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特開2024-65593サブマージドポンプ、及びサブマージドポンプの引抜方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065593
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】サブマージドポンプ、及びサブマージドポンプの引抜方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B65D90/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174540
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 真次
(72)【発明者】
【氏名】大賀 諒平
(72)【発明者】
【氏名】安井 和哉
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB29
3E170RA01
3E170RA02
3E170RA20
3E170VA20
(57)【要約】
【課題】メンテナンス時の漏れを最小限に抑えることが可能で、通常運転時には簡素な構成で軽量化が可能なサブマージドポンプ及び引抜方法を提供する。
【解決手段】サブマージドポンプ10は、天壁2に固定されてタンク1内を上下方向に延びる筒状のバレル20と、複数の筒体41を接続してなる保護管40と、保護管40の下端に取り付けられて保護管40と一体にバレル20内に配置されるポンプ部30と、バレル20と保護管40の間をシールする第1シール部28と、タンク1外に取外可能に配置されて保護管40とポンプ部30を支持可能な支持部材56とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの天壁の上側に配置される分岐した排出部を有し、前記天壁に固定されて前記タンク内を上下方向に延び、上端と下端が開口された筒状のバレルと、
前記バレルの軸線に対して交差する向きに窪む差込溝を有する複数の筒体を接続してなり、前記バレルの上端から前記バレル内に差し込まれた保護管と、
前記保護管の下端に取り付けられて前記保護管と一体に前記バレル内に配置され、前記バレルと前記保護管の間を通して前記排出部から液体を排出するポンプ部と、
前記バレルの上端に配置され、前記バレルと前記保護管の間をシールする第1シール部と、
前記差込溝に差込可能な差込部を有し、前記タンク外に取外可能に配置されて前記保護管と前記ポンプ部を支持可能な支持部材と
を備える、サブマージドポンプ。
【請求項2】
前記バレルの前記排出部の上側に設けられた仕切弁と、
前記バレルの上端に取外可能に配置される架台と
を更に備え、
前記架台は、
分岐した注入部と排出部を有し、上端と下端が開口された筒状の本体と、
前記本体の上端を覆い、前記支持部材を配置可能な載置壁と、
前記載置壁に設けられ、前記保護管を挿通可能な第1挿通孔と、
前記載置壁に配置され、前記載置壁と前記保護管の間をシールする第2シール部と
を備える、請求項1に記載のサブマージドポンプ。
【請求項3】
前記バレルの上端には載置板が取り付けられ、前記載置板の上面には閉鎖板が分離可能に取り付けられており、
前記載置板には、前記ポンプ部を挿通可能な第2挿通孔が設けられ、
前記閉鎖板には、前記第2挿通孔よりも小さく、前記保護管を挿通可能な第3挿通孔が設けられ、
前記第1シール部は、前記閉鎖板に設けられている、
請求項1又は2に記載のサブマージドポンプ。
【請求項4】
前記差込溝に着脱可能に配置され、前記筒体の外形と同じ外形を有するスペーサを備える、請求項1又は2に記載のサブマージドポンプ。
【請求項5】
前記支持部材は、前記差込部をそれぞれ有し、上方から見て前記バレルの軸線と交差する方向に分割された2以上の分割体からなる、請求項1又は2に記載のサブマージドポンプ。
【請求項6】
前記筒体は、ロッド又はワイヤを接続する接続部を有する、請求項1又は2に記載のサブマージドポンプ。
【請求項7】
前記天壁よりも上側に位置するように前記バレルに分岐された注入部と、
前記バレルの下端に取り付けられ、前記ポンプ部の載置によって開弁し、前記ポンプ部の吊り上げによって閉弁するフート弁と
を更に備える、請求項1又は2に記載のサブマージドポンプ。
【請求項8】
