅延時間の最大値を示す。これは全ての通信装置200で実行されるため、遅延制御伝送装置202は、他の通信装置200における個別最大遅延時間mDを、各通信装置200ごとに取得する(ステップS203)。
【0033】
遅延制御伝送装置202は、個別最大遅延時間mDの最大値を最大遅延時間MDとして取得する(ステップS204)。最大遅延時間MDは、当然に全ての通信装置200で同じ値となる。遅延制御伝送装置202は、通信装置(i)と通信する場合の遅延時間をMD-D(i)とし(ステップS205)、処理を終了する。MD-D(i)は、例えばテーブルとして保持され、通信装置(i)と通信する場合に参照される。通信装置(i)と通信する場合の遅延はD(i)であるため、遅延時間をMD-D(i)とすることで、MD-D(i)+D(i)となり、D(i)がキャンセルされるため、遅延時間はMDとなる。
【0034】
なお、送信側の通信装置200の遅延制御伝送装置202だけではなく、中継装置100の遅延制御伝送装置120と受信側の通信装置200の遅延制御伝送装置202で遅延時間を挿入する場合には、以下のように遅延時間を挿入してもよい。すなわち、送信側の通信装置200の遅延制御伝送装置202で遅延時間(MD-D(i))/3を挿入し、中継装置100の遅延制御伝送装置120で遅延時間(MD-D(i))/3を挿入し、受信側の通信装置200の遅延制御伝送装置202で遅延時間(MD-D(i))/3を挿入する。基本的には、送信側の通信装置200で遅延時間を挿入するが、上述のように各遅延制御伝送装置で分けて遅延時間を挿入するようにしてもよい。
【0035】
図3図4は、送信元の端末210から送信先の端末210までの通信経路を示す図である。図3は、本実施形態での通信経路を示し、図4は従来技術での通信経路を示す。図3図4において、一例として拠点Aから拠点Bが通信する場合の図を示している。拠点Aの端末210Aから送信されたデータは、ルータ転送部201A、および遅延制御伝送装置202Aを介して中継装置100に送信される。中継装置100において、データは、遅延制御伝送装置120を介してルータファブリック部110において折り返し、再び遅延制御伝送装置120に戻り、拠点Bに送信される。拠点Bにおいて、データは遅延制御伝送装置202Bおよびルータ転送部201Bを介して端末210Bに送信される。
【0036】
一方、図4に示される従来技術では、遅延時間が変動する転送部が中継装置に含まれる。従来技術における転送部は、キューイングが発生するために遅延時間が変動する。さらに、従来技術では、拠点にルータ転送部が含まれるため、中継装置だけではなく拠点においても遅延時間が生じる。よって、本実施形態では、従来技術と比較して、遅延変動要素(転送部)の削減によって遅延時間が固定されるともに、遅延時間を減少させることもできる。なお、単にチャネル数を削減するだけであれば、中継装置に一般的なルータを設置することでも実現可能であるが、その場合、中継装置では転送部でキューイングが実施されるため、遅延が変動することとなる。
【0037】
次に、実際に送信されるデータの内容について説明する。図5は、一例として拠点Aから拠点Bが通信する場合の経路などを示す図である。拠点Aの端末210Aは、図6に示すように、送信データとして実データと、拠点Bの端末210BのIPアドレス宛のIPパケットを送信する。次いで、拠点Aのルータ転送部201は、図7に示すように、宛先IPアドレスをもとに、データの宛先が拠点Bの端末であると判断し、宛先拠点が拠点Bであることを表す識別子(図7に示される出力ポートと宛先拠点)を追加したデータフレームを送信する。なお、データの送信開始時に、ルータファブリック部110での転送時にデータが欠損することを防止するため、ルータファブリック部110において拠点Aから拠点Bへデータを転送するためのリソースを予約する。拠点Aの遅延制御伝送装置202Aにおいて、上述した遅延時間を挿入しつつ、中継装置100の遅延制御伝送装置120へデータを転送する。
【0038】
中継装置100の遅延制御伝送装置120は、ルータファブリック部110の拠点A用ポートへデータを転送する。転送先を拠点A用ポートと判断する方法は伝送装置の方式により異なるが、波長分割多重装置であれば入力光信号の波長をもとに判断可能である。中継装置100のルータファブリック部110は、データに記載された宛先拠点を表す識別子より出力ポートを判別し、遅延制御伝送装置120の拠点B用ポートへデータを転送する。この時、図8に示されるように、データから宛先拠点の識別子が削除される。
【0039】
