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特開2024-65591タンクに取り付ける支持材の支持装置、及びその支持材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065591
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】タンクに取り付ける支持材の支持装置、及びその支持材
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/08 20060101AFI20240508BHJP
   B65D 90/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F17C13/08 302Z
B65D90/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174536
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】512141884
【氏名又は名称】株式会社新来島サノヤス造船
(71)【出願人】
【識別番号】595015926
【氏名又は名称】アスク・サンシンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】武藤 豊明
(72)【発明者】
【氏名】福迫 真二
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柏木 俊之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 久美
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB29
3E170DA01
3E170NA01
3E170QA02
3E170VA07
3E170VA16
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB05
3E172BB06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC06
3E172BC07
3E172BC08
3E172BD01
3E172CA30
3E172DA03
3E172DA13
3E172DA20
(57)【要約】
【課題】本発明は、タンクに支持材を容易に取り付けられる支持構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の支持構造は、回転可能に保持されているタンク(1)に接着剤で取り付けられる支持材(10)を支持する支持装置(50)を備える支持構造であって、支持装置(50)は、タンク(1)の外面(4)上に取り付けられて下方に延びている取り付け部材(51)、及び、取り付け部材(51)により支持材(10)を下方から直接、又は介在部材を介して支持する支持板(52)を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に保持されているタンクに接着剤で取り付ける支持材を支持する支持装置であって、
前記支持装置は、前記タンクに保持されて下方に延びている取り付け部材、及び、前記取り付け部材により支持され、前記支持材を下方から直接、又は介在部材を介して支持する支持板を備える支持装置。
【請求項2】
押圧力印加装置を備え、
前記押圧力印加装置は、前記支持材を直接、又は介在部材を介して、前記支持材を前記タンクの下面に接近する方向に押圧可能であり、
前記支持装置は、前記押圧力印加装置により前記支持材に押圧力を加えた状態で前記支持材を支持可能である、請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記支持装置は、前記押圧力印加装置が前記支持材に加える押圧力を維持する押圧力維持装置を備える、請求項2に記載の支持装置。
【請求項4】
前記押圧力印加装置はボルトを有しており、
前記押圧力維持装置はナットを有している、請求項3に記載の支持装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の支持装置が支持する支持材は、
前記タンクに接着剤により固定される第1部材と、前記第1部材に接して配置され、前記タンクが搭載される対象物に支持される第2部材とを有しており、
前記第1部材と、前記第2部材との間には、接着剤浸入防止構造が設けられている、支持材。
【請求項6】
前記接着剤浸入防止構造は充填材を有している、請求項5に記載の支持材。
【請求項7】
前記支持材は、前記第1部材、及び前記第2部材を連結する連結部材と、連結具とを有し、
前記連結部材と前記連結具とにより、前記第1部材、及び前記第2部材を連結して設けられている空間に前記充填材が設けられている、請求項6に記載の支持材。