タンクの天壁に固定されて上下方向に延びる筒状のバレル内に配置され、複数の筒体を接続してなる保護管の下端に取り付けられたポンプ部によって液体を、前記バレルと前記保護管の間を通して前記天壁よりも上側に位置する前記バレルの排出部から排出するサブマージドポンプの引抜方法であって、
前記バレルの上端に配置された第1シール部によって前記バレルと前記保護管の間をシールした状態で、前記保護管と前記ポンプ部を一体に吊り上げる吊上ステップと、
前記バレルの上端から露出した前記筒体の差込溝に差込部を差し込んで前記タンク外に配置した支持部材によって、前記保護管と前記ポンプ部を支持する支持ステップと、
前記支持部材によって支持した部分よりも上側の前記筒体を分離する分離ステップと
を繰り返し行い、前記バレル内から前記ポンプ部を引き抜く引抜工程を備える、サブマージドポンプの引抜方法。
【請求項9】
前記引抜工程の前に、前記保護管を挿通可能な挿通孔が形成され、前記保護管との間が第2シール部によってシールされた載置壁によって筒状の本体の上端が塞がれた架台を、前記バレルの上端に配置する仮設工程を備え、
前記支持ステップでは前記支持部材が前記載置壁上に載置され、前記架台内に前記ポンプ部が位置すると前記引抜工程を終了し、
前記引抜工程の後に、前記バレルの前記排出部の上側に介設された仕切弁を閉弁し、前記架台の注入部から前記本体内に処理剤を注入して前記架台の排出部から排出し、前記ポンプ部を徐冷するバージ工程を備える、
請求項8に記載のサブマージドポンプの引抜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブマージドポンプ、及びサブマージドポンプの引抜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクに設置された筒状のバレル内に、タンク内の液体をタンク外の定められた設備に排出する浸漬式のポンプ部を配置したサブマージドポンプが知られている。このサブマージドポンプは、メンテナンス時、バレルからポンプ部を引き抜く必要があるが、液体がアンモニアのような液化ガス等の場合、気化したガスが大気に漏出すると環境に好ましくない。
【0003】
特許文献1には、気化したガスの大気への漏れに配慮したサブマージドポンプが開示されている。このサブマージドポンプでは、バレルの上部に仕切弁が配置され、この仕切弁を含むバレルの上端が密閉箱体によって取り囲まれている。また、密閉箱体には、ポンプ部に接続されたワイヤを巻き取るリールと電動モータが配置されている。これにより、密閉箱体によって気化したガスの漏れを抑えた状態で、電動モータによってリールを回転させることで、ポンプ部をバレルの上端から引き抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-73699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンクは50mを越える全高を有し、その天壁に3mを越える密閉箱体(構造物)を常設するのは、天壁の強度を考慮すると好ましくない。そのため、特許文献1のサブマージドポンプには、通常運転時の軽量化について改良の余地がある。
【0006】
本発明は、メンテナンス時の漏れを最小限に抑えることが可能で、通常運転時には簡素な構成で軽量化が可能なサブマージドポンプ、及びサブマージドポンプの引抜方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、タンクの天壁の上側に配置される分岐した排出部を有し、前記天壁に固定されて前記タンク内を上下方向に延び、上端と下端が開口された筒状のバレルと、前記バレルの軸線に対して交差する向きに窪む差込溝を有する複数の筒体を接続してなり、前記バレルの上端から前記バレル内に差し込まれた保護管と、前記保護管の下端に取り付けられて前記保護管と一体に前記バレル内に配置され、前記バレルと前記保護管の間を通して前記排出部から液体を排出するポンプ部と、前記バレルの上端に配置され、前記バレルと前記保護管の間をシールする第1シール部と、前記差込溝に差込可能な差込部を有し、前記タンク外に取外可能に配置されて前記保護管と前記ポンプ部を支持可能な支持部材とを備える、サブマージドポンプを提供する。
【0008】
