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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065609
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】送電装置及び非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20240508BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240508BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174562
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本村 知宏
(72)【発明者】
【氏名】永島 栄治
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】優れた通信性能を実現できる送電装置及び非接触電力伝送システムを提供する。
【解決手段】送電装置は、電力波を振幅変調した被変調波により、受電装置への給電及び受電装置との間の情報の送受信を可能に構成された、非接触電力伝送システムの送電装置であって、受電装置に対して電力を非接触で送電する送電回路と、電源電圧を高周波の交流電圧に変換して送電回路に出力する電源回路と、交流電圧に生じうるスパイク状のノイズを抑制するスナバ回路と、を備える。スナバ回路は、電源回路から送電回路への給電線路と入力電圧点との間に配置される第1スナバ回路と、給電線路とグランドとの間に配置される第2スナバ回路と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力波を振幅変調した被変調波により、受電装置への給電及び前記受電装置との間の情報の送受信を可能に構成された、非接触電力伝送システムの送電装置であって、
前記受電装置に対して電力を非接触で送電する送電回路と、
電源電圧を高周波の交流電圧に変換して前記送電回路に出力する電源回路と、
前記交流電圧に生じうるスパイク状のノイズを抑制するスナバ回路と、を備え、
前記スナバ回路は、
前記電源回路から前記送電回路への給電線路と入力電圧点との間に配置される第1スナバ回路と、
前記給電線路とグランドとの間に配置される第2スナバ回路と、を有する、
送電装置。
【請求項2】
前記第1スナバ回路及び前記第2スナバ回路は、抵抗及びコンデンサーを有するRC回路である、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記第1スナバ回路及び前記第2スナバ回路は、スイッチング素子及びコンデンサーを有するアクティブクランプ回路である、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項4】
請求項1に記載の送電装置と、
前記送電装置からの給電及び前記送電装置との情報の送受信を可能な受電装置と、
を備える非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電装置及び非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次側の受電装置に対して、一次側の送電装置から非接触で給電可能な非接触電力伝送システム(WPT:Wireless Power Transfer)が知られている。また、受電装置に接続された負荷(例えば、センサー類)に関する情報(以下、「負荷情報」と称する)を、電力波を搬送波(キャリア)として使用して送受信するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のシステムによれば、ワイヤレス給電とワイヤレス情報通信を共通の伝送経路で同時に行うことができ、回路構成の簡素化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-197965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した非接触電力伝送システムでは、例えば、送電側負荷情報S1及び受電側負荷情報S2を含む変調信号で、電力波を振幅変調することにより、送電装置50から受電装置60への給電、及び、両者間での負荷情報の送受信が行われる(図1参照)。この場合、送電装置50において、電源回路56は、高周波(例えば、8MHz)の電力波を発生させる発振回路(ロジックIC)を含む。そのため、EMIが発生しやすい上、EMI強度も高く、通信性能が低下する虞がある。
【0005】
