(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006558
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ファン付ポーチ
(51)【国際特許分類】
A45C 15/00 20060101AFI20240110BHJP
A45F 3/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A45C15/00 D
A45F3/00 520
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107574
(22)【出願日】2022-07-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日:令和3年11月16日刊行物:モノ・マガジン、第40巻、第22号発行者:株式会社ワールドフォトプレス公開者:豊鷹株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511274592
【氏名又は名称】豊鷹株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】古河 豊光
(72)【発明者】
【氏名】古河 隆治
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045AA55
3B045CD00
3B045FC08
3B045GA04
3B045LA10
3B045LB01
(57)【要約】
【課題】ポーチに外力が作用してもポーチの変形を抑えることができ、これによってポーチ内の気道空間を保って安定的に送風機能を発揮することができるファン付ポーチを提供する。
【解決手段】外気導入部2a及び吹出部2bを有するポーチ2と、ポーチ2内に収容されるファン3と、ファン3が外気導入部2aを通して吸い込んだ空気を吹出部2bから吹き出すための気道空間10をポーチ2内に形成するようにポーチ2を保形するスペーサ4とを備えるものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入部及び吹出部を有するポーチと、
前記ポーチ内に収容されるファンと、
前記ファンが前記外気導入部を通して吸い込んだ空気を前記吹出部から吹き出すための気道空間を前記ポーチ内に形成するように前記ポーチを保形するスペーサと、
を備えるファン付ポーチ。
【請求項2】
前記ポーチは、前記外気導入部が形成された正面部と、前記正面部と対向する背面部と、前記正面部及び前記背面部の側部どうしを連結する側面部とを有し、
前記スペーサは、前記正面部に当接される主面部と、前記主面部の側部に連設されて前記側面部に当接されるフラップ部とを有する請求項1に記載のファン付ポーチ。
【請求項3】
前記ファンは、前記外気導入部を通して空気を吸い込むファン吸込口を有し、
前記外気導入部は、外気導入方向から見て、前記ファン吸込口と重なる領域及び重ならない領域があり、
前記主面部は、前記ファン吸込口に対応する開口部と、前記重ならない領域を塞ぐ逆流防止部とを有する請求項2に記載のファン付ポーチ。
【請求項4】
前記ファンは、前記ファン吸込口が形成されたファン本体と、前記ファン吸込口を覆うファンガードとを備え、前記ファン本体と前記ファンガードとの間に前記開口部の周縁を挟んだ状態で前記ファン本体に対し前記ファンガードを螺着することで前記主面部に取り付けられており、
前記ファンガードの外周の一部が、前記主面部の端縁の外側にはみ出すように前記主面部に切欠き部が形成されている請求項3に記載のファン付ポーチ。
【請求項5】
前記フラップ部には、前記正面部から前記背面部に向かう方向に延在し、且つ前記側面部に向かって突出する凸部が形成されている請求項2~4の何れか一項に記載のファン付ポーチ。
【請求項6】
前記スペーサは、前記正面部に向かって前記ファンを傾斜させた状態で支持する請求項2~4の何れか一項に記載のファン付ポーチ。
【請求項7】
前記ポーチは、上方に開放されており、
前記吹出部は、前記ポーチの上端部において、前記正面部、前記背面部及び前記側面部によって区画形成され、
前記正面部における前記外気導入部の上方位置に衣服を挟持可能な挟持部が配設される請求項2~4の何れか一項に記載のファン付ポーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機能を有するファン付ポーチに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯可能な送風機として、ポーチにファンが内蔵されたファン付ポーチが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載されたファン付ポーチは、略袋状の本体部と、本体部内に配されるファンとを備えている。
