特開 2024-65587 学習用水処理器及びそれを用いた学習用水処理キット

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024065587

(43)【公開日】2024-05-15

(54)【発明の名称】学習用水処理器及びそれを用いた学習用水処理キット

(51)【国際特許分類】

   G09B 23/06 20060101AFI20240508BHJP

   G09B 23/24 20060101ALI20240508BHJP

【ＦＩ】

G09B23/06 Z

G09B23/24

【審査請求】有

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022174528

(22)【出願日】2022-10-31

(11)【特許番号】

(45)【特許公報発行日】2023-12-26

(71)【出願人】

【識別番号】593230176

【氏名又は名称】株式会社ユニケミー

(74)【代理人】

【識別番号】110003214

【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】今井 尚洋

(72)【発明者】

【氏名】脇田 勝

(72)【発明者】

【氏名】蟹江 庸久

【テーマコード（参考）】

2C032

【Ｆターム（参考）】

2C032BA00

(57)【要約】

【課題】手軽に操作可能な学習用水処理器及びそれを用いた学習用水処理キットを提供する。
【解決手段】水処理器１は、筒状のシリンダ１０の内壁に摺動可能なプランジャ２０と、シリンダ１０内の先端に設けられる抽出孔２６と、抽出孔２６の入口に設けられるフィルタ２５と、フィルタ２５の入口側の室に設けられる活性炭２及びイオン交換樹脂４とを備える。これにより、手軽に組み立てられる水処理器１の開口１７から試験水を注入し、シリンダに対しプランジャを押すだけで、着色していた水がフィルタ及び充填材の通過後に洗浄されたろ過後の無色の水となってノズルから流出する。従って、水処理の過程を目視により判断でき、学習教材として水処理の大切さとその原理を学ぶことができる。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

筒状のシリンダ（１０）と、前記シリンダの内壁に摺動可能なプランジャ（２０）と、前記シリンダ内の先端に設けられるノズル（２６）と、前記ノズルの入口に設けられるフィルタ（２５）と、前記フィルタの入口側の室に設けられる活性炭（２）又はイオン交換樹脂（４）のいずれか一方とを備えた学習用水処理器。

【請求項2】

前記フィルタの入口側の室に設けられる前記活性炭又は前記イオン交換樹脂のいずれか一方に代えて、
前記フィルタの入口側に設けられる活性炭と、前記活性炭の入口側に設けられるイオン交換樹脂とを備えた請求項１記載の学習用水処理器。

【請求項3】

請求項１又は２のいずれか一項に記載された前記水処理器と、前記水処理器に供給する試験水を含むボトルと、前記水処理器の使用方法の記載を有する説明書とを備えた学習用水処理キット。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、学習教材に使用される水処理器及びそれを用いた水処理キットに関する。

【背景技術】

【0002】

シリンダとピストンを備えた注射具として、特許文献１のようなものが知られている。このものは、人間を含む動物の軟骨、例えば膝などの関節軟骨に欠損が生じた場合に、当該欠損部を修復する際に用いる注射具である。
例えば人間を含む動物の軟骨の欠損部にコラーゲン、ヒアルロン酸或いはアルギン酸塩等を導出管から欠損部に注射針を通して充填する。この注射具は、プランジャの移動により内部の流動物を押し出し、押し出す導出管の先端に抑止部を有するもので、シリンダから流動物の導出を阻害することなく、液切れの向上や不用意な流出を抑制することを目的とする。
学習用教材器具としては、ビーカー、フラスコ、試験管、シャーレなどの実験器具はよく知られている。

【0003】

一方、環境汚染対策の一つとなる水処理としては、各種洗剤を含む家庭の雑排水の処理問題がある。雑排水を処理することは、環境汚染防止の意識を育てる良い機会となる。この水処理体験によって、汚染された水処理の重要性の認識を深めることができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０２１－１０９００７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、手軽に操作可能な学習用水処理器及びそれを用いた学習用水処理キットを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の学習用水処理器は、筒状のシリンダ（１０）と、前記シリンダの内壁に摺動可能なプランジャ（２０）と、前記シリンダ内の先端に設けられるノズル（２６）と、ノズルの入口に設けられるフィルタ（２５）と、前記フィルタの入口側の室に設けられる活性炭（２）又はイオン交換樹脂（４）のいずれか一方と備える構成を採用する。

【0007】

本発明の学習用水処理器によると、シリンダ内に充填する汚水から特定の成分について除去し、除去した残った水を外部に流出させるものである。
本発明によると、学習用の試験液をろ過する水切りキットを提供するものである。

【0008】

本発明の学習用水処理器によると、手軽に組み立てられる簡易な装置に試験水を注入し、操作者がシリンダに対しプランジャを押すだけで、着色していた水がフィルタ及び充填材の通過後に洗浄された無色の水となってノズルから流出する。これにより、操作者及びその周りの者が試験時に同時に視覚で現象を認識し、水処理の過程を目視により判断でき、学習教材として水処理の大切さとその原理を学ぶことができる。

