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特開2024-65612スプール発音機構および魚釣用両軸受リール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065612
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】スプール発音機構および魚釣用両軸受リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
A01K89/015 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174566
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大古瀬 広樹
(72)【発明者】
【氏名】生田 剛
(72)【発明者】
【氏名】武智 邦生
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108ED20
2B108EE10
2B108EF01
2B108EH01
2B108HC02
2B108HC12
(57)【要約】
【課題】係合部材の移動により止め輪の外れや破損することを抑制できる。
【解決手段】スプール3と共に回転し、外周面に周方向に沿って凹凸部71aが形成された回転部材71と、揺動軸75に対して揺動可能に支持され、回転部材71の凹凸部71aに弾発的に係合する係合部材72と、係合部材72を所定の揺動位置に付勢する付勢部材73と、係合部材72の揺動軸75の軸方向への移動を規制する規制部材74と、を備えた構成のスプール発音機構を提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用両軸受リールに設けられ、スプールの回転時に発音するスプール発音機構であって、
前記スプールと共に回転し、外周面に周方向に沿って凹凸部が形成された回転部材と、
揺動軸に対して揺動可能に支持され、前記回転部材の前記凹凸部に弾発的に係合する係合部材と、
前記係合部材を所定の揺動位置に付勢する付勢部材と、
前記係合部材の前記揺動軸の軸方向への移動を規制する規制部材と、
を備えたスプール発音機構。
【請求項2】
前記規制部材は、
前記係合部材の前記揺動軸の軸方向の一方向への移動を規制する第1規制部材と、
前記係合部材の前記揺動軸の軸方向の他方向への移動を規制する第2規制部材と、
を有する、請求項1に記載のスプール発音機構。
【請求項3】
前記係合部材は、前記凹凸部に係合する係合位置と、前記凹凸部と係合しない非係合位置と、が移動可能に設けられている、請求項1に記載のスプール発音機構。
【請求項4】
前記規制部材は、前記揺動軸が貫通可能で、前記係合部材を前記係合位置と前記非係合位置の移動を案内する案内孔を有する、請求項3に記載のスプール発音機構。
【請求項5】
前記第1規制部材および前記第2規制部材は、一体的に設けられている、請求項2に記載のスプール発音機構。
【請求項6】
前記係合部材は、前記係合位置にある状態で、前記付勢部材と係止する係止部を有する、請求項3に記載のスプール発音機構。
【請求項7】
前記付勢部材と前記規制部材とが一体に設けられている、請求項1に記載のスプール発音機構。
【請求項8】
前記揺動軸の一端に係止され、前記規制部材を保持する保持部材を備えた請求項1に記載のスプール発音機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のスプール発音機構を備えた魚釣用両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール発音機構および魚釣用両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用両軸受リールでは、スプールの回転時に発音するスプール発音機構として、スプールと共に回転し、外周面に周方向に沿って凹凸部が形成されたリング状の回転部材と、揺動軸に対して揺動可能に支持され、回転部材の凹凸部に弾発的に係合することで発音する発音爪(係合部材)と、発音爪を所定の揺動位置に付勢する付勢部材と、係合部材の前記揺動軸の軸方向への抜け出しを規制する止め輪と、を備えた構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-17098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、付勢部材の付勢力を大きくすると発音爪の暴れ(ガタツキ)が大きくなり、その発音爪を押さえる止め輪の負荷も大きくなって、止め輪が外れたり、破損したりするという