(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065555
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】高誘電ウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20240508BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20240508BHJP
C08G 18/69 20060101ALI20240508BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20240508BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240508BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240508BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240508BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240508BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240508BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20240508BHJP
H01B 3/30 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K3/24
C08G18/69
C08G18/62 004
C08G18/76
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/08 038
C08K3/22
C08K5/521
H01B3/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174480
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】391003624
【氏名又は名称】サンユレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】塚本 傑
(72)【発明者】
【氏名】三井 健司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 朋果
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
5G305
【Fターム(参考)】
4J002CK031
4J002CK041
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4J002DE078
4J002DE148
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4J034QA01
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4J034RA14
5G305AB09
5G305CA18
5G305CC02
5G305CC03
5G305CD01
5G305CD13
5G305CD17
5G305DA01
(57)【要約】
【課題】高周波での誘電率を高めることができる高誘電ウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ウレタン樹脂原料としてポリオールとイソシアネート、及び強誘電体フィラーとしてチタン酸系充填剤を含有する高誘電ウレタン樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂原料としてポリオールとイソシアネート、及び
強誘電体フィラーとしてチタン酸系充填剤
を含有する高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオールが、ポリオレフィン系ポリオール及び/又は水添ポリオレフィン系ポリオールである、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記イソシアネートが、芳香族系イソシアネートである、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記イソシアネートが、非芳香族系イソシアネートである、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記チタン酸系充填剤が、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸リチウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸カリウム及びチタン酸ジルコン酸鉛から選ばれる1つ又は2つ以上である、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記チタン酸系充填剤が、チタン酸バリウムである、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記チタン酸系充填剤の含量が、樹脂組成物中に45~80質量%である、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
周波数1GHzにおける誘電率が6以上である、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
周波数1GHzにおける誘電率が8以上である、請求項1に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
可塑剤及び無機充填剤(前記チタン酸系充填剤を除く)を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
前記可塑剤が、リン酸エステルである、請求項10に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項12】
前記可塑剤の含量が、樹脂組成物中に10~20質量%である、請求項10に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項13】
前記無機充填剤が、金属水酸化物である、請求項10に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項14】
前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムである、請求項13に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【請求項15】
前記無機充填剤の含量が、樹脂組成物中に2~20質量%である、請求項10に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリウレタンを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散するオイルとを含有するエラストマーであって、上記オイルがアルキル置換ジフェニルエーテルを含むエラストマーが開示されている。また、特許文献1には、誘電率を高めるために、上記マトリックス中にチタン酸バリウムを無機フィラーとしてさらに含有してもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のポリウレタンを主成分とするマトリックスを含有するエラストマーは、マトリックス中に分散するオイルを含有することを必須とするものであり、かつ低周波(1kHz)での誘電率を高め得るものにすぎない。
