(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065597
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】レール芯出し装置およびレール芯出し方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B66B7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174546
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】春山 尚輝
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BD05
3F305DA08
(57)【要約】
【課題】作業者によるガイドレールの芯出し作業の作業性の向上を図ることが可能なレール芯出し装置を提供する。
【解決手段】エレベーターの昇降路の内周壁のうちの対向する2つの壁部に沿って配置された一対のガイドレールを位置調整するためのレール芯出し装置であって、前記壁部に対して伸縮方向が斜めになるように、前記壁部の一方と前記一対のガイドレール間に設置された作業カゴとの間に両端部が固定自在なアクチュエータを備えるレール芯出し装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの昇降路の内周壁のうちの対向する2つの壁部に沿って配置された一対のガイドレールを位置調整するためのレール芯出し装置であって、
前記壁部に対して伸縮方向が斜めになるように、前記壁部の一方と前記一対のガイドレール間に設置された作業カゴとの間に両端部が固定自在なアクチュエータを備える
レール芯出し装置。
【請求項2】
前記壁部のそれぞれに対応して前記作業カゴに対して固定自在な2つの前記アクチュエータを備える
請求項1に記載のレール芯出し装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの両端部は、回転継手を介して前記作業カゴおよび前記壁部に固定される
請求項1に記載のレール芯出し装置。
【請求項4】
前記作業かごには、前記アクチュエータとの固定位置を変更可能なスライド部材が設けられ、
前記アクチュエータは、前記スライド部材を介して前記作業カゴに固定自在である
請求項1に記載のレール芯出し装置。
【請求項5】
前記スライド部材は、前記壁部と略平行な水平方向に前記アクチュエータとの固定位置を変更可能である
請求項4に記載のレール芯出し装置。
【請求項6】
前記壁部に対して伸縮方向が略垂直となるように、前記作業カゴに固定自在な別のアクチュエータを備える
請求項1に記載のレール芯出し装置。
【請求項7】
前記作業かごには、前記別のアクチュエータとの固定位置を前記壁部に向かって略垂直方向に変更可能なスライド部材が設けられ、
前記別のアクチュエータは、前記スライド部材を介して前記作業カゴに固定自在である
請求項6に記載のレール芯出し装置。
【請求項8】
前記一対のガイドレール間にかけ渡して固定される所定長さのレール芯出し雇と、
前記作業カゴに前記ガイドレールを固定するためのレール保持金具とを備えた
請求項1に記載のレール芯出し装置。
【請求項9】
前記アクチュエータは、前記ガイドレールの固定用に前記壁部に固定された固定部材を介して前記壁部に対して固定自在である
請求項1に記載のレール芯出し装置。
【請求項10】
エレベーターの昇降路の内周壁のうちの対向する2つの壁部に沿って配置された一対のガイドレールを位置調整するレール芯出し方法であって、
前記壁部に対して伸縮方向が斜めになるように、アクチュエータの両端部を前記壁部の一方と前記一対のガイドレール間に設置された作業カゴとの間に固定し、
前記アクチュエータの伸縮によって前記作業カゴに連結された前記ガイドレールの位置を調整する
レール芯出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール芯出し装置およびレール芯出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降路内へのエレベーターの据え付けに際しては、レール芯出し装置を用いたガイドレールの芯出し作業が実施される。この作業に用いられるレール芯出し装置に関する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、「レール位置出しユニットは、レールに向かう方向に伸縮可能な第1伸縮部と、昇降路の内壁面に向かう方向に伸縮可能な第2伸縮部を備える。レール位置出しユニットは、第2伸縮部の伸長で内壁面に支持され、レール固定ユニットから分離して、レールを把持して第1伸縮部と第2伸縮部の伸縮によりレールの位置を決める」と記載されている。また特許文献1の
図2には、作業床上に第1伸縮部が設置され、また第2伸縮部を支持するベースおよびレール芯出し雇が作業床を横切るように設置された状態が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような特許文献1に示されているレール芯出し装置は、第1伸縮部、第2伸縮部を支持するベース、およびレール芯出し雇等の多数の部材が作業床に重ねて設置される構成である。これらの作業床上に設置される部材は、作業者が作業かご内を移動したりガイドレールの固定作業を実施する際の障害物となり、作業者によるレール芯出し作業を困難とする要因となる。