【0003】
本体部は、使用者側部分、当該使用者側部分とは反対側の正面部分、及び蓋部を含み、使用者側部分と蓋部とが連続して一体化している部分に略直線状の通気口が設けられている。本体部の正面部分には、外部の空気を取り込めるようにファンが取り付けられている。蓋部においては、通気口の長さ方向に沿って、線状形状保持材が配設されている。
【0004】
特許文献1に記載のファン付ポーチにおいては、ファンが外部から本体部内に引き込んだ空気を通気口から吹き出すための空気の通り道を作ることができるとされている。また、このファン付ポーチにおいては、線状形状保持材により通気口を開けた状態が保たれるため、通気口から使用者のウエスト部にまで続く空気の通り道を作ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のファン付ポーチにおいて、本体部に外力が作用した場合、線状形状保持材が配設される通気口の周辺の変形については、線状形状保持材の自己形状保持機能によって抑えられるため、本体部の外側の空気の通り道についてはある程度保たれることになる。しかしながら、本体部における通気口周辺以外の大部分では、本体部に作用した外力によって変形するため、本体部の内側の空気の通り道が狭められてしまい、送風機能が損なわれてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ポーチに外力が作用してもポーチの変形を抑えることができ、これによってポーチ内の気道空間を保って安定的に送風機能を発揮することができるファン付ポーチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係るファン付ポーチの特徴構成は、
外気導入部及び吹出部を有するポーチと、
前記ポーチ内に収容されるファンと、
前記ファンが前記外気導入部を通して吸い込んだ空気を前記吹出部から吹き出すための気道空間を前記ポーチ内に形成するように前記ポーチを保形するスペーサと、
を備えることにある。
【0009】
本構成のファン付ポーチによれば、気道空間をポーチ内に形成するようにポーチがスペーサによって保形されるので、ポーチに外力が作用してもポーチの変形をスペーサによって抑えることができ、これによってポーチ内の気道空間を保って安定的に送風機能を発揮することができる。
【0010】
本発明に係るファン付ポーチにおいて、
前記ポーチは、前記外気導入部が形成された正面部と、前記正面部と対向する背面部と、前記正面部及び前記背面部の側部どうしを連結する側面部とを有し、
前記スペーサは、前記正面部に当接される主面部と、前記主面部の側部に連設されて前記側面部に当接されるフラップ部とを有することが好ましい。
【0011】
本構成のファン付ポーチによれば、ポーチにおける正面部及び側面部のそれぞれが、スペーサにおける主面部及びフラップ部に当接される。これにより、ポーチの正面部及び側面部は、スペーサの主面部及びフラップ部によって剛性が高められる。一方、ポーチの背面部は、当該背面部が有する本来の柔軟性が保たれる。そして、ポーチの背面部を使用者に触れる側の部分として使用すれば、ポーチの背面部はその本来の柔軟性によって使用者の身体の形に沿って変形することができるとともに、正面部及び側面部に外力が作用しても、スペーサによってポーチの変形を抑えることができる。従って、身体へのフィット感を高めつつ、ポーチ内の気道空間を保って安定的に送風機能を発揮することができる。
【0012】
本発明に係るファン付ポーチにおいて、
前記ファンは、前記外気導入部を通して空気を吸い込むファン吸込口を有し、
前記外気導入部は、外気導入方向から見て、前記ファン吸込口と重なる領域及び重ならない領域があり、
前記主面部は、前記ファン吸込口に対応する開口部と、前記重ならない領域を塞ぐ逆流防止部とを有することが好ましい。
【0013】
本構成のファン付ポーチによれば、外気導入部を通して導入される空気は、スペーサの主面部における開口部を通してファン吸込口からポーチ内に吸い込まれる。ポーチ内に吸い込まれた空気の一部は、外気導入部における外気導入方向から見てファン吸込口と重ならない領域を通して外部に出ようとするが、スペーサの主面部における当該領域を塞ぐ逆流防止部によって阻止される。こうして、ポーチ内に一旦吸い込んだ空気の一部が外部に漏れるのを防ぐことができ、ポーチの吹出部から吹き出される空気量の低下を未然に防ぐことができる。