本発明の他の態様は、タンクの天壁に固定されて上下方向に延びる筒状のバレル内に配置され、複数の筒体を接続してなる保護管の下端に取り付けられたポンプ部によって液体を、前記バレルと前記保護管の間を通して前記天壁よりも上側に位置する前記バレルの排出部から排出するサブマージドポンプの引抜方法であって、前記バレルの上端に配置されたシール部によって前記バレルと前記保護管の間をシールした状態で、前記保護管と前記ポンプ部を一体に吊り上げる吊上ステップと、前記バレルの上端から露出した前記筒体の差込溝に差込部を差し込んで前記タンク外に配置した支持部材によって、前記保護管と前記ポンプ部を支持する支持ステップと、前記支持部材によって支持した部分よりも上側の前記筒体を分離する分離ステップとを繰り返し行い、前記バレル内から前記ポンプ部を引き抜く引抜工程を備える、サブマージドポンプの引抜方法を提供する。
【0009】
ポンプ部は、複数の筒体を接続してなる保護管の下端に取り付けられ、この保護管と一体にバレル内に配置されている。また、筒体には差込溝が設けられ、この差込溝に差込可能な差込部を有する支持部材を備える。そのため、保護管とポンプ部を一体に吊り上げる吊上ステップ、支持部材によって保護管とポンプ部を支持する支持ステップ、及び支持した部分よりも上側の筒体を分離する分離ステップを繰り返し行うことで、ポンプ部をバレルから引き抜くことができる。この際、バレルの上端にはバレルと保護管の間をシールする第1シール部を備えるため、液体がアンモニアのような液化ガス等の場合、気化したガスが大気に漏出することを最小限に抑えることができる。また、支持部材は、取外可能に配置されるため、メンテナンス時のみに使用し、通常運転時には取り外すことで、サブマージドポンプを簡素な構成として軽量化できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、メンテナンス時の漏れを最小限に抑えることが可能で、通常運転時には簡素な構成で軽量化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るサブマージドポンプの断面図。
図2図1のII部分の拡大断面図。
図3図1のIII部分の拡大断面図。
図4図1のIV部分の拡大断面図。
図5】架台と支持部材の分解斜視図。
図6】ポンプ本体に引抜ユニットを仮設した状態の断面図。
図7】引抜工程における一過程の断面図。
図8】引抜工程における図7の次の一過程の断面図。
図9】引抜工程における図8の次の一過程の断面図。
図10】引抜工程における図9の次の一過程の断面図。
図11】引抜工程における図10の次の一過程の断面図。
図12】引抜工程の次のパージ工程の断面図。
図13】バレルからポンプ部を引き抜いた状態の断面図。
図14】変形例の支持部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るサブマージドポンプ10は、アンモニアのような液化ガス(液体)が貯留されたタンク1の天壁2に設置され、タンク1内の液化ガスをタンク1外の定められた設備に排出(供給)する。このサブマージドポンプ10は、タンク1に常設されるポンプ本体15と、メンテナンス時のみに仮設される引抜ユニット50とを備える。
【0014】
(ポンプ本体の構成)
引き続いて図1を参照すると、ポンプ本体15は、バレル20、ポンプ部30、及び保護管40を備え、保護管40の下端にポンプ部30が取り付けられ、これらが一体にバレル20の上端からバレル20内に差し込まれている。
【0015】
バレル20は、上端と下端が開口された筒状の直管からなる。バレル20は、タンク1の天壁2を貫通し、タンク1内を上下方向に延びている。バレル20の全長は、タンク1の全高に応じて形成されており、例えば50mである。図1には、バレル20を連続した1本の直管として図示しているが、実際には複数の直管を接続して構成されている。但し、バレル20は、タンク1の全高によっては1本の直管によって構成されてもよい。
【0016】
バレル20には、天壁2に固定するためのベースプレート20aが設けられている。天壁2の上側に位置するように、ベースプレート20aの上側には筒状の排出部20bが分岐接続されている。排出部20bには、仕切弁6が介設された送出管5が接続されている。また、ベースプレート20aの上側には筒状の注入部20cが分岐接続されている。注入部20cは、不活性ガス(例えばNガス)の供給源(図示せず)に接続されている。なお。注入部20cは、排出部20bに分岐して設けられてもよい。
【0017】
バレル20の下端にはフート弁21が取り付けられている。一方で、バレル20の排出部20bと注入部20cの上側には、バレル20の一部を構成する仕切弁25が設けられ、バレル20の上端には、引抜ユニット50を配置するための載置板26が設けられている。本実施形態では、バレル20の上端に仕切弁25を配置し、仕切弁25の上端に載置板26が設けられている。但し、バレル20の中間部分に仕切弁25を介設し、バレル20の上端に載置板26を設けてもよい。
