(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065712
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/28 20060101AFI20240508BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E06B7/28 B
E05D15/06 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174715
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 晃司
(72)【発明者】
【氏名】高木 翔平
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034BA01
2E034BD01
2E034BD03
2E034BD04
(57)【要約】
【課題】配線スペースを確保することができる建具を提供することを目的とする。
【解決手段】建具は、戸体と、前記戸体がスライドするレールと、前記戸体の上端部を飲み込む開口溝と、を有する上枠と、前記戸体から前記上枠へと亘って設けられる配線と、を備え、前記上枠は、前記開口溝内を室内外方向に仕切る壁部を有し、前記配線は、前記開口溝内で前記壁部の室内側に形成された隙間に通される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具であって、
戸体と、
前記戸体がスライドするレールと、前記戸体の上端部を飲み込む開口溝と、を有する上枠と、
前記戸体から前記上枠へと亘って設けられる配線と、
を備え、
前記上枠は、前記開口溝内を室内外方向に仕切る壁部を有し、
前記配線は、前記壁部の室内側に形成された隙間に通されている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
さらに、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部と、を有し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する戸体支持機構を備え、
前記壁部は、前記レールよりも下方に設けられ、
前記ベース部は、前記開口溝内で前記壁部の室外側に配置される
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具であって、
さらに、前記開口溝内に配置され、前記配線を被覆した通電金具を備え、
前記通電金具は、第1端部が前記壁部の室外側表面に固定され、第2端部が前記戸体と固定される
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具であって、
さらに、前記上枠の戸先側端部と連結された縦枠を備え、
前記通電金具は、前記第1端部から前記第2端部に向かって、前記開口溝内で前記壁部の室外側を前記縦枠に向かって延在した後、略U字状に折り返されて前記戸体の戸先側部分に接続される
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1に記載の建具であって、
前記開口溝は、下向きに開口したものであり、
前記壁部は、下向きに突出したヒレ状である
ことを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項5に記載の建具であって、
さらに、前記隙間の開口部を閉塞する塞ぎ材を備える
ことを特徴とする建具。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の建具であって、
さらに、前記壁部の一面側から他面側へと貫通し、前記配線を前記隙間に引き込むための配線孔を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項8】
請求項7に記載の建具であって、
前記配線孔は、前記壁部をその下端部から上方に向かって切り欠くように形成された切欠き穴である
ことを特徴とする建具。
【請求項9】
請求項8に記載の建具であって、
前記戸体を全閉位置とした状態で、前記配線孔は、前記戸体の室内側に隠される
