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特開2024-65564電力変換装置、およびモータモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065564
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電力変換装置、およびモータモジュール
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240508BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174492
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】町野 智史
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770HA02Y
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA13
5H770QA27
5H770QA35
5H770QA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シールドコアとグランドとの間のインピーダンスを安定して低減できる電力変換装置及びモータモジュールを提供。
【解決手段】モータモジュール301(電力変換装置310)は、第1方向D1に延びるバスバー30と、バスバーを流れる電流によって発生する磁界を検出するセンサ25と、第1方向と直交する第2方向D2の両側と、第1方向および第2方向と直交する第3方向D3の少なくとも一方側とから、バスバーおよびセンサを囲む、磁性金属製のシールドコア40と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュール16と、回路基板20と、バスバー、センサおよびシールドコアを内部に収容する金属製のケース9と、を備える。ケースは、シールドコアと接触する支持部12を有し、且つ、接地される。
【選択図】図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるバスバーと、
前記バスバーを流れる電流によって発生する磁界を検出するセンサと、
前記第1方向と直交する第2方向の両側と、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向の少なくとも一方側とから、前記バスバーおよび前記センサを囲む、磁性金属製のシールドコアと、
前記バスバー、前記センサ、および前記シールドコアを内部に収容する金属製のケースと、
を備え、
前記ケースは、前記シールドコアと接触する支持部を有し、且つ、接地される、電力変換装置。
【請求項2】
前記シールドコアの少なくとも一部を樹脂で封止するコア封止部を備え、
前記シールドコアは、前記コア封止部と前記支持部との間に配置され、前記支持部と接触する接触部を有する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記支持部の前記第3方向の他方側を向く面には、前記第3方向の一方側に向けて窪む収容部が設けられ、
前記コア封止部は、前記収容部の内側面と接触する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記第3方向の他方側を向く支持面を有し、
前記シールドコアの前記第3方向の一方側を向く面は、前記支持面と接触する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記第1方向または前記第2方向で、互いに向き合う一対の位置決め面を有し、前記シールドコアは前記一対の位置決め面の間に配置される、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2方向に並んで配置される複数の前記バスバーと、複数の前記センサと、複数の前記シールドコアと、を備え、
複数の前記シールドコアのぞれぞれは、前記第2方向の両側と、前記第3方向の少なくとも一方側とから、1つの前記センサおよび1つの前記バスバーを囲む、請求項2から5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記コア封止部は、複数の前記シールドコアそれぞれの一部を樹脂で封止し、
前記コア封止部のうち複数の前記シールドコア同士の間の部分には、第1方向または前記第3方向に窪む切欠部が設けられる、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記コア封止部は、複数の前記シールドコアそれぞれの一部を樹脂で封止し、
前記コア封止部のうち複数の前記シールドコアそれぞれの外側面と接触する部分の前記第3方向の他方側の端部は、複数の前記シールドコアの内側面と接触する部分の前記第3方向の他方側の端部よりも、前記第3方向の他方側に位置する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電力変換装置と、前記電力変換装置によって駆動されるモータとを備えた、モータモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、およびモータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
モータに電力を供給する電力変換装置として、例えば、特許文献1に記載のように、バスバー(一次導体)に流れる電流によって発生する磁界を収集するシールドコア(積層コア)の内部に、バスバー、およびバスバーを流れる電流値を検出するセンサ(電流センサ)と、を備え、シールドコアに抵抗溶接によって接合されるニッケル端子を介して、シールドコアをグランドに接地する電力変換装置が知られている。
また、特許文献2に記載のように、シールドコア(コア)にスポット溶接またはかしめによって固定されたコア固定用プレートを回路基板のグランドに接続することによって、シールドコアをグランドに接地する電力変換装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-108333号公報
