(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065656
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174641
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】利根川 正明
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA13
3H106DA23
3H106DA35
3H106DB32
3H106DC02
3H106DD02
3H106EE34
3H106GB01
(57)【要約】
【課題】パイロット式電磁弁の小型化によるコスト低減を実現する。
【解決手段】電磁弁1は、ボディ5に設けられた主弁孔24に接離して主弁2を開閉する主弁体26と、主弁体26に設けられたパイロット弁孔30に背圧室29側から接離してパイロット弁4を開閉するパイロット弁体62と、プランジャ38およびコア36を有するソレノイド6と、ボディ5とソレノイド6とを接続する筒状部であり、主弁体26を摺動可能に挿通するガイド孔28を有するガイド部7と、を備える。ガイド部7の開口端部にボディ5の基端部が同軸状に組み付けられ、ガイド部7およびボディ5からなる筒状連結体9が、対象装置の取付孔に挿入可能に構成される。ガイド部7の外周面に取付孔との間に介装されるシールリング76が設けられる。ボディ5の外径が、シールリング76の外径よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を導入する導入ポートと、流体を導出する導出ポートと、前記導入ポートと前記導出ポートとをつなぐ主通路に設けられた主弁孔と、を有するボディと、
前記導入ポートに連通する高圧室と背圧室とを区画し、前記導出ポートと前記背圧室とを連通させるパイロット弁孔を有し、前記主弁孔に接離して主弁を開閉する主弁体と、
前記パイロット弁孔に前記背圧室側から接離してパイロット弁を開閉するパイロット弁体と、
前記ボディに対して固定されるコアと、前記コアと同軸状に組み付けられるスリーブと、前記スリーブ内に収容されて前記コアと対向するとともに前記パイロット弁体が設けられるプランジャと、前記コアおよび前記プランジャとともに磁気回路を形成する電磁コイルと、を有するソレノイドと、
前記ボディと前記ソレノイドとを接続する筒状部であり、前記主弁体を摺動可能に挿通するガイド孔を有するガイド部と、
を備え、
前記ガイド部の開口端部に前記ボディの基端部が同軸状に組み付けられ、前記ガイド部および前記ボディからなる筒状連結体が、対象装置の取付孔に挿入可能に構成され、
前記ガイド部の外周面に前記取付孔との間に介装されるシールリングが設けられ、
前記ボディの外径が、前記シールリングの外径よりも小さいことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記ガイド部が前記スリーブ又は前記コアと一体成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記ボディの基端部が前記ガイド部の開口端部の内側に挿通され、固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記ソレノイドは、前記ガイド部に組み付けられるヨークを有し、
前記ヨークが前記対象装置に固定されることにより、前記取付孔が閉止されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
小口径のパイロット弁を開閉制御することで大口径の主弁を自律的に開閉させるパイロット式電磁弁が知られている。パイロット作動方式を採用することで、小さなソレノイドで大きな弁を開閉できるため、電磁弁の小型化および省電力化を図ることができる。
【0003】
このような電磁弁は、主弁を構成する相対的に大きな主弁体と、パイロット弁を構成する相対的に小さなパイロット弁体を備える。ソレノイドと主弁体との間に背圧室が形成される。主弁体を貫通するようにパイロット弁孔が設けられる。そして、パイロット弁体が背圧室側からパイロット弁孔に接離してパイロット弁を開閉することにより背圧室の圧力が変化し、主弁体が主弁の開閉方向に作動する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の電磁弁は、主弁体を軸線方向にガイドするためのガイド部が設けられている。ガイド部は、流体通路が形成されたボディとソレノイドとを接続する接続部としても機能する。ボディの上部にガイド部の下部が挿通され、その挿通部に流体の外部漏れ防止用のOリングが設けられる。この電磁弁は、ガイド部とボディからなる筒状連結体が対象装置の取付孔に挿抜されるいわゆるカートリッジ構造を有する。