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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065558
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20240508BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61F13/494 111
A61F13/53 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174483
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 由美子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA12
3B200BA01
3B200BA02
3B200BA03
3B200BA06
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB09
3B200BB11
3B200BB17
3B200CA11
3B200CA15
3B200DA02
3B200DA03
3B200DA12
3B200DA14
3B200DC09
3B200DE01
3B200EA01
3B200EA07
3B200EA11
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】流速が遅い排出液の漏出を抑制する吸収性物品を提供する。
【解決手段】長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用者の腹部に対向する前身頃領域と、着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、前記吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置され、透水性を有するトップシートと、を、備え、前記股下領域と前記前身頃領域において、前記トップシートは、非肌面側に対向する部材と、仮接着されている、吸収性物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用者の腹部に対向する前身頃領域と、着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、
前記吸収体と、
前記吸収体の肌面側に配置され、透水性を有するトップシートと、
を、備え、
前記股下領域と前記前身頃領域において、前記トップシートは、非肌面側に対向する部材と、仮接着されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートの前記幅方向の両側に、前記長手方向に延在する非透水性の一対の防漏シートを有し、
前記一対の防漏シートの、
前記トップシートと重畳する範囲における前記幅方向の外側の一端は、前記トップシートの側と接着された固定端であり、前記幅方向の内側の一端は、肌面側に起立可能な自由端であり、
前記自由端には、弾性部材が伸張状態で貼り付けられており、
前記長手方向の外側において前記固定端と重なる位置にある前記トップシートは、吸収体側部材と仮接着されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記一対の防漏シートの前記固定端の前記幅方向の外側には、非透水性部が設けられている、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一対の防漏シートの前記固定端の前記幅方向の外側は、非透水性シートで覆われている、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記一対の防漏シートの前記固定端の前記幅方向の外側は、非透水性処理がなされている、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記非透水性部は、前記防漏シートと接着している、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記非透水性部は、前記吸収体と接着している、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記トップシートは、前記吸収体と接着する部位を有する、
請求項1~7のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、吸収性パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている。例えば、立体ギャザーの一部をトップシートと剥離可能に仮止めすることで、立体ギャザーの高さや幅を変更可能な吸収性パッドが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-207660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の需要者の一例である高齢者の排出液の量は加齢により減少し、排出頻度は加齢により増加する。そして、排出液の流速も、加齢や疾病により低下することがあることが知られている。一定量以上の排出液が健常者と同様の流速で吸収性物品に対して排出された場合、排出液は吸収性物品のトップシートを容易に通過して吸収コアに浸透し、吸収される。しかし、排出液の量が少なく、更に流速が遅い場合、排出液はトップシートに到達せず、着用者の肌面を伝って移動して吸収性物品の幅方向端部や長手方向端部に到達し、横漏れ、腹漏れ、背漏れなどを発生させることがある。
【0005】
