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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065719
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】熱媒体加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H05B3/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174726
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】508185890
【氏名又は名称】株式会社マキシマム・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】槇島 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 信夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 龍太郎
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP11
3K092PP15
3K092QB05
3K092QB21
3K092QB34
3K092QC49
3K092VV04
3K092VV25
(57)【要約】
【課題】薄型の熱媒体加熱装置のPTC素子で発生する熱を効率良く熱交換器に伝達する。
【解決手段】
第1の表面(11)及び第2の表面(12)を有するチップ状のPTC素子(1)と、夫々熱媒体を収容する第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)と、PTC素子(1)の第1の表面(11)と第1の熱交換器(7)との間及びPTC素子(1)の第2の表面(12)と第2の熱交換器(107)との間に配置される電気絶縁性の第1の伝熱板(3)及び第2の伝熱板(103)とを備え、PTC素子(1)の第1の表面(11)と第2の表面(12)で発生する熱により、第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)の熱媒体を同時にかつ効率的に加熱する熱媒体加熱装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び第2の表面を有するチップ状のPTC素子と、PTC素子の第1の表面及び第2の表面に夫々隣接して配置されかつ何れも熱媒体を収容する第1の熱交換器及び第2の熱交換器と、PTC素子の第1の表面と第1の熱交換器との間及びPTC素子の第2の表面と第2の熱交換器との間に配置される何れも電気絶縁性の第1の伝熱板及び第2の伝熱板とを備え、
PTC素子は、第1の表面に形成される一対の第1の櫛型電極と、第2の表面に形成される一対の第2の櫛型電極とを備え、
一対の第1の櫛型電極は、通電時に発熱する第1の発熱面を介して互いに離間しかつ対向して形成され、
一対の第2の櫛型電極は、通電時に発熱する第2の発熱面を介して互いに離間しかつ対向して形成され、
第1の伝熱板は、PTC素子の一対の第1の櫛型電極に電力を供給する一対の第1の中間電極を備え、
第2の伝熱板は、第1の櫛型電極と同時に、PTC素子の一対の第2の櫛型電極に電力を供給する一対の第2の中間電極を備えることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
PTC素子と第1の伝熱板との間に第1の空隙が形成されかつPTC素子と第2の伝熱板との間に第2の空隙が形成され、
何れも伝熱性で電気絶縁性の第1の伝熱剤及び第2の伝熱剤が第1の空隙及び第2の空隙に充填される請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
第1の伝熱板は、一対の第1の中間電極を支持する伝熱性で電気絶縁性の第1の支持板と、第1の熱交換器及び第1の支持板に密着する伝熱性で電気絶縁性の第1の可撓性膜とを備え、
第2の伝熱板は、一対の第2の中間電極を支持する伝熱性で電気絶縁性の第2の支持板と、第2の熱交換器及び第2の支持板に密着する伝熱性で電気絶縁性の第2の可撓性膜とを備える請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項4】
第1の支持板は、第1の可撓性膜に密着する第1の表面と、第1の伝熱剤に密着する第1の裏面とを備え、
第1の支持板の第1の裏面は、PTC素子の一対の第1の櫛型電極に電気的に接続される一対の第1の中間電極を支持し、
第2の支持板は、第2の可撓性膜に密着する第2の表面と、第2の伝熱剤に密着する第2の裏面とを備え、
第2の支持板の第2の裏面は、PTC素子の一対の第2の櫛型電極に電気的に接続される一対の第2の中間電極を支持する請求項3に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
一対の第1の櫛型電極は、一対の第1の帯状電極と、一対の第1の先端電極とを備え、
一対の第1の帯状電極は、半田を介して第1の支持板の一対の第1の中間電極に固着され、
一対の第1の先端電極は、互い違いに対向してPTC素子の第1の表面上で第1の帯状電極から突出し、
一対の第2の櫛型電極は、一対の第2の帯状電極と一対の第2の先端電極とを備え、
一対の第2の帯状電極は、半田を介して第2の支持板の一対の第2の中間電極に固着され、
一対の第2の先端電極は、互い違いに対向してPTC素子の第2の表面上で第2の帯状電極から突出する請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項6】