【0005】
本発明の目的は、高周波での誘電率を高めることができる高誘電ウレタン樹脂組成物を提供することである。なお、本発明における「高誘電」とは、周波数1GHzにおける誘電率(測定温度:23℃。以下、同じ)が4以上を意味し、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上、6以上、6.5以上、7以上、7.5以上、8以上、8.5以上、9以上、9.5以上又は10以上である。上限は特に限定されるものではないが、例えば、周波数1GHzにおける誘電率が15以下、14.5以下、14以下、13.5以下、13以下、12.5以下、12以下、11.5以下、11以下又は10.5以下である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の高誘電ウレタン樹脂組成物を提供する。
【0007】
本発明において、X(数値)~Y(数値)との記載は、特に明記していない限り、X以上Y以下を意味する。
【0008】
[1]ウレタン樹脂原料としてポリオールとイソシアネート、及び強誘電体フィラーとしてチタン酸系充填剤を含有する高誘電ウレタン樹脂組成物。
[2]前記ポリオールが、ポリオレフィン系ポリオール及び/又は水添ポリオレフィン系ポリオールである、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[3]前記イソシアネートが、芳香族系イソシアネートである、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[4]前記イソシアネートが、非芳香族系イソシアネートである、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[5]前記チタン酸系充填剤が、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸リチウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸カリウム及びチタン酸ジルコン酸鉛から選ばれる1つ又は2つ以上である、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[6]前記チタン酸系充填剤が、チタン酸バリウムである、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[7]前記チタン酸系充填剤の含量が、樹脂組成物中に45~80質量%である、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[8]周波数1GHzにおける誘電率が6以上である、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[9]周波数1GHzにおける誘電率が8以上である、前記[1]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[10]可塑剤及び無機充填剤(前記チタン酸系充填剤を除く)を含有する、前記[1]~[9]のいずれか1つに記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[11]前記可塑剤が、リン酸エステルである、前記[10]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[12]前記可塑剤の含量が、樹脂組成物中に10~20質量%である、前記[10]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[13]前記無機充填剤が、金属水酸化物である、前記[10]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[14]前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムである、前記[13]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
[15]前記無機充填剤の含量が、樹脂組成物中に2~20質量%である、前記[10]に記載の高誘電ウレタン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高周波での誘電率を高めることができる高誘電ウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
〔高誘電ウレタン樹脂組成物〕
本実施形態に係る高誘電ウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂原料としてポリオールとイソシアネート、及び強誘電体フィラーとしてチタン酸系充填剤を含有する。
【0012】
(ポリオール)
本実施形態において使用可能なポリオールとしては、ウレタン樹脂の製造において用いられる2個以上の水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系ポリオール、水添ポリオレフィン系ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールを挙げることができる。中でも、ポリオレフィン系ポリオール、水添ポリオレフィン系ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオールが好ましく、ポリオレフィン系ポリオール、水添ポリオレフィン系ポリオール、ポリエステル系ポリオールがより好ましく、ポリオレフィン系ポリオール、水添ポリオレフィン系ポリオールを使用することがさらに好ましい。ポリオールは1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられ、ポリブタジエンポリオールが好ましく用いられる。
上記ポリオレフィン系ポリオールを水素化した水添ポリオレフィン系ポリオールも好ましく用いられる。
【0014】
ポリブタジエンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、Poly bd(登録商標)(水酸基末端液状ポリブタジエン、出光興産株式会社)として販売されているR-45HT、R-15HT、POLYVEST(登録商標)(EVONIK)として販売されているPOLYVEST(登録商標)HT、NISSO-PB(日本曹達株式会社)として販売されているG-1000、G-2000、G-3000、Krasol(CRAY VALLEY)として販売されているLBH2000、LBH-P2000、LBH3000、LBH-P3000等が挙げられる。