本発明は、流速が遅い排出液の漏出を抑制する吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用者の腹部に対向する前身頃領域と、着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、前記吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置され、透水性を有するトップシートと、を、備え、前記股下領域と前記前身頃領域において、前記トップシートは、非肌面側に対向する部材と、仮接着されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流速が遅い排出液の漏出を抑制する吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの外観斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの断面図である。
図4図4は、トップシートが吸収体側から剥離した状態を示す断面図である。
図5図5は、第1の実施形態の一例に係る吸収性パッドの断面図である。
図6図6は、トップシートと吸収体の好適な接着強度についての検証結果を示す表である。
図7図7は、第2の実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。
図8図8は、応用実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0010】
<第1の実施形態>
本実施形態では、使い捨ての吸収性パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例である)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収性パッドが着用者に着用された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの外観斜視図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、下衣肌着の肌面側に配置することで単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。本実施形態に係る吸収性パッド1は、平面視において、股下領域1Bよりも前身頃領域1F、後身頃領域1R側の方が幅広な、平面視において、股下領域1Bがくびれた瓢箪形状を有している。また、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの横幅を比較すると、後身頃領域1R側の方が幅広である。この外形により、吸収性パッド1は、着用状態で、着用者の腹部と臀部に沿いやすくなる。なお、吸収性パッドの外形は略瓢箪型に限られず、例えば略長方形であってよい。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。吸収性パッド1は、着用状態における肌面側に配置されたトップシート8を備える。トップシート8は、吸収性パッド1の着用状態において着用者の肌に接する部分(肌対向面)であり、尿等の液体を透過する液透過性の材料で形成されている、透水性シートである。トップシート8には、織布、不織布、多孔性フィルム等が用いられる。なお、不織布には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理したものを用いてもよいし、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等を用いてもよい。
【0013】
吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収する吸収体6を備える。吸収体6は、着用者の排出した液体を吸収するために股下領域1Bを含んで配置されている。本実施形態において吸収体6は、吸収マットとして、トップシート8側に配置された上層吸収マット6Aと、非肌面側に配置された下層吸収マット6Bとを有する。上層吸収マット6Aは、平面視において、吸収性パッド1と同様に、瓢箪形状を有している。下層吸収マット6Bは、トップシート8側から見て上層吸収マット6Aの下方に配置されており、平面視において、吸収性パッド1の長手方向が長辺となる矩形状(長方形状)を有する。上層吸収マット6Aと下層吸収マット6Bは、各々の幅方向の中心が略一致するように厚み方向に積層されている。また、平面視において、上層吸収マット6Aは、下層吸収マット6Bよりも大きく形成されている。なお、吸収体6の長手方向は、上層吸収マット6A及び下層吸収マット6Bの長手方向及び吸収性パッド1の長手方向と一致している。
【0014】
吸収体の肌面側幅方向中央部には、吸収性パッド1の長手方向に延在する溝部6Hが設けられている。溝部6Hは、人体の正中線と対応している。排出された尿等の排出液は溝部6Hに流入し、溝部6Hを長手方向に移動して、吸収体6の長手方向広範囲で迅速に吸収される。このため、本実施形態に係る吸収性パッド1は、溝部6Hを備えることにより排出液を迅速に拡散させることができる。図示するように、溝部6Hは吸収体6の長手方向端部には達していない。このため、長手方向外側に移動した排出液は、吸収体6の長手方向端部までは達せずに溝部6Hの内側に留まり、順次吸収される。なお、溝部6Hは必須ではなく、設けないこともできる。
【0015】
吸収体6の非肌面側には、吸収体6と略同一形状のバックシート5が設けられている。バックシート5は、吸収体6に流入した排出液の漏れを抑制するためにポリエチレンフィルム等の熱可塑性の液体不透過性の樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せ持つ材料で構成されていてもよい。
【0016】