【特許文献2】特開2015-64278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力変換装置では、シールドコアとニッケル端子の接合不良が発生し易いため、シールドコアを安定してグランドに接地することが困難である。また、特許文献2に記載の電力変換装置では、コア固定用プレートと回路基板のグランドとの接触面積を大きくしづらいため、コア固定用部プレートと回路基板のグランドとの間のインピーダンスを安定して低減することが困難である。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、シールドコアとグランドとの間のインピーダンスを安定して低減できる電力変換装置、およびモータモジュールを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電力変換装置の一つの態様は、第1方向に延びるバスバーと、前記バスバーを流れる電流によって発生する磁界を検出するセンサと、前記第1方向と直交する第2方向の両側と、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向の少なくとも一方側とから、前記バスバーおよび前記センサを囲む、磁性金属製のシールドコアと、前記バスバー、前記センサ、および前記シールドコアを内部に収容する金属製のケースと、を備える。前記ケースは、前記シールドコアと接触する支持部を有し、且つ、接地される。
【0007】
本発明のモータモジュールの一つの態様は、上記の電力変換装置と、上記の電力変換装置によって駆動されるモータとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、電力変換装置、およびモータモジュールにおいて、シールドコアとグランドとの間のインピーダンスを安定して低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態のモータモジュールを示す模式図である。
図2図2は、一実施形態の電力変換装置を示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態の電力変換装置の一部を示す斜視図である。
図4A図4Aは、一実施形態の電力変換装置の一部を示す上面図である。
図4B図4Bは、一実施形態の電力変換装置を示す断面図である。
図5図5は、一実施形態の支持部およびシールドコアを示す上面図である。
図6A図6Aは、一実施形態の変形例1の電力変換装置の一部を示す上面図である。
図6B図6Bは、一実施形態の変形例1の電力変換装置を示す断面図である。
図7A図7Aは、一実施形態の変形例2の電力変換装置の一部を示す上面図である。
図7B図7Bは、一実施形態の変形例2の電力変換装置を示す断面図である。
図8A図8Aは、一実施形態の変形例3の電力変換装置の一部を示す上面図である。
図8B図8Bは、一実施形態の変形例3の電力変換装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電力変換装置およびモータモジュールについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面では、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0011】
以下の説明において、各図には適宜、第1方向D1を示す。第1方向D1は、以下に説明する実施形態のバスバーが延びる方向である。第1方向D1は、電力変換装置の前後方向である。以下の説明では、第1方向D1の矢印が向く側(+D1側)を「第1方向D1の一方側」または「後側」と呼ぶ。第1方向D1の矢印が向く側と反対側(-D1側)を「第1方向D1の他方側」または「前側」と呼ぶ。
【0012】
以下の説明において、各図には適宜、第2方向D2を示す。本実施形態において、第2方向D2は、複数のバスバーが並んで配置される方向であり、第1方向D1と直交する方向である。第2方向D2は、電力変換装置の左右方向である。以下の説明では、第2方向D2の矢印が向く側(+D2側)を「第2方向D2の一方側」または「左側」と呼ぶ。第2方向D2の矢印が向く側と反対側(-D2側)を「第2方向D2の他方側」または「右側」と呼ぶ。
【0013】
以下の説明において、各図には適宜、第3方向D3を示す。本実施形態において、第3方向D3は、第1方向D1および第2方向D2と直交する方向である。第3方向D3は、電力変換装置の上下方向である。以下の説明では、第3方向D3の矢印が向く側(+D3側)を「第3方向D3の一方側」または「下側」と呼ぶ。第3方向D3の矢印が向く側と反対側(-D2側)を「第3方向D3の他方側」または「上側」と呼ぶ。
【0014】
なお、上側、下側、前側、後側、左側、右側は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のモータモジュール1を示す模式図である。
モータモジュール1は、車両に搭載され、車両の車軸を回転させる駆動装置である。モータモジュール1が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。モータモジュール1は、モータ2と、モータ2を駆動する電力変換装置10と、を備える。
【0016】
モータ2は、図示しない車両の車軸を回転させる。本実施形態において、モータ2は、3相モータである。3相とは、U相、V相、およびW相である。モータ2は、図示しないU相コイル、V相コイル、およびW相コイルを有する。
【0017】
電力変換装置10は、モータ2に供給する電流を生成するとともに、モータ2のU相コイル、V相コイル、およびW相コイルのそれぞれに電流を供給する。電力変換装置10は、モータ2、制御ユニット3、および外部電源4と接続される。
【0018】
制御ユニット3は、車両の動作を制御する。制御ユニット3は、モータ2の動作に関する指令内容を含む制御信号を電力変換装置10に送信する。外部電源4は、電力変換装置10に直流電流を供給する。本実施形態において、外部電源4は、バッテリである。
【0019】
電力変換装置10は、制御ユニット3から送信された制御信号に基づいて、外部電源4によって供給される直流電流から所定波形の電流を生成するとともに、電流をモータ2に供給する。より詳細には、電力変換装置10は、モータ2のU相コイル、V相コイル、およびW相コイルのそれぞれに供給する相電流(U相電流、V相電流、およびW相電流)を生成する。本実施形態において、電力変換装置10は、直流電流を交流電流に変換するインバータである。電力変換装置10とモータ2とは、3本の接続線6によって接続される。各接続線6のそれぞれは、モータ2のU相コイル、V相コイル、およびW相コイルのいずれか一つと接続され、各接続線6を介して、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルのそれぞれに電流が供給される。