【0005】
そこで本発明は、作業者によるガイドレールの芯出し作業の作業性の向上を図ることが可能なレール芯出し装置およびレール芯出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、エレベーターの昇降路の内周壁のうちの対向する2つの壁部に沿って配置された一対のガイドレールを位置調整するためのレール芯出し装置であって、前記壁部に対して伸縮方向が斜めになるように、前記壁部の一方と前記一対のガイドレール間に設置された作業カゴとの間に両端部が固定自在なアクチュエータを備えるレール芯出し装置である。である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、作業者によるガイドレールの芯出し作業の作業性の向上を図ることが可能なレール芯出し装置およびレール芯出し方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るレール芯出し装置の全体構成を示す上面図である。
【
図2】実施形態に係るレール芯出し装置のブロック図である。
【
図3】作業カゴとガイドレールとの連結構造を示す要部拡大斜視図である。
【
図4】実施形態に係る前後アクチュエータおよび横壁アクチュエータの固定構造を示す要部拡大斜視図である。
【
図5】実施形態に係る前後アクチュエータの基端側の固定構造を示す拡大図である。
【
図6】実施形態に係る前後アクチュエータの先端側の固定構造を示す拡大図である。
【
図7】実施形態に係る前後アクチュエータの別の使用例を示す拡大図である。
【
図8】実施形態に係る横壁アクチュエータの固定構造を示す拡大図である。
【
図9】実施形態に係るレール芯出し装置を用いた芯出し作業の他の例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のレール芯出し装置およびレール芯出し方法を適用した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
≪レール芯出し装置≫
図1は、実施形態に係るレール芯出し装置100の全体構成を示す上面図である。また、
図2は、実施形態に係るレール芯出し装置100のブロック図である。これらの図を用いて説明するレール芯出し装置100は、エレベーターの昇降路1内に垂下されたピアノ線2を基準にしてガイドレール3を位置決めするための装置である。このようなレール芯出し装置100は、ガイドレール3、および昇降路1内の作業カゴ4に対して取り付けられる。
【0011】
図1において、X方向は、エレベーターの乗り場側から見た場合の左右方向(幅方向)であり、Y方向は、エレベーターの乗り場側から見た場合の前後方向(奥行き方向)である。図において、エレベーターの乗り場側を下側に記している。次に、レール芯出し装置100の構成を説明するのに先立ち、
図1に基づいてレール芯出し装置100の取り付け環境を説明する。
【0012】
<レール芯出し装置の取り付け環境>
[昇降路1]
昇降路1は、エレベーターを据え付けるために建屋に設けられた空間である。昇降路1は、4方向を内周壁10で囲まれた空間になっている。内周壁10は、左右に横壁10sと、乗り場側の前壁10fと、前壁と対向する後壁10bとによって構成されている。建屋が鉄筋コンクリート造の場合は、エレベーターの乗り場側の出入口10aを除き、全面がコンクリートの壁で覆われる。また、建屋が鉄骨造の場合は、鉄骨で枠が組まれ、枠のない箇所は壁がない空間となる。昇降路1の2つの横壁10sにはそれぞれ固定部材1bが設けられ、ガイドレール3の固定に使用される。
【0013】
固定部材1bは、鉄製の金具である。建屋が鉄筋コンクリートの場合は、コンクリートの壁面に穴をあけ、ここへL字型の金具をボルト締結したものを固定部材1bとする。建屋が鉄骨造の場合は、鉄骨の上面に平板状の金具を当接させ、ボルトで締結したり、溶接したものを固定部材1bとする。固定部材1bは、横壁10sの壁面から昇降路1内へ突出して設置される。このような固定部材1bは、壁ブラケットまたはファスナーと称するものが用いられる。またこのような固定部材1bは、壁面や鉄骨の上面に固定した他の部材1aに対して、ボルト締結または溶接したものであってもよい。
【0014】
[ピアノ線2]
ピアノ線2は、建築基準に用いられる鋼線であって、建屋の最上部から錘を付けて吊り下げ、垂直に張られた状態で固定されている。ピアノ線2は、昇降路1内の左右に一定の距離で設置され、それぞれガイドレール3の位置を調整する芯出しの際の基準線として利用される。
【0015】
[ガイドレール3]
ガイドレール3は、断面がT字形の鉄鋼製のレール(T型鋼)である。ガイドレール3は、幅広のフランジ部と、このフランジ部の幅方向の中間部から突出するブレード部とを有する。一対のガイドレール3は、フランジ部を横壁10sに対向させ、かつ、ブレード部を昇降路1の内側に突出させた状態で、昇降路1の対向する2つの壁部に沿って配置される。ここで、2つの壁部は、典型的には横壁10sであり、一対のガイドレール3は、横壁10sに沿ってそれぞれ設置される。これらのガイドレール3は、一定長で供給されるガイドレール部材を最下階から最上階まで継ぎ足して昇降路1の内部に立設される。昇降路1の内部に立設された状態において、ガイドレール3は、最下階では所定位置に位置決めして固定され、最下階を除く部位では固定されていないため、前後左右に傾斜している。
【0016】