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、係合部材の移動により止め輪の外れや破損することを抑制できるスプール発音機構および魚釣用両軸受リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るスプール発音機構の態様1は、魚釣用両軸受リールに設けられ、スプールの回転時に発音するスプール発音機構であって、前記スプールと共に回転し、外周面に周方向に沿って凹凸部が形成された回転部材と、揺動軸に対して揺動可能に支持され、前記回転部材の前記凹凸部に弾発的に係合する係合部材と、前記係合部材を所定の揺動位置に付勢する付勢部材と、前記係合部材の前記揺動軸の軸方向への移動を規制する規制部材と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明に係るスプール発音機構の態様1によれば、付勢部材によって揺動中心位置となるように付勢されている係合部材が規制部材によって揺動軸の軸方向への移動が規制された状態で保持されている。そのため、揺動する係合部材の負荷が止め輪に対して直接作用することがなくなる。このように、本発明では、係合部材に付与する付勢部材の付勢力を小さく抑えることができ、規制部材によって係合部材が大きく暴れるように揺動することが低減されるので、従来のように係合部材の揺動軸の軸方向への移動によって止め輪が外れたり、破損したりすることを抑制することができ、スプール発音機構としての耐久性を向上させることができる。
【0008】
(2)本発明の態様2は、態様1のスプール発音機構において、前記規制部材は、前記係合部材の前記揺動軸の軸方向の一方向への移動を規制する第1規制部材と、前記係合部材の前記揺動軸の軸方向の他方向への移動を規制する第2規制部材と、を有することが好ましい。
【0009】
この場合には、係合部材が軸方向両側から規制部材によって保持されているので、第1規制部材と第2規制部材とによって係合部材が大きく暴れるように揺動することをより確実に抑えることができる。
【0010】
(3)本発明の態様3は、態様1又は態様2のスプール発音機構において、前記係合部材は、前記凹凸部に係合する係合位置と、前記凹凸部と係合しない非係合位置と、が移動可能に設けられていることが好ましい。
【0011】
この場合には、利用者が係合部材の位置を係合位置と非係合位置とに選択することができる。そのため、係合部材を係合位置にして回転部材の凹凸部に係合させて発音させたり、発音が不要なときに係合部材を非係合位置に移動させて無音にすることが可能である。また、係合位置と非係合位置との間で適宜な位置に係合部材を配置することで、凹凸部と係合部材との係合状態(当たり状態)を調整することができる。すなわち、係合部材による発音量を調整できる。このように、凹凸部に対する係合部材の係合状態を小さく抑えることが可能となるので、係合部材の揺動を低減させて使用できるため、スプール発音機構としての耐久性を向上できる。
【0012】
(4)本発明の態様4は、態様3のスプール発音機構において、前記規制部材は、前記揺動軸が貫通可能で、前記係合部材を前記係合位置と前記非係合位置の移動を案内する案内孔を有することを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、揺動軸を案内孔に案内させて移動させることで、揺動軸とともに係合部材を係合位置と非係合位置との間で移動させることができる。揺動軸は案内孔に沿って移動することから、横振れすることなく安定した移動となり、係合部材の揺動も安定させることができる。
【0014】
(5)本発明の態様5は、態様2のスプール発音機構において、前記第1規制部材および前記第2規制部材は、一体的に設けられていることが好ましい。
【0015】
この場合には、一対の第1規制部材と第2規制部材とが一体化されているので、規制部材全体に剛性を高めることができるので、係合部材をより強固に保持することができる。
【0016】
(6)本発明の態様6は、態様3又は態様4のスプール発音機構において、前記係合部材は、前記係合位置にある状態で、前記付勢部材と係止する係止部を有することが好ましい。
【0017】
この場合には、付勢部材の付勢力が係止部に作用した状態で係合部材を保持する。これにより、係合部材が常に付勢部材によって付勢されて大きく揺動することを抑えることができる。
【0018】
(7)本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つのスプール発音機構において、前記付勢部材と前記規制部材とが一体に設けられていることが好ましい。
【0019】
この場合には、係合部材を保持する規制部材に対して付勢部材が一体化され、付勢部材で係合部材を安定した姿勢により付勢できるので、係合部材の暴れ(ガタツキ)をより低減することができる。