なお、トップシート8と吸収体6との間には、別途図示しない中間シート(セカンドシート)を設けることもできる。中間シートを設ける場合、中間シートとしてはトップシート8と同様の素材を用いることができる。また、液透過性と親水性を有するパルプ繊維や不織布などの素材を用いてもよい。
【0017】
バックシート5の更に非肌面側には、カバーシート4が設けられている。カバーシート4は、吸収性パッド1の外装面を形成し、併用されるおむつや肌着等との摩擦に耐え得る剛性を有している。カバーシート4には、一般的にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維で構成された不織布が用いられる。カバーシート4は、液透過性であってもよく、液不透過性を有していてもよい。バックシート5が透湿性を有している場合、カバーシート4も透湿性を有することが望ましい。
【0018】
カバーシート4の更に非肌面側の一部には、止着テープが設けられていてよい。止着テープは粘着性を有するテープであり、着用者が動き回るなどしておむつや下衣肌着等と吸収性パッド1とがずれて、吸収性パッド1の機能が損なわれるのを防ぐ。なお、止着テープを設けずに、カバーシート4として、非肌面側の摩擦係数が大きい部材を採用し、おむつ等とのずれを抑制して良い。また、カバーシート4の非肌面側にホットメルト接着剤を塗布する等の滑り止め加工を施してもよい。
【0019】
また、吸収性パッド1は、吸収性パッド1の幅方向の両側の肌面側に配置され、長手方向に沿って延在する非透水性の、一対のサイドシート9L,9Rを備える。サイドシート9L,9Rは、長手方向の端部がトップシート8の長手方向の端部と合うように配置されている。サイドシート9L,9Rは、幅方向外側に配置された固定端部9LA,9RAを有する。固定端部9LA,9RAは、その非肌面側(下層)に配置された部材であるトップシート8、吸収体6、バックシート5と、ホットメルト等の接着剤によって接着されている。また、上層吸収マット6Aは、トップシート8よりも幅広な寸法で形成されており、上層吸収マット6Aの幅方向の端部は、トップシート8に重ならず、サイドシート9L,9Rの固定端部9LA,9RAと重なって固定端部9LA,9RAに接着されている。本実施形態では、吸収体6の上層吸収マット6A上に配置される固定端部9LA,9RAの非肌面側の全面が上層吸収マット6Aと、ホットメルト等の接着剤によって接着されている。サイドシート9L,9Rは、本開示における一対の防漏シートの一例である。
【0020】
また、サイドシート9L,9Rは、各々その幅方向内側の一端に配置された自由端部9LB,9RBを有している。自由端部9LB,9RBには、糸状弾性部材である糸ゴム3BL,3BRが、吸収性パッド1の長手方向に伸張状態で貼り付けられて配置されている
。長手方向端部近傍では、自由端部9LB,9RBは、トップシート8側と接着されているが、長手方向内側において、自由端部9LB,9RBは、吸収性パッド1のいずれの部位にも接合されておらず、肌面側に起立可能である。自由端部9LB,9RBは、糸ゴム3BL,3BRが収縮することによって、固定端部9LA,9RAの幅方向内側を起立端として肌面側に起立し、立体ギャザー3L,3Rが形成される。起立した立体ギャザー3L,3Rは、当該立体ギャザー3L,3Rの幅方向外側への排出液の移動を阻害し、液体の横漏れを抑制する。
【0021】
また平面視において自由端部9LB,9RBよりも幅方向の外側(立体ギャザー3L,3Rの起立線の幅方向の外側)に延在する領域が耳部10L、10Rである。本実施形態では、耳部10L,10Rは、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rに亘って形成されており、股下領域1Bよりも前身頃領域1F及び後身頃領域1Rの方が幅広に形成されている。また、上層吸収マット6Aは、自由端部9LB,9RBの幅方向の外側を含んで配置されており、下層吸収マット6Bは、自由端部9LB,9RBの幅方向の内側に配置されている。吸収性パッド1は、耳部10L、10Rにおけるクッション性を高めつつ、上層吸収マット6Aを大きく形成することで液体の吸収量を大きくすることができる。なお、耳部10L,10Rは、前身頃領域1F又は後身頃領域1Rのいずれか一方に形成されていてもよい。
【0022】
サイドシート9L,9Rの固定端部9LA,9RAの非肌面側の一部分には、吸収体6が延在している。このため、サイドシート9L,9Rと、吸収体6は、立体ギャザー3L,3Rのみならず、固定端部9LA,9RAにおいても重畳しており、当該重畳部分において吸収体6が吸水することがある。サイドシート9L,9Rは、非透水性を有してはいるものの、その耐水性はバックシート5ほど高くない。サイドシート9L,9Rとの重畳部分において吸収体6が吸水している状態で当該部分に体圧がかかると、吸収体6に一旦吸収された液体がサイドシート9L,9Rの表面から染み出すことがある。立体ギャザー3L,3Rの幅方向外側において液体が染み出した場合、吸収性物品の側面部分からの液漏れに繋がる。このような液漏れを防ぐために、耳部10L,10Rの肌面側に疎水性のシート部材を更に積層することも考えられるが、吸収性物品の部品(部材)点数が多くなり、製造コストが上昇する。また、疎水性のシート部材によって、着用者に違和感を与える虞もある。
【0023】
そこで、本実施形態に係る吸収性パッド1では、固定端部9LA,9RAの非肌面側の全面が、吸収体6と、ホットメルト接着剤等の非透水性の接着剤によって接着されている。接着剤を塗布することによって固定端部9LA,9RAを吸収体6に対して固定しつつ、固定端部9LA,9RAの耐水性を強化することができる。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、立体ギャザー3L,3R(自由端部9LB,9RB)の幅方向の外側から一旦吸収体6に吸収された液体が肌面側に漏れ出すのを抑制できるため、別途漏れ防止部材を設け、着用感を低下させることなく、耳部10L,10Rからの液体の漏れを抑制できる。固定端部9LA,9RAの非肌面側の全面と吸収体6とを接着する非透水性の接着剤は、本願でいう「非透水性部」の一例である。
