(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065689
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ホーム柵制御装置
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174682
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩岡 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】新井 涼平
(72)【発明者】
【氏名】金森 崇
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101AA03
3D101AA26
3D101AA32
3D101AB08
3D101AB13
(57)【要約】
【課題】終電後から初電前までの夜間の時間帯において、ホーム柵制御装置によるホーム柵の制御方式を切り替えることで、安全性を確保しつつ、消費電力を低減する。
【解決手段】ホーム柵制御装置は、運用モードと、前記運用モードに比べて機能を限定することで消費電力を抑える節電モードと、を有し、駅のプラットホームに停車した列車の車両ドアごとに対応して配置されるホーム柵を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運用モードと、前記運用モードに比べて機能を限定することで消費電力を抑える節電モードと、を有し、駅のプラットホームに停車した列車の車両ドアごとに対応して配置されるホーム柵を制御するホーム柵制御装置。
【請求項2】
前記節電モードにおいて、前記ホーム柵を開放、又は閉鎖する速度を前記運用モードに比べて下げる請求項1に記載のホーム柵制御装置。
【請求項3】
非接触で支障物を検出する支障物センサを有し、前記運用モードにおいて前記支障物センサを稼働させ、前記節電モードにおいて前記支障物センサを休止させる請求項1に記載のホーム柵制御装置。
【請求項4】
前記節電モードにおいて前記ホーム柵の開放により通行可能になる通路を前記運用モードに比べて狭くする請求項1に記載のホーム柵制御装置。
【請求項5】
前記車両ドアごとに複数の前記ホーム柵が対応して配置され、複数の前記ホーム柵によって対応する一の通路が閉鎖され、前記運用モードにおいて前記一の通路に対応する複数の前記ホーム柵の全部をそれぞれ稼働させ、前記節電モードにおいて前記一の通路に対応する複数の前記ホーム柵のうち一部のみを稼働させる請求項1に記載のホーム柵制御装置。
【請求項6】
前記節電モードにおいて前記ホーム柵が閉鎖したと判断する条件を前記運用モードに比べて緩くする請求項1に記載のホーム柵制御装置。
【請求項7】
前記運用モードにおいて周期的に複数の前記ホーム柵のそれぞれと通信し、前記節電モードにおいて前記運用モードに比べて長い周期で複数の前記ホーム柵のそれぞれと通信する請求項1に記載のホーム柵制御装置。
【請求項8】
周囲への通知手段を有し、前記運用モードにおいて前記通知手段を稼働させ、前記節電モードにおいて前記通知手段の出力を前記運用モードに比べて抑制する請求項1に記載のホーム柵制御装置。
【請求項9】
前記節電モードにおいて前記通知手段を休止させる請求項8に記載のホーム柵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーム柵制装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駅等のプラットホームに、利用者の安全を確保するために設置される可動ホーム柵(以下単に「ホーム柵」という)における技術が知られている。例えば特許文献1は、扉体(ドア)のホーム側又は軌道側への倒れを防ぐ倒れ止め手段を備える可動ホーム柵であって、消費電力が小さい可動ホーム柵に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術において、実際に運用されるホーム柵の制御方式では、例えば乗降客のいない、終電後から初電前までの非運用時間帯(夜間等)も運用時間帯(日中等)と同様の制御で動作しているため、夜間も日中と同程度の電力を消費している。夜間であっても作業員・保守員の夜間作業は実施され、また、工事車両に対する安全性の確保は必要であり、単純にホーム柵の電源を遮断することはできないが、SDGsの観点から、夜間と日中とで異なる制御方式を採用することで省電力化することが望ましい。
【0005】
