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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065576
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/29 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B23K9/29 L
B23K9/29 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174509
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】高田 主税
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LB02
4E001LD05
4E001LH04
4E001LH08
4E001MA02
4E001NA01
4E001NA05
(57)【要約】
【課題】小型化および構造の簡素化を図るのに適した溶接トーチを提供する。
【解決手段】溶接トーチA1は、軸線方向zに延びる電極25と、電極25の外側に配置された第1部材26と、電極25の外側に配置されたノズル30と、第1部材26とノズル30に跨って外嵌され、第1部材26とノズル30の双方に係止する係止部材33と、電極25の外側且つノズル30の内側に配置された芯出し部材34と、を備え、芯出し部材34は電極25に対して同心円状に外嵌され、ノズル30は芯出し部材34に対して同心円状に外嵌される。芯出し部材34は、z2側の端部が第1部材26のz1側の端部に当接することでz2側への移動が阻止され、芯出し部材膨出部342とノズル主部301とが当接することでz1側への移動が阻止される。ノズル30は、ノズル膨出部302と中間段部333とが当接することでz1側への移動が阻止される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる非消耗電極と、
前記非消耗電極の径方向外側に配置された筒状の第1部材と、
前記非消耗電極の径方向外側で、且つ前記第1部材に対して前記軸線方向の一方側に配置された筒状の第1ノズルと、
前記第1部材における前記軸線方向の一方側の第1部、および前記第1ノズルにおける前記軸線方向の他方側の第2部に跨って外嵌され、前記第1部材および前記第1ノズルの双方に係止する筒状の係止部材と、
前記非消耗電極の径方向外側で、且つ前記第2部の径方向内側に配置された筒状の電極芯出し部材と、を備え、
前記電極芯出し部材は、前記非消耗電極に対して同心円状に外嵌されており、
前記電極芯出し部材は、円筒状の芯出し部材主部と、前記芯出し部材主部から径方向外方に膨出する芯出し部材膨出部と、を含み、
前記第2部は、前記芯出し部材主部において前記芯出し部材膨出部よりも前記軸線方向の一方側に位置する部位に対して同心円状に外嵌されており、
前記第2部は、円筒状のノズル主部と、前記ノズル主部の前記軸線方向の他方側から径方向外方に膨出するノズル膨出部と、を含み、
前記係止部材は、前記ノズル膨出部に外嵌される大径筒状部と、前記大径筒状部よりも内径寸法が小さく、前記ノズル主部に外嵌される小径筒状部と、前記大径筒状部および前記小径筒状部の双方につながる中間段部と、を含み、
前記電極芯出し部材は、前記軸線方向の他方側の端部が前記第1部に当接することで前記軸線方向の他方側への移動が阻止されており、
前記電極芯出し部材は、前記芯出し部材膨出部と前記第2部とが当接することで前記軸線方向の一方側への移動が阻止されており、
前記第1ノズルは、前記ノズル膨出部と前記中間段部とが当接することで前記軸線方向の一方側への移動が阻止されている、溶接トーチ。
【請求項2】
前記芯出し部材膨出部は、前記軸線方向の一方側に位置する第1当接面を有し、
前記第2部は、前記第1当接面に当接する第2当接面を有し、
前記第1当接面および前記第2当接面の各々は、前記軸線方向の一方側に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜している、請求項1に記載の溶接トーチ。
【請求項3】
前記係止部材の前記大径筒状部と前記第1部材の前記第1部とは、ねじ接続されている、請求項1または2に記載の溶接トーチ。
【請求項4】
前記第1ノズルは、絶縁性材料により構成される、請求項3に記載の溶接トーチ。
【請求項5】
前記第1ノズルおよび前記係止部材の径方向外側に配置された筒状の第2ノズルをさらに備える、請求項4に記載の溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチに関する。
【背景技術】
【0002】
非消耗電極を備えた溶接トーチを用いて行う溶接(TIG溶接法やプラズマ溶接法)では、通常、タングステンで形成された電極(非消耗電極)と被溶接物との間にアークを発生させ、そのアークの熱で被溶接物を溶融する。TIG溶接法では、ガスノズルと電極の間にシールドガスが流される。プラズマ溶接法では、シールドガスに加えて、電極の周囲に配置されたインサートチップの内部にプラズマガスを流すとことで、アーク(プラズマアーク)が拘束される。その結果、集中性の良い高温プラズマ流が発生され、その保有エネルギを利用して溶接を行う。
【0003】
亜鉛めっき鋼板などの比較的融点が低い金属(低溶融金属)を溶接する場合、溶接熱によって亜鉛蒸気やヒュームが生じる。ヒューム等の金属が電極に付着すると、溶接時に発生するアークが不安定となる。TIG溶接法においては、通常、電極の先端がノズル先端から突出しており、当該電極の先端がヒューム等の金属で覆われてしまうと、溶接開始時に着火不良が生ずるおそれがある。プラズマ溶接法においては、通常、電極を囲むインサートチップの先端よりも電極の先端が退避している。また、インサートチップの内部(電極の周囲)にプラズマガスが流される。このため、亜鉛めっき鋼板などの低溶融金属を溶接する場合、プラズマ溶接法では、TIG溶接法と比べてヒューム等の金属は電極に付着しにくい。その一方、プラズマ溶接法では、上記ヒューム等の金属がインサートチップの先端に付着する場合があり、そうするとインサートチップ先端と合金化する。このインサートチップ先端の合金化によって、アーク不良や溶接不良を招くおそれがある。
【0004】
特許文献1においては、インサートチップの先端のプラズマガス噴出孔の周囲に、小径孔からなる複数のサイドプラズマガス噴出孔を設けた構成が開示されている。これら複数のサイドプラズマガス噴出孔を追加的に設けることで、溶接時において、インサートチップの先端へのヒューム等の付着の低減が図られている。しかしながら、特許文献1に記載された構造では、インサートチップの構造が複雑になるとともに、インサートチップ(溶接トーチ)の先端の大型化を招いてしまう。また、電極の周囲に隙間を設けて配置されたインサートチップの軸線が電極の軸芯からずれていると、インサートチップの先端から噴出するプラズマガスに偏流が生じ、溶接品質の低下を招くおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-172644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、構造の簡素化、および小型化を図るのに適した溶接トーチを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