【0020】
図2および図3に示すように、電力変換装置10は、ケース9と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュール16と、回路基板20と、センサ25と、バスバー30と、シールドコア40と、コア封止部50と、を備える。
【0021】
図2に示すように、ケース9は、略直方体状の箱状である。ケース9は、略円柱状等の他の形状の箱状であってもよい。本実施形態において、ケース9は、金属製である。ケース9は、導電性を有する。ケース9は、グランドに接地されている。図3に示すように、ケース9の内部には、IGBTモジュール16、回路基板20、センサ25、バスバー30、シールドコア40、およびコア封止部50が収容される。図2に示すように、ケース9は、下ケース部材11と、蓋部材15と、を有する。
【0022】
下ケース部材11は、上側(-D3側)に開口する箱状である。下ケース部材11の内部には、IGBTモジュール16、回路基板20、センサ25、バスバー30、シールドコア40、およびコア封止部50が収容される。下ケース部材11は、周壁部11aと、底壁部11bと、を有する。図3に示すように、下ケース部材11は、支持部12を有する。
【0023】
図2に示すように、周壁部11aは、第3方向D3に延びる四角筒状である。図示は省略するが、周壁部11aは、回路基板20、センサ25、バスバー30、シールドコア40、およびコア封止部50を第2方向D2および第3方向D3に囲む。底壁部11bは、第3方向D3と直交する方向に広がる板状である。底壁部11bの板面は、第3方向D3を向く。底壁部11bの外縁部は、周壁部11aの下端と繋がる。
【0024】
支持部12は、底壁部11bから第3方向D3に延びる略直方体状である。支持部12は、底壁部11bを介して、グランドに接地される。図4Aに示すように、第3方向D3に見て、支持部12は、長辺が第2方向D2に延びる略長方形状である。図4Bに示すように、支持部12には、収容部12cが設けられる。支持部12は、上方面12aと、支持面12dと、複数の位置決め部13と、を有する。上方面12aは、支持部12の外側面のうち、上側、すなわち、第3方向D3の他方側(-D3側)を向く面である。
【0025】
収容部12cは、上方面12aから、下側、すなわち第3方向D3の一方側(+D3側)に向けて窪む穴である。図5に示すように、収容部12cは、長辺が第2方向D2に延びる略長方形状である。図4Bに示すように、支持面12dは、収容部12cの内側面のうち、上側、すなわち第3方向D3の他方側(-D3側)を向く面である。支持面12dは、収容部12cの底面である。
【0026】
複数の位置決め部13は、支持面12dから上側に突出する直方体状である。図5に示すように、第3方向D3に見て、各位置決め部13は、長辺が第1方向D1に延びる長方形状である。本実施形態において、位置決め部13は、6個設けられる。各位置決め部13は、第2方向D2に沿って互いに間隔をあけて配置される。
【0027】
図4Bに示すように、複数の位置決め部13は、第2方向D2に隣り合う2個を一組として、3組が第2方向D2に並ぶ。各組の2個の位置決め部13のうち、右側の位置決め部13それぞれの左側、すなわち第2方向D2の一方側(+D2側)を向く面は、位置決め面13aである。同様に、各組の2個の位置決め部13のうち、左側の位置決め部13それぞれの右側、すなわち第2方向D2の他方側を向く面は、位置決め面13bである。位置決め面13aと位置決め面13bとは、第2方向D2に互いに向き合う。以下の説明において、第2方向D2に互いに向き合う位置決め面13aおよび位置決め面13bを、「一対の位置決め面13a,13b」と呼ぶ。本実施形態において、支持部12は、3個の一対の位置決め面13a,13bを有する。
【0028】
図2に示すように、蓋部材15は、第3方向D3と直交する方向に広がる板状である。蓋部材15は、下ケース部材11の上端に固定される。蓋部材15は、下ケース部材11の開口を塞ぐ。
【0029】
IGBTモジュール16は、外部電源4によって供給される直流電流からモータ2のU相コイル、V相コイル、およびW相コイルのそれぞれに供給する相電流を生成する。IGBTモジュール16は、複数の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の図示しない複数の電子素子を有する。図示は省略するが、IGBTモジュール16は、図1に示す制御ユニット3および外部電源4と接続される。IGBTモジュール16は、底壁部11bに固定される。
【0030】
図3に示すように、回路基板20は、第3方向D3と直交する方向に広がるプリント実装基板である。第3方向D3に見て、回路基板20は、略長方形状である。図示は省略するが、回路基板20は、図1に示す制御ユニット3および外部電源4と接続される。図示は省略するが、回路基板20にはIGBTモジュール16が有する複数のピンが接続される。これにより、回路基板20は、IGBTモジュール16と電気的に接続される。回路基板20には、図示しない複数の電子素子およびセンサ25が実装される。なお、本実施形態において、ケース9の内部には図示しない他の回路基板が収容される。他の回路基板は、回路基板20と電気的に接続されてもよし、電気的に接続されていなくてもよい。図3に示すように、回路基板20には、孔部20bが設けられる。回路基板20は、基板突出部20dを有する。
【0031】
孔部20bは、回路基板20を第3方向D3に貫通する孔である。本実施形態において、孔部20bは、10個設けられる。ねじ90が、各孔部20bを第3方向D3に通され、IGBTモジュール16の図示しないねじ穴に締め込まれると、回路基板20は、IGBTモジュール16に固定される。
【0032】
基板突出部20dは、回路基板20のうち、前側(-D1側)に突出する部分である。第3方向D3に見て、基板突出部20dは、略矩形状である。本実施形態において、基板突出部20dは、3個設けられる。各基板突出部20dは、第2方向D2に沿って互いに間隔をあけて配置される。
【0033】
