(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006573
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01N27/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107603
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA05
2G046AA07
2G046AA11
2G046AA13
2G046AA19
2G046BB02
2G046BD01
2G046BD06
2G046BF05
2G046FE38
(57)【要約】
【課題】防水性を有し、かつ、コストが低減されたガスセンサを提供する。
【解決手段】ガスセンサ1は、ガス検知器15と、ガス検知器15を覆うリッド20とを備える。リッド20は、半導体材料で形成されている。リッド20は、ガス検知器15に対向する第1主面21と、第1主面21とは反対側の第2主面22とを含む。リッド20に、複数の貫通孔23が設けられている。複数の貫通孔23の各々は、第1主面21から第2主面22まで延在している。複数の貫通孔23の各々の直径は、50μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検知器と、
前記ガス検知器を覆うリッドとを備え、
前記リッドは、半導体材料で形成されており、
前記リッドは、前記ガス検知器に対向する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを含み、
前記リッドに、複数の貫通孔が設けられており、前記複数の貫通孔の各々は、前記第1主面から前記第2主面まで延在しており、
前記複数の貫通孔の各々の直径は、50μm以下である、ガスセンサ。
【請求項2】
前記リッドは、防水性試験(JIS C 0920)の保護等級IPX4以上を満たす、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記直径は、20nm以上である、請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記ガス検知器を支持する支持基板をさらに備え、
前記リッドは前記支持基板に固定されており、
前記支持基板と前記リッドとの間に、前記ガス検知器が収容されるキャビティが形成されている、請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記複数の貫通孔の面積比率は10%以上であり、
前記面積比率は、前記第2主面の平面視における前記複数の貫通孔の面積を、前記第2主面の前記平面視において前記第2主面のうち前記キャビティに対向する領域の面積で割ることによって与えられる、請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記リッドは、前記第1主面から突出する凸部を含み、
前記凸部は前記支持基板に固定されている、請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記リッドのガス透過性は、100g/(m2・24h)以上である、請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記リッドの前記第2主面は、撥水処理されている、請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記第1主面と前記第2主面との間の距離は、0.1mmより大きい、請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記リッドは、Siで形成されている、請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-78089号公報(特許文献1)は、感ガス部と、通気性を有するカバーとを備えるガスセンサを開示している。通気性を有するカバーは、金属製のリッドを含む。金属製のリッドに、複数の孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、防水性を有し、かつ、コストが低減されたガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のガスセンサは、ガス検知器と、ガス検知器を覆うリッドとを備える。リッドは、半導体材料で形成されている。リッドは、ガス検知器に対向する第1主面と、第1主面とは反対側の第2主面とを含む。リッドに、複数の貫通孔が設けられている。複数の貫通孔の各々は、第1主面から第2主面まで延在している。