本発明によって提供される溶接トーチは、軸線方向に延びる非消耗電極と、前記非消耗電極の径方向外側に配置された筒状の第1部材と、前記非消耗電極の径方向外側で、且つ前記第1部材に対して前記軸線方向の一方側に配置された筒状の第1ノズルと、前記第1部材における前記軸線方向の一方側の第1部、および前記第1ノズルにおける前記軸線方向の他方側の第2部に跨って外嵌され、前記第1部材および前記第1ノズルの双方に係止する筒状の係止部材と、前記非消耗電極の径方向外側で、且つ前記第2部の径方向内側に配置された筒状の電極芯出し部材と、を備え、前記電極芯出し部材は、前記非消耗電極に対して同心円状に外嵌されており、前記電極芯出し部材は、円筒状の芯出し部材主部と、前記芯出し部材主部から径方向外方に膨出する芯出し部材膨出部と、を含み、前記第2部は、前記芯出し部材主部において前記芯出し部材膨出部よりも前記軸線方向の一方側に位置する部位に対して同心円状に外嵌されており、前記第2部は、円筒状のノズル主部と、前記ノズル主部の前記軸線方向の他方側から径方向外方に膨出するノズル膨出部と、を含み、前記係止部材は、前記ノズル膨出部に外嵌される大径筒状部と、前記大径筒状部よりも内径寸法が小さく、前記ノズル主部に外嵌される小径筒状部と、前記大径筒状部および前記小径筒状部の双方につながる中間段部と、を含み、前記電極芯出し部材は、前記軸線方向の他方側の端部が前記第1部に当接することで前記軸線方向の他方側への移動が阻止されており、前記電極芯出し部材は、前記芯出し部材膨出部と前記第2部とが当接することで前記軸線方向の一方側への移動が阻止されており、前記第1ノズルは、前記ノズル膨出部と前記中間段部とが当接することで前記軸線方向の一方側への移動が阻止されている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、前記芯出し部材膨出部は、前記軸線方向の一方側に位置する第1当接面を有し、前記第2部は、前記第1当接面に当接する第2当接面を有し、前記第1当接面および前記第2当接面の各々は、前記軸線方向の一方側に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜している。
【0010】
好ましい実施の形態においては、前記第1部は、前記軸線方向の一方側に位置する第3当接面を有し、前記芯出し部材膨出部は、前記軸線方向の他方側に位置し、且つ前記第3当接面に当接する第4当接面を有し、前記第3当接面および前記第4当接面の各々は、前記軸線方向の一方側に向かうにつれて径方向寸法が大きくなるように傾斜している。
【0011】
好ましい実施の形態においては、前記ノズル膨出部は、前記軸線方向の一方側に位置する第5当接面を有し、前記中間段部は、前記第5当接面に当接する第6当接面を有し、前記第5当接面および前記第6当接面の各々は、前記軸線方向の一方側に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜している。
【0012】
好ましい実施の形態においては、前記係止部材の前記大径筒状部と前記第1部材の前記第1部とは、ねじ接続されている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、前記第1ノズルは、絶縁性材料により構成される。
【0014】
好ましい実施の形態においては、前記第1ノズルおよび前記係止部材の径方向外側に配置された筒状の第2ノズルをさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る溶接トーチにおいて、第1ノズルは、電極芯出し部材を介して非消耗電極に対して同心円状に配置されている。係止部材は、第1部材における軸線方向の一方側の第1部と、第1ノズルにおける軸線方向の他方側の第2部とに跨って外嵌されており、第1部材および第1ノズルの双方に係止する。このような構成によれば、係止部材と第1部材あるいは第1ノズルとの間には、径方向に多少の融通を持たせることができる。したがって、たとえば非消耗電極が製造誤差等に起因して多少曲がっていても、第1ノズルを非消耗電極に対して同心円状に配置することができる。第1ノズルが芯ずれを起こすと非消耗電極と第1ノズルとの間を流れるガスの偏流を招きやすいが、上述のように電極芯出し部材よび係止部材を具備する構造により、第1ノズルが非消耗電極に対して同心円状に配置されることが担保されている。このことは、溶接品質の向上に適する。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る溶接トーチの一例を示す正面図である。
図2図1に示す溶接トーチの平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3のV-V線に沿う拡大断面図である。
図6図3のVI-VI線に沿う拡大断面図である。
図7図3のVII-VII線に沿う拡大断面図である。
図8図3の部分拡大図である。
図9図3の部分拡大図である。
図10】本発明に係る溶接トーチの変形例を示す、図8と同様の断面図である。
図11】本発明に係る溶接トーチの他の変形例を示す、図8と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。以下の説明における「第1」、「第2」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0019】
図1図9は、本発明に係る溶接トーチの一例を示す。本実施形態の溶接トーチA1は、ハンドル1、トーチボディ2、絶縁リング23,24、非消耗電極25、コレットボディ26、コレット27、コレット押え部材28、キャップ29、内側ノズル30、外側ノズル31、ノズルホルダ32、係止部材33、電極芯出し部材34、第1ガス配管41、第2ガス配管42、第1冷却水配管43および第2冷却水配管44を備えている。本実施形態の溶接トーチA1は、作業者が手で把持して溶接作業を行うように構成されている。また、詳細は後述するが、溶接トーチA1においては、所定の溶接用ガスを流すための2つのガス流路(第1ガス流路G1および第2ガス流路G2)が形成されている。
【0020】
なお、溶接トーチA1の説明において、図1図3における図中上下方向は、本発明の「軸線方向」の一例であり、「軸線方向z」と呼ぶ。図3図9において軸線方向zに対して直交する方向(図中左右方向)は、「第1方向x」と呼ぶ。また、図1図3において図中下側は本発明の「軸線方向の一方側」の一例であり、「軸線方向一方側z1」と呼び、図中上側は本発明の「軸線方向の他方側」の一例であり、「軸線方向他方側z2」と呼ぶ。
【0021】
ハンドル1は、作業者が手で把持するための部位である。図3に示すように、ハンドル1は、絶縁性材料からなる筒状部材である。
【0022】