バスバー30は、IGBTモジュール16において生成される電流が流れる経路である。バスバー30は、第1方向D1に延びる板状である。バスバー30は、金属製である。バスバー30の一部は、回路基板20の下側(+D3側)に配置される。図示は省略するが、バスバー30の一端は、図示しないねじによって、IGBTモジュール16の図示しない電極に固定される。これにより、バスバー30に相電流が流れる。バスバー30の他端は、回路基板20よりも前側(-D1側)に位置する。図示は省略するが、バスバー30の他端は、接続線6(図1参照)と電気的に接続される。本実施形態において、バスバー30は、3個設けられる。すなわち、電力変換装置10は、複数のバスバー30を備える。各バスバー30のそれぞれには、U相電流、V相電流、およびW相電流のいずれか一つの電流が流れる。図4Bに示すように、各バスバー30は、第2方向D2に並んで配置される。第3方向D3に見て、回路基板20の基板突出部20dのそれぞれは、各バスバー30のそれぞれと重なる。
【0034】
センサ25は、バスバー30を流れる電流によって発生する磁界を検出する磁気検出センサである。本実施形態において、センサ25は、ホールICである。センサ25は、該磁界を電圧に変換して出力する。センサ25から出力される電圧の大きさは、バスバー30を流れる電流の大きさと相関する。これにより、センサ25によって、バスバー30を流れる電流の大きさを検出できる。図3に示すように、本実施形態において、センサ25は、3個設けられる。すなわち、電力変換装置10は、複数のセンサ25を備える。各センサ25は、それぞれ、互いに異なる基板突出部20dに実装される。図4Bに示すように、各センサ25は、第2方向D2に並んで配置される。各センサ25は、それぞれ、バスバー30の上側(-D3側)に配置される。第3方向D3に見て、各センサ25は、バスバー30の第2方向D2の略中央と重なる。各センサ25は、各バスバー30を流れるU相電流、V相電流、およびW相電流の電流値を検出する。各センサ25の出力電圧は回路基板20に実装される図示しない演算素子等に伝送され、各センサ25の出力電圧に基づいて、図示しない上述の複数の電子素子によって生成される電流の大きさが調整される。これにより、モータ2に供給される電流を所望の電流値に安定させることができ、電力変換装置10およびモータモジュール1の動作を安定させることができる。
【0035】
シールドコア40は、バスバー30を流れる電流によって発生する磁界を収集するとともに、外部からの磁界を遮蔽する。シールドコア40は、磁性を有する。シールドコア40は、板厚方向に積層される複数枚の磁性金属板によって構成される。本実施形態において、シールドコア40は、複数枚の磁性金属板が第1方向D1に積層されて構成される。シールドコア40を構成する材料としては、フェライト、パーマアロイ等の高い透磁率を有する金属材料を用いることができる。本実施形態において、シールドコア40は、接触部40aと、第1壁部40bと、第2壁部40cと、を有する。
【0036】
接触部40aは、第3方向D3と直交する方向に延びる板状である。接触部40aの板面は、第3方向D3を向く。図5に示すように、第3方向D3に見て、接触部40aは、長辺が第2方向D2に延びる長方形状である。図4Bに示すように、接触部40aは、センサ25およびバスバー30の下側(+D3側)に配置される。接触部40aの下側を向く面は、支持面12dと接触する。すなわち、シールドコア40の下側、すなわち第3方向D3の一方側を向く面は、支持面12dと接触する。シールドコア40は、支持部12と接触する。接触部40aは、1対の位置決め面13a,13bの間に配置される。接触部40aの第2方向D2の両端部には第1壁部40bと第2壁部40cとがそれぞれ接続される。
【0037】
第1壁部40bは、接触部40aの左側(+D2側)の端部から上側(-D3側)に突出する板状である。第1壁部40bの板面は、第2方向D2を向く。第1壁部40bの上側の端部は、センサ25よりも上側に位置する。第1壁部40bは、1対の位置決め面13a,13bの間に配置される。
【0038】
第2壁部40cは、接触部40aの右側(-D2側)の端部から上側(-D3側)に突出する板状である。第2壁部40cの板面は、第2方向D2を向く。第2壁部40cの上側の端部は、センサ25よりも上側に位置する。第2壁部40cは、1対の位置決め面13a,13bの間に配置される。上述のように、接触部40aおよび第1壁部40bは、1対の位置決め面13a,13bの間に配置される。したがって、シールドコア40は一対の位置決め面13a,13bの間に配置される。第1壁部40bと第2壁部40cとは、第2方向D2の両側からバスバー30、基板突出部20d、および当該基板突出部20dに実装されるセンサ25を挟み込む。
【0039】
本実施形態において、シールドコア40は、3個設けられる。すなわち、電力変換装置10は、複数のシールドコア40を備える。各シールドコア40は、第2方向D2に並んで配置される。1つのシールドコア40の内部には、1つのセンサ25および1つのバスバー30が配置される。複数のシールドコア40のそれぞれは、第2方向D2の両側(+D2側および-D2側)と、第3方向D3の一方側(+D3側)とから、1つのセンサ25および1つのバスバー30を囲む。よって、本実施形態によれば、1つのバスバー30を流れる電流によって発生する磁界が、該バスバー30を囲むシールドコア40によって収集される。そのため、1つのバスバー30を流れる電流によって発生する磁界が、他のバスバー30を流れる電流値を検出するセンサ25を通過することを抑制できる。よって、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度を高めることができるため、電力変換装置10およびモータモジュール1の動作を安定させることができる。
【0040】
本実施形態の電力変換装置10およびモータモジュール1によれば、第1方向D1と直交する第2方向D2の両側と、第1方向D1および第2方向D2と直交する第3方向D3の一方側(+D3側)とから、バスバー30およびセンサ25を囲む、磁性金属製のシールドコア40と、バスバー30、センサ25、およびシールドコア40を内部に収容する金属製のケース9と、を備え、ケース9は、シールドコア40と接触する支持部12を有し、且つ、接地される。よって、シールドコア40はケース9と直接接触し、ケース9を介してグランドに接地される。そのため、シールドコアと接続される接続部材および回路基板等を介して、シールドコアをグランドに接地する構成と比較して、本実施形態では、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスを安定して低減できる。これにより、バスバー30から放射されてシールドコア40に重畳する放射ノイズを、グランドに好適に伝送できる。よって、シールドコア40から放射される放射ノイズを低減できるため、センサ25に重畳される放射ノイズを低減できる。