(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065757
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】口腔洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A61C 17/02 20060101AFI20240508BHJP
A61C 17/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61C17/02 B
A61C17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174773
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】508200078
【氏名又は名称】オオノ開發株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 照旺
(72)【発明者】
【氏名】神野 浩
(72)【発明者】
【氏名】神野 太郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洗浄液の噴射流量を制限しながら口腔内を効果的に洗浄する口腔内洗浄装置を提供する。
【解決手段】口腔洗浄装置は、気泡を含有する洗浄液を生成する気泡発生部から供給される洗浄液を噴射するノズル2を備え、ノズル2は、気泡発生部から供給される洗浄液を幅方向に拡大して噴射する噴射ノズル2Bを備え、この噴射ノズル2Bは、洗浄液が供給される噴出口7から排出側に向かって横幅を広くしてなるテーパー流動面を備え、テーパー流動面は、洗浄液を遠心力で表面に押し付けて流動させる凹部の湾曲流路面を備え、噴出口7からテーパー流動面に噴出された洗浄液を、凹部の湾曲流路面に遠心力で押し付けて横幅を広げて外部に噴射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の全ての構成を備える口腔洗浄装置。
(1)気泡を含有する洗浄液を生成する気泡発生部と、
前記気泡発生部から供給される洗浄液を噴射するノズルとを備える。
(2)前記ノズルは、
洗浄液を幅方向に拡大して噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルに連結されて、
前記気泡発生部から供給される洗浄液を前記噴射ノズルに供給するノズル本体とを備える。
(3)前記噴射ノズルは、
前記気泡発生部から供給される洗浄液の噴出口と、
前記噴出口から排出側に向かって横幅(W)を広くしてなるテーパー流動面を備える。
(4)前記テーパー流動面は、
前記噴出口から噴出された洗浄液を遠心力で表面に押し付けて流動させる凹部の湾曲流路面を備える。
(5)前記噴射ノズルは、
前記噴出口から前記テーパー流動面に噴射された洗浄液を、
前記凹部の湾曲流路面に遠心力で押し付けて横幅を広げて外部に噴射する。
【請求項2】
請求項1に記載する口腔洗浄装置であって、
前記噴射ノズルに設けてなる前記テーパー流動面が、
幅方向に伸びる溝又は凸条の拡散ラインを有し、
前記テーパー流動面に噴射される洗浄液が、
前記拡散ラインで幅方向に拡大して外部に噴射される口腔洗浄装置。
【請求項3】
請求項2記載する口腔洗浄装置であって、
前記拡散ラインが、
前記テーパー流動面の先端部に配置されてなる口腔洗浄装置。
【請求項4】
請求項2記載する口腔洗浄装置であって、
前記拡散ラインが、
前記テーパー流動面の中間部に配置されてなる口腔洗浄装置。
【請求項5】
請求項1に記載する口腔洗浄装置であって、
前記テーパー流動面の前記凹部の湾曲流路面の曲率半径が2ないし10mmである口腔洗浄装置。
【請求項6】
請求項1に記載する口腔洗浄装置であって、
前記噴出口の内径が0.5~1.5mmで、
前記テーパー流動面の排出側の横幅が3ないし10mmである口腔洗浄装置。
【請求項7】
請求項1に記載する口腔洗浄装置であって、
前記凹部の湾曲流路面が平滑面である口腔洗浄装置。
【請求項8】
請求項1に記載する口腔洗浄装置であって、