ボディの外周面にも流体の外部漏れ防止用のOリングが設けられる。筒状連結体にはプレート状の接続部材が設けられる。接続部材が対象装置に締結されることにより、電磁弁が対象装置に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような電磁弁は、カートリッジ構造を有するためモジュール化に有利であり、取り扱いが容易で汎用性も高い。しかしながら、ボディの上部が比較的大径となるため、取付孔の内部から大きな流体圧がかかる。このため、電磁弁が取付孔から抜けないよう接続部材の厚みや締結部材を十分に大きくするなど、それらの耐圧性を確保する必要があった。その結果、電磁弁の小型化の観点で改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、パイロット式電磁弁の小型化によるコスト低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、パイロット式電磁弁である。この電磁弁は、流体を導出する導出ポートと、導入ポートと導出ポートとをつなぐ主通路に設けられた主弁孔と、を有するボディと、導入ポートに連通する高圧室と背圧室とを区画し、導出ポートと背圧室とを連通させるパイロット弁孔を有し、主弁孔に接離して主弁を開閉する主弁体と、パイロット弁孔に背圧室側から接離してパイロット弁を開閉するパイロット弁体と、ボディに対して固定されるコアと、コアと同軸状に組み付けられるスリーブと、スリーブ内に収容されてコアと対向するとともにパイロット弁体が設けられるプランジャと、コアおよびプランジャとともに磁気回路を形成する電磁コイルと、を有するソレノイドと、ボディとソレノイドとを接続する筒状部であり、主弁体を摺動可能に挿通するガイド孔を有するガイド部と、を備える。ガイド部の開口端部にボディの基端部が同軸状に組み付けられ、ガイド部およびボディからなる筒状連結体が、対象装置の取付孔に挿入可能に構成される。ガイド部の外周面に取付孔との間に介装されるシールリングが設けられる。ボディの外径が、シールリングの外径よりも小さい。
【0009】
この態様によると、ガイド部とボディとにより筒状連結体が構成されるところ、シールリングがガイド部の外周面に設けられるとともに、ボディの外径がシールリングの外径よりも小さくされる。このため、筒状連結体の外径を小さく抑えることができる。その結果、パイロット式電磁弁の小型化が実現でき、その製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パイロット式電磁弁の小型化によるコスト低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電磁弁が対象装置に取り付けられた状態を表す断面図である。
【
図4】変形例1に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
【
図5】変形例2に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
【
図6】電磁弁の対象装置への組付方法を表す図である。
【
図7】変形例3に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、電磁弁が対象装置に取り付けられた状態を表す断面図である。
電磁弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張装置、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電磁弁1は、その冷凍サイクルを構成する対象装置に取り付けられ、冷媒の流れを制御する。
【0014】
電磁弁1は、パイロット式電磁弁であり、主弁2およびパイロット弁4を備える。電磁弁1は、段付円筒状のボディ5とソレノイド6とを軸線方向に組み付けて構成される。ソレノイド6から下方に段付円筒状のガイド部7が延出し、ボディ5と組み付けられて筒状連結体9を構成する。電磁弁1は、ソレノイド6がオフのときに主弁2が閉弁状態となる常閉弁として構成されている。
【0015】
対象装置のハウジング200には、冷媒が流れる通路210と、その通路210に連通する取付孔212が設けられている。電磁弁1は、筒状連結体9が取付孔212に挿入されるようにしてハウジング200に組み付けられる。ソレノイド6のヨーク46の一部がボルト220を介してハウジング200に締結されることで、電磁弁1が対象装置に固定される。電磁弁1は、筒状連結体9が取付孔212に挿抜されることで対象装置に着脱されるいわゆるカートリッジ構造を有する。ボディ5には、通路210の一部を構成する主通路11が設けられる。
【0016】
