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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065762
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】算出プログラムおよび算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20240508BHJP
【FI】
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174778
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA01
2G003AB08
2G003AE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】集中定数回路を用いた等価回路モデルの精度を向上させる算出プログラム及び算出方法を提供する。
【解決手段】コンピュータのプロセッサによりパラメータを抽出する算出方法は、分布定数回路のモデルを取得するS10。分布定数回路のモデルは予めメモリに格納されている。プロセッサはさらに、イントリンシック回路のモデルを取得するS12。イントリンシック回路内のモデルは予めメモリに格納されており、イントリンシック回路のモデルをメモリから取得してもよい。プロセッサはまた、複数のポートを含む回路網の行列を取得しS14、分布定数回路内のインピーダンス素子のパラメータを抽出しS16、抽出したインピーダンス素子のパラメータを出力するS18。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出プログラムであって、
Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、
をコンピュータに実行させる算出プログラム。
【請求項2】
前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、に基づき前記L個のパラメータを抽出するステップを含む請求項1に記載の算出プログラム。
【請求項3】
前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、の差が小さくなるように、前記L個のパラメータを最適化することにより前記L個のパラメータを抽出するステップを含む請求項1に記載の算出プログラム。
【請求項4】
Mは2以上の整数であり、前記N個の行列は、M個の高周波信号の周波数に対応付けられたM個の行列を各々含み、
前記M個のパラメータの値を抽出するステップは、前記M個の周波数各々について、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき前記L個のパラメータの値を抽出するステップを含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項5】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出プログラムであって、
前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、
をコンピュータに実行させる算出プログラム。
【請求項6】
前記行列は、Sパラメータ行列である請求項1、請求項2、請求項3および請求項5のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項7】
前記分布定数回路は、
第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、
第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、
第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、
第1端が前記第1端子と前記第4端子との間の第1ノードに接続され第2端が前記第2端子と前記第5端子との間の第2ノードに接続された第4インピーダンス素子と、
第1端が前記第2ノードに接続され第2端が前記第3端子と前記第6端子との間の第3ノードに接続された第5インピーダンス素子と、
第1端が前記第3ノードに接続され第2端が前記第1ノードに接続された第6インピーダンス素子と、
を備える請求項1、請求項2、請求項3および請求項5のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項8】
前記分布定数回路は、
第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、
第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、
第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、
第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第2端子に接続された第4インピーダンス素子と、
第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第3端子に接続された第5インピーダンス素子と、
第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第1端子に接続された第6インピーダンス素子と、
第1端が前記第4端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第7インピーダンス素子と、
