(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065596
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】コイル、電力授受装置及び電力授受方法
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240508BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174544
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】築山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鷲田 晃暢
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 正也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴和
(57)【要約】
【課題】位置ズレに強く、インピーダンスが安定するコイル、電力授受装置及び電力授受方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コイル内周の径に対して所定比率のコイル巻幅をもつ複数のコイルを、同心軸上に複数配置したコイルを用いて電力を授受する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル内周の径に対して所定比率のコイル巻幅をもつ複数のコイルを、同心軸上に複数配置したコイル。
【請求項2】
前記所定比率は、略1/3である、請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記複数のコイルの隣合うコイル間の距離は、内側のコイルのコイル巻幅に略等しい、請求項1に記載のコイル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のコイルを備え、
前記コイルにて無線で電力を送受する、電力授受装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のコイルと、前記コイルの外周と略同一の外周を有するコイルとの間で無線にて電力を送受する、電力授受方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動水上モビリティ等に搭載されたバッテリとの間の電力授受に用いるコイル、電力授受装置及び電力授受方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会の実現に向け、自動車等の陸上モビリティのみならず、世界の流通を担う船舶のような水上モビリティについても電動化が実現されている(非特許文献1等)。陸上であっても、水上であっても、電動モビリティは大容量の充電が高速にできるか否かが問題となる。特に水上モビリティの場合は、船着き場で、バッテリを内蔵した船体に送電側コイルを近づけて充電するため、波による揺れの影響が課題となる。
【0003】
非特許文献2は、送電側コイルをアレイ状に敷き詰めた給電パッドを提案している。これにより、受電側コイルと送電側コイルとの位置ズレによるインピーダンス低下の影響によらずにワイヤレス充電が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ダイヘン,“電気推進船向け大容量ワイヤレス充放電実証実験の実施について”,[online],令和4年2月4日,株式会社ダイヘン ニュースリリース,[令和4年6月10日検索],インターネット<URL: https://www.daihen.co.jp/newinfo_2022/news_220204.html>
【非特許文献2】村山裕紀等,“結合変動に基づくCLPS設計に関する基礎的検討”,平成25年2月16日,平成24年度電気関係学会東北支部連合大会 講演論文集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水上モビリティのワイヤレス充電にて、送電側のコイルを複数、敷き詰める構成を採用することも技術的には可能である。しかしながら、モバイル機器のような小型デバイスに対する給電と異なり、水上モビリティの蓄電池に対する充電の規模では、面積、重量及びコストがいずれも著しく増大する。そのため実用化の視点では複数のコイルを並べる構成は採用が困難である。
【0006】
また、水上モビリティのワイヤレス充電では、波により位置ズレが連続して発生する。そのような状況でも、インピーダンスが安定していることが必要である。
【0007】
本発明は、位置ズレに強く、インピーダンスが安定するコイル、電力授受装置及び電力授受方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るコイルは、コイル内周の径に対して所定比率のコイル巻幅をもつ複数のコイルを、同心軸上に複数配置している。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態に係るコイル、電力授受装置又は電力授受方法によれば、インピーダンスが安定するので、波により位置ズレが連続して発生する水上モビリティのバッテリとの電力授受を安定して実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1コイル及びケーシングの略示斜視図である。
【
図4】本開示の第1装置の第1コイルの結合係数分布を示すグラフである。
【
図5】第1コイルの変形例を示す略示斜視図である。
【
図6】第1コイルの他の変形例を示す略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のコイルを含むワイヤレス給電システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、ワイヤレス給電システム100の概要図である。ワイヤレス給電システム100は、地上に設置された第1装置1と、水上モビリティ3に設けられた第2装置2とを含む。
【0013】
第1装置1は、陸上に固定されたケーシング12と、ケーシング12によって位置決めされた第1コイル11と、第1コイル11へ電流を提供する電源13とを有する。第1装置1は、水上モビリティが着岸する場所に設けられている。第1コイル11のケーシング12は、扁平な略直方体の形状を有し、広面に垂直な方向を軸とするように第1コイル11を収容している。ケーシング12は、広面を水上モビリティ3側へ向けるようにして固定され、内部の第1コイル11の軸は、水平方向に向く。
【0014】