また各ガイドレール3は、昇降路1の中央側に突出させたブレード部の先端側に、軌道面と刃先面が形成されている。ガイドレール3の軌道面と刃先面は、ガイドレール3の芯出しのために寸法精度が保証された基準平面であり、作業者はこれらの面とピアノ線2との距離を測定して芯出し作業を行なう。
【0017】
[作業カゴ4]
作業カゴ4は、ガイドレール3の設置作業をするために、作業者が乗り込む移動式の足場である。作業カゴ4は、エレベーターの本設かごの一部を利用したものであり、作業者が乗り込む作業床4aを備えている。この作業カゴ4は、2本のガイドレール3に挟まれた位置において、綱の吊りロープ4bによって昇降路1内に吊り下げて支持されている。吊りロープ4bは、図示しないワインダーで巻き取られることにより、作業カゴ4の昇降を自在としている。作業者は、この作業カゴ4に乗り込み、ガイドレール3に沿って作業カゴ4を昇降路1内の所定の高さまで昇降させ、レール芯出し作業を行う。
【0018】
以上のような作業カゴ4は、2本のガイドレール3に挟まれた位置において、以下に説明するようにガイドレール3に対して摺動自在に連結されている。
図3は、作業カゴ4とガイドレール3との連結部分を示す要部拡大斜視図である。
図1および
図3を参照すると、作業カゴ4の作業床4a(
図1参照)には、一対のガイドレール3のそれぞれと対向する位置に、溝型鋼からなるスリング41が立ち上げて固定されている。スリング41は、ガイドレール3側に開口が向かうように配置され、このスリング41に固定された状態で、ガイドレール3とのガイドシュー(図示省略)が設けられている。ガイドシューは、作業カゴ4から各横壁10s方向に突出する状態でスリング41を介して作業カゴ4に固定され、前壁10fおよび後壁10b方向から、ガイドレール3のブレード部32を隙間を持って挟み込む。
【0019】
ここで、吊りロープ4b(
図1参照)は、ガイドレール3と干渉しないように、作業カゴ4の後方寄り(後壁10b寄り)の左右2点で作業カゴ4と結合している。この結合点と作業カゴ4の重心Gとの位置関係により、作業カゴ4は、前壁10f側や後壁10b側に傾き、上述したガイドシューを介してガイドレール3に寄りかかった状態で平衡を保っている。
【0020】
また作業カゴ4には、スリング41を介して掛け金具42が固定されている。掛け金具42は、複数の穴が設けられた板状の部材であって、複数の穴が配置された板状面を作業カゴ4の作業床4aと平行に保ってスリング41の上端に固定さている。
【0021】
さらに、作業カゴ4における作業床4aの周縁には、スリング41の内側において手摺43が立ち上げられている。
【0022】
<レール芯出し装置100の構成>
続いて、上述した環境に取り付けられるレール芯出し装置100の構成を説明する。
図1および
図2に示すように、レール芯出し装置100は、レール芯出し雇5と、2つのピアノ線位置検出器6と、2つのレール保持金具7と、2つの前後アクチュエータ8と、2つの横壁アクチュエータ9と、制御回路11と、操作盤12とを備える。これらは、次のような構成のものである。
【0023】
[レール芯出し雇5]
レール芯出し雇5は、芯出し作業のために用意された左右のガイドレール3間を所定の距離に保つ治具(ゲージ)である。レール芯出し雇5は、所定長さを有し、一対のガイドレール3間にかけ渡して固定される。このようなール芯出し雇5の両端には、ガイドレール3を抱えて把持する把持部が設けられている。把持部には、ガイドレール3の刃先面及び軌道面に当接するL字形の金具が設けられている。レール芯出し雇5は、この金具を介してガイドレール3に精度良く連結できるようになっている。左右のガイドレール3は、レール芯出し雇5に連結されることにより、一体化される。
【0024】
[ピアノ線位置検出器6]
ピアノ線位置検出器6は、ガイドレール3の軌道面および刃先面とピアノ線2間の距離を計測する手段である。ピアノ線位置検出器6は、ピアノ線2を検出する位置センサと、位置センサを保持する筐体と、筐体をガイドレール3に留め付けるレールクリップで構成されている。
【0025】
位置センサは、ピアノ線2のX方向の位置を検出するX方向用の位置センサと、ピアノ線2のY方向の位置を検出するY方向用の位置センサとからなる。位置センサは、例えばフォトインタラプタを用いて構成される。フォトインタラプタは、コの字型のセンサハウジングに投光器と受光器が対向する状態に配置された光学センサである。フォトインタラプタは、投光器と受光器との間の遮蔽物の有無、並びに遮蔽物の位置を検出することができる。このフォトインタラプタを位置センサとして用いることで、ピアノ線2の位置が投光器と受光器の間の検出範囲内にあるか否かを判定することができる。また、複数のフォトインタラプタを用いることで、複数の検出範囲を連続して配置でき、ピアノ線2の位置をより広範囲に細かく検出できるようになる。位置センサは、フォトインタラプタに限らず、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサやPSD(Position Sensitive Detector)センサなどによって構成してもよい。
【0026】
筐体は、ガイドレール3から位置センサまでの距離を所定寸法に保つゲージとなっている。また、位置センサが測定したガイドレール3とピアノ線2の距離情報を外部に送信する通信機や、電池などを格納する筐体となっている。
【0027】
レールクリップは、マグネットやクランプ等の手段でガイドレール3の刃先面及び軌道面に当接して留め付ける構造となっており、着脱が可能となっている。ピアノ線位置検出器6は、左右のガイドレール3にそれぞれ取り付けられる。
