(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065695
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】データ解析装置、データ解析システム、データ解析方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G08G1/01 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174690
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】日高 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 勝
(72)【発明者】
【氏名】若尾 真里
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】新井 美生
(72)【発明者】
【氏名】山内 克仁
(72)【発明者】
【氏名】金原 良平
(72)【発明者】
【氏名】難波 祐成
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB12
5H181CC12
5H181MC07
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】利用者の移動系列を解析する技術において、解析精度を向上させる。
【解決手段】データ解析装置は、複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、センサによる信号の受信強度と、センサによって信号の受信が観測された観測時間と、センサの識別子と、を含む観測データを取得する取得部と、経時的に取得された複数の観測データから、利用者によるセンサ間の移動時間を算出する移動時間算出部と、経時的に取得された複数の観測データと、算出された移動時間とを用いたスコア算出によって、利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する解析部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ解析装置であって、
複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、前記センサによる信号の受信強度と、前記センサによって信号の受信が観測された観測時間と、前記センサの識別子と、を含む観測データを取得する取得部と、
経時的に取得された複数の前記観測データから、前記利用者による前記センサ間の移動時間を算出する移動時間算出部と、
経時的に取得された複数の前記観測データと、算出された前記移動時間とを用いたスコア算出によって、前記利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する解析部と、
を備える、データ解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、予め定められた前記移動時間の制約条件を持ち、前記スコア算出において、一の前記センサと他の前記センサとの間の前記移動時間が前記制約条件を満たさない場合は、前記一のセンサと前記他のセンサとの間の移動を前記移動系列から除外する、データ解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、前記受信強度の和を最大化するための指標を用いる、データ解析装置。
【請求項4】
請求項2に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、前記利用者による前記センサ間の移動量を最小化するための指標を用いる、データ解析装置。
【請求項5】
請求項2に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、ある受信強度以上の観測数を最大化し、かつ、前記利用者による前記センサ間の移動量を最小化するための指標を用いる、データ解析装置。
【請求項6】
データ解析システムであって、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のデータ解析装置と、
複数の前記センサからそれぞれ前記観測データを経時的に取得して蓄積するデータサーバと、
を備える、データ解析システム。
【請求項7】
データ解析システムであって、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のデータ解析装置と、
前記利用者が所持する端末と通信することで、前記端末から前記利用者の識別子を取得するセンサを備える、データ解析システム。
【請求項8】
データ解析方法であって、情報処理装置が、
複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、前記センサによる信号の受信強度と、前記センサによって信号の受信が観測された観測時間と、前記センサの識別子と、を含む観測データを取得する工程と、
経時的に取得された複数の前記観測データから、前記利用者による前記センサ間の移動時間を算出する工程と、
経時的に取得された複数の前記観測データと、算出された前記移動時間とを用いたスコア算出によって、前記利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する工程と、
を実行する、データ解析方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、情報処理装置に、