【0014】
本発明に係るファン付ポーチにおいて、
前記ファンは、前記ファン吸込口が形成されたファン本体と、前記ファン吸込口を覆うファンガードとを備え、前記ファン本体と前記ファンガードとの間に前記開口部の周縁を挟んだ状態で前記ファン本体に対し前記ファンガードを螺着することで前記主面部に取り付けられており、
前記ファンガードの外周の一部が、前記主面部の端縁の外側にはみ出すように前記主面部に切欠き部が形成されていることが好ましい。
【0015】
本構成のファン付ポーチによれば、スペーサの主面部に切欠き部が形成されることによってファンガードの外周の一部が主面部の端縁の外側にはみ出すようにされているので、当該はみ出した部分からファンガードに対して回転操作力を容易に作用させることができる。従って、ファン本体に対するファンガードのねじ込み・緩め動作を容易に行うことができ、スペーサに対しファンを容易に取り付け・取り外しすることができる。
【0016】
本発明に係るファン付ポーチにおいて、
前記フラップ部には、前記正面部から前記背面部に向かう方向に延在し、且つ前記側面部に向かって突出する凸部が形成されていることが好ましい。
【0017】
本構成のファン付ポーチによれば、スペーサのフラップ部に形成された凸部によってポーチの側面部との間の摩擦係数が増加するため、ポーチからスペーサを抜き出す際の抵抗が増加することになる。これにより、ポーチからスペーサが意図せずに抜け出してしまうのを防ぐことができる。なお、他の効果としては、例えば、筆記具本体にクリップが付設された筆記具をポーチ内に収容する際に、フラップ部に形成された凸部に筆記具のクリップを係合させることにより、気道空間内の空気流れに与える影響を低く抑えつつ、所定以上の操作力を作用させなければ引き抜けない安定した状態で筆記具をポーチ内に収容することができる。
【0018】
本発明に係るファン付ポーチにおいて、
前記スペーサは、前記正面部に向かって前記ファンを傾斜させた状態で支持することが好ましい。
【0019】
本構成のファン付ポーチによれば、ポーチの正面部に向かって傾斜状態でファンがスペーサによって支持されるので、ポーチ内に吸い込まれた空気が、ポーチの正面部と対向する背面部に対し斜めに衝突することになる。このため、ポーチ内に吸い込まれた空気が背面部に対し真正面から衝突した場合と比べて、ポーチ内での乱流の発生を抑えることができ、ポーチ内に吸い込んだ空気を吹出部からスムーズに吹き出すことができる。
【0020】
本発明に係るファン付ポーチにおいて、
前記ポーチは、上方に開放されており、
前記吹出部は、前記ポーチの上端部において、前記正面部、前記背面部及び前記側面部によって区画形成され、
前記正面部における前記外気導入部の上方位置に衣服を挟持可能な挟持部が配設されることが好ましい。
【0021】
本構成のファン付ポーチによれば、ポーチの上端部において、正面部、背面部及び側面部によって区画形成される上方に開放された吹出部を覆うように被せた使用者の衣服を、ポーチの正面部における外気導入部の上方位置に配設された挟持部に挟持させると、衣服が挟持部よりも下側に垂れ下がらないように挟持部によって保持することができ、外気導入部を衣服で塞ぐことなく、使用者の身体側と衣服との間に吹出部を配することができる。これにより、外気導入部を通してポーチ内に空気をスムーズに吸い込むことができるとともに、吸い込んだ空気を使用者の身体側と衣服と間に吹き込むことができる。その結果、使用者の身体側と衣服との間を突き抜けるような風を生じさせることができ、蒸れを解消して涼しくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るファン付ポーチを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のファン付ポーチの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のファン付ポーチの六面図である。
【
図5】
図5は、ファン及びスペーサを分解状態で示す斜視図である。
【
図7】
図7は、外気導入部とファン吸込口との重なり領域等の説明図である。
【
図8】
図8は、ファン付ポーチを使用者の腰周りに装着した状態図である。
【
図9】
図9は、ファン付ポーチによる送風状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、ポーチの正面部が配される側を「前」、背面部が配される側を「後」とし、ポーチの左側面部及び右側面部が配される方向を「左右方向」とする。また、各図において、ポーチの各面部20~24、スペーサ4等の厚み関係は説明容易化のため適宜誇張又は簡略化しており、実際の厚みの大小関係(縮尺)を厳密に反映したものではない。また、外気導入部2aのメッシュの孔の大きさについても、適宜誇張又は簡略化している。