本開示の目的は、優れた通信性能を実現できる送電装置及び非接触電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る送電装置は、
電力波を振幅変調した被変調波により、受電装置への給電及び前記受電装置との間の情報の送受信を可能に構成された、非接触電力伝送システムの送電装置であって、
前記受電装置に対して電力を非接触で送電する送電回路と、
電源電圧を高周波の交流電圧に変換して前記送電回路に出力する電源回路と、
前記交流電圧に生じうるスパイク状のノイズを抑制するスナバ回路と、を備え、
前記スナバ回路は、
前記電源回路から前記送電回路への給電線路と入力電圧点との間に配置される第1スナバ回路と、
前記給電線路とグランドとの間に配置される第2スナバ回路と、を有する。
【0007】
本開示に係る非接触電力伝送システムは、
上記の送電装置と、
前記送電装置からの給電及び前記送電装置との情報の送受信を可能な受電装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、優れた通信性能を実現できる送電装置及び非接触電力伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、従来の非接触電力伝送システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る非接触電力伝送システムの概略構成を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る被変調波の波形の一例を示す図である。
図4図4は、送電回路及び一次側変調回路の回路構成の一例を示す図である。
図5図5は、受電回路及び二次側変調回路の回路構成の一例を示す図である。
図6図6は、送電装置で得られる電力波形の一例を示す図である。
図7図7は、スナバ回路の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図2は、本開示の一実施の形態に係る非接触電力伝送システム1の概略構成を示す図である。
【0012】
図2に示すように、非接触電力伝送システム1は、一次側の送電装置10及び二次側の受電装置20を備える。非接触電力伝送システム1は、磁気共鳴・共振方式により、非接触で送電装置10から受電装置20への給電を行うとともに、両者間で情報の送受信を行うことができるように構成されている。
【0013】
非接触電力伝送システム1は、例えば、電動自転車のペダルの回転状態を検出するのに使用される。この場合、送電装置10は、バッテリーが搭載されている自転車本体に設置され、受電装置20は、自転車本体に対して回転するペダル側の可動部分に設置される。
【0014】
受電装置20は、負荷の一例としてセンサー28を有する。センサー28は、受電装置20の基板に実装されてもよいし、受電装置20の基板にケーブル等を介して接続されてもよい。センサー28は、例えば、物体の変形を検出可能な歪センサーである。センサー28は、例えば、ペダルを踏み込んだときのシャフトの瞬間的な変形を検出し、電気信号として出力する。センサー28には、送電装置10から受電装置20に非接触で給電された電力が供給される。
【0015】
送電装置10と受電装置20との間では、電力波(搬送波)を変調信号で振幅変調(AM:Amplitude Modulation)した被変調波HFにより、非接触で、給電及び負荷情報Sの送受信が行われる。被変調波HFは、負荷情報Sとして、送電装置10から受電装置20に送信される送電側負荷情報S1及び受電装置20から送電装置10に送信される受電側負荷情報S2を含む(図3参照)。送電側負荷情報S1は、例えば、センサー28に対して検出情報の送信を指示する呼出情報である。受電側負荷情報S2は、センサー28で検出された検出情報である。
【0016】
図3に示すように、被変調波HFは、電力波を、周波数fの変調信号で振幅変調した波であり、変調周期1/fで信号強度(振幅)の強弱を繰り返す。被変調波HFにおいて、例えば、信号強度の強い部分が負荷情報Sを示す通信信号として用いられる。ここでは、通信信号の前半部分を送電側負荷情報S1の送受信に用い、後半部分を受電側負荷情報S2の送受信に用いている。例えば、送電側負荷情報S1を示すデータ(二進数の「0」「1」)は、基準レベルからの凹みにより表され、受電側負荷情報S2を示すデータは、基準レベルからの凸により表される。
【0017】
送電装置10は、送電回路11、一次側制御回路12、一次側変調回路13、一次側ローパスフィルター14、一次側復調回路15、電源回路16及びスナバ回路30等を有する。
【0018】