複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、前記センサによる信号の受信強度と、前記センサによって信号の受信が観測された観測時間と、前記センサの識別子と、を含む観測データを取得する機能と、
経時的に取得された複数の前記観測データから、前記利用者による前記センサ間の移動時間を算出する機能と、
経時的に取得された複数の前記観測データと、算出された前記移動時間とを用いたスコア算出によって、前記利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する機能と、
を実現させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の移動系列を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の地点に予め設置されたセンサによる観測値を用いて、利用者の移動系列を解析する技術が知られている。ここで「移動系列」とは、利用者が、いつ、どこに(どのセンサ近傍に)居たかを表す情報を意味し、移動系列は、利用者の行動パターンとみなすことができる。このような移動系列は、例えば、施設内での行動誘導等の施策立案に使用できる。例えば、特許文献1には、複数の地点に設置されたセンサからのセンサデータを解析するデータ解析装置であって、受信したセンサデータをもとに2地点間移動量が大きい経路を辿ることで移動系列(移動経路)を解析する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような技術では、一般に「利用者は、信号の受信強度が強いセンサ近傍を移動している」と判定する。しかし、特に建物内においては、建物による電波遮蔽や電波反射が起こるため、センサによる観測データが欠落する場合(換言すれば、利用者端末からの信号を受信できない場合)や、ある利用者端末に対する観測データを複数のセンサにおいて同時に取得する場合(換言すれば、複数のセンサにおいて同時に、ある利用者端末からの信号を受信する場合)があった。このような場合、利用者の移動系列を、センサによる信号の受信強度のみから解析することは解析精度の低下につながり、適当ではないという課題があった。
【0005】
この点、特許文献1に記載の技術では、センサによる観測データが欠落した場合に、2地点間移動量が大きい経路を辿ることで移動系列を解析している。しかし、2地点間移動量が大きい経路とは、「多くの人が移動した経路」に過ぎないため、対象となる利用者の実際の移動系列とは必ずしも一致しないという課題があった。この課題は、特に建物内のように狭い場所における2地点間の移動では、多くの経路が想定されるため、特に顕著である。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、利用者の移動系列を解析する技術において、解析精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、データ解析装置が提供される。このデータ解析装置は、複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、前記センサによる信号の受信強度と、前記センサによって信号の受信が観測された観測時間と、前記センサの識別子と、を含む観測データを取得する取得部と、経時的に取得された複数の前記観測データから、前記利用者による前記センサ間の移動時間を算出する移動時間算出部と、経時的に取得された複数の前記観測データと、算出された前記移動時間とを用いたスコア算出によって、前記利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する解析部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、解析部は、経時的に取得された複数の観測データに加えてさらに、利用者によるセンサ間の移動時間を用いたスコア算出によって移動系列(利用者が、いつ、どこに居たかを表す情報)を算出する。このように、スコア算出において、利用者によるセンサ間の移動時間を考慮することによって、例えば、一般的に想定される人間の移動速度を超えるような高速移動を排除する等の、人間の行動原理に基づいたスコア算出が可能となる。この結果、2地点間移動量が大きい経路(多くの人が移動した経路)に基づく移動系列の算出と比較して、より確からしい移動系列の算出が可能となる。すなわち、本構成によれば、利用者の移動系列を解析する技術において、解析精度を向上させることができる。
【0010】
(2)上記形態のデータ解析装置において、前記解析部は、予め定められた前記移動時間の制約条件を持ち、前記スコア算出において、一の前記センサと他の前記センサとの間の前記移動時間が前記制約条件を満たさない場合は、前記一のセンサと前記他のセンサとの間の移動を前記移動系列から除外してもよい。
この構成によれば、解析部は、予め定められた移動時間の制約条件を持ち、スコア算出において、一のセンサと他のセンサとの間の移動時間が制約条件を満たさない場合は、一のセンサと他のセンサとの間の移動を移動系列から除外する。このため、一般的に想定される人間の移動速度を超えるような高速移動を排除することができ、人間の行動原理に基づいたスコア算出が可能となる。
【0011】
(3)上記形態のデータ解析装置において、前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、前記受信強度の和を最大化するための指標を用いてもよい。
この構成によれば、解析部は、スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の観測データのうち、受信強度の和を最大化するための指標を用いるため、「受信強度の強さと、観測データの信頼性の高さは比例する」という法則に基づいたスコア算出が可能となる。
【0012】