【0024】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るファン付ポーチ1を示す斜視図である。
図1(a)は、正面側から見たファン付ポーチ1の斜視図である。
図1(b)は、背面側から見たファン付ポーチ1の斜視図である。
図1(a)及び(b)に示すように、ファン付ポーチ1は、外気導入部2a及び吹出部2bを有するポーチ2と、ポーチ2内に収容されるファン3と、ファン3が外気導入部2aを通して吸い込んだ空気を吹出部2bから吹き出すための気道空間10をポーチ2内に形成するようにポーチ2を保形するスペーサ4とを備えている。
【0025】
図2は、本実施形態のファン付ポーチ1の分解斜視図である。
図2に示すように、ファン付ポーチ1は、ファン3とスペーサ4とが組み立てられたファン-スペーサアセンブリ5が、ポーチ2の内部に組み込まれて構成されている。
【0026】
<ポーチ>
図3は、本実施形態のファン付ポーチ1の六面図である。
図3(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は左側面図、同図(d)は右側面図、同図(e)は底面図、同図(f)は背面図である。ファン付ポーチ1におけるポーチ2は、
図3(e)に示すような横長の矩形状(長方形状)の底面部20を備えるとともに、底面部20の四辺に立ち上がり状に連設される、
図3(a)~(f)に示すような正面部21、背面部22、左側面部23及び右側面部24を備えている。
【0027】
図3(b)に示すように、正面部21は、縦方向(上下方向)にやや長い略矩形状(略長方形状)に形成されている。正面部21には、下部から上下方向中間部に亘る領域に外部の空気を導入するための外気導入部2aが形成されている。
図3(f)に示すように、背面部22は、正面部21と同様の形状であり、正面部21に対し所定間隔をあけて対向配置されている。左側面部23及び右側面部24は、正面部21及び背面部22の両側の側部どうしを連結する。各側面部23,24は、逆台形状に形成されている。各側面部23,24は、正面部21と接続される側で鉛直方向に延びる前辺部を有し、前辺部に対し上辺部及び下辺部のそれぞれが直角をなし、上辺部の長さよりも下辺部の長さが小さく、背面部と接続される側で上辺部及び下辺部を繋ぐように前辺部と対をなす後辺部が後方に傾斜し、後辺部と上辺部とが鋭角をなし、後辺部と下辺部とが鈍角をなしている。
【0028】
正面部21の上部、背面部22、左側面部23及び右側面部24は、例えば、天然繊維又は合成繊維からなる織布、不織布、混紡布や、合成樹脂製シート材等で構成することができる。正面部21における外気導入部2aは、例えば、合成繊維又は天然繊維からなるメッシュ素材で構成することができる。
【0029】
ポーチ2においては、底面部20、左側面部23及び右側面部24を構成する布地等の素材と、正面部21における上部を構成する布地等の素材と、正面部21における外気導入部2aを構成するメッシュ素材と、背面部22を構成する布地等の素材とを組み合わせ、互いに縁部を縫合等して一体化して構成されている。ポーチ2それ自体は、柔軟な素材から構成されているので、偏平に折り畳んだり、容易に形状を変化させたりすることができる。
【0030】
図3(a)に示すように、ポーチ2は、上方に開放されており、その上端部において正面部21、背面部22、左側面部23及び右側面部24によって吹出部2bが区画形成されている。
【0031】
図3(f)に示すように、ポーチ2の背面部22の上半部には、衣服の一部として使われるベルトを通すことが可能な一対のループ部材25が左右方向に所定間隔をあけて取り付けられている。
【0032】
<挟持部>
図4は、
図3(a)のA-A矢視断面図である。
図4に示すように、ポーチ2の正面部21の上部には、衣服を挟持可能な挟持部26が、外気導入部2aの上方に位置するように配設されている。挟持部26は、基部(下端部)が正面部21に縫着されたパネル状部材からなり、正面部21に対し基部を支点に開閉可能に構成されている。
【0033】
ポーチ2には、正面部21に対し挟持部26を閉じる方向に付勢する付勢手段27が設けられている。