前記テーパー流動面が両側縁に沿って側壁を有する口腔洗浄装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載する口腔洗浄装置であって、
前記凹部の湾曲流路面から外部に噴射される洗浄液の噴射方向が、
前記噴出口が洗浄液を噴射する方向に対して、
30度以上であって90度以下である口腔洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルやナノバブルなどの微細な気泡を含む洗浄液を口腔内に噴射して、口腔内の舌、歯、歯茎などを洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルの先端から気泡を含む洗浄液を口腔内に噴射する口腔洗浄装置は開発されている(特許文献1)。この公報に記載される口腔洗浄装置は、
図10に示すように、ベンチュリー構造のノズルから液体を噴射している。ノズルは、途中に縮小部を設けている。縮小部は液体の流速を速くして圧力を低下させる。圧力の低下した液体は気化して気泡を発生させる。気泡は、縮小部を通過して流速が低下すると圧力が上昇して破裂する。破裂する気泡は衝撃波を発生して、口腔内に噴射される気泡を含む液体が口腔内を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の公報に開示される洗浄装置は、液体を口腔内に噴射して洗浄できる。しかしながら、以上の洗浄装置は、液体を線状に噴射して口腔内を洗浄するので、口腔内を広い面積で洗浄するのに手間と時間がかかる欠点がある。
【0005】
以上の欠点は、ノズルから噴射する洗浄液の横幅を広く拡大して噴射することで解消できる。しかしながら、洗浄液を幅方向に拡大して噴射するノズルは、先端の噴出口を狭いスリット状とする必要がある。狭いスリットから噴射するノズルは、詰まりやすく、さらに詰まりの解消に極めて手間がかかる欠点がある。また、狭いスリットのノズルは、製作に高い加工精度が要求されて製造コストが高くなる欠点もある。スリットの開口隙間を広くして詰まりを少なくできるが、スリットの開口隙間の広いノズルは、洗浄液の噴射速度が低下して洗浄効果が低下する欠点がある。さらに開口幅の広いスリットは、洗浄液の噴射流量が増加して口腔内に溜まる欠点がある。口腔内に溜まる洗浄液を吸水しながら洗浄することで解消できるが、この構造の装置の吸水機構によって装置のコストが高くなる問題がある。洗浄液の使用量を増加することなく効果的に口腔内を洗浄するには、洗浄液を極めて狭いスリットから勢いよく噴射する必要があるが、この洗浄装置は前述した欠点を解消できない。したがって、口腔内を効果的に洗浄することと、洗浄液の噴射流量を少なくすることは互いに相反する特性であって両方を同時に満足するのが極めて難しい。
【0006】
本発明は以上の問題を解消することを目的に開発されたもので、本発明の一目的は、洗浄液の噴射流量を制限しながら口腔内を効果的に洗浄できる洗浄装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ノズルの詰まりを防止しながら洗浄液の横幅を広げて噴射して効率よく口腔内を洗浄できる口腔洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る口腔洗浄装置は、気泡を含有する洗浄液を生成する気泡発生部と、気泡発生部から供給される洗浄液を噴射するノズルとを備え、ノズルは洗浄液を幅方向に拡大して噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルに連結されて気泡発生部から供給される洗浄液を噴射ノズルに供給するノズル本体とを備える。噴射ノズルは、供給部から供給される洗浄液の噴出口と、噴出口から排出側に向かって横幅(W)を広くしてなるテーパー流動面を備え、テーパー流動面は、噴出口から噴出された洗浄液が流動する遠心力で表面に押し付けられて流動する凹部の湾曲流路面を設けている。以上の噴射ノズルは、噴出口からテーパー流動面に噴射された洗浄液を、凹部の湾曲流路面に遠心力で押し付ける状態で流動させることで、横幅を広くして外部に噴射する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔洗浄装置は、洗浄液の噴射流量を制限しながら口腔内を効果的に洗浄でき、さらに、ノズルの詰まりを防止しながら洗浄液の横幅を広げて噴射して口腔内を効率よく洗浄できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態にかかる口腔洗浄装置の概略図である。