(4)上記形態のデータ解析装置において、前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、前記利用者による前記センサ間の移動量を最小化するための指標を用いてもよい。
この構成によれば、解析部は、スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の観測データのうち、利用者によるセンサ間の移動量を最小化するための指標を用いるため、「より移動量の少ない行動の方が尤もらしい」という、人間の行動原理に基づいたスコア算出が可能となる。
【0013】
(5)上記形態のデータ解析装置において、前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、ある受信強度以上の観測数を最大化し、かつ、前記利用者による前記センサ間の移動量を最小化するための指標を用いてもよい。
この構成によれば、解析部は、スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の観測データのうち、ある受信強度以上の観測数を最大化し、かつ、利用者によるセンサ間の移動量を最小化するための指標を用いる。このため、「受信強度の強さと、観測データの信頼性の高さは比例する」という法則と、「より移動量の少ない行動の方が尤もらしい」という人間の行動原理と、を両立させたスコア算出が可能となり、移動系列の解析精度をより一層向上させることができる。
【0014】
(6)本発明の一形態によれば、データ解析システムが提供される。このデータ解析システムは、上記形態のデータ解析装置と、複数の前記センサからそれぞれ前記観測データを経時的に取得して蓄積するデータサーバと、を備える。
この構成によれば、移動系列を解析するデータ解析装置と、観測データを収集及び蓄積するデータサーバとを個別に備えるため、処理負荷を分散できる。
【0015】
(7)本発明の一形態によれば、データ解析システムが提供される。このデータ解析システムは、上記形態のデータ解析装置と、前記利用者が所持する端末と通信することで、前記端末から前記利用者の識別子を取得するセンサを備える。
この構成によれば、センサによって、利用者端末から利用者の識別子を取得できる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、移動系列を解析するデータ解析装置、移動系列を解析して何等かのサービスを提供するサーバ装置、これら各装置の機能を実現するために情報処理装置において実行される方法、これら各装置を含むシステム、これら各装置やシステムの機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態としてのデータ解析システムの概略図である。
【
図2】移動系列解析処理の手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図6】センサによる観測データが欠落した場合の処理について説明する図である。
【
図7】第2実施形態のデータ解析システムの概略図である。
【
図8】第2実施形態の移動系列解析処理の手順の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としてのデータ解析システム1の概略図である。データ解析システム1は、利用者Pの移動系列を解析し、出力するシステムである。ここで「移動系列」とは、利用者Pが、いつ、どこに(どのセンサ近傍に)居たかを表す情報である。移動系列は、利用者Pの行動パターンとみなすことができる。データ解析システム1は、データ解析装置100と、データサーバ200と、複数のセンサS1~S3と、を備えている。なお、データ解析システム1が備えるセンサの数は、図示の例(3つ)に限られず、任意に決定できる。
図1及び以降の説明では、1人の利用者Pについて例示するが、データ解析システム1は、複数の利用者に対して並行して後述の処理を行うことで、各利用者の移動系列をそれぞれ解析し、出力できる。
【0019】
利用者Pは、端末(以降「利用者端末PD」と呼ぶ)を所持している。利用者端末PDは、例えば、スマートフォンや、ウェアラブルデバイス、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等の任意のデバイスである。利用者端末PDは、無線通信によって、利用者端末PDを一意に識別可能な識別子(以降「利用者端末PDの識別子」とも呼ぶ)を含む信号を定期的に発信している。利用者端末PDの識別子としては、例えば、端末に内蔵された無線通信デバイスに予め割り当てられたMACアドレス(Media Access Control address)や、アプリケーションのインストール時に割り当てられたID等の、任意の識別子を利用できる。ここで、利用者端末PDの識別子は、利用者端末PDを所持する利用者Pの識別子(利用者の識別子)と同視でき、利用者端末PDの位置は、利用者端末PDを所持する利用者Pの位置と同視できる。なお、利用者端末PDに代えて、識別子を発信可能な専用タグを利用してもよい。
【0020】
センサS1~S3は、利用者端末PDと通信することで、利用者端末PDから情報を取得する。センサS1~S3としては、利用者端末PDから発信される信号を受信可能なセンサや、アクセスポイントが利用できる。センサS1~S3には、それぞれ、各センサを一意に識別可能な識別子(以降「センサの識別子」とも呼ぶ)が予め付与されている。センサS1~S3は、利用者端末PDからの信号を受信することによって、次のa1~a3に示す情報を取得する。センサS1~S3が受信した情報a1~a3と、a4に示す当該センサの識別子とを総称して「観測データ」とも呼ぶ。
(a1)利用者の識別子:換言すれば、利用者端末PDの識別子。