【0009】

この学習用水処理器によると、簡易な装置でありながら、学生又は社会人向け教育用機材として幅広く取り扱うことができ、一般社会への水処理の原理と大切さを学ぶことができる。目視により着色した水から色彩が取り除かれ、色除去後に無色の水を流出するから、学習者の感動を誘発し、学習効果が大きい。

【0010】

日常生活において活性炭とかイオン交換樹脂をどのように活用するかの機会は一般に少ないが、例えば学校生活において本器材を用いることにより、日常身近な生活水を浄化する際の汚水の状態変化を目視で容易に確認することができる。教材として学生に関心を高め、今後の科学に対する興味を促し、人材を育てるのに有用な教材となる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明の一実施形態による水処理器の断面図、

【図2】本発明の一実施形態による水処理器のシリンダ側の断面図、

【図3】本発明の一実施形態によるシリンダに充填材を設けた水処理器の断面図。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、本発明の実施形態による水処理器及びそれを用いた水処理キットを図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。

【0013】

（第１実施形態）
本発明の第一実施形態について図１から図３に基づいて説明する。
水処理器１は、円筒状のシリンダ１０と、シリンダ１０の後端のフランジ１３側の開口１７から嵌入されてシリンダ１０の内壁に摺動可能なプランジャ２０とを備える。

【0014】

シリンダ１０は、透明の材料からなり、シリンダ１０の前端は、円錐状の隔壁３１が形成され、先端中心の偏心位置からプランジャ軸線と平行に外方向に小径の筒１２が突き出している。シリンダ１０内の室と連通する通孔２７を有する筒１２の先端に円状薄板のフランジ１６が形成されている。
フランジ１６の下面に多孔性の膜を有する円盤状のメンブランフィルタ２５が設けられる。メンブランフィルタ２５は、キャップ１５の円薄板状のフランジ１９と筒１２のフランジ１６とで挟持されている。メンブランフィルタ２５は高精度のろ過機能をもつ。キャップ１５の先端にはノズルに相当する抽出孔２６が形成される。

【0015】

シリンダ１０の内壁に摺動可能なプランジャ２０は、先端の円盤部２３にゴムシールド２２が設けられる。ゴムシールド２２は、シリンダ１０の内部を液密に保持する。図１に示す状態からシリンダ１０に対しプランジャ２０をさらに押し込み可能である。プランジャ２０の横断面形状は、十文字状に先端から長尺方向に中程まで外径が一定に延びており、その後に後端にいくほど外径が次第に小さくなっている。プランジャ２０の後端にはフランジ状のハンドル２１が形成されている。

【0016】

シリンダ１０の内部には図２に示す開口１７からフィルタ３２を挿入し、図３に示す位置にフィルタ３２を係止する。このフィルタ３２の入口側に粒状の活性炭２を充填し、活性炭２の入口側にフィルタ３３を挿入し、図３に示す位置にフィルタ３３を係止する。さらにフィルタ３３の入口側に粒子状のイオン交換樹脂４を充填し、イオン交換樹脂４の入口側にフィルタ３４を係止する。

【0017】

上述した水処理器１は、上述のとおり、構成となる各種のフィルタ、活性炭、イオン交換樹脂等を包装容器（図示せず）に封入し、学習用水処理器とすることができる。
学習用水処理キットの包装容器には、各構成のほかに、試験水製作用の飲料水を封入したボトル（図示せず）と、水処理器と試験水との使い方を説明する説明書とを併せて封入する。説明書にしたがって、家庭内の醤油などを試験水製作用の飲料水に加え、試験水を製作し実験の準備とする。

【0018】

実験においては、まず図２に示すシリンダ１０を用意し、上述したように、開口１７からフィルタ３２、活性炭２、フィルタ３３、イオン交換樹脂４、フィルタ３４を順に封入してパーツを作る。

【0019】

次に、パーツのシリンダ１０の後端の開口１７から試験水を注入する。試験水は試験水製作用の飲料水を用いる。

【0020】

図１に示すように、シリンダ１０の開口１７からプランジャ２０のゴムシールド２２を挿入し、シリンダ１０に対しプランジャ２０を押し込む。
すると、シリンダ１０内の試験水は、フィルタ３４、イオン交換樹脂４、フィルタ３３、活性炭２を通過し、ろ過された無色の水が通孔２７を通り、メンブランフィルタ２５を通して先端の抽出孔２６から処理後の水が流出する。

【0021】

当初に着色されていた試験水は、イオン交換樹脂、活性炭を通ることにより、色が消え、試験水中の異物はフィルタ３４、３３、３２、メンブランフィルタ２５で捕獲され、精密にろ過された無色の水が抽出孔２６から排出される。

【0022】

この水処理器１は、簡易な構成であり、学習用教材として用いられる。
教材としての水処理キットは、シリンダ１０と、プランジャ２０と、シリンダ１０内にセットされた前述したようなフィルタ３２、３３、３４、活性炭２及びイオン交換樹脂４、取扱説明書、試験水入りのボトル等からなる。