このような上記の背景に鑑み、本発明は、終電後から初電前までの夜間の時間帯において、ホーム柵制御装置によるホーム柵の制御方式を切り替えることで、安全性を確保しつつ、消費電力を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、運用モードと、前記運用モードに比べて機能を限定することで消費電力を抑える節電モードと、を有し、駅のプラットホームに停車した列車の車両ドアごとに対応して配置されるホーム柵を制御するホーム柵制御装置、を第1の態様として提供する。
【0007】
第1の態様のホーム柵制御装置によれば、ホーム柵の消費電力の異なる2つの制御方式を切り替えることで、安全性を確保しつつ、消費電力を低減することができる。
【0008】
第1の態様のホーム柵制御装置において、前記節電モードにおいて、前記ホーム柵を開放、又は閉鎖する速度を前記運用モードに比べて下げる、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第2の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、ホーム柵の開放又は閉鎖する速度を運用モードに比べて下げることで、消費電力を低減することができる。
【0010】
第1の態様のホーム柵制御装置において、非接触で支障物を検出する支障物センサを有し、前記運用モードにおいて前記支障物センサを稼働させ、前記節電モードにおいて前記支障物センサを休止させる、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0011】
第3の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、支障物センサを休止させることで、消費電力を低減することができる。
【0012】
第1の態様のホーム柵制御装置において、前記節電モードにおいて前記ホーム柵の開放により通行可能になる通路を前記運用モードに比べて狭くする、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0013】
第4の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、ホーム柵の開放により通行可能になる通路を運用モードに比べて狭くすることで、消費電力を低減することができる。
【0014】
第1の態様のホーム柵制御装置において、前記車両ドアごとに複数の前記ホーム柵が対応して配置され、複数の前記ホーム柵によって対応する一の通路が閉鎖され、前記運用モードにおいて前記一の通路に対応する複数の前記ホーム柵の全部をそれぞれ稼働させ、前記節電モードにおいて前記一の通路に対応する複数の前記ホーム柵のうち一部のみを稼働させる、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0015】
第5の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、一の通路に対応する複数のホーム柵のうち一部のみを稼働させることで、消費電力を低減することができる。
【0016】
第1の態様のホーム柵制御装置において、前記節電モードにおいて前記ホーム柵が閉鎖したと判断する条件を前記運用モードに比べて緩くする、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0017】
第6の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、ホーム柵が閉鎖したと判断する条件を運用モードに比べて緩くし、制御する工程数を減らすことで、消費電力を低減することができる。
【0018】
第1の態様のホーム柵制御装置において、前記運用モードにおいて周期的に複数の前記ホーム柵のそれぞれと通信し、前記節電モードにおいて前記運用モードに比べて長い周期で複数の前記ホーム柵のそれぞれと通信する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0019】
第7の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、運用モードに比べて長い周期で通信することで、消費電力を低減することができる。
【0020】
第1の態様のホーム柵制御装置において、周囲への通知手段を有し、前記運用モードにおいて前記通知手段を稼働させ、前記節電モードにおいて前記通知手段の出力を前記運用モードに比べて抑制する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0021】