トーチボディ2は、筒状であり、端部がハンドル1に保持されている。トーチボディ2は、ボディ本体20、筒状部材21および筒状部材22を含む。ボディ本体20は、溶接トーチA1の構成要素を適宜内部に収容している。ボディ本体20は、絶縁性材料からなる。ボディ本体20は、第1筒状部20Aおよび第2筒状部20Bを有する。
【0023】
第1筒状部20Aは、軸線方向zに沿って延びている。第2筒状部20Bは、第1筒状部20Aに対して分岐状につながっている。第2筒状部20Bは、軸線方向zに対して交差する方向(図3においては図中右上方向)に延びている。図示した例では、第1筒状部20Aが延びる方向(軸線方向z)と第2筒状部20Bが延びる方向とのなす角度は、約65°である。なお、第1筒状部20Aが延びる方向(軸線方向z)と第2筒状部20Bが延びる方向とのなす角度は特に限定されず、たとえば直角(90°)であってもよい。第2筒状部20Bの端部(図3の右上側の端部)は、ハンドル1の端部に保持されている。図示した例では、第2筒状部20Bの端部とハンドル1の端部とが、互いにねじ接続により固定されている。
【0024】
筒状部材21は、第1筒状部20Aの径方向内側に配置されている。筒状部材21は、図示しない電源部からの電力供給を受ける部材であり、導電性材料よりなる。筒状部材21を構成する導電性材料としては、たとえば銅が挙げられる。図9に示すように、筒状部材21は、第1ガス流入口211、第2ガス流入口212、凹溝213、テーパー面214および雌ねじ部215を有する。筒状部材22は、筒状部材21の径方向外側に配置されている。筒状部材21および筒状部材22の詳細については後述する。
【0025】
絶縁リング23,24は、それぞれ、絶縁性材料からなる筒状部材である。絶縁リング23は、第1筒状部20Aに対して軸線方向他方側z2に隣接して配置される。絶縁リング24は、第2筒状部20Bに対して軸線方向一方側z1に隣接して配置される。
【0026】
非消耗電極25は、軸線方向z(軸線CLが延びる方向)に沿って延びる棒状の導体である。非消耗電極25は、たとえばタングステンからなる。非消耗電極25は、たとえばコンジットケーブル(図示略)を介して図示しない電源部に接続されており、被溶接物との間にアーク電圧を印加した際には被溶接物との間にアークを発生させる。
【0027】
非消耗電極25は、電極主部251および電極テーパー部252を有する。電極主部251は、外径寸法が一定とされた部位であり、非消耗電極25の先端を除いた大部分を占める。なお、電極主部251は、設計上において外径寸法が一定となるように略円柱状に形成された部位であり、製造上における多少の誤差を含み得る。電極主部251の外径寸法は特に限定されず、本実施形態においては、たとえば約1.6.~4.0mmである。電極テーパー部252は、電極主部251に対して非消耗電極25の先端側(軸線方向一方側z1)につながっている。電極テーパー部252は、非消耗電極25の先端側(軸線方向一方側z1)に向かうにつれて径寸法が小とされており、略円錐形状である。
【0028】
コレットボディ26、コレット27およびコレット押え部材28は、これらが互いに協働することにより非消耗電極25を保持するものである。コレットボディ26、コレット27およびコレット押え部材28は、導電性材料よりなる。コレットボディ26、コレット27およびコレット押え部材28を構成する導電性材料としては、たとえば銅が挙げられる。
【0029】
コレット27は、非消耗電極25を囲んでいる。コレットボディ26は、コレット27の径方向外側に配置されている。また、コレットボディ26は、筒状部材21の径方向内側に配置されている。詳細な図示説明は省略するが、コレットボディ26は、筒状部材21に対して、たとえばねじ接続などにより固定されている。
【0030】
コレット押え部材28は、コレット27に対して軸線方向他方側z2に配置されている。詳細な図示説明は省略するが、コレット押え部材28は、筒状部材21に対してねじ部が螺合している。図8に示すように、筒状部材21の上端部(軸線方向他方側z2の端部)には雌ねじ部215が形成されており、コレット押え部材28の上記ねじ部は、雌ねじ部215に螺合している。コレット押え部材28の軸線方向他方側z2にはキャップ29が設けられている。このキャップ29を回すことによって、コレット押え部材28は、コレットボディ26に対する軸線方向zの位置の調整が可能である。コレット押え部材28の軸線方向一方側z1の端部は、コレット27の軸線方向他方側z2の端部に当接している。コレット押え部材28を軸線方向一方側z1に移動させると、コレット27は軸線方向一方側z1に押し付けられる。
【0031】
コレット27は、先端側(軸線方向一方側z1)において軸線方向zに延びる複数のスリットが形成されており、隣接する相互のスリットの間に位置する複数ずつの可動片271を有する。上述のように、コレット押え部材28を軸線方向一方側z1に移動させると、コレット27は軸線方向一方側z1に押し付けられる。そして、コレット27先端の複数の可動片271がコレットボディ26の先端部に押し付けられて縮径し、コレット27が非消耗電極25を挟んで保持する。このように、コレットボディ26、コレット27およびコレット押え部材28が互いに協働することによって、非消耗電極25が保持される。
【0032】
図3に示すように、内側ノズル30は、非消耗電極25の先端部(軸線方向一方側z1の端部)の周囲に配置されている。内側ノズル30は、コレットボディ26に対して軸線方向一方側z1に配置されている。内側ノズル30は、概略円筒状とされており、非消耗電極25(電極主部251)の径方向外側に配置されている。本実施形態では、内側ノズル30と非消耗電極25との間には、電極芯出し部材34が介在している。
【0033】
図8に示すように、内側ノズル30は、ノズル主部301、ノズル膨出部302および先端側円筒部303を含む。ノズル主部301は、軸線方向他方側z2寄りに位置し、略円筒状である。ノズル膨出部302は、ノズル主部301の軸線方向他方側z2から径方向外方に膨出している。先端側円筒部303は、ノズル主部301の軸線方向一方側z1につながり、軸線方向一方側z1に延びる。ノズル主部301は、第2当接面301aを有する。第2当接面301aは、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜するテーパー面である。ノズル膨出部302は、第5当接面302aを有する。ノズル膨出部302は、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜するテーパー面である。上記構成の内側ノズル30は、絶縁性材料により構成される。内側ノズル30の構成材料は特に限定されず、たとえばアルミナなどのセラミックス材料や耐熱フェノールなどの樹脂材料が挙げられる。なお、内側ノズル30は、本発明の「第1ノズル」の一例に相当する。
【0034】
図8に示すように、係止部材33は、コレットボディ26および内側ノズル30の双方に跨って外嵌されている。より具体的には、係止部材33は、コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)と、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の端部(第2部)とに跨って外嵌されている。