【0018】
図2を参照すると、フート弁21は、弁座22と弁体23を備え、ポンプ部30の載置によって開弁し、ポンプ部30の吊り上げによって閉弁する。弁座22は、筒状であり、バレル20の下端に取り付けられ、下端にはフランジ部22aを備える。弁体23は、フランジ部22aと同一直径の円板状であり、弁座22に移動可能に取り付けられている。但し、弁体23は、弁座22を閉鎖して閉弁可能であれば、フランジ部22aの直径と異なる直径であってもよいし、円板以外の形状であってもよい。
【0019】
弁体23には、それぞれ複数の軸部23aと突出部23bが周方向に間隔をあけて設けられている。軸部23aは、フランジ部22aを貫通して上向きに突出している。軸部23aとフランジ部22aの間には、軸部23aを取り囲むように、弁体23を上向きに付勢するコイルスプリング24が配置されている。突出部23bは、弁座22内に突出している。この突出部23bへのポンプ部30の載置によって、コイルスプリング24の付勢力に抗して弁体23が弁座22から離間する(開弁)。吊り上げによるポンプ部30の突出部23bからの離間によって、コイルスプリング24の付勢力によって弁座22に弁体23が圧接される(閉弁)。
【0020】
図3を参照すると、仕切弁25は、手動で開弁状態と閉弁状態に切り換えられる開閉弁である。開弁状態の仕切弁25は、ポンプ部30を挿通可能な直径の通路を有する。但し、仕切弁25は、開弁状態と閉弁状態に切換可能であれば、電動式であってもよい。
【0021】
載置板26は、仕切弁25の上端にボルト止めされた円形状の金属板からなる。載置板26の直径は、後に詳述する引抜ユニット50が備える架台51の外径以上である。載置板26には、ポンプ部30を挿通可能な直径の挿通孔(第2挿通孔)26aが設けられている。
【0022】
載置板26の上面には、閉鎖板27が重ねて配置されている。閉鎖板27は、円形状の金属板からなり、載置板26に対して下側(外部)からボルト止めされている。ボルトを取り外すことによって、閉鎖板27は、載置板26から分離可能である。閉鎖板27の直径は、載置板26の挿通孔26aの直径よりも大きく、架台51の内径よりも小さい。閉鎖板27には、載置板26の挿通孔26aの直径よりも小さく、保護管40を挿通可能な直径の挿通孔(第3挿通孔)27aが設けられている。
【0023】
閉鎖板27上には、挿通孔27aを取り囲む筒状のホルダ27bが設けられている。ホルダ27b内には、保護管40との間をシールする複数のグランドパッキン(第1シール部)28が、積層して配置されている。但し、第1シール部は、グランドパッキン28に限られず、ホルダ27bと保護管40の間をシールできる構成であればよい。
【0024】
図1及び図2を参照すると、ポンプ部30は浸漬式であり、バレル20内の下端に配置され、バレル20内に浸入した液化ガスをバレル20と保護管40の間を通して排出部20bから排出する。ポンプ部30は、弁座22への当接によって支持され、弁体23を下向きに押圧してフート弁21を開弁させる。
【0025】
ポンプ部30は、ケーシング31内にモータ32が収容されている。モータ32の出力軸33には、インペラ(図示せず)が取り付けられている。モータ32には、複数の電線36aによって構成され、保護管40内に配索されるケーブル36が接続されている。電線36aの両端には、異なる電線36aを接続するためのコネクタ37A,37Bがそれぞれ取り付けられている。
【0026】
図1及び図3を参照すると、保護管40は、全体として円筒状で、ケーブル36を保護するために設けられている。この保護管40は、金属製で複数の筒体41を接続して構成されている。個々の筒体41の直径は、全て同じであり、バレル20の内径及び閉鎖板27の挿通孔27aの直径よりも小径である。
【0027】
複数の筒体41のうち、上端の筒体41は、閉鎖板27のホルダ27b及びグランドパッキン28を貫通して上方に突出している。モータ部30に接続する下端の筒体41Aの全長は、引抜ユニット50によって支持された状態で、架台51内にモータ部30を収容可能な長さである(図12参照)。この筒体41Aを除く複数の筒体41の全長は、クレーン(図示せず)によって吊り上げ可能な長さ(例えば5m)である。電線36aに余裕をもたせるために、筒体41の全長は電線36aの全長よりも短く形成されている。