(a2)受信強度:センサによる利用者端末PDからの信号の受信強度。
(a3)観測時間:センサによって利用者端末PDからの信号の受信が観測された時間。観測時間は、例えば、日付と時刻との組み合わせである。
(a4)センサの識別子:信号を受信したセンサに割り当てられた識別子。
【0021】
データ解析装置100は、利用者Pの移動系列を解析し、出力するサーバである。データ解析装置100は、CPU110と、記憶部120と、通信部130と、メモリ140とを備えており、各部は図示しないバスにより相互に接続されている。CPU110は、メモリ140に格納されているコンピュータプログラムを実行することにより、データ解析装置100の各部を制御するほか、取得部111、移動時間算出部112、解析部113としても機能する。取得部111は、観測データ(a1~a4)を取得する。移動時間算出部112は、観測データ(a1~a4)から、利用者Pによるセンサ間の移動時間を算出する。解析部113は、観測データ(a1~a4)と、算出された移動時間とを用いたスコア算出により、利用者Pの移動系列を解析する。詳細は後述する。
【0022】
記憶部120は、ハードディスク、フラッシュメモリ、メモリカードなどで構成される。記憶部120には、図示しないスコア算出式(詳細は後述)が予め記憶されている。通信部130は、他の装置との間における、図示しない通信インターフェースを介した通信を制御する。他の装置には、データサーバ200、利用者端末PDのほか、図示しない他のサーバ等が含まれ得る。
【0023】
データサーバ200は、センサS1~S3から、観測データ(a1~a4)を経時的に取得して、利用者Pごとの観測データの束を観測データセットとして蓄積するサーバである。データサーバ200は、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、メモリ240とを備えており、各部は図示しないバスにより相互に接続されている。CPU210は、メモリ240に格納されているコンピュータプログラムを実行することにより、データサーバ200の各部を制御するほか、制御部211としても機能する。制御部211は、センサS1~S3から、観測データ(a1~a4)を経時的に取得して、記憶部220に記憶させる。詳細は後述する。
【0024】
記憶部220は、ハードディスク、フラッシュメモリ、メモリカードなどで構成される。記憶部220には、後述する移動系列解析処理を介して、制御部211がセンサS1~S3から経時的に取得した観測データ(a1~a4)が、複数記憶されている。ここで、利用者の識別子a1が同一であり、かつ、他の情報a2,a3,a4のいずれかが相違する複数の観測データ(a1~a4)の束を、観測データセット221とも呼ぶ。通信部230は、他の装置との間における、図示しない通信インターフェースを介した通信を制御する。他の装置には、データ解析装置100、センサS1~S3、利用者端末PDのほか、図示しない他のサーバ等が含まれ得る。
【0025】
なお、センサS1~S3と、データ解析装置100と、データサーバ200とは、ネットワーク(例えばインターネット)を介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
図2は、移動系列解析処理の手順の一例を示すシーケンス図である。
図2では、図示の便宜上、
図1で説明した利用者端末PDとセンサS3の記載を省略している。
【0027】
ステップS12においてセンサS1は、利用者端末PDからの信号を受信する。ステップS14においてセンサS1は、受信した信号に含まれた利用者の識別子a1と、信号の受信強度a2と、信号の受信が観測された観測時間a3とに加えて、センサS1の識別子a4を「観測データ」としてデータサーバ200へと送信する。ステップS16において、データサーバ200の制御部211は、観測データを記憶部220に記憶させる。ステップS12~S16を総称して、センサS1による受信蓄積処理(S10)とも呼ぶ。ステップS10は、センサS1が信号を受信する都度実行される。
【0028】
ステップS22においてセンサS2は、利用者端末PDからの信号を受信する。ステップS24においてセンサS2は、受信した信号に含まれた利用者の識別子a1と、信号の受信強度a2と、信号の受信が観測された観測時間a3とに加えて、センサS2の識別子a4を「観測データ」としてデータサーバ200へと送信する。ステップS26において、データサーバ200の制御部211は、観測データを記憶部220に記憶させる。ステップS22~S26を総称して、センサS2による受信蓄積処理(S20)とも呼ぶ。ステップS20は、センサS2が信号を受信する都度実行される。
【0029】
ステップS10、S20で説明した受信蓄積処理は、データ解析システム1に含まれる各センサにおいて、独立してそれぞれ実行される。
【0030】
ステップS30においてデータ解析装置100は、移動系列の解析を開始するためのトリガがあったか否かを判定する。トリガとは任意に決定でき、例えば、利用者端末PDにインストールされた所定のアプリケーションの起動、既に起動された当該アプリケーションからの要求の受信、利用者Pについて所定数以上の観測データ(a1~a4)が蓄積された場合、ある一定のタイミング等を採用できる。データ解析装置100は、トリガがあった際、移動系列の解析対象となる利用者Pの識別子を取得する。なお、ある一定のタイミングで移動系列の解析を開始する場合、特定の利用者Pに限定されずに、複数の利用者について次に説明する処理をそれぞれ実施できる。以降では、説明の便宜上、ある利用者Pについての移動系列の解析について説明している。
【0031】