【0028】
[レール保持金具7]
レール保持金具7は、作業カゴ4とガイドレール3とを固定するための部材である。
図3に示すように、レール保持金具7は、掛け金具42を介して作業カゴ4に固定された状態で用いられる。このレール保持金具7は、ガイドレール3のフランジ部31から突出して設けられたブレード部32を保持することで、作業カゴ4とガイドレール3とを連結する。このようなレール保持金具7は、先端に突起を形成した2枚の金具71を有し、2枚の金具71の基端側が作業かご4の掛け金具42に固定されている。2枚の金具71は、ネジによって連結され、ガイドレール3のブレード部32の根元の狭くなった箇所を、2枚の金具71の先端の突起で挟み込んだ状態で、掛け金具42に固定されている。このとき、掛け金具42の固定点でレール保持金具7をかご側に引き寄せて固定することでガイドレール3と作業かご4とを固定する。これにより、作業カゴ4の移動に対するガイドレール3の追従性を確保する。
【0029】
[前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9]
図1に戻り、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9は、長軸方向に伸縮するロッド状のリニアアクチュエータである。リニアアクチュエータとして、電気、油圧、空圧を駆動力として伸縮するアクチュエータが使用可能である。特に、電気式のリニアアクチュエータは、ボールねじ機構により通電を切った後に外力が作用しても長さを自己保持できる特徴があり、芯出し作業後の固定作業において省電力に有利である。
【0030】
これらの前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9のうち、前後アクチュエータ8は、昇降路1の横壁10sに対して伸縮方向が斜めになるように、横壁10aと作業カゴと4の間に掛け渡して固定される。また横壁アクチュエータ9は、横壁10sに対して伸縮方向が略垂直となるように、作業カゴ4に固定される。次に、以上のような前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9の固定構造を説明する。
【0031】
-前後アクチュエータ8の固定構造-
図4は、実施形態に係る前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9の固定構造を示す要部拡大斜視図である。また
図5は、実施形態に係る前後アクチュエータ8の基端側8aの固定構造を示す拡大図であり、
図6は、実施形態に係る前後アクチュエータ8の先端側8bの固定構造を示す拡大図である。これらの
図4~
図6に示すように、前後アクチュエータ8は、延伸するロッドの先端側8bが昇降路1の横壁10sから延設された固定部材1bを介して横壁10sに対して固定自在であり、基端側8aがスライド部材81を介して作業カゴ4に固定自在なものである。この固定部材1bは、先に説明したように、ガイドレール3の固定に使用される壁ブラケットまたはファスナーと称するものを用いることができ、特別に設ける必要はない。
【0032】
スライド部材81は、作業カゴ4に対する前後アクチュエータ8の固定位置を変更可能とする部材であって、作業カゴ4に固定して用いられる。スライド部材81は、昇降路1の横壁10s(
図1参照)と略平行な水平方向に、前後アクチュエータ8の基端側8aの固定位置を変更可能である。
【0033】
このようなスライド部材81は、例えば長手方向に溝を形成した部材である。本実施例では、市販の安価なアルミフレームを使用した例を述べる。なお、スライド部材81は、アルミフレームに限らず、掛け金具42に長穴やいくつかの穴を並べて使用するなど他の部材で実現してもよい。アルミフレームは、全長にわたって勘合溝が形成された部材であり、規格に合うTナットを使用することでTナットの位置をスライドし、ねじで固定することができるようになっている。アルミフレームをスライド部材81として利用することで、固定部82の位置をスライドし、固定することができる。これにより、作業者が利用シーンに合わせて、前後アクチュエータ8の固定位置を容易に変更することができ、作業自由度の高い装置となっている。また、アルミフレームは底面側にも勘合溝を形成することができ、Tボルトを使ってねじ留めすることで、作業かご4の掛け金具42に容易に設置することができる。
【0034】
スライド部材81は、昇降路1の横壁10s(
図1参照)に沿って配置された手摺43に対して略平行に配置され、スリング41に固定された掛け金具42に一端側を固定して用いられる。これにより、嵌合溝または複数の穴が手摺に沿って前後方向(Y方向)に配置される。また、スライド部材81の他端側は、補強金具81aを介して手摺43に固定される。補強金具81aは、板状の金具であって、スライド部材81の固定が掛け金具42による片端支持となるため、スライド部材81の自由端側と手摺43の間を掛け渡す補強部材として設けている。このような補強金具81aを用いる場合、スライド部材81は、上面の嵌合溝の他に側面の嵌合溝を有するものであることが好ましい。
【0035】
このスライド部材81に対し、前後アクチュエータ8の基端側8aが、固定部82を介して固定される。
図5に示すように、固定部82は、尻金具82a、ボルト82b、Tナット82c、ナット82d、およびピン82eで構成された回転継手である。
【0036】