第1端が前記第5端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第8インピーダンス素子と、
第1端が前記第6端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第9インピーダンス素子と、
を備える請求項1、請求項2、請求項3および請求項5のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項9】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出方法であって、
Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、
を含む算出方法。
【請求項10】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出方法であって、
前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、
を含む算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算出プログラムおよび算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ等の高周波素子の等価回路モデルでは受動素子として集中定数素子を用いた集中定数回路が用いられる。高周波素子の高周波特性を測定し、測定された高周波特性に合うように、等価回路モデルの集中定数素子のパラメータを抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-61970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、周波数が高い高周波帯域では、集中定数素子に対し高周波信号の波長が十分大きくない。このため、周波数が変わると高周波素子の高周波特性が集中定数回路を用いた等価回路モデルに合わなくなることがある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、モデルの精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出プログラムであって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。
【0007】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出プログラムであって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。
【0008】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出方法であって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、を含む算出方法である。
【0009】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出方法であって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、を含む算出方法である。
【0010】
本開示は、このような特徴的な算出プログラムおよび算出方法として実現することができるだけでなく、かかる特徴的なステップを処理する算出装置として実現することができる。また、算出装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、算出装置を含む算出システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、モデルの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1におけるFETが用いられる増幅回路の回路図である。
図2図2は、FETにおけるドレイン電圧Vdsに対するドレイン電流Ids(Ids-Vds特性)を示す図である。
図3図3は、FETにおける集中定数回路を用いた等価回路を示す図である。
図4図4は、FETにおける分布定数回路を用いた等価回路を示す図である。
図5図5は、実施例1におけるコンピュータのブロック図である。
図6図6は、実施例1におけるパラメータを抽出する算出方法を示すフローチャートである。
図7図7は、実施例1における分布定数回路の例を示す回路図である。
図8図8は、実施例1におけるSパラメータ行列を測定する方法を示すフローチャートである。
図9図9は、実施例1における測定されるSパラメータ行列を示すデータテーブルである。
図10図10は、図6のステップS16において、コンピュータがパラメータRhkおよびXhkを抽出する方法を示すフローチャートである。
図11図11は、実施例1における取得したSm(fj)@V1~Vnを示すデータテーブルである。
図12図12は、実施例1における算出したSc(fj)@V1~Vnを示すデータテーブルである。
図13図13は、実施例1における抽出されたRhkおよびXhkを示すデータテーブルである。
図14図14は、実施例1におけるS11m(fj)@V1~VnおよびS11c(fj)@V1~Vnの例を示すスミスチャートである。
図15図15は、実施例1におけるS12m(fj)@V1~VnおよびS12c(fj)@V1~Vnの例を示す極座標である。
図16図16は、実施例1におけるS21m(fj)@V1~VnおよびS21c(fj)@V1~Vnの例を示す極座標である。
図17図17は、実施例1におけるS22m(fj)@V1~VnおよびS22c(fj)@V1~Vnの例を示すスミスチャートである。