ステップS32において、データ解析装置100の取得部111は、データサーバ200に対して観測データセット221を要求する。この際、取得部111は、ステップS30で取得した利用者Pの識別子を併せて送信することで、観測データセット221の取得対象である利用者Pを指定する。ステップS34において、データサーバ200の制御部211は、記憶部220から指定された利用者Pについての観測データセット221を取得し、データ解析装置100へと送信する。上述の通り、この観測データセット221には、利用者の識別子a1が同一であり、かつ、他の情報a2,a3,a4のいずれかが相違する、経時的に取得された複数の観測データ(a1~a4)が含まれている。
【0032】
図3及び
図4は、移動系列の解析について説明する図である。
図3及び
図4では、ある利用者Pについての観測データセット221の内容を模式的に示している。
図3及び
図4では、観測データセット221内の1つの観測データ(a1~a4)を1つの丸印で表している。丸枠内の数字は受信強度a2の累積確率を表している。受信強度a2は、dBm等の単位で表される値であるが、本実施形態では、受信強度a2として受信強度の累積確率(0から1までの値)を使用している。しかし、受信強度a2としては、受信強度の累積確率に代えて、dBm等の単位で表される受信強度そのままの値を用いてもよく、受信強度に関する他の情報を用いてもよい。以降、受信強度の累積確率を単に「受信強度」とも呼ぶ。丸印が配置されている縦軸位置は、当該観測データが取得されたセンサの識別子a4に対応している。丸印が配置されている横軸位置は、当該観測データが取得された観測時間a3に対応している。
図3(A)の例では、例えば、ある時刻t1では、ある利用者Pについて、センサS1で受信強度0.1の観測データが取得されると共に、センサS2で受信強度0.4の観測データが取得されると共に、センサS3で受信強度0.6の観測データが取得されたことを表している。
【0033】
ステップS36において、データ解析装置100の解析部113は、観測データセット221を用いて利用者Pについての移動系列を解析する。具体的には、解析部113は、観測データセット221内の各観測データ(a1~a4)を、以下の式(1)に適用することで第1のスコアSq
nを算出する。式(1)に示す各変数の詳細は、次のb1~b4に示す通りである。
(b1)k:スコア算出のため使用される変数(1からn-1までインクリメントされる)。
(b2)xn,xk:n番目の観測センサ番号,k番目の観測センサ番号。
(b3)Δxkxn:利用者Pによるセンサxk-センサxn間の移動時間の制約条件に応じた値であり、式(2)によって決定される値。
(b4)qn:受信強度a2。
【0034】
【0035】
式(1)のΔxkxnを決定するために、移動時間算出部112は、利用者Pが、一のセンサxkと他のセンサxnとの間の実移動時間を算出する。実移動時間は、「センサxnによる観測データのうちの観測時間a3-センサxkによる観測データのうちの観測時間a3」の絶対値により算出できる(上記式(2)xk-xn)。移動時間制約は、記憶部120内に予め、各センサ間の距離に応じた標準移動時間が、実験等により計測されて記憶されている。センサxkとセンサxnとの間の実移動時間が、記憶部120内のセンサxkとセンサxnとの間の標準移動時間以上である場合、解析部113は、xk-xnが制約条件を満たすと判定し、Δxkxn=1とする。一方、センサxkとセンサxnとの間の実移動時間が、記憶部120内のセンサxkとセンサxnとの間の標準移動時間よりも小さい場合、解析部113は、xk-xnが制約条件を満たさないと判定し、Δxkxn=-∞とする。式(1)から明らかなように、センサxkとセンサxnとの間の実移動時間(xk-xn)が制約条件を満たす場合、Δxkxn=1とされることにより、センサxkとセンサxnとの間の移動が実際にあり得るものとして考慮される。一方で、センサxkとセンサxnとの間の実移動時間(xk-xn)が制約条件を満たさない場合、Δxkxn=-∞とされることにより、センサxkとセンサxnとの間の移動(経路)が実際にはあり得ないものとして除外される。
【0036】
図3及び
図4を用いて具体例について説明する。解析部113は、
図3(A)に示すように、1番目の観測データ(n=1)を式(1)に代入する。この結果、第1のスコアS
q
1=受信強度a2の値=0.6となる。解析部113は、
図3(B)に示すように、2番目の観測データ(n=2)を式(1)に代入する。この結果、第1のスコアS
q
2=受信強度a2の値=0.4となる。また、移動時間算出部112は、センサS3とセンサS2との間の実移動時間を算出する。上述の通り、センサS3による1番目の観測データ(n=1)と、センサS2による2番目の観測データ(n=2)とは、いずれも時刻t1に取得されている。このため、「センサS3による観測データのうちの観測時間a3-センサS2による観測データのうちの観測時間a3」の絶対値は0に近い値となる。このため、解析部113は、Δx
kx
n=-∞とする。この結果、
図3(B)においてバツ印で示すように、センサS3とセンサS2との間の移動は、移動系列の考慮対象から除外される。
【0037】
解析部113は、
図4(A)に示すように、3番目の観測データ(n=3)を移動系列の考慮対象から除外する。本実施形態の解析部113は、受信強度a2の値が所定の受信強度閾値以下である場合、当該観測データを移動系列の考慮対象から除外する処理を行う。この受信強度閾値は、予め定められて記憶部120内に記憶されている。なお、解析部113は、
図4(A)で説明した処理を実施してもよく、実施しなくてもよい。
【0038】
解析部113は、
図4(B)に示すように、4番目の観測データ(n=4)を式(1)に代入する。利用者PがセンサS3からセンサS2に移動した場合、第1のスコアS
q
4=0.6+0.7=1.3となる。なお、移動時間算出部112は、センサS3とセンサS2との間の実移動時間を算出し、解析部113がΔx