第8の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、通知手段の出力を運用モードに比べて抑制することで、消費電力を低減することができる。
【0022】
第8の態様のホーム柵制御装置において、前記節電モードにおいて前記通知手段を休止させる、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
【0023】
第9の態様のホーム柵制御装置によれば、節電モード時に、通知手段を休止させることで、消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、終電後から初電前までの夜間等の非運用時間帯において、ホーム柵制御装置によるホーム柵の制御方式を切り替えることで、安全性を確保しつつ、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】ホーム柵制御システム1におけるネットワーク構成、ハードウェア構成、及び部品構成を例示する図。
【
図3】ホーム柵制御装置において、運用モード及び節電モードによる制御機能の比較リストを例示する図。
【
図4】駅のプラットホームにおけるホーム柵の開放及び閉鎖を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.構成
図1は、ホーム柵制御システム1を例示する図である。ホーム柵制御システム1は、例えば、駅のプラットホームにおけるホーム柵を制御するシステムである。ホーム柵制御システム1は、ホーム柵制御装置10a、ホーム柵制御装置10b、及び上位装置20を有する。この例においてホーム柵制御装置10aは、ホーム柵を制御する情報処理装置である。ホーム柵制御システム及びホーム柵制御装置は、駅のプラットホームに停車した列車の車両ドアごとに対応して配置されるホーム柵を制御するシステム及び情報処理装置のことをいう。この例においてホーム柵は、列車の発着に合わせて、利用者が安全に列車に乗り降りするために、落下の防止及び通路の確保(又は通行の制限)といった目的で設置される構造物又はドアのことをいう。また、この例において車両ドアとは、利用者が列車に乗り降りするために列車の車両に設けられたドアをいう。なお、ホーム柵制御装置10a及びホーム柵制御装置10bは、いずれもホーム柵制御装置の一例であり、いずれも同じ構成を有する。そのため、
図1において、ホーム柵制御装置10bの構成は、一部省略されて図示されている。以下において、ホーム柵制御装置10a及びホーム柵制御装置10bをホーム柵制御装置10と総称する。上位装置20は、ホーム柵制御装置10を管理するための情報処理装置である。この例において管理とは、全体の統制、といった概念を含み、個々のホーム柵制御装置10に対して、ホーム柵制御システム1を成り立たせるための機能を担うことを意味する。ホーム柵制御装置10間、又は、上位装置20及びホーム柵制御装置10間において、各装置は通信線90によって電気的な通信を行う。この例において各装置とはホーム柵制御装置10(ホーム柵制御装置10a及びホーム柵制御装置10bを含む)及び上位装置20である。
【0027】
ホーム柵制御装置10aは、制御部11、ドア部12、駆動装置13、支障物センサ14、及び通知部15を有する。ホーム柵制御装置10aにおいて、制御部11は、各種の制御を行う。この例において制御部11は、ドア部12、駆動装置13、支障物センサ14、及び通知部15に対して、電子的及び工学的な接続を有しており、これらの接続を介して、部品、機器、及び装置を制御することができる。ドア部12は、移動方向に移動することで利用者が通行するための通路を開放又は閉鎖する。駆動装置13は、各種の制御に応じて、ドア部12を移動させる機構を有する。支障物センサ14は、ドア部12等を各種制御する上で、ドアの移動を妨げたり、接触の危険となったりするような支障物を非接触で検知(検出)する。この例において、支障物とは、例えば人や物である。通知部15は、支障物センサ14が検知した支障物が人である場合、事故防止のための警報を通知したり、あるいは、支障物が物である場合、周囲の係員(又は利用者)に対して支障物を排除するための要請を通知したりする。なお、通知部15は、通知手段の一例である。
【0028】