【0035】
係止部材33は、大径筒状部331、小径筒状部332および中間段部333を含む。大径筒状部331は、軸線方向他方側z2に位置し、ノズル膨出部302に外嵌されている。小径筒状部332は、大径筒状部331よりも内径寸法が小さくされている。小径筒状部332は、軸線方向一方側z1に位置し、ノズル主部301に外嵌されている。中間段部333は、係止部材33における軸線方向zの中央に設けられており、大径筒状部331および小径筒状部332の双方につながる。大径筒状部331は、雌ねじ部331aを有する。雌ねじ部331aは、大径筒状部331の内周に形成されている。中間段部333は、第6当接面333aを有する。第6当接面333aは、中間段部333の内周に形成されている。第6当接面333aは、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜するテーパー面である。第6当接面333aは、ノズル膨出部302の第5当接面302aに当接している。図示した例において、係止部材33は、袋ナット構造とされている。
【0036】
本実施形態においては、図3図8に示すように、係止部材33(大径筒状部331)とコレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)とは、ねじ接続されている。たとえばコレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部の外周には雄ねじ部261aが形成されており、係止部材33(大径筒状部331)に形成された雌ねじ部331aがコレットボディ26の雄ねじ部261aに螺合している。一方、図8に示すように、係止部材33の軸線方向一方側z1の小径筒状部332は、ノズル主部301に外嵌されるとともに、内側ノズル30の軸線方向他方側z2のノズル膨出部302(第5当接面302a)と中間段部333(第6当接面333a)とが当接している。これにより、内側ノズル30および係止部材33の軸線方向zへの相対移動が制限されており、内側ノズル30は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。なお、上記構成のコレットボディ26は、本発明の「第1部材」の一例に相当する。
【0037】
図8に示すように、電極芯出し部材34は、筒状とされており、非消耗電極25の径方向外側で、且つ内側ノズル30の径方向内側に配置されている。電極芯出し部材34は、芯出し部材主部341および芯出し部材膨出部342を含む。芯出し部材主部341は、概略円筒状とされている。内側ノズル30におけるノズル主部301の内周には凹部301bが形成されており、この凹部301bに芯出し部材主部341が内嵌されている。芯出し部材膨出部342は、芯出し部材主部341から径方向外方に膨出している。図示した例では、芯出し部材膨出部342は、芯出し部材主部341の軸線方向他方側z2から径方向外方に膨出している。
【0038】
芯出し部材膨出部342は、第1当接面342aおよび第4当接面342bを有する。第1当接面342aおよび第4当接面342bは、芯出し部材膨出部342の外周に形成されている。第1当接面342aは、軸線方向一方側z1に位置し、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜するテーパー面である。第1当接面342aは、ノズル主部301の第2当接面301aに当接している。第4当接面342bは、軸線方向他方側z2に位置し、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が大きくなるように傾斜するテーパー面である。コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)には、第3当接面262aが形成されている。第3当接面262aは、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が大きくなるように傾斜するテーパー面であり、コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端縁につながる。この第3当接面262aに、第4当接面342bが当接している。
【0039】
電極芯出し部材34(芯出し部材主部341)の内径寸法は非消耗電極25(電極主部251)の外径寸法よりも僅かに大きい。これにより、電極芯出し部材34は、非消耗電極25に対して同心円状に外嵌されている。また、内側ノズル30のノズル主部301(凹部301b)の内径寸法は芯出し部材主部341の外径寸法よりも僅かに大きい。これにより、内側ノズル30は、電極芯出し部材34(芯出し部材主部341)に対して同心円状に外嵌されている。したがって、内側ノズル30は、電極芯出し部材34を介して、非消耗電極25に対して同心円状に配置されている。
【0040】
図示した内側ノズル30、係止部材33、電極芯出し部材34の取り付け構造において、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342(第1当接面342a)と内側ノズル30のノズル主部301(第2部、第2当接面301a)とが当接している。これにより、電極芯出し部材34および内側ノズル30の軸線方向zへの相対移動が制限されており、電極芯出し部材34は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。また、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342(第4当接面342b)とコレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部、第3当接面262a)とが当接している。これにより、電極芯出し部材34およびコレットボディ26の軸線方向zへの相対移動が制限されており、電極芯出し部材34は、軸線方向他方側z2への移動が阻止されている。
【0041】
図7に示すように、電極芯出し部材34(芯出し部材主部341)の内周部には、複数の凹溝341aが形成されている。これら凹溝341aは、電極芯出し部材34の周方向に一定間隔で設けられている。凹溝341aが形成された部位は、非消耗電極25との間に隙間が形成されており、当該隙間が後述の第1ガス流路G1を構成している。
【0042】
図8に示すように、本実施形態において、非消耗電極25の先端は、軸線方向zにおいて内側ノズル30の先端と一致する、あるいは内側ノズル30の先端から軸線方向一方側z1に少し突出している。非消耗電極25の先端が内側ノズル30の先端から軸線方向一方側z1に突出する突出長さP1は、たとえば0~2mmの範囲である。
【0043】
ノズルホルダ32は、筒状とされている。ノズルホルダ32は、コレットボディ26の軸線方向zの中間部の外周に、たとえばろう付け等の手段によって一体に連結されている。
【0044】