kx
n=1とした結果、
図4(B)に示すように、センサS3とセンサS2との間の移動は、移動系列の考慮対象となる。一方、利用者PがセンサS2からセンサS2に移動した場合、第1のスコアS
q
4=0.4+0.7=1.1となる。なお、移動時間算出部112は、センサS2とセンサS2との間の実移動時間を算出し、解析部113がΔx
kx
n=1とした結果、
図4(B)に示すように、センサS2とセンサS2との間の移動は、移動系列の考慮対象となる。
【0039】
解析部113は、上記の処理を観測データセット221内の全てのデータに対して行うことで、第1のスコアS
q
nが最も大きくなる1つの移動系列を解析する。このように、第1のスコアS
q
nでは、変数q
nを用いることで受信強度の和を最大化している。
図2のステップS38において、データ解析装置100の解析部113は、解析により得られた移動系列を出力する。
【0040】
図5は、移動系列の一例を示す説明図である。
図5に示すように、移動系列MSには、利用者Pの識別子に加えて、観測時間とセンサの識別子との組が時系列に複数並べられたデータが含まれる。観測時間とセンサの識別子との組は、利用者Pが、いつ、どこに(どのセンサ近傍に)居たかを表す情報である。なお、移動系列MSの態様はあくまで一例であり、センサの識別子に代えて、センサの識別子から導き出されるセンサの位置情報が採用されてもよい。移動系列MSの出力態様も任意に決定できる。例えば、データ解析装置100から利用者端末PD(あるいは、移動系列MSを利用した何らかのサービスを提供する他のサーバ等)へと移動系列MSを送信することで出力してもよいし、データ解析装置100の記憶部220に対して移動系列MSを保存することで出力してもよいし、データ解析装置100の表示部に移動系列MSを表示することで出力してもよい。なお、移動系列を出力するステップS38は、省略してもよい。
【0041】
なお、
図2のステップS36において、データ解析装置100の解析部113は、受信強度の和を最大化する式(1)に代えて、以下の式(3)を用いて第2のスコアS
d
nを算出してもよい。第2のスコアS
d
nでは、変数tx
kx
nを用いることで、利用者Pによるセンサ間の移動量を最小化している。式(3)に示す各変数の詳細は、上述したb1~b3に加えて、次のc1,c2に示す通りである。
(c1)α:観測を加えることに対する重みを表す任意の係数。重み係数αをセンサx
kとセンサx
nとの間の実移動時間よりも大きく設定することで、少しでも多くの観測を得る移動系列を抽出できる。
(c2)tx
kx
n:センサx
kとセンサx
nとの間の移動量(換言すれば、移動距離)。各センサ間の移動量(移動距離)は、予め計測され、記憶部120内に記憶されている。
【0042】
【0043】
なお、
図2のステップS36において、データ解析装置100の解析部113は、受信強度の和を最大化する式(1)に代えて、以下の式(4)を用いて第3のスコアS
d´
nを算出してもよい。第3のスコアS
d´
nでは、変数β・I[r
n>K]と、変数tx
kx
nを用いることで、ある受信強度以上の観測数を最大化すると共に、センサ間の移動量を最小化している。式(4)に示す各変数の詳細は、上述したb1~b3、及び、c1,c2に加えて、次のd1~d4に示す通りである。
(d1)β:KdBm以上の観測値に与える任意の重み係数。重み係数βは、重み係数αより十分大きい値とする(β>>α)。
(d2)I[・]:指示関数。括弧内が真の場合に1をとり、偽の場合に0を取る。
(d3)r
n:センサx
nの受信強度a2。なお、変数d3には、受信強度の累積確率ではなく、dBm等の単位で表される受信強度そのままの値を用いる。
(d4)K:重み係数βの考慮、不考慮を決定するための任意の定数。換言すれば、スコアにおいて考慮する受信強度の閾値。
【0044】
【0045】
図6は、センサによる観測データが欠落した場合の処理について説明する図である。
図6では、センサS1~S3による観測データ(a1~a4)が欠落した場合、換言すれば、センサS1~S3が利用者端末PDからの信号を一定期間tx受信できなかった場合の観測データセット221の内容を模式的に示している。このような場合、解析部113は、期間txが終わる直前まで、期間txに入る直前において信号を受信したセンサ(図示の例では、センサS3)と同じセンサによって観測データが取得されたとみなして上述の処理をすることができる。この場合の受信強度a2は、直前の観測データの受信強度a2(図示の例では、0.3)と同じとしてもよく、任意のデフォルト値としてもよい。これは、センサS1~S3による信号受信は、ハンドオーバーのタイミング(換言すれば、センサS1,S2,S3の切り替わり時)において検出されやすいためである。換言すれば、センサS1~S3による信号受信がないことは、ハンドオーバーがない(換言すれば、利用者Pが同じ位置に留まっている)可能性が高いためである。
図6で説明した観測データの補完処理は、例えば、移動系列の解析(ステップS36)の前処理として実行できる。
【0046】
以上の通り、第1実施形態のデータ解析装置100によれば、解析部113は、経時的に取得された複数の観測データ(観測データセット221)に加えてさらに、利用者Pによるセンサ間の移動時間を用いたスコア算出(Sq
n,Sd
n,Sd´nの算出)によって移動系列MS(利用者が、いつ、どこに居たかを表す情報)を算出する。このように、スコア算出において、式(2)で説明した通り、利用者Pによるセンサ間の移動時間を考慮することによって、例えば、一般的に想定される人間の移動速度を超えるような高速移動を排除する(Δxkxn=-∞の場合)等の、人間の行動原理に基づいたスコア算出が可能となる。この結果、2地点間移動量が大きい経路(多くの人が移動した経路)に基づく移動系列MSの算出と比較して、より確からしい移動系列MSの算出が可能となる。すなわち、本実施形態のデータ解析装置100によれば、利用者の移動系列を解析する技術において、解析精度を向上させることができる。