【0024】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体6上に配置される固定端部9LA,9RAの非肌面側の全面が吸収体6の上層吸収マット6Aと接着剤によって接着されているため、サイドシート9L,9Rの固定端部9LA,9RAと上層吸収マット6Aが強固に接着するので、上層吸収マット6Aを割れ難くすることができる。また、固定端部9LA,9RAの幅方向の端部と非肌面側シートとは、接着剤によって接着されている。吸収性パッド1は、サイドシート9L,9Rと、吸収体6よりも非肌面側に配置されたシート部材が接着することで吸収体6の位置を固定できるため、吸収体6の型崩れを抑制できる。
【0025】
上層吸収マット6Aは、自由端部9LB,9RBの幅方向の外側を含んで配置されており、下層吸収マット6Bは、自由端部9LB,9RBの幅方向の内側に配置されている。この構成によれば、上層吸収マット6A内の尿を下層吸収マット6Bが吸収、保持し、下層吸収マット6Bの幅方向の端部は立体ギャザー3L,3Rの内側(範囲内)にあるため、下層吸収マット6Bから尿等の排出液が絞り出されたとしてもその肌面側には上層吸収マット6Aが配置され、さらにその幅方向の外側には立体ギャザー3L,3Rも配置されているため、吸収性パッド1と着用者の肌との間に形成される空間からの液体の漏れを抑制できる。また、この構成によれば、自由端部9LB,9RBの幅方向の外側(耳部10L,10R)に尿を到達し難くし、下層吸収マット6Bの幅方向の端部から尿が絞り出されたとしても当該端部の周囲にある上層吸収マット6Aでこの尿を吸収、保持でき、更に、上層吸収マット6A上に配置される固定端部9LA,9RAの非肌面側の全面が上層吸収マット6Aと接着剤によって接着されているため、自由端部9LB,9RBの幅方向の外側からの液体の漏れを抑制できる。
【0026】
図3は、第1の実施形態に係る吸収性パッドの断面図である。より具体的には、吸収性パッド中央部を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。以下に示す断面図では、吸収性パッド1の内部構造を分かりやすくするため、各構造の厚みを強調しているが、実際には吸収性パッド1は非常に薄いものである。吸収体6は、吸収コア6Cと、当該吸収コア6Cを覆うコアラップシート7とを有している。吸収コア6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸水材)を保持させた構造を有している。
【0027】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。SAP粒子は、自重の10~100倍程度(一例として、本実施形態では、60倍)の液体を吸収することができる。SAP粒子には、例えば、液体吸収前の状態において0.1~0.5mm程度の直径を有する粒状のものが用いられてよい。
【0028】
SAP粒子はゲル化して水分を保持できる反面、吸収には一定の時間がかかる。このため、SAP粒子が水分を吸収するまでの間、短繊維が排出液を減速させながら吸収コア6C内部で拡散させ、広範囲のSAP粒子に排出液を吸収させることで逆戻りを抑制する。
【0029】
本実施形態では、吸収コア6Cは、上層吸収マット6Aと、下層吸収マット6Bの2層構造を有している。上層吸収マット6Aは、全延在領域において、下層吸収マット6Bよりも幅広であり、肌面側から観察した場合、下層吸収マット6Bは、上層吸収マット6Aの幅方向内側に収まる。上層吸収マット6Aは略瓢箪型の外形を有しており、前身頃領域1F,後身頃領域1Rでは、起立線3LL,3RLの幅方向外側にまで延在している。このため、前身頃領域1F,後身頃領域1Rでは、上層吸収マット6Aは立体ギャザー3L,3Rの幅方向外側にまで延在する。一方、股下領域1Bでは、上層吸収マット6Aは幅方向に括れており、その端部は立体ギャザー3L,3Rの起立線3LL,3LRの内側に収まっている。
【0030】
SAP粒子は、上層吸収マット6Aまたは下層吸収マット6Bのうちのいずれかに偏って配置されていてよい。一例としては、SAP粒子は上層吸収マット6Aのみに配置され
ており、下層吸収マット6Bには配置しないことができる。この場合、下層吸収マット6Bは、短繊維のみからなり、流入した排出液が上層吸収マット6Aに含まれるSAP粒子によって吸収されるまでの間、排出液を保持し、拡散させ、逆戻りを抑制する役割を果たす。なお、上層吸収マット6Aと下層吸収マット6Bの間にSAP粒子からなる層を配置し、これをSAP層としてもよい。SAP層を設ける場合、当該SAP層は、着用者の尿道口近傍等の排出液が比較的多く吸収される可能性が高い位置に配置されてよい。SAP層を構成するSAP粒子は、上層吸収マット6Aまたは下層吸収マット6Bに、ホットメルト等の接着剤により仮接着されていてもよい。
【0031】
上層吸収マット6Aには、溝部6Hが設けられている。図3に示す形態では、溝部6Hは上層吸収マット6Aを貫通する貫通溝となっている。このため、吸収性パッド1の長手方向中央部では、上層吸収マット6Aは、溝部6Hによって幅方向左右に分かれている。なお、幅方向中央部において、上層吸収マット6Aを圧搾して肉薄にすることで溝部6Hを形成してもよい。
【0032】
平面視において、溝部6Hは、前後の両端が円弧状に形成された長方形状を有する。溝部6Hの前側の端部は、前身頃領域1Fの中程に位置し、溝部6Hの後側の端部は、後身頃領域1Rの前部に位置している。また、溝部6Hは、一定の幅を有している。例えば、当該幅は、20mm以上35mm以下である。また、溝部6Hの長さは、245mm以上355mm以下である。このサイズの溝部6Hを備えた吸収性パッド1は、大人用に適している。なお、溝部6Hは、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0033】