複数の貫通孔の各々の直径は、50μm以下である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、防水性を有し、かつ、コストが低減されたガスセンサが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施の形態1のガスセンサの概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1のガスセンサの概略平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1のガスセンサの製造方法のフローチャートを示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1のリッドの製造方法の第1の例の一工程を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1のリッドの製造方法の第1の例における、
図4に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1のリッドの製造方法の第1の例における、
図5に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1のリッドの製造方法の第1の例における、
図6に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1のリッドの製造方法の第2の例及び第3の例の一工程を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1のリッドの製造方法の第2の例及び第3の例における、
図8に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1のリッドの製造方法の第2の例における、
図9に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1のリッドの製造方法の第2の例における、
図10に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態1のリッドの製造方法の第3の例における、
図9に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、実施の形態1のリッドの製造方法の第3の例における、
図12に示される工程の次工程を示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、実施の形態1の変形例のガスセンサの概略断面図である。
【
図15】
図15は、実施の形態2のガスセンサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面に基づいて本開示の実施の形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施の形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0009】
(実施の形態1)
【0010】
図1及び
図2を参照して、実施の形態1のガスセンサ1を説明する。ガスセンサ1は、支持基板10と、ガス検知器15と、リッド20とを備える。
【0011】
支持基板10は、ガス検知器15を支持する。支持基板10は、例えば、プリント回路基板である。支持基板10は、電気配線(図示せず)と、外部端子12とを含む。支持基板10は、主面10aを有する。外部端子12は、例えば、主面10a上に設けられている。主面10aの平面視において、外部端子12は、リッド20の外側に配置されている。外部端子12は、支持基板10の電気配線に接続されている。外部端子12は、支持基板10の電気配線を通じて、ガス検知器15に接続されている。
【0012】
ガス検知器15は、ガスセンサ1の周囲環境にあるガス2を検出する。具体的には、ガス検知器15は、リッド20の複数の貫通孔23を通ってガスセンサ1のキャビティ29に流入したガス2を検出して、ガス2の濃度のようなガス2に関する信号を出力する。ガス2に関する信号は、支持基板10の電気配線及び外部端子12を通して、ガスセンサ1の外部に出力される。ガス検知器15が検出するガス2は、特に限定されないが、例えば、メタン、水素、酸素、一酸化炭素または窒素酸化物(NOx)などである。ガス検知器15は、特に限定されないが、例えば、半導体ガスセンサチップである。
【0013】
リッド20は、ガス検知器15を覆う。リッド20は、シリコン(Si)のような半導体材料で形成されている。リッド20は、ガス検知器15に対向する第1主面21と、第1主面21とは反対側の第2主面22とを含む。第1主面21と第2主面22との間の距離dは、例えば、0.1mmより大きい。そのため、リッド20の機械的強度が向上する。第1主面21と第2主面22との間の距離は、例えば、0.5mm以上であってもよく、1.0mm以上であってもよい。
【0014】