【請求項8】
前記連結部材は、前記第1部材、及び前記第2部材が非連結状態の時に、折り曲げ加工されている前記連結部材の一部分を折り返すことで、前記第1部材と摺動する領域を形成可能に構成されている、請求項7に記載の支持材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに取り付けられる支持材の支持装置、及びその支持材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス(LNG)を燃料として、又は運搬するために貯留する断面円形のタンクが用いられ、例えば船舶に搭載されている。タンクは、タンクにあらかじめ取り付けられた支持材を介して船体に搭載される。極低温の液化天然ガスを内部に貯留すると、タンクが収縮する。したがって、支持材は断熱性を有するとともに、タンクの長さ変動を吸収することが可能となるように構成されている。
【0003】
支持材は、タンクを船体に取り付ける前にタンクに取り付けられる。支持材は断熱性を有する材料で形成されたブロックであり、タンクの長手方向の2か所において、タンク下半分の外面上の周方向に連続して多数が取り付けられる。支持材の取り付け時には、タンクは動か ないように設備に固定される。支持材は、タンク下半分において、タンクの真下側から外面の円弧形状に沿って1つずつ取り付けられる。支持材は、作業の進捗に伴い、1つ目の支持材が取り付けられるタンクの最下点からタンクの真横の側面まで搬送される。作業者は支持材を1つずつ取り付ける作業を繰り返し、タンクの下側の半周において円弧状に支持材を取り付ける。取り付けられた支持材は、円周方向に張られて支持材の外面を保持するワイヤ、及び、作業場の床面と支持材との間に支えとして入れられる複数の添え木、等により、接着剤が固化するまでタンクに密着して保持されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワイヤと、添え木の設置には熟練と手間が必要であった。また、タンクの最下点からタンク外面の円弧形状に沿って支持材を搬送しなければならず、高い位置での作業もやりにくかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、タンクに支持材を容易に取り付けられる支持装置、及びタンクに容易に取り付けられて確実にタンクを支持する支持材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタンクに取り付けられる支持材の支持装置は、タンクに保持されて下方に延びている取り付け部材、及び、前記取り付け部材により支持され、前記支持材を下方から直接、又は介在部材を介して支持する支持板を備える支持板を備えている。
【0007】
本発明に係る支持装置は、取り付け部材と、支持板とを備えているので、タンクに取り付けられる支持材を確実に支持でき、支持材をタンクに確実に固定することができる。
【0008】
また、本発明に係るタンクに取り付けられる支持材の支持装置は、押圧力印加装置を備え、押圧力印加装置は、支持材を直接、又は介在部材を介して、支持材をタンクの下面に接近する方向に押圧可能であり、支持装置は、押圧力印加装置により支持材に押圧力を加えた状態で支持材を支持可能であることが好ましい。
【0009】
これにより、本発明に係る支持装置は、押圧力印加装置により、接着剤を塗布された支持材をタンクに押圧した状態で支持材を支持でき、タンクに確実に支持材を固定することができる。
【0010】
また、本発明に係るタンクに取り付けられる支持材の支持装置は、押圧力印加装置が支持材に加える押圧力を維持する押圧力維持装置を備えていることが好ましい。
【0011】
これにより、本発明に係る支持装置は、接着剤が固化するまでの一定時間の間、支持材に加える押圧力が低下することなく、支持材を支持し続けることができる。したがって、支持材をタンクに確実に固定することができる。
【0012】
また、本発明に係るタンクに取り付けられる支持材の支持装置の押圧力印加装置はボルトを有しており、押圧力維持装置はナットを有していることが好ましい。
【0013】
これにより、本発明に係る支持装置は、ボルトと、ナットという簡素な構造により、支持材の支持を維持することができる。したがって、支持材をタンクに確実に固定することができる。
【0014】
また、本発明に係る支持装置が支持する支持材は、タンクに接着剤により固定される第1部材と、第1部材に接して配置され、タンクが搭載される対象物に支持される第2部材とを有しており、第1部材と、前記第2部材との間には、接着剤浸入防止構造が設けられていることが好ましい。
【0015】