また、制御部11は、各種の制御を行う上で、制御方式(又は単に「モード」)を切り替えることで、実際の用途に適したホーム柵の制御を可能にする。この例において制御方式とは、運用モードと、運用モードに比べて機能を限定することで消費電力を抑える節電モードである。この例において運用モードは、駅等において、例えば乗降客のいる運用時間帯(日中等)に採用される。一方、節電モードは、例えば乗降客のいない、終電後から初電前までの非運用時間帯(夜間等)に採用される。なお、夜間であっても作業員・保守員の夜間作業は実施されること、また、工事車両に対する作業員・保守員の安全性を確保することから、節電モードは、システム自体の停止(電源の遮断等)をするものではなく、一部の機能が有効な状態を意味する。
【0029】
上位装置20は、制御部21を有する。上位装置20において、制御部21は、各種の制御を行う。この例において制御部21は、個々のホーム柵制御装置10に対して、ホーム柵制御システム1を成り立たせるための管理装置としての機能構成を含んでもよい。また、制御部21は、直接的にホーム柵を制御するためのホーム柵制御装置10としての機能構成を含んでもよい。
【0030】
図2は、ホーム柵制御システム1におけるネットワーク構成、ハードウェア構成、及び部品構成を例示する図である。ホーム柵制御システム1は、ホーム柵制御装置10a、上位装置20、及びネットワーク9を有する。この例において、ホーム柵制御装置10a及び上位装置20は、ネットワーク9を介して接続される。より具体的には、ネットワーク9は、プラットホームに停車した列車の車両ドアごとに対応して配置される複数のホーム柵制御装置10(10aだけでなく、例えば10b、10c、10d等(図示略)といった装置)、及び、上位装置20間でネットワークを構成する。ネットワーク9は、イントラネット等のコンピュータネットワークである。
【0031】
ホーム柵制御装置10aは、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、ストレージ103、及び通信IF104を有するコンピュータであり、例えば組み込みシステム用のコンピュータである。CPU101は、プログラムに従って各種の演算を行うプロセッサである。メモリ102は、CPU101がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory)を含む。ストレージ103は、各種のデータ及びプログラムを記憶する補助記憶装置であり、例えばSSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disc Drive)を含む。通信IF104は、所定の通信規格(例えばイーサネット(登録商標))に従って他の装置と通信する装置であり、例えばNIC(Network Interface Card)を含む。
【0032】
この例においてストレージ103が記憶するプログラムには、コンピュータをホーム柵制御システム1におけるクライアントとして機能させるためのプログラム(以下「クライアントプログラム」という。)が含まれる。CPU101がクライアントプログラムを実行している状態において、CPU101、メモリ102、ストレージ103、及び通信IF104が制御部11の一例である。
【0033】
また、ホーム柵制御装置10aは、扉体105、モータ106、ベルト107、赤外線センサ108、スピーカ109、及び表示装置110といった電子機械を含む構成を有する。この例において電子機械とは、制御部11(CPU101)が実行するプログラムに応じて、各種動作を行うために、電子的及び工学的に制御された装置である。扉体105は、利用者を通行規制するための開閉機構を有する構造物である。扉体105の形状は、扉状の形に限定されるものでもなく、例えばロープ又はバー等の形状であってもよい。モータ106は、利用者のためにホーム柵を開閉するための駆動機構を有する装置であり、例えば電磁モータ又は静電モータ等を含む。ベルト107は、例えば扉体105を開閉させる場合に、モータ106の駆動を伝達させるための駆動部品の一つであり、例えばタイミングベルト又はタイミングプーリ等を含む。赤外線センサ108は、例えば扉体105を各種制御する上で、移動を妨げたり、接触の危険となったりするような支障物を検知する装置であり、例えば量子型赤外線検出器又は熱型赤外線検出器等を含む。スピーカ109及び表示装置110は、それぞれ事故防止のための警報等の情報を発報(通知)又は表示する装置であり、例えばブザー又はサイレン等、あるいは、パトライト(登録商標)又はディスプレイ等を含む。
【0034】
この例において扉体105がドア部12の一例であり、モータ106及びベルト107が駆動装置13の一例であり、赤外線センサ108が支障物センサ14の一例であり、スピーカ109及び表示装置110が通知部15の一例である。