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば玄関ドア等の建具では、電気錠によって電気的に施解錠可能なものがある。このような建具は、戸体に設けられた電気錠と、上枠側に設けられたコントローラ等とが配線で接続されるため、配線の取り回しが問題となる。例えば特許文献1には、戸体の上部にある上枠内のスペースに配線を通した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上記のような建具では、戸体を自動で開閉できる機能を搭載したものも提案されている。このような自動開閉機能を搭載した建具では、上枠内にコントローラの他、開閉エンジンと駆動機構等を収容する必要がある。このため、このような建具では、上記特許文献1の構成のように、上枠内に配線を通すためのスペースを確保することが難しい場合がある。なお、自動開閉機能を搭載しない建具であっても、上枠の形状や大きさ等によっては、配線スペースの確保が難しい場合がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、配線スペースを確保することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る建具は、戸体と、前記戸体がスライドするレールと、前記戸体の上端部を飲み込む開口溝と、を有する上枠と、前記戸体から前記上枠へと亘って設けられる配線と、を備え、前記上枠は、前記開口溝内を室内外方向に仕切る壁部を有し、前記配線は、前記開口溝内で前記壁部の室内側に形成された隙間に通される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、配線スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る建具を室外側から見た姿図である。
【
図3】配線及びその周辺部の拡大図であり、
図3(A)は壁部で形成した隙間に配線を設置する動作を示す縦断面図であり、
図3(B)は壁部で形成した隙間に配線を設置した状態を示す縦断面図である。
【
図4】壁部の配線孔及びその周辺部を拡大して室外側から見た模式的な斜視図である。
【
図5】戸体から上枠へと亘る配線の経路を説明する平面説明図であり、
図5(A)は戸体を全閉位置とした図であり、
図5(B)は戸体を全開閉位置とした図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る建具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の建具10は、建物躯体11の開口部に固定される枠体12と、枠体12に開閉可能に支持される戸体14とを備える。建具10は、例えば住宅の玄関ドアとして用いることができる。
【0011】
本出願において、見込み方向(出入り方向)とは建具10の奥行方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠12c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠12a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。
【0012】
先ず、建具10の全体構成を説明する。
【0013】
枠体12は、上枠12aと、下枠12bと、縦枠12cを連結したものである。各枠12a~12cは、アルミニウム合金等の押出形材である。各枠12a~12cは、アルミニウム合金等の押出形材の室内側に塩化ビニル樹脂(PVC)等で形成された樹脂形材を装着した複合構造ものでもよいし、樹脂形材のみで構成されてもよい。
【0014】
図2に示すように、上枠12aは、その長手方向に沿って延在するようにレール16が設けられている。下枠12bは、その上面から突出するガイドローラ18が取り付けられている。縦枠12cは、上枠12a及び下枠12bの戸先側端部12a1,12b1に連結されている。縦枠12cは、上枠12aの戸先側端部12a1と共に戸尻側端部12a2にも設けられ、左右一対で設置されてもよい。
図2中の参照符号19は、下枠12bの上面側に設置された床材である。
【0015】
戸体14は、上枠12aのレール16に対して戸体支持機構20を介して吊下支持され、上枠12aの長手方向に沿ってスライド可能な片引きドアを構成する。スライド時、戸体14の下端部はガイドローラ18によってガイドされる。戸体14は、両開きドアでもよい。戸体14は、その上端部14aが上枠12aに設けられた下向きに開口する開口溝21に飲み込まれた状態で、レール16に沿ってX方向にスライドする。
【0016】
次に、戸体支持機構20による戸体14の支持構造を説明する。
【0017】
図2に示すように、戸体支持機構20は、ローラ部22と、駆動部24と、ベース部26とを有する。
【0018】
ローラ部22は、レール16に対してスライド可能に支持される。ローラ部22は、ローラ22aと、シャフト22bとを有する。ローラ22aは、レール16を転動する戸車である。シャフト22bは、ローラ22aを相対回転可能に支持する回転軸である。シャフト22bはベース部26と連結され、これによりローラ部22と戸体14とが連結される。