送電回路11は、例えば、送電コイル111及び共振コンデンサー112を有する共振回路である(図4参照)。共振コンデンサー112は、電源回路16から送電コイル111への給電線路Fに直列に接続されている。送電コイル111の出力端は、グランドに接続されている。
【0019】
一次側制御回路12は、送電側負荷情報S1を含む低周波の変調信号で電力波が変調されるように、一次側変調回路13を制御する。また、一次側制御回路12は、被変調波HFに重畳されている受電側負荷情報S2が抽出されるように、一次側復調回路15を制御する。
【0020】
一次側変調回路13は、送電側負荷情報S1を含む変調信号で、電力波を変調する。一次側変調回路13は、給電線路Fとグランドとの間に接続される。一次側変調回路13は、例えば、スイッチング素子131、変調コンデンサー132、及び抵抗133等を有する(図4参照)。スイッチング素子131、変調コンデンサー132及び抵抗133は、グランド側から順に、直列に接続されている。例えば、一次側制御回路12によりスイッチング素子131がオンされた場合に、送電コイル111に対して並列に変調コンデンサー132が挿入され、被変調波HFの波形が収縮する(基準波形より凹む)ように、磁気共鳴条件が設定される。
【0021】
一次側ローパスフィルター14は、被変調波HFに含まれる電力波の高周波成分を除去し、通信信号の低周波成分のみを通過させる。一次側ローパスフィルター14は、例えば、全波整流回路で構成される。一次側復調回路15は、一次側ローパスフィルター14を通過した通信信号を復調して受電側負荷情報S2を取り出し、一次側制御回路12に出力する。
【0022】
電源回路16は、電力波を発生させる発振回路161(ロジックIC)を含む。発信回路161は、例えば、バッテリーから供給される電圧を、高周波(例えば、8MHz)の交流電圧に変換して出力する。
【0023】
スナバ回路30は、電源回路16から出力される交流電圧に生じうるスパイク状のノイズを抑制する。スナバ回路30により、交流電圧に含まれるノイズが低減されるので、EMI特性が向上する。
【0024】
スナバ回路30は、給電線路Fと入力電圧点Vccとの間に接続される第1スナバ回路31と、給電線路Fとグランドとの間に接続される第2スナバ回路32と、を有する。
【0025】
第1スナバ回路31は、交流電圧の立ち上がり直後のノイズ成分N1を吸収する(図6参照)。第1スナバ回路31は、直列に接続された抵抗311及びコンデンサー312を有するRC回路である。
【0026】
第2スナバ回路32は、交流電圧の立ち下がり直後のノイズ成分N2を吸収する(図6参照)。第2スナバ回路32は、直列に接続された抵抗321及びコンデンサー322を有するRC回路である。
【0027】
第1スナバ回路31及び第2スナバ回路32では、ノイズ成分N1、N2は、コンデンサー312、322に蓄電され、抵抗によって熱に変換される。
【0028】
なお、第1スナバ回路31及び第2スナバ回路32の回路構成は一例であって、これに限定されない。例えば、図7に示すように、スナバ回路30としてアクティブクランプ回路を適用してもよい。
【0029】
第1スナバ回路31Aは、直列に接続されたスイッチング素子313及びコンデンサー314を有する。また、第1スナバ回路31Aは、スイッチング素子313の動作を制御する駆動回路315を有する。駆動回路315は、発振回路161の入力側に接続される。
【0030】
第2スナバ回路32Aは、直列に接続されたスイッチング素子323及びコンデンサー324を有する。また、第2スナバ回路32Aは、スイッチング素子323の動作を制御する駆動回路325を有する。駆動回路325は、発振回路161の入力側に接続される。
【0031】
第1スナバ回路31A及び第2スナバ回路32Aでは、ノイズ成分N1、N2は、コンデンサー314、324に蓄電され、スイッチング素子313、323を介して電源に回生される。
【0032】
受電装置20は、受電回路21、二次側制御回路22、二次側変調回路30、二次側ローパスフィルター24、二次側復調回路25、整流回路26及びレギュレーター27等を有する。
【0033】
受電回路21は、例えば、受電コイル211、共振コンデンサー212、213を有する(図5参照)。共振コンデンサー212は、受電コイル211と整流回路26との間の第1給電線路F1上に、受電コイル211と直列に接続されている。共振コンデンサー213は、受電コイル211と整流回路26との間に、受電コイル211と並列に接続されている。
【0034】
二次側制御回路22は、受電側負荷情報S2を含む低周波の変調信号で電力波が変調されるように、二次側変調回路30を制御する。また、二次側制御回路22は、被変調波HFに重畳されている送電側負荷情報S1が抽出されるように、二次側復調回路25を制御する。二次側制御回路22は、受電装置20の基板に実装されてもよいし、センサー28に搭載されているマイクロコントローラーであってもよい。