図4における部分拡大図に示すように、付勢手段27は、正面部21に埋設される一側の磁石28と、挟持部26に埋設される他側の磁石29とを備え、一側の磁石28と他側の磁石29との互いの対向部分の極性が異なるように相互の磁石28,29を組み合わせるものとして、一側の磁石28と他側の磁石29との間に作用する磁力によって正面部21に対し挟持部26が閉じる方向に付勢されるように構成されている。なお、付勢手段27において、一側の磁石28又は他側の磁石29に代えて、磁性体を用いてもよい。
【0034】
<ファン>
図5は、ファン3及びスペーサ4を分解状態で示す斜視図である。
図5に示すように、ファン3は、ファン本体31、バッテリ32、吸込側ファンガード33及び吹出側ファンガード34を備えている。
【0035】
ファン3においては、ファン本体31の上端部に形成されたバッテリ支持部にバッテリ32が着脱可能に取り付けられており、バッテリ32の電力が配線等を介さずに直接的にファン本体31に供給される構成が採用されている。図示による詳細説明は省略するが、ファン本体31とバッテリ32とにおいては、ファン本体31のバッテリ支持部に設けられた線状凸部と、バッテリ32の下部に設けられた線状凹部とが係合する係合構造によって左右方向にスライド可能とされており、線状凸部と線状凹部とが完全に係合する位置においてファン本体31に対しバッテリ32を係止する係止構造によってファン本体31に対しバッテリ32が取り付けられた状態が維持され、係止構造の係止解除操作によってファン本体31に対しバッテリ32をスライド操作によって取り外せるように構成されている。
【0036】
<ファン本体、ファン吸込口>
ファン本体31は、ハウジング部35と、軸流ファン36とを備えている。ハウジング部35は、前後方向に延在する比較的軸長が短い略円筒状部材よりなる。ハウジング部35は、ポーチ2内にファン3が収容された状態において外気導入部2aを通して外部の空気を前方から吸い込み可能に前方に開放されたファン吸込口35aと、ファン吸込口35aから吸い込んだ空気を後方へと吹き出し可能に後方に開放されたファン吹出口35bとを有している。ハウジング部35の前端部には、外向きに張り出すようにフランジ部35cが形成されている。ハウジング部35の内周面には、雌ねじ35dが形成されている。ハウジング部35の内部には、モータ37が配設されるとともに、モータ37によって直接的に回転駆動されるように軸流ファン36が配設されている。
【0037】
<ファンガード>
吸込側ファンガード33は、ファン本体31におけるファン吸込口35aに嵌め込み可能な円筒状部33aと、円筒状部33aの前端部に外向き張り出すように形成されたフランジ部33bと、円筒状部33aの前端側に配設されるガード部33cとを有している。ここで、円筒状部33aの外周面には、雄ねじ33dが形成されている。ガード部33cは、円筒状部33aの中心位置から径方向外向きに延在してフランジ部33bに一体的に接合される複数のスポーク部材や、これらスポーク部材に一体的に接合される径寸法が大小異なる複数のリング部材が組み合わされて構成されている。
【0038】
図6は、
図3(d)のB-B矢視断面図である。ファン本体31におけるハウジング部35の後方位置には、モータ37を支持するモータ支持部38が配設されている。モータ支持部38とハウジング部35との間には、吹出側ファンガード34が配設されている。吹出側ファンガード34は、ハウジング部35の円周方向に所定ピッチで配される複数の羽根部材34aと、複数の羽根部材34aを相互に接続するように配される補強リング部材34bとにより構成されている。複数の羽根部材34aのそれぞれは、モータ支持部38とハウジング部35とを接続するように、ハウジング部35の中心位置から径方向外側に向けて曲線状に延在している。各羽根部材34aは、ハウジング部35の中心位置から径方向外側に進むに従って前縁と後縁との距離が次第に小さくなるような形状に形成されている。このような複数の羽根部材34aの採用により、吹出側ファンガード34から螺旋状又は渦状の空気流れを生成することができ、より指向性を高めた風を吹出部2bから吹き出すことができる。
【0039】
ファン本体31におけるハウジング部35の上方の胴部には、スイッチ部材39が配設されている。スイッチ部材39は、胴部の後面に面一な押ボタン形式の構成を採用している。スイッチ部材39の側方には、風量の段階を示す複数の微小なランプ40が胴部の後面に面一に設けられている。スイッチ部材39は、風量調整部材としてだけでなく、ファンの起動/停止ボタンとしても機能する。
【0040】
<スペーサ>
図5に示すように、スペーサ4は、例えば、樹脂板を折り曲げ形成してなるものが用いられる。スペーサ4は、ポーチ2の正面部21に当接される主面部41と、主面部41の両側に折り目42を介して連設されて左側面部23及び右側面部24に当接される一対のフラップ部43とを有している。
