(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065746
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】静止誘導電器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20240508BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20240508BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20240508BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01F27/24 J
H01F27/245 155
H01F27/25
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174758
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 明
(72)【発明者】
【氏名】真島 康
(72)【発明者】
【氏名】多田 周二
(72)【発明者】
【氏名】山田 直希
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044CA06
5E044CA08
(57)【要約】
【課題】 巻鉄心における層間抵抗を適切な抵抗に調整し、巻鉄心の信頼性を高める。
【解決手段】 巻鉄心と、巻鉄心に巻かれた巻線とを有する静止誘導電器であって、巻鉄心は、アモルファス箔帯と、珪素鋼板と、巻鉄心の層間抵抗を調整する層間抵抗調整部を有する静止誘導電器。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻鉄心と、前記巻鉄心に巻かれた巻線とを有する静止誘導電器であって、
前記巻鉄心は、
アモルファス箔帯と、珪素鋼板と、前記巻鉄心の層間抵抗を調整する層間抵抗調整部を有する静止誘導電器。
【請求項2】
請求項1に記載の静止誘導電器において、前記層間抵抗調整部は、
第1の導電板と第2の導電板と、それらの導電板を接続する導線とを有し、
第2の導電板は、接地される静止誘導電器。
【請求項3】
請求項2に記載の静止誘導電器において、
第1の導電板、第2の導電板は、前記珪素鋼板に挟まれている静止誘導電器。
【請求項4】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記層間抵抗調整部は、
ラップ接合部に配置される静止誘導電器。
【請求項5】
請求項1に記載の静止誘導電器において、複数の前記巻鉄心が配置され、
それぞれの巻鉄心の間に絶縁物としての保護材が配置される静止誘導電器。
【請求項6】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記巻鉄心は、内側の巻鉄心と外側の巻鉄心を有する静止誘導電器。
【請求項7】
請求項1に記載の静止誘導電器において、
前記層間抵抗調整部は、導電板を有し、
前記導電板は、半導電性材に覆われている静止誘導電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止誘導電器に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファス磁性薄帯鉄心と珪素鋼板とを巻鉄心として備えた変圧器であって、高い鉄心占有率が得られる変圧器の技術が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アモルファス鉄心変圧器の大容量高電圧化に伴い、アモルファス鉄心における渦電流損を抑制することが求められる。
【0005】
アモルファス箔帯表面のわずかな酸化膜に対して、万一製作上、傷がついた場合には、多点接地となり渦電流損失が増大する。下記に示す式(1)に示すようにアモルファス鉄心内には渦電流損が発生する。尚、式(1)は、鉄心の渦電流損の理論式である。
【0006】
Wie∝ t2・f2・Bm2/ rs 式(1)
ここで、Wie:渦電流損、t:鉄心厚さ、f: 周波数、Bm:鉄心の最大磁束密度、rs:層間抵抗である。
【0007】