【0035】
上位装置20は、CPU201、メモリ202、ストレージ203、通信IF204、入力装置205、及び表示装置206を有するコンピュータであり、例えば組み込みシステム用のコンピュータ、パーソナルコンピュータ、又はメインフレームである。CPU201は、プログラムに従って各種の演算を行うプロセッサである。メモリ202は、CPU201がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置であり、例えばRAMを含む。ストレージ203は、各種のデータ及びプログラムを記憶する補助記憶装置であり、例えばSSD又はHDDを含む。通信IF204は、所定の通信規格(例えばWiFi(登録商標))に従って他の装置と通信する装置であり、例えば無線チップを含む。入力装置205は、上位装置20に情報を入力するための装置であり、例えばタッチスクリーン、キーボード、又はポインティングデバイスを含む。表示装置206は情報を表示する装置であり、例えば有機ELディスプレイを含む。
【0036】
この例においてストレージ203が記憶するプログラムには、コンピュータをホーム柵制御システム1におけるサーバとして機能させるためのプログラム(以下「サーバプログラム」という。)が含まれる。CPU201がサーバプログラムを実行している状態において、CPU201、メモリ202、ストレージ203、通信IF204、入力装置205、及び表示装置206が制御部21の一例である。
【0037】
2.動作
図3は、ホーム柵制御装置において、運用モード及び節電モードによる制御機能の比較リストを例示する図である。この例において比較リストは、制御機能に対して、運用モード及び節電モードが行う制御の相対的な比較を含む。以下の説明は、
図3の運用モード及び節電モードにおける制御機能に沿った動作例である。この例においてホーム柵制御装置10は複数の機能を有しており、各機能において節電モードでは運用モードよりも消費電力を低減した動作を行う。以下では、各機能について節電モードにおける動作を説明する。
【0038】
(1)ホーム柵を開放/閉鎖する速度
ホーム柵制御装置10は、節電モードにおいてホーム柵を開放又は閉鎖する速度を運用モードに比べて下げる。この例においてホーム柵制御装置10は、運用モードの場合、日中に駅のプラットホームに停車した列車の車両ドアごとに対応した速度でホーム柵を制御する必要がある。列車等の発着は時刻表によってコントロールされているため、利用者の乗降を円滑に行うために、例えば、運用モードにおいてホーム柵制御装置10は、ホーム柵を開放又は閉鎖する速度を毎秒40cmと設定してもよい。一方で、夜間で利用者がいない時、節電モードにおいてホーム柵制御装置10は、ホーム柵を開放又は閉鎖する速度を毎秒20cmと設定してもよい。この場合、ホーム柵の開放速度又は閉鎖速度は、例えばモータ106の回転数に関係するため、回転数を下げ、確実に駆動装置13からホーム柵に動力を伝えることで、エネルギーロスによる消費電力を抑えることができる。
【0039】
(2)障害物センサ
ホーム柵制御装置10は、非接触で支障物を検出する支障物センサを有する。この例において支障物センサ14又は赤外線センサ108は、支障物センサの一例である。ホーム柵制御装置10は、運用モードにおいて支障物センサを稼働させ、節電モードにおいて支障物センサを休止させる。この例において夜間などの利用者がいない場合、利用者の荷物や利用者自身といった支障物によるトラブルの危険性はないため、たとえ支障物センサを休止させた場合でも問題なく消費電力を抑えることができる。
【0040】
図4は、駅のプラットホームにおけるホーム柵の開放及び閉鎖を例示する図である。この例においてホーム柵の開放とは、ドア部121とドア部122とが、それぞれ移動方向に移動することで利用者が通行するための通路A1が開いている状態をいう。また、ホーム柵の閉鎖とは、ドア部121とドア部122とが、接触(又は接近)し、利用者が通行するための通路A1が閉じられている状態をいう。なお、
図4において、通路とは、例えば通路A1の両方向矢印の先端から先端までの幅(横幅)を指す。
【0041】
(3)通路の広さ
ホーム柵制御装置10は、節電モードにおいてホーム柵の開放により通行可能になる通路を運用モードに比べて狭くする。この例においてホーム柵制御装置10は、ホーム柵を閉鎖状態から開放状態に制御する場合、運用モードにおける通路A1の、利用者から見て横方向の長さ(すなわち、上述した横幅)を、例えば3mと設定し、節電モードにおける通路A1の上述した長さを、例えば1.5mと設定する。これによってホーム柵を1回開放することによるモータの駆動量(回転数)を減らし、消費電力を抑えることができる。