【0041】
<主面部>
主面部41は、ポーチ2の正面部21と同様に縦方向にやや長い略矩形状に形成されている。主面部41は、ファン3のファン吸込口35aに対応する開口部41aと、開口部41aの周辺部分に形成される逆流防止部41bとを有している。
【0042】
<逆流防止部>
図7は、外気導入部2aとファン吸込口35aとの重なり領域等の説明図である。
図7に示すように、正面部21における外気導入部2aは、外気導入方向から見て、すなわち正面視で、ファン3のファン吸込口35aと重なる領域(
図7中破線で示す円内の白抜き領域)及び重ならない領域(
図7中網掛けハッチングを付した領域)がある。
図5に示すスペーサ4の主面部41における逆流防止部41bは、外気導入部2aにおける前記重ならない領域(
図7中網掛けハッチングを付した領域)を塞ぐ形状及び大きさに設定されている。
【0043】
<フラップ部>
図4に示すように、フラップ部43は、ポーチ2の各側面部23,24(
図4においては左側面部23のみ示す。)と同様に逆台形状に形成されている。すなわち、フラップ部43は、主面部41と接続される側で鉛直方向に延びる前辺部を有し、前辺部に対し上辺部及び下辺部のそれぞれが直角をなし、上辺部の長さよりも下辺部の長さが小さく、上辺部及び下辺部を繋ぐように前辺部と対をなす後辺部が後方に傾斜し、後辺部と上辺部とが鋭角をなし、後辺部と下辺部とが鈍角をなしている。
【0044】
フラップ部43は、上記のように逆台形状に形成されており、後辺部が後方に傾斜されている。このため、ファン付ポーチ1の背面部22を身体側に接触させるようにしてファン付ポーチ1を使用者に装着した場合(
図8(b)参照)、後辺部が鉛直方向に沿うようにフラップ部43の全体が前傾する。その結果、スペーサ4は、ポーチ2の正面部21に向かってファン3を傾斜(前傾)させた状態で支持することになる。
【0045】
<凸部>
図5に示すように、スペーサ4におけるフラップ部43の上部には、ポーチ2内にスペーサ4が配されたときに、ポーチ2の正面部21から背面部22に向かう方向に延在し、且つポーチ2の各側面部23,24に向かって突出する線状の凸部43aが形成されている。このように、スペーサ4のフラップ部43に形成された凸部43aによってポーチ2の各側面部23,24との間の摩擦係数が増加するため(
図8(a)参照)、ポーチ2からスペーサ4を抜き出す際の抵抗が増加することになる。これにより、ポーチ2からスペーサ4が意図せずに抜け出してしまうのを防ぐことができる。なお、他の効果としては、
図6に示すように、筆記具本体にクリップが付設された図中記号「P」で示す筆記具をポーチ2内に収容する際に、フラップ部43に形成された凸部43aに筆記具のクリップを係合させることにより、気道空間10内の空気流れに与える影響を低く抑えつつ、所定以上の操作力を作用させなければ引き抜けない安定した状態で筆記具をポーチ2内に収容することができる。
【0046】
図5に示すファン3とスペーサ4とは、次のようにして組み立てられる。まず、吸込側ファンガード33の円筒状部33aをスペーサ4の主面部41における開口部41aに挿通する。次いで、挿通した円筒状部33aとファン本体31のハウジング部35とを嵌め合わせるように円筒状部33aに対しファン本体31を位置決めする。次いで、ファン本体31の姿勢を保ちつつ、吸込側ファンガード33の回転操作により、円筒状部33aに設けられた雄ねじ33dを、ハウジング部35に設けられた雌ねじ35dにねじ込んで螺合する。こうして、ファン3は、ファン本体31のフランジ部35cと吸込側ファンガード33のフランジ部33bとの間にスペーサ4の開口部41aの周縁部を挟んだ状態でファン本体31に対し吸込側ファンガード33を螺着することでスペーサ4の主面部41に取り付けられる。
【0047】
<切欠き部>
図6に示すように、スペーサ4の主面部41には、吸込側ファンガード33のフランジ部33bの外周の一部が、当該主面部41の下端縁の外側にはみ出すように円弧状の切欠き部41cが形成されている。このように、吸込側ファンガード33のフランジ部33bの外周の一部が主面部41の下端縁の外側にはみ出すようにされているので、当該はみ出した部分から吸込側ファンガード33に対して回転操作力を容易に作用させることができる。従って、ファン本体31に対する吸込側ファンガード33のねじ込み・緩め動作を容易に行うことができ、スペーサ4に対しファン3を容易に取り付け・取り外しすることができる。
【0048】
<ファン付ポーチの使用方法>
以上に述べたように構成されるファン付ポーチ1の使用方法等について説明する。