したがって、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができるため、電力変換装置10およびモータモジュール1の動作を安定させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、シールドコアと接続される接続部材および回路基板等を介して、シールドコアをグランドに接地する構成と比較して、シールドコア40とグランドとの間の距離を短くできる。そのため、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスをより低減できるため、シールドコア40から放射ノイズが放射されることをより好適に抑制できる。したがって、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、上述のように、シールドコア40から放射ノイズが放射されることを抑制できるため、回路基板20、IGBTモジュール16および図示しない上述の他の回路基板の動作を安定させることができる。さらに、電力変換装置10において発生するノイズレベルの規格を満たすことができる。また、シールドコア40とグランドとを接続する接続部材等の別個の部材が不要であるため、電力変換装置10の部品点数が増大することを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、上述のように、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスを低減できるため、ケース9の内部に収容されるIGBTモジュール16の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを含む電子素子および回路基板20のそれぞれから発生する放射ノイズを、シールドコア40を介して好適にグランドに伝送できる。したがって、係る放射ノイズが各センサ25に重畳することを抑制できるため、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができる。よって、電力変換装置10およびモータモジュール1の動作を安定させることができる。
【0044】
本実施形態よれば、支持部12は、上側、すなわち第3方向D3の他方側(-D3側)を向く支持面12dを有し、シールドコア40の下側、すなわち第3方向D3の一方側(-D3側)を向く面は、支持面12dと接触する。よって、シールドコア40と支持部12とを面接触させることができるため、シールドコア40と支持部12との接触面積を広くすることができる。そのため、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスをより好適に低減できる。したがって、シールドコア40に重畳する放射ノイズを好適にグランドに伝送できるとともに、シールドコア40から放射ノイズが放射されることをより好適に抑制できる。これらにより、放射ノイズが各センサ25に重畳することを抑制できるため、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができる。よって、電力変換装置10およびモータモジュール1の動作を安定させることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、上述のように、シールドコア40の下側を向く面が、支持面12dと接触するため、支持部12に対するシールドコア40の第3方向D3の位置を精度よく決めることができる。したがって、第3方向D3において、センサ25およびバスバー30に対する各シールドコア40の位置を精度よく決めることができるため、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができる。
【0046】
なお、第1方向D1に見たシールドコア40の形状は、本実施形態の形状に限定されず、例えば、下側(+D3側)に突出するU字状等の他の形状であってもよい。また、シールドコア40は、第2方向D2の両側、および第3方向D3の一方側(+D3側)に加えて、第3方向の他方側(-D3側)からも、センサ25およびバスバー30を囲む構造であってもよい。この場合、シールドコア40は、例えば、第1方向D1から見て矩形状である。
【0047】
図4Aおよび図4Bに示すように、本実施形態において、コア封止部50は、支持部12の収容部12cの内部に配置される。コア封止部50は、樹脂製である。より詳細には、コア封止部50は、アクリレート系の熱硬化性樹脂によって構成される。コア封止部50樹脂は、エポキシ系等の熱硬化性樹脂等の他の樹脂であってもよい。図4Bに示すように、コア封止部50は、シールドコア40の下側の部分を樹脂で封止する。すなわち、コア封止部50は、シールドコア40の少なくとも一部を樹脂で封止する。シールドコア40の少なくとも一部は、コア封止部50の内部に埋め込まれている。第3方向D3において、シールドコア40の接触部40aは、コア封止部50と支持部12との間に配置される。よって、本実施形態によれば、支持部12に対して、シールドコア40が上側(-D3側)に移動することを抑制できるため、接触部40aと支持部12とを安定して接触させることができる。そのため、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスをより安定的に低減できる。
【0048】
なお、本明細書において、「封止する」とは、隙間を塞ぐように充填する、または対象物を埋め込むことを意味している。したがって、「封止する」の語は、水分等の液体の通過を許容しない場合にも用いるものとする。
【0049】
図4Aに示すように、コア封止部50は、収容部12cの内側面のうち、第1方向D1を向く面および第2方向D2を向く面のそれぞれと接触する。また、図4Bに示すように、コア封止部50は、収容部12cの内側面のうち、第3方向D3を向く支持面12dの一部と接触する。これらにより、コア封止部50は、収容部12cに固定される。したがって、各シールドコア40は、コア封止部50を介して、支持部12に固定される。
【0050】
本実施形態によれば、支持部12の上側、すなわち第3方向D3の他方側(-D3側)を向く面には、下側、すなわち第3方向D3の一方側(+D3側)に向けて窪む収容部12cが設けられ、コア封止部50は、収容部12cの内側面と接触する。よって、コア封止部50と支持部12との接触面積を広くできるため、より強固にコア封止部50を支持部12に固定できる。これにより、コア封止部50を介して、より強固にシールドコア40を支持部12に固定できるため、各シールドコア40を安定して支持部12に接触させることができる。したがって、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスをより安定的に低減できる。