第1の伝熱板の第1の可撓性膜と第2の伝熱板の第2の可撓性膜の各々は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素又はそれらの混合物から選択される伝熱性添加剤を含むシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂であり、
第1の支持板と第2の支持板の各々は、酸化アルミニウム製である請求項3に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項7】
第1の伝熱剤と第2の伝熱剤の各々は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素又はそれらの混合物から選択される伝熱性添加剤を含むシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂により構成される請求項2に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項8】
第1の伝熱板の第1の可撓性膜と第2の伝熱板の第2の可撓性膜の各々は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素又はそれらの混合物から選択される伝熱性添加剤を含むシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂であり、
第1の支持板と第2の支持板の各々は、フレキシブルプリント基板である請求項3に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項9】
第1の伝熱剤及び第2の伝熱剤を夫々介して第1の伝熱板及び第2の伝熱板に隣接して配置される複数のPTC素子を備え、
複数のPTC素子の一対の第1の櫛型電極の各々は、第1の伝熱板に形成される一対の第1の中間電極に電気的に接続され、
複数のPTC素子の一対の第2の櫛型電極の各々は、第2の伝熱板に形成される一対の第2の中間電極に電気的に接続される請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一のPTC(Positive Temperature Coefficient、正温度特性)素子の発生熱により複数の熱交換器内の熱媒体を効率よく加熱する熱媒体加熱装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
容易な温度制御と少消費電力を特徴とするPTC素子の正温度特性を利用するPTCヒータは、温風発生器、流体加熱器、平面加熱器、凍結防止装置又は防曇装置等の加熱装置に用いられている。ニクロムヒータを含むサーモスタット等の付加的な温度調節手段を用いずしかも異常温度過熱又は断線等の心配のない自動温度制御機能を有するPTCヒータに直流電圧を印加すると、電流が流れるPTCヒータは、所望の温度に発熱する。小型軽量で簡素な構成のPTCヒータは、信頼性の高い汎用ヒータとして種々の用途に利用されている。例えば、車両用空調器に使用されるエンジン廃熱ヒータ以外の熱源として、PTCヒータが使用される。車両起動時に低温冷却水を迅速に加熱して熱交換器に供給し、空調装置起動時の温調立上がり性能を改善できる。電気自動車又は燃料電池自動車等の電動車両では、PTCヒータにより熱交換器内のエンジン冷却用液体(ロングライフクーラント)等の冷却液を温度制御して、最適な周囲温度により燃料電池を良好な発電効率に維持できる。
【0003】
下記特許文献1は、PTC素子を挟持してPTC素子の両面に電極板、アルミナ製の非圧縮性絶縁層及びシリコーン製の圧縮性熱伝導層を順次設けたPTCヒータと、PTCヒータの両面の各々に密着しかつ内部に熱媒体の流路が形成される熱媒体流通ボックスとを備える車両用空調装置を示し、前記PTCヒータは、両面で放熱して、熱媒体流通ボックス内を流通する熱媒体を加熱する。下記特許文献2は、内部に熱媒体が流通する熱交換器と、PTC素子を有するPTCヒータと、PTCヒータに供給される電力の電圧と電流を測定して調整する制御部とを備える空気調和装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4981386号公報
【特許文献2】特開2020-19451号公報
【特許文献3】特開2010-3814号公報
【特許文献4】特許第6562215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1及び2のPTCヒータは、PTC素子と、伝熱層と絶縁層とを介してPTC素子の両面に隣接して配置される熱交換器とを備える。このPTC素子は、図8(a)に示すように、PTC素子と、PTC素子の両主面に形成される正負両電極とを有する。熱交換器の使用時に、正負両電極間に電圧を印加すると、一方の電極から他方の電極に両主面間の厚み方向に電流が流れて、厚み方向に沿う図示の電圧分布、抵抗値分布及び温度分布が形成される。両電極間でPTC素子の厚み方向に電流が流れると、PTC素子の内部、特に厚み方向中央部が最高温度に発熱するので、逆に、熱交換器に隣接するPTC素子の両表面付近は、高温で発熱しない難点がある。図8(b)は、片面に放熱板を取り付けたPTC素子の厚み方向に沿う電圧分布、抵抗値分布及び温度分布を示す。図8(b)に示す例でも、PTC素子は、放熱板と反対面の抵抗値が高くなり高温に発熱する。その為、電流が制限されてしまい放熱板面が発熱せず、熱が取り出せなくなる。
【0006】