図3図8に示すように、外側ノズル31は、内側ノズル30の径方向外側に配置されている。外側ノズル31は、第1筒状部20Aに対して軸線方向一方側z1に配置されており、外側ノズル31と第1筒状部20Aとの間に絶縁リング24が介在している。図示した例では、外側ノズル31は、概略円筒状とされており、先端側(軸線方向一方側z1)が他の部位と比べて小径とされている。本実施形態において、外側ノズル31は、非消耗電極25および内側ノズル30に対して同心円状に配置されている。外側ノズル31は、たとえばノズルホルダ32の外周にねじ接続により取り付けられている。なお、外側ノズル31は、本発明の「第2ノズル」の一例に相当する。
【0045】
図8に示すように、本実施形態において、内側ノズル30の先端は、外側ノズル31の先端から軸線方向一方側z1に突出している。内側ノズル30の先端が外側ノズル31の先端から軸線方向一方側z1に突出する突出長さP2は、たとえば0~5mmの範囲である。
【0046】
図3図9に示すように、本実施形態において、溶接トーチA1には、第1ガス流路G1、第2ガス流路G2および冷却水流路Wが形成されている。
【0047】
本実施形態において、溶接トーチA1に供給される溶接用ガスは、ガス種や流量などのガス供給態様が異なる2種類の不活性ガスを含む。当該2種類の不活性ガスは、説明の便宜上、適宜「第1不活性ガス」および「第2不活性ガス」と区別する。
【0048】
第1ガス流路G1は、第1不活性ガスを流すための流路である。図3図8において、第1不活性ガスの流れを二点鎖線の矢印で示す。第1ガス流路G1は、コレット27とコレットボディ26との間、非消耗電極25(電極主部251)とコレット27との間、非消耗電極25(電極主部251)とコレットボディ26との間、非消耗電極25(電極主部251)と電極芯出し部材34(芯出し部材主部341)との間、および非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30(先端側円筒部303)との間、にそれぞれ形成されている。
【0049】
本実施形態では、図3図9に示すように、トーチボディ2(筒状部材21)には、第1不活性ガスを導入する第1ガス流入口211が設けられている。第1ガス流入口211は第1ガス流路G1に通じている。第1ガス流入口211から第1不活性ガスが導入されると、当該第1不活性ガスは、第1ガス流路G1において軸線方向他方側z2から軸線方向一方側z1に流れ、非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30との間を通過した後に内側ノズル30の先端の開口305から噴出する。
【0050】
第2ガス流路G2は、第2不活性ガスを流すための流路である。図3図8において、第2不活性ガスの流れを点線の矢印で示す。第2ガス流路G2は、コレットボディ26と筒状部材21との間、コレットボディ26と絶縁リング24との間、ノズルホルダ32、係止部材33と外側ノズル31との間、および内側ノズル30と外側ノズル31との間、にそれぞれ形成されている。
【0051】
本実施形態では、図3図9に示すように、トーチボディ2(筒状部材21)には、第2不活性ガスを導入する第2ガス流入口212が設けられている。第2ガス流入口212は第2ガス流路G2に通じている。第2ガス流入口212から第2不活性ガスが導入されると、当該第2不活性ガスは、第2ガス流路G2において軸線方向他方側z2から軸線方向一方側z1に流れ、内側ノズル30と外側ノズル31との間を通過した後に外側ノズル31の先端の開口315から噴出する。
【0052】
冷却水流路Wは、冷却水を流すための流路である。図4に示すように、冷却水流路Wは、非消耗電極25の周方向に沿って形成されている。冷却水流路Wは、主に筒状部材21と筒状部材22との間に形成されている。
【0053】
図9等を参照して、筒状部材21の第1ガス流入口211、第2ガス流入口212、凹溝213、テーパー面214および雌ねじ部215について説明する。図9に示すように、第1ガス流入口211は、第2ガス流入口212に対して軸線方向他方側z2に位置する。第1ガス流入口211は、第1方向xに対して傾斜している。第1ガス流入口211は、第1方向xにおいて非消耗電極25に近づくにつれて軸線方向一方側z1に位置するように傾斜している。
【0054】
第2ガス流入口212は、第1方向xに対して傾斜している。第2ガス流入口212は、第1方向xにおいて非消耗電極25に近づくにつれて軸線方向一方側z1に位置するように傾斜している。筒状部材21の径方向外側にある第1筒状部20Aは、軸線方向zにおいて第1ガス流入口211および第2ガス流入口212を跨いで配置されている。
【0055】
テーパー面214には、第2ガス流入口212の開口端が位置する。テーパー面214は、非消耗電極25に近づくにつれて軸線方向他方側z2に位置するように傾斜している。図9に示した断面において、テーパー面214と第2ガス流入口212とのなす角度は、略直角である。
【0056】
凹溝213は、筒状部材21の外周面の一部が径方向内側に凹んだ部位である。筒状部材22は、概略円筒状であり、筒状部材21の径方向外側に配置されている。筒状部材22は、凹溝213を径方向外側から塞いでいる。図4図9に示すように、本実施形態においては、凹溝213とこれを塞ぐ筒状部材22との間の空間により、冷却水流路Wが構成される。また、本実施形態では、図9に示すように、冷却水流路Wは、軸線方向zにおいて第1ガス流入口211と筒状部材22との間に位置する。
【0057】
図9に示すように、雌ねじ部215は、第1ガス流入口211に対して軸線方向他方側z2に隣接している。この雌ねじ部215には、上述のようにコレット押え部材28のねじ部が螺合している。
【0058】
図3図9に示すように、第1ガス配管41および第2ガス配管42は、第2筒状部20Bの内部を挿通する。第1ガス配管41は、第1ガス流路G1を流す配管であり、筒状部材21の第1ガス流入口211に通じている。第2ガス配管42は、第2ガス流路G2を流す配管であり、筒状部材21の第2ガス流入口212に通じている。第2筒状部20Bは、第1筒状部20A寄りの部位がハンドル1寄りの部位よも小径とされた括れ形状である。図示した例では、この第2筒状部20Bの括れ形状に対応して、第1ガス配管41および第2ガス配管42は適宜屈曲している。第1ガス配管41において第1ガス流入口211に通じる側の端部は、第1方向xに沿って延びる。
【0059】
図4に示すように、第1冷却水配管43および第2冷却水配管44は、第2筒状部20Bの内部を挿通する。図示した例では、第1冷却水配管43は、上述の冷却水流路Wに向けて冷却水を送るための配管である。第2冷却水配管44は、冷却水流路Wを流れた冷却水を外部に送り出すための配管である。第1冷却水配管43の第1筒状部20A側の端部は、冷却水流路Wの一方の端部に通じている。第2冷却水配管44の第1筒状部20Aの端部は、冷却水流路Wの他方の端部に通じている。これにより、図4に示すように、冷却水は、第1冷却水配管43、冷却水流路W、第2冷却水配管44の順に流れる。図4において、冷却水の流れを実線の矢印で表す。
【0060】