【
図4】
図1に示す口腔洗浄装置のノズルを示す断面図である。
【
図5】
図4に示す噴射ノズルのA-A線断面図である。
【
図6】
図4に示す噴射ノズルのB-B線断面図である。
【
図7】
図4に示す噴射ノズルの拡大縦断面図である。
【
図8】噴射ノズルの変形例を示す拡大縦断面図である。
【
図9】
図4に示す噴射ノズルを下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0011】
本発明の一実施態様に係る口腔洗浄装置は、気泡を含有する洗浄液を生成する気泡発生部と、気泡発生部から供給される洗浄液を口腔内に噴射するノズルとを備える。ノズルは、洗浄液を幅方向に拡大して噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルに連結されて、気泡発生部から供給される洗浄液を噴射ノズルに供給するノズル本体とを備える。噴射ノズルは、供給部から供給される洗浄液の噴出口と、噴出口から供給される洗浄液を幅方向に拡大して噴射するために設けている、噴出口から排出側に向かって横幅(W)を広くしているテーパー流動面を設けている。テーパー流動面は、噴出口から噴出されてテーパー流動面に供給された洗浄液を、遠心力で表面に押し付けて流動させる凹部の湾曲流路面を備えており、噴射ノズルは、気泡発生部から供給される洗浄液を噴出口からテーパー流動面に噴射し、テーパー流動面に噴射された洗浄液を凹部の湾曲流路面に遠心力で押し付けて横幅を広げて外部に噴射する。
【0012】
以上の口腔洗浄装置は、噴出口から噴出された洗浄液を、テーパー流動面の凹部の湾曲流路面の表面に、洗浄液の遠心力で押し付けて流動させて、次第に薄膜に拡大されて外部に噴射される。とくに、凹部の湾曲流路面は内側に湾曲しているので、テーパー流動面に噴射された洗浄液は、内側に湾曲する凹部の湾曲流路面に遠心力で押し付けられる状態で流動する。凹部の湾曲流路面を流動する洗浄液は、湾曲面を流動する円運動の遠心力で凹部の湾曲流路面に押し付けられる状態で流動する。この状態で流動する洗浄液は、洗浄液の遠心力に押し付けられて幅方向に押し広げられて噴射される。洗浄液を幅方向に広げて噴射する口腔洗浄装置は、横幅の拡大された洗浄液で口腔内を効率よく洗浄できる。とくに、以上の口腔洗浄装置は、洗浄液の横幅を広げるために、狭いスリット状の隙間から洗浄液を幅方向に拡大して噴射する必要がないので、ノズルの詰まりを防止しながら、口腔内を効率よく洗浄できる特長がある。さらに以上の口腔洗浄装置は、狭いスリットに代わって、表面を解放している凹部の湾曲流路面の表面に沿って洗浄液を押し付けながら流動させて、幅方向に拡大して噴射するので、スリットによるノズル詰まりを確実に解消できる特長がある。さらに、以上の口腔洗浄装置は、従来のように狭いスリットのノズルを製作することなく、単に内側に湾曲するテーパー流動面を凹部の湾曲流路面に加工して、洗浄液を幅方向に拡大して噴射できるので、ノズルを安価に多量生産して、口腔内を効率よく洗浄できる特長がある。
【0013】
本発明の他の実施態様に係る口腔洗浄装置は、噴射ノズルのテーパー流動面に、幅方向に伸びる溝又は凸条の拡散ラインを設けて、テーパー流動面に噴射される洗浄液を、拡散ラインで幅方向に拡大して外部に噴射することができる。以上の口腔洗浄装置は、テーパー流動面に設けている溝又は凸条の拡散ラインによって、テーパー流動面の表面に押し付けられて流動する洗浄液を拡散して、より効率よく幅方向に拡大して噴射できる。この構造は、洗浄液が流動する方向の全長を短くして、洗浄液の横幅を拡大して噴射できる特長も実現する。
【0014】
本発明の他の実施態様に係る口腔洗浄装置は、テーパー流動面の先端部に拡散ラインを配置して、テーパー流動面の先端部に設けている拡散ラインで、洗浄液の横幅をより拡大して口腔内に噴射することができ、また、拡散ラインをテーパー流動面の中間部に配置することもできる。以上の口腔洗浄装置は、拡散ラインの配置により洗浄液が流動する方向の全長を長くまたは短くでき、また洗浄液の横幅を拡大でき、洗浄液の横幅の拡大の程度を調整して噴射できる。