また、車両のエンジンルーム又はモータールーム内に配置される熱交換器及びそのPTCヒータは、限定された車両内空間に設置されるため、常に小型軽量化が要求される。例えば、特許文献1の車両用空調装置では、熱媒体流通ボックスに重ねて取り付けられるアルミニウム合金製の基板収容ボックス内に制御基板を収納し、制御基板からPTC素子の電極板に高電圧を印加し電流を流して、PTC素子を発熱するので、積層する熱媒体流通ボックスと基板収容ボックスにより、加熱装置全体の容積、特に厚さが増大する難点がある。また、どのPTCヒータでも、PTC素子で発生する熱を熱交換器に効率良く伝達する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、PTC素子の両面が発生する熱を熱媒体に効率的に伝達する熱媒体加熱装置を提供することを目的とする。また、本発明は、薄型の熱媒体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱媒体加熱装置は、第1の表面(11)及び第2の表面(12)を有するチップ状のPTC素子(1)と、PTC素子(1)の第1の表面(11)及び第2の表面(12)に夫々隣接して配置されかつ何れも熱媒体を収容する第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)と、PTC素子(1)の第1の表面(11)と第1の熱交換器(7)との間及びPTC素子(1)の第2の表面(12)と第2の熱交換器(107)との間に配置される何れも電気絶縁性の第1の伝熱板(3)及び第2の伝熱板(103)とを備える。PTC素子(1)は、第1の表面(11)に形成される一対の第1の櫛型電極(4,5)と、第2の表面(12)に形成される一対の第2の櫛型電極(104,105)とを備える。一対の第1の櫛型電極(4,5)は、通電時に発熱する第1の発熱面(21)を介して互いに離間しかつ対向して形成され、一対の第2の櫛型電極(104,105)は、通電時に発熱する第2の発熱面(121)を介して互いに離間しかつ対向して形成される。第1の伝熱板(3)は、PTC素子(1)の一対の第1の櫛型電極(4,5)に電力を供給する一対の第1の中間電極(33,34)を備え、第2の伝熱板(103)は、PTC素子(1)の一対の第2の櫛型電極(104,105)に電力を供給する一対の第2の中間電極(133,134)を備える。
【0009】
第1の伝熱板(3)の第1の中間電極(33,34)からPTC素子(1)の第1の櫛型電極(4,5)に電力を供給して、一対の第1の櫛型電極(4,5)間に電圧を印加すると、第1の櫛型電極(4,5)間の第1の表面(11)に電流が流れて、第1の発熱面(21)が発熱する。同時に、第2の伝熱板(103)の第2の中間電極(133,134)からPTC素子(1)の第2の櫛型電極(104,105)に電力を供給して、一対の第2の櫛型電極(104,105)間に電圧を印加すると、第2の櫛型電極(104,105)間の第2の表面(12)に電流が流れて、第2の発熱面(121)が同時に発熱する。異極の一対の電極をPTC素子(1)の2つの主面に形成しない本発明では、PTC素子(1)の厚さ方向電流は、意図されず、第1の熱交換器(7)に直近のPTC素子(1)の第1の発熱面(21)が最高温度に加熱されて、第1の熱交換器(7)内の熱媒体が効率的に加熱される。他面、第2の熱交換器(107)に直近のPTC素子(1)の第2の発熱面(121)も同様に最高温度に加熱されて、第2の熱交換器(107)内の熱媒体が同時にかつ効率的に加熱される。
【0010】
第1の表面(11)及び第2の表面(12)に流れる各電流量は、時間経過と共に増加するが、PTC素子(1)が一定の温度(キュリー点)に達すると、PTC素子(1)の電気抵抗値が急激に増加して、発熱は、一定温度に安定して保持されて、過剰な温度上昇が防止される。第1の伝熱板(3)の第1の中間電極(33,34)を介してPTC素子(1)の第1の櫛型電極(4,5)に電力を供給すると同時に、第2の伝熱板(103)の第2の中間電極(133,134)を介してPTC素子(1)の第1の第2の櫛型電極(104,105)に電力を同時に供給するので、従来のPTCヒータに必要な配線用制御基板を使用せずに、小型かつ軽量の熱媒体加熱装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の熱媒体加熱装置の基本構成を示す断面図
図2図1の熱媒体加熱装置に使用するPTC素子の斜視図
図3図2のPTC素子の裏面を示す斜視図
図4図2のIV-IV線に沿うPTC素子の断面図
図5】2段2流路を構成する電熱箱に収容した熱媒体加熱装置の分解斜視図
図6図5の熱媒体加熱装置の組立斜視図
図7】2段1流路を構成する電熱箱に収容した熱媒体加熱装置の分解斜視図
図8】従来のPTCヒータに使用するPTC素子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図7について、本発明の熱媒体加熱装置の実施の形態を以下説明する。
【0013】
図1に示す本発明の熱媒体加熱装置(100)は、チップ状のPTC素子(1)を備える。PTC素子(1)は、PTC素子(1)の上面及び下面を夫々構成する第1の表面(11)及び第2の表面(12)を有する。例えば、図2及び図3は、スクリーン印刷技術により、PTC素子(1)の第1の表面(11)及び第2の表面(12)に夫々形成された一対の第1の櫛型電極(4,5)と一対の第2の櫛型電極(104,105)とを示す。
【0014】
図2に示すPTC素子(1)の第1の表面(11)に形成される一対の第1の櫛型電極(4,5)は、夫々一対の第1の帯状電極(41,51)と、一対の第1の先端電極(42,52)とを備え、一対の第1の帯状電極(41,51)は、半田(8)を介して第1の支持板(31)の一対の第1の中間電極(33,34)に固着され、一対の第1の先端電極(42,52)は、PTC素子(1)の第1の表面(11)上で第1の帯状電極(41,51)から対向しかつ互い違いに突出する。本明細書で使用する用語「半田」は、融点が低く導電性かつ接着性の金属及び樹脂を含む広義の概念である。
【0015】
