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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065552
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】FC‐BGA基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/32 20060101AFI20240508BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240508BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L23/32 D
H01L23/12 Z
H05K3/06 E
H01L23/12 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174477
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒井 俊行
【テーマコード(参考)】
5E339
【Fターム(参考)】
5E339AB01
5E339AD03
5E339BB02
5E339BC02
5E339BD11
5E339BE12
5E339CC01
5E339CD01
5E339CE11
5E339CE12
5E339EE10
(57)【要約】
【課題】FC-BGA基板の製造において、従来の製造方法では困難であった数μm以下~サブミクロンの、ライン&スペース(L/S)やバンプピッチを実現しようとするものである。
【解決手段】本発明のFC-BGA基板の製造方法は、転写しようとする回路パターンが形成されたモールドを用意する工程、配線基板の表面導体層にレジストを塗布した後モールドを回路基板に密着させ、配線基板の表面導体層上に回路パターンを転写する工程、表面導体層を有機酸の気相エッチングにてエッチングを行う工程を含むことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写しようとする回路パターンが形成されたモールドを用意する工程、配線基板の表面導体層にレジストを塗布した後モールドを回路基板に密着させ、配線基板の表面導体層上に回路パターンを転写する工程、表面導体層を有機酸の気相エッチングにてエッチングを行う工程を含むことを特徴とするFC-BGA基板の製造方法。
【請求項2】
ガラスクロスを含むプリプレグのコア層、銅箔または銅めっきで製造された層を有する表面導体層、有機酸から基板を保護する保護膜層、モールドから転写を受けるレジスト層を具備するブランクを使用することを特徴とする請求項1に記載のFC-BGA基板の製造方法。
【請求項3】
配線層を銅とし、無機保護膜をマスクとする有機酸の気相エッチング法にて形成する請求項1に記載のFC-BGA基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器、コンピュータ、通信機器等に用いる銅の微細配線を備えるプリント配線基板の製造方法に係る。更には、プリント配線基板に、半導体パッケージを直接実装するインターポーザ基板であって、実装形態がフリップチップ実装に対応した、フリップ・チップ・ボール・グリッド・アレイ(FC-BGAと記する)基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の表面にはエッチングあるいはめっきによりパターンが形成されている。
【0003】
スマートフォンやパーソナルコンピュータなどに用いられる大規模集積回路(LSI)チップは、小型化薄型化と外部接続用端子を多くしたいという多ピン化の要求がある。
【0004】
LSIチップはスマートフォンやパーソナルコンピュータなどの機器に用いられる大型基板(マザーボード)には直接実装できないため、インターポーザ基板とよばれる基板に実装し、LSIパッケージとする必要がある。
【0005】
インターポーザ基板へのLSIチップの実装方法は、従来、ワイヤーボンド方式が主流ではあったが、上記の要求に対応するよう配置密度が高くできて、しかも、多ピンを同時に接合可能なボールグリッドアレイ配列が用いられるようになってきた。
【0006】
このボールグリッド配列は、実装時にLSIチップの端子面の向きがワイヤーボンド方式のときと逆(フリップ)となるため、フリップチップ実装とも呼ばれる。
【0007】
そして、このようなLSIチップの実装に対応するインターポーザ基板は、フリップチップ実装に対応したボールグリッドアレイ配列に対応可能な基板であるため、Frip Chip-Ball Grid Arrey(FC-BGA)基板と呼ばれている。
【0008】
FC-BGA基板は、半導体チップを実装する面とマザーボードに実装される面があり、
マザーボードに実装する面には、配線は100μmを超えるピッチとなっていて、配線形成は比較的容易であるのに対して、半導体チップの実装面の配線に関しては、50μm程度のあるいはそれ以下の微小なピッチになっていて、配線形成の難易度が高くなっている。
【0009】
また、FC-BGA基板は、配線形成が容易なマザーボードに実装する面から、微細でかつ、高密度な多層配線構造が要求される半導体チップを実装する面に配線が接続されていて、その配線はコア基板上に絶縁樹脂層(以下、ビルドアップ層)と配線層が交互に複数形成されたいわゆるビルドアップ構造を経由することで、マザーボードから半導体チップまで配線が接続されている。
【0010】
現在のFC-BGA基板は、前述した通りプリント配線板の製造技術及び製造設備で作成されており、微細化が求められる最表面の配線においても、ライン&スペース(L/S)がせいぜい10μm/10μm程度の微細化が限界である。