【0015】
本発明の他の実施態様に係る口腔洗浄装置は、テーパー流動面に設けている凹部の湾曲流路面の曲率半径を、2mmないし10mmとすることができる。この口腔洗浄装置は、噴出口から噴射される洗浄液の遠心力による押圧力を強くできる。それは、洗浄液が遠心力で凹部の湾曲流路面に押圧される遠心力が、半径に反比例して増加するからである。表面を流動しながら強い押し付け力で凹部の湾曲流路面に押圧される洗浄液は、凹部の湾曲流路面で効率よく幅方向に押し広げられて横幅を広くして噴射できる。
【0016】
本発明の他の実施態様に係る口腔洗浄装置は、洗浄液をテーパー流動面に噴射する噴出口の内径を0.5~1.5mmとして、テーパー流動面の排出側の横幅を3ないし10mmとすることができる。以上の口腔洗浄装置は、噴射口の内径とテーパー流動面の排出側の横幅の差により、噴出口から排出側に向かって横幅を広くするテーパー流動面の表面に、洗浄液の遠心力で押し付けて流動させ、次第に薄膜に横幅を拡大させて外部に噴射できる。
【0017】
本発明の他の実施態様に係る口腔洗浄装置は、テーパー流動面に設けている凹部の湾曲流路面を平滑面として、噴出口から凹部の湾曲流路面に噴射される洗浄液を、遠心力で凹部の湾曲流路面に押し付けてスムーズに流動させて横幅を広くして噴射できる。
【0018】
本発明の他の実施態様に係る口腔洗浄装置は、テーパー流動面の両側縁に沿って側壁を設けて、テーパー流動面に供給される洗浄液を両側に漏らすことなく、特定の横幅に制約して口腔内に噴射できる。
【0019】
本発明の他の実施態様に係る口腔洗浄装置は、テーパー流動面に設けている凹部の湾曲流路面から外部に噴射する洗浄液の噴射方向を、噴出口が洗浄液を噴射する方向に対して、30度以上であって90度以下として、口腔内を広い面積で洗浄できる。
(実施の形態1)
【0020】
図1に示す口腔洗浄装置は、気泡を含有する洗浄液を生成する気泡発生部1と、気泡発生部1から供給される洗浄液を供給部3を介して口腔内に噴射するノズル2とを備える。
(気泡発生部1)
【0021】
図1及び
図2の概略図は、気泡発生部1を概念的に説明する。図の気泡発生部1は、液体に気体を混合して得られた気液を旋回させることにより気泡の微細化を行って微細気泡を発生させる。気泡発生部1は、口腔内に噴射して口腔内を洗浄する全ての気泡を含む洗浄液を生成する機構である。例えば、
図1及び
図2の気泡発生部1は、気液の旋回流を生成する気液生成部21と、生成された気液を吐出する吐出部22と、吐出された気液の気泡を微細化する気泡微細化部23と、微細化された気泡を含む気液を排出する気液排出部26とを備える。気泡微細化部23は、吐出部22に対して隙間を介して対向配置されたバッフル板24と、バッフル板24を支持する軸部25aを有するバッフル板支持体25とを含み、気泡微細化部23の内壁とバッフル板24との間に間隙Sが形成されており、バッフル板24は、中心に位置する第1の貫通孔(中心貫通孔)24aと、中心以外に位置する1以上の第2の貫通孔(中心周り貫通孔)24bとを有し、中心貫通孔24aにはバッフル板支持体25の軸部25aが挿入されてなる。
【0022】
気液生成部21は、気液の旋回流を生成する。気液生成部21は、気泡を含む液体である気液の旋回流を生成するものであれば足りる。例えば、液体と気体とを混合して得られた気液を旋回させることにより気液の旋回流を発生するもの(
図1及び
図2など)でもよいし、あるいは、液体の旋回流を形成した状態で、液体の旋回流に気体を導入することにより気液の旋回流を生成するもの(
図3など)でもよい。
【0023】
図1及び
図2の気泡発生部1は、供給部3を介して液体及び気体が供給される。液体は、主管の液体導入部3aにより給水タンク4から吸い上げられ、気体は、枝管の気体導入部3bから吸引される。液体と気体は、主管と枝管とのつなぎ目で混合されて気液が生成され、気液生成部21に供給される。これらの図において、供給部3から供給される気液は、気液生成部21の流体旋回部に供給導入されると、旋回させられて気液の旋回流が生成され、気液の旋回流が吐出部22からバッフル板24に向けて吐出される。
【0024】