【0051】
また、本実施形態によれば、上述のように、コア封止部50を介して、より強固にシールドコア40を支持部12に固定できるため、各センサ25および各バスバー30に対する各シールドコア40の位置を安定させることができる。そのため、シールドコア40によって収集される磁界の強度を安定させることができる。したがって、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができ、電力変換装置10およびモータモジュール1の動作を安定させることができる。
【0052】
本実施形態において、コア封止部50は、下ケース部材11および複数のシールドコア40をインサート部材とするインサート成形によって成形される。より詳細には、図示しない金型内に配置される下ケース部材11の一対の位置決め面13a,13bそれぞれの間に、各シールドコア40を配置して、下ケース部材11に対する各シールドコア40の位置を決めた後に、熱溶融した溶融樹脂を金型の内部に流し込み、溶融樹脂を所定温度で加熱して硬化させることによって、コア封止部50は成形される。これにより、図4Bに示すように、コア封止部50は、各シールドコア40の少なくとも一部を樹脂で封止するとともに、コア封止部50は、支持部12に固定される。これらにより、各シールドコア40は、支持部12に固定される。
【0053】
よって、本実施形態では、下ケース部材11および複数のシールドコア40をインサート部材とする射出成形によって、コア封止部50を介して、各シールドコア40を支持部12に固定できるとともに、シールドコア40と支持部12とを接触させてシールドコア40をグランドに接地できる。そのため、例えば、溶接等によってシールドコアに固定された接続部材を介してシールドコアを回路基板のグランドに接地する構成と比較して、シールドコアをグランドに接地するための工数および部品点数が増大することを抑制できる。したがって、電力変換装置10およびモータモジュール1の製造工数および部品点数が増大することを抑制できる。
【0054】
本実施形態によれば、支持部12は、第2方向D2で、互いに向き合う一対の位置決め面13a,13bを有し、シールドコア40は一対の位置決め面13a,13bの間に配置される。よって、上述のインサート成形において、金型の内部に流れ込む溶融樹脂から受ける圧力によって、各シールドコア40が第2方向D2に移動することを抑制できる。よって、支持部12に対する各シールドコア40の位置精度を高めることができるため、各センサ25および各バスバー30に対する各シールドコア40の位置精度を高めることができる。したがって、各センサ25がバスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができる。
【0055】
なお、本実施形態において、溶融樹脂を金型の内部に流し込む射出圧力は、0.5~15.0MPa程度と低い圧力である。よって、本実施形態では、金型内に流れ込む溶融樹脂によって、シールドコア40に加わる負荷を低減できる。したがって、シールドコア40の磁気特性が変動することを抑制できるため、シールドコア40によって収集される磁界の強度を安定させることができる。よって、各センサ25がバスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができる。
【0056】
<変形例1>
図6Aは、上述の第1実施形態の変形例1の電力変換装置210およびモータモジュール201の一部を示す上面図である。図6Bは、第1実施形態の変形例1の電力変換装置210を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
図6Bに示すように、本変形例において、下ケース部材211の支持部212には収容部が設けられず、支持部212の上側(-D3側)を向く面である上方面212aは、第3方向D3と直交する方向に広がる平面状である。各シールドコア40の接触部40aの下側(+D3側)を向く面は、上方面212aと接触する。本変形例において、上方面212aは、上側、すなわち第3方向D3の他方側を向き、シールドコア40と接触する支持面212dの役割を担う。
【0058】
図6Aおよび図6Bに示すように、本変形例のコア封止部250は、略直方体状である。コア封止部250は、各シールドコア40の少なくとも一部を樹脂で封止する。図6Aに示すように、コア封止部250は、支持面212d全体を覆う。図6Bに示すように、コア封止部250の下側を向く面は、支持面212dと接触する。これにより、コア封止部250は、支持部212に固定され、各シールドコア40は、コア封止部250を介して、支持部212に固定される。よって、本変形例によれば、各シールドコア40はケース9と直接接触し、ケース9を介してグランドに接地されるため、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスを安定して低減できる。そのため、放射ノイズが各センサ25に重畳することを抑制できるため、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度をより好適に高めることができる。よって、電力変換装置210およびモータモジュール201の動作を安定させることができる。
【0059】
また、本変形例では、支持部212の製造工程において、収容部を設ける必要が無いため、支持部212の製造工数を低減できる。
【0060】
<変形例2>
図7Aは、上述の第1実施形態の変形例2の電力変換装置310およびモータモジュール301の一部を示す上面図である。図7Bは、第1実施形態の変形例2の電力変換装置310を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図7Aおよび図7Bに示すように、本変形例のコア封止部350は、複数のシールドコア40それぞれの少なくとも一部を樹脂で封止する。コア封止部350は、収容部12cの内側面と接触し、支持部12に固定される。これらにより、各シールドコア40は、コア封止部350を介して、支持部12に固定される。また、各シールドコア40それぞれの接触部40aは、支持部12の支持面12dと接触する。これにより、各シールドコア40はケース9と直接接触し、ケース9を介してグランドに接地されるため、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスを安定して低減できる。本変形例において、コア封止部350には切欠部350aが設けられる。