図2は、電磁弁1の構成を表す断面図である。
ボディ5は、下方に向けて外径が段階的に小さくなる段付円筒状をなす。ボディ5は、基端側の大径部13と先端側の小径部15を有する。ボディ5の基端部(大径部13の上端部)が、ガイド部7の開口端部(下端部)に同軸状に組み付けられている。
【0017】
ボディ5とガイド部7との間(つまり大径部13の内方)には弁室20が形成されている。小径部15の半径方向外側に位置する大径部13の底部には、内外を連通する複数の連通孔14が設けられている。これらの連通孔14は、上流側からの冷媒を導入する導入ポート10として機能する。一方、小径部15の内部通路16の先端(下端)が、下流側へ冷媒を導出する導出ポート12として機能する。
図1にも示したように、導入ポート10は通路210における上流側通路214に連通し、導出ポート12は通路210における下流側通路216に連通する。導入ポート10と導出ポート12とを直接つなぐ通路が主通路11を構成する。
【0018】
ボディ5において、導入ポート10と導出ポート12とをつなぐ流路の中途に弁室20が形成される。弁室20は、導入ポート10に連通する「高圧室」として機能する。小径部15の下端部外周面には、Oリング17(シールリング)が嵌着されている。小径部15の下部内方には通路形成部材18が形成され、通路形成部材18の軸線に沿ってオリフィス19が形成されている。
【0019】
大径部13の底部中央には、小径部15の開口端から円ボス状の主弁座22が突設され、その主弁座22の内方に主弁孔24が形成されている。主弁孔24は、主通路11の一部を構成する。弁室20には、段付円柱状の主弁体26が配設されている。主弁体26が主弁孔24に近接又は離間(主弁座22に着脱)することにより主弁2が開閉される。主弁体26は、ガイド部7に設けられたガイド孔28に摺動可能に支持されている。
【0020】
主弁体26とガイド部7は、主弁孔24と同軸状に配設されている。主弁体26は、ボディ5とガイド部7とに囲まれる空間を弁室20と背圧室29とに区画する。主弁体26は、その外周面がガイド孔28に摺動可能に支持され、軸線方向(主弁2の開閉方向)に安定に動作する。また、主弁体26の中央を軸線方向に貫通する小径のパイロット弁孔30が設けられている。ボディ5と主弁体26との間には、主弁体26を開弁方向に付勢するスプリング32(付勢部材)が介装されている。
【0021】
一方、ソレノイド6は、非磁性のスリーブ34と、スリーブ34の上端開口部を封止するように固定されたコア36と、スリーブ34内でコア36に対向配置されたプランジャ38と、スリーブ34およびコア36に外挿嵌合されたボビン40と、ボビン40に巻回された電磁コイル42と、ボビン40および電磁コイル42を内包するケース44と、を有する。プランジャ38とコア36との間に背圧室45が形成される。
【0022】
ケース44は、耐食性を有する樹脂材の射出成形(「インサート成形」又は「モールド成形」ともいう)により得られる。電磁コイル42は、その射出成形によるモールド樹脂によって被覆されている。ケース44は、そのモールド樹脂からなる。ケース44の外側から電磁コイル42を上下に挟むように断面U字状のヨーク46が設けられている。ヨーク46は、コア36およびプランジャ38とともに磁気回路を形成する磁性体である。
【0023】
ヨーク46の上部とコア36とが、ねじ43により締結されている。それにより、ヨーク46とコア36との当接状態が確保される。ヨーク46の下部から延びるフランジ部47がハウジング200に固定される(
図1参照)。ヨーク46が対象装置に固定されることにより取付孔212が閉止される。なお、変形例においては、ねじ43による締結をしない構成としてもよい。その場合、ヨーク46にねじの挿通孔を設ける必要もない。
【0024】
ケース44の上端開口部には環状のシール収容部48が形成され、Oリング50(シールリング)が嵌着されている。また、ケース44の下端開口部にも環状のシール収容部52が形成され、Oリング54(シールリング)が嵌着されている。それにより、電磁コイル42の内部への外気(水分)の侵入が防止される。
【0025】
スリーブ34は段付円筒状をなし、その下半部が拡径されてガイド部7と連設されている。コア36は段付円柱状をなし、その下端部がスリーブ34の上端部に嵌合し、スリーブ34の上端開口部を封止する。コア36とスリーブ34とはレーザ溶接(外周溶接)により固定されている。プランジャ38は有底円筒状をなし、側部に内外を連通する連通路58が設けられる。
【0026】
プランジャ38とコア36との間の空間は、その連通路58と、プランジャ38の外周面に形成された連通溝(図示せず)を介して背圧室29と連通している。それにより背圧室29の圧力が背圧室45に導入され、プランジャ38に作用する圧力の影響がキャンセルされる。