図3に示すPTC素子(1)の第2の表面(12)に形成される一対の第2の櫛型電極(104,105)は、一対の第2の帯状電極(141,151)と、一対の第2の先端電極(142,152)とを備え、第2の帯状電極(141,151)は、半田(108)を介して第2の支持板(131)の一対の第2の中間電極(133,134)に固着され、第2の先端電極(142,152)は、第2の帯状電極(133,134)から、対向しかつ互い違いに突出する。第1の櫛型電極(4,5)と第2の櫛型電極(104,105)には、夫々第1の中間電極(33,34)と第2の中間電極(133,134)から異なる送電経路で同時に給電されるので、第1の櫛型電極(4,5)と第2の櫛型電極(104,105)とを電気的に接続する製造の困難な垂直電極をPTC素子(1)の両対向側面(13)に形成する必要はない。
【0016】
第1の伝熱板(3)と第2の伝熱板(103)は、PTC素子(1)とは別に作成される。第1の伝熱板(3)は、伝熱性で電気絶縁性の第1の支持板(31)と、第1の支持板(31)に密着して形成される伝熱性で電気絶縁性の第1の可撓性膜(32)とを備える。第1の伝熱板(3)の第1の支持板(31)には、一対の第1の中間電極(33,34)がスクリーン印刷技術により形成される。PTC素子(1)の第1の表面(11)の一対の第1の櫛型電極(4,5)には、粘着性の半田(8)が配置され、第1の伝熱板(3)の一対の第1の中間電極(33,34)が半田(8)上に仮接着される。その後、第1の伝熱板(3)の第1の可撓性膜(32)上に第1の熱交換器(7)が配置される。
【0017】
同様に、第2の伝熱板(103)は、伝熱性で電気絶縁性の第2の支持板(131)と、第2の支持板(131)に密着して形成される伝熱性で電気絶縁性の第2の可撓性膜(132)とを備える。第2の伝熱板(103)の第2の支持板(131)には、一対の第2の中間電極(133,134)がスクリーン印刷技術により形成される。PTC素子(1)の第2の表面(12)の一対の第2の櫛型電極(104,105)には、粘着性の半田(108)が配置され、第2の伝熱板(103)の一対の第1の中間電極(133,134)が半田(108)上に仮接着される。その後、第2の伝熱板(103)の第2の可撓性膜(132)上に第2の熱交換器(107)が配置される。別法として、PTC素子(1)の第1の表面(11)及び第2の表面(12)に第1の伝熱剤(2)及び第2の伝熱剤(102)と第1の支持板(31)及び第2の支持板(131)とを設けた後、第1の支持板(31)の第1の表面(31a)及び第2の支持板(131)の第2の表面(131a)又は第1の熱交換器(7)の平滑面(7a)及び第2の熱交換器(107)の平滑面(107a)に第1の可撓性膜(32)及び第2の可撓性膜(132)を設けてもよい。
【0018】
このように、第1の櫛型電極(4,5)、半田(8)及び第1の中間電極(33,34)を介して、PTC素子(1)の上方に第1の伝熱板(3)と第1の熱交換器(7)が垂直方向に配置され積層されて、第1の半組立体が形成される。また、第2の櫛型電極(104,105)、半田(108)及び第2の中間電極(133,134)を介して、PTC素子(1)の下方に第2の伝熱板(103)と第2の熱交換器(107)が垂直方向に配置され積層されて、第2の半組立体が形成される。更に、第1の半組立体と第2の半組立体とを図1のように接合して、予備組立体が形成される。
【0019】
次に、リフロー加熱器内に予備組立体を配置して、予備組立体内で半田及び必要な接着剤を溶融しかつ冷却して、半田及び接着剤を硬化させて、熱媒体加熱装置(100)の強固な予備組立体が形成される。続いて、PTC素子(1)の第1の表面(11)、第1の櫛型電極(4,5)、第1の伝熱板(3)及び第1の中間電極(33,34)により形成される第1の空隙(20)内に伝熱性で電気絶縁性の第1の伝熱剤(2)が充填される。同様に、PTC素子(1)の第2の表面(12)、第2の櫛型電極(104,105)、第2の伝熱板(103)及び第2の中間電極(133,134)により形成される第2の空隙(120)内に伝熱性で電気絶縁性の第2の伝熱剤(102)が充填されて、熱媒体加熱装置(100)が形成される。
【0020】
別法として、熱媒体加熱装置(100)の予備組立体の形成前に、PTC素子(1)の第1の表面(11)、第1の櫛型電極(4,5)、第1の伝熱板(3)及び第1の中間電極(33,34)の積層により第1の空隙(20)が形成される。第1の空隙(20)内に第1の伝熱剤(2)を充填した後に、リフロー加熱器で接着剤を溶融し硬化させてもよい。同様に、PTC素子(1)の第2の表面(12)、第2の櫛型電極(104,105)、第2の伝熱板(103)及び第2の中間電極(133,134)の積層により第2の空隙(120)が形成される。第2の空隙(120)内に第2の伝熱剤(102)を充填して、リフロー加熱器で接着剤を溶融し硬化させてもよい。
【0021】
本実施の形態では、第1の伝熱板(3)の第1の中間電極(33,34)からPTC素子(1)の第1の櫛型電極(4,5)に電力を供給し、また第2の伝熱板(103)の第2の中間電極(133,134)からPTC素子(1)の第2の櫛型電極(104,105)に電力を供給する。一対の第1の櫛型電極(4,5)間に電圧を印加すると、一対の第1の先端電極(42,52)間に電流が流れて、第1の発熱面(21)が発熱する。本実施の形態では、第1の熱交換器(7)に直近のPTC素子(1)の第1の発熱面(21)に流れる電流により最高温度に加熱されるのに対し、PTC素子(1)の厚さ方向に流れる電流は、意図しないので、PTC素子(1)の厚さ方向中央部には最高温度に加熱されないため、PTC素子(1)の第1の発熱面(21)に隣接する第1の熱交換器(7)の熱媒体を効率的に加熱できる利点が生ずる。
【0022】
同様に、一対の第2の櫛型電極(104,105)間に電圧を印加すると、一対の第2の先端電極(142,152)間に電流が流れて、第2の発熱面(121)が発熱する。第2の熱交換器(107)に直近のPTC素子(1)の第2の発熱面(121)に流れる電流により、第1の発熱面(21)と同時に、最高温度に加熱されるので、第2の熱交換器(107)の熱媒体を同時にかつ効率的に加熱できる。