旋回流の生成方法は、例えば、気液生成部の内部に設けた旋回ファンの駆動により生成してもよいし、液流体が吐出部に向かって螺旋状に旋回するように、断面視環状の接線方向に沿って液流体を導入するようにしてもよい。図示しないが、例えば、旋回流の生成する液流体旋回部は、複数枚の羽根が設けられたスクリューを、気液生成部内の気液導入側に回転可能に設けることができる。ポンプから送られてきた気液によってスクリューが回転し、スクリューが回転することで、気液が旋回流となる。この液流体旋回部は、供給部から導入された気液を螺旋状に旋回させながら吐出部に向けて送り出すことができる。
【0025】
図の気液生成部21は、内壁が所定の位置から吐出部22の方向に向かって徐々に縮径する形状とする。この形状は、液流体旋回部によって気液生成部21内に発生した旋回流の旋回速度が速まり、これによって渦流の剪断力が強まり気泡が崩壊して、より細分化を促進できる。この徐々に縮径する形状としては、例えば、横断面視略砲弾形状、横断面視階段形状、横断面視直線テーパ形状、段付きのテーパ形状、段のないテーパ形状などにできる。
【0026】
図1の気泡発生部1は、気液を強制的にノズル2に供給するポンプ12を内蔵する。ポンプ12は、加圧駆動によって、気体や液体などを圧送する圧送部である。図のポンプ12は、液体導入部3aを介して導入される液体(洗浄液)と気体導入部3bを介して導入される気体とを、気液生成部21に圧送する。
【0027】
ポンプ12は、例えば0.01~1MPa、好ましくは0.1~0.5MPaの圧力で、洗浄液を供給する給水タンク13から吸い上げて洗浄液をノズル2に供給する。洗浄液は、給水タンク13に貯水され、給水タンク13から供給される。洗浄液は、口腔洗浄に用いることのできる液体であり、例えば、水でもよく、水などに溶媒の口腔洗浄に適した溶質を加えた溶液でもよい。気泡発生部1がノズル2に供給する洗浄液の流量、すなわちノズル2から噴射される洗浄液の流量は、たとえば1~100mL/分、好ましくは3~50mL/分、さらに好ましくは3~30mL/分とすることができる。気泡発生部1の流量を大きくして口腔内を効率よく洗浄できるが、流量が大きすぎると口腔内に噴射される液量が増加して、ユーザーが口腔内から噴射された洗浄液を頻繁に吐き出す必要があり、反対に少なすぎると洗浄効果で低下するので、前述の範囲でユーザーの最適値に設定する。
【0028】
気泡発生部は、現在すでに開発され、さらにこれから開発される機構であって、口腔内に噴射して口腔内を洗浄できる全ての気泡を含む洗浄液を生成する機構が使用できる。気泡発生部は、例えば、ナノバブル、マイクロバブル、さらに、キャビテーションで発生したキャビテーション気泡を含む洗浄液を生成できる全ての発生機構を使用できる。気泡発生部は、例えば、特許6889957号、特許5804175号などに記載される微細気泡発生装置を使用できる。本発明は、気泡発生部を以上の構造に特定するものでなく、口腔内に噴射して洗浄できる全ての洗浄液の生成装置が使用できるので、たとえば、無数の微細な噴射穴のある多孔質材に加圧空気を供給して、水中に無数の気泡を噴射する装置なども使用できる。
【0029】
液体および気体は限定されるものではなく、任意であり得る。例えば、液体は、口腔内を洗浄できる洗浄液であれば足り、水でもよいし、水以外の液体、また水などの溶媒に溶質または他の溶液を加えたものでもよい。例えば、溶媒の水に口腔内洗浄用の溶質を添加した溶液でもよい。気体は、空気でもよいし、空気以外の気体(例えば、酸素ガス、炭酸ガス、窒素ガス、水素ガス、ヘリウムガスなど)でもよい。
【0030】
吐出部22は、気液生成部21で生成された気液の旋回流をバッフル板24に向けて吐出する部分であり、例えば、気液吐出ノズルで構成される。吐出部23は、気液生成部21の下流側の端部に設けられ、供給部3から導入され螺旋状に旋回している気液を気液生成部21から吐出する。
【0031】
吐出部23は、例えば、徳利形状に形成でき、これにより螺旋状に旋回している気液が、徳利形状の最細領域において内径が急激に減少することで一旦加圧された後、気液生成部21の外側に向かって、内径が漸増することで急激に減圧される。このような圧力変動により、気液中に含まれる微細気泡が、さらに粉砕され、より微細な気泡になる。なお、吐出部は、螺旋状に旋回している液流体を、気液生成部の外側に向かって吐出し、より微細な気泡を発生させることができればよく、前記形状に限定されない。