【0028】
図1及び図4を参照すると、筒体41は、両端に接続部材42を備える。接続部材42は、円筒状で、筒体41の外径と同じ外径を有し、筒体41の内径よりも小さい内径を有する。接続部材42には、径方向内向き、つまりバレル20の軸線Aに対して交差する向きに窪む円環状の差込溝42aが形成されている。この差込溝42aは、筒体41に接合される接合部42b、接続部42c、及び接合部42bと接続部42cそれぞれの内周部に連なる連続部42dによって確定されている。筒体41Aを除く筒体41において、上側の接続部材42の差込溝42aに、後に詳述する引抜ユニット50が備える支持部材56の差込部57dが差し込まれる。
【0029】
接続部42cには、複数のボルト孔42eが周方向に間隔をあけて設けられている。上端の筒体41の上側の接続部材42の接続部42cは、タンク1外に露出しており、ボルト止めによって端子台44に接続される。下端の筒体41Aにおける下側の接続部材42の接続部42cは、ボルト止めによってポンプ部30に接続される。それ以外の接続部材42の接続部42cは、ボルト止めによって隣り合う筒体41の接続部42cに接続される。また、ボルト孔42eを有する接続部42cは、ボルト止めによって図9に示す吊り上げ用のロッド60とワイヤ61を接続する接続部を構成する。
【0030】
図4に最も明瞭に示すように、筒体41の接続状態で差込溝42aには、スペーサ43が着脱可能に配置される。スペーサ43は、軸線Aが延びる方向から見て円環状で、径方向に分割した2以上の分割体からなる。軸線Aと交差する方向から見た分割体の断面はL字形状である。スペーサ43の外径は筒体41の外径と同一であり、差込溝42aへの取り付けによってスペーサ43の外周面は筒体41の外周面と面一になる。但し、スペーサ43は、差込溝42aを塞いで筒体41の外周面との間の段差を無くすことが可能な構成であれば、断面コ字状であってもよいし、中実構造であってもよい。
【0031】
図1及び図3を参照すると、上端の筒体41の上側の接続部材42には、保護管40内を密閉し、図示しない電源とコントローラにケーブル36を接続するための端子台44が取り付けられている。
【0032】
(引抜ユニットの構成)
図1及び図5を参照すると、引抜ユニット50は、架台51と支持部材56を備え、タンク1外に位置するポンプ本体15上に取外可能に配置される。
【0033】
架台51は、金属製であり、メンテナンス時にバレル20の載置板26上に取外可能に配置され、ポンプ部30を密閉状態で収容するために設けられている。架台51は、上端と下端が開口された筒状の本体52と、本体52の上端開口を覆う載置壁53とを備える。本体52の直径は、載置板26の直径以下であり、閉鎖板27の直径よりも大きい。本体52の全長は、ポンプ部30の全高よりも大きい。載置壁53の直径は、本体52のフランジ部の直径以上、かつ支持部材56の直径以上である。本体52には、開閉扉によって開放可能に閉鎖される開口部を設け、この開口部を通して本体52内の部品を操作(作業)できる構成としてもよい。
【0034】
本体52には、それぞれ筒状の注入部52aと排出部52bが分岐接続されている。注入部52aは、本体52の上側に設けられ、液化ガスを無害化するための処理剤の供給源(図示せず)に接続されている。本実施形態では、注入部20cは、注入部20cと同様に、不活性ガス(例えばNガス)の供給源(図示せず)に接続される。排出部52bは、本体52の注入部52aよりも下側に設けられ、液化ガスと不活性ガスを処理する設備に接続される。
【0035】
載置壁53には、軸線Aが延びる方向から見たポンプ部30の外形よりも小さく、保護管40を挿通可能な直径の挿通孔(第1挿通孔)53aが設けられている。また、載置壁53上には、挿通孔53aを取り囲む筒状のホルダ53bが設けられている。ホルダ53b内には、保護管40との間をシールする複数のグランドパッキン(第2シール部)54が、積層して配置されている。但し、第2シール部は、グランドパッキン54に限られず、ホルダ53bと保護管40の間をシールできる構成であれば、必要に応じて変更可能である。
【0036】
支持部材56は、タンク1外である架台51の載置壁53上に配置され、垂下した保護管40とポンプ部30を支持するために設けられている。但し、支持部材56は、保護管40とポンプ部30を支持可能であれば、タンク1の天壁2に設けられた配置部に一時的に配置されてもよい。
【0037】