【0023】
PTC素子(1)の固有の特性として、第1の表面(11)及び第2の表面(12)に流れる電流量は、時間経過と共に増加するが、PTC素子(1)が特定の温度(キュリー点)に達すると、PTC素子(1)の電気抵抗値が急激に増加する。このため、PTC素子(1)は、一定温度に保持されて、過剰な温度上昇が防止される。また、第1の伝熱板(3)の第1の中間電極(33,34)を介して、PTC素子(1)の第1の櫛型電極(4,5)に電力を供給すると同時に、第2の伝熱板(103)の第2の中間電極(133,134)を介して、PTC素子(1)の第2の櫛型電極(104,105)に電力を供給するので、特許文献1等の従来の車両用空調装置に必要な配線用制御基板を使用しない熱媒体加熱装置を小型に製造できる。
【0024】
第1の支持板(31)の第1の裏面(31b)に設けられる一対の第1の中間電極(33,34)は、適切な電力源に接続されて、PTC素子(1)の第1の櫛型電極(4,5)に電力を供給する。同様に、第2の支持板(131)の第2の裏面(131b)に設けられる一対の第2の中間電極(133,134)も、適切な電力源に接続されて、PTC素子(1)の第2の櫛型電極(104,105)に電力を供給する。PTC素子(1)の第1の表面(11)に形成される第1の櫛型電極(4,5)間の第1の発熱面(21)の寸法により、第1の表面(11)を流れる電流に対するPTC素子(1)の最適な抵抗値特性と電流値特性が決定される。同様に、PTC素子(1)の第2の表面(12)に形成される第2の櫛型電極(104,105)間の第2の発熱面(121)の寸法により、第2の表面(12)を流れる電流に対するPTC素子(1)の最適な抵抗値特性と電流値特性が決定される。第1の表面(11)に形成される第1の櫛型電極(4,5)間の第1の発熱面(21)に集中して電流が流れて発生する熱は、第1の伝熱板(3)を介して効率的に第1の熱交換器(7)に伝達される。同様に、第2の表面(12)に形成される第2の櫛型電極(104,105)間の第2の発熱面(121)に集中して電流が流れて発生する熱は、伝熱板(103)を介して効率的に第2の熱交換器(107)に伝達される。
【0025】
図5は、第1の伝熱箱(71)と第2の伝熱箱(171)とを有する伝熱箱(70)内に図1の発熱構造体を収容する2段2流路型の熱媒体加熱装置(100)の分解斜視図を示す。図6は、図5の熱媒体加熱装置(100)の組立斜視図を示す。図7は、伝熱箱(70)内に図1の発熱構造体を収容する2段1流路型の熱媒体加熱装置(200)の分解斜視図を示す。
【0026】
本発明の実施の形態に使用するPTC素子(1)は、例えば、チタン酸バリウムを主成分とする基板とを備えるチップ状の表面実装型サーミスタであり、安定な抵抗温度特性を有し、微粒化原料により小型に形成される。この種のPTCサーミスタの特性と製法は、例えば、特許文献3に開示される。セラミックPTC、カーボン・ポリマー系PTC又は金属酸化物・ポリマー系PTC等の公知の正特性サーミスタの素体又は基材を実施の形態でのPTC素子(1)に利用できる。
【0027】
通電時に電流が流れる一対の第1の先端電極(42,52)間の第1の発熱面(21)と一対の第2の先端電極(142,152)間の第2の発熱面(121)とがPTC素子(1)に形成される。一対の第1の先端電極(42,52)及び第2の先端電極(142,152)の寸法は、PTC素子(1)の抵抗値又は電流値を決定するので、PTC素子(1)の第1の表面(11)の第1の先端電極(42,52)間に形成される第1の発熱面(21)と、第2の表面(12)の2の先端電極(142,152)間に形成される第2の発熱面(121)の寸法又は面積を適宜選択して、PTC素子(1)の最適な抵抗値特性及び電流値特性が決定される。櫛型電極の製法は、例えば、特許文献4に開示される。通電時にPTC素子(1)の第1の表面(11)から有効に発熱する図2図4に示す櫛型以外の形状に第1の櫛型電極(4,5)及び第2の櫛型電極(104,105)を形成してもよい。
【0028】
例えば、第1の伝熱板(3)の第1の可撓性膜(32)及び第2の伝熱板(103)の第2の可撓性膜(132)は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素又はそれらの混合物から選択される伝熱性添加剤を含むシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂により構成される。また、第1の可撓性膜(32)及び第2の可撓性膜(132)を支持する硬質の第1の支持板(31)及び第2の支持板(131)は、酸化アルミニウムにより構成される。
【0029】
第1の熱交換器(7)に密着して固定される第1の伝熱板(3)の第1の可撓性膜(32)は、電気放電又は電気的短絡を防止しつつ、PTC素子(1)の熱を第1の熱交換器(7)に伝達しかつ第1の熱交換器(7)からPTC素子(1)に伝達される外力を緩和し又は吸収する。同様に、第2の熱交換器(107)に密着して固定される第2の伝熱板(103)の第2の可撓性膜(132)は、電気放電又は電気的短絡を防止しつつ、PTC素子(1)の熱を第2の熱交換器(107)に伝達しかつ第2の熱交換器(107)からPTC素子(1)に伝達される外力を緩和し又は吸収する。高機械的強度を有する酸化アルミニウム製の第1の支持板(31)と第2の支持板(131)とにスクリーン印刷の積層印刷技術を適用して、第1の中間電極(33,34)と第2の中間電極(133,134)とを容易に形成できる。
【0030】