溶接トーチA1に供給される第1不活性ガスおよび第2不活性ガスの各々のガス種は特に限定されず、たとえばアルゴン(Ar)ガスおよびヘリウム(He)ガスより選択される少なくとも1種を含むガスである。溶接トーチA1に供給される第1不活性ガスのおよび第2不活性ガスの流量は、溶接条件等により適宜個別に調整される。
【0061】
図8に示すように、第1ガス流路G1における非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30(先端側円筒部303)との隙間は、第2ガス流路G2における内側ノズル30(先端側円筒部303)と外側ノズル31との隙間よりも小さい。第1ガス流路G1において非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30(先端側円筒部303)との最小隙間L1は、たとえば0.4~1.8mm程度である。第2ガス流路G2において内側ノズル30(先端側円筒部303)と外側ノズル31との最小隙間L2は、たとえば1~4mm程度である。最小隙間L2に対する最小隙間L1の割合について、最小隙間L1は、たとえば最小隙間L2の0.2~0.5倍であり、好ましくは最小隙間L2の0.2~0.3倍である。
【0062】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0063】
本実施形態の溶接トーチA1は、軸線方向zに延びる非消耗電極25と、コレットボディ26(第1部材)と、内側ノズル30(第1ノズル)と、係止部材33と、電極芯出し部材34と、を備える。電極芯出し部材34は、非消耗電極25に対して同心円状に外嵌されている。また、内側ノズル30(ノズル主部301)は、電極芯出し部材34(芯出し部材主部341)に対して同心円状に外嵌されている。これにより、内側ノズル30は、電極芯出し部材34を介して、非消耗電極25に対して同心円状に配置されている。係止部材33は、コレットボディ26(第1部材)の軸線方向一方側z1の端部(第1部)と、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の端部(第2部)とに跨って外嵌されており、コレットボディ26および内側ノズル30の双方に係止する。このような構成によれば、係止部材33とコレットボディ26あるいは内側ノズル30との間には径方向に多少の融通を持たせることができる。したがって、たとえば非消耗電極25が製造誤差等に起因して多少曲がっていても、内側ノズル30を非消耗電極25に対して同心円状に配置することができる。
【0064】
内側ノズル30が非消耗電極25に対して芯ずれを起こすと、内側ノズル30の先端の開口305から噴出する第1不活性ガス(プラズマガス)に偏流が生じる。第1ガス流路G1を構成する非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30(先端側円筒部303)との最小隙間L1は狭く、内側ノズル30が芯ずれを起こすと第1不活性ガス(プラズマガス)の偏流を招きやすいが、上述のように電極芯出し部材34および係止部材33を具備する構造により、内側ノズル30が非消耗電極25に対して同心円状に配置されることが担保されている。このことは、溶接品質の向上に適する。
【0065】
また、内側ノズル30が非消耗電極25の径方向外側に同心円状に配置されているため、非消耗電極25と内側ノズル30との間の第1ガス流路G1を流れるガス(第1不活性ガス)については、非消耗電極25の周囲において略均一で比較的に高速な気流となって、内側ノズル30先端の開口305から噴出する。これにより、亜鉛めっき鋼板などの低溶融金属よりなる被溶接物を溶接する場合においても、非消耗電極25の周囲を流れた高速気流の第1不活性ガスによって、溶接時に生じたヒューム等が吹き飛ばされる。したがって、非消耗電極25先端や内側ノズル30先端へのヒューム等の付着を防止することができる。
【0066】
係止部材33とコレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)とは、ねじ接続されている。このような構成によれば、比較的簡単な構造によって、係止部材33とコレットボディ26との間に適度な寸法の融通を持たせることができる。また、内側ノズル30を交換する際には、係止部材33の雌ねじ部331aを緩めることで内側ノズル30を容易に取り外すことが可能であり、内側ノズル30の交換作業性に優れる。
【0067】
内側ノズル30、係止部材33、電極芯出し部材34の取り付け構造において、電極芯出し部材34の軸線方向他方側z2の端部(芯出し部材膨出部342)は、コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)に当接している。これにより、電極芯出し部材34は、軸線方向他方側z2への移動が阻止されている。また、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342と、内側ノズル30のノズル主部301(第2部)とが当接している。これにより、電極芯出し部材34は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。また、内側ノズル30の軸線方向他方側z2のノズル膨出部302と係止部材33の中間段部333とが当接している。これにより、内側ノズル30は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。このような構成により、係止部材33(大径筒状部331)の雌ねじ部331aとコレットボディ26の雄ねじ部261aとを締め込むと、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の部位(ノズル主部301の一部とノズル膨出部302)は、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342と係止部材33の中間段部333とにより軸線方向zの両側から圧縮力が作用し、強固に保持される。
【0068】
本実施形態においては、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342は、軸線方向一方側z1に位置する第1当接面342aを有する。内側ノズル30のノズル主部301は、第1当接面342aに当接する第2当接面301aを有する。第1当接面342aおよび第2当接面301aの各々は、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜している。このような構成によれば、電極芯出し部材34に対する内側ノズル30の芯出し精度を向上することができる。
【0069】
本実施形態においては、コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)は、第3当接面262aを有する。電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342は、軸線方向他方側z2に位置する第4当接面342bを有する。第4当接面342bは、第3当接面262aに当接しており、第3当接面262aおよび第4当接面342bの各々は、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が大きくなるように傾斜している。このような構成によれば、非消耗電極25に対する電極芯出し部材34の芯出し精度を向上することができる。