これにより、本発明に係る支持材は、第1部材と、第2部材との間には、接着剤浸入防止構造が設けられているので、支持材がタンクに接着剤で取り付けられる際にも、接着剤が第1部材と、第2部材との間に意図せず入り込むことを防止することができる。したがって、支持材は、タンクと、タンクを固定する対象物との間における相対移動を許容することができる。よって、タンクが収縮しても、タンクの長さ変動を吸収することができる。
【0016】
また、本発明に係る支持材の接着剤浸入防止構造は、充填材を有していることが好ましい。
【0017】
これにより、本発明に係る支持材は、充填材という簡素な材料、及び構造で接着剤浸入防止構造を構成することができる。
【0018】
また、本発明に係る支持材の充填材は、支持材が有する第1部材、及び第2部材を連結して設けられている空間に設けられていることが好ましい。
【0019】
これにより、本発明に係る支持材は、施工時には流動状態である充填材を確実に施工して保持することができる。
【0020】
また、本発明に係る支持材の連結部材は、第1部材、及び第2部材が非連結状態の時に、折り曲げ加工されている連結部材の一部分を折り返すことで、第1部材と摺動する領域を形成可能に構成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、本発明に係る支持材の連結部材は、第1部材、及び第2部材を容易に連結可能であるとともに、支持材の固定後に、第1部材、及び第2部材の連結を解除して、第1部材が連結部材上を摺動する領域を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に係る支持装置、及び支持材を取り付けるタンクの側面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1の支持材の斜視図である。
図4図1の支持材の前面図である。
図5図2のV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施例>
以下に、本発明に係る支持材10の支持構造50、及びその支持材10の実施例を説明する。まず、図1、及び図2を参照して、支持材10を取り付けている状態のタンク1を説明する。図1、及び図2は、それぞれ支持材10を取り付けている状態のタンク1の側面図、及び図1のII-II断面図である。
【0024】
図1に示されているように、タンク1は、例えば円筒形状部分2の両端面に半球形状部分3が設けられている、いわゆるたわら型と呼ばれる形状に形成されている。タンク1は、例えば船舶に搭載される燃料用、又は運搬用のタンク1である。また、タンク1は、例えば液化天然ガスを貯留するタンク1である。または、タンク1は略球形状のタンクでもよい。
【0025】
タンク1は、ニッケル鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属板から形成される。ニッケル鋼の場合は、例えばニッケルを9%含有する鋼板が使用される。タンク1には、極低温、例えば-164度の液化天然ガス等が貯留される。タンク1内部を極低温に保つため、タンク1の外面4には、断熱材が備えられている。断熱材は、例えば、ポリウレタンである。断熱材は、吹き付け、又は貼り付けにより、タンク1の外面4に設けられる。
【0026】
タンク1は、船舶に搭載された時には、円筒形状部分2の長手方向における両端部周辺の少なくとも2か所において支持される。それらの支持部位にはタンク1の外面4の下側半分の範囲において周方向に沿ってプレート7がそれぞれ溶接されている。タンク1の長手方向の2か所の支持部位のうち、一方の支持部位はタンク1を船舶の支持台に対して移動可能な状態で支持し、他方の支持部位はタンク1を移動不可能な状態で固定する。図1に示されているように、一方の支持部位のプレート7には、本発明に係る支持材10が取り付けられる。他方の支持部位のプレート7には、断熱性材料で一体的に直方体に形成されている固定材18が取り付けられる。
【0027】
周方向に長いプレート7の周方向の全長における中央点は、下面側中央点6である。下面側中央点6は、1つ目の支持材10を取り付ける際には、タンク1を回転させて、タンク1の最下点に移動される。下面側中央点6は、タンク1が船舶に取り付けられる際には、タンク1の最下点となるように取り付けられる。プレート7には、プレート7の周方向のほぼ全長にわたって多数の支持材10が取り付けられる。
【0028】
タンク1に支持材10を取り付ける場合は、タンク1は複数のターニングローラ8上に載せられ、回転可能に保持される。図1及び図2には、複数のターニングローラ8上に載せられたタンク1が示されている。ターニングローラ8はタンク1の支持材取り付け作業を行う作業台に設けられている。2つからなる1組のターニングローラ8は、図2に示されているように、互いの中心軸線X1を平行にして配置されている。ターニングローラ8は、図1に示されているように、タンク1の長手方向に沿って2組配置されている。タンク1は、タンク1の下面の両側を複数のターニングローラ8に支持されていることにより、自由に回転することができる。ターニングローラ8には、ターニングローラ8の少なくとも表面には、弾性を有する部材、例えばポリウレタン等が設けられている。これにより、ターニングローラ8の外面4への接触によるタンク1の傷つき、及びスリップが防止される。