また、吸収性パッド1における溝部6Hの延在範囲には、着用者の尿道口に対応する尿道口対応領域UOが存在している。尿道口対応領域UOは、着用者の尿道口に対応し、排尿がなされる位置に対応する位置である。図2では、着用者の尿道口と直接対応する位置の例を+で示し、その周囲を〇で囲んだ領域を尿道口対応領域UOとしている。なお、尿道口の位置は着用状態や着用者の性別によって大きく異なるため、特に長手方向においてその位置は厳密なものではない。
【0034】
溝部6Hは、着用者から発生した尿が流入しやすいように、尿道口対応領域UOを含んで形成されている。吸収性パッド1を平面視した場合、尿道口対応領域UOは、一例としては、上層吸収マット6Aの後側端部から前方に上層吸収マット6Aの長手方向の長さの60%の位置に規定される。例えば、上層吸収マット6Aの長手方向の長さが500mmである場合、上層吸収マット6Aの後側端部から前方に300mmの位置の近傍が尿道口対応領域UOとして規定される。
【0035】
着用者から発生した尿等の液体は、溝部6Hを流れて拡散する。また、上層吸収マット6A上に排泄された尿等の液体を、溝部6Hを介して下層吸収マット6Bに導くことができる。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収マット6A及び下層吸収マット6Bを有する吸収体6によって、液体を効果的に吸収することができる。また、溝部6Hの延在範囲が尿道口対応領域UOを含んでいることで、排出液が発生した際にも、着用者の尿道口近傍の湿潤状態は速やかに解消される。このため、着用者は不快感を覚えにくい。
【0036】
本実施形態に係る吸収体6は、コアラップシート7を備えている。コアラップシート7は、吸収体6の外側面を覆う透水性のシートであって、より具体的には、吸収体6の肌面側、非肌面側、側面側を覆っている。コアラップシート7は、薄手のパルプ繊維からなるシートであり、一例としては、ティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、排出液に触れていない状態で、複数の吸収マットから構成される吸収コア6C
の形状を保護して型崩れを防止し、吸収マットに含まれるSAP粒子の逸脱を防止する機能を有している。SAP粒子は吸収性パッド1がその機能を適切に発揮できるように配置されており、配置位置から逸脱すると吸収性パッド1がその機能を適切に発揮できなくなる。また、水分を吸収していない状態のSAP粒子は硬い砂粒状であり、逸脱した水分を吸収していない状態のSAP粒子が着用者の肌面に直接触れると、着用者に対して違和感を与える虞がある。このため、吸収コア6Cをコアラップシート7で包み込み、吸収コア6Cの型崩れを防止し、SAP粒子の逸脱を防止している。
【0037】
前述の通り、吸収コア6Cは、その肌面側に、溝部6Hを備えている。そして、トップシート8は、溝部6Hの内側に落ち込まないように構成されている。また、コアラップシート7も、その肌面側において、溝部6Hの内部に落ち込まないように構成されている。
【0038】
コアラップシート7は、1枚であってよい。また、吸収コア6Cとトップシート8との間に配置される上層コアラップシート7Aと、吸収コア6Cの非肌面側に配置され、吸収コア6Cの側面を覆い、更に上層コアラップシート7Aの幅方向外側を覆う下層コアラップシート7Bの2枚のシートから形成されていてもよい。コアラップシート7は、パルプ繊維シートや薄手の不織布などにより形成することができ、一例としてはティッシュペーパーによって形成される。なお、コアラップシート7を2枚のシートから形成する場合、上層コアラップシート7Aと下層コアラップシート7Bを別素材から形成することもできる。一例としては、上層コアラップシート7Aをパルプ繊維シートとし、下層コアラップシートは樹脂製の不織布とすることができる。
【0039】
本実施形態では、トップシート8と吸収体6の肌面側との間には、ホットメルト接着剤HMが、長手方向に間欠的に、幅方向に一定の間隔を空けて複数塗布されている。当該ホットメルト接着剤HMの接着力は、少なくとも、尿道口対応領域UOにおいて弱くなっている。尿道口対応領域UOにおいて、トップシート8と吸収体6は仮接着状態になっている。仮接着状態とは、吸収性パッド1を破るなどの破壊をすることなく、トップシート8を吸収体6から引き剥がせる程度の強さの接着状態をいう。仮接着状態は、ホットメルト接着剤HMの配置位置を調整したり、ホットメルト接着剤HMの性能や塗布量を調整したりするなどして形成できる。トップシート8と吸収体6の仮接着部分は、製造工程や流通状態などの、仮接着部分に比較的弱い摩擦力しかかからない状態では剥離しない。その一方、トップシート8と吸収体6の仮接着部分は、着用時に吸収性パッド1にかかる比較的強い摩擦力や、最初の排出液流入に伴う刺激によって、自然に剥離する。
【0040】
図4は、トップシートが吸収体側から剥離した状態を示す断面図である。吸収体6の肌面側、特に尿道口対応領域UOにおいて、吸収体6とトップシート8は仮接着状態であるため、トップシート8は、少なくともその一部が吸収体6から容易に剥離する状態になっている。尿道口対応領域UOにおいて、トップシート8は、吸収性パッド1着用時の刺激、または最初の排出液流入の刺激により、吸収体6から剥離する。吸収体6から剥離したトップシート8は、尿道口対応領域UOにおいて着用者の肌面と当接している状態となる。着用者の尿道口から発生した排出液の量が少なく流速が遅い場合、一例としては明確な水流を伴わず、尿道口から染み出すような形で発生した場合には、仮に吸収性物品が正しく着用されていたとしても、排出液がトップシート8に到達せず、着用者の体表を流れて吸収体6に吸収されないことがある。本実施形態では、尿道口対応領域UOにおいて、トップシート8は吸収体6から剥離し、着用者の体表と、尿道口近傍で当接する。剥離したトップシート8と着用者の体表は、尿道口近傍で当接しているため、排出液の流速が遅い場合でも、発生した排出液は、着用者の体表ではなく、吸収体6から剥離したトップシート8に伝って移動し、尿道口対応領域UOの周囲に拡散する。図4では、排出液の流動方向を矢印Fで示している。