【0047】
また、第1実施形態のデータ解析装置100によれば、解析部は、予め定められた移動時間の制約条件を持ち、スコア算出において、一のセンサと他のセンサとの間の移動時間が制約条件を満たさない場合は、一のセンサと他のセンサとの間の移動を移動系列から除外する。このため、一般的に想定される人間の移動速度を超えるような高速移動を排除することができ、人間の行動原理に基づいたスコア算出が可能となる。
【0048】
さらに、第1実施形態のデータ解析装置100において、式(1)によれば、解析部113は、スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の観測データ(観測データセット221)のうち、受信強度の和を最大化するための指標である第1のスコアSq
nを用いるため、「受信強度の強さと、観測データの信頼性の高さは比例する」という法則に基づいたスコア算出が可能となる。
【0049】
さらに、第1実施形態のデータ解析装置100において、式(3)によれば、解析部113は、スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の観測データ(観測データセット221)のうち、利用者によるセンサ間の移動量を最小化するための指標である第2のスコアSd
nを用いるため、「より移動量の少ない行動の方が尤もらしい」という、人間の行動原理に基づいたスコア算出が可能となる。
【0050】
さらに、第1実施形態のデータ解析装置100において、式(4)によれば、解析部113は、スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の観測データ(観測データセット221)のうち、ある受信強度以上の観測数を最大化し、かつ、利用者によるセンサ間の移動量を最小化するための指標である第3のスコアSd´nを用いる。このため、「受信強度の強さと、観測データの信頼性の高さは比例する」という法則と、「より移動量の少ない行動の方が尤もらしい」という人間の行動原理と、を両立させたスコア算出が可能となり、移動系列の解析精度をより一層向上させることができる。
【0051】
さらに、第1実施形態のデータ解析システム1によれば、移動系列MSを解析するデータ解析装置100と、観測データ(a1~a4)を収集及び蓄積するデータサーバ200とを個別に備えるため、処理負荷を分散できる。また、センサS1~S3によって、利用者端末PDから観測データ(a1~a4)を取得できる。
【0052】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のデータ解析システム1Aの概略図である。第2実施形態では、データサーバ200を利用せずにデータ解析システム1Aを構成する。第2実施形態のデータ解析システム1Aは、第1実施形態で説明した構成において、データ解析装置100に代えてデータ解析装置100Aを備えると共に、データサーバ200を備えていない。
【0053】
データ解析装置100Aは、取得部111に代えて取得部111Aを備え、記憶部120に代えて記憶部120Aを備えている。取得部111Aは、移動系列解析処理の内容が、
図2で説明した第1実施形態と相違する。記憶部120Aには、後述する移動系列解析処理を介して、取得部111AがセンサS1~S3から経時的に取得した観測データ(a1~a4)が、複数記憶されている。
【0054】
図8は、第2実施形態の移動系列解析処理の手順の一例を示すシーケンス図である。以降では、
図2で説明した第1実施形態とは相違する部分のみ説明する。ステップS14AにおいてセンサS1は、観測データ(a1~a4)を、データ解析装置100Aへと送信する。ステップS16Aにおいて、データ解析装置100Aの取得部111Aは、観測データを記憶部120Aに記憶させる。ステップS24AにおいてセンサS2は、観測データ(a1~a4)を、データ解析装置100Aへと送信する。ステップS26Aにおいて、データ解析装置100Aの取得部111Aは、観測データを記憶部120Aに記憶させる。ステップS40において、データ解析装置100Aの取得部111Aは、記憶部120Aから利用者Pについての観測データセット121を取得する。以降の処理は、
図2で説明した第1実施形態と同様である。
【0055】
このように、データ解析システム1Aの構成は種々の変更が可能であり、データサーバ200を使用せずにシステムを構成してよい。また、第1実施形態で説明したデータ解析装置100や、第2実施形態で説明したデータ解析装置100Aの機能部を、複数のサーバ装置が協働することで実現する構成としてもよい。このようにすれば、データ解析システム1Aを柔軟に構成することができ、システムの拡張性が向上する。
【0056】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。そのほか、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
[変形例1]
上記実施形態では、データ解析システム1,1Aの構成を例示した。しかし、第2実施形態で説明したように、データ解析システム1の構成は任意の態様を採用できる。例えば、データ解析システム1は、出力された移動系列MSを利用して何らかのサービスを提供するサービスサーバをさらに備えていてもよい。例えば、データ解析システム1のセンサS1~S3は、種類の異なるセンサによって実現されてもよい。
【0058】
[変形例2]
上記実施形態では、移動系列解析処理(
図2,