尻金具82aは、前後アクチュエータ8の基端側8aに取り付けられた金具であって、コの字状に形成した金具である。尻金具82aは、両側面にピン82eを通す穴が形成されており、コの字を横断して配置されたピン82eが固定されている。ピン82eは、前後アクチュエータ8の軸と垂直は方向に、前後アクチュエータ8の基端側8aを貫通して設けられ、両端部が尻金具82aに固定されている。これにより、前後アクチュエータ8は、ピン82eを軸にして回動し、仰角方向に姿勢を変えることができる。そして、前後アクチュエータ8の先端側8bが接続される固定部材1bと、基端側8aが接続されるスライドフレーム81とに高低差がある場合においての前後アクチュエータ8の取り付けを可能としている。
【0037】
また尻金具82aは、コの字状の底面にボルト82bを通す穴が形成されている。尻金具82aは、ボルト82bによりスライドフレーム81に接続される。ボルト82bのねじ部先端には、スライドフレーム81の溝に勘合させたTナット82cを係合させる。ボルト82bを締め付け方向に回すと、スライドフレーム81の勘合溝内でボルト82bの先端が下降し、またTナット82cの上昇が起こる。これにより、スライドフレーム81の勘合溝内で広がってスライドフレーム81にボルト82bを固定することができるようになっている。ここで、ボルト82bは、ねじ頭にノブを形成し、作業者が治具なしでねじの締め緩めを行なえるようにすることで、作業性を高めることができる。ボルト82bには、ねじ部の中間に別途、ナット82dが固定されている。このナット82dは、ボルト82bを締め切ったときに、尻金具82aの上面に接触する程度の位置にあらかじめ固定しておく。このようにすることで、尻金具82aは固定後にボルト82bの軸周りに自由に旋回できるとともに、浮き上がりが抑制される。
【0038】
以上のような固定部82によるスライド部材81への固定により、前後アクチュエータ8は、基端側8aを軸にして水平方向に向きを変えることができ、これにより横壁に固定された固定部材1bを先端側8bで把持することが可能となっている。また
図7に示すように、前後アクチュエータ8は、昇降路1の前壁10f(
図1参照)に先端側8bを向け、前壁10fに先端側8bを押し当てたガイドレール3の芯出しを行なうことも可能である。
【0039】
一方、
図6に示すように、前後アクチュエータ8の先端側8bは、クランプ83と回転継手84を介して昇降路1の横壁10s(
図1参照)から延設された固定部材1bに対して固定される。クランプ83は固定部材1bを掴む部品であり、溝を形成したコの字金具83aと、コの字金具83aの溝を横断するボルト83bで構成される。クランプ83は、ボルト83bを締付けることにより、ボルト83bの先端とコの字金具83aの溝内側で固定部材1bを挟み、把持固定するようになっている。クランプ83は、ボルト83bのねじ頭にノブを形成し、作業者が治具なしでねじの締め緩めを行なえるようにすることで、作業性を高めることができる。
【0040】
回転継手84は、2つの部材が軸で連結され、屈曲できる継手であって、全方向に向きを変えられる自在継手(ユニバーサルジョイント)を使用することができる。このような回転継手84は、軸で連結された2つの部材が、クランプ83と前後アクチュエータ8のロッド先端との間に固定されている。この回転継手84により、前後アクチュエータ8の長軸方向に対して、昇降路1の横壁10s(
図1参照)に設けられている固定部材1bの被把持部の端面が直交せずに傾斜している場合でも、端面に合わせてクランプ83の向きを変えることができ、クランプ83によって確実に固定部材1bを把持できるようになっている。また、回転継手84の屈曲により、昇降路1の横壁に設けられている固定部材1bと、前後アクチュエータ8の基端側8a(
図4および
図5参照)が固定されるスライド部材81との間に高低差があっても、前後アクチュエータ8の取り付けを可能としている。
【0041】
-横壁アクチュエータ9の固定構造-
図8は、実施形態に係る横壁アクチュエータの固定構造を示す拡大図である。先の
図4および
図8に示すように、横壁アクチュエータ9は、延伸するロッドの先端側9bが昇降路1の横壁10s(
図1参照)に対向して配置され、基端側9aがスライド部材91を介して作業カゴ4への固定が自在なものである。
【0042】
スライド部材91は、作業カゴ4に対する横壁アクチュエータ9の固定位置を、昇降路1の横壁10s(
図1参照)に向かって略垂直方向に変更可能とする部材である。このようなスライド部材91は、前後アクチュエータ8を固定するスライド部材81と同様の構造のものであってよい。この横壁アクチュエータ9用のスライド部材91は、昇降路1の横壁10s(
図1参照)向かって突出するように配置され、スリング41の上端に固定された掛け金具42に対して固定して用いられる。なお、
図4および
図8においては、2列のスライド部材91を結束して用いた状態を示したが、スライド部材91は1列でよい。
【0043】
このようなスライド部材91に対し、横壁アクチュエータ9の基端側9aは、固定部92を介して固定される。
図8に示すように、固定部92は、尻金具92a、ボルト92b、Tナット92c、ナット92d、およびピン92eで構成される。
【0044】