図8は、ファン付ポーチ1を使用者の腰周りに装着した状態図である。
図8(a)は、ファン付ポーチ1の使用者への装着状態の平面視図である。
図8(b)は、ファン付ポーチ1の使用者への装着状態の縦断面図である。
図8(a)及び(b)に示すように、ファン付ポーチ1を図中記号「M」で示す使用者に装着する際には、ズボン等の衣類を胴に締め付けるための図中記号「B」で示すベルトを、ファン付ポーチ1の背面部22に設けられた一対のループ部材25に通した状態で腰に巻き掛け装着する。これにより、ファン付ポーチ1は、使用者の腰周りにポーチ2の背面部22を接触させた状態でベルトによって支持される。ポーチ2の正面部21及び各側面部23,24は、スペーサ4の主面部41及びフラップ部43によって剛性が高められている。一方、ポーチ2の背面部22は、当該背面部22が有する本来の柔軟性が保たれる。従って、
図8(a)及び(b)に示すような使用形態では、
図8(a)に示すように、ポーチ2の背面部22はその本来の柔軟性によって使用者の腰周りの形に沿って平面視でポーチ2の内方側にやや湾曲した形状に変形する。また、スペーサ4のフラップ部43は、逆台形状に形成されているため、
図8(b)に示すように、フラップ部43の後辺部が使用者の腰回りに当接すると、後辺部が鉛直方向に沿うようにフラップ部43の全体が前傾する。その結果、スペーサ4は、ポーチ2の正面部に向かってファン3を傾斜(前傾)させた状態で支持することになる。
【0049】
図9は、ファン付ポーチ1による送風状態の一例を示す図である。上記のようにファン付ポーチ1を使用者の腰周りに装着した後(
図8(a)及び(b)参照)、ポーチ2の上端部において、正面部21、背面部22及び各側面部23,24によって区画形成される上方に開放された吹出部2bを、
図9に示すように、図中記号「F」で示すTシャツやポロシャツ等の衣服で覆うように当該衣服を被せる。その際、被せた使用者の衣服の裾を、ポーチ2の正面部21における外気導入部2aの上方位置に配設された挟持部26に挟持させる。すなわち、
図4に示す一側の磁石28と他側の磁石29との間に作用する磁力に抗して、挟持部26の基部を支点に、正面部21に対し挟持部26を開き、開いた状態を保ったまま、挟持部26と正面部21との間に衣服を入れ、その後、挟持部26を開放し、磁石28,29の磁力で衣服を正面部21と挟持部26とで挟持する。こうして、衣服が挟持部26よりも下側に垂れ下がらないように挟持部26によって衣服を保持することができ、外気導入部2aを衣服で塞ぐことなく、使用者の身体側と衣服との間に吹出部2b(
図8(a)参照)を配することができる。
【0050】
次いで、スイッチ部材39(
図6参照)の操作により、ファン3を起動し、風量を調節して、好みの風量にてファン3を作動させる。
図8(b)に示すように、ファン3の作動によって外気導入部2aを通して導入される空気は、スペーサ4の主面部41における開口部41aを通してファン吸込口35aからポーチ2内に吸い込まれる。ファン付ポーチ1においては、ポーチ2の正面部21に向かって前傾状態でファン3がスペーサ4によって支持されているので、ポーチ2内に吸い込まれた空気が、ポーチ2の正面部21と対向する背面部22に対し斜めに衝突することになる。このため、ポーチ2内に吸い込まれた空気が背面部22に対し真正面から衝突した場合と比べて、ポーチ2内での乱流の発生を抑えることができ、ポーチ2内に吸い込んだ空気を吹出部2bからスムーズに吹き出すことができる。
【0051】
ポーチ2内に吸い込まれた空気の一部は、外気導入部2aにおける外気導入方向から見てファン吸込口35aと重ならない領域(
図7中網掛けハッチングで示す領域)を通して外部に出ようとするが、スペーサ4の主面部41における当該領域を塞ぐ逆流防止部41b(
図5参照)によって阻止される。こうして、ポーチ2内に一旦吸い込んだ空気の一部が外部に漏れるのを防ぐことができ、ポーチ2の吹出部2bから吹き出される空気量の低下を未然に防ぐことができる。
【0052】
本実施形態のファン付ポーチ1においては、
図9に示すように、衣服に邪魔されずに外気導入部2aを通してポーチ2内に空気をスムーズに吸い込むことができるとともに、吸い込んだ空気を使用者の身体側と衣服と間に吹き込むことができる。その結果、使用者の身体側と衣服との間を突き抜けるような風を生じさせることができ、蒸れを解消して涼しくすることができる。
【0053】
図8(a)に示すように、ポーチ2の背面部22は、その本来の柔軟性によって使用者の身体の形に沿って変形することができる。また、