また、スプールの径寸法が変わっても回転部材の凹凸部のピッチを変更するだけでよく、付勢部材をスプールの径寸法に合わせた別部材とする必要が無く、さらに部品点数を低減できる利点がある。
【0020】
(8)本発明の態様8は、態様1から態様7のいずれか一つのスプール発音機構において、前記揺動軸の一端に係止され、前記規制部材を保持する保持部材を備えたことが好ましい。
【0021】
この場合には、保持部材によって規制部材の揺動軸の軸方向への移動を規制することができる。このように、係合部材は規制部材と保持部材とによって軸方向への移動がより確実に規制される。
【0022】
(9)本発明に係る魚釣用両軸受リールの態様9は、態様1から態様8のいずれか一つのスプール発音機構を備えたことをえたことを特徴としている。
【0023】
本発明によれば、上述したスプール発音機構の効果を有する魚釣用両軸受リールを提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るスプール発音機構および魚釣用両軸受リールによれば、係合部材の移動により止め輪の外れや破損することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態を示す図であって、両軸受リールの斜視図である。
図2図1に示す両軸受リールをハンドル側から見た側面図である。
図3図1に示す両軸受リールの断面図である。
図4】スプール発音機構の構成を示す平面図である。
図5図4に示すスプール発音機構の斜視図である。
図6】スプール発音機構の構成を示す平面図である。
図7】スプール発音機構の要部断面図である。
図8】係合部材の拡大斜視図である。
図9図8に示す係合部材の分解斜視図である。
図10】変形例によるスプール発音機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るスプール発音機構および魚釣用両軸受リールの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。本実施形態では、魚釣用両軸受リールとして、両軸受リールを例に挙げて説明する。
【0027】
(全体構成)
図1および図2に示すように、本実施形態の魚釣用両軸受リール(以下、両軸受リール1という)は、釣り糸を巻取可能な中型のレバードラグリールである。
両軸受リール1は、筒状のリール本体10と、リール本体10の中心部に回転不能かつ軸方向移動自在に装着されたスプール軸2と、スプール軸2に回転自在かつ軸方向移動不能に支持されたスプール3と、リール本体10の側方に配置されたハンドル4と、を備えている。また、両軸受リール1は、図3に示すように、ハンドル4の回転をスプール3に伝達する回転伝達機構5と、スプール3の糸繰り出し方向の回転を制動するドラグ機構6と、をリール本体10の内部に備えている。
【0028】
(リール本体)
リール本体10は、金属製の左右1対の皿状の右側板10A及び左側板10Bと、右側板10A及び左側板10Bを前後及び下部で連結する複数の連結部11と、右側板10Aの外方を覆う右カバー部材12Aと、左側板10Bの外方を覆うように左側板10Bと一体形成された左カバー部材12Bと、を備えている。
連結部11には、両軸受リール1を釣竿に装着するための竿装着部13が一体形成されている。右側板10A、左側板10B、連結部11及び左カバー部材12Bは、金属の切削加工により一体成形されている。
【0029】
右カバー部材12Aは、図1に示すように、金属製をなし、右側板10Aの外方を覆う。また、右側板10A及び左側板10Bは、スプール3が通過可能な開口を有している。左カバー部材12Bの内部には、スプール軸2の左端を軸方向移動自在かつ回転不能に支持するボス部(図示省略)が形成されている。左カバー部材12Bの内部には、図3に示すように、スプール3の回転に応じて発音するスプール発音機構7が設けられている(図4図9参照)。
【0030】
ハンドル4側の右カバー部材12Aには、図1及び図2に示すように、径方向及び軸方向外方に突出する膨出部122が形成されている。膨出部122には、図3に示すように、回転伝達機構5が設けられている。膨出部122には、ハンドル4のハンドル軸40を支持するための第1支持筒部123と、ドラグレバー80を支持するための第2支持筒部124と、が形成されている。第1支持筒部123及び第2支持筒部124は、それぞれ軸方向外方に突出して形成されている。
【0031】
(スプール軸)