【0027】
プランジャ38の下端中央部には細径のパイロット弁体62が一体に設けられている。パイロット弁体62は、下部が下方に向かって小径化するテーパ状をなす。パイロット弁体62は、背圧室29に延出し、パイロット弁孔30に近接又は離間してパイロット弁4を開閉する。コア36の下面中央部とプランジャ38との間には、パイロット弁体62を閉弁方向に付勢するスプリング64(付勢部材)が介装されている。
【0028】
主弁体26は、円筒状の本体66の内方に円柱状の弾性体からなる弁部材68を固定したものであり、その弁部材68が主弁座22に着脱することにより主弁2を開閉する。弁部材68の軸線に沿ってパイロット弁孔30が貫通している。パイロット弁孔30の背圧室29側の端部にはパイロット弁座70が形成されている。本体66の周縁部近傍には、背圧室29の内外を連通する小径のリーク通路72が形成されている。
【0029】
ガイド部7は、ボディ5とソレノイド6とを接続する筒状部であり、本実施形態ではスリーブ34と一体成形されている。ガイド部7の外径は、ボディ5の外径よりも大きい。筒状連結体9は、下方に向けて外径が段階的に小さくなる段付円筒形状をなす。ガイド部7の外周面に環状溝74が形成され、Oリング76(シールリング)が嵌着されている。
【0030】
ガイド部7の下端部がボディ5の上端部を挿通する。ガイド部7の下端開口部がやや拡径されて段部を形成する一方、ボディ5の上端部には半径方向外向きに突出するフランジ部78が設けられる。フランジ部78がその段部に係止されることにより、ボディ5とガイド部7との軸線方向の相対的な位置関係が設計どおりに担保される。ガイド部7の開口端が内方に加締められることにより、ボディ5がガイド部7に対して固定されている。すなわち、ボディ5の基端部がガイド部7の開口端部の内側に挿通され、固定されている。
【0031】
このような構成において、ボディ5の外径(最大径)は、Oリング76の外径よりも小さい。より詳細には
図1に示したように、筒状連結体9が取付孔212に取り付けられた際、ボディ5の外径d1がOリング76のシール径d2(Oリング76の弾性変形後の外径)よりも小さくなるように構成されている。
【0032】
電磁弁1が対象装置に組み付けられると、Oリング17,76が筒状連結体9と取付孔212との間に介装されてシール機能を発揮する。Oリング76により、電磁弁1とハウジング200との間隙を介した冷媒の漏洩や外部雰囲気に侵入が防止される。Oリング17により、主弁2の閉弁時における上流側通路214から下流側通路216への冷媒の漏洩が防止される。
【0033】
上流側通路214から取付孔212に導入された冷媒は、導入ポート10を介して弁室20に導入される。主弁2が開弁されることで弁部を経た冷媒は、内部通路16に導かれてオリフィス19を通過することで減圧され、導出ポート12を介して下流側通路216に導出される。
【0034】
すなわち、導入ポート10に導入された圧力P1(「上流側圧力P1」という)は、主通路11において主弁2を経ることで圧力P21(「下流側第1圧力P21」という)となり、さらにオリフィス19を経ることで圧力P22(「下流側第2圧力P22」という)となる。また、弁室20に導入された上流側圧力P1は、リーク通路72を通過することで背圧室29にて中間圧力Ppとなり、パイロット弁4を経ることで下流側第1圧力P21となり、さらにオリフィス19を経ることで下流側第2圧力P22となる。なお、下流側第2圧力P22は、通路210における下流側圧力P2に等しい(
図1参照)。
【0035】
次に、電磁弁1の動作について詳細に説明する。
図3は、電磁弁1の動作を表す図であり、ソレノイド6がオンにされた通電状態を表している。既に説明した
図1は、ソレノイド6がオフにされた非通電状態を表している。
【0036】
図1に示すように、ソレノイド6がオフにされた状態ではコア36とプランジャ38との間に吸引力(ソレノイド力)が作用しないため、スプリング64によってプランジャ38が下方に付勢され、パイロット弁4が閉弁状態となる。このとき、上流側からの冷媒がリーク通路72を介して背圧室29に導入されるため、中間圧力Ppは上流側圧力P1となる。その結果、主弁体26が中間圧力Ppと下流側第1圧力P21の差圧(Pp-P21)により下方に付勢される。それにより主弁2が閉弁状態となり、主通路11が遮断された状態となる。
【0037】
一方、