【0041】
このように、尿道口対応領域UOにおいて吸収体6とトップシート8とを仮接着状態とすることで、着用者の尿道口から発生した排出液が、着用者の肌面ではなく、トップシート8の上を拡散しやすくすることができる。本実施形態に係る吸収性パッド1では、排出液が着用者の体表を流れて、吸収体6に吸収されずに外部に移動して腹漏れ、背漏れ、横漏れを発生させる可能性を低減できる。
【0042】
また、トップシート8の幅方向外側には非透水性のサイドシート9L,9Rが配置されており、サイドシート9L,9Rの幅方向内側には立体ギャザー3L,3Rが形成されている。立体ギャザー3L,3Rの幅方向外側には固定端部9LA,9RAが存在し、幅方向内側には、自由端部9LB,9RBが存在する。立体ギャザー3L,3Rの自由端部9LB,9RB側の幅方向内側端部付近には、長手方向に延在する糸ゴム3BL,3BRが、伸張状態で配置されている。そして、固定端部9LA,9RAと自由端部9LB,9RBとの間には、起立線3LL,3RLが存在している。起立線3LL,3RLの非肌面側には、吸収体6が延在している。そして、自由端部9LB,9RBと対応する位置、そして起立線3LL,3RL近傍において、トップシート8と、吸収体側部材である吸収体6とは、仮接着となっている。
【0043】
着用状態において、自由端部9LB,9RBは、糸ゴム3BL,3BRの付勢力を受けて肌面側に立ち上がり、立体ギャザー3L,3Rを形成する。自由端部9LB,9RBと対応する位置、また、起立線3LL,3RL近傍において、トップシート8と吸収体6は剥離する。吸収体6の剛性が高いため、サイドシート9L,9Rが、起立線3LL,3RL近傍でトップシート8を介して吸収体6と接着されていると、立体ギャザー3L,3Rの立ち上がりが吸収体6の剛性により抑制される可能性があるが、本実施形態の吸収性パッド1では、起立線3LL,3RL部分でもトップシート8と吸収体6が剥離するため、立体ギャザー3L,3Rの自由端部9LB,9RBは着用者の肌面側に立ち上がりやすくなる。このため、排出液が着用者の肌面を伝って吸収性パッド1の幅方向外側に向けて移動してきた際に、立体ギャザー3L,3Rの自由端部9LB,9RBが排出液の幅方向外側への移動を的確に抑止し、横漏れを抑制するする可能性が上昇する。
【0044】
自由端部9LB,9RBによって移動を阻害された排出液は、立体ギャザー3L,3Rとトップシート8との間に形成された袋状の空間である横漏れ防止空間SOに落ち込み、トップシート8を順次透過して吸収体6側に移動し、吸収体6に吸収される。仮に排出液が、尿道口近傍で着用者の体表と当接しているトップシート8に流入せず、着用者の肌面を伝って吸収性パッド1の側面に向かって移動する場合でも、排出液は、立ち上がりやすいために着用者の肌面と当接しやすい立体ギャザー3L,3Rに当接して幅方向外側への移動を阻害されて吸収体6側に移動する。当該排出液は、立体ギャザー3L,3Rと吸収体6との間に形成される空間に落ち込んで吸収体6に吸収される。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1では、尿道口対応領域UOにおいて、着用者の尿道口に当接しやすいトップシート8と、立ち上がりやすい立体ギャザー3L,3Rを備えることにより、排出液が肌面側を伝って移動しやすい場合にも、吸収体6側に誘導して吸収させることができる。このため、本実施形態に係る吸収性パッド1は、排出液の漏出を効果的に抑制可能である。
【0045】
図5は、実施形態1の一例に係る吸収性パッドの断面図である。サイドシート9L,9Rの固定端部9LA,9RAの非肌面側の一部分には、吸収体6が延在している。固定端部9LA,9RAと、吸収体6とは、接着されていてよい。サイドシート9L,9Rと吸収体6は、立体ギャザー3L,3Rのみならず、固定端部9LA,9RAにおいても重畳している。特に、立体ギャザー3L,3R部分が排出液の幅方向への移動を抑制した場合には、吸収体6とサイドシート9L,9Rの重畳部分である固定端部9LA,9RAの非肌面側において、吸収体6が排出液を吸水することがある。本実施形態に係る吸収性パッ
ド1では、尿道口対応領域UOにおいてトップシート8が吸収体6から剥離して、着用者の肌面と当接する。本実施形態に係る吸収性パッド1では、排出液は主にトップシート8を伝って幅方向外側に移動して、立体ギャザー3L,3Rとトップシート8との間に形成された袋状の空間の内部に流入し、当該空間近傍の吸収体6に順次吸収されることになる。このため、本実施形態に係る吸収性パッド1が有する吸収体6は、立体ギャザー3L,3R近傍において、一般的なおむつよりもより多くの排出液を吸収し得る。その一方、吸収体6の幅方向端部側は、幅方向中央側と比べると着用者の臀部に近く、体圧がかかりやすい部位である。サイドシート9L,9Rは非透水性を有してはいるものの、その耐水性はバックシート5ほど高くはない。
【0046】
このため、実施形態1に係る吸収性パッド1では、吸収体6の幅方向端部近傍においてより多く吸収されている排出液が、体圧などの荷重がサイドシート9L,9Rにかかった場合に、サイドシート9L,9Rを透過して肌面側に染み出す可能性が生じやすくなる。この問題を解決するため、例えば、固定端部9LA,9RAの肌面側に、非透水性のシート11L,11Rを配置することができる。固定端部9LA,9RAを覆うように非透水性のシート11L,11Rを更に配置することにより、サイドシート9L,9Rの表面からの液体の染み出しをより強力に抑制可能である。サイドシート9L,9Rと、非透水性のシート11L,11Rは、共に非透水性であり、本開示における非透水性シートの一例である。また、非透水性のシート11L,11Rは、本願でいう「非透水性部」の一例である。