スプール軸2は、図3に示すように、左カバー部材12Bのボス部(図示省略)と、右カバー部材12Aにより軸方向移動自在かつ回転不能に支持されている。スプール軸2は、外周面に配置された2つの第1軸受221、第2軸受222によりスプール3を回転自在に支持している。第1軸受221及び第2軸受222の軸方向内側面は、スプール3及びスプール軸2により内側への移動が規制されている。これにより、スプール軸2とスプール3とは、軸方向に一体的に移動可能である。スプール軸2は、ドラグ機構6により軸方向にスプール3とともに移動する。
【0032】
(スプール)
スプール3は、図3に示すように、糸巻胴部31と、糸巻胴部31の両端に一体形成されたフランジ部32と、を有している。右側のフランジ部32Aの端面には、ドラグ機構6を構成する摩擦ディスク61がねじにより固定されている。
【0033】
(ハンドル)
ハンドル4は、図1に示すように、スプール軸2の下方にスプール軸2と平行に配置された筒状のハンドル軸40の突出端に固定されている。ハンドル軸40は、リール本体10に回転自在に支持されている。ハンドル4は、図1及び図2に示すように、長手方向と交差する方向に貫通孔(図示省略)が形成されたハンドルアーム41と、ハンドルアーム41の先端部に回転自在に装着されたハンドル把手42と、を有している。ハンドルアーム41は、金属製の板状部材であって、基端部に形成された非円形の前記貫通孔にハンドル軸40が一体回転可能に装着される。
【0034】
(回転伝達機構)
回転伝達機構5は、図3に示すように、高低2速に切り換え可能な変速操作機構50を備えている。変速操作機構50は、ハンドル4のハンドル軸40に回転自在に支持された高速巻き取り用の第1メインギア51及び低速巻き取り用の第2メインギア52と、第1メインギア51及び第2メインギア52にそれぞれ噛み合う状態でスプール軸2に回転自在に装着された第1ピニオンギア53及び第2ピニオンギア54と、第1メインギア51及び第2メインギア52のいずれか一方とハンドル軸40とを結合し回転を伝達する係合片(図示省略)と、係合片の位置を第1メインギア51に係合する高速位置又は第2メインギア52に係合する低速位置の一方に設定する操作軸55と、を有している。操作軸55は、不図示のばね部材によって係合片を介して軸方向外側と第2メインギア52側に付勢されている。
【0035】
第1ピニオンギア53は、例えば非磁性のステンレス合金等の耐蝕性を有する金属製の筒状部材である。第1ピニオンギア53は、右端がスプール軸2の外側で膨出部122に装着された第4軸受531に回転自在に支持されている。また、第1ピニオンギア53の左端は、ドラグ機構6のドラグディスク62に一体回転可能に係合している。第2ピニオンギア54は、第1ピニオンギア53と同様な材質の筒状部材であり、左端がドラグディスク62に一体回転可能に係合している。係合片は、ハンドル軸40のスリット内に回転不能に配置されている。
【0036】
操作軸55は、図1に示すように、ハンドル軸40の貫通孔に挿通されている。操作軸55の図3右側の端部は、ハンドルアーム41の軸方向外方(図3右側)に突出しており、操作軸55を図3左方向に押し込むことが可能である。操作軸55は、ハンドル軸40の突出端にねじ込まれたハンドル4をハンドル軸40に固定するための図示しないナット部材により軸方向に移動自在に支持されている。
【0037】
(ドラグ機構)
ドラグ機構6は、図3に示すように、スプール3に回転不能に装着されるドラグディスク61と、ハンドル4からの回転が伝達され、ドラグディスク61のハンドル4側の第1面に対向して配置され、スプール軸方向に移動不能なピニオンギアカラー62と、ハンドル4からの回転が伝達され、ドラディスク61の反ハンドル4側の第2面に対向して配置され、スプール軸2と連動してスプール軸方向に移動可能なドラグ受け63と、ドラグディスク61とドラグ受け63とを離反する方向に付勢する付勢部材64と、スプール軸2を軸方向に往復移動させるための移動機構65と、を備えている。
【0038】
ドラグディスク61は、ステンレス製の円盤状の制動ディスクであり、スプール3と共に回転する。ドラグディスク61は、スプール3のハンドル側(右側)のフランジ部32Aの外周部からスプール軸2の径方向内側に向けて延びる。スプール3の右側のフランジ部32Aとドラグディスク61との間には、ドラグディスク61を右側のフランジ部32Aとの間で離反させるコイルばね23が介在されている。コイルばね23は、ドラグレバー80を離間位置から挟持位置との間の中間位置となるまでは、スプール3における右側への移動とともにドラグディスク61を右側に押圧するように付勢する。このとき、ドラグディスク61は、ピニオンギアカラー62の第1摩擦板621(後述する)に接触することで摩擦力が生じてドラグ力が発生する。
【0039】
ピニオンギアカラー62は、ハンドル4の回転と共に回転するギア部(第1ピニオンギア53)からスプール軸2の径方向外側に向けて延びる円盤状の円盤部を形成している。ピニオンギアカラー62は、ドラグディスク61の第1面61aに対向する第1摩擦板621を有する。ピニオンギアカラー62には、スプール軸方向でドラグ受け63に向けて延びる凸部(図示省略)を有している。