【0032】
気泡微細化部23は、気液生成部21と気液排出部26との間に位置する。気液生成部21と気液排出部26との間の空間が周壁により密閉されて、気泡微細化部23は、密封空間内に収容される。この空間は、気泡微細化部23の内壁となっており、内壁とバッフル板24との間には隙間Sが形成される。
【0033】
気泡微細化部23は、バッフル板24およびバッフル板支持体25を含み、バッフル板24は、気液の旋回流の吐出量によって吐出部22に近づいたり離れたりする構造とすることにより、吐出部22から吐出された気液の旋回流をバッフル板24で乱して乱流を発生させ、気液中の気泡を微細化する部分となる。
【0034】
図2のバッフル板24は、その中心に形成された第1の貫通孔(中心貫通孔)24aと、中心周りに形成された一対の第2の貫通孔(中心周り貫通孔)24bとを有する。バッフル板支持体25は、その先端部である軸部25aがバッフル板24の中心貫通孔24aに挿入されることにより、バッフル板24の中心がバッフル板支持体25の中心軸から所定距離以上離れないようにバッフル板24を支持する。この場合、バッフル板24は、吐出部22から吐出される気液の流量によってバッフル板支持体25の中心軸の方向に移動可能である。バッフル板24の中心周り貫通孔24bは、吐出部22から吐出されてバッフル板24の周縁を越えて、すなわち、気泡微細化部23の内壁とバッフル板24との隙間Sを流れて、気液排出部26に向かう気液の旋回流の一部を吐出部22側に戻す還流経路を形成するものである。吐出部22から吐出される気液と、中心周り貫通孔24bを介して還流経路により吐出部22側に戻る気液とが衝突することにより、乱流が発生し、気泡の微細化が向上する。さらに、気液の旋回流の一部が中心周り貫通孔24bを通って吐出部22側に戻ることにより、移動するバッフル板24によって気液の旋回流の一部が乱されて内部の気泡がさらに微細化される。したがって、吐出部22から吐出された気液がバッフル板24に衝突しつつ、気泡微細化部23の内壁とバッフル板24との隙間Sに流れ、そのまま気液排出部26に流れていく装置に対して、バッフル板の中心周り貫通孔の存在及び機能により、より効率的に気泡の微細化を図ることができる点で有用である。その結果、従来の装置では加圧用のデバイスなどを使用しないと達成できなかった微細化された気泡を含む気液、または大きなサイズの気泡が少ない気泡を含む気液を、例えば水道水の水圧でも生成することが可能となった。
【0035】
バッフル板に形成される第2の貫通孔の個数、配列、大きさ、形状は限定されるものではなく任意であり得る。例えば、中心周りの貫通孔の数は1個または複数であってもよいし、奇数または偶数であってもよい。また、複数の貫通孔のそれぞれの間隔を異ならせてもよい。
【0036】
気液排出部26は、気泡微細化部23で微細化された気泡を含む気液を排出する。気液排出部26には、気泡微細化部23で気泡が微細化された気液を外部に排出するための気液排出路が形成されている。気液排出部26は、気液吐出ノズルを支持する円柱状部材などの柱状部材であり、内部には、気泡微細化部23で気泡の微細化が行われた気液を装置外部に排出するための気液排出路が形成されている。なお、気液排出部26は、気泡微細化部23を通過した気液を装置外部に排出する部分であればよく、具体的な構成、形状は特に限定されるものではない。従って、気液排出部26は、円柱状部材で構成されたもの(
図2、
図3)に限定されず、角柱状などその他の形状の部材で構成できる。
【0037】
気泡発生部1は、気液生成部21が液体と気体とを混合して得られた気液を旋回させることにより気液の旋回流を発生させて、微細気泡を発生できる(例えば
図1及び
図2)。この他、気泡発生部1は、一部の構成を異にすることで、液体の旋回流を形成した状態で、液体の旋回流に気体を導入して微細気泡を発生させることもできる(例えば
図3)。例えば、
図3の気泡発生部1は、気液排出部26に気体導入口26aおよび気体導入路26bを設け、気泡微細化部23の気体吐出ノズルで気体を液体の旋回流に導入できる。