【0011】
製造方法として、レジストパターンを形成し、それをマスクとしてエッチングにより導
体の回路パターンを形成していくわけだが、レジストパターン形成時に使われる装置は、フィルムを基材としたフィルムマスクの密着等倍露光、より高精度なものであってもガラスを基材としたフォトマスクの等倍露光(等倍露光のアライナー装置)であってその露光最小寸法の限界はせいぜい数μm程度であり、レジストの解像度やその他プロセス上の誤差を勘案すると10μm程度が限界であり、いわゆる半導体前工程、すなわちLSIの回路製造で実現しているnmレベルのパターン製造に使われている縮小投影露光方式のステッパーや、フォトマスク/レチクル製造に使われている電子線露光装置は、コストや生産性の面から現実的ではなく使用されていない。
【0012】
また、そのあとの工程として、形成したレジストパターンをマスクにしてその下層の導体をエッチングする。エッチングはこの導体の層(銅などの金属)を溶かすエッチング液を用いて行う、いわゆるウエットエッチングにて導体パターンを形成する。
【0013】
ウエットエッチングでのパターン形成は、これも当業者には周知であるが、化学反応であるため、エッチングの速度は横方向と深さ方向は同じである等方性エッチングとなり、理論上導体の厚み以下のパターンは形成することができない。FC-BGA基板においては1層あたりおよそ15μmの厚みの銅配線層を形成する。したがって、15μm以下の幅のパターンは形成できないこととなり、エッチング時に高圧スプレーを使うなど特殊な方法を取ったとしてもせいぜい10μm幅程度しか形成できない。
【0014】
一方でサブミクロン~nmオーダを実現する半導体前工程のパターン形成で使用されるドライエッチング法及びその装置では、FC-BGA基板においては導体層厚が100μmを超えるため、エッチングに時間がかかり、生産性の面からその適応は現実的でない。
【0015】
このような中、プリント基板及びその製造法で作成されたFC-BGA基板での実現が困難なものは特許文献1に示すようなシリコンまたはガラスを基板としたインターポーザを介してLSIとFC-BGA基板間を接続するものが出てきたが、インターポーザは半導体前工程の設備と技術を使っており、製造コストが非常に高価であることと、ガラスやシリコンを基板とするために割れやすいなど取り扱いが難しく、一部の高価な高級品にとどまっているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4716819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
FC-BGA基板の製造において、従来の製造方法では困難であった数μm以下~サブミクロンのライン&スペース(L/S)や、バンプピッチを実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明は、転写しようとする回路パターンが形成されたモールドを用意する工程、配線基板の表面導体層にレジストを塗布した後モールドを回路基板に密着させ、配線基板の表面導体層上に回路パターンを転写する工程、表面導体層を有機酸の気相エッチングにてエッチングを行う工程を含むことを特徴とするFC-BGA基板の製造方法である。
【0019】
請求項2に記載の発明は、ガラスクロスを含むプリプレグのコア層、銅箔または銅めっきで製造された層を有する表面導体層、有機酸から基板を保護する保護膜層、モールドか
ら転写を受けるレジスト層を具備するブランクを使用することを特徴とする請求項1に記載のFC-BGA基板の製造方法である。
【0020】
請求項3に記載の発明は、配線層を銅とし、無機保護膜をマスクとする有機酸の気相エッチング法にて形成する請求項1に記載のFC-BGA基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る配線基板の製造方法によると、従来のFC-BGA基板の製造方法では得られなかった数μm以下~サブミクロンオーダーの微細度を持つ配線層を有するFC-BGA基板を廉価かつ簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程に使用するナノインプリントモールドの概略図である。
図2】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程のうち、ナノインプリントモールドの段差形状が押圧転写される基板の層構成を示す断面図の概略図である。
図3】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程のうち、パターン形成済みのナノインプリントモールドを表面に押し当てUV露光を行っていることを図示したものの概略図である。
図4】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程のうち、保護膜層のパターニング工程の概略図である。
図5】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程のうち、酸素プラズマ環境下に晒し銅を酸化する工程の概略図である。
図6】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程のうち、導体パターンである銅のエッチング工程の概略図である。
図7】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程のうち、残った保護膜をエッチングし除去する工程の概略図である。
図8】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程で得られたFC-BGA基板の要部の概略図である。