【0040】
ドラグ受け63は、スプール軸2と共にスプール軸方向に移動可能であり、スプール軸2の径方向外側に向けて延びる円盤状の円盤部を形成している。ドラグ受け63は、スプール軸2に対して第3軸受632を介して回転可能に設けられている。ドラグ受け63は、ドラグディスク61に対向する第2摩擦板631を有する。ドラグ受け63には、ピニオンギアカラー62の凸部に沿って移動可能に係合する孔部(図示省略)を有し、ピニオンギアカラー62と共に回転する。
【0041】
ピニオンギアカラー62の第1摩擦板621及びドラグ受け63の第2摩擦板631は、例えばカーボングラファイトや繊維強化樹脂等の耐摩耗性材製のワッシャ状の円板部材であり、周方向に間隔を隔てて配置された複数本の取付ボルトにより、外側面に固定されている。
【0042】
付勢部材64は、皿バネに比して高負荷下において線形性を有し、安定したドラグカーブが得られる特性を有する多層巻き型の波型円環状コイルスプリングが採用されている。
【0043】
付勢部材64は、ドラグレバー80を離間位置と挟持位置との中間位置から挟持位置に向けて揺動操作することで、付勢部材64の付勢力によってドラグ受け63を右側に押圧する。これにより、ドラグ受け63の第2摩擦板631は、先にピニオンギアカラー62の第1摩擦板621に接触しているドラグディスク61に対して左側から接触する。つまり、ドラグディスク61は、第1摩擦板621と第2摩擦板631とによって挟持されて摩擦力が生じて、より大きなドラグ力が発生する。
【0044】
なお、コイルばね23の付勢力は、付勢部材64よりも小さく、付勢部材64の付勢力が作用する前(離間位置から中間位置の間)に作用する。そのため、ドラグ機構6では、離間位置から中間位置の間ではコイルばね23のみの付勢力でドラグ力が作用し、中間位置から挟持位置までの間ではコイルばね23の付勢力に加えて付勢部材64の付勢力でドラグ力が作用する構成となっている。
【0045】
移動機構65は、図3に示すように、ドラグレバー80の挟持位置側から離間位置側への移動に応じて、ドラグディスク61、ピニオンギアカラー62及びドラグ受け63がそれぞれスプール軸方向に離間するように、スプール軸2を反ハンドル側(左側)へ移動させ、ドラグレバー80の離間位置側から挟持位置側への移動に応じて、ピニオンギアカラー62及びドラグ受け63でドラグディスク61を挟持するように、スプール軸2をハンドル4側(右側)へ移動させる。
【0046】
このようにドラグ機構6では、ドラグレバー80の離間位置から挟持位置側への移動に応じて、ピニオンギアカラー62及びドラグ受け63でドラグディスク61を挟持するように、スプール軸2をハンドル4側(右側)へ移動させ、スプール3の糸繰出し方向への回転を制動する。
【0047】
具体的に移動機構65は、図1に示すように、右カバー部材12Aの第2支持筒部124に揺動自在に設けられたドラグレバー80と、ドラグレバー80の図2に示す時計回りの揺動に応じてスプール軸2を引っ張って右方に移動させる引張機構(図示省略)と、スプール軸2を左方に付勢してドラグレバー80の反時計回りの移動に応じてスプール軸2を左方に移動させるための前記付勢部材64と、第2支持筒部124に支持されるスプール軸2の端部に装着されドラグレバー80の制動力を調整するためのドラグ調整つまみ83と、を有している。
【0048】
(ドラグレバー)
ドラグレバー80は、図1及び図2に示すように、スプール3が自由回転可能なドラグフリー状態に対応した離間位置とドラグ機構の最大ドラグ状態に対応した最大位置(挟持位置)との間で右カバー部材12Aの第2支持筒部124の外周部に揺動自在に装着されており、フリー位置と最大位置との間で揺動するように揺動範囲が規制されている。
ドラグレバー80は、スプール軸2の径方向外方に延び右カバー部材12Aの側面に突出した第2支持筒部124の外周部に揺動自在(回転自在)に装着された装着部81と、装着部81の上面から先端部(径方向外方)に向かって延び前後方向に揺動操作可能な操作部82と、を有している。
【0049】
装着部81は、移動機構65を構成する図示しないカム部材に回転不能に係止されており、操作部82の揺動操作に応じて、スプール軸2及びスプール3をスプール軸方向に移動させるようになっている。装着部81は、外形が略円形の筒状の部分である。装着部81の側面中央部には、スプール軸2が装着されており、スプール軸2の端部には、キャップ状のドラグ調整つまみ83が装着されている。装着部81には、操作部82が一体成形されている。
【0050】