支持部材56は、軸線Aが延びる方向から見て円形状であり、軸線Aと交差する方向である径方向に分割した2以上(本実施形態では2つ)の分割体57からなる。個々の分割体57は側壁57aと端壁57bを備える。個々の側壁57aは上方から見て円弧状であり、分割体57を組み合わせた使用状態で円筒状をなす。端壁57bは、側壁57aの上端に接合されており、分割体57を組み合わせた使用状態で円形状をなす。
【0038】
端壁57bには、分割体57を組み合わせた使用状態で円形状をなす切欠部57cが設けられている。端壁57bの上下方向の厚みは、筒体41の差込溝42aの上下方向の溝幅よりも小さい。切欠部57cの径は、差込溝42aの底部分の直径よりも大きく、接続部材42の外径よりも小さい。このように構成した端壁57bは、切欠部57cが形成された部分を筒体41の差込溝42aに差込可能である。この差込状態では、端壁57bのうち切欠部57cの周囲の領域が筒体41の接続部42cに当接可能である。この当接可能な部分が差込部57dである。
【0039】
次に、図1に示すように、タンク1に設置したポンプ本体15のポンプ部30を、引抜ユニット50によって引き抜く方法を説明する。
【0040】
本実施形態のサブマージドポンプ10の引抜方法は、図6に示す仮設工程、図7から図11に示す引抜工程、及び図12に示すパージ工程を備える。
【0041】
仮設工程では、仕切弁6を開弁状態から閉弁状態に切り換える。また、図6に示すように、保護管40から端子台44を取り外し、端子台44とケーブル36の接続を解除する。続いて、ホルダ53bを貫通させた状態でロッド60を取り付けた架台51を載置板26上に配置し、保護管40の上端の接続部42cにロッド60をボルト止めして連結するとともに、架台51を載置板26にボルト止めして連結する。その後、注入部52aに、不活性ガス供給源に接続された接続パイプを接続するとともに、排出部52bに、処理設備に接続された接続パイプを接続する。また、架台51の周囲に支持部材56を用意しておく。
【0042】
続いて、吊上ステップ、支持ステップ、及び分離ステップを備える引抜工程を行う。
【0043】
具体的には、図7に示すように、クレーンによって架台51から露出したロッド60を引っ張り上げ、グランドパッキン28によってシールされた保護管40をポンプ部30と一体に吊り上げる(吊上ステップ)。これにより、ポンプ部30が弁体23から離間し、フート弁21が閉弁する。
【0044】
続いて、クレーンによる保護管40とポンプ部30の吊上ステップを継続しながら、不活性ガス供給源を動作させて、注入部20cからバレル20内に不活性ガスを注入する(パージステップ)。これにより、バレル20内の昇圧によって弁体23が一時的に開放し、バレル20内に残存している液化ガスがタンク1内に戻される。
【0045】
続いて、図8に示すように、保護管40のうち最も上側(一番目)の筒体41の上端が架台51から露出すると、差込溝42aに差込部57dを差し込むようにして、載置壁53上に支持部材56を配置する。これにより、支持部材56によって保護管40とポンプ部30を支持する(支持ステップ)。
【0046】
続いて、図9に示すように、ロッド60と接続部材42を連結したボルトを取り外し、保護管40との連結を解除したロッド60を取り外す(分離ステップ)。
【0047】
注入部20cからバレル20内に不活性ガスを注入するパージステップは、ロッド60による保護管40とポンプ部30の吊り上げの際に継続して行われる。一方で、このパージステップは、以下で説明するワイヤ61による保護管40とポンプ部30の吊り上げの際には行われない。但し、以下で説明するワイヤ61による保護管40とポンプ部30の吊り上げの際にもパージステップを行ってもよい。
【0048】
具体的には、保護管40からロッド60を取り外すと、ワイヤ61を保護管40の上端の接続部42cに接続する。続いて、支持部材56を取り外し、クレーンによってワイヤ61を引っ張り上げることで、2箇所のグランドパッキン28,54で保護管40をシールしながら、保護管40をポンプ部30と一体に吊り上げる(吊上ステップ)。
【0049】
続いて、保護管40の二番目の筒体41の上端が架台51から露出すると、スペーサ43を取り外し、二番目の筒体41の接続部材42の差込溝42aに差込部57dを差し込むようにして、載置壁53上に再び支持部材56を配置する。これにより、支持部材56によって保護管40とポンプ部30を再び支持する(支持ステップ)。
【0050】