【0042】
(4)ホーム柵の稼働数
ホーム柵制御装置10において、駅のプラットホームに停車した列車の車両ドアごとに複数のホーム柵が対応して配置され、さらにその複数のホーム柵によって対応する一の通路が閉鎖又は開放される。
図4において、ドア部121及びドア部122は、複数のホーム柵の一例である。また、通路A1は、一の通路の一例である。ホーム柵制御装置10は、運用モードにおいて一の通路に対応する複数のホーム柵の全部をそれぞれ稼働させ、節電モードにおいて一の通路に対応する複数のホーム柵のうち一部のみを稼働させる。すなわち
図4において、ホーム柵制御装置10は、ホーム柵を開放状態から閉鎖状態に制御する場合(又は閉鎖状態から開放状態に制御する場合)、運用モードにおいてドア部121及びドア部122のそれぞれを移動方向に対して移動させ、節電モードにおいて例えばドア部121のみを移動方向に対して移動させ、ドア部122は移動方向に対して静止させたままにする。これによって複数のホーム柵が対応する一の通路を1回閉鎖(又は開放)することによるホーム柵全体のモータの駆動量(回転数)を減らし、消費電力を抑えることができる。
【0043】
(5)ホーム柵の閉鎖条件
ホーム柵制御装置10は、節電モードにおいてホーム柵が閉鎖したと判断する条件を運用モードに比べて緩くする。この例においてホーム柵の閉鎖とは、例えば
図4より、ドア部121とドア部122とが、接触(又は接近)し、利用者が通行するための通路A1が閉じられている状態を指す。ホーム柵制御装置10は、運用モードにおいて、例えばホーム柵を開放状態から閉鎖状態に移行させる際に、モータの回転数の記録を基に、現在位置から、閉鎖位置までの距離を算出し、その距離に対応する回転回数分、モータを稼働させる制御を行う。例えばドア部121及び122といった2枚扉によるドアの両方を制御する場合、閉鎖時に、ドア同士の接触によるリバウンド(反動)が、モータの回転速度に影響を与えるため、その回転速度の変化を、ホーム柵が閉鎖したと判断する条件(閉鎖条件)としてもよい。この時、例えばベルトの摩耗や、モータの劣化による誤差等によって、算出した距離に対して、実際にドアを移動させた距離が達していない場合、モータの回転速度に影響が出ない(ドア同士が接触しない)ため、さらにモータを稼働させ、ホーム柵を閉鎖位置まで移動させる必要がある。しかし、夜間の利用者がいない時間帯の場合、たとえホーム柵が厳密に閉鎖されていなくても、危険性は少ないと判断できるため、ホーム柵制御装置10は、節電モードにおいて、モータがこれ以上回転しなくなるまで、再度モータを稼働させるような制御を行わない。あるいは単にドア同士の隙間の幅を、ホーム柵が閉鎖したと判断する条件としてもよく、運用モードにおいて、隙間の幅を10mm以下とし、節電モードにおいて、隙間の幅を100mm以下としてモータを制御してもよい。つまりいずれにおいても、閉鎖条件を緩くし、制御する工程数を減らすことで、消費電力を抑えることができる。
【0044】
(6)通信周期
ホーム柵制御装置10は、複数のホーム柵のそれぞれと通信する。この例においてホーム柵とは、例えば扉体105単体を指すのではなく、あくまで通信可能な制御部を有するホーム柵制御装置10等を含む概念である。ホーム柵制御装置10は、運用モードにおいて周期的に複数のホーム柵のそれぞれと通信し、節電モードにおいて運用モードに比べて長い周期で複数のホーム柵のそれぞれと通信する。この例においてホーム柵制御装置10は、ホーム柵の時刻同期や情報共有を行うために、それぞれのホーム柵に対して、周期的に通信を行ってもよい。あるいは、上位装置20において、例えばホーム柵制御装置10a等に対して情報を要求するPull型制御のような情報共有を行うために、通信線90を介して、周期的に複数のホーム柵のそれぞれと通信を行ってもよい(図示略)。その場合、通信頻度(通信周期)を設定してもよく、例えば運用モードにおいて通信頻度を15分に1回とし、節電モードにおいて通信頻度を1時間に1回としてもよい。このように通信頻度を減らす(通信周期を長くする)ことで、消費電力を抑えることができる。
【0045】
(7)通知