図18図18は、実施例1におけるコンピュータがパラメータRhkおよびXhkを用いSパラメータを算出する算出方法を示すフローチャートである。
図19図19は、実施例1における分布定数回路の別の例1を示す回路図である。
図20図20は、実施例1における分布定数回路の別の例2を示す回路図である。
図21図21は比較例1におけるFETの分布定数を用いた等価回路を示す図である。
図22図22は、実施例2における高周波回路を集中定数回路により示した等価回路を示す図である。
図23図23は、実施例2における分布定数回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出プログラムであって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。これにより、モデルの精度を向上できる。
(2)上記(1)において、前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、に基づき前記L個のパラメータを抽出するステップを含んでもよい。
(3)上記(1)において、前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、の差が小さくなるように、前記L個のパラメータを最適化することにより前記L個のパラメータを抽出するステップを含んでもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、Mは2以上の整数であり、前記N個の行列は、M個の高周波信号の周波数に対応付けられたM個の行列を各々含み、前記M個のパラメータの値を抽出するステップは、前記M個の周波数各々について、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき前記L個のパラメータの値を抽出するステップを含んでもよい。
(5)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出プログラムであって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。これにより、モデルの精度を向上できる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記行列は、Sパラメータ行列でもよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記分布定数回路は、第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、第1端が前記第1端子と前記第4端子との間の第1ノードに接続され第2端が前記第2端子と前記第5端子との間の第2ノードに接続された第4インピーダンス素子と、第1端が前記第2ノードに接続され第2端が前記第3端子と前記第6端子との間の第3ノードに接続された第5インピーダンス素子と、第1端が前記第3ノードに接続され第2端が前記第1ノードに接続された第6インピーダンス素子と、を備えてもよい。
(8)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記分布定数回路は、第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第2端子に接続された第4インピーダンス素子と、第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第3端子に接続された第5インピーダンス素子と、第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第1端子に接続された第6インピーダンス素子と、第1端が前記第4端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第7インピーダンス素子と、第1端が前記第5端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第8インピーダンス素子と、第1端が前記第6端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第9インピーダンス素子と、を備えてもよい。
(9)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出方法であって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、を含む算出方法である。これにより、モデルの精度を向上できる。
(10)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出方法であって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と、第2端が前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、を含む算出方法である。これにより、モデルの精度を向上できる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかる算出プログラムおよび算出方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。算出装置は、コンピュータを備えて構成され、算出装置の各機能は、コンピュータの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムがコンピュータのCPU(Central Processing Unit)によって実行されることで発揮される。コンピュータプログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)またはDVD(Digital Versatile Disc)などの記憶媒体に記憶させることができる。