図3に示すように、ソレノイド6がオンにされるとソレノイド力が作用するため、プランジャ38が上方に付勢され、パイロット弁4が開弁状態となる。このとき、背圧室29の冷媒がパイロット弁孔30を介して下流側に導出されて中間圧力Ppが低下するため、主弁体26が上流側圧力P1と中間圧力Ppとの差圧(P1-Pp)により上方に付勢される。それにより、主弁2が全開状態となる。その結果、図示のように主通路11が開放される。すなわち、導入ポート10から導入された冷媒は、主に主通路11を通って導出ポート12から導出される。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態では、Oリング76がガイド部7の外周面に設けられるとともに、ボディ5の外径がOリング76の外径よりも小さい。このため、筒状連結体9の外径を小さく抑えることができる。ボディ5の外径をガイド部7の外径よりも小さくしたことが筒状連結体9の小型化に大きく寄与している。仮にボディ5の外径をガイド部7の外径よりも大きくすると、筒状連結体9が全体として大きくなるだけでなく、冷媒の外部漏れを防止するためにボディ5およびガイド部7の双方の外周面にOリング(シールリング)を設ける必要がある。この点、本実施形態では筒状連結体9を下方に向けて外径が段階的に小さくなる形状とし、取付孔212の開口端から遠い側であるボディ5の外径をガイド部7の外径よりも小さくした。このため、ガイド部7側にのみシールリングを設ければ足り、筒状連結体9をコンパクトに構成できる。このような構成によりボディ5の大径部13の外径が小さくなるため、小径部15との外径差も小さくなる。このため、ボディ5の素材として外径の小さい丸棒材を選択でき、その削り代を少なくすることができる。さらに、ヨーク46をハウジング200に固定することとしたため、電磁弁1と対象装置との接続部材を別途設ける必要がない。これらの結果、電磁弁1の小型化が実現でき、その製造コストを低減できる。
【0039】
また、スリーブ34とガイド部7とを一体成形するとともに、Oリング76をボディ5ではなくガイド部7側に設けたことで、筒状連結体9における外部漏れ防止用のシール箇所を少なくできる。Oリング76の外径を小さくできるため、電磁弁1に要する耐圧荷重を小さく抑えることもできる。その結果、フランジ部47の厚みを小さく抑えることもでき、そのことが電磁弁1の小型化にもつながる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0041】
[変形例]
図4は、変形例1に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電磁弁101は、ソレノイドの構造が上記実施形態とやや異なる。電磁弁101は、ボディ5とソレノイド106とを組み付けて構成される。ソレノイド106は、コア136およびプランジャ138を含む。
【0042】
プランジャ138の下面中央部にパイロット弁体162が一体に設けられている。パイロット弁体162は、下方に向かって小径化するテーパ状をなしている。一方、コア136は、上端部がヨーク46の上部を貫通し、板ばね143によりヨーク46と固定されている。板ばね143の下端部がヨーク46の上面に接合され、板ばね143の上端部が、コア136の上端部外周面に設けられた環状溝(図示略)に弾性的に嵌合する。板ばね143は、いわゆるスナップフィットとして機能する。
【0043】
本変形例においてもボディ5の外径がOリング76の外径よりも小さい。このため、筒状連結体9の外径を小さく抑えることができる。このため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
図5は、変形例2に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電磁弁201は、対象装置への組付構造が上記実施形態と異なる。電磁弁201は、ボディ5とソレノイド206とを組み付けて構成される。取付孔212の開口端を内方に加締めることにより、筒状連結体9を対象装置のハウジング202に固定している。ハウジング202の上面には、取付孔212を環囲するように環状溝230が設けられ、Oリング232(シールリング)が嵌着されている。ハウジング202の上面とヨーク46の下面との間にOリング232が介装されることで、外部雰囲気から加締め部への水分等の侵入が防止される。
【0045】
図6は、電磁弁201の対象装置への組付方法を表す図である。
本変形例では、対象装置に対し、電磁弁201を段階的に組み付ける方法を採用する。すなわち、電磁弁201の構成部品として、弁駆動ユニット270とコイルユニット272とを個別に組み立てておく。弁駆動ユニット270は筒状連結体9(ボディ5,ガイド部7)、主弁体26、スリーブ34、プランジャ38およびコア36を含む組立体であり、コイルユニット272はボビン40、電磁コイル42、ケース44およびヨーク246を含む組立体である。
【0046】