ホーム柵制御装置10は、警告を行うための周囲への通知手段を有する。この例において通知部15、スピーカ109、又は表示装置110は、通知手段の一例である。ホーム柵制御装置10は、運用モードにおいて通知手段を稼働させ、節電モードにおいて通知手段の出力を運用モードに比べて抑制する。この例において通知手段の出力とは、スピーカ109の音量又は表示装置110としてのパトランプ(登録商標)の光量である。この場合、夜間であれば日中に比べ利用者の雑踏もなく、プラットホームも消灯されているため、仮に通知手段が出力を抑制した状態で稼働した場合であっても、必要な警報音が周囲の雑音に紛れて聞こえなかったり、ランプの光が他の照明機器によって遮られたりするようなことがない。このように通知手段の出力を抑制することで、安全面に影響なく、消費電力を抑えることができる。
【0046】
ホーム柵制御装置10は、節電モードにおいて通知手段を休止させてもよい。この場合、例えば夜間工事が終わってから始電までの時間帯などで、予め人が来ないと分かっている状況で、消費電力を抑えることができる。
【0047】
以上より、本発明の一様態によれば、終電後から初電前までの夜間の時間帯において、ホーム柵制御装置10によるホーム柵の制御方式を切り替えることで、安全性を確保しつつ、消費電力を低減することができる。また、上記実施形態において、節電モードによる制御は、あくまで安全性の確保を阻害するものではなく、利用状況や管理状況に応じて、各種制御機能を自由に設定してもよい。また、節電モードにおいて、ホーム柵制御装置10は、上記(1)~(7)における制御機能の全部を適用してもよいし、これらのうちユーザ(管理者)により選択された一部(1又は複数)のみを適用してもよい。
【0048】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0049】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下で説明する事項のうち2つ以上の事項が組み合わされて適用されてもよい。
【0050】
(1)ホーム柵制御装置
ホーム柵制御装置10aは、実施形態において例示した扉体105、モータ106、ベルト107、赤外線センサ108、スピーカ109、及び表示装置110といった表示装置110電子機械としての装置とは、独立した装置であってもよい。この例においてホーム柵は、ホーム柵制御装置10a、又は、電子機械としての装置全体もしくは一部のみを含む概念であってもよい。
【0051】
(2)上位装置
上位装置20は、個々のホーム柵制御装置10を管理するための管理装置であってもよいし、直接的にホーム柵を制御する制御装置であってもよい。この例において上位装置20は、個々のホーム柵制御装置10を管理するために、Pull型及びPush型の制御方法又は通信方法を採用してもよい。より具体的には、上位装置20は、個々のホーム柵制御装置10に対して、ホーム柵制御装置10が有する動作記録(不具合記録)を収集及び共有するために、要求信号を送信(Pull型)したり、時刻同期のために、時刻情報を配信(Push型)したりしてもよい。この場合、
図1及び
図2において、上位装置20は、通信線90を介してホーム柵制御装置10と接続されており、システム全体として、ネットワーク9を構築している。この例において通信線90は、
図1のように、上位装置20及び隣接するホーム柵制御装置10b間と、それぞれ隣接するホーム柵制御装置10間(ホーム柵制御装置10a及びホーム柵制御装置10b)とを接続し、ネットワーク9を構築してもよい。より具体的には、上位装置20を起点として、個々のホーム柵制御装置10と通信を行う場合、全体への通信なのか、又は、対象装置を限定する通信なのかに応じて、通信線90を介して個々のホーム柵制御装置10が、通信の中継又はリレーを行うといったネットワーク制御を行ってもよい。なお、制御方法、通信方法、及びネットワーク構築(制御)の形態は、これらに限らず、どのようなものが採用されてもよい。また、
図1では、上位装置20は、駅等のプラットホームにおいて、ホーム柵制御装置10の近傍に配置される様子が表されているが、中央制御室等の遠隔に設置されてもよく、設置場所は限定されない。
【0052】
(3)その他
ホーム柵制御システム1におけるハードウェア構成は実施形態において例示したものに限定されない。要求される機能を実現できるものであれば、ホーム柵制御システム1はどのようなハードウェア構成を有していてもよい。例えば、物理的に複数の装置が協働してホーム柵制御装置10a又は上位装置20として機能してもよい。上位装置20は物理サーバでもよいし、仮想サーバ(いわゆるクラウドを含む)であってもよい。また、機能要素とハードウェアとの対応関係は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、実施形態においてホーム柵制御装置10aに実装されるものとして説明した機能の少なくとも一部が上位装置20に実装されてもよいし、反対に上位装置20に実装されるものとして説明した機能の少なくとも一部がホーム柵制御装置10aに実装されてもよい。また、