図3において、液体(洗浄液)は、給水タンク13から供給部3を介して気液生成部21に供給され、液体の旋回流が形成される。また、気体は、気液排出部26の気体導入口26aから気体導入路26bを介して導入され、気液生成部21に供給され、液体の旋回流に気体が導入されることにより気液の旋回流が生成される。
図3の気泡発生部1は、気液排出部26の周壁面に気体を導入する気体導入口26aを有し、気体導入口26aは、気液排出部26の内部に形成された気体導入路26bを介して吐出部22の気液吐出ノズルの先端開口に繋がる構造である。この場合のバッフル板支持体24bは、気液生成部21に気体を供給する気体吐出ノズルとしての機能も有する。
(供給部3)
【0038】
供給部3は、気泡発生部1をノズル2に連結して、気泡発生部1の洗浄液をノズル2に供給する。供給部3は、好ましくはカップラー(図示せず)を介してノズル2を連結して使用できる。この供給部3は、ノズル2を交換して供給部3に脱着自在に連結できる。供給部3は、可撓性のホースが適している。可撓性のホースは自由に変形できるので、気泡発生部1を定位置に配置しながら、ノズル2を自由な位置に移動して便利に口腔内を洗浄できる。
【0039】
供給部3は、液体及び気体、または液体を気泡発生部1に供給する。
図1の供給部3は、給水タンク13内の液体(洗浄液)を気泡発生部1に供給する液体導入部3aと、気体を気泡発生部1に供給する気体導入部3bとを有する。液体導入部3aは、ポンプ12の上流に設けられ、ポンプ12が液体を吸入する際の吸入口であるとともに流路を兼ねる。気体導入部3bは、ポンプ12の上流に設けられ、ポンプ12が大気などの気体を吸入する際の吸入口と流路の役割を果たす。図において、液体は、主管の液体導入部3aにより給水タンク4から吸い上げられ、気体は、枝管の気体導入部3bから吸引され、主管と枝管とのつなぎ目で液体と気体とが混合されて気液が生成され、混合された気液が気泡発生部1の気液生成部21に供給される。
(ノズル2)
【0040】
ノズル2は、洗浄液を線状に収束して噴射することなく、洗浄液を幅方向に拡大して噴射する。ノズル2は、供給部3の可撓性のホースに連結されたノズル本体2Aと、ノズル本体2Aに脱着自在に連結されて、ノズル本体2Aから供給される洗浄液を幅方向に広げて噴出する噴射ノズル2Bとを備える。
(ノズル本体2A)
【0041】
ノズル本体2Aは、供給部3の可撓性のホースに連結されて、可撓性のホースを介して気泡発生部1に連結される。ノズル本体2Aはユーザーが手で持つノズル2のグリップとしても使用される。ノズル本体2Aは、流入側を供給部3に連結して、排出側を噴射ノズル2Bに連結する。ノズル本体2Aは脱着自在に噴射ノズル2Bを連結している。この構造のノズル本体2Aは、噴射ノズル2Bを交換して使用できるので、洗浄液の噴出幅が異なる複数の噴射ノズル2Bを使用して便利にできる。噴射ノズル2Bを脱着自在に連結するノズル本体2Aは、中心に洗浄液の通路9を有し、洗浄液の通路9の排出側の外周面に雄ネジを設けている連結筒部4を設けている。連結筒部4は、ノズル本体2Aの本体よりも細く、中心には洗浄液の通路9を設けている。噴射ノズル2Bは、連結筒部4をねじ込んで連結する雌ネジ穴5を設けている。このノズル本体2Aは、Oリング6を挟んで連結筒部4を噴射ノズル2Bの雌ネジ穴5にねじ込んで、水密構造に噴射ノズル2Bが連結される。ノズル本体2Aに連結された噴射ノズル2Bは、ノズル本体2Aの連結筒部4に設けている洗浄液の通路9から洗浄液が供給される。
(噴射ノズル2B)
【0042】
噴射ノズル2Bは、ノズル本体2Aに設けている洗浄液の通路9に連結される洗浄液の通路9を中心に設けており、洗浄液の通路9の排出側には噴出口7を設けている。噴射ノズル2Bは、噴出口7から噴射される洗浄液を薄膜に押し広げて幅方向に拡大するテーパー流動面8を設けている。このテーパー流動面8は、噴出口7から排出側に向かって、横幅(W)を次第に広くしている。噴出口7の内径は、供給される洗浄液の流量を考慮して、例えば0.5mmφ~1.5mmφとして、洗浄液をテーパー流動面8に供給する。テーパー流動面8は平滑面で、洗浄液をスムーズに薄膜に押し広げて、幅方向に拡大できるように、噴射された洗浄液を、流動する遠心力で表面に押し付ける凹部の湾曲流路面8Aを設けている。凹部の湾曲流路面8Aは、噴出口7から噴射された洗浄液を、流動する洗浄液の遠心力で湾曲する流路面に押し付けながら流動させて次第に薄膜として、横幅を広げて先端縁から噴射する。