図9】本発明の実施形態に係るFC-BGA基板の製造方法における工程で得られたFC-BGA基板の概略図である
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明に係るFC-BGA基板の製造方法について説明する。
【0024】
図1は回路パターンと非回路パターンが段差となるように形成されたモールド1の断面図である。このモールド1を用意する工程について、説明する。
【0025】
本工程は、まず、平坦度の高いガラス基板にクロム、モリブデンなどの導電性金属の層を形成したフォトマスクブランク上に電子線により硬化するレジストの層を形成後、電子線描画装置にてFC-BGA基板に形成する配線の形状から生成したパターンデータに基づき、描画する。描画とは、当業者においては周知の工程ではあるが、電子線描画装置を用い、電子線をスキャンさせて電子線で硬化するレジストの層をパターン状に硬化させていくことである。描画後は電子線で硬化するレジストの層であって電子線を当てずに硬化しなかった部分を除去する現像を行う。
【0026】
現像後は、ドライエッチング装置にて塩素系ガスを用いて導電性金属層をエッチングし、次いで、導電性金属層がエッチングされて露出したガラス基板を所望の深さまでフッ素系ガスを用いたエッチングして除去する。そして、エッチング後は電子線に感度のあるレジストを全て剥離する。
【0027】
この際、表面に残っている導電性金属層は、残した状態であってもよく、除去してもよい。
【0028】
次に、FC-BGA基板100のビルドアップ層101を形成する手順について説明する。
【0029】
図2はモールド1の段差形状が押圧転写される基板の層構成を示す断面図である。
【0030】
ガラスクロスを含むプリプレグからなる平板状のコア層2と、コア層2の両面に、銅箔を積層、又は銅めっき法で析出させた導電層3、後述するプロセスにおいて有機酸から導電層3のうち配線となる部分を保護する保護膜層4、そして、モールド1の段差形状が押圧転写されるレジスト層5から形成される。
【0031】
図3に示すように、上記レジスト層形成済みのブランクに、所望の回路パターンが形成されたモールド1を押し当てパターンを転写し、UV光7をレジストが硬化するまで照射する。図3は一実施例としてパターン形成済みのモールドを表面に押し当てUV露光を行っていることを図示したものであり、モールドはガラスであるためUV光7を透過し、モールドの溝に充填されたレジストに到達し、レジストを硬化させる。
【0032】
次いで図4に示すようにブランクからモールドを剥離し、ブランク表面に残ったレジストパターン6をマスクにして保護膜層4のパターニングを行う。
【0033】
上記保護膜層4の材質は有機酸に対して強い耐性を持つことが求められることから、クロム、モリブデンシリサイド、酸化ケイ素、ニッケル、チタン等を使用することが望ましい。
【0034】
保護膜層4の形成方法として一般的な無機膜の製膜方法であればよく、例えば蒸着やスパッタリングあるいは無電解めっき等により形成し、ドライエッチング装置によりレジストパターン6をマスクにしてドライエッチングによるパターニングを行う。
【0035】
保護膜層4にシリコンを含む場合にはフッ素系、金属の場合には塩素系のガスを用いるなど材質毎に当業者において周知の方法でドライエッチングを行う。
【0036】
以上でパターニングされた保護膜と下地の表面導体層からなる基板が形成された。
【0037】
この状態で、ドライエッチング装置に再度投入し図5に示すように酸素プラズマ9環境下に晒し銅を酸化する。
この際、酸素プラズマ9は有機物を分解するため、同時に有機物であるレジストパターン6も除去される。
【0038】
銅の酸化処理まで行われた基板を気相反応槽に入れ図6に示すように導電層3に対し、導体パターンである銅のエッチングをおこなう。
【0039】
150℃~400℃に熱せられた有機酸蒸気10に暴露することで、有機酸蒸気が酸化された銅11を選択的にアタックすることで、酸化された銅11が分解し、結果的に異方性エッチングが行われる。
【0040】
この異方性エッチングを行うことで、モールドパターンから転写して得られた微細性を崩すことなくFC-BGAのブランク基板へ転写し、所望の微細パターンを有するFC-BGA基板を得ることができる。
【0041】
最後に図7に示すように残った保護膜4を前述のドライエッチング条件でエッチングし除去する。
【0042】
以上で図8に示すように、導電層3である銅とコア層2からなる、FC-BGA基板を得ることができる。この際、導電層3である銅、及びコア層2であるガラスクロスを含むプリプレグは、図7に記載の保護膜4であるクロム、モリブデンシリサイド、酸化ケイ素、ニッケル、チタン等と比してエッチング速度が極端に遅いため上記のように銅の導電層3とコア層2が残り、保護膜4のみが除去される。
【0043】
導電層3上にソルダーレジスト104を形成し、バンプ形成などの表面処理や断裁処理などを行うことでFC-BGA基板が完成する。
【0044】
なお、上記に示した方法を適応すれば、ビルドアップ工程毎に保護膜を繰り返し製膜することでコア層のみならず複数のビルドアップ層への微細パターンの転写が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・モールド
2・・・コア層
3・・・導電層
4・・・保護膜
5・・・レジスト層
6・・・レジストパターン
7・・・UV光
8・・・塩素系またはフッ素系プラズマ
9・・・酸素プラズマ
10・・・有機酸蒸気
11・・・酸化された銅
100・・・FCBGA基板
101・・・ビルドアップ層
102・・・FCバンプ
103・・・ボールパッド
104・・・ソルダーレジスト
105・・・スルーホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9