【0070】
本実施形態においては、内側ノズル30のノズル膨出部302は、軸線方向一方側z1に位置する第5当接面302aを有する。係止部材33の中間段部333は、第5当接面302aに当接する第6当接面333aを有する。第5当接面302aおよび第6当接面333aの各々は、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜している。このような構成によれば、電極芯出し部材34に対する内側ノズル30の芯出し精度をより向上することができる。
【0071】
内側ノズル30は、絶縁性材料により構成される。絶縁性材料は、圧縮強度が引張り強度よりも高い。本実施形態では、上述のように、係止部材33(大径筒状部331)の雌ねじ部331aとコレットボディ26の雄ねじ部261aとを締め込。これにより、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の部位(ノズル主部301の一部とノズル膨出部302)は、電極芯出し部材34(芯出し部材膨出部342)と係止部材33(中間段部333)とにより軸線方向zの両側から圧縮力が作用して、強固に保持される。このような構成は、内側ノズル30の耐久性を高めるうえで好ましい。
【0072】
本実施形態においては、外側ノズル31は、内側ノズル30の径方向外側に配置されており、内側ノズル30と外側ノズル31との間には、第2ガス流路G2が形成されている。このような構成によれば、溶接作業時には、第1ガス流路G1を流れて内側ノズル30の先端から噴出する第1不活性ガスがプラズマガスとして機能し、かつ第2ガス流路G2を流れて外側ノズル31の先端から噴出する第2不活性ガスがシールドガスとして機能する。これにより、被溶接物と非消耗電極25先端との間に発生するアークが絞られ、エネルギ密度の高いアーク(プラズマアーク)を利用して、溶接を効率よく行うことができる。
【0073】
さらに、非消耗電極25の先端は軸線方向zにおいて内側ノズル30の先端と一致する、あるいは内側ノズル30の先端から軸線方向一方側z1に少し突出している。非消耗電極25の先端が内側ノズル30の先端から軸線方向一方側z1に突出する突出長さP1は、0~2mmの範囲である。このような非消耗電極25の先端位置によれば、非消耗電極25と内側ノズル30との隙間については内側ノズル30の軸線方向zの中間から先端近傍に至る範囲において略一定に狭く保たれる。したがって、非消耗電極25の周囲を流れる高速気流の第1不活性ガスは、内側ノズル30先端の開口305から、流速が殆ど低下せずに噴出する。このことは、非消耗電極25先端や内側ノズル30先端へのヒューム等の付着を防止する上で好ましい。また、上述の作用効果は内側ノズル30の形状や配置の工夫により実現され、溶接トーチA1の構造を比較的簡素にし、かつ溶接トーチA1の先端部の小型化を図ることが可能である。
【0074】
溶接トーチA1において、第1ガス流路G1における非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30(先端側円筒部303)との最小隙間L1は、第2ガス流路G2における内側ノズル30(先端側円筒部303)と外側ノズル31との最小隙間L2よりも小さい。このような構成によれば、非消耗電極25と内側ノズル30との間を流れる第1不活性ガスの流速を効率よく速めることが可能である。したがって、非消耗電極25先端や内側ノズル30先端へのヒューム等の付着が適切に防止されるとともに被溶接物と非消耗電極25との間に生ずるアーク(プラズマアーク)が緊縮され、当該アークの集中性がより高まる。
【0075】
図10は、本発明に係る溶接トーチの変形例を示している。図10に示した溶接トーチA11においては、コレットボディ26、内側ノズル30、係止部材33および電極芯出し部材34の構成が上記実施形態の溶接トーチA1と異なっている。
【0076】
溶接トーチA11においては、コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部には、上記実施形態の第3当接面262aが形成されていない。電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342には、第4当接面342bが形成されていない。そして、電極芯出し部材34(芯出し部材主部341および芯出し部材膨出部342)の軸線方向他方側z2を向く環状の平端面が、コレットボディ26の軸線方向一方側z1を向く環状の平端面に当接している。また、内側ノズル30のノズル膨出部302には、上記実施形態の第5当接面302aが形成されていない。係止部材33の中間段部333には、第6当接面333aが形成されていない。そして、ノズル膨出部302の軸線方向一方側z1を向く環状の平端面と、中間段部333の軸線方向他方側z2を向く環状の平端面とが当接している。
【0077】
本変形例の溶接トーチA11においては、上記実施形態の溶接トーチA1と同様に、内側ノズル30は、電極芯出し部材34を介して、非消耗電極25に対して同心円状に配置されている。係止部材33は、コレットボディ26(第1部材)の軸線方向一方側z1の端部(第1部)と、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の端部(第2部)とに跨って外嵌されており、コレットボディ26および内側ノズル30の双方に係止する。このような構成によれば、係止部材33とコレットボディ26あるいは内側ノズル30との間には径方向に多少の融通を持たせることができる。したがって、たとえば非消耗電極25が製造誤差等に起因して多少曲がっていても、内側ノズル30を非消耗電極25に対して同心円状に配置することができる。
【0078】
内側ノズル30が非消耗電極25に対して芯ずれを起こすと、内側ノズル30の先端の開口305から噴出する第1不活性ガス(プラズマガス)に偏流が生じる。第1ガス流路G1を構成する非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30(先端側円筒部303)との最小隙間L1は狭く、内側ノズル30が芯ずれを起こすと第1不活性ガス(プラズマガス)の偏流を招きやすいが、上述のように電極芯出し部材34および係止部材33を具備する構造により、内側ノズル30が非消耗電極25に対して同心円状に配置されることが担保されている。このことは、溶接品質の向上に適する。
【0079】