【0019】
駆動部24は、ローラ部22を駆動して戸体14を移動させるためのエンジンとなる部分であり、例えばリニアモータで構成される。駆動部24は、上枠12a内の開口溝21の上方で支持ブラケット27を用いて上枠12aに支持されている。支持ブラケット27は、例えば略J字状の断面形状を有する。レール16は、例えば支持ブラケット27の下部に形成されている。駆動部24は、例えばステータ24aとムーバ24bとを有し、可動磁石体であるムーバ24bがX方向に移動する構成である。駆動部24は、上枠12a内に設置されるコントローラによって駆動制御される。
【0020】
ムーバ24bは、下向きのL字状のブラケット28と一体に連結され、ブラケット28はローラ部22を一体的に支持している。つまりブラケット28は、ローラ部22の一部品と言い換えてもよい。ブラケット28のZ方向に突出した一片は、ムーバ24bと一体に設けられている。ブラケット28の下方に突出した他片は、シャフト22bを相対回転可能に支持することで、ローラ部22を支持している。駆動部24は、ムーバ24bが移動することで、これに支持されたローラ部22を移動させることができる。駆動部24の構成は、戸体14を移動させることができるものであればよく、リニアモータではなく電動モータ等で構成されてもよい。
【0021】
ベース部26は、戸体14とローラ部22とを連結する板金部品である。ベース部26は、戸体14の上端部14aに固定される横板30と、横板30の室外側端部から上方に起立した縦板31とを有する。
【0022】
横板30は、例えば2本のねじ32を用いて戸体14に固定される。縦板31は、横板30の一側部から上方に折り曲げて形成されたものである。縦板31は、Y方向に起立し、ローラ部22と連結されるものである。具体的には、縦板31は、ブラケット28を貫通したシャフト22bの先端部が挿通される連結孔を有し、ブラケット28の室外側表面に当接配置される。シャフト22bの先端には雄ねじが形成され、ここにナット34が螺合される。これにより縦板31とシャフト22bが連結され、ベース部26とローラ部22が連結される。
【0023】
ところで、本実施形態の建具10は、駆動部24による戸体14の自動開閉機能に加えて、スマートキー等と呼ばれる非接触式のキー装置を用いて施解錠可能な電気錠36を備える(
図1参照)。電気錠36は、戸体14に設置されている。このため、電気錠36は、戸体14から上枠12aに亘って設けられる配線38を用いて駆動部24のコントローラや建物躯体11側の電源と接続される必要がある。
【0024】
従って、このような建具10では、上枠12aにスライド可能に吊下支持された戸体14と、上枠12aとの間での配線38の設置方法が問題となる。また、配線38は、戸体14から上枠12aへと引き込まれた後、上枠12a内を通して建物躯体11へと引き込まれる。ところが、上枠12aの内部には駆動部24等の部品が収容されている(
図2参照)。従って、当該建具10では、上枠12aでの配線38の設置経路の問題、つまり配線スペースの問題もある。
【0025】
そこで、次に、本実施形態の建具10における配線38の設置方法や配線スペースについて説明する。
【0026】
図3~
図5に示すように、配線38は、開口溝21の下部を戸体14から上枠12aへと亘るように設けられ、さらに開口溝21内に突出する壁部40の裏側を通過しつつ、上枠12a内を延びている。
【0027】
先ず、配線38の通り道となる上枠12aの具体的な構成例を説明する。
【0028】
図2及び
図3に示すように、上枠12aの開口溝21は、上枠アタッチメント42で構成された室外側壁部21aと、支持ブラケット27が固定される室内側壁部21bとの間に形成され、下向きに開口する溝部である。上枠アタッチメント42は、上枠12aの室外側見付け面を形成するカバー材であり、戸体14をローラ部22に連結した後に装着される。
【0029】
壁部40は、開口溝21内でレール16よりも下方であって、戸体14の上端部14aよりも上方に設けられ、開口溝21内を室内側方向に仕切っている。本実施形態の壁部40は、レール16の下で室内側壁部21bから室外側に突出した見込み片21b1から下方に突出したヒレ状の板片である。壁部40は、開口溝21内で室内側寄りの位置に設けられ、室内側壁部21bの表面との間に幅狭な隙間Gを形成している。壁部40は、開口溝21内でその裏側に隙間Gを形成可能であればその形状や構成は限定されず、例えば例えば室内側壁部21bの室外側表面から室外側へと突出した後、上方に折れ曲がったL字形状のものでもよい。
【0030】