尻金具92aは、横壁アクチュエータ9の基端側9aに取り付けられる金具である。尻金具92aは、底面にボルト92bを通す穴が形成されている。尻金具92aは、ボルト92bによりスライド部材91に接続される。ボルト92bのねじ部先端には、スライド部材91の溝に勘合させたTナット92cを係合させる。ボルト92bを締め付け方向に回すと、スライド部材91の勘合溝内でボルト92b先端が下降し、またTナット92cの上昇が起こる。これにより、スライド部材91の勘合溝内で広がってスライド部材91にボルト92bを固定することができるようになっている。ここで、ボルト92bは、ねじ頭にノブを形成し、作業者が治具なしでねじの締め緩めを行なえるようにすることで、作業性を高めることができる。ボルト92bには、ねじ部の中間に別途、ナット92dが固定されている。このナット92dは、ボルト92bを締め切ったときに、尻金具92aの上面に接触する程度の位置にあらかじめ固定しておく。このようにすることで、尻金具92aは固定後に浮き上がりが抑制される。
【0045】
横壁アクチュエータ9は、以上のような固定部92によるスライド部材91への固定により、スライド部材91上で左右方向(X方向)に固定位置を変えることができる。これにより、レール芯出し作業時には、横壁アクチュエータ9自体を、昇降路1の横壁に近接するように作業かご4の外へせり出すことができ、レール芯出し作業が終了して作業かご4を昇降する時には、横壁アクチュエータ9を作業かご4の内側へ収納することができる。横壁アクチュエータ9は、昇降路1の横壁に対して垂直に力を作用させて左右方向(X方向)の変位を得るものであるため、前後アクチュエータ8のように回転固定する必要がない。このため、横壁アクチュエータ9用の固定部92は、スライド部材91の側面に当接する鉤部を設けて左右に首を振らない形状としてもよい。
【0046】
[制御回路11]
図1および
図2に戻り、制御回路11は、例えば、信号処理部、無線通信部、モータドライバ、および電源などを備える。信号処理部は、多彩な入出力信号の取り扱いが可能な組み込みマイコン等を用いる。無線通信部は、ピアノ線位置検出器6から送られてくるピアノ線2の位置信号を受信するための無線機である。モータドライバは、前後アクチュエータ8の駆動源となるモータおよび横壁アクチュエータ9の駆動源となるモータを制御するためのドライバICである。制御回路11は、ピアノ線位置検出器6が送信する検出信号を取り込むとともに、取り込んだ検出信号と、操作盤12からの指令に基づいて、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9に、それぞれ駆動信号を出力する。
【0047】
これにより、ピアノ線位置検出器6からの位置信号に基づいて、制御回路11によって前後アクチュエータ8と横壁アクチュエータ9の駆動を制御することで、作業者の手作業によって行われていた作業を自動化することができる。具体的には、ピアノ線2とガイドレール3との距離をスケール等により測定する作業や、その測定値を確認しながらガイドレール3の位置をハンマ等で叩いて調整する作業を自動化することができる。これにより、短時間で高精度なレール芯出しを実現することができ、作業者の作業負担を減らすことができる。
【0048】
[操作盤12]
操作盤12は、前後アクチュエータ8及び横壁アクチュエータ9の手動操作やレール芯出しの自動制御の実行を操作するスイッチ類を有する。また、操作盤12は、レール芯出し装置の状態を表示するインジケータを有する。操作盤12は、制御回路11に直接接続され、作業者の操作に基づく指令を制御回路11に与える。
【0049】
≪ガイドレールのレール芯出し工程≫
次、上述したレール芯出し装置100を用いたガイドレールのレール芯出し工程を説明する。ガイドレールのレール芯出し工程は、おもに作業かご4にレール芯出し装置100を取り付ける取り付け作業と、昇降路1内の各階床でレール芯出し装置100を操作してガイドレールの芯出しを行なうレール芯出し作業と、昇降路1にガイドレール3を固定するレール固定作業がある。このうち、芯出し作業とレール固定作業は、作業カゴ4の移動作業を挟んで繰り返し実施される。以下、ガイドレールのレール芯出し工程を、その手順に従って説明する。
【0050】
<芯出し装置の取り付け作業>
[前後アクチュエータ8の設置]
先ず、
図4に示すように、作業者は、前後アクチュエータ8の設置を行なう。前後アクチュエータ8は、スライド部材81、固定部82、クランプ83、および回転継手84が組み立てられた状態で配達される。これにより、前後アクチュエータ8の設置は、スライド部材81を作業かご4の掛け金具42に固定する作業と、スライド部材81の補強のための補強金具81aを作業かご4の手摺43との間に掛け渡す作業を行なうだけでよい。
【0051】
ここでの図示は省略したが、スライド部材81は、下面の溝にあらかじめTボルトが挿し込んであり、これを掛け金具42に開けられた穴に嵌め、ナットで締結することで掛け金具42に固定する。またスライド部材81は、側面の溝にあらかじめTボルトが挿し込んであり、これを補強金具81aの穴に嵌めてナットで締結することで、スライド部材81に対して補強金具81aを固定する。補強金具81aの手摺43側への固定は、ハット型の金具やボルトを利用して行う。この際、前後アクチュエータ8は、作業カゴ4の昇降の妨げとならないように、スライド部材81と重なる状態か、または先端側8bを作業カゴ4側に引き込んだ状態としておく。この一連の設置作業を作業かご4の左右で実施することで、前後アクチュエータ8の設置が完了する。
【0052】
[横壁アクチュエータ9の設置]
次に、作業者は、横壁アクチュエータ9の設置を行なう。横壁アクチュエータ9は、スライド部材91および固定部92が組み立てられた状態で配達される。これにより、横壁アクチュエータ9の設置は、スライド部材91を作業かご4の掛け金具42に固定する作業を行なうだけでよい。