[実施例1]
【0016】
高周波素子を用いた高周波回路を設計する例をトランジスタであるFET(Field Effect Transistor)を用いた増幅回路を例に説明する。高周波回路が扱う高周波信号は例えばマイクロ波(300MHz~30GHz)またはミリ波(30GHz~300GHz)である。
【0017】
[増幅回路の例]
図1は、実施例1におけるFETが用いられる増幅回路の回路図である。図1に示すように、増幅回路18は、FET10、整合回路12および14を備えている。FETは、例えばGaN HEMT(Gallium Nitraide High Electron Mobiklity Transistor)である。FET10のソースSはグランドに接続され、ゲートGは整合回路12を介し入力端子Tinに接続されている。FET10のドレインDは整合回路14を介し出力端子Toutに接続されている。整合回路12は、入力端子TinとFET10との間に接続され、入力端子TinとゲートGとの間に直列接続されたインダクタL11およびL12と、インダクタL11とL12との間のノードにおいてシャント接続されたキャパシタC11と、を備えている。整合回路14は、FET10と出力端子Toutとの間に接続され、ドレインDと出力端子Toutとの間に直列接続されたインダクタL21およびL22と、インダクタL21とL22との間のノードにおいてシャント接続されたキャパシタC21と、を備えている。
【0018】
入力端子Tinに入力した高周波信号は整合回路12を介しFET10のゲートGに入力する。FET10は入力した高周波信号を増幅する。出力端子Toutは増幅された高周波信号を出力する。整合回路12は、入力端子Tinの入力インピーダンスをゲートGの入力インピーダンスに整合させる。整合回路14は、ドレインDの出力インピーダンスを出力端子Toutの出力インピーダンスに整合させる。整合回路12および14の素子値(インダクタL11、L12、L21およびL22のインダクタンス、キャパシタC11およびC21のキャパシタンス)の値を設計することで、増幅回路18の高周波特性を所望の特性とすることができる。特に、整合回路14の素子値を調整することでFET10の負荷インピーダンスを調整でき、増幅回路18の高周波特性を調整できる。整合回路12および14の回路構成は適宜設計できる。増幅回路18の帯域の中心周波数は例えば0.5GHz~10GHzである。
【0019】
[FETの負荷線]
図2は、FETにおけるドレイン電圧Vdsに対するドレイン電流Ids(Ids-Vds特性)を示す図である。ドレイン電圧VdsはソースSに対するドレインDの電圧、ゲート電圧VgsはソースSに対するゲートGの電圧、ドレイン電流IdsはソースSからドレインDに流れる電流である。FET10では、ゲート電圧Vgsが変化するとIds-Vds曲線が変化する。図1の入力端子Tinに振幅の大きい大信号の高周波信号が入力するとゲートGに大信号の高周波信号が入力する。負荷線は、ゲートGに振幅の大きな高周波信号を入力したときのIds-Vds上での直線または曲線を示す。
【0020】
増幅回路18を設計するときには、負荷線上のn個のVgsi、Vdsiの電圧のセットVi(iは1からnの整数)におけるFET10の小信号(すなわち振幅の小さい高周波信号)のSパラメータを用い増幅回路18を設計する。負荷線上の電圧セットは、V1=(Vgs1、Vds1)、V2=(Vgs2、Vds2)、V3=(Vgs3、Vds3)…Vi=(Vgsi、Vdsi)…Vn=(Vgsn、Vdsn)である。FET10のSパラメータは、ゲートGをポートP1、ドレインDをポートP2としたときのSパラメータ行列であり、Sパラメータ行列の各要素はS11、S12、S21およびS22である。Sパラメータ行列は散乱行列ともいう。S11、S12、S21およびS22は、周波数fに依存し、周波数fの関数である。
【0021】
周波数がfj、電圧セットがViのときのSパラメータ行列を数1のようにあらわす。
【数1】
【0022】
[集中定数回路を用いたFETの等価回路]
集中定数回路を用いたFET10の等価回路の例を説明する。集中定数回路に用いられる集中定数素子は、例えば抵抗、キャパシタ(容量)およびインダクタである。図3は、FETにおける集中定数回路を用いた等価回路を示す図である。図3に示すように、FET10は、ソースS、ゲートGおよびドレインDを備えている。ソースSはグランド等の基準電位に接続され、ゲートGには高周波信号が入力する。ドレインDから高周波信号が出力される。等価回路は、イントリンシック(真正)回路20と寄生回路22を備えている。イントリンシック回路20はFET10のイントリンシックな部分であり、ドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧Vgsが変化すると集中定数素子の素子値が変化する部分である。寄生回路22はドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧Vgsが変化しても集中定数素子の素子値がほとんど変わらない部分である。
【0023】
寄生回路22とゲートG、ドレインDおよびソースSとを接続するポートはそれぞれP1、P2およびP3である。ポートP4、P5およびP6はイントリンシック回路20と寄生回路22とを接続するポートである。ポートP4には高周波信号が入力し、ポートP5から高周波信号が出力される。ポートP6はグランドに接続される。
【0024】