ここで、第2支持筒部124は、右カバー部材12Aの膨出部122の側面より突出するように配置されている。第2支持筒部124に操作部82の一部を接触させることにより、ドラグレバー80を所定のドラグ制動位置(ここでは挟持位置)で位置決めする。
【0051】
操作部82は、装着部81の上面から先端部に向かって延び、前後方向(前方向は図1で時計回りの方向、後方向は図1で反時計回りの方向)に揺動操作可能に設けられている。
【0052】
このように構成された両軸受けリール1において、ドラグ機構6のドラグ力を強弱調整する場合には、ドラグレバー80を揺動させる。ドラグレバー80を図1において最も手前側の揺動位置であるドラグ解放位置に配置すると、ドラグ機構6において、ドラグディスク61からピニオンギアカラー62及びドラグ受け63摩擦ディスク41が離反してドラグ開放状態になり、スプール3が自由回転可能になる。これにより、キャスティングを行える。そこから、図2において時計回りにドラグレバー80を揺動操作するとスプール軸方向外方(図3の右側)に徐々に移動しスプール軸2及びスプール3が徐々に右側に移動する。この結果、ピニオンギアカラー62及びドラグ受け63のドラグディスク61への圧接力が強くなり、ドラグ力が強くなる。
【0053】
(スプール発音機構)
図4図9に示すように、スプール発音機構7は、スプール3の回転に応じて発音可能な機構である。スプール発音機構7は、スプール3と共に回転し、外周面に周方向に沿って凹凸部71aが形成された回転部材71と、揺動軸75に対して揺動可能に支持され、回転部材71の凹凸部71aに弾発的に係合する係合部材72と、係合部材72を所定の揺動位置に付勢する付勢部材73と、係合部材72の揺動軸75の軸方向への移動を規制する規制部材74と、を備えている。
【0054】
回転部材71は、例えば合成樹脂製の部材であり、回転中心をスプール軸2と同軸にして、スプール3に固定される円板状の装着板(ここではスプール3の左フランジ32B)に一体形成され、スプール3とともに回転する。回転部材71は、外周にギア歯形状の多数の凹凸が形成された凹凸部71aを有している。
【0055】
揺動軸75の軸方向は、左右方向に一致する方向、すなわちスプール軸2の軸方向に平行に設けられている。揺動軸75は、規制部材74に対して挿通した状態で支持されている。揺動軸75は、図7に示す係合部材72を係合位置と非係合位置とに移動操作する部材である。揺動軸75は、軸部751と、軸部751の軸方向の一端(左端部)に設けられ左カバー12Aの外側に位置するつまみ部材752と、軸部751の他端(右端部)に係止され、規制部材74を保持する止め輪753(保持部材)と、を備えている。
【0056】
つまみ部材752は、軸部751より大径に形成された部材である。止め輪753は、図9に示すように、軸部751の先端外周部に沿って形成される周溝754に嵌合可能に設けられている。止め輪753は、ワッシャ756を介在させて規制部材74に支持される。軸部751は、規制部材74に貫通して形成された一対の長孔74a、74b(後述する)に案内される。そして、軸部751には、規制部材74の後述する第1規制部材74Aと第2規制部材74Bとの間に介在された係合部材72が揺動自在に連結されている。利用者がつまみ部材752を操作することにより、揺動軸75が規制部材74の長孔74a、74bに案内されて、案内される軸部751に支持される係合部材72が係合位置と非係合位置とを移動させることができる。
【0057】
係合部材72は、例えば合成樹脂製の部材であり、揺動軸75によって揺動自在に支持される基端部721と、基端部721から延び先端が先細り形状に形成され回転部材71の凹凸部71aと衝突を繰り返す打撃部722と、基端部721と打撃部722との間に形成されたくびれ部723(係止部)と、を有している。係合部材72は、凹凸部71aに係合する係合位置と、凹凸部71aと係合しない非係合位置と、を移動可能に設けられている。くびれ部723には、係合部材72が係合位置にある状態において、付勢部材73の対向部73aが両側から係止する。
【0058】
係合部材72の基端部721には、厚み方向に貫通する軸孔72aが形成されている。係合部材72の軸孔72aが揺動軸75に挿通されて支持されている。これにより係合部材72は、揺動軸75を中心にした揺動が可能な構成となっている。
【0059】
付勢部材73は、例えば合成樹脂製の部材であり、円周の一部を切り欠いたような形状の対向部73aを有するC字筒状のばね部731と、ばね部731の中間部分に板状に形成された取付部732と、を有している。ばね部731の切欠き部分には、一対の対向部73aが互いに対向している。ばね部731は、切欠き部分の対向部73a同士が近接する方向に付勢されている。ばね部731は、打撃部722が係合位置に進出した状態で、対向部73a間に係合部材72のくびれ部723に接触可能に設けられる。取付部732は、ねじ部材733によって固定される固定板734と装着板33との間で固定されている。