水添ポリブタジエンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、NISSO-PB(日本曹達株式会社)として販売されているGI-1000、GI-2000、GI-3000、Krasol(CRAY VALLEY)として販売されているHLBH2000、HLBH-P3000等が挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、セバシン酸系ポリエステルポリオール、アジピン酸系ポリエステルポリオール等のポリオールとジカルボン酸等とのエステル化物、ダイマー酸とヒマシ油ポリオールとのエステル化物等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、URIC(伊藤製油株式会社)として販売されているURIC Hシリーズ(例えば、H-30、H-102、H-420)、URIC ACシリーズ(例えば、AC-005)、URIC Yシリーズ(例えば、Y-403、Y-406)等が挙げられる。
【0017】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ジオールのエーテル結合による重合体等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0018】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート類との重合体等が挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオールにおけるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオールにおけるカーボネート類としては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ホスゲン等が挙げられる。
【0019】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、デュラノール(旭化成株式会社)、ETERNACOLL(登録商標)UH、UHC、UC、UM、PH、UPシリーズ(宇部興産株式会社)として販売されているポリカーボネートジオール等が挙げられる。中でも、1,5-ペンタンジオールや1,6-ヘキサンジオールを主骨格に用いた単重合あるいは共重合のポリカーボネートジオールが挙げられ、カプロラクタン変性のポリカーボネートジオールであってよい。
【0020】
ポリオールの分子量は、反応性と作業性の観点から、ポリオールの数平均分子量として、100~10000が好ましく、200~5000がより好ましく、300~3000がさらに好ましい。当該範囲内で、数平均分子量は、500以上であってもよく、800以上であってもよい。
ポリオールの粘度は、25℃において、100Pa・s以下が好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。
ポリオールの水酸基価は、10~1000mgKOH/gが好ましく、20~500mgKOH/gがより好ましく、40~300mgKOH/gがさらに好ましい。
ポリオールの平均官能基数は、1以上6以下が好ましく、1.5以上5以下がより好ましく、2以上3以下がさらに好ましい。
ポリオールとしてポリブタジエンポリオールを用いる場合、ポリブタジエンポリオールのヨウ素価は、1~1000g/100gの範囲内が好ましく、5~500g/100gの範囲内がより好ましい。
ポリオールの分子量、粘度、水酸基価、平均官能基数、ヨウ素価は従来公知の方法により測定してもよいが、製品のカタログに記載の値であってもよい。
【0021】
本実施形態においてウレタン樹脂組成物中のポリオールの含有量は、10~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましく、10~25質量%であることが最も好ましい。
【0022】
(イソシアネート)
本実施形態において使用可能なイソシアネートとしては、ウレタン樹脂の製造において用いられるイソシアネート基を分子中に有する化合物、好ましくは分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。芳香族系イソシアネート及び非芳香族系イソシアネートのいずれも使用可能である。上記イソシアネートの変性体であってもよく、例えば、イソシアヌレート体、カルボジイミド体、アダクト体、ビウレット体、アロファネート体等が挙げられる。イソシアネートは1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
芳香族系イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられ、好ましくは2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートから誘導されるカルボジイミド基を有するポリイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が好ましく、例えば、東ソー株式会社製のミリオネート(登録商標)MTL等がある。
【0024】
非芳香族系イソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートであっても、脂環族ポリイソシアネートであってもよい。
【0025】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられ、好ましくは1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。また、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましく、例えば、イソシアヌレート変性1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導される末端にイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物が使用できる。具体例としては、旭化成工業株式会社製のデュラネート(登録商標)TPA-100、同TKA-100、同TSA-100、同TSS-100、同TSE-100、同TLA-100;住友バイエルウレタン株式会社製のデスモジュール(登録商標)N3390;日本ポリウレタン株式会社製のコロネート(登録商標)EH;武田薬品工業株式会社製のタケネートD170N;大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製のバーノック(登録商標)DN980等がある。
【0026】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物、HMDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物としては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を水添したポリイソシアネートが使用される。具体例としては、万華化学ジャパン製のWANNATE(登録商標)HMDI等がある。
【0027】
本実施形態においてウレタン樹脂組成物中のイソシアネートの含有量は、2~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、2~12質量%であることがさらに好ましく、2~8質量%であることが最も好ましい。
【0028】
本実施形態においてウレタン樹脂組成物中のポリオールとイソシアネートとからなるウレタン樹脂の含有量は、10~59質量%であることが好ましく、12~50質量%であることがより好ましく、13~45質量%であることがさらに好ましく、14~35質量%であることが最も好ましい。
【0029】
(チタン酸系充填剤)