イントリンシック回路20では、ポートP4とP5との間にゲート・ドレイン容量Cgdが接続され、ポートP5とP6との間にドレイン・ソース容量Cdsが接続され、ポートP4とP6との間にゲート・ソース容量Cgsが接続されている。ポートP5とP6の間においてドレイン・ソース容量Cdsに並列に電流源Idが接続され、ポートP4とP6との間においてゲート・ソース容量と並列に抵抗Riが接続されている。ゲート・ドレイン容量Cgdの値は、例えばゲート・ドレイン間の電圧Vgdに依存する。ドレイン・ソース容量Cdsおよびゲート・ソース容量Cgsの値は、例えばそれぞれドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧Vgsに依存する。抵抗Riの値は例えばゲート電圧Vgsに依存する。イントリンシック回路20には、ダイオード等が設けられていてもよい。
【0025】
寄生回路22では、ポートP1とP4との間に直列にゲートインダクタLgおよびゲート抵抗Rgが接続され、ポートP2とP5との間に直列にドレインインダクタLdおよびドレイン抵抗Rdが接続され、ポートP3とP6との間に直列にソースインダクタLsおよびソース抵抗Rsが接続されている。ゲートインダクタLg、ゲート抵抗Rg、ドレインインダクタLd、ドレイン抵抗Rd、ソースインダクタLsおよびソース抵抗Rsの値はゲート電圧Vgsおよびドレイン電圧Vdsにほとんど依存しない。寄生回路22には、ゲート電圧Vgsおよびドレイン電圧Vdsにほとんど依存しない寄生容量等が設けられていてもよい。
【0026】
イントリンシック回路20のモデルは、例えば大信号モデルであり、Cgs(Vgs、Vds)、Cgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds)により表される。Cgs、Cgd、CdsおよびRiはVdsおよびVgsの関数である。寄生回路22のモデルは、例えばRs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLdにより表される。寄生回路22では、Rs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLdはVdsおよびVgsに依存せずVdsおよびVgsの関数ではない。集中定数素子(Cgs、Cgd、Cds、Ri、Rs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLd)の素子値(キャパシタンス、インダクタンスおよび抵抗)は周波数の関数ではないが、キャパシタンスCおよびインダクタンスLをインピーダンスZとして表すときにはリアクタンス成分は1/jωCおよびjωL(jは虚数単位、ωが各周波数)と表わされる。
【0027】
FET10のSパラメータ行列は、イントリンシック回路20のモデルおよび寄生回路22のモデルの各素子値に基づき算出できる。そこで、FET10のSパラメータ行列を算出するときには、イントリンシック回路20のモデルに電圧セットVdsi、Vgsiを代入することで、Cgs、Cgd、CdsおよびRiが算出できる。さらに、高周波信号の周波数fjを代入すれば、Cgs、Cgd、Cds、Ri、Rs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLdを用い、FET10のSパラメータ行列S(fj)@Viを算出できる。
【0028】
寄生回路22を集中定数回路とした等価回路では、周波数が高い高周波帯域では、集中定数素子に対し高周波信号の波長が十分大きくない。このため、寄生回路22を集中定数素子の素子値で表そうとしても、キャパシタンスCとインダクタンスLだけでは、周波数f依存を表現しきれない。このため、周波数fが変わると集中定数回路を用いた等価回路モデルでは、適切なSパラメータ行列S(fj)@Viを算出できないことがある。
【0029】
[分布定数回路を用いたFETの等価回路]
そこで、実施例1では、寄生回路22のモデルとして分布定数回路を用いる。分布定数回路を寄生回路22に用いたFET10の等価回路の例を説明する。図4は、FETにおける分布定数回路を用いた等価回路を示す図である。図4に示すように、寄生回路22を分布定数回路24として表す。分布定数回路24の回路網は、ポートP1、P2、P3、P4、P5およびP6を有する。ポートP1(第1端子)は、FET10(高周波素子)に高周波信号が入力するポートである。ポートP2(第2端子)は、FET10から高周波信号を出力するポートである。ポートP3(第3端子)は、FET10に基準電位が供給されるポートである。ポートP4(第4端子)は、イントリンシック回路20に分布定数回路24から高周波信号が入力するポートである。ポートP5(第5端子)は、イントリンシック回路20から分布定数回路24に高周波信号を出力するポートである。ポートP6(第6端子)は、分布定数回路24からイントリンシック回路20にグランド電位(基準電位)を供給するポートである。
【0030】
ポートP1、P2、P3、P4、P5およびP6間の全ての間に36個のインピーダンス素子Zhk(hおよびkは1から6の整数)が接続されているとした場合、分布定数回路24のパラメータは36個のインピーダンス素子Zhkのパラメータである。36個のインピーダンス素子Zhkのインピーダンスは、36個の複素数となり、72個の実数のパラメータで表される。
【0031】
以下、実施例1における分布定数回路24のパラメータを抽出する算出方法および抽出されたパラメータを用いSパラメータ行列を算出する算出方法について説明する。
[コンピュータのブロック図]
図5は、実施例1におけるコンピュータのブロック図である。コンピュータ30は、ソフトウエアと協働しパラメータを抽出する算出装置として機能する。コンピュータ30は、パラメータを抽出する算出プログラムを実行し、パラメータを抽出する算出方法を実行する。また、コンピュータ30は、ソフトウエアと協働し抽出されたパラメータを用いSパラメータ行列を算出する算出装置として機能する。コンピュータ30は、Sパラメータ行列を算出する算出プログラムを実行し、Sパラメータ行列を算出する算出方法を実行する。