【0060】
規制部材74は、係合部材72の揺動軸75の軸方向の左側(一方向)への移動を規制する第1規制部材74Aと、係合部材2の揺動軸75の軸方向の右側(他方向)への移動を規制する第2規制部材74Bと、を有する。
【0061】
第1規制部材74Aは、板状をなし、係合部材72の一方(左側)に配置される。第2規制部材74Bは、板状をなし、係合部材72の他方(右側)に配置される。第1規制部材74Aと第2規制部材74Bとは、互いに間隔をあけて平行に配置され、連結部741とともに一体的に設けられている。第1規制部材74Aと第2規制部材74Bとの間に係合部材72は配置される。第1規制部材74Aと第2規制部材74Bとの離間は、係合部材72の厚みとほぼ同等である。第1規制部材74A及び第2規制部材74Bはそれぞれ、係合部材72に近接あるいは接触している。第1規制部材74A及び第2規制部材74Bには、それぞれ揺動軸方向に重なる位置に長孔74a、74b(案内孔)が形成されている。長孔74a、74bには、揺動軸75が挿通されて支持される。
【0062】
第1規制部材74Aには、板面方向に突出する一対の固定部742が一体で設けられている。一対の固定部742は、第1規制部材74Aを挟んだ両側に配置され、それぞれの中央に固定穴742aが形成されている。固定穴742aに図示しないボルトが締め込まれて左側板10Bに固定される。
【0063】
次に、このように構成されるスプール発音機構7および両軸受リール1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態によるスプール発音機構7は、両軸受リール1に設けられ、スプール3の回転時に発音する。スプール発音機構7は、スプール3と共に回転し、外周面に周方向に沿って凹凸部71aが形成された回転部材71と、揺動軸75に対して揺動可能に支持され、回転部材71の凹凸部71aに弾発的に係合することで発音する係合部材72と、係合部材72を所定の揺動位置に付勢する付勢部材73と、係合部材72の揺動軸75の軸方向への移動を規制する規制部材74と、を備えている。
【0064】
これにより、付勢部材73によって揺動中心位置となるように付勢されている係合部材72が規制部材74によって揺動軸75の軸方向への移動が規制された状態で保持されている。そのため、揺動する係合部材72の負荷が止め輪753に対して直接作用することがなくなる。このように、本実施形態では、係合部材72に付与する付勢部材73の付勢力を小さく抑えることができ、規制部材74によって係合部材72が大きく暴れるように揺動することが低減されるので、従来のように係合部材72の揺動軸75の軸方向への移動によって止め輪が外れたり、破損したりすることを抑制することができ、スプール発音機構1としての耐久性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、規制部材74は、係合部材72の揺動軸75の軸方向の一方向への移動を規制する第1規制部材74Aと、係合部材72の揺動軸75の軸方向の他方向への移動を規制する第2規制部材74Bと、を有する。
そのため、係合部材72が軸方向両側から規制部材74によって保持されているので、第1規制部材74Aと第2規制部材74Bとによって係合部材72が大きく暴れるように揺動することをより確実に抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態では、係合部材72は、凹凸部71aに係合する係合位置と、凹凸部71aと係合しない非係合位置と、が移動可能に設けられている。
この場合には、利用者が係合部材72の位置を係合位置と非係合位置とに選択することができる。そのため、係合部材72を係合位置にして回転部材71の凹凸部71aに係合させて発音させたり、発音が不要なときに係合部材72を非係合位置に移動させて無音にすることが可能である。また、係合位置と非係合位置との間で適宜な位置に係合部材72を配置することで、凹凸部71aと係合部材72との係合状態(当たり状態)を調整することができる。すなわち、係合部材72による発音量を調整できる。このように、凹凸部71aに対する係合部材72の係合状態を小さく抑えることが可能となるので、係合部材72の揺動を低減させて使用できるため、スプール発音機構1としての耐久性を向上できる。
【0067】
また、本実施形態では、規制部材74は、揺動軸75が貫通可能で、係合部材72を係合位置と非係合位置の移動を案内する長孔74a、74bを有する。