図4に示すように、壁部40は、その長手方向の途中に配線孔44が設けられている。配線孔44は、開口溝21内で配線38を壁部40の室外側(戸体14側)から室内側(隙間G側)へと引き込むためのものである。配線孔44は、例えば壁部40をその下端部から上方に向かって切り欠くように形成された切欠形状の切欠き穴であることが好ましい。但し、配線孔44は、壁部40に配線38を通過させることができればよく、切欠形状ではなく、外周が閉じた丸穴等でもよい。
【0031】
配線孔44は、
図5(A)に示すように、少なくとも戸体14を全閉位置とした状態で戸体14の室内側に隠される位置にあることが好ましい。そうすると、建具10は、全閉位置にある戸体14が配線孔44を室外側から覆い隠すため、配線孔44及びここに通された配線38が外観上に現れず、外観品質の低下を防止できる。配線孔44は、
図5(B)に示すように、全閉位置に加えて、さらに戸体14を全開位置とした状態でも戸体14の室内側に隠される位置にあってもよい。そうすると、建具10は、戸体14を全開位置とした場合にも配線孔44及びここに通された配線38を隠すことができ、外観品質の低下を一層防止できる。
【0032】
次に、配線38の設置方法及び経路とその作用効果について説明する。
【0033】
図3~
図5に示すように、配線38は、戸体14から上枠12aに亘る部分が通電金具46で被覆されると共に開口溝21内で折り返され、上枠12a内では壁部40の裏側の隙間Gに通されている。配線38は、例えば複数本の金属線が横一列に並んだフレキシブルフラットコードであり、上下方向に幅広となる姿勢で設置される。
【0034】
通電金具46は、戸体14が移動する際に影響を受ける部分、つまり戸体14と上枠12aとを跨ぐ部分に設けられる可動配線装置である。通電金具46は、第1端部46aが開口溝21内で壁部40の室外側見付け面(室外側表面)にねじ止め固定され、第2端部46bが戸体14とねじ止め固定される。通電金具46は、第1端部46aから第2端部46bに向かって、開口溝21内で壁部40の室外側を縦枠12cに向かって延在した後、略U字状に折り返されて第2端部46bが戸体14の戸先側部分(例えばベース部26)に接続される。
【0035】
通電金具46は、例えば配線38を被覆する被覆材と、被覆材で被覆され、配線38に沿って延在する金属薄板とを有する。そして、通電金具46は、上記したように第1端部46aが壁部40(上枠12a)に固定され、第2端部46bが戸体14に固定されている。このため、通電金具46は、折り返された配線38が戸体14の開閉によって移動する際、その上下方向の位置ずれを抑制しつつ水平方向位置を保持することができる。これにより戸体14が移動した際、配線38が戸体14や上枠12aに引っ掛かったり、破損したりすることを防止することができる。
【0036】
配線38は、例えば戸体14から駆動部24のコントローラまで延在する1本の配線の一部に通電金具46が設けられた構成でもよい。配線38は、例えば2本又は3本をコネクタ接続することで、戸体14から駆動部24のコントローラまで延在させる構成でもよい。すなわち配線38は、例えば通電金具46と一体に構成された配線と、コントローラから通電金具46の第1端部46aまでの配線、及び戸体14から通電金具46の第2端部46bまでの配線とを、それぞれコネクタ接続した構成等としてもよい。また、
図5に示す構成例では、配線38は、上枠12aの戸先側端部12a1から建物躯体11へと配策しているが、戸尻側端部12a2から建物躯体11へと配策してもよい。
【0037】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、本実施形態の壁部40は、下向きの開口溝21内で下向きに突出するように設けられている。このため、配線38及びこれを被覆する通電金具46は、戸体14の設置前に開口溝21内へと下方から容易に差し込むことができ、さらに第1端部46aを容易に壁部40にねじ止めすることができる。
【0038】
さらに、通電金具46の第1端部46aよりも上枠12a側の配線38は、配線孔44に対して下方から容易に差し込むことができ、容易に隙間Gに収容することができる。ここで、隙間Gの下端開口部は、塞ぎ材48で閉塞してもよい。塞ぎ材48は、例えばスポンジやゴム等のシール材であり、隙間Gに沿って延在する。塞ぎ材48は、壁部40の下部と室内側壁部21bとの間に引っ掛けられるように設置され、隙間Gの上部空間に配線スペースを確保しつつ、隙間Gからの配線38の垂れ下がりや脱落を防止できる。さらに塞ぎ材48は、配線孔44の下端開口部から配線38が垂れ下がることも防止できる。本実施形態の壁部40は、その室内側表の下部に円弧状の凹み40aが形成されている(