【0023】

実験時、ボトル内の試験水を水処理器１のシリンダ１０の開口１７から注入し、シリンダ１０に対してプランジャ２０を押し込むと、試験水が無色透明な匂いのない水になって排出される。
これにより操作者（実験者）は、試験水が色なしの水に代わって排出されることを学ぶ。実験者は、目視で試験水から脱色される現象を視覚的に学習する。
このような水処理キットを身近な教材として簡易キットとして活用できる。手軽な実験器具として使いやすい。

【0024】

本発明の上記の実施形態では、シリンダ内に活性炭及びイオン交換樹脂を配設したが、他の実施形態としては、シリンダ内へ充填する素材は、活性炭のみでも良いしイオン交換樹脂のみを充填させても良い。
上記実施形態では、シリンダは透明色としたが、本発明の他の実施形態では半透明色のシリンダであってもよい。

【0025】

学習キットとして、水処理器１のほかに、取扱説明書並びにボトル内の試験水がセットとなっていることにより、水処理の基本的事項を手軽に学ぶことができる。学校や社会人研修などで環境汚染問題と問題解決策の一例を身近に体感し、科学の知識と理解を深める教材を提供することができる。

【0026】

また、水処理器１を用いると、災害時の断水などの緊急時に雨水等を浄化することもできる。
水処理器１によると、ポンプ等の電源を必要とする機材を用いないため、移動して利用することが容易に可能となっている。ただし、浄水能力に関しては、浄化前の水質により変化する。
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。

【0027】

本発明の学習用水処理器は、前記フィルタの入口側の室に設けられる活性炭又はイオン交換樹脂のいずれか一方に代えて、前記フィルタの入口側に設けられる活性炭と、前記活性炭の入口側に設けられるイオン交換樹脂と備える構成にしてもよい。

【0028】

本発明の学習用水処理キットは、上記の水処理器と、前記水処理器に供給する試験水を含むボトルと、前記水処理器の使用方法の記載を有する説明書とを備えた学習用水処理キットとしてもよい。

【符号の説明】

【0029】

１ 水処理器（学習用水処理器）、
２ 活性炭、
４ イオン交換樹脂、
１０ シリンダ、
２０ プランジャ、
２５ メンブランフィルタ、
２６ 抽出孔（ノズル）、
３２、３３、３４ フィルタ。

【図1】

【図2】

【図3】

【手続補正書】

【提出日】2023-09-25

【手続補正1】

【補正対象書類名】特許請求の範囲

【補正対象項目名】全文

【補正方法】変更

【補正の内容】

【特許請求の範囲】

【請求項1】

筒状のシリンダ（１０）と、
前記シリンダの内壁に摺動可能なプランジャ（２０）と、
前記シリンダ内の先端に設けられるノズル（２６）と、
前記ノズルの入口に設けられる第１フィルタ（２５）と、
前記第１フィルタの入口側の前記シリンダ内の室に設けられる活性炭（２）と、
前記シリンダ内の室で前記活性炭の入口側に設けられるイオン交換樹脂（４）と、
前記第１フィルタのろ過機能よりも粗いろ過機能を有し、前記室内に前記活性炭と前記イオン交換樹脂との混合を防止する第２フィルタ（３３）とを備え、
学習時、操作者は、前記シリンダの開口（１７）から前記活性炭、前記第２フィルタ、前記イオン交換樹脂を入れ、試験水を注入し、前記プランジャを押し込む操作をする学習用水処理器。

【請求項2】

前記第１フィルタと前記第２フィルタの間の前記シリンダの室に第３フィルタ（３２）を備え、前記第３フィルタのろ過機能は、前記第１フィルタのろ過機能よりも粗い請求項１記載の学習用水処理器。

【請求項3】

前記イオン交換樹脂の入口側の前記シリンダの室に第４フィルタ（３４）を備え、前記第４フィルタのろ過機能は、前記第１フィルタのろ過機能よりも粗い請求項２記載の学習用水処理器。

【請求項4】

請求項１又は２に記載された前記水処理器と、前記水処理器に供給する試験水を含むボトルと、前記水処理器の使用方法の記載を有する説明書とを備えた学習用水処理キット。

【手続補正2】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】０００６

【補正方法】変更

【補正の内容】

【0006】

本発明の学習用水処理器は、筒状のシリンダ（１０）と、
前記シリンダの内壁に摺動可能なプランジャ（２０）と、
前記シリンダ内の先端に設けられるノズル（２６）と、
前記ノズルの入口に設けられる第１フィルタ（２５）と、
前記第１フィルタの入口側の前記シリンダ内の室に設けられる活性炭（２）と、
前記シリンダ内の室で前記活性炭の入口側に設けられるイオン交換樹脂（４）と、
前記第１フィルタのろ過機能よりも粗いろ過機能を有し、前記室内に前記活性炭と前記イオン交換樹脂との混合を防止する第２フィルタ（３３）とを備え、
学習時、操作者は、前記シリンダの開口（１７）から前記活性炭、前記第２フィルタ、前記イオン交換樹脂を入れ、試験水を注入し、前記プランジャを押し込む操作をする構成を採用する。