リッド20に、複数の貫通孔23が設けられている。複数の貫通孔23は、ガスセンサ1の周囲環境とガスセンサ1のキャビティ29とに連通している。複数の貫通孔23の各々は、第1主面21から第2主面22まで延在している。複数の貫通孔23の各々の直径は、50μm以下である。そのため、リッド20は、防水性試験(JIS C 0920)の保護等級IPX4以上を満たす。複数の貫通孔23の各々の直径は、30μm以下であってもよい。複数の貫通孔23の各々の直径は、例えば、20nm以上である。そのため、リッド20のガス透過率が過度に小さくなることが防止され得る。リッド20は、防水性試験(JIS C 0920)の保護等級IPX8以下であってもよい。
【0015】
複数の貫通孔23の面積比率は、例えば、10%以上である。そのため、リッド20のガス透過性が向上して、ガスセンサ1の応答速度が向上する。複数の貫通孔23の面積比率は、20%以上であってもよく、30%以上であってもよい。複数の貫通孔23の面積比率は、第2主面22の平面視における複数の貫通孔23の面積を、第2主面22の平面視において第2主面22のうちガスセンサ1のキャビティ29に対向する領域24の面積で割ることによって与えられる。リッド20のガス透過率は、例えば、100g/(m2・24h)以上である。リッド20のガス透過率は、150g/(m2・24h)以上であってもよく、200g/(m2・24h)以上であってもよい。
【0016】
リッド20は、接合部材28を用いて、支持基板10に固定されている。具体的には、リッド20は、第1主面21から突出する凸部25を含む。凸部25は、接合部材28を用いて、支持基板10の主面10aに接合されている。そのため、支持基板10の主面10aが平面であっても、リッド20と支持基板10との間に、ガス検知器15が収容され得るキャビティ29が形成され得る。リッド20及び支持基板10は、例えば、ガス検知器15のためのチップサイズパッケージ(CSP)を形成する。接合部材28は、例えば、樹脂接着剤である。
【0017】
図3を参照して、本実施の形態のガスセンサ1の製造方法の一例を説明する。
【0018】
リッド20を製造する(S1)。例えば、リッド20は、半導体材料で形成されており、半導体プロセスを用いて製造され得る。リッド20の製造方法の例については、後で詳しく述べる。
【0019】
ガス検知器15を支持基板10上に実装する(S2)。例えば、ガス検知器15は、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、支持基板10にボンディングされる。
【0020】
リッド20を支持基板10に取り付ける(S3)。例えば、リッド20(具体的には、凸部25)は、接合部材28を用いて、支持基板10の主面10aに接合される。リッド20と支持基板10との間に、キャビティ29が形成される。ガス検知器15は、キャビティ29内に収容される。リッド20の複数の貫通孔23は、ガスセンサ1の周囲環境とキャビティ29とに連通する。
【0021】
図4から
図7を参照して、リッド20の製造方法の第1の例を説明する。
【0022】
図4を参照して、半導体基板30を準備する。半導体基板30は、例えば、Si基板である。半導体基板30は、主面31と、主面31とが反対側の主面32とを含む。主面32は、リッド20の第2主面22である。主面31上にレジスト35を形成する。レジスト35をパターニングして、レジスト35に孔36を形成する。
【0023】
図5を参照して、レジスト35をマスクとして用いて半導体基板30をエッチングして、半導体基板30に貫通孔33を形成する。貫通孔33は、例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)によって形成される。DRIEにより、主面31から主面32まで延在し、かつ、50μm以下の直径を有する貫通孔33が容易に形成され得る。アッシングにより、レジスト35を半導体基板30から除去する。
【0024】
図6を参照して、主面31上にレジスト37を形成する。レジスト37をパターニングして、レジスト37に開口38を形成する。
【0025】
図7を参照して、レジスト37をマスクとして用いて半導体基板30をエッチングして、半導体基板30の主面31に凹部を形成する。凹部は、例えば、ドライエッチングによって形成される。凹部の底面が、リッド20の第1主面21である。貫通孔33は、第1主面21から第2主面22まで延在する貫通孔23になる。半導体基板30のうちレジスト37で覆われている部分に、凸部25が形成される。アッシングにより、レジスト37を半導体基板30から除去する。こうして、リッド20が得られる。
【0026】
図8から
図11を参照して、リッド20の製造方法の第2の例を説明する。リッド20の製造方法の第2の例はリッド20の製造方法の第1の例と同様であるが、リッド20の製造方法の第2の例では、半導体基板30の主面31に凹部を形成し、それから、貫通孔23を形成している。
【0027】
具体的には、
図8を参照して、半導体基板30を準備する。半導体基板30の主面31上にレジスト37を形成する。レジスト37をパターニングして、レジスト37に開口38を形成する。
【0028】