【0032】
コンピュータ30は、プロセッサ32、メモリ34、入出力装置36および内部バス38を備えている。プロセッサ32は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、分布定数回路の等価回路モデルを用いて、算出プログラムおよび算出方法を実行する。メモリ34は、例えば揮発性メモリまたは不揮発性メモリであり、プロセッサ32が算出プログラムおよび算出方法を実行するときに用いるデータ等を記憶する。メモリ34は、プロセッサ32が実行する算出プログラムを記憶してもよい。入出力装置36は、プロセッサ32が取得するデータを外部装置から入力し、プロセッサ32が出力するデータを外部装置に出力する。内部バス38は、プロセッサ32、メモリ34および入出力装置36を接続し、データ等を伝送する。算出プログラムは、記憶媒体35に記憶される。記憶媒体35は、例えば一時的でない有形の媒体であり、CD-ROMまたはDVD等である。
【0033】
[パラメータ抽出のフローチャート]
図6は、実施例1におけるパラメータを抽出する算出方法を示すフローチャートである。図6に示すように、プロセッサ32は、分布定数回路24のモデルを取得する(ステップS10)。プロセッサ32は、分布定数回路24のモデルを外部装置から入出力装置36を介し取得してもよい。分布定数回路24のモデルは予めメモリ34に格納されており、プロセッサ32は、分布定数回路24のモデルをメモリ34から取得してもよい。
【0034】
プロセッサ32は、イントリンシック回路20のモデルを取得する(ステップS12)。プロセッサ32は、イントリンシック回路20のモデルを外部装置から入出力装置36を介し取得してもよい。イントリンシック回路20内のモデルは予めメモリ34に格納されており、プロセッサ32は、イントリンシック回路20のモデルをメモリ34から取得してもよい。
【0035】
プロセッサ32は、ポートP1およびP2を含む回路網の行列を取得する(ステップS14)。ポートP1およびP2を含む回路網の行列は、例えば、測定されたポートP1およびP2のSパラメータ行列である。図6において、ステップS10、S12およびS14の順番は適宜選択できる。
【0036】
プロセッサ32は、分布定数回路24内のインピーダンス素子Zhkのパラメータを抽出する(ステップS16)。例えば、プロセッサ32は、分布定数回路24のモデルとイントリンシック回路20のモデルを用い行列の各要素を算出する。プロセッサ32は、取得した行列の各要素と、算出する行列の各要素と、に基づき分布定数回路24内のインピーダンス素子Zhkのパラメータを抽出する。
【0037】
プロセッサ32は、抽出されたインピーダンス素子Zhkのパラメータを出力する(ステップS18)。例えば、プロセッサ32は、インピーダンス素子Zhkのパラメータを、入出力装置36を介し外部装置に出力する。
【0038】
以下に、図6のフローチャートの各ステップの具体例を説明する。
[ステップS10の例]
図6のステップS10において、プロセッサ32が取得する分布定数回路24の回路網を説明する。図7は、実施例1における分布定数回路の例を示す回路図である。図7に示すように、分布定数回路24は、9個のインピーダンス素子Z14、Z25、Z36、Z12、Z23、Z13、Z45、Z56およびZ46を備えている。その他のインピーダンス素子は設けられていない。インピーダンス素子Z14、Z25およびZ36は、ポートP1とP4との間、ポートP2とP5との間、およびポートP3とP6との間、にそれぞれ接続されている。インピーダンス素子Z12、Z23およびZ13は、ポートP1とP2との間、ポートP2とP3との間、およびポートP1とP3との間、にそれぞれ接続されている。インピーダンス素子Z45、Z56およびZ46は、ポートP4とP5との間、ポートP5とP6との間、およびポートP4とP6との間、にそれぞれ接続されている。
【0039】
ポートPhとPkとの間のインピーダンス素子Zhkの高周波特性として、Sパラメータ行列を仮定すると、インピーダンス素子ZhkのパラメータはShh、Shk、SkhおよびSkkの4個の複素数であり8個の実数である。インピーダンス素子Zhkでは、ポートPhとPkとは対称である。このため、Shh=SkkおよびShk=Skhである。ShhおよびShkを極座標で表すと次式となる。
Shh=Skk=polar(ghh、phh)
Shk=Skh=polar(ghk、phk)
ここで、polarは極座標を表し、ghhおよびghkはそれぞれShhおよびShkの振幅であり、phhおよびphkはShhおよびShkの位相である。
【0040】
振幅ghkおよび位相phkは以下の式で表される。
ghk=abs(sqrt(1-|ghh|)(1-Shh)/(1+Shh))
phk=phase(sqrt(1-|ghh|)(1-Shh)/(1+Shh))
ここで、absは絶対値、sqrtは√、phaseは回転角を表す関数である。
【0041】
このように、インピーダンス素子Zhkのパラメータはghhとphhの2つの実数パラメータとなる。また、インピーダンス素子ZhkのインピーダンスはRhk+jXhkで表すことができる。ここで、Rhkはインピーダンスの抵抗成分であり、Xhkはインピーダンスのリアクタンス成分であり、jは虚数単位である。このように、インピーダンス素子Zhkのパラメータは2個の実数パラメータである。
【0042】
図7の分布定数回路24の回路網は、9個のインピーダンス素子を有する。このため、図7の分布定数回路24の回路網を用いた分布定数回路24のモデルは18個の実数のパラメータにより表される。インピーダンスを抵抗成分とリアクタンス成分で表した場合、18個の実数のパラメータは、R14、R25、R36、R12、R23、R13、R45、R56、R46、X14、X25、X36、X12、X23、X13、X45、X56およびX46である。この18個のパラメータをRhkおよびXhkと表す。