第1の支持板(31)は、第1の可撓性膜(32)に密着する第1の表面(31a)と、第1の伝熱剤(2)に密着する第1の裏面(31b)とを備え、第1の支持板(31)の第1の裏面(31b)に一対の第1の中間電極(33,34)が形成される。一対の第1の櫛型電極(4,5)は、半田(8)により第1の支持板(31)の一対の第1の中間電極(33,34)に電気的に接続される。同様に、第2の支持板(131)は、第2の可撓性膜(132)に密着する第2の表面(131a)と、第2の伝熱剤(102)に密着する第2の裏面(131b)とを備え、第2の支持板(131)の第2の裏面(131b)に一対の第2の中間電極(133,134)が形成される。一対の第2の櫛型電極(104,105)は、半田(108)により第2の支持板(131)の一対の第2の中間電極(133,134)に電気的に接続される。表面に電極を形成した酸化アルミニウムの代わりに、電気絶縁性を有しかつ薄膜状で可撓性又は柔軟性のポリイミドフィルムに銅箔等の導電性金属を貼着した複合基材に電気回路を形成するフレキシブルプリント基板(FPC)を第1の支持板(31)及び第2の支持板(131)に使用してもよい。ポリイミドフィルムから導電性金属を露出して、第1の中間電極(33,34)と第2の中間電極(133,134)を形成する。電気放電又は短絡を防止しつつ、ポリイミド薄膜を介してPTC素子(1)の熱を第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)に伝達できる。
【0031】
第1の伝熱剤(2)と第2の伝熱剤(102)は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素又はそれらの混合物から選択される伝熱性添加剤を含むシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂により構成される。PTC素子(1)の第1の表面(11)に形成される第1の櫛型電極(4,5)と、第1の支持板(31)の第1の裏面(31b)に形成される第1の中間電極(33,34)とは、半田(8)により電気的に接続される。PTC素子(1)の第1の表面(11)には、第1の櫛型電極(4,5)が小量だけ突出し、第1の支持板(31)の第1の裏面(31b)には、第1の中間電極(33,34)が小量だけ突出し、第1の櫛型電極(4,5)と第1の中間電極(33,34)とに挟持される半田(8)の高さとの総和により、第1の空隙(20)が形成される。第1の空隙(20)内に封入される空気により、第1の空隙(20)の伝熱効率を低下する難点がある。
【0032】
このため、PTC素子(1)の第1の表面(11)と第1の支持板(31)の第1の裏面(31b)との間の第1の空隙(20)内に第1の伝熱剤(2)を充填して、第1の空隙(20)の伝熱効率を改善すると共に、PTC素子(1)の第1の表面(11)、第1の櫛型電極(4,5)、第1の支持板(31)の第1の裏面(31b)及び第1の中間電極(33,34)に第1の伝熱剤(2)を密着させて、PTC素子(1)と第1の伝熱板(3)との位置ズレを阻止する機能も発生する。また、PTC素子(1)の第1の表面(11)の粗面、第1の櫛型電極(4,5)及び第1の支持板(31)の表面の何れにも密着する可撓性の第1の伝熱剤(2)は、異なる物質界面での接触面積を増加して、PTC素子(1)の第1の表面(11)から伝達される熱の伝熱効率の低下を抑制する。PTC素子(1)と第2の伝熱板(103)との間に形成される第2の空隙(120)内に充填される第2の伝熱剤(102)も同様である。PTC素子(1)の第2の表面(12)の粗面、第2の櫛型電極(104,105)及び第2の支持板(131)の表面の何れにも密着する可撓性の第2の伝熱剤(102)は、第2の空隙(120)の伝熱効率を改善すると共に、PTC素子(1)と第2の伝熱板(103)とを物理的に固定する。
【0033】
アルミニウム、銅又はこれらの合金等の伝熱性金属により、第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)の伝熱箱(70)を構成し、第1の伝熱板(3)及び第2の伝熱板(103)を介してPTC素子(1)が密着する第1の熱交換器(7)の平滑面(7a)及び第2の熱交換器(107)の平滑面(107a)を有する。図5に示すように、第1の熱交換器(7)は、溝状の第1の流路(73)が内部に形成される第1の伝熱箱(71)と、第1の伝熱箱(71)に取り付けられて第1の伝熱箱(71)内の第1の流路(73)を密閉する第1の密閉箱(72)とを備え、第2の熱交換器(107)は、内部に溝状の第2の流路(不図示)を有する第2の伝熱箱(171)と、第2の伝熱箱(171)に取り付けられて第2の伝熱箱(171)内の第2の流路を密閉する第2の密閉箱(172)とを備える。第1の伝熱箱(71)及び第2の伝熱箱(171)を伝熱性金属により製造し、第1の密閉箱(72)及び第2の密閉箱(172)を耐熱性樹脂により製造してもよい。
【0034】
第1の伝熱箱(71)は、PTC素子(1)の発熱で加熱される第1の熱交換器(7)の平滑面(7a)を構成する伝熱面(71a)と、伝熱面(71a)の反対側で第1の流路(73)を形成する放熱面(71b)とを有する。同様に、第2の伝熱箱(171)は、PTC素子(1)の発熱で加熱される第2の熱交換器(107)の平滑面(107a)を構成する伝熱面(171a)と、伝熱面(171a)の反対側で第2の流路(不図示)を形成する放熱面(171b)とを有する。第1の密閉箱(72)は、第1の伝熱箱(71)の第1の流路(73)に熱媒体が通過する第1の流入口(76)と、第1の熱交換器(7)内を通過する熱媒体が排出される第1の排出口(77)とを備える。第2の伝熱箱(171)は、流路とは反対側に第2の伝熱板(103)を収容する凹部(178)を内側に有する。第2の密閉箱(172)は、第2の伝熱箱(171)の流路に熱媒体を流入する第2の流入口(176)と、PTC素子(1)により加熱される熱媒体を第1の熱交換器(7)から排出する第2の排出口(177)とを備える。
【0035】