【0047】
非透水性のシート11L,11Rは、図5に示すようにサイドシート9L,9Rの肌面側に配置することもできるが、サイドシート9L,9Rの非肌面側と吸収体6の肌面側との間に配置することもできる。図5に示すように非透水性のシートをサイドシート9L,9Rの肌面側に配置した場合、非透水性のシート11L,11Rが着用者の肌面と当接するため、非透水性のシート11L,11Rの材質によっては、着用者は違和感を覚える可能性があるが、非透水性のシートをサイドシート9L,9Rの非肌面側と吸収体6との間に配置すれば、この問題を解決可能である。なお、図5に示すように非透水性のシート11L,11Rをサイドシート9L,9Rの肌面側に配置する場合、非透水性のシートの肌面側に肌に馴染みやすいように加工を施すことにより、着用者に与える可能性がある違和感を低減可能である。
【0048】
なお、図5に示すような非透水性のシート11L,11Rを別途設けずに、固定端部9LA,9RAの非肌面側と吸収体6との間に、ホットメルト等の非透水性の接着剤を平面的に塗布してもよい。非透水性の接着剤を平面的に塗布することで、固定端部9LA,9RAを吸収体6に対して固定しつつ、サイドシート9L,9Rの固定端部9LA,9RA近傍に非透水処理を施すことができる。当該非透水処理によって、別途非透水性のシート11L,11Rのような構造を設けずに、サイドシート9L,9Rからの液体の染み出しを抑制可能である。このようにすれば、製造コストを低減しつつも、サイドシート9L,9Rからの排出液の染み出し抑制が可能である。固定端部9LA,9RA近傍において、吸収体6との間に平面的に塗布された非透水性の接着剤により、本開示における一対の防漏シートの固定端の幅方向外側における非透水性処理が実現される。非透水性の接着剤も、本願でいう「非透水性部」の一例である。
【0049】
<実験>
図6は、トップシートと吸収体の好適な接着強度についての検証結果を示す表である。トップシート8と吸収体6は、着用により、また着用中に容易に剥離する接着強度であることが好適である一方で、あまりに接着強度が弱いと、製造段階での不良の原因となる。また、輸送中に剥離すれば、使用前に機能が損なわれる虞があるため、ある程度の接着強度を有していることが望ましい。このため、トップシート8と吸収体6がどの程度の強度
で仮接着していれば好適であるかについて実験を行った。実験では、着用前に吸収性パッド1を広げてトップシート8と吸収体6とが剥離しないことを確認し、更に吸収性パッド1を実際にダミー人形に着用して人工尿を複数回注入し、漏れが発生するかを確認した。吸収性パッド1としては、図3に示す形態のものを用いた。尿道口対応領域UOの近傍におけるトップシート8と吸収体6との接着強度は、事前に株式会社東洋精機製作所製のストログラフ VG1Eを用いて計測した。計測用試験片は50mm×50mmとし、試験速度は100mm/min、最大凸試験力(N)を接着力(N)とした。着用実験を行う前に、吸収性パッド1を広げて、トップシート8と吸収体6とが剥離しないかを確認した。吸収性パッド1を広げた状態でトップシート8と吸収体6とが剥離した場合には、不適(×)とし、最終的な結果も不良(×)とした。実験の結果、接着力が0.7N以下の場合、トップシート8と吸収体6とは着用前に剥離することが判明した。
【0050】
次に、着用前にトップシート8と吸収体6とが剥離しなかった接着強度を有する吸収性パッド1について、尿道口を模した排出口を有する、成人の下半身を模したダミー人形に当該吸収性パッド1を着用し、ダミー人形を30度に傾けてから人工尿を注入した。ダミー人形の表面は、シリコーン製であった。人工尿は、純水40Lに対して尿素(NHCONH)を776g、塩化ナトリウム(NaCl)を321.6g、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO・7HO)を81.8g、塩化カルシウム二水和物(CaCl・2HO)を33.4g、0.5%青色一号水溶液を60g混入し、700rpmで30分以上攪拌して生成した。着色料は、実験結果を明瞭にするために添加したものである。
【0051】
吸収性能試験に使用した吸収性パッド1の吸収コア6Cは、上層吸収マット6Aには、例えばパルプおよびSAPが含まれており、パルプの目付は280g/mとし、SAPの目付は180g/mとした。また、下層吸収マット6Bには、例えばパルプおよびSAPが含まれ、パルプの目付は120g/mとし、SAPの目付は90g/mとした。また、吸収コア6Cの厚みは2cmであった。
【0052】
人工尿の注入は、10分間の間隔を空けて3回行った。人工尿の注入量と注入速度は高齢者を模して設定され、一回の注入量は150ml、注入速度は15ml/sであった。接着力が1.4N以上の場合、実験中に人工尿漏れが発生した。これは、ダミー人形への着用時、また最初の人工尿注入時に、尿道口対応領域UOにおいてトップシート8が吸収体6から剥離せず、人工尿がトップシート8ではなくダミー人形の表面を伝って外部に漏出した結果であると考えられる。
【0053】
実験の結果、着用前に仮接着状態が維持され、着用中に剥離して着用者の肌面に当接して、人工尿が肌面を流れるのを防ぐ適切なトップシート8と吸収体6との接着強度は、0.8N以上1.3N以下であることが好適であることが判明した。