【0043】
RhkおよびXhkは、周波数f、ドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧Vgsの関数である。そこで、周波数f、ドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧VgsのときのRhkおよびXhkを、電圧セットViを用いそれぞれRhk(f)@ViおよびXhk@Viと表す。
【0044】
ステップS10において、プロセッサ32は、分布定数回路24のモデルとして、分布定数回路24におけるインピーダンス素子Zhkの接続関係を取得する。
【0045】
[ステップS12の例]
図6のステップS12において、プロセッサ32が取得するイントリンシック回路20のモデルを説明する。図3のイントリンシック回路20における集中定数素子の接続関係および集中定数素子の値がイントリンシック回路20のモデルに相当する。図3の例では、集中定数素子は、ゲート・ドレイン容量Cgd、ドレイン・ソース容量Cds、ゲート・ソース容量Cgsおよび抵抗Riである。Cgd、Cds、CgsおよびRiはドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧Vgsの関数である。イントリンシック回路20のモデルには、例えばAngelovモデルまたはカーチスモデル等の大信号モデルが用いられる。これらのモデルは、例えばCgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)、Cgs(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds)等の集中定数素子の値で表される。例えばCgs(Vgs)=C0+C1×Vgs+C2×Vgsである。ここで、C0、C1およびC2は係数である。このように、Cgd、Cds、CgsおよびRiは、Vgsのみの関数でもよく、Vdsのみの関数でもよい。
【0046】
ステップS12において、プロセッサ32は、イントリンシック回路20のモデルとして、図4のCgd、Cds、Cgs、RiおよびIdの接続関係と、Cgd、Cds、CgsおよびRiとVgsおよびVdsとの関係式Cgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)、Cgs(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds)を取得する。
【0047】
[ステップS14の例]
図6のステップS14において、プロセッサ32が取得するSパラメータ行列について説明する。プロセッサ32が取得するSパラメータ行列は、例えばユーザがFET10を測定したSパラメータ行列である。ユーザは、FETのポートP1およびP2の間のSパラメータ行列(例えば数1)を測定する。例えば、図2の負荷線上のn個のVdsi、Vgsiの電圧のセットVi(iは1からnの整数)におけるFET10のSパラメータ行列を測定する場合について説明する。
【0048】
図8は、実施例1におけるSパラメータ行列を測定する方法を示すフローチャートである。なお、図8の各ステップは、ユーザが行ってもよいし、測定器または測定器を制御するコンピュータが行ってもよい。図9は、実施例1における測定されるSパラメータ行列を示すデータテーブルである。図9において、電圧セットはSパラメータを測定するゲート電圧Vgsおよびドレイン電圧Vds、周波数はSパラメータを測定する周波数f、SパラメータS11、S12、S21およびS22は、ポートP1およびP2におけるSパラメータ行列の各要素である。なお、ViはVgsi、Vdsiを示す。
【0049】
図8に示すように、ユーザは測定するFET10を測定器(例えばネットワークアナライザー)にセットする。FET10のゲートGは高周波信号が入力されるポートとし、ドレインDを高周波信号が出力するポートとし、ソースSにグランド電位を供給する。i=1に設定する(ステップS20)。ゲート電圧Vgsおよびドレイン電圧VdsとしてゲートGおよびドレインDにそれぞれVdsiおよびVgsi(すなわちVgs1、Vds1)を印加する(ステップS21)。j=1に設定する(ステップS22)。ゲートGに周波数fがfj(すなわちf1)である高周波信号を出力する(ステップS23)。ゲートGとドレインDとのSパラメータ行列を測定する(ステップS24)。これにより、図9におけるS11m(f1)@V1、S12m(f1)@V1、S21m(f1)@V1、およびS22m(f1)@V1が測定される。
【0050】
j<mか判定する(ステップS25)。Yesのときj=j+1に設定する(ステップS26)。J=2となる。その後ステップS23に戻る。ステップS23において、ゲートGに周波数fがf2である高周波信号を出力する。ステップS24において、周波数f2においてSパラメータ行列、S11m(f2)@V1、S12m(f2)@V1、S21m(f2)@V1、およびS22m(f2)@V1)、が測定される。ステップS23からS26を繰り返すことにより、Vgs1およびVds1における周波数がf1からfmのSパラメータ行列、S11m(fj)@V1、S12m(fj)@V1、S21m(fj)@V1、およびS22m(fj)@V1、jは1からmの整数が測定される。
【0051】