【0053】
ここでの図示は省略したが、スライド部材91は、下面の溝にあらかじめTボルトが挿し込んであり、これを掛け金具42に開けられた穴に嵌めてナットで締結することで掛け金具42に固定される。この際、スライド部材91および横壁アクチュエータ9は、作業カゴ4の昇降の妨げとならないように、作業カゴ4側に突出させた状態としておく。この設置作業を作業かご4の左右で実施することで、横壁アクチュエータ9の設置が完了する。
【0054】
[レール保持金具7の設置]
次に、作業者は、レール保持金具7の設置を行う。レール保持金具7は、ボルトを用いて作業かご4の掛け金具42に固定される。この際、作業カゴ4の昇降の妨げとならないように、レール保持金具7を構成する2枚の金具71の先端側で、ガイドレール3のブレード部32を緩やかに挟み込んだ状態でレール保持金具7をかご側に引き寄せ、基端側を作業かご4の掛け金具42に固定する。これにより、ガイドレール3に対してレール保持金具7を摺動自在に設置する。
【0055】
[制御回路11と操作盤12の設置]
図1および
図4を参照し、作業者は、制御回路11と操作盤12を行う。制御回路11と操作盤12の設置は、作業かご4の後ろ側の手摺43に、制御回路11と操作盤12に連結されたフックを引っ掛けることで行なう。制御回路11と操作盤12とを設置した後、作業かご4の左右に設置した前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9のケーブルを、作業かご4内で配線・固定し、制御回路11に接続する。制御回路11は、作業かご4に引き込まれているAC電源に繋ぐことで電源が投入される。
【0056】
以上のように、前後アクチュエータ8、横壁アクチュエータ9、および制御回路11と操作盤12が分離した構造であることで、各々のサイズおよび重量を小さくでき、作業者が一人で設置できるようになっている。また、設置作業を簡単に実施でき、作業負担の軽減、時間の短縮に貢献できる。
【0057】
なお、レール芯出し装置100の撤収は、上記の設置作業の逆順で実施すればよく、これも作業者一人で短時間に完了させることができる。
【0058】
<レール芯出し作業>
レール芯出し作業は、上述した通りにレール芯出し装置100の各部材を取り付けた状態において、作業カゴ4をレール固定位置まで昇降させた状態で実施される。
図1を参照し、レール芯出し作業は、先ず、レール芯出し雇5の設置を行なう。作業者は、レール芯出し雇5の両端にある把持機構を使って左右のガイドレール3を把持し連結させることで、2つのガイドレール3を一体化させる。
【0059】
次に、前後アクチュエータ8と横壁アクチュエータ9の準備作業を行なう。作業かご4の昇降時において、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9は、作業かご4側に収納された状態になっている。そこで、
図1および
図4に示すように、作業者は、前後アクチュエータ8を作業かご4の外側に向かって展開し、先端側8bに取り付けられているクランプ83で昇降路1の横壁にある固定部材1bを掴み、前後アクチュエータ8の先端側8bを固定する。また、前後アクチュエータ8の基端側8aにあるボルト82b(
図5参照)を締め、固定部82をスライド部材81に留め付ける。
【0060】
次に作業者は、横壁アクチュエータ9をスライド部材91上で移動させて作業かご4の外側にせり出させ、基端側9aのボルト92b(
図8参照)を締め、固定部92をスライド部材91に留め付ける。この際、横壁アクチュエータ9の先端と昇降路1の横壁10sとの間に隙間を残し、前後方向(Y方向)のレール芯出しの邪魔とならないようにする。
【0061】
次に、作業者は、ピアノ線位置検出器6をガイドレール3に留め付け、制御回路11の電源を投入して、レール芯出しの準備作業を完了する。
【0062】
作業者は、操作盤12のボタン操作により、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9の伸縮を操作する。作業者は、前後アクチュエータ8と横壁アクチュエータ9を手動で操作してレール芯出し作業を実施することもできるし、ソフトウェアによって自動でレール芯出しを実施することもできるようになっている。
【0063】
自動によるレール芯出しは、ピアノ線位置検出器6が送信するピアノ線2の位置情報に基づいて、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9の操作を制御することによって実施される。まず、横壁10sに対して伸縮方向が斜めになるように、両端部が壁部10sと作用かご4とに固定された前後アクチュエータ8の伸縮により、前後方向(Y方向)のレール芯出しを実施する。次に全方向のレール芯出しが、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9の伸縮により実施される。レール芯出しが完了すると、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9は、自己保持によりその状態を維持する。
【0064】
なお、以上の芯出し作業において、前後アクチュエータ8は前壁10fを押すように延伸させることもできる。
図9は、実施形態に係るレール芯出し装置を用いた芯出し作業の他の例を示す上面図である。