【0029】
図2に示すように、タンク1の外面4の上側には、タンク1を回転させる駆動力を与える駆動ローラ9が接して配置されている。駆動ローラ9は図示されない電動モータ等の駆動装置により駆動される。また、前記駆動装置はロック機構を有しており、操作により駆動ローラ9をロックすることができる。複数のターニングローラ8上に回転自在に保持されているタンク1は、駆動ローラ9によりタンク1の中心軸線X0を回転中心にして、図2中のL方向、又はR方向に回転可能、又は回転しないようにロックすることができる。なお、上記駆動装置は、ターニングローラ8に備えられていてもよい。
【0030】
図3及び図4を参照して、支持材10の構成を説明する。図3は、支持材10の斜視図であり、構造を理解しやすいように、上側の部分を破線で示している。図4は、支持材10の前面図である。支持材10は断熱性を有する材料で形成されてタンク1を支える部材である。支持材10は、第1部材11、第2部材21、連結部材31、及び連結具37を有している。支持材10は、第2部材21の上に連結部材31が載せられ、さらに連結部材31の上に空間38を介して第1部材11が載せられて構成されている。支持材10は、支持するタンク1、タンク1に貯留される物質、及びタンク1を搭載する船舶等の対象物に応じて、各寸法が適宜決定される。
【0031】
図3及び図4を参照して、第1部材11の構成を説明する。第1部材11は、タンク1の外面4と接着される部材である。第1部材11は、略直方体の部材であり、上面12、下面13、側面14、及び端面15を有している。上面12と、両側面14とがなす角部は、両端面15間の全体にわたってチャンファ加工された面取り部17がそれぞれ形成されている。上面12は、取り付ける相手部材の面にあった形状に形成されている。例えば、上面12はタンク1の外面4に沿った曲面に形成されている。
【0032】
上面12と、上面12が接するタンク1の外面4との間には、接着剤が塗布されて互いに固定される。また、面取り部17があることで接着面積を増やすことができ、面取り部17と外面4との間の空間に接着剤を押し込んで接着して、接着力を増加させることができる。接着剤が固化するまでの約2~3日間は、支持材10をタンク1の外面4に接する状態で支持し続ける必要がある。本発明では、その間、後述するように支持材10を容易、かつ確実に支持することが可能である。
【0033】
第1部材11は、木の板材を積層して形成されている。第1部材11は、フェノール樹脂を含侵させた木の板材を複数積層し、カットしてブロック材を形成した後、所望の形状に加工して形成される。上記の製法により、硬質の木製ブロックを形成でき、内部が満たされたタンク1の荷重を支えることができる。
【0034】
図3及び図4を参照して、第2部材21の構成を説明する。第2部材21は、第1部材11を支える部材である。第2部材21は、略直方体の部材であり、上面22、下面23、側面24、及び端面25を有している。上記の各面は、平面に形成されている。下面23と、両側面24とがなす角部は、両端面25間の全体にわたってチャンファ加工された面取り部27がそれぞれ形成されている。下面23は、取り付ける相手部材の面にあった形状に形成されている。例えば、下面23はタンク1が搭載される部位の表面に沿った曲面に形成されている。
【0035】
第2部材21は、第1部材11と同様に、木の板材を積層して形成されており、その材料、及び製造方法は、第1部材11と同様である。そのため、十分な強度を有し、第2部材21も第1部材11と同様に、内部が満たされたタンク1を支えることができる。
【0036】
第2部材21の下面23と、支持材10が搭載される船舶の架台との間、及び隣接して取り付けられる支持材10同士の間には、それぞれ接着剤が塗布されて互いに固定される。なお、接着剤は、接着する部材・部位に応じて、最適な接着剤が選択される。例えば、第1部材11の上面12と、上面12が接するタンク1の外面4との間、及び隣接する支持材10同士の間には接着剤A、第2部材21の下面23と、支持材10が搭載される船舶の架台との間には接着剤Aと異なる接着剤Bのように、最適な接着剤を使い分けることができる。
【0037】
図3及び図4を参照して、連結部材31の構成を説明する。連結部材31は、第1部材11と、第2部材21とを、容易に連結解除することが可能な状態で連結している部材である。連結部材31は、長方形状の金属の板材の一部を切り欠いた略長方形状に形成されており、上面32、及び下面33を有している。また、連結部材31は、何れも連結部材31の一部により形成されている第1部材連結部34と、第2部材連結部35とを有している。連結部材31の材料は金属であり、例えばSUSの板材である。