図8(a)及び(b)に示すように、ポーチ2は、気道空間10が内部に形成されるようにスペーサ4によって保形されているので、例えば、使用者の手がポーチ2に当たったり、人混みの中で他者との間にポーチ2が挟まれたり、壁等にもたれかかったときに壁等との間にポーチ2が挟まれたりすることで、正面部21及び各側面部23,24に外力が作用しても、ポーチ2の変形をスペーサ4によって抑えることができる。従って、身体へのフィット感を高めつつ、ポーチ2内の気道空間10を保って安定的に送風機能を発揮することができる。
【0054】
以上、本発明のファン付ポーチについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0055】
(別実施形態)
上記実施形態において、
図6に示すように、ポーチ2の吹出部2bの一部を蓋体50によって塞ぐという構成を採用することができる。このような構成を採用することにより、吹出部2bから吹き出される空気の流速を増加させることができるので、より速やかに蒸れを解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のファン付ポーチは、携帯して必要に応じ涼をとる用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ファン付ポーチ
2 ポーチ
2a 外気導入部
2b 吹出部
3 ファン
4 スペーサ
10 気道空間
21 正面部
22 背面部
23 左側面部
24 右側面部
26 挟持部
31 ファン本体
33 吸込側ファンガード
35a ファン吸込口
41 主面部
41a 開口部
41b 逆流防止部
41c 切欠き部
43 フラップ部
43a 凸部
【手続補正書】
【提出日】2022-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入部及び吹出部を有するポーチと、
前記ポーチ内に収容されるファンと、
前記ファンが前記外気導入部を通して吸い込んだ空気を前記吹出部から吹き出すための気道空間を前記ポーチ内に形成するように前記ポーチを保形するスペーサと、
を備え、
前記ポーチは、前記外気導入部が形成された正面部と、前記正面部と対向する背面部と、前記正面部及び前記背面部の側部どうしを連結する左側面部及び右側面部とを有し、
前記スペーサは、前記正面部に当接される主面部と、前記主面部の両側部に連設されて前記左側面部及び前記右側面部に当接される一対のフラップ部とを有し、前記一対のフラップ部の間の全体が前記背面部の側に開放されており、
前記ポーチの背面部は、前記ポーチの内方側に湾曲した形状に変形可能であるファン付ポーチ。
【請求項2】
前記ファンは、前記外気導入部を通して空気を吸い込むファン吸込口を有し、
前記外気導入部は、外気導入方向から見て、前記ファン吸込口と重なる領域及び重ならない領域があり、
前記主面部は、前記ファン吸込口に対応する開口部と、前記重ならない領域を塞ぐ逆流防止部とを有する請求項1に記載のファン付ポーチ。
【請求項3】
前記ファンは、前記ファン吸込口が形成されたファン本体と、前記ファン吸込口を覆うファンガードとを備え、前記ファン本体と前記ファンガードとの間に前記開口部の周縁を挟んだ状態で前記ファン本体に対し前記ファンガードを螺着することで前記主面部に取り付けられており、
前記ファンガードの外周の一部が、前記主面部の端縁の外側にはみ出すように前記主面部に切欠き部が形成されている請求項2に記載のファン付ポーチ。
【請求項4】
前記フラップ部には、前記正面部から前記背面部に向かう方向に線状に延在し、且つ前記左側面部及び前記右側面部に向かって突出して前記左側面部及び前記右側面部にそれぞれ当接可能な大きさで前記左側面部及び前記右側面部との間の摩擦係数を増加させるための凸部が形成されている請求項1~3の何れか一項に記載のファン付ポーチ。
【請求項5】
前記スペーサにおける前記一対のフラップ部は、前記主面部と接続される側で鉛直方向に延びる前辺部を有し、前記前辺部に対し上辺部及び下辺部のそれぞれが直角をなし、前記上辺部の長さよりも前記下辺部の長さが小さく、前記上辺部及び前記下辺部を繋ぐように前記前辺部と対をなす後辺部が後方に傾斜し、前記後辺部と前記上辺部とが鋭角をなし、前記後辺部と前記下辺部とが鈍角をなすような逆台形状に形成されている請求項1~3の何れか一項に記載のファン付ポーチ。
【請求項6】
前記ポーチは、上方に開放されており、
前記吹出部は、前記ポーチの上端部において、前記正面部、前記背面部及び前記各側面部によって区画形成され、
前記正面部における前記外気導入部の上方位置に衣服を挟持可能な挟持部が配設される請求項1~3の何れか一項に記載のファン付ポーチ。