本実施形態に係る高誘電ウレタン樹脂組成物は、強誘電体フィラーとしてチタン酸系充填剤を含有する。チタン酸系充填剤を強誘電体フィラーとしてウレタン樹脂組成物中に含有させることにより、ウレタン樹脂組成物において「高誘電」が達成できることを見出した。「高誘電」とは、前述の通り、周波数1GHzにおける誘電率が4以上であるが、好ましい実施形態によれば周波数1GHzにおける誘電率を6以上とすることができ、より好ましい実施形態によれば周波数1GHzにおける誘電率を7以上又は8以上とすることができ、さらに好ましい実施形態によれば周波数1GHzにおける誘電率を9以上とすることができ、最も好ましい実施形態によれば周波数1GHzにおける誘電率を10以上とすることができる。
【0030】
本実施形態において使用可能なチタン酸系充填剤としては、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸リチウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛を挙げることができる。これらから選ばれる1つ又は2つ以上を使用できる。特にチタン酸バリウムを使用することが好ましい。
【0031】
本実施形態においてウレタン樹脂組成物中のチタン酸系充填剤の含有量は、後述の可塑剤と無機充填剤を含有しない場合には、41質量%以上であることが好ましく、42質量%以上、43質量%以上、44質量%以上又は45質量%以上であることがより好ましく、46質量%以上、47質量%以上、48質量%以上、49質量%以上、50質量%以上、51質量%以上、52質量%以上、53質量%以上、54質量%以上、55質量%以上、56質量%以上、57質量%以上、58質量%以上、59質量%以上又は60質量%以上であることがさらに好ましく、61質量%以上、62質量%以上、63質量%以上、64質量%以上、65質量%以上、66質量%以上、67質量%以上、68質量%以上、69質量%以上又は70質量%以上であることが最も好ましい。チタン酸系充填剤の含有量の上限については、特に限定されるものではないが、85質量%以下、84質量%以下、83質量%以下、82質量%以下、81質量%以下、80質量%以下、79質量%以下、78質量%以下、77質量%以下、76質量%以下又は75質量%以下であることが好ましい。
後述の可塑剤と無機充填剤を含有する場合には、ウレタン樹脂組成物中のチタン酸系充填剤の含有量は、35質量%以上、36質量%以上、37量%以上、38量%以上、39量%以上、40量%以上又は41質量%以上であることが好ましい。より好ましい下限、さらに好ましい下限、最も好ましい下限、及び好ましい上限については、上記した後述の可塑剤と無機充填剤を含有しない場合と同様である。
上記の下限及び上限は任意に組み合わせが可能であり、例えば、ウレタン樹脂組成物中のチタン酸系充填剤の含量が、45~80質量%、50~75質量%、55~75質量%、又は60~75質量%であることが好ましい。
【0032】
(可塑剤と無機充填剤)
本実施形態に係る高誘電ウレタン樹脂組成物は、可塑剤及び無機充填剤(前述のチタン酸系充填剤を除く)を含有することが好ましい。これらを含有することにより、高誘電ウレタン樹脂組成物の誘電率を上昇させる及び/又は難燃性を向上させることができる。
【0033】
本実施形態において使用可能な可塑剤としては、誘電率を上昇させるとともに難燃性を向上させることができる点において、リン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。分子量140以上のリン酸エステルがより好ましい。
【0034】
リン酸エステル以外に使用可能な可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記の可塑剤を使用できる。
炭化水素系可塑剤としては、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素等が挙げられる。
ナフテン系炭化水素としては、分子中に少なくとも1つの飽和環を有していれば特に限定されないが、例えば、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
芳香族系炭化水素としては、分子中に少なくとも1つの芳香族環を有していれば特に限定されないが、具体的には、ダイアナプロセスオイルAC(460)、ダイアナプロセスオイルAH(16)(以上、出光興産株式会社)、JSO AROMA 790(日本サン石油株式会社)等が挙げられる。
パラフィン系炭化水素としては、ノルマルパラフィン系炭化水素であるかイソパラフィン系炭化水素であるかを問わず、例えば、イソプレン、ピペリレン、スチレン、ビニルトルエン、インデン、テルペン樹脂(α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン系)、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。
オレフィン系炭化水素としては、例えば、エチレンとα-オレフィンとのコオリゴマー、ポリ-α-オレフィン、水素添加型ポリ-α-オレフィン等が挙げられる。
エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ヒマシ油エステル系可塑剤、トリメット酸エステル系可塑剤、ピロリメット酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(フタル酸ジイソノニル)、ジウンデシルフタレート等が挙げられる。
アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート等が挙げられる。
ヒマシ油エステル系可塑剤としては、例えば、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、アセチル化リシノール酸トリグリセリド、アセチル化ポリリシノール酸トリグリセリド等が挙げられる。
トリメット酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート等が挙げられる。
ピロリメット酸エステル系可塑剤としては、例えば、テトラオクチルピロメリテート、テトライソノニルピロメリテート等が挙げられる。
可塑剤は、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本実施形態においてウレタン樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、10~20質量%であることが好ましく、10~18質量%であることがより好ましく、10~16質量%であることがさらに好ましく、10~15質量%であることが最も好ましい。
【0036】
本実施形態において使用可能な無機充填剤としては、難燃性を向上させるとともに誘電率を上昇させることができる点において、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化アルミニウムがより好ましい。特に、水酸化アルミニウムと、上記可塑剤としてのリン酸エステルとの組み合わせが最も好ましい。
【0037】
水酸化アルミニウムとしては、特に限定されないが、具体的には、B303(平均粒径23μm)、B153(平均粒径12μm)、B103(平均粒径7μm)、BF013(平均粒径1.3μm)(以上、日本軽金属株式会社)、C-310(平均粒径10μm)、C-301N(平均粒径1.5μm)(以上、住友化学株式会社)等が挙げられる。
【0038】
金属水酸化物以外に使用可能な無機充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記の無機充填剤を使用できる。