【0038】
第1部材連結部34は、連結部材31の各角部を含む複数の端部により形成されている。連結部材31の第2部材21の側面24に隣接する1組の各辺の中央部分は長方形状に切り欠かれており、連結部材31は上面視で略H字形状に形成されている。第1部材連結部34は、連結部材31の4つの各角部を含む長方形の部分が上面32に対して下面33側にそれぞれ90度に折り曲げられて形成されている。折り曲げられている各第1部材連結部34の各内面は、側面24に接している。すなわち、両側の第1部材連結部34で第2部材21を挟み込んでいる。合計4つの第1部材連結部34は、略中央部において連結具37が通される図示されない孔がそれぞれ設けられている。
【0039】
第2部材連結部35は、各側面24側にそれぞれ配置されている1組の第1部材連結部34の間に1つずつ設けられている。第2部材連結部35は、両側面24の間に形成されている連結部材31の平面部分が、上面32に対して90度上方に折り曲げられて、それぞれ形成されている。折り曲げられている第2部材連結部35の各内面は、それぞれ側面14に接している。すなわち、両側の第2部材連結部35で第1部材11を挟み込んで保持している。両側の第2部材連結部35は、略中央部において連結具37を通す孔がそれぞれ設けられている。
【0040】
連結具37は、連結部材31を、第1部材11、及び第2部材21に固定している部材である。連結具37は締結ねじである。連結具37は、第1部材連結部34、及び第2部材連結部35に設けられている孔を通して第1部材11、及び第2部材21に締結されている。これにより、第1部材11と、第2部材21とは、一体的に構成されている。
【0041】
図4を参照して、第1部材11と、連結部材31との接合部分の構成を説明する。支持材10は、第2部材21の上に載せられている連結部材31と、その上に配置されている第1部材11との間に、空間38を備えている。空間38は、第2部材連結部35が第1部材11に連結具37で固定されていることにより形成されている。空間38には、充填材39が備えられている。液化天然ガス貯留用のタンク1は、内部の液化天然ガスによりタンク1が収縮する。支持材10は、タンク1を船舶に搭載後、後述する方法で、第1部材11と第2部材21との連結状態を解除し、第1部材11を第2部材21に対して相対移動可能な状態にする。
【0042】
充填材39は、シリコン系、ウレタン系、又はアクリル系、等の液体状の流動性部材を用いることができる。又は、充填材39は、流動性部材以外で構成されていてもよい。充填材39は外力により弾性変形可能な部材、例えば、スポンジ状の半定形物、柔軟性を有する定形物、等から選ばれる部材から形成されていてもよい。充填材39は、上記の液体、及び固体の部材の何れか1つ以上を組み合わせて用いられてもよい。充填材39は、連結部材31と、第1部材11とが接する面において、外周部の全周に加え、互いが接する面全体に設けられている。
【0043】
以下に、充填材39の役割を説明する。空間38に設けられている充填材39は、第1部材11を外面4に接着する際に用いる接着剤が空間38に入り込むことを防止する。第1部材11と、第2部材21とは、タンク1の収縮に応じて相対移動可能な構造である。第1部材11と、連結部材31との間に接着剤が侵入して両者が固着してしまうと、相対移動ができなくなる。本発明では、空間38に充填材39を配置することで、接着剤が空間38に入り込むことを防止する。それにより、タンク1を船舶に搭載後、タンク1の収縮、及び膨張に応じて第1部材11が第2部材21に対して相対移動可能な状態に維持することができる。また、連結部材31は、第2部材連結部35を上方に折り曲げた形状を有していることにより、接着剤が空間38に入り込む可能性を低減することに寄与している。接着剤侵入防止構造は、空間38に設けられている充填材39、及び連結部材31を含んでいる。
【0044】
上記接着剤侵入防止構造は、空間38に設けられている充填材39に替えて、又はそれに加えて、連結部材31と第1部材11、連結部材31と第2部材21、第1部材11と第2部材21のそれぞれの界面にゴムパッキンを設けることができる。
【0045】
図5を参照して、支持材10の取り付けに用いられる支持装置50の構成を説明する。図5は、図2のV-V断面図である。図5は、タンク1に取り付けられた支持材10が支持装置50で支持されている状態を示している。支持装置50は、取り付け部材51と、取り付け部材51により支持されている支持板52とを有している。
【0046】