続いて、図10に示すように、一番目と二番目の筒体41を連結したボルトを取り外し、支持部材56よりも上側に位置する一番目の筒体41を取り外すとともに、コネクタ37A,37Bによる電線36aの接続を解除する(分離ステップ)。
【0051】
その後、ワイヤ61を次(三番目)の保護管40の上端の接続部42cに接続し、保護管40とポンプ部30の吊上ステップ、支持部材56による保護管40とポンプ部30の支持ステップ、及び筒体41の分離ステップを繰り返し行う。
【0052】
吊上ステップ、支持ステップ、及び分離ステップの繰り返しによって、図11に示すように、筒体41Aに連なる筒体41の上端が架台51から露出すると、載置板26と閉鎖板27を連結したボルトを取り外し、載置板26と閉鎖板27の連結を解除する。
【0053】
続いて、ワイヤ61を筒体41Aの上側の接続部42cに接続し、支持部材56を取り外し、クレーンによってワイヤ61を吊り上げる。これにより、図12に示すように、ポンプ部30に接続した筒体41Aの上端が架台51から露出すると、支持部材56によって筒体41Aとポンプ部30を支持し、上側の筒体41と電線36aを取り外す。
【0054】
図12に示す状態では、グランドパッキン28を含む閉鎖板27が、ポンプ部30と一緒に吊り上げられ、架台51内に収容されている。この状態で、載置板26のボルト孔をボルトで塞ぎ、仕切弁25を開弁状態から閉弁状態に切り換える。また、不活性ガス供給源を動作させて、注入部52aから架台51内に不活性ガスを注入して排出部52bから排出する(パージ工程)。これにより、ポンプ部30の表面に残存した液化ガスを除去できるとともに、ポンプ部30を徐冷できる。
【0055】
最後に、図13に示すように、載置板26と架台51を連結したボルトを取り外し、載置板26と架台51の連結を解除し、支持部材56と一緒に架台51を載置板26から取り外す。これにより、ポンプ部30をバレル20から引き抜くことができる。
【0056】
一方で、メンテナンス後にポンプ部30をバレル20内に配置するときは、図10及び図11に示す分離ステップの代わりに、支持部材56によって支持した筒体41に別の筒体41をボルト止めによって接続し、クレーンによって吊り下げるステップを繰り返し行う。これにより、図1に示すように、タンク1にポンプ本体15を設置できる。
【0057】
このように構成されたサブマージドポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0058】
ポンプ部30は、複数の筒体41を接続してなる保護管40の下端に取り付けられ、この保護管40と一体にバレル20内に配置されている。また、筒体41には差込溝42aが設けられ、この差込溝42aに差込可能な差込部57dを有する支持部材56を備える。そのため、保護管40とポンプ部30を一体に吊り上げる吊上ステップ、支持部材56によって保護管40とポンプ部30を支持する支持ステップ、及び支持した部分よりも上側の筒体41を分離する分離ステップを繰り返し行うことで、ポンプ部30をバレル20から引き抜くことができる。
【0059】
バレル20の上端にはバレル20と保護管40の間をシールするグランドパッキン28を備えるため、液化ガスがアンモニアのような液化ガス等の場合、気化したガスが大気に漏出することを最小限に抑えることができる。また、支持部材56は取外可能に配置されるため、メンテナンス時のみに使用し、通常運転時には取り外すことで、サブマージドポンプ10を簡素な構成として軽量化できる。
【0060】
サブマージドポンプ10は、バレル20の上端に取外可能に配置される架台51を備える。そのため、バレル20の上端に架台51を配置する仮設工程を行った後に引抜工程を行い、支持ステップでは支持部材56を架台51の載置壁53に載置して行うことで、保護管40とポンプ部30を確実に支持できる。この際、架台51は、保護管40を挿通する挿通孔53aと、載置壁53と保護管40の間をシールするグランドパッキン54とを備えるため、気化したガスが大気に漏出することを最小限に抑えることができる。また、架台51は取外可能であるため、通常運転時には取り外すことでサブマージドポンプ10を軽量化できる。
【0061】
バレル20の上側には仕切弁25が設けられ、架台51には注入部52aと排出部52bが分岐して設けられている。そのため、引抜工程によって架台51内にポンプ部30が位置すると、仕切弁25を閉弁し、注入部52aから本体52内に不活性ガスを注入して排出部52bから排出することで、ポンプ部30の表面に残存した液化ガスを除去できるとともに、ポンプ部30を徐冷できる。しかも、仕切弁25によってタンク1内と大気側が遮断されるため、フート弁21のパッキンの劣化等によってタンク1内からバレル20内に液化ガスが浸入していても、気化したガスが大気に漏れることを防止できる。