中継装置100から拠点Bのルータ転送部201Bにデータが転送される。このとき、中継装置100の遅延制御伝送装置120や拠点Bの遅延制御伝送装置202が遅延時間を挿入する構成としてもよい。拠点Bのルータ転送部201Bは、図9に示されるように、データに記載された出力ポートを表す識別子をもとに、対応する端末用ポートからデータを出力する。このとき、データから出力ポートの識別子が削除される。
【0040】
図10は、変形例を示す図である。上述した実施形態において、各拠点では、伝送装置に遅延制御機能を持たせた遅延制御伝送装置を用いていたが、拠点における伝送装置の遅延時間が一定であれば、図10に示されるように、ルータ構成品として遅延制御部を持たせてもよい。
【0041】
この図10に示される構成も含め、中継装置100のルータファブリックで遅延時間を一定とさせ、遅延時間が一定にはならないものを拠点側に設ける構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、通信システム10で必要となる波長数は拠点数Nのオーダーで増加するため、従来技術と比較してチャネル数を大幅に削減することができる。また、図4に示されるように、従来技術では各拠点のルータ機に変動遅延時間が生じるルータ転送部が2つ設けられる。また従来技術の中継装置では、変動遅延時間が生じる転送部が設けられる。図4に示されるように、転送部には2度にわたりデータが通過する、したがって、従来技術では、拠点Aの端末から、拠点Bの端末まで、変動遅延時間が生じるポイントを6つも通過することとなる。
【0043】
一方、本実施形態では、図3に示されるように、ルータ転送部201でのみ変動遅延時間が生じる。したがって、本実施形態では、拠点Aの端末から、拠点Bの端末まで、変動遅延時間が生じるポイントを2つのみ通過することとなるので、その分の遅延時間を削減することができる。
【0044】
このように、中継装置100は、いずれの通信装置間の中継を行う場合であっても一定の中継遅延時間で中継を行い、また通信装置200は、通信先の通信装置との通信における遅延時間を可変制御することで、まず遅延時間が生じるポイントを削減できる。これにより、上記のように遅延時間を削減できる。
【0045】
さらに、図2のフローチャートで示したように、各々の通信装置間で生じる遅延時間のうち、最大遅延時間であると、各々の通信装置間で生じる遅延時間は、いずれも最大遅延時間となるため、各々の通信装置間で生じる遅延時間を同じ時間とすることができる。したがって、遅延時間を一律化できる。なお、遅延時間を挿入するためのバッファリングを行うことがないため、この点からも、より遅延時間を削減することができる。
【0046】
以上より、本実施形態によれば、従来技術と比較して、チャネル数を減少でき、遅延時間を削減でき、さらに遅延時間を一律化することができる。また、中継装置100と通信装置200とでルータのコンポーネントを分散して備えた構成とすることで、低コストで実現できる。なお、本実施形態における中継装置100と通信装置200とで論理的には1台のルータを構成していることとなる。
【0047】
なお、中継装置100ではなく通信装置200で遅延制御を行わせるメリットについて説明する。通信装置200は、全拠点間通信が集中する中継装置100と比較して、通信装置200におけるトラヒックは少量であるため、少量のバッファを備えた装置で遅延量を容易に固定値にすることが可能である。
【0048】
中継装置100、および通信装置200は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成されてもよい。この場合、中継装置100、および通信装置200は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、中継装置100、および通信装置200として機能する。なお、中継装置100、および通信装置200の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 通信システム
100 中継装置
110 ルータファブリック部
120 遅延制御伝送装置
200、200A、200B、200C、200D 通信装置
201、201A、201B、201C、201D ルータ転送部
202、202A、202B、202C、202D 遅延制御伝送装置
210、210A、210B、210C、210D 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12