取り付け部材51は、必要な長さに形成された棒状部材で形成されていてよい。取り付け部材51は、金属製の棒状部材であり、例えばアングル材で形成されている。又は、取り付け部材51は、複数の棒状部材をボルトナットにより接続して1本の棒状部材を形成してもよい。複数の棒状部材をボルトナットにより接続して1本の棒状部材を形成した場合、一部の棒状部材の長さを変えることで、取り付け部材51の長さを所望の長さに容易に変更可能である。又は、接続されている複数の棒状部材の1つに長孔部を設け、他方の棒状部材をその長孔部を通してボルトナットで締結する構成にすることにより、取り付け部材51の長さを所望の長さに容易に変更可能である。取り付け部材51は少なくとも4本用いられている。
【0047】
タンク1に溶接固定されているプレート7は、取り付け部材51の上端部が接続できる構造を有しており、取り付け部材51の上端部は、プレート7に図示されない締結具でそれぞれ接続される。
【0048】
支持板52は、上面視が長方形で、支持材10を載せる載置板53を載せられる大きさの金属製の板部材である。取り付け部材51の上端部は、プレート7の図示されない接続部分に接続される。タンク1から下方に延びる取り付け部材51の下端部は、支持板52が接続されている。支持板52は、断面L字形状のアングル材を介して、支持板52の四隅の周辺部が締結具で取り付け部材51の下端部にそれぞれ固定される。
【0049】
支持装置50は、図5に示されているように、タンク1に取り付けられた支持材10に押圧力を印加可能な押圧力印加装置55、及び押圧力印加装置55により加えられる押圧力を一定に維持する押圧力維持装置56を有している。支持板52の複数個所、例えば支持板52のタンク1の長手方向の両端部のそれぞれにおいて、タンク1の周方向に沿って1つ以上の貫通孔が設けられ、前記貫通穴に中心軸線が同軸にされた固定ナット57が支持板52の下面に溶接等でそれぞれ固定されている。固定ナット57には、固定ナット57に対応したサイズのボルト58が下側から上方に向かってねじ込まれている。ボルト58には、支持板52より上側のねじ部に回転ナット56がねじ込まれている。固定ナット57と、ボルト58は、載置板53の外周に沿って、少なくとも4セットが設けられていると、安定して載置板53を支持することができる。なお、支持板52に替えて、長短1組ずつのアングル部材等の長手部材を組んで形成された長方形の枠状部材でもよい。その場合、複数設けられる押圧力印加装置55及び押圧力維持装置56は、タンク1の周方向に沿って配置された1組の長手部材上に、それぞれ配置される。
【0050】
ボルト58は、電動、又はエアによるインパクトレンチ等のツールで回転することで、支持板52から上側に突出する突出量が調整される。すなわち、ボルト58を回転させることにより、ボルト58の先端が支えている載置板53を上下させることができる。それにより、載置板53が支えている支持材10をタンク1の外面4に接近、又は離間させることができる。したがって、ボルト58とは、支持材10の接着状態を維持するための最適な押圧力に調整することができる。押圧力印加装置55は、ボルト58を有している。
【0051】
載置板53を用いる方法は、様々な大きさの支持材10のそれぞれに対応した大きさの支持装置50の作製を避けられるという利点がある。タンク1の大きさ・形状により、様々な大きさの支持材10が用いられている。載置板53を用いて支持材10を持ち上げる方法であれば、大きさが異なる支持材10を共通の支持装置50で対応することができる。また、載置板53は、ボルト58の先端が支持材10の下面に直接当接することによる傷つきの防止にも役立つ。なお、載置板53を設けずに、ボルト58が支持材10を直接押圧する構成にすることも可能である。
【0052】
押圧力印加装置55は、別な形態でもよい。又は、押圧力印加装置55は、作業者が所望の押圧力を発生させるために必要な枚数を支持板52上に積み上げて支持材10を持ち上げる複数枚の薄板でもよい。又は、押圧力印加装置55は、所望の押圧力を発生させるために支持板52を上方に持ち上げ可能なレバーと、支持板52を上方に持ち上げた状態のレバーの角度を機械的に保持するレバー角保持装置との組み合わせでもよい。
【0053】
ボルト58の長さを調整した状態で、回転ナット56を回転させて、支持板52の上面に当接させる。そうすることで、押圧している支持材10からの反力、質量等により、ボルト58が回転して上側の突出量が徐々に減少し、支持材10への押圧力の低下を防止することができる。押圧力維持装置56は、回転ナット56を含んでいる。押圧力維持装置56は、別な形態でもよい。例えば、押圧力維持装置56は、ボルト58の側面を挟み込んでボルト58を回転不能に係止する部材であってもよい。
【0054】
固定ナット57は、支持板52に直接形成された雌ねじ部であってもよい。固定ナット57は、支持板52の下面に替えて、又は加えて支持板52の上面に固定されていてもよい。この場合、回転ナット56は、支持板52の上面に当接させる代りに、固定ナット57に当接させる。
【0055】
<支持材10の取り付け方法>