図9に示すように、前後アクチュエータ8は、延伸するロッドの先端を前壁10fに当接させ、ピアノ線位置検出器6が送信するピアノ線2の位置情報に基づいて、前後アクチュエータ8の伸縮により前壁10fを押すことで、前後方向のレール芯出しを実施してもよい。
【0065】
<レール固定作業>
次に、レール固定作業を、仮固定、レール芯出し装置100の収納、ガイドレールの固定の順に以下のように実施する。
【0066】
[仮固定]
まず、作業者は、ガイドレール3のフランジ31aの背面にL字型のレールブラケットを取り付け、昇降路1の横壁に固定されている固定部材1bと重なるように設置する。そして、シャコ万による締付けで、レールブラケットと昇降路1の横壁に固定されている固定部材1bの仮固定を行なう。
【0067】
[レール芯出し装置100の収納]
仮固定した状態で、ガイドレール3は固定部材1bに強固に固定されるため、レール芯出し装置100によるガイドレール3の保持は不要となる。このため、作業者は、ガイドレール3の固定作業の邪魔とならないように、レール芯出し装置100の収納作業を行なう。この際、先ず、
図5および
図6を参照し、前後アクチュエータ8の先端側8bのクランプ83を緩めて固定部材1bから外し、前後アクチュエータ8の基端側8aのボルト82bを緩めて固定部82の固定を解除する。そして、前後アクチュエータ8の先端側8bを回転させて作業かご4内へ収納する。また、
図8を参照し、横壁アクチュエータ9の基端側9aのボルト92bを緩めて固定部92の固定を解除し、スライド部材91をスライドさせて横壁アクチュエータ9を作業かご4内へ収納する。さらに、ピアノ線位置検出器6をガイドレール3から外し、作業カゴ4内に収納する。このように、レール芯出し装置100の各部材を作業カゴ4内に収納したことにより、ガイドレール3の周囲に作業スペースが確保される。
【0068】
[ガイドレール3の固定]
レール芯出し装置の収納が完了した後、作業者は昇降路1の横壁に固定されている固定部材1bと、ガイドレール3に固定されているレールブラケットとの合わせ目の溶接を行ない、ガイドレール3を昇降路1の横壁に固定する。
【0069】
溶接後はレール芯出し雇5を外し、作業かご4を昇降できる状態とする。その後は、作業カゴ4を次のレール固定位置まで昇降させ、以降は上述したレール芯出し作業とレール固定作業とを繰り返し行う。
【0070】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、レール芯出し装置100を構成する各部材のうち、作業床4aに重ねて配置される部材がレール芯出し雇5のみである。このため、レール芯出し作業およびレール固定作業に際して、レール芯出し装置100が作業の妨げになることがなく、作業者によるガイドレールの芯出し作業の作業性の向上を図ることが可能となる。また、レール芯出し装置100を構成する各部材が小型・軽量であるため、レール芯出し装置100の設置作業の作業負荷を軽減することが可能である。
【0071】
しかも、前後アクチュエータ8は、ガイドレール3の芯出し方向である前後方向(Y方向)に対して斜めに伸縮するように、作業カゴ4と横壁10sとに対して固定される構成である。これにより、作業カゴ4の偏荷重による傾きがどのような状態であっても、作業カゴ4の左右に固定された前後アクチュエータ8の伸縮によって作業カゴ4を前後方向に移動させることができ、作業カゴに連結されたガイドレール3の芯出しを実施することができる。つまり、前後アクチュエータの先端が固定されておらず前壁10fを押し圧する構成であれば、作業カゴ4の重心Gが後壁方向に傾斜している場合のガイドレール3の前後方向の芯出しは不可能であるが、本実施形態のレール芯出し装置100によれば可能である。
【0072】
さらに、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9が、スライド部材81,91を介して作業カゴ4に固定される構成であるため、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9の延伸をスライド部材81,91で補うことができる。これにより、前後アクチュエータ8および横壁アクチュエータ9の小型化が可能であり、これによっても、レール芯出し装置100の設置作業の作業負荷を軽減することが可能である。
【0073】
≪変形例≫
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0074】
たとえば、上記実施形態においては、スライドフレーム81としてアルミフレームを採用しているが、必ずしもスライドフレームを設ける必要はなく、掛け金具42に長穴もしくは複数の穴を設けて前後アクチュエータ8の固定部を取り付ける構成としてもよい。また、同様にスライドフレーム91としてアルミフレームを採用しているが、必ずしもスライドフレームを設ける必要はなく、掛け金具42に長穴もしくは複数の穴を設けて横壁アクチュエータ9の固定部を取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…昇降路
2…ピアノ線
3…ガイドレール
4…作業カゴ
5…レール芯出し雇
6…ピアノ線位置検出器
7…レール保持金具
8…前後アクチュエータ
8a…基端側
8b…先端側
9…横壁アクチュエータ(別のアクチュエータ)
10…内周壁
10s…横壁(対向する2つの壁部)
11…制御回路
81,91…スライド部材
82…固定部(回転接手)
84…回転接手
100…レール芯出し装置