図5に示す第1の伝熱箱(71)の放熱面(71b)には、第1の流路(73)の周囲を包囲する第1の密封材(14)が取り付けられ、PTC素子(1)、第1の伝熱板(3)及び第2の伝熱板(103)の周囲を包囲する第2の密封材(15)が第2の伝熱箱(171)の凹部(178)に取り付けられる。第2の密閉箱(172)は、第2の伝熱箱(171)の第2の流路の周囲を包囲する第3の密封材(114)を有する。第1の密閉箱(72)と第1の伝熱箱(71)との境界面間及び第2の密閉箱(172)と第2の伝熱箱(171)との境界面間に、Oリング等の第1の密封材(14)、第2の密封材(15)及び第3の密封材(114)を挟持して、第1の密閉箱(72)、第1の伝熱箱(71)、第2の密閉箱(172)及び第2の伝熱箱(171)を積層体に重ねて、ボルト・ナット等の機械的固定手段で、積層体を緊締して一体化すると、第1の流路(73)、第2の流路、PTC素子(1)、第1の伝熱板(3)及び第2の伝熱板(103)が液密に密閉される。第1の密封材(14)、第2の密封材(15)及び第3の密封材(114)により、第1の密閉箱(72)と第1の伝熱箱(71)との界面又は第2の密閉箱(172)と第2の伝熱箱(171)との界面を通じて第1の流路(73)又は第2の流路を流れる熱媒体の外部への漏洩が防止される。また、第1の密閉箱(72)と第1の伝熱箱(71)との界面又は第2の密閉箱(172)と第2の伝熱箱(171)との界面を通じて、熱媒体又は外部の異物の侵入と、PTC素子(1)との接触を阻止して、PTC素子(1)の劣化及び電気放電又は短絡が防止される。
【0036】
図5及び図6に示す2段2流路型の熱媒体加熱装置(100)は、第1の流入口(76)が形成される第1の密閉箱(72)と、第2の流入口(176)が形成される第2の伝熱箱(171)とを備える伝熱箱(70)を有し、第1の流入口(76)と第2の流入口(176)には金属製又は樹脂製の流入管(79)が接続される。また、第1の密閉箱(72)の第1の排出口(77)と第2の伝熱箱(171)の第2の排出口(177)には、金属製又は樹脂製の排出管(80)が接続される。共通の流入管(79)から第1の流入口(76)及び第2の流入口(176)を通じて、熱媒体は、第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)の両方に流入し、PTC素子(1)により第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)内で加熱される熱媒体は、第1の排出口(77)及び第2の排出口(177)を通じて、排出管(80)から排出される。第1の熱交換器(7)と第2の熱交換器(107)の各熱媒体を、単一のPTC素子(1)により同時にかつ効率的に加熱するので、十分な量の加熱熱媒体を排出管(80)から排出できる。
【0037】
図7は、本発明の第2の実施の形態による2段1流路型の熱媒体加熱装置(200)を示す。第1の密閉箱(72)の第1の排出口(77)と第2の伝熱箱(171)の第2の流入口(176)には、金属製又は樹脂製の連絡管(81)が接続される。第1の流入口(76)から第1の密閉箱(72)内の第1の熱交換器(7)に流入する熱媒体は、PTC素子(1)により第1の熱交換器(7)内で加熱された後、連絡管(81)を通じて第2の流入口(176)から第2の伝熱箱(171)に流入し、第2の熱交換器(107)内でPTC素子(1)により更に加熱されて、第2の排出口(177)から排出される。第1の熱交換器(7)で加熱される熱媒体を第2の熱交換器(107)で再度加熱するので、伝熱箱(70)内での熱媒体を確実に高温に加熱して第2の排出口(177)から排出できる。
【0038】
2段2流路型又は2段1流路型の熱媒体加熱装置(100,200)を製造するとき、先ず、第1の支持板(31)の中間電極(33,34)に半田、導電性接着剤又は銀ナノ粒子ペースト(8)を印刷又は塗布する。続いて、第1の支持板(31)の中間電極(33,34)の間に熱伝導接着剤(第1の伝熱剤(2))を印刷又は塗布し、第1の支持板(31)にPTC素子(1)を装着すると共に、半田、導電性接着剤又は銀ナノ粒子ペースト(108)及び熱伝導接着剤(第2の伝熱剤(102))を印刷又は塗布した第2の支持板(131)を装着し、加熱及び冷却によりPTC素子(1)と第1の支持板(31)及び第2の支持板(131)とを同時に接合する。また、第1の熱交換器(7)の平滑面(7a)に熱伝導接着剤(第1の可撓性膜(32))を印刷又は塗布し、PTC素子(1)と第1の支持板(31)及び第2の支持板(131)との接合体を第1の伝熱箱(71)に装着する。更に、第2の熱交換器(107)の平滑面(107a)に熱伝導接着剤(第2の可撓性膜(132))を印刷又は塗布して第2の密閉材(15)を装着した後、第1の伝熱箱(71)と第2の伝熱箱(171)とをネジ止めにより固定する。続いて、第1の伝熱箱(71)と第2の伝熱箱(171)との積層体を加熱及び冷却により積層体の全構成部品を固定する。更に、第1の密閉箱(72)に第1の伝熱箱(71)と第2の伝熱箱(171)との積層体と第1の密閉材(14)を装着して、第1の密閉箱(72)と第1の伝熱箱(71)とをネジ止めする。最後に、第1の伝熱箱(71)及び第2の伝熱箱(171)と第1の密閉箱(72)との積層体に第2の密閉箱(172)と第3の密封材(114)を装着すると共に第2の密閉箱(172)と第2の伝熱箱(171)とをネジ止めして、強固な構造の組立体を完成する。
【0039】