例えば、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属窒化物、ゼオライト、タルク、カーボンブラック、線維性フィラー等が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。
金属炭酸塩化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等が挙げられる。
金属窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。
ゼオライトとしては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の珪酸塩等が挙げられる。ゼオライト中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、リチウム等が挙げられる。
タルクとしては、特に限定されないが、具体的には、ミクロエース(登録商標)として販売されているSG-95、P-8、P-6、K-1、汎用タルクとして販売されているSWE、MS-K、MS-P、SSS、超微粉タルクとして販売されているSG-2000、SG-200、SG-200N15、NANO ACE(登録商標)として販売されているナノエースD-600、ナノエースD-800、ナノエースD-1000(以上、日本タルク株式会社)等が挙げられる。
繊維状フィラーとしては、例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバー等が挙げられる。
無機充填剤は、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本実施形態においてウレタン樹脂組成物中の無機充填剤の含有量は、2~20質量%であることが好ましく、2~18質量%であることがより好ましく、2~16質量%であることがさらに好ましく、2~14質量%であることが最も好ましい。
【0040】
(その他の成分)
本実施形態に係る高誘電ウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、金属水和物等の難燃剤、アンチモン等の難燃助剤、酸化防止剤、粘着付与剤、硬化促進剤、着色剤、鎖延長剤、架橋剤、フィラー、顔料、充填剤、ウレタン化触媒、紫外線吸収剤、水分吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を含むことができる。これらの成分の含有量は、その使用目的に応じて、ポリウレタン樹脂組成物の所望の特性を阻害することのないように、適宜決定すればよい。
【0041】
〔高誘電ウレタン樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態に係る高誘電ウレタン樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、上述の成分(材料)・組成・配合量・配合割合等で行なうこと以外は、ポリウレタン樹脂組成物を製造する方法として用いられる公知の方法に従って製造することができる。
【0042】
本実施形態に係る高誘電ウレタン樹脂組成物においては、ポリオールとイソシアネートとが一部又は全部反応してポリウレタン樹脂を形成していてもよい。すなわち、高誘電ウレタン樹脂組成物は、硬化前の液状であってもよく、又は硬化していてもよい。ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、材料を混合することにより、ポリオールとイソシアネートとが反応してポリウレタン樹脂となることにより、ポリウレタン樹脂組成物を経時的に硬化させる方法が挙げられるが、加熱により硬化させてもよい。この場合、加熱温度は40~120℃程度が好ましく、加熱時間は、0.5時間~24時間程度が好ましい。
【実施例0043】
本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
〔ウレタン樹脂組成物の材料〕
下記の各材料を使用した。
<ポリオール>
・ポリオレフィン系ポリオール(商品名:Poly bd(登録商標) R-15 HT、出光興産株式会社製)(以下、R-15HTと略記)
<ポリイソシアネート>
・芳香族系イソシアネート(商品名:ミリオネート(登録商標) MTL(カルボジイミド変性MDI)、東ソー株式会社製)(以下、MTLと略記)
・非芳香族系イソシアネート(商品名:デュラネート(登録商標) TPA-100(HDIイソシアヌレート変性体)、旭化成株式会社製)(以下、TPA-100と略記)
<チタン酸系充填剤>
・チタン酸バリウム(商品名:HPBT-1P、富士チタン株式会社製)(以下、HPTB-1Pと略記)
<可塑剤>
・リン酸エステル(商品名:TCP、大八化学工業株式会社製)(以下、TCPと略記)
・フタル酸エステル(商品名:DUP、新日本理化製)(以下、DUPと略記)
<無機充填剤>
・水酸化アルミニウム(商品名:水酸化アルミニウム BF013、日本軽金属株式会社製)(以下、BF013と略記)
【0045】
〔実施例1~18,比較例1~6〕
(ポリウレタン樹脂組成物の作製)
表1~3に示すポリイソシアネート以外の材料を各表に記載の配合量(配合割合)で自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで2分間混合した。混合後、各混合成分に各表に示す配合量(配合割合)のポリイソシアネートを添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで2分間混合した。得られた混合物を脱泡し、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0046】
(誘電率の測定)
<試験片の作製>
得られた各ポリウレタン樹脂組成物を100mm×100mm×1mmの成形用型に注型し、80℃で16時間加熱し、硬化させて試験体を得た。その試験体をカットし、誘電率測定用の試験片(1mm×8mm×1mm)を得た。
【0047】
<誘電率の測定方法>
空洞共振法により誘電率の測定を行った。測定器はアジレント・テクノロジー株式会社製のENAネットワークアナライザN5071Cを使用した。測定条件は、測定温度23℃、測定周波数1GHzとした。測定結果を表1~3に示す。
【0048】
(難燃性の評価)
<試験片の作製>
得られた各ポリウレタン樹脂組成物を140mm×100mm×3mmの成形用型に注型し、80℃で16時間加熱し、硬化させて試験体を得た。その試験体をカットし、難燃性試験用の試験片(125mm×13mm×3mm)を得た。
【0049】
<難燃性試験の方法>
米国のUnderwriters Laboratories.,Inc.の燃焼試験規格(UL94)に基づいて行った。下記評価基準に従って難燃性を評価した。実施例1~14及び比較例1~6の評価結果は×であった。実施例15~18の評価結果は表2に示す。
〇:V-0相当
△:V-2相当
×:HB相当
【0050】
可塑剤(TCP)及び水酸化アルミニウムを添加した実施例15~17は、難燃性が向上するとともに誘電率もこれらを添加しない場合(樹脂組成物中のチタン酸バリウムの含有量(質量%)が同じ実施例5)に比べて上昇した。一方、可塑剤(DUP)及び水酸化アルミニウムを添加した実施例18は、これらを添加しない場合(実施例5)に比べて誘電率は上昇したが、難燃性の評価は×のままであった。
【0051】
【0052】
【0053】