【0035】
二次側変調回路23は、受電側負荷情報S2を含む変調信号で、電力波を変調する。二次側変調回路23は、例えば、スイッチング素子231、変調コンデンサー232、及び抵抗233等を有する(図4参照)。スイッチング素子231、変調コンデンサー232及び抵抗233は、グランド側から順に、直列に接続されている。例えば、二次側制御回路22によりスイッチング素子231がオンされた場合に、受電コイル211に対して並列に変調コンデンサー232が挿入され、被変調波HFの波形が拡張する(基準波形より突出する)ように、磁気共鳴条件が設定される。
【0036】
二次側ローパスフィルター24は、被変調波HFに含まれる電力波の高周波成分を除去し、通信信号の低周波成分のみを通過させる。二次側ローパスフィルター24は、例えば、半波整流回路で構成される。二次側復調回路25は、二次側ローパスフィルター24を通過した通信信号を復調して送電側負荷情報S1を取り出し、二次側制御回路22に出力する。
【0037】
整流回路26は、受電コイル211に誘起された交流電圧を整流、平滑化し、直流電圧に変換してレギュレーター27に出力する。レギュレーター27は、整流回路26から供給された電力を、出力電圧を一定にしてセンサー28に供給する。
【0038】
非接触電力伝送システム1において、送電コイル111に交流電流が流れると、送電コイル111の周囲に磁界が発生し、送電コイル111及び受電コイル211の双方と鎖交する磁束により、受電コイル211に電位差(電圧)が生じる。そして、受電コイル211に誘導電流が流れ、整流回路26及びレギュレーター27を介してセンサー28に電力が供給される。
【0039】
センサー28は、供給された電力を駆動源として動作する。また、センサー28は、被変調波HFに重畳して送信された送電側負荷情報S1に基づいて動作し、検出結果を受電側負荷情報S2として送電装置10に送信する。
【0040】
このように、実施の形態に係る送電装置10及び非接触電力伝送システム1は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0041】
すなわち、送電装置10は、電力波を振幅変調した被変調波HFにより、受電装置20への給電及び受電装置20との間の情報の送受信を可能に構成された、非接触電力伝送システム1の送電装置である。送電装置10は、受電装置20に対して電力を非接触で送電する送電回路11と、電源電圧を高周波の交流電圧に変換して送電回路11に出力する電源回路16と、交流電圧に生じうるスパイク状のノイズを抑制するスナバ回路30と、を備える。スナバ回路30は、電源回路16から送電回路11への給電線路Fと入力電圧点Vccとの間に配置される第1スナバ回路31と、給電線路Fとグランドとの間に配置される第2スナバ回路32と、を有する。
【0042】
送電装置10によれば、第1スナバ回路31及び第2スナバ回路32により、交流電圧に含まれる立ち上がり直後のノイズN1及び立ち下がり直後のノイズN2が効果的に低減されるので、EMI特性が向上する。したがって、非接触電力伝送システム1における通信品質を格段に向上することができる。
【0043】
また、送電装置10において、第1スナバ回路31及び第2スナバ回路32は、抵抗311、321及びコンデンサー312、322を有するRC回路である。これにより、簡易な回路構成でノイズN1、N2を吸収し、EMI特性を向上することができる。
【0044】
また、送電装置10において、第1スナバ回路31A及び第2スナバ回路32Aは、スイッチング素子313、323及びコンデンサー314、324を有するアクティブクランプ回路である。これにより、ノイズ成分N1、N2は、コンデンサー314、324に蓄電され、スイッチング素子313、323を介して電源に回生されるので、RC回路に比較して効率よくEMI特性を向上することができる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0046】
例えば、非接触電力伝送システム1における、それぞれの回路の構成は、実施の形態で示した構成に制限されない。例えば、送電装置10及び受電装置20に、インピーダンスを整合させるための部品等を適宜設けてもよい。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 非接触電力伝送システム
10 送電装置
20 受電装置
11 送電回路
16 電源回路
30 スナバ回路
31 第1スナバ回路
32 第2スナバ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7