製造の工程は、自由に変更できる。詳細には、スクリーン印刷の積層印刷技術により、PTC素子(1)の第1の表面(11)及び第2の表面(12)に第1の櫛型電極(4,5)と第2の櫛型電極(104,105)とが形成される。別途準備した第1の伝熱板(3)と第2の伝熱板(103)に第1の中間電極(33,34)と第2の中間電極(133,134)とが形成される。次に、PTC素子(1)の第1の櫛型電極(4,5)及び第2の櫛型電極(104,105)上に粘着性の半田(8,108)を実装機により配置して、半田(8,108)を仮止めした後、第1の中間電極(33,34)と第2の中間電極(133,134)とを半田(8,108)に重なねて、第1の伝熱板(3)及び第2の伝熱板(103)を半田(8,108)上に重ねて、中間積層体が作成される。その後、リフロー加熱炉内に中間積層体を配置して、半田(8,108)をリフロー加熱炉内で溶融し冷却して、PTC素子(1)の第1の櫛型電極(4,5)と第1の伝熱板(3)の第1の中間電極(33,34)及び第2の櫛型電極(104,105)と第2の中間電極(133,134)とが半田(8,108)により接着される。
【0040】
続いて、PTC素子(1)と第1の伝熱板(3)との間に形成される第1の空隙(20)に第1の伝熱剤(2)を圧入すると共に、PTC素子(1)と第2の伝熱板(103)との間に形成される第2の空隙(120)に第2の伝熱剤(102)を圧入して、第1の空隙(20)及び第2の空隙(120)から空気を除去し、図5に示す熱媒体加熱装置(100,200)の中間組立体が作成される。半田(8,108)の融点が、第1の伝熱剤(2)及び第2の伝熱剤(102)の融点より十分に低ければ、リフロー加熱炉内に中間積層体を配置する前に、周知のディスペンサを使用して、第1の空隙(20)及び第2の空隙(120)が形成される位置に第1の伝熱剤(2)及び第2の伝熱剤(102)を塗布又は充填することができる。
【0041】
伝熱性の接着剤により、第1の伝熱箱(71)の伝熱面(71a)に第1の伝熱板(3)の第1の可撓性膜(32)が固着され、同様に、伝熱性の接着剤により、第2の伝熱箱(171)の伝熱面(171a)に第2の伝熱板(103)の第2の可撓性膜(132)が固着される。次に、第1の密封材(14)、第2の密封材(15)及び第3の密封材(114)を夫々第1の伝熱箱(71)、第2の伝熱箱(171)及び第2の密閉箱(172)の対応する溝に篏合して、第1の密閉箱(72)、第1の伝熱箱(71)、第2の密閉箱(172)及び第2の伝熱箱(171)が積層される。粘着性の第1の可撓性膜(32)を使用すれば、接着剤を使用せずに第1の伝熱箱(71)の伝熱面(71a)に直接固着できる。同様に、粘着性の第2の可撓性膜(132)を使用すれば、接着剤を使用せずに第2の伝熱箱(171)の伝熱面(171a)に直接固着できる。ボルト及びナット等の複数の固定部材(75)により第1の密閉箱(72)、第1の伝熱箱(71)、第2の密閉箱(172)及び第2の伝熱箱(171)を締め付けて固定し、その後、流入管(79)及び排出管(80)又は連絡管(81)を取り付けて、図6及び図7に示す2段2流路型又は2段1流路型の熱媒体加熱装置(100,200)が完成する。
【0042】
熱媒体加熱装置(100,200)の第1の伝熱箱(71)又は第2の伝熱箱(171)は、液密に設けられる配線口と電力供給線(共に不図示)を通じて、外部電源から第1の伝熱板(3)の第1の中間電極(33,34)及び第2の伝熱板(103)の第2の中間電極(133,134)に電力が供給される。第1の中間電極(33,34)及び第2の中間電極(133,134)を通じて第1の櫛型電極(4,5)間及び第2の中間電極(133,134)間に電圧が印加されると、第1の櫛型電極(4,5)間及び第2の櫛型電極(104,105)間に形成される第1の発熱面(21)及び第2の発熱面(121)に主電流が流れてPTC素子(1)に発生する熱が第1の伝熱板(3)及び第2の伝熱板(103)を介して第1の熱交換器(7)及び第2の熱交換器(107)に伝達される。PTC素子(1)の第1の発熱面(21)及び第2の発熱面(121)からの放熱により、第1の熱交換器(7)内及び第2の熱交換器(107)内を流通する冷却液等の熱媒体が加熱される。
【0043】
本発明の実施の形態は、変更が可能である。例えば、2段2流路型又は2段1流路型の熱媒体加熱装置(100,200)のPTC素子(1)の両対向側面(13)に一対の接続電極(不図示)を設けて、一対の第1の櫛型電極(4,5)の一方と一対の第2の櫛型電極(104,105)の一方とを接続し、一対の第1の櫛型電極(4,5)の他方と一対の第2の櫛型電極(104,105)の他方とを接続してもよい。第1の伝熱板(3)の第1の中間電極(33,34)から第1の櫛型電極(4,5)及び第2の櫛型電極(104,105)に同時に電力を供給して、PTC素子(1)の第1の発熱面(21)及び第2の発熱面(121)を同時に発熱できる。この変形例では、第2の伝熱板(103)の第2の中間電極(133,134)を省略して、熱媒体加熱装置(100,200)全体の厚さを更に縮小できる。PTC素子、伝熱板及び熱交換器を2段2流路型又は2段1流路型の熱媒体加熱装置(100,200)に更に積層して、4段4流路型、4段2流路型若しくは4段1流路型又はそれ以上の多重段の熱媒体加熱装置を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電気自動車若しくは燃料電池自動車等の電動車両又は従来のエンジン車両の空調用又は燃料電池温度調節用の熱交換器、熱交換器内の熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
(1)・・PTC素子、 (3)・・第1の伝熱板、 (4,5)・・第1の櫛型電極、 (7)・・第1の熱交換器、 (11)・・第1の表面、 (12)・・第2の表面、 (21)・・第1の発熱面、 (31b)・・第1の裏面、 (131b)・・第2の裏面、 (33,34)・・第1の中間電極、 (100,200)・・熱媒体加熱装置、 (103)・・第2の伝熱板、 (107)・・第2の熱交換器、 (104,105)・・第2の櫛型電極、 (121)・・第2の発熱面、 (133,134)・・第2の中間電極、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8