溶接トーチA11において、電極芯出し部材34の軸線方向他方側z2の端部(芯出し部材主部341および芯出し部材膨出部342)は、コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)に当接している。これにより、電極芯出し部材34は、軸線方向他方側z2への移動が阻止されている。また、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342と、内側ノズル30のノズル主部301(第2部)とが当接している。これにより、電極芯出し部材34は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。また、内側ノズル30の軸線方向他方側z2のノズル膨出部302と係止部材33の中間段部333とが当接している。これにより、内側ノズル30は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。このような構成により、係止部材33(大径筒状部331)の雌ねじ部331aとコレットボディ26の雄ねじ部261aとを締め込むと、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の部位(ノズル主部301の一部とノズル膨出部302)は、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342と係止部材33の中間段部333とにより軸線方向zの両側から圧縮力が作用し、強固に保持される。
【0080】
溶接トーチA11においては、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342は、軸線方向一方側z1に位置する第1当接面342aを有する。内側ノズル30のノズル主部301は、第1当接面342aに当接する第2当接面301aを有する。第1当接面342aおよび第2当接面301aの各々は、軸線方向一方側z1に向かうにつれて径方向寸法が小さくなるように傾斜している。このような構成によれば、電極芯出し部材34に対する内側ノズル30の芯出し精度を向上することができる。その他にも、溶接トーチA11は、上記実施形態の溶接トーチA1と同様の構成の範囲において、上記実施形態の溶接トーチA1と同様の作用効果を奏する。
【0081】
図11は、本発明に係る溶接トーチの他の変形例を示している。図11に示した溶接トーチA12においては、内側ノズル30および電極芯出し部材34の構成が、図10に示した上記変形例の溶接トーチA11と異なっている。
【0082】
溶接トーチA12においては、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342には、第1当接面342aが形成されていない。また、内側ノズル30のノズル主部301には、第2当接面301aが形成されていない。そして、芯出し部材膨出部342の軸線方向一方側z1を向く環状の平端面と、ノズル主部301の軸線方向他方側z2を向く環状の平端面とが当接している。
【0083】
本変形例の溶接トーチA12においては、上記実施形態の溶接トーチA1と同様に、内側ノズル30は、電極芯出し部材34を介して、非消耗電極25に対して同心円状に配置されている。係止部材33は、コレットボディ26(第1部材)の軸線方向一方側z1の端部(第1部)と、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の端部(第2部)とに跨って外嵌されており、コレットボディ26および内側ノズル30の双方に係止する。このような構成によれば、係止部材33とコレットボディ26あるいは内側ノズル30との間には径方向に多少の融通を持たせることができる。したがって、たとえば非消耗電極25が製造誤差等に起因して多少曲がっていても、内側ノズル30を非消耗電極25に対して同心円状に配置することができる。
【0084】
内側ノズル30が非消耗電極25に対して芯ずれを起こすと、内側ノズル30の先端の開口305から噴出する第1不活性ガス(プラズマガス)に偏流が生じる。第1ガス流路G1を構成する非消耗電極25(電極主部251)と内側ノズル30(先端側円筒部303)との最小隙間L1は狭く、内側ノズル30が芯ずれを起こすと第1不活性ガス(プラズマガス)の偏流を招きやすいが、上述のように電極芯出し部材34および係止部材33を具備する構造により、内側ノズル30が非消耗電極25に対して同心円状に配置されることが担保されている。このことは、溶接品質の向上に適する。
【0085】
溶接トーチA12において、電極芯出し部材34の軸線方向他方側z2の端部(芯出し部材主部341および芯出し部材膨出部342)は、コレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部(第1部)に当接している。これにより、電極芯出し部材34は、軸線方向他方側z2への移動が阻止されている。また、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342と、内側ノズル30のノズル主部301(第2部)とが当接している。これにより、電極芯出し部材34は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。また、内側ノズル30の軸線方向他方側z2のノズル膨出部302と係止部材33の中間段部333とが当接している。これにより、内側ノズル30は、軸線方向一方側z1への移動が阻止されている。このような構成により、係止部材33(大径筒状部331)の雌ねじ部331aとコレットボディ26の雄ねじ部261aとを締め込むと、内側ノズル30の軸線方向他方側z2の部位(ノズル主部301の一部とノズル膨出部302)は、電極芯出し部材34の芯出し部材膨出部342と係止部材33の中間段部333とにより軸線方向zの両側から圧縮力が作用し、強固に保持される。その他にも、溶接トーチA12は、上記実施形態の溶接トーチA1と同様の構成の範囲において、上記実施形態の溶接トーチA1と同様の作用効果を奏する。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0087】
上記実施形態においては、係止部材33(大径筒状部331)の雌ねじ部331aとコレットボディ26の雄ねじ部261aとが螺合することで係止部材33がコレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部に係止していたが、この構成に限定されない。たとえばコレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部と係止部材33(大径筒状部331)とを圧入状態に嵌合することで、係止部材33がコレットボディ26の軸線方向一方側z1の端部に係止する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
A1,A11,A12:溶接トーチ、25:非消耗電極、26:コレットボディ(第1部材)、30:内側ノズル(第1ノズル)、301:ノズル主部、301a:第2当接面、302:ノズル膨出部、31:外側ノズル(第2ノズル)、33:係止部材、331:大径筒状部、332:小径筒状部、333:中間段部、34:電極芯出し部材、341:芯出し部材主部、342:芯出し部材膨出部、342a:第1当接面、z:軸線方向、z1:軸線方向一方側、z2:軸線方向他方側
図1
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図11