図8)について、処理手順の一例を挙げて説明した。しかし、これら処理手順は種々の変更が可能であり、各ステップにおける処理内容の追加/省略/変更をしてもよく、ステップ(手順)の実行順序を変更してもよい。
【0059】
例えば、観測データとして例示した情報a1~a4はあくまで一例であり、一部の情報は省略されてもよく、他の情報が含まれてもよい。例えば、解析部113が第2のスコアSd
nを用いた移動系列の算出をする場合、観測データの受信強度a2は省略されてもよい。例えば、観測データには、スコア算出(Sq
n,Sd
n,Sd´nの算出)のために使用される何らかのパラメータがさらに含まれてよい。何らかのパラメータには、例えば、利用者端末PDとセンサS1~S3との間の通信方式を示す情報等を利用できる。
【0060】
[変形例3]
上述した第1,2実施形態、及び、変形例1,2の各特徴は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態の構成(データサーバ200を用いない構成)において、変形例1,2で説明した各特徴を採用してもよい。
【0061】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0062】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
データ解析装置であって、
複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、前記センサによる信号の受信強度と、前記センサによって信号の受信が観測された観測時間と、前記センサの識別子と、を含む観測データを取得する取得部と、
経時的に取得された複数の前記観測データから、前記利用者による前記センサ間の移動時間を算出する移動時間算出部と、
経時的に取得された複数の前記観測データと、算出された前記移動時間とを用いたスコア算出によって、前記利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する解析部と、
を備える、データ解析装置。
[適用例2]
適用例1に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、予め定められた前記移動時間の制約条件を持ち、前記スコア算出において、一の前記センサと他の前記センサとの間の前記移動時間が前記制約条件を満たさない場合は、前記一のセンサと前記他のセンサとの間の移動を前記移動系列から除外する、データ解析装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、前記受信強度の和を最大化するための指標を用いる、データ解析装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3のいずれか一項に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、前記利用者による前記センサ間の移動量を最小化するための指標を用いる、データ解析装置。
[適用例5]
適用例1から適用例4のいずれか一項に記載のデータ解析装置であって、
前記解析部は、前記スコア算出の指標として、経時的に取得された複数の前記観測データのうち、ある受信強度以上の観測数を最大化し、かつ、前記利用者による前記センサ間の移動量を最小化するための指標を用いる、データ解析装置。
[適用例6]
データ解析システムであって、
適用例1から適用例5のいずれか一項に記載のデータ解析装置と、
複数の前記センサからそれぞれ前記観測データを経時的に取得して蓄積するデータサーバと、
を備える、データ解析システム。
[適用例7]
データ解析システムであって、
適用例1から適用例5のいずれか一項に記載のデータ解析装置と、
前記利用者が所持する端末と通信することで、前記端末から前記利用者の識別子を取得するセンサを備える、データ解析システム。
[適用例8]
データ解析方法であって、情報処理装置が、
複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、前記センサによる信号の受信強度と、前記センサによって信号の受信が観測された観測時間と、前記センサの識別子と、を含む観測データを取得する工程と、
経時的に取得された複数の前記観測データから、前記利用者による前記センサ間の移動時間を算出する工程と、
経時的に取得された複数の前記観測データと、算出された前記移動時間とを用いたスコア算出によって、前記利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する工程と、
を実行する、データ解析方法。
[適用例9]
コンピュータプログラムであって、情報処理装置に、
複数の地点にそれぞれ設置されているセンサによって観測された観測データであって、利用者の識別子と、前記センサによる信号の受信強度と、前記センサによって信号の受信が観測された観測時間と、前記センサの識別子と、を含む観測データを取得する機能と、
経時的に取得された複数の前記観測データから、前記利用者による前記センサ間の移動時間を算出する機能と、
経時的に取得された複数の前記観測データと、算出された前記移動時間とを用いたスコア算出によって、前記利用者が、いつ、どこに居たかを表す移動系列を解析する機能と、
を実現させる、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1,1A…データ解析システム
100,100A…データ解析装置
110…CPU
111,111A…取得部
112…移動時間算出部
113…解析部
120,120A…記憶部
121…観測データセット
130…通信部
140…メモリ
200…データサーバ
210…CPU
211…制御部
220…記憶部
221…観測データセット
230…通信部
240…メモリ
S1~S3…センサ