図4のテーパー流動面8は、
図5のA-A線断面図と
図6のB-B線断面図に示すように、両側縁に沿って側壁10を設けている。この噴射ノズル2Bは、横幅を広げて噴射される洗浄液の側縁の散乱を抑制して噴射できる。
【0043】
図7ないし
図9に示す凹部の湾曲流路面8Aは、幅方向に伸びる拡散ライン11を設けている。このノズル2は、噴射ノズル2Bに噴射される洗浄液を、テーパー流動面8に設けている拡散ライン11でもって、より効果的に幅方向に拡大して噴射できる。したがって、拡散ライン11のある噴射ノズル2Aは、テーパー流動面8の流動方向の全長を短くして、洗浄液をより効果的に拡大して口腔内に噴射できる。それは、幅方向に伸びる線状に凹凸形状の拡散ライン11が、テーパー流動面8を層流状態で流動する洗浄液を横方向に拡大して噴射するからである。
図7ないし
図9の噴射ノズル2Aは、拡散ライン11をテーパー流動面8の先端部に配置するので、洗浄液を効率よく拡散して口腔内に噴射できる。拡散ライン11は、洗浄液を噴射するテーパー流動面8の先端部に配置することで洗浄液の噴射方向、形状などを規定、調整できる。ただ、拡散ラインは、図示しないがテーパー流動面の中間部に配置して、テーパー流動面の中間で、洗浄液を拡散して噴射できる。
【0044】
図7のノズル2は、拡散ライン11に溝状の拡散ライン11を設けている。拡散ライン11の溝の深さは、例えば0.3mm~1mmとして、洗浄液を拡大して噴射できる。テーパー流動面8は、溝の拡散ライン11に限らず、
図8の部分拡大図に示すように、凸条の拡散ライン11を設けて、洗浄液を拡散して噴射できる。溝状または凸条の拡散ライン11は、凹部の湾曲流路面8Aに幅方向に伸びるよう凹または凸形状を設けることで、噴出口7から噴射される洗浄液をより効率的に幅方向に拡大して噴射できる。図示しないが、1または複数の溝状または凸条の拡散ラインを設けることができ、溝状及び凸条の拡散ラインを組み合わせることもできる。
【0045】
テーパー流動面8の凹部の湾曲流路面8Aは、例えば内側に湾曲する曲率半径を2mm~10mm、好ましくは3mmないし5mmとし、流入側の横幅を噴出口7の直径よりも僅かに広く、排出側の横幅(W)を3mmないし10mmとして、洗浄液を遠心力で押し広げて、幅方向に拡大して噴射できる。テーパー流動面8は、凹部の湾曲流路面8Aから外部に噴射される洗浄液の噴射方向を、噴出口7が洗浄液を噴射す方向に対して、例えば30度以上であって90度以下として、それ自体の遠心力で洗浄液を押し広げて口腔内に噴射できる。
【0046】
以上の口腔洗浄装置は、気泡発生部1でナノバブルやマイクロバブルを含む洗浄液を生成し、この洗浄液を所定の圧力でノズル2に供給し、供給される洗浄液を、ノズル2に設けているテーパー流動面8の凹部の湾曲流路面8Aに向かって噴出し、テーパー流動面8に供給された洗浄液を遠心力で押し付けながら流動させて横幅を広く拡大して口腔内に噴射する。ユーザーはノズル2の方向を変更して、洗浄液の噴射方向を調整し、舌や歯茎等などに噴射して洗浄することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の口腔洗浄装置は、ユーザーがナノバブルやマイクロバブルを含む洗浄液を口腔内に噴射し、噴射される洗浄液で舌、歯、歯茎を洗浄する装置として便利に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1…気泡発生部
2…ノズル
2A…ノズル本体
2B…噴射ノズル
3…供給部
3a…液体導入部
3b…気体導入部
4…連結筒部
5…雌ネジ穴
6…Oリング
7…噴出口
8…テーパー流動面
8A…凹部の湾曲流路面
9…洗浄液の通路
10…側壁
11…拡散ライン
12…ポンプ
13…給水タンク
21…気液生成部
22…吐出部
23…気泡微細化部
24…バッフル板
24a…第1の貫通孔(中心貫通孔)
24b…第2の貫通孔(中心周り貫通孔)
25…バッフル板支持体
25a…軸部
26…気液排出部
26a…気体導入部
26b…気体導入路