【0062】
バレル20の上端が載置板26と閉鎖板27によって塞がれ、グランドパッキン28が閉鎖板27に設けられている。閉鎖板27は載置板26に対して分離可能に配置されているため、吊上ステップの際には気化したガスの漏れを抑制でき、ポンプ部30を架台51内に配置する際には閉鎖板27の分離によって確実に配置できる。
【0063】
差込溝42aに着脱可能に配置されたスペーサ43を備える。そのため、保護管40を吊り上げる際、筒体41の外面と差込溝42aとの段差によってグランドパッキン28,54が破損し、シール性能が損なわれることを抑制できる。
【0064】
支持部材56は分割された2以上の分割体57からなる。よって、タンク1外で保護管40に対して横から分割体57を配置できるため、保護管40とポンプ部30を支持する支持ステップの作業性を向上できる。
【0065】
筒体41は、ロッド60又はワイヤ61をボルトによって接続可能な接続部42cを有する。そのため、保護管40とポンプ部30を一体に吊り上げる吊上ステップの作業性を向上できる。
【0066】
バレル20が注入部20cを備え、バレル20の下端にポンプ部30の吊り上げによって閉弁するフート弁21を備える。そのため、引抜工程を開始した際、注入部20cを通してバレル20内に不活性ガスを注入することで、バレル20内の液化ガスをフート弁21からタンク1内に排出できる。よって、バレル20内に残存した液化ガスが気化して大気に漏出することを最小限に抑えることができる。
【0067】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、図14に示すように、支持部材56は、1つの部材によって構成されてもよい。具体的には、この変形例の支持部材56は、上方から見て断面C字状の側壁57aと、側壁57aの上端に接合された端壁57bを備える。側壁57aには、ホルダ53bを挿通可能な横幅の開口部57eが設けられ、端壁57bには、差込溝42aに差込可能な横幅の切欠溝57fが設けられている。このようにしても、支持部材56によって保護管40とポンプ部30を一体かつ安定して支持できる。
【0069】
保護管40とポンプ部30は、架台51を用いることなく、載置板26上に直接配置した支持部材56によって支持されてもよい。また、支持部材56は、タンク1の天壁2に直接配置される構成であってもよい。
【0070】
筒体41の差込溝42aは、周方向の一部のみが径方向内側に窪んでいてもよい。また、差込部57dは、差込溝42aに差し込んで保護管40とポンプ部30を支持できる構成であればよい。
【0071】
図12に示すパージ工程では、注入部52aから本体52内に、処理剤として水(水分)を噴射してもよい。
【0072】
サブマージドポンプ10によって排出する液体は、アンモニアのような液化ガスに限られず、必要に応じて変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 タンク
2 天壁
5 送出管
6 仕切弁
10 サブマージドポンプ
15 ポンプ本体
20 バレル
20a ベースプレート
20b 排出部
20c 注入部
21 フート弁
22 弁座
22a フランジ部
23 弁体
23a 軸部
23b 突出部
24 コイルスプリング
25 仕切弁
26 載置板
26a 挿通孔(第2挿通孔)
27 閉鎖板
27a 挿通孔(第3挿通孔)
27b ホルダ
28 グランドパッキン(第1シール部)
30 ポンプ部
31 ケーシング
32 モータ
33 出力軸
36 ケーブル
36a 電線
37A,37B コネクタ
40 保護管
41 筒体
41A 下端の筒体
42 接続部材
42a 差込溝
42b 接合部
42c 接続部
42d 連続部
42e ボルト孔
43 スペーサ
44 端子台
50 引抜ユニット
51 架台
52 本体
52a 注入部
52b 排出部
53 載置壁
53a 挿通孔(第1挿通孔)
53b ホルダ
54 グランドパッキン(第2シール部)
56 支持部材
57 分割体
57a 側壁
57b 端壁
57c 切欠部
57d 差込部
57e 開口部
57f 切欠溝
60 ロッド
61 ワイヤ
A 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14