図9を参照して、レジスト37をマスクとして用いて半導体基板30をエッチングして、半導体基板30の主面31に凹部を形成する。凹部は、例えば、ドライエッチングによって形成される。凹部の底面が、リッド20の第1主面21である。半導体基板30のうちレジスト37で覆われている部分に、凸部25が形成される。アッシングにより、レジスト37を半導体基板30から除去する。
【0029】
図10を参照して、主面31上と第1主面21上とにレジスト35を形成する。レジスト35をパターニングして、レジスト35に孔36を形成する。
【0030】
図11を参照して、レジスト35をマスクとして用いて半導体基板30をエッチングして、半導体基板30に複数の貫通孔23を形成する。貫通孔23は、例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)によって形成される。DRIEにより、第1主面21から第2主面22まで延在し、かつ、50μm以下の直径を有する複数の貫通孔23が容易に形成され得る。アッシングにより、レジスト35を半導体基板30から除去する。こうして、リッド20が得られる。
【0031】
図8、
図9、
図12及び
図13を参照して、リッド20の製造方法の第3の例を説明する。リッド20の製造方法の第3の例は、リッド20の製造方法の第2の例と同様であるが、複数の貫通孔23の形成方法においてリッド20の製造方法の第2の例と異なっている。
【0032】
具体的には、
図8及び
図9に示されるように、主面31及び主面32を含む半導体基板30を準備して、半導体基板30の主面31に凹部を形成する。凹部の底面が、リッド20の第1主面21である。
【0033】
図12及び
図13に示されるように、複数の貫通孔23は、金属支援化学エッチング(MaCE)法によって形成される。
【0034】
具体的には、
図12を参照して、第1主面21上にトッド状の金属膜40を形成する。トッド状の金属膜40は、第1主面21のうち複数の貫通孔23が形成される領域上に形成されるが、第1主面21のうち複数の貫通孔23が形成されない領域上には形成されない。トッド状の金属膜40は、例えば、金(Au)のような貴金属で形成されている。トッド状の金属膜40は、特に限定されないが、例えば、以下の二つの方法によって形成される。
【0035】
トッド状の金属膜40の第1の形成方法では、第1主面21の全体上に金属膜を形成し、それから、金属膜を、エッチングまたはリフトオフなどによってパターニングする。トッド状の金属膜40の第1の形成方法は、複数の貫通孔23の各々の直径が0.1μm以上50μm以下である場合に適している。
【0036】
トッド状の金属膜40の第2の形成方法では、第1主面21に金属材料を斜め蒸着することによって、第1主面21上にトッド状の金属膜40を形成する。トッド状の金属膜40を蒸着する際の半導体基板30の温度を変化させることによって、トッド状の金属膜40の各々の直径を変化させることができる。トッド状の金属膜40の第2の形成方法は、複数の貫通孔23の各々の直径が20nm以上0.1μm以下である場合に適している。
【0037】
図13を参照して、トッド状の金属膜40を触媒として用いて、半導体基板30をエッチングする。例えば、トッド状の金属膜40が形成された半導体基板30を、フッ酸水溶液と過酸化水素水等の酸化剤とを含むエッチング液に浸漬する。エッチングの進行に伴って、トッド状の金属膜40は、第1主面21に垂直な方向に移動する。トッド状の金属膜40が第2主面22まで達して、半導体基板30に複数の貫通孔23が形成される。王水系溶液、シアン系溶液またはヨウ素系溶液のようなエッチング液を用いて、トッド状の金属膜40を除去する。こうして、リッド20が得られる。
【0038】
本実施の形態のガスセンサ1の動作及び作用を説明する。
【0039】
ガスセンサ1の周囲環境にあるガス2は、リッド20の複数の貫通孔23を通ってガスセンサ1のキャビティ29に流入する。ガス検知器15は、キャビティ29に流入したガス2を検出して、ガス2の濃度のようなガス2に関する信号を出力する。ガス2に関する信号は、支持基板10の電気配線(図示せず)及び外部端子12を通して、ガスセンサ1の外部に出力される。
【0040】
複数の貫通孔23の各々の直径は、50μm以下である。そのため、ガス2は複数の貫通孔23を通り抜けることはできるが、水のような液体は複数の貫通孔23を通り抜けることができない。そのため、リッド20は、防水性能を有しており、例えば、防水性試験(JIS C 0920)の保護等級IPX4以上を満たす。
【0041】
リッド20は、半導体材料で形成されている。複数の貫通孔23は、半導体プロセスを用いて形成され得る。そのため、複数の貫通孔23の各々の直径を50μm以下にまで容易に減少させることができて、防水性を有するリッド20が低コストで得られる。また、より狭い領域により多くの貫通孔23を形成することができるため、複数の貫通孔23の面積比率を増加させることができる。リッド20のガス透過性が向上して、ガスセンサ1の応答速度が向上する。