【0054】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。以下の説明では、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する。第2の実施形態では、吸収性パッド1の肌面側には、吸収体6の幅方向両側を覆うサイドシート9L,9Rのみならず、トップシート8の長手方向端部の肌面側を覆う非透水性のエンドシート12F,12Rを有している。エンドシート12F,12Rは、その長手方向内側が吸収体6と重畳している。エンドシート12F,12Rの長手方向内側の幅方向中央部は、他のシート(第2の実施形態では、トップシート8)と接着されていない。一方、エンドシート12F,12Rは、長手方向外側では、ホットメルト等の接着剤または、ヒートシール等の熱溶着により、エンドシート12F,12Rの非肌面側と当接するトップシート8、シートと接着されている。このため、吸収体6の長手方向両端部近傍には
、立体ギャザー3L,3Rとトップシート8、吸収体6との間と同様に、袋状の空間が形成される。
【0055】
幅方向外側に移動した排出液は、立体ギャザー3L,3Rとトップシート8との間に形成された袋状の空間に落ち込み、トップシート8を順次透過して吸収体6側に移動し、吸収体6に吸収される。更に、本実施形態では、吸収体6の幅方向端部近傍のみならず、吸収体6の長手方向端部近傍においても、エンドシート12F,12Rとトップシート8との間にも袋状の空間が形成される。トップシート8の肌面側を長手方向に移動した排出液は、エンドシート12F,12Rとトップシート8との間に形成された袋状の空間に落ち込み、吸収体6に順次吸収される。よって、第2の実施形態に係る吸収性パッド1は、幅方向への排出液の移動を抑止して横漏れを抑制できるのみならず、長手方向への排出液の移動をも抑止し、前漏れ、後漏れをも抑制できる。
【0056】
更に、エンドシート12F,12Rの長手方向内側に、幅方向に伸縮する糸状弾性部材を配置し、エンドシート12F,12Rの長手方向内側かつ幅方向内側が、当該糸状弾性部材の付勢力によって、着用時に立ち上がるようにしてもよい。吸収性パッド1着用時、立体ギャザー3L,3Rと同様に、エンドシート12F,12Rの幅方向中央部がトップシート8から立ち上がると、袋状の空間はより広がりやすくなる。このように、エンドシート12F,12Rに幅方向に伸縮する糸状弾性部材を設けることにより、長手方向に移動してきた排出液をより効果的に抑止して袋状の空間内部に誘導しやすくなる。なお、想定される排出液の移動に応じ、糸状弾性部材をエンドシート12F,12Rの片方のみに設ける形態も考えられる。
【0057】
<応用実施形態>
図8は、応用実施形態を示す平面図である。図8に示す形態では、尿道口対応領域UOの周囲を取り囲むように一定の間隔を開けて、吸収体6とトップシート8との間でホットメルト接着剤の塗布割合を増やした接着領域13が配置されている。当該接着領域13では、吸収体6とトップシート8とは接着されている。図8では、扇状の接着領域13を例示しているが、尿道口対応領域UOから一定の距離を置いて尿道口対応領域UOを取り囲むように配置されていれば、その具体的形状は任意である。
【0058】
本応用実施形態でも、尿道口対応領域UOの近傍では、トップシート8と吸収体6は仮接着となっている。トップシート8は、尿道口対応領域UOにおいて、吸収体6から容易に剥離し、着用者の尿道口と当接するため、尿道口から排出された排出液は着用者の肌面ではなく、トップシート8の表面を移動して、接着領域13に到達する。接着領域13では、トップシート8と吸収体6とは接着されており、仮接着部分が剥離している状態でも、接着状態が維持されている。接着領域13では、トップシート8と吸収体6とが当接しているため、接着領域13近傍に到達した排出液は、トップシート8と当接する吸収体6側に流入しやすくなっている。このため、本応用実施形態に係る吸収性パッド1は、剥離して尿道口に当接したトップシート8の表面を移動する排出液が吸収体6の端部付近である立体ギャザー3L,3R等へと到達する前に吸収体6に移動させ、吸収させることができる。このため、本応用実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体6の端部からの排出液の漏れを効果的に抑制可能である。
【0059】
以上、各実施形態および応用実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。例えば、各実施形態および応用実施形態では、溝部6Hは、上層吸収マット6Aを貫通するように設けられているが、下層吸収マット6Bにおいても、上層吸収マット6Aの溝部6Hに対応する部分の全部または一部に、溝部6H2を設けてもよい。溝部6H、溝部6H2が吸収コア6C全体を貫通する貫通溝となるように形成してもよい。また、溝は長手方向に平行に複数設けられてよい。なお、本発明は、排出
液の流速が遅いことを前提としていることから、溝部を設けない構成としてもよい。
【0060】
本発明は、吸収性パッドのみならず、成人用のパンツ型おむつや成人用のテープ型おむつにも適用可能である。
【0061】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・吸収性パッド
1F・・前身頃領域
1B・・股下領域
1R・・後身頃領域
3BL,3BR・・糸ゴム
3LL,3RL・・起立線
3L,3R・・立体ギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6・・吸収体
6C・・吸収コア
6A・・上層吸収マット
6B・・下層吸収マット
6H・・溝部
7・・コアラップシート
7A・・上層コアラップシート
7B・・下層コアラップシート
8・・トップシート
9L,9R・・サイドシート
9LA,9RA・・固定端部
9LB,9RB・・自由端部
11L,11R・・非透水性のシート
12L,12R・・エンドシート
13・・接着領域
UO・・尿道口対応領域
SO・・横漏れ防止空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8