第2装置2は、第2コイル21と、第2コイル21を位置決めするケーシング22と、第2コイル21で受電した電力を伝送する伝送部23とを含む。第2装置2のケーシング22は、扁平な略直方体の形状を有し、広面に垂直な方向を軸とするように第2コイル21を収容している。ケーシング22は、広面を船外へ向けるようにして水上モビリティ3の縁に固定され、内部の第2コイル21の軸は、水上モビリティ3の側方へ水平方向に向いている。
【0015】
水上モビリティ3は、着岸すると、第2コイル21が第1装置1の第1コイル11と対向する位置となるように係留される。ワイヤレス給電システム100は、自動的に、あるいは作業員の操作によって、第1装置1から第2装置2へ電力を供給する。第2コイル21にて受電された電力は、伝送部23を介して水上モビリティ3の駆動用のバッテリ31へ供給され、ワイヤレス給電が実現される。
【0016】
水上モビリティ3は係留された状態であっても勿論、流れや波によって地上に対して揺れ続ける。したがって、
図1に示すように、第1装置1のケーシング12と、第2装置2のケーシング22とを対向させたとしても、第1コイル11と第2コイル21との間の相対位置は上下左右前後にずれる。送電側のコイルを太くしたり、幅を広くしたり、アレイ状にならべたりする構成を採用すると、送電側の装置の規模を大きくしなければならず、コスト増となる。これに対し、本開示のワイヤレス給電システム100の第1コイル11は、位置ズレが連続して発生したとしてもインピーダンスを安定させることが可能である。したがって、面積、重量及びコストを増大させることなく、位置ズレによるインピーダンス低下を抑制できる。以下、第1装置1の第1コイル11について詳細を説明する。
【0017】
図2は、第1コイル11及びケーシング12の略示斜視図である。ケーシング12は、略扁平な直方体に組まれたフレーム121と、フレーム121に固定されたシールド123と、全体を覆う筐体122とを含む。ケーシング12は、
図2に示すように、広面を略垂直方向と平行となるように陸上に立設される。
【0018】
シールド123は、磁性体からなる板であり、フレーム121の短軸方向のほぼ中間に、短軸方向と垂直に設けられている。シールド123には、第1コイル11が固定されている。シールド123は、第1コイル11で発生する電磁界を第1コイル11へ戻す機能を発揮する。
【0019】
第1コイル11は、同心軸上に配置された複数のコイル111,112により構成されている。
図2の例に示す第1コイル11は、2つの内側コイル111と外側コイル112とを同心軸上に配置して構成されている。内側コイル111及び外側コイル112は同一方向の電流が生じるように巻回されている。内側コイル111及び外側コイル112は、外側コイル112の内周と、内側コイル111の外周とで接続されている。
【0020】
なお、水上モビリティ3側の第2コイル21の大きさは、第1コイル11の外周以下であることが好ましい。
【0021】
図3は、送信側の第1コイル11の構成の説明図である。第1コイル11の内側コイル111及び外側コイル112はいずれも、コイル内周の径に対して所定比率のコイル巻幅をもつ。
図3の例においては、コイル内周の半径と、コイル巻幅との比率が3:1である。
【0022】
外側コイル112の内周と、内側コイル111の外周との間の距離Dは、内側コイル111のコイル巻き幅wと略等しくしてある。
【0023】
第1コイル11は、
図2及び第3に示したように、内側コイル111及び外側コイル112が、相互に相似形である構成としたことにより、位置ズレに対してインピーダンスが安定する。インピーダンスの安定性について、第1コイル11と第2コイル21との間の結合係数が、対向面上の位置ズレに対して極値を持たずに、位置ズレの量が多いほど小さい値となることを実験によって確認した。
【0024】
図4は、本開示の第1装置の第1コイル11の結合係数分布を示すグラフである。グラフの横軸方向は、第1コイル11の中心と、受電側の第2コイル21の中心との間の、対向面に対するずれの大きさを示し、縦方向は、第1コイル11と第2コイル21との間の結合係数kの大きさを示す。
【0025】
図4では、線種により、第1コイル11及び第2コイル21間の対向距離を区別している。一点鎖線は、対向距離が最も短く、破線は、対向距離が最も長い。実線は、対向距離がその中間の距離であるときの結合係数kを示す。
図4に示すように、いずれの対向距離であっても、位置ズレが0(ゼロ)よりも大きい位置に結合係数がピークになることがないことが確認された。また、位置ズレがある値であるときに極端に結合係数が小さくなるような極値、あるいは大きくなるような極値を持つ挙動を取らないことを確認した。このように、位置ズレに対して裕度がありながら、コイルをアレイ状とする必要もない。
【0026】
コイル内周の半径とコイル巻幅との比率は2:1、4:1等であってもよい。しかしながら、
図4に示すような、結合係数の極値を持たない分布となる比率としては3:1が好ましい。
【0027】
また、第1コイル11は、
図2及び
図3に示すように2つのコイルには限られない。
図5は、第1コイル11の変形例を示す略示斜視図である。
図5に示すように、第1コイル11は、内側コイル111よりも更に内側のコイルが加えた3つのコイルを同心軸上に配置して構成されてもよい。この場合であっても、最内周のコイルは、コイル内周の径に対して1/3の比率のコイル巻幅を持つことは変わらない。
【0028】
更に第1コイル11は、
図2及び
図3に示すように円形に巻回されたコイルに限られない。軸中心を持つ図形状に巻回されているものであってもよく、例えば多角形でもよい。
図6は、第1コイル11の他の変形例を示す略示斜視図である。第1コイル11は、
図6に示すように、多角形の1つの例として六角形に巻回されて配置された内側コイル111と、外側コイル112とで構成されてもよい。なお、本願課題である波による位置ズレ、すなわちコイル面の方向に対しての左右上下に自在な位置ズレに対しても、インピーダンスが安定するコイル形状は、軸中心から等方的な形状であることが望ましい。したがって、少なくとも上下左右対称な正多角形であることが好ましく、
図2及び
図3に示した円形状が最も好ましい。
【0029】
上述の実施の形態では、水上モビリティ3のバッテリ31は給電を受ける構成としたが、これに限らず、バッテリ31から陸上の装置へ向けて放電可能であってもよい。このため、第1コイル11は、受電コイルとして使用されることが可能でもよい。この場合、第1装置1は、送電のみならず受電についても制御可能な回路を備え、第1コイル11によって電力を送出するか、バッテリ31から供給される電力を第1コイル11にて受信するかを切り替え可能である。この場合、水上モビリティ3側の第2コイル21のサイズは、陸上側の第1コイル11の外周と同一の外周を持つものである。
【0030】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 第1装置
11 第1コイル
111 内側コイル
112 外側コイル