【0042】
これに対し、第1比較例のガスセンサでは、リッドは金属で形成されている。すなわち、第1比較例のリッドでは、金属板にガス2を透過させる複数の貫通孔が設けられている。しかし、金属板に形成することができる複数の貫通孔の各々の直径は、0.1mm以上である。そのため、第1比較例のガスセンサは、防水性を有していない。
【0043】
また、第2比較例のガスセンサでは、リッドはセミラックで形成されている。すなわち、第2比較例のリッドでは、セラミック板にガス2を透過させる複数の貫通孔が設けられている。50μm以下の直径を有する複数の貫通孔をセラミック板に形成するためには、金型のキャビティに多数の細いピンを立て、金型のキャビティにセラミック母材を注入し、セラミック母材を焼成し、細いピンを引き抜くという製造方法を採用する必要がある。しかし、この製造方法は、非常に大きなコストがかかる。実用的なコストで、複数の貫通孔が形成されたセラミック製のリッドを製造しようとすると、リッドに形成される複数の貫通孔の面積密度が非常に小さくなる。そのため、第2比較例のガスセンサの応答速度は、著しく低くなる。また、上記製造方法では金型内に長いピンを立てることができないため、セミラック板の厚さを0.1mm以下とせざるを得ない。そのため、セラミック製のリッドの機械的強度が低い。
【0044】
(変形例)
【0045】
図14を参照して、本実施の形態の変形例のガスセンサ1aを説明する。
【0046】
ガスセンサ1aでは、支持基板10の主面10aに凹部が形成されており、凹部の底面にガス検知器15が実装されている。具体的には、支持基板10は、主面10aから後退した主面11を含む。主面11は、主面10aに形成された凹部の底面である。ガス検知器15は、主面11に実装されている。リッド20は、凸部25(
図1を参照)を含んでない。支持基板10の主面10aに凹部が形成されているため、凸部25が無くても、リッド20と支持基板10との間に、ガス検知器15が収容され得るキャビティ29が形成される。
【0047】
支持基板10は、パッド13を含む。パッド13は、例えば、主面11上に設けられている。パッド13は、支持基板10の電気配線(図示せず)に接続されている。ガス検知器15は、パッド16を含む。Auワイヤなどのような導電ワイヤ19が、パッド13とパッド16とにボンディングされている。パッド16は、導電ワイヤ19を介して、パッド13に電気的に接続されている。ガス2の濃度のようなガス2に関する信号は、パッド16、導電ワイヤ19、パッド13、支持基板10の電気配線及び外部端子12を通して、ガスセンサ1の外部に出力される。例えば、支持基板10はセラミック回路基板であり、リッド20及び支持基板10はガス検知器15のためのセラミックパッケージを形成する。
【0048】
本実施の形態のガスセンサ1,1aの効果を説明する。
【0049】
本実施の形態のガスセンサ1,1aは、ガス検知器15と、ガス検知器15を覆うリッド20とを備える。リッド20は、半導体材料で形成されている。リッド20は、ガス検知器15に対向する第1主面21と、第1主面21とは反対側の第2主面22とを含む。リッド20に、複数の貫通孔23が設けられている。複数の貫通孔23の各々は、第1主面21から第2主面22まで延在している。複数の貫通孔23の各々の直径は、50μm以下である。
【0050】
リッド20の複数の貫通孔23の各々の直径は50μm以下であるため、ガスセンサ1,1aは、防水性を有する。また、リッド20は半導体材料で形成されている。そのため、複数の貫通孔23が設けられているリッド20が低コストで得られるため、ガスセンサ1,1aのコストを低減させることができる。
【0051】
本実施の形態のガスセンサ1,1aでは、リッド20は、防水性試験(JIS C 0920)の保護等級IPX4以上を満たす。そのため、ガスセンサ1,1aは、向上された防水性を有する。
【0052】
本実施の形態のガスセンサ1,1aでは、複数の貫通孔23の各々の直径は、20nm以上である。そのため、リッド20のガス透過率が過度に小さくなることが防止されて、ガス2に対するガスセンサ1,1aの応答速度が過度に小さくなることが防止され得る。
【0053】
本実施の形態のガスセンサ1,1aでは、リッド20のガス透過率は、100g/(m2・24h)以上である。そのため、ガス2に対するガスセンサ1,1aの応答速度を向上させることができる。
【0054】
本実施の形態のガスセンサ1,1aは、ガス検知器15を支持する支持基板10をさらに備える。リッド20は支持基板10に固定されている。支持基板10とリッド20との間に、ガス検知器15が収容されるキャビティ29が形成されている。
【0055】
そのため、ガス検知器15は、リッド20及び支持基板10によって形成されるパッケージ内に収容され得る。ガス検知器15はパッケージによって機械的に保護されるとともに、ガス検知器15の取り扱いが容易になる。
【0056】