図2に示した構成の一部は省略されてもよい。
【0053】
ホーム柵の種類は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、実施形態における扉体105の代わりに、ロープ又はバーを有し、ロープ又はバーの昇降によって通路の確保(又は通行の制限)を可能にする昇降ロープ式ホーム柵又は昇降バー式ホーム柵等であってもよい。この例においてロープ又はバーの昇降は、ロープ又はバーが接続する支柱等の伸縮によって可能とする構成としてもよく、ロープ又はバーの移動方向はこの支柱等の伸縮方向としてもよい。また、ロープ又はバーの昇降によって開放又は閉鎖する通路A1の場合について、節電モードにおいて、運用モードに比べて通路A1が狭くなるように、ロープ又はバーを停止させる高さを調整する構成を有してもよい。すなわち、ホーム柵制御装置10は、節電モードのときに、通路A1の、上述した横方向の長さに代えて、又は加えて縦方向の長さを、運用モードに比べて短くしてもよい。また、ホーム柵が閉鎖(開放)したと判断する条件として、この高さ又は支柱等の位置を採用してもよい。また、一の通路に対応する複数のロープ又はバーによってホーム柵を構成してもよい。また、複数の扉体105を1つの装置が制御するマルチドア対応ホームドアといったホーム柵や、2重(多重)引き戸の扉体105を有する大開口ホーム柵といったホーム柵であってもよい。その他、扉体105の軽量化やスマート化等も、組み合わされて適用されてもよい。
【0054】
図3に示す制御機能及び比較リストはあくまで一例を示すものであり、ホーム柵制御システム1の制御機能又は限定機能はこれに限定されない。また、比較リストの節電モードにおいて、消費電力を抑えるために、機能を限定して制御する場合、安全が損なわれないかどうかの範囲を管理者が定義し、制御機能を設定してもよい。あるいは、予め、他の駅又は当該駅で利用又は設定された節電モードの制御機能を教師データとして与えた学習済みの機械学習装置が、その日の時刻表や夜間工事のスケジュール等に応じて、最適な節電モードの制御機能を提案及び管理する構成を有してもよい。なお、路線全体の各駅(つまり複数駅)における機械学習装置が、情報を共有することで、単一駅だけでなく、路線全体の各駅のホーム柵制御システム1において、最適な省電力化を図ることができる。なお、ホーム柵制御システム1における駅とは、列車だけでなく、バス等が停車するためのプラットホームを有する場所であって、ホーム柵等を有していれば、どのような場所であってもよい。
【0055】
また、上記実施例において、運用時間帯は、例えば乗降客のいる列車等が運用される時間帯として説明されるが、運用時間帯/非運用時間帯といった区分はあくまで一例に過ぎず、どのような時間(期間)区分で制御方式を切り替えてもよい。そのため、非運用時間帯(保守時間帯といった表記も同様の意味を指す)は、日中に臨時停止して工事する場合等、夜間でなくてもよい。その他様々な目的に応じて制御方式を切り替えてもよい。
【0056】
CPU101及びCPU201によって実行される各種プログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードにより提供されるものであってもよいし、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に記録された状態で提供されてもよい。なお、各プロセッサは、CPUに代えて、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、これらのプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ホーム柵制御システム、10、10a、10b…ホーム柵制御装置、11…制御部、12…ドア部、13…駆動装置、14…支障物センサ、15…通知部、20…上位装置、21…制御部、90…通信線、9…ネットワーク、101…CPU、102…メモリ、103…ストレージ、104…通信IF、105…扉体、106…モータ、107…ベルト、108…赤外線センサ、109…スピーカ、110…表示装置、201…CPU、202…メモリ、203…ストレージ、204…通信IF、205…入力装置、206…表示装置、A1…通路、121、122…ドア部