図5を参照して、支持材10の取り付け方法を説明する。以下の(1)から(5)の手順により、支持材10を1つ取り付けてタンク1を少し回転させ、隣接する支持材10を取り付けることを逐次繰り返し、取り付ける支持材10を全数取り付ける。
【0056】
(1)支持装置50の取り付け
タンクを回転させて、タンク1の下面側中央点6を最下点にする。タンク1の外面4の下面に位置する下面側中央点6付近に支持装置50を取り付け、ボルト58の先端に載置板53を載せる。
【0057】
(2)タンク1の下面側中央点6への支持材10の接着
まず、タンク1の下面側中央点6に支持材10を取り付ける。支持材10の上面12とタンク1の外面4において、少なくとも何れか一方に接着剤を塗り、支持材10を接着する。
【0058】
(3)支持材10への押圧力の付加
各ボルト58を均等に締め込みながら、載置板53を介して支持材10への押圧力を付加する。
【0059】
(4)押圧力維持装置56の調整
支持材10への押圧力が調整された状態で、各ボルト58にあらかじめねじ込まれている回転ナット56を回転させて、支持板52の上面に当接させる。
【0060】
(5)タンク1の回転と支持材10の取り付けの繰り返し
次に、タンク1の下面側中央点6の支持材10に隣接する支持材10を取り付ける。タンク1を、図2に示されているL方向、又はR方向の何れかの方向に少し回転させる。取り付けた1つ目の支持材10に隣接する部位をタンク1の最下点に回転移動させて、2つ目の支持材10を上記と同じ要領で、取り付け済みの支持材10に接して取り付ける。それを繰り返し、下面側中央点6の支持材10から一回転方向側の支持材10をプレート7の端まで取り付ける。その後、タンク1の下面側中央点6の支持材10の隣接する部位がタンク1の最下点に来るまで、タンク1を他方向に回転させる。以降、タンク1の回転と支持材10の取り付けを繰り返し、他回転方向側の支持材10をプレート7の反対側の端まで取り付ける。支持材10を全数取り付けたら、支持装置50で支持材10を支持しながらしばらく放置し、接着剤を固化させる。以上の方法により、支持材10を全数取り付ける。
【0061】
支持材10のタンク1への取り付けは、タンク1を回転軸線X0中心に回転させ、施工最中の支持材10の取り付け部位を、常にタンク1の最下点に移動させた状態で行われる。この方法により、接着剤の固化まで支持材10に押圧力を加えた状態のまま確実に支持することができる。また、取り付け作業は、常にタンク1の最下点で行われるので、タンクの最下点の位置からタンク外面の円弧形状に沿って支持材10を搬送する必要がない。また、作業者は、高い位置で作業することないので作業の安全性が増し、常にタンクの真下にとどまって効率的に作業することができる。また、本発明によって効率的に作業できることで、工期を短縮することができる。
【0062】
<タンク1の船舶への搭載後の支持材10の連結状態の解除>
支持材10は、タンク1を船舶に搭載後、第1部材11と第2部材21との連結状態を解除して、第1部材11を第2部材21に対して相対移動可能な非連結状態にされる。以下に、その方法を説明する。
【0063】
図3、及び図4を参照して、第1部材11と第2部材21との連結状態の解除方法を説明する。タンク1に取り付けられた支持材10は、第1部材11と第2部材21とが連結されている状態である。支持材10は、連結部材31の両方の第2部材連結部35と、第1部材11とを締結しているそれぞれの連結具37を外すことで、第1部材11と第2部材21との連結状態が解除される。
【0064】
加えて、両方の第2部材連結部35は、上方に折り曲げられている状態から、連結部材31の上面32とほぼ面一になるように、図3における矢印A方向に曲げ戻されて、上面32と同一面の平坦面にされる。支持材10は、第2部材連結部35が曲げ戻されることにより、第1部材11と、連結部材31とが互いに摺動する領域を形成可能に構成されている。第2部材連結部35が曲げ戻されて連結部材31の上面32とほぼ面一になる平坦面が形成されることにより、非連結状態にされた第1部材11は、連結部材31の上面32上を、第2部材21の側面24の面方向、及び端面25の面方向に摺動可能である。そのため、タンク1の収縮に伴い、第1部材11はタンク1と一体的に、第2部材21に固定されている連結部材31に対して相対移動することができる。
【0065】
本発明によれば、タンクに支持材を容易に取り付けられる支持装置、及びタンクに容易に取り付けられて確実にタンクを支持する支持材を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 タンク、4 外面、10 支持材、11 第1部材、21 第2部材、 31 連結部材、37 連結具、38 空間、 39 充填材(接着剤侵入防止構造)、50 支持装置、 51 取り付け部材、52 支持板、 55 押圧力印加装置、 56 押圧力維持装置。
図1
図2
図3
図4
図5