本実施の形態のガスセンサ1,1aでは、複数の貫通孔23の面積比率は10%以上である。複数の貫通孔23の面積比率は、第2主面22の平面視における複数の貫通孔23の面積を、第2主面22の平面視において第2主面22のうちキャビティ29に対向する領域24の面積で割ることによって与えられる。そのため、ガス2に対するガスセンサ1,1aの応答速度を向上させることができる。
【0057】
本実施の形態のガスセンサ1では、リッド20は、第1主面21から突出する凸部25を含む。凸部25は、支持基板10に固定されている。
【0058】
そのため、支持基板10に凹部が形成されていなくても、ガス検知器15は、リッド20及び支持基板10によって形成されるパッケージ内に収容され得る。ガス検知器15はパッケージによって機械的に保護されるとともに、ガス検知器15の取り扱いが容易になる。
【0059】
本実施の形態のガスセンサ1,1aでは、第1主面21と第2主面22との間の距離dは、0.1mmより大きい。そのため、リッド20の機械的強度が向上し得る。
【0060】
本実施の形態のガスセンサ1,1aでは、リッド20は、Siで形成されている。そのため、ガスセンサ1,1aのコストを低減させることができる。
【0061】
(実施の形態2)
【0062】
図15を参照して、実施の形態2に係るガスセンサ1bを説明する。本実施の形態のガスセンサ1bは、実施の形態1のガスセンサ1と同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、主に以下の点で実施の形態1のガスセンサ1と異なっている。
【0063】
ガスセンサ1bでは、リッド20の第2主面22は、撥水処理されている。例えば、ガスセンサ1bは、リッド20の第2主面22上に設けられている撥水層45を含む。撥水層45は、フッ素樹脂またはパーフルオロアルキル基含有シランなどのようなフッ素系撥水剤を含む。そのため、ガスセンサ1bの防水性をさらに向上させることができる。
【0064】
本実施の形態の変形例では、実施の形態1の変形例(
図14を参照)のガスセンサ1aにおいて、リッド20の第2主面22が撥水処理されている。
【0065】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0066】
(付記)
【0067】
(付記1)
ガス検知器と、
前記ガス検知器を覆うリッドとを備え、
前記リッドは、半導体材料で形成されており、
前記リッドは、前記ガス検知器に対向する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを含み、
前記リッドに、複数の貫通孔が設けられており、前記複数の貫通孔の各々は、前記第1主面から前記第2主面まで延在しており、
前記複数の貫通孔の各々の直径は、50μm以下である、ガスセンサ。
(付記2)
前記リッドは、防水性試験(JIS C 0920)の保護等級IPX4以上を満たす、付記1に記載のガスセンサ。
(付記3)
前記直径は、20nm以上である、付記1または付記2に記載のガスセンサ。
(付記4)
前記ガス検知器を支持する支持基板をさらに備え、
前記リッドは前記支持基板に固定されており、
前記支持基板と前記リッドとの間に、前記ガス検知器が収容されるキャビティが形成されている、付記1から付記8のいずれか一つに記載のガスセンサ。
(付記5)
前記複数の貫通孔の面積比率は10%以上であり、
前記面積比率は、前記第2主面の平面視における前記複数の貫通孔の面積を、前記第2主面の前記平面視において前記第2主面のうち前記キャビティに対向する領域の面積で割ることによって与えられる、付記1から付記3のいずれか一つに記載のガスセンサ。
(付記6)
前記リッドは、前記第1主面から突出する凸部を含み、
前記凸部は前記支持基板に固定されている、付記4または付記5に記載のガスセンサ。
(付記7)
前記リッドのガス透過性は、100g/(m2・24h)以上である、付記1から付記6のいずれか一つに記載のガスセンサ。
(付記8)
前記リッドの前記第2主面は、撥水処理されている、付記1から付記7のいずれか一つに記載のガスセンサ。
(付記9)
前記第1主面と前記第2主面との間の距離は、0.1mmより大きい、付記1から付記8のいずれか一つに記載のガスセンサ。
(付記10)
前記リッドは、Siで形成されている、付記1から付記9のいずれか一つに記載のガスセンサ。
【0068】
今回開示された実施の形態1及び実施の形態2並びにそれらの変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0069】
1,1a,1b ガスセンサ、2 ガス、10 支持基板、10a,11 主面、12 外部端子、13 パッド、15 ガス検知器、16 パッド、19 導電ワイヤ、20 リッド、21 第1主面、22 第2主面、23 貫通孔、24 領域、25 凸部、28 接合部材、29 キャビティ、30 半導体基板、31,32 主面、33 貫通孔、35,37 レジスト、36 孔、38 開口、40 金属膜、45 撥水層。