【0062】
切欠部350aは、コア封止部350のうち、第2方向D2に互いに隣り合うシールドコア40同士の間の部分に設けられる。すなわち、切欠部350aは、コア封止部350のうち、複数のシールドコア40同士の間の部分に設けられる。本変形例において、切欠部350aは、上述のインサート成形において用いられる金型の内側面の形状を、切欠部350aの形状と対応する形状に構成することによって、設けられる。本変形例において、切欠部350aは、第1切欠部350bおよび第2切欠部350cによって構成される。
【0063】
図7Aに示すように、第1切欠部350bは、切欠部350aのうち後側(+D1側)の部分である。図7Bに示すように、第1切欠部350bは、コア封止部350の上側(-D3側)を向く面から下側、すなわち第3方向D3の一方側(+D3側)に窪む。
【0064】
図7Aに示すように、第2切欠部350cは、切欠部350aのうち、前側(-D1側)の部分である。第2切欠部350cは、第1切欠部350bと第1方向D1に繋がる。第2切欠部350cは、コア封止部350の前側を向く面から後側、すなわち第1方向D1の一方側(+D1側)に窪む。第2切欠部350cの下側の端部は、コア封止部350の下側を向く面と繋がる。
【0065】
本変形例によれば、コア封止部350のうち複数のシールドコア40同士の間の部分には、第1方向D1に窪む第2切欠部(切欠部)350c、および第3方向D3に窪む第1切欠部(切欠部)350bが設けられる。そのため、コア封止部350の体積を低減できるため、コア封止部350を構成する樹脂の材料費を抑制できる。したがって、電力変換装置310およびモータモジュール301の製造コストを抑制できる。
【0066】
なお、切欠部の形状は、本変形例の形状に限定されず、例えば、第3方向D3に窪む第1切欠部が、第1方向D1に窪む第2切欠部よりも前側(-D1側)に設けられてもよい。また、第1切欠部または第2切欠部の一方は設けられなくてもよい。この場合、切欠部は、第1方向D1または第3方向D3のいずれか一方向に窪む。
【0067】
<変形例3>
図8Aは、上述の第1実施形態の変形例3の電力変換装置410およびモータモジュール401の一部を示す上面図である。図8Bは、第1実施形態の変形例3の電力変換装置410を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図8Aおよび図8Bに示すように、本変形例のコア封止部450は、複数のシールドコア40それぞれの少なくとも一部を樹脂で封止する。コア封止部450は、収容部12cの内側面および上方面12aと接触し、支持部12に固定される。これらにより、各シールドコア40は、コア封止部450を介して、支持部12に固定される。また、各シールドコア40それぞれの接触部40aは、支持部12の支持面12dと接触する。これにより、各シールドコア40はケース9と直接接触し、ケース9を介してグランドに接地されるため、シールドコア40とグランドとの間のインピーダンスを安定して低減できる。
【0069】
本変形例のコア封止部450は、第1部分450a、第2部分450b、複数の第3部分450c、および複数の第4部分450dによって構成される。なお、以下の説明において、各シールドコア40の第1壁部40bの左側(+D2側)を向く面を、第1壁部40bの外側面と呼び、各シールドコア40の第2壁部40cの右側(-D2側)を向く面を、第2壁部40cの外側面と呼ぶ。また、各シールドコア40の第1壁部40bの右側を向く面を、第1壁部40bの内側面と呼び、各シールドコア40の第2壁部40cの左側を向く面を、第2壁部40cの内側面と呼ぶ。各シールドコア40の第1壁部40bの外側面および第2壁部40cの外側面は、各シールドコア40の外側面である。各シールドコア40の第1壁部40bの内側面および第2壁部40cの内側面は、各シールドコア40の内側面である。
【0070】
図8Bに示すように、第1部分450aは、コア封止部450のうち、最も左側(+D2側)に配置されるシールドコア40Dの第1壁部40bの外側面よりも左側に位置する部分である。第1部分450aの上側(-D3側)の端部の位置は、第1壁部40bの上側の端部の位置と同じ位置である。第1部分450aは、シールドコア40Dの第1壁部40bの外側面全体と接触する。すなわち、第1部分450aは、シールドコア40Dの外側面と接触する。
【0071】
図8Bに示すように、第2部分450bは、コア封止部450のうち、最も右側(-D2側)に配置されるシールドコア40Eの第2壁部40cの外側面よりも右側に位置する部分である。第3方向D3において、第2部分450bの上側(-D3側)の端部の位置は、第2壁部40cの上側の端部の位置と同じ位置である。第2部分450bは、シールドコア40Eの第2壁部40cの外側面全体と接触する。すなわち、第2部分450bは、シールドコア40Eの外側面と接触する。
【0072】
図8Bに示すように、複数の第3部分450cのそれぞれは、コア封止部450のうち、互いに第2方向D2に隣り合うシールドコア40同士の間に位置する部分である。本変形例において、第3部分450cは、2個設けられる。第3方向D3において、各第3部分450cの上側(-D3側)の端部の位置は、第1壁部40bの上側の端部および第2壁部40cの上側の端部の位置と同じ位置である。一方の第3部分450cは、シールドコア40Dの第2壁部40cの外側面全体、およびシールドコア40Dと第2方向D2に隣り合って配置されるシールドコア40Fの第1壁部40bの外側面全体と接触する。また、他方の第3部分450cは、シールドコア40Fの第2壁部40cの外側面全体、およびシールドコア40Eの第1壁部40bの外側面全体と接触する。すなわち、複数の第3部分450cは、シールドコア40の外側面と接触する。
【0073】
図8Bに示すように、複数の第4部分450dのそれぞれは、各シールドコア40それぞれの第1壁部40bの外側面と第2壁部40cの外側面との間に位置する部分である。本変形例において、第4部分450dは、3個設けられる。第3方向D3において、各第4部分450dの上側(-D3側)の端部の位置は、第1壁部40bの上側の端部および第2壁部40cの上側の端部の位置よりも下側(+D3側)に位置する。各第4部分450dは、バスバー30よりも下側に配置される。したがって、第1部分450a、第2部分450b、および第3部分450cの上側の端部は、第4部分450dの上側の端部よりも、上側に位置する。各第4部分450dは、各シールドコア40の第1壁部40bの内側面の下側の部分および第2壁部40cの内側面の下側の部分と接触する。すなわち、複数の第4部分450dは、シールドコア40の内側面と接触する。