特許文献1には、アモルファス鉄心における層間抵抗を適切に調整することは示されていないので、渦電流損を抑制することについて配慮が十分ではない。また、アモルファス鉄心における層間抵抗が大きくなると、渦電流損は抑制できるが、巻鉄心にかかる電圧が高くなり、珪素鋼板の酸化膜の絶縁破壊が生じる可能性が高くなる。従来の技術では、鉄心の信頼性を確保することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、巻鉄心における層間抵抗を適切な抵抗に調整し、巻鉄心の信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、巻鉄心と、前記巻鉄心に巻かれた巻線とを有する静止誘導電器であって、
前記巻鉄心は、アモルファス箔帯と、珪素鋼板と、前記巻鉄心の層間抵抗を調整する層間抵抗調整部を有する静止誘導電器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、巻鉄心における層間抵抗を適切な抵抗に調整し、巻鉄心の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の静止誘導電器を説明する。なお、各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【0013】
図4に、比較例としての変圧器を示す。巻線1、アモルファス箔帯鉄心2、接地部3から構成されるアモルファス鉄心の変圧器である。
【0014】
図4に示す変圧器の鉄心構造では、製作過程にてコア(巻鉄心)に傷ができた場合、局所的にアモルファス材の酸化膜が削れ、巻鉄心の厚み方向にかかる層間抵抗が小さくなり、渦電流損が大きくなるリスクが高くなる。また、実運用時や雷撃時における電圧印加にて、巻線とコアの間で電圧分担されるため、巻鉄心の厚み方向にかかる層間抵抗が大きくなると、巻鉄心にかかる電圧が高くなり、珪素鋼板の酸化膜が削れたときの絶縁破壊が生じる可能性が高くなる。そこで、巻鉄心の厚み方向における層間抵抗は、適切な値に調整することが望ましい。
【実施例0015】
図1は、実施例1における静止誘導電器としての変圧器を示す。
図2は、実施例1における巻鉄心の積層構造を説明する図である。
【0016】
図1に示すように、本実施例の変圧器は、巻鉄心を4個、水平方向に配置している場合を示す5脚鉄心の例である。各巻鉄心は、外周側に珪素鋼5が配置され、各巻鉄心には、コイルとしての巻線1が巻回されている。各巻鉄心は、タンクなどの接地部3と接続される。各巻鉄心間には、保護材6(プレスボード、クラフト紙、合成樹脂などの絶縁物)が挿入されている。保護材6を各巻鉄心間に配置することで、多点接地を防止できる。
【0017】
図2は、
図1における点線で囲った巻鉄心の一部10における構造を拡大した図である。本実施例における巻鉄心は、
図2に示すように、内周側の珪素鋼5、アモルファス材箔帯2、外周側の珪素鋼5が積層されて巻回された構成である。珪素鋼の厚さは、0.23mmから0.35mmであり、アモルファス材箔帯の厚さは25μmである。
【0018】
内周側の珪素鋼5の間にシールド板としての第1の銅板(導電板)4が挟まれる。また、外周側の珪素鋼5の間にシールド板としての第2の銅板(導電板)4が挟まれる。
【0019】
第1の銅板4と第2の銅板4には、シールド渡り線としての銅線22が接続され、第2の銅板4は、銅線などの電線を介して接地部3と接続される。第1の銅板4と第2の銅板4と銅線22が、変圧器の巻鉄心の厚み方向における層間抵抗を調整する層間抵抗調整部となる。第1の銅板4と第2の銅板4の厚さ、長さ、断面積を変えたり、銅線22の抵抗値を変えることで、層間抵抗調整部が、層間抵抗を適切な抵抗値に調整することができる。
【0020】
また、
図2では、第1の銅板4と第2の銅板4を、珪素鋼板に挟む構成を示したが、第1の銅板4もしくは第2の銅板4は、アモルファス材箔帯の巻鉄心2に挟むようにしてもよい。第1の銅板4と第2の銅板4は、巻鉄心のラップ接合部に配置することで、これらを配置しやすくできるので、コストを少なくして本実施例の巻鉄心を製造することができる。
【0021】
また、珪素鋼板5は、アモルファス材箔帯2の外周側もしくは内周側の一方側にのみ配置してもよい。もしくは、外周側および内周側の両方に珪素鋼板5を配置することで、巻鉄心の剛性を高くして信頼性を高めることができる。
【0022】
本実施例によれば、巻鉄心の層間抵抗を適切に調整できるので、渦電流損を抑制できる。また、巻鉄心の厚み方向における層間抵抗を適切な値として、実運用時や雷撃時における電圧印加にて巻鉄心の層間が絶縁破壊することを防ぐことができるので、信頼性を高めることができる。
そのような構成の巻鉄心に限らず、実施例2としては、内側に配置した巻鉄心と、その内側に配置した巻鉄心の外側に配置した巻鉄心とを組み合わせた構成の変圧器にも適用できる。