そのため、揺動軸75を長孔74a、74bに案内させて移動させることで、揺動軸75とともに係合部材72を係合位置と非係合位置との間で移動させることができる。揺動軸75は長孔74a、74bに沿って移動することから、横振れすることなく安定した移動となり、係合部材72の揺動も安定させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1規制部材74Aおよび第2規制部材74Bは、一体的に設けられていることが好ましい。
そのため、一対の第1規制部材74Aと第2規制部材74Bとが一体化されているので、規制部材74全体に剛性を高めることができるので、係合部材72をより強固に保持することができる。
【0069】
また、本実施形態では、係合部材72は、係合位置にある状態で、付勢部材73と係止するくびれ部753を有する。
そのため、付勢部材73の付勢力がくびれ部753に作用した状態で係合部材72を保持する。これにより、係合部材72が常に付勢部材73によって付勢されて大きく揺動することを抑えることができる。
【0070】
また、本実施形態では、揺動軸75の一端に係止され、規制部材74を保持する止め輪753を備えている。
そのため、止め輪753によって規制部材74の揺動軸75の軸方向への移動を規制することができる。このように、係合部材72は規制部材74と止め輪753とによって軸方向への移動がより確実に規制される。
【0071】
上述のように構成された本実施形態によるスプール発音機構7および両軸受リール1では、係合部材72の移動により止め輪753の外れや破損することを抑制できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0073】
例えば、上記実施形態では、中型のレバードラグリールを例にあげて説明したが、これに限られるものではなく、スプール発音機構7を有する両軸受リール1であれば、あらゆる両軸受リールに本発明を適用できる。
【0074】
また、図10に示す変形例によるスプール発音機構7Aを採用することも可能である。変形例によるスプール発音機構7Aは、付勢部材73Aと規制部材74とが一体に設けられている。係合部材72、規制部材74および揺動軸75は、上述した実施形態と同様の構成である。変形例による付勢部材73Aは、リングを半割りにした一対の半割れリング部735が互いにリング状を形成するように向きあった状態で規制部材74に固定されている。具体的に一対の半割れリング部735は、延在方向の一端(固定端73b)が規制部材74の連結部741に接続されている。半割れリング部735の他端の対向部73aは、係合部材72のくびれ部723(係止部)に係止している。
【0075】
このような変形例によるスプール発音機構7Aでは、係合部材72を保持する規制部材74に対して付勢部材73Aが一体化され、付勢部材73Aで係合部材72を安定した姿勢により付勢できるので、係合部材72の暴れ(ガタツキ)をより低減することができる。
また、スプール3の径寸法が変わっても回転部材71の凹凸部71a(図6参照)のピッチを変更するだけでよく、付勢部材73Aをスプール3の径寸法に合わせた別部材とする必要が無く、さらに部品点数を低減できる利点がある。
【0076】
また、規制部74として、本実施形態では、係合部材72の軸方向の両側に第1規制部材74Aと第2規制部材74Bとを有する構成としているが、このような一対の規制部材74A、74Bを設ける構成に限定されることはない。また、第1規制部材74Aおよび第2規制部材74bが一体的に設けられる構成ではなく、別体で設けられていても良い。
【0077】
上述した実施形態では、揺動軸75および係合部材72が、回転部材71の凹凸部71aに係合する係合位置と非係合位置とを移動可能であるが、このように非係合位置に移動可能であることに限定されることはない。すなわち、係合部材72が常に凹凸部71aに係合する係合位置に固定されていてもよい。この場合には、規制部材74において、揺動軸75の軸部751を案内する長孔(案内孔)を省略できる。
【0078】
また、本実施形態では、係合部材72に付勢部材73の対向部73aが係止するくびれ部723(係止部)が設けられているが、係止部が他の部位であてもよいし、本実施形態のようなくびれ形状であることにも限定されることはない。例えば、付勢部材73の対向部73aで係合部材72の打撃部722に係止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 両軸受リール(魚釣用両軸受リール)
2 スプール軸
3 スプール
4 ハンドル
6 ドラグ機構
7 スプール発音機構
71 回転部材
71a 凹凸部
72 係合部材
721 基端部
722 打撃部
723 くびれ部(係止部)
73 付勢部材
74 規制部材
74A 第1規制部材
74B 第2規制部材
75 揺動軸
753 止め輪(保持部材)
80 ドラグレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10