【0074】
よって、本変形例によれば、コア封止部450のうち複数のシールドコア40それぞれの外側面と接触する部分である第1部分450a、第2部分450b、および第3部分450cの上側、すなわち第3方向D3の他方側(-D3側)の端部は、複数のシールドコア40それぞれの内側面と接触する第4部分450dの上側の端部よりも、上側に位置する。よって、各シールドコア40が空気と接触する面積を低減できるため、空気中に含まれる水分等によって、シールドコア40が錆びることを抑制できる。したがって、シールドコア40の磁気特性が変動することを抑制できるため、シールドコア40によって収集される磁界の強度を安定させることができる。よって、各センサ25が各バスバー30を流れる電流値を検出する精度を安定させることができる。
【0075】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。
【0076】
本実施形態の電力変換装置の用途は、車両を駆動するモータに供給する電力の生成に限定されず、電化製品等に搭載されるモータに供給する電力を生成してもよい。また、電力変換装置は、外部電源から供給される直流電流から所定の波形の交流電流を生成するインバータであってもよいし、外部電源から供給される交流電流から直流電流を生成するコンバータであってもよい。
【0077】
支持部を安定してグランドに接地できるならば、支持部はケースと別個に設けられてもよい。この場合、ネジ等によって支持部をケースに固定することによって、支持部を安定してグランドに接地できる。また、グランドと接続される接続部材を支持部に固定することによっても、支持部を安定してグランドに接地できる。
【0078】
支持部に対するシールドコアの位置を精度よく決めることができるならば、支持部の構成は本実施形態の構成に限定されず、例えば、支持部には一対の位置決め面が設けられなくてもよい。この場合、シールドコア固定工程Psにおいて用いられる金型の内側面に、一対の位置決め面を設け、該一対の位置決め面によって、支持部に対するシールドコアの位置を決めることができる。
【0079】
また、バスバーの一部はコア封止部の内部に埋め込まれていてもよい。この場合、コア封止部を成形するインサート成形において、バスバーをインサート部材の一部とすることにより、バスバーの一部をコア封止部の内部に埋め込むことができる。また、成形後のコア封止部に孔を設け、該孔にバスバーを通してもよい。
【0080】
電力変換装置が備える、バスバー、センサ、およびシールドコアそれぞれの個数は、3個に限定されず、1個および2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0081】
上述の実施形態および変形例では、回路基板の縁部から一方向に突出する基板突出部にセンサを実装し、当該基板突出部をシールドコアの第1壁部および第2壁部の間に配置する場合について説明した。しかしながら、回路基板にシールドコアの第2壁部および第3壁部のそれぞれを挿入するための一対の孔部を設け、一対の孔部の間にセンサを実装してもよい。
【0082】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0083】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 第1方向に延びるバスバーと、前記バスバーを流れる電流によって発生する磁界を検出するセンサと、前記第1方向と直交する第2方向の両側と、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向の少なくとも一方側とから、前記バスバーおよび前記センサを囲む、磁性金属製のシールドコアと、前記バスバー、前記センサ、および前記シールドコアを内部に収容する金属製のケースと、を備え、前記ケースは、前記シールドコアと接触する支持部を有し、且つ、接地される、電力変換装置。
(2) 前記シールドコアの少なくとも一部を樹脂で封止するコア封止部を備え、前記シールドコアは、前記コア封止部と前記支持部との間に配置され、前記支持部と接触する接触部を有する、(1)に記載の電力変換装置。
(3) 前記支持部の前記第3方向の他方側を向く面には、前記第3方向の一方側に向けて窪む収容部が設けられ、前記コア封止部は、前記収容部の内側面と接触する、(2)に記載の電力変換装置。
(4) 前記支持部は、前記第3方向の他方側を向く支持面を有し、前記シールドコアの前記第3方向の一方側を向く面は、前記支持面と接触する、(2)または(3)に記載の電力変換装置。
(5) 前記支持部は、前記第1方向または前記第2方向で、互いに向き合う一対の位置決め面を有し、前記シールドコアは前記一対の位置決め面の間に配置される、(2)から(4)のいずれか一項に記載の電力変換装置。
(6) 前記第2方向に並んで配置される複数の前記バスバーと、複数の前記センサと、複数の前記シールドコアと、を備え、複数の前記シールドコアのぞれぞれは、前記第2方向の両側と、前記第3方向の少なくとも一方側とから、1つの前記センサおよび1つの前記バスバーを囲む、(2)から(5)のいずれか一項に記載の電力変換装置。
(7) 前記コア封止部は、複数の前記シールドコアそれぞれの一部を樹脂で封止し、前記コア封止部のうち複数の前記シールドコア同士の間の部分には、第1方向または前記第3方向に窪む切欠部が設けられる、(6)に記載の電力変換装置。
(8) 前記コア封止部は、複数の前記シールドコアそれぞれの一部を樹脂で封止し、前記コア封止部のうち複数の前記シールドコアそれぞれの外側面と接触する部分の前記第3方向の他方側の端部は、複数の前記シールドコアの内側面と接触する部分の前記第3方向の他方側の端部よりも、前記第3方向の他方側に位置する、(6)に記載の電力変換装置。
(9) (1)から(8)のいずれか一項に記載の電力変換装置と、前記電力変換装置によって駆動されるモータとを備えた、モータモジュール。
【符号の説明】
【0084】
1,201,301,401…モータモジュール、10,210,310,410…電力変換装置、9,209…ケース、12,212…支持部、12c…収容部、12d,212d…支持面、13a…位置決め面、13b…位置決め面、25…センサ、30…バスバー、40…シールドコア、50,250,350,450…コア封止部、350a…切欠部、350b…第1切欠部(切欠部)、350c…第2切欠部(切欠部)、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B