図3(A)参照)。塞ぎ材48は、凹み40aに引っ掛けることで、位置決め及び脱落防止が図られる。
【0039】
このように、当該建具10では、配線38は、戸体14の上端部14aを飲み込む開口溝21内を室内外方向に仕切る壁部40の室内側に形成された隙間Gに通されている。つまり建具10は、上枠12a内では、開口溝21内を壁部40で区画した隙間Gを配線スペースとして用いている。すなわち、当該建具10は、駆動部24や戸体14のスライドスペースを確保するため、上枠12aの内側に配線38を通すためのスペースの確保が難しい構造となっている。そこで、建具10は、開口溝21に壁部40を設けることで、配線38を通すための隙間Gを確保でき、配線38の円滑な取り回しを可能としている。
【0040】
特に、建具10は、ローラ部22とベース部26とを有し、戸体14を吊下げ支持する戸体支持機構20を備えるため、上枠12a内での配線スペースの確保が一層難しい。そこで、建具10では、戸体14を吊下げるレール16よりも下方に壁部40を設け、ベース部26は開口溝21内で壁部40の室外側に配置する構成としている。これにより建具10は、戸体支持機構20の構成要素の設置スペースの確保と配線スペースの確保とを両立することが可能となっている。
【0041】
本発明の第1態様に係る建具は、戸体と、前記戸体がスライドするレールと、前記戸体の上端部を飲み込む開口溝と、を有する上枠と、前記戸体から前記上枠へと亘って設けられる配線と、を備え、前記上枠は、前記開口溝内を室内外方向に仕切る壁部を有し、前記配線は、前記開口溝内で前記壁部の室内側に形成された隙間に通される。このような構成によれば、上枠の内側に配線スペースの確保が難しい構造の建具であっても、戸体の上端部を飲み込む開口溝に壁部を設けることで、配線スペースを確保でき、配線の円滑な取り回しが可能となる。
【0042】
さらに、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部と、を有し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する戸体支持機構を備え、前記壁部は、前記レールよりも下方に設けられ、前記ベース部は、前記開口溝内で前記壁部の室外側に配置される構成としてもよい。そうすると、戸体支持機構の構成要素の設置スペースの確保と配線スペースの確保とを両立することができる。
【0043】
さらに、前記開口溝内に配置され、前記配線を被覆した通電金具を備え、前記通電金具は、第1端部が前記壁部の室外側表面に固定され、第2端部が前記戸体と固定される構成としてもよい。そうすると、戸体が移動する際にも、通電金具で被覆された配線が意図しない動作をすることを抑制でき、配線が戸体や上枠に引っ掛かったり、破損したりすることを防止できる。
【0044】
さらに、前記上枠の戸先側端部と連結された縦枠を備え、前記通電金具は、前記第1端部から前記第2端部に向かって、前記開口溝内で前記壁部の室外側を前記縦枠に向かって延在した後、略U字状に折り返されて前記戸体の戸先側部分に接続される構成としてもよい。そうすると、戸体と上枠との間で通電金具の動作スペースを確保できる。
【0045】
前記開口溝は、下向きに開口したものであり、前記壁部は、下向きに突出したヒレ状に構成としてもよい。そうすると、配線及びこれを被覆する通電金具は、開口溝内へと下方から容易に差し込むことができる。
【0046】
さらに、前記隙間の開口部を閉塞する塞ぎ材を備える構成としてもよい。そうすると、壁部の裏側の隙間からの配線の垂れ下がりや脱落を防止できる。
【0047】
さらに、前記壁部の一面側から他面側へと貫通し、前記配線を前記隙間に引き込むための配線孔を有する構成としてもよい。そうすると、開口溝内から壁部の裏側の隙間へと配線を容易に引き込むことができる。
【0048】
前記配線孔は、前記壁部をその下端部から上方に向かって切り欠くように形成された切欠き穴で構成としてもよい。そうすると、配線を配線孔に通す際、切欠き穴の開口から容易に差し込むことができ、作業効率が一層向上する。
【0049】
前記戸体を全閉位置とした状態で、前記配線孔は、前記戸体の室内側に隠される構成としてもよい。そうすると、全閉位置にある戸体で配線孔が覆い隠されるため、建具の外観品質の低下を防止できる。
【0050】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 建具、12 枠体、12a 上枠、14 戸体、16 レール、20 戸体支持機構、22 ローラ部、22a ローラ、22b シャフト、24 駆動部、26 ベース部、36 電気錠、38 配線、40 壁部、44 配線孔、46 通電金具、48 塞ぎ材、G 隙間