まず、弁駆動ユニット270をハウジング202に組み付ける。このとき、筒状連結体9を取付孔212に挿入した後、取付孔212の開口端213(環状溝230の内壁)を内方に加締め、弁駆動ユニット270をハウジング202に固定する。続いて、環状溝230にOリング232を嵌着させた後、コイルユニット272を弁駆動ユニット270に組み付ける。
【0047】
このとき、弁駆動ユニット270の上半部(スリーブ34およびコア36)をボビン40に挿通する。その後、ねじ243によりヨーク246をコア36に締結することで、コイルユニット272を弁駆動ユニット270に固定する。このようにして、コイルユニット272が弁駆動ユニット270に組み付けられると同時に、電磁弁201が対象装置に組み付けられる。
【0048】
本変形例においてもボディ5の外径(最大径)がOリング76の外径(シール径)よりも小さい。このため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ガイド部7をハウジング202に対して加締め接合するため、ヨーク246について耐圧性を考慮する必要がない。このため、ヨーク246の厚みを小さくすることで、ソレノイド206ひいては電磁弁201のさらなる小型化を実現することもできる。
【0049】
図7は、変形例3に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電磁弁301は、ボディとガイド部との組付構造が上記実施形態と異なる。電磁弁301は、ボディ305とソレノイド306とを組み付けて構成される。ガイド部307は、スリーブ34と一体に設けられる。ボディ305とガイド部307とにより筒状連結体309が構成される。
【0050】
ガイド部307の下端部がボディ305の上端部(大径部313)に挿通され、その上端部を内方に加締めることによりガイド部307とボディ305とが固定されている。すなわち、本変形例では上記実施形態とは異なり、ボディ305がガイド部307の外側に組み付けられる。このような構成においても、ボディ305の外径(最大径)がOリング76の外径(シール径)よりも小さい。このため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
[他の変形例]
上記実施形態では、ボディ5とガイド部7とを加締め接合する例を示した。変形例においては、ボディおよびガイド部の一方に雄ねじを設け、他方に雌ねじを設けることにより、これらのねじにより両者を固定してもよい。あるいは、ボディとガイド部とを圧入により接合してもよい。
【0052】
上記実施形態では、電磁弁1として、ソレノイド6がオフのときに主弁2が閉弁状態となる常閉弁を示した。変形例においては、電磁弁をソレノイドがオフのときに主弁が全開状態となる常開弁としてもよい。その場合、コアとプランジャとの位置関係が上記実施形態とは上下逆になる(例えば特開2019-7572号公報等参照)。このため、コアとガイド部とを一体成形してもよい。
【0053】
上記実施形態では、ガイド部がスリーブと一体成形される構成を示した。変形例においては、ガイド部をガイド部材としてスリーブと独立させてもよい。そして、ガイド部材とスリーブとを組み付けてもよい。その場合、ガイド部材とスリーブとの間にシールリングを介装させるのが好ましい。電磁弁を常開弁とする場合、ガイド部をガイド部材としてコアと独立させ、両者を組み付けてもよい。その場合、ガイド部材とコアとの間にシールリングを介装させるのが好ましい。
【0054】
上記実施形態では、電磁弁1として、冷凍サイクルに適用されて冷媒の流れを制御する制御弁を例示した。変形例においては、給湯システムにおいて湯水の流れを制御する制御弁など、その他の装置において流体の流れを制御する弁としてもよい。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 電磁弁、2 主弁、4 パイロット弁、5 ボディ、6 ソレノイド、7 ガイド部、9 筒状連結体、10 導入ポート、11 主通路、12 導出ポート、16 内部通路、17 Oリング、19 オリフィス、20 弁室、22 主弁座、24 主弁孔、26 主弁体、28 ガイド孔、29 背圧室、30 パイロット弁孔、34 スリーブ、36 コア、38 プランジャ、42 電磁コイル、44 ケース、45 背圧室、46 ヨーク、58 連通路、62 パイロット弁体、70 パイロット弁座、72 リーク通路、74 環状溝、76 Oリング、101 電磁弁、106 ソレノイド、136 コア、138 プランジャ、200 ハウジング、201 電磁弁、202 ハウジング、206 ソレノイド、210 通路、212 取付孔、214 上流側通路、216 下流側通路、232 Oリング、246 ヨーク、270 弁駆動ユニット、272 コイルユニット、301 電磁弁、305 ボディ、306 ソレノイド、307 ガイド部、309 筒状連結体。