ステップS25において、Noのとき、j≧mである。このとき、i<nか判定する(ステップS27)。Yesのときi=i+1に設定する(ステップS28)。i=2となる。その後ステップS21に戻る。ステップS21において、ゲートGおよびドレインDにそれぞれVds2およびVgs2を印加する。ステップS22において、j=1に設定する。ステップS23において、ゲートGに周波数fがf1である高周波信号を出力する。ステップS24において、Sパラメータ行列が測定される。i=2のときに、i=1のときと同様に、ステップS22からS26を繰り返すことで、Vgs2およびVds2における周波数がf1からfmのSパラメータ行列、S11m(fj)@V2、S12m(fj)@V2、S21m(fj)@V2、およびS22m(fj)@V2、jは1からmの整数、が測定される。
【0052】
ステップS21からS28を繰り返すことにより、図9におけるS11m(fj)@Vi、S12m(fj)@Vi、S21m(fj)@Vi、およびS22m(fj)@Vi、iは1からnの整数、jは1からmの整数が測定される。ステップS27において、Noのとき、終了する。以上により、図9のSパラメータが測定される。
【0053】
ステップS14において、プロセッサ32は、図9のデータテーブルのSパラメータを取得する。図9のように、S11m(fj)@Vi、S12m(fj)@Vi、S21m(fj)@ViおよびS22m(fj)@Viは、電圧セットVgsi、Vdsiに対応付けられており、かつ周波数fjに対応付けられている。
【0054】
[ステップS16の例]
図6のステップS16において、プロセッサ32がパラメータを抽出する算出方法について説明する。インピーダンス素子ZhkのパラメータとしてRhkおよびXhkを例に説明する。図10は、図6のステップS16において、コンピュータがパラメータRhkおよびXhkを抽出する算出方法を示すフローチャートである。図10に示すように、プロセッサ32は、j=1に設定する(ステップS30)。プロセッサ32は、周波数fをf1に設定する(ステップS31)。プロセッサ32は、図7におけるインピーダンス素子ZhkのインピーダンスのパラメータRhkおよびXhkを初期値に設定する(ステップS32)。図6のステップS10において、図7のような分布定数回路24におけるインピーダンス素子Zhkの接続関係が取得されている。プロセッサ32は、インピーダンス素子ZhkのパラメータRhkおよびXhkの初期値を設定する。パラメータRhkは、R14、R25、R36、R12、R23、R13、R45、R56およびR46であり、Xhkは、X14、X25、X36、X12、X23、X13、X45、X56およびX46である。パラメータRhkおよびXhkの初期値は、予めメモリ34に格納されていてもよいし、入出力装置36を介し外部装置から取得してもよい。
【0055】
プロセッサ32は、i=1に設定する(ステップS33)。プロセッサ32は、ゲート電圧VgsをVgsi(すなわちVgs1)に設定し、ドレイン電圧VdsをVdsi(すなわちVds1)に設定する(ステップS34)。プロセッサ32は、イントリンシック回路20のモデルを設定する(ステップS35)。例えば、コンピュータは、ステップS12において取得したCgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)、Cgs(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds)のVgsおよびVdsにVgs1およびVds1を代入し、図3におけるイントリンシック回路20のCgd、Cds、CgsおよびRiを設定する。
【0056】
プロセッサ32は、Sc(fj)@Vi(すなわちSc(f1)@V1)を算出する(ステップS36)。Sc(f1)@V1は行列であり、行列の各要素は、S11c(f1)@V1、S12c(f1)@V1、S21c(f1)@V1およびS22c(f1)@V1である。Sc(fj)@Viの算出には、分布定数回路24のモデルとして、ステップS32またはS41において設定したインピーダンス素子ZhkのインピーダンスのパラメータRhkおよびXhkを用いる。かつイントリンシック回路20のモデルとして、ステップS35において設定したCgd(Vgsi、Vdsi)、Cds(Vgsi、Vdsi)、Cgs(Vgsi、Vdsi)およびRi(Vgsi、Vdsi)を用いる。
【0057】
プロセッサ32は、i<nか判定する(ステップS37)。i=1のときはYesである。Yesのとき、プロセッサ32は、i=i+1に設定する(ステップS38)。i=2となる。ステップS34に戻る。ステップS34において、プロセッサ32は、VgsおよびVdsをそれぞれVgs2およびVds2に設定する。ステップS35において、プロセッサ32は、Cgd、Cds、CgsおよびRiをCgd(Vgs2、Vds2)、Cds(Vgs2、Vds2)、Cgs(Vgs2、Vds2)およびRi(Vgs2、Vds2)に設定する。ステップS36において、プロセッサ32は、Sc(f1)@V2を算出する。ステップS34からS38を繰り返すことにより、周波数がf1における電圧セットがV1からVnのSc(f1)@V1からSc(f1)@Vnが算出される。
【0058】
ステップS37において、Noのとき、i≧nである。このとき、プロセッサ32は、ステップS14において取得した図9のSパラメータのうち周波数fがfjにおけるSm(fj)@V1~Vnと、ステップS33からS38において算出したSc(fj)@V1~Vnと、を比較する(ステップS39)。
【0059】
図11は、実施例1における取得したSm(fj)@V1~Vnを示すデータテーブルである。図11に示すように、周波数fがfjにおいて、S11m(fj)@Vi、S12m(fj)@Vi、S21m(fj)@ViおよびS22m(fj)@Viは電圧セットVi=Vgsi、Vdsiに対応付けられている。
【0060】
図12は、実施例1における算出したSc(fj)@V1~Vnを示すデータテーブルである。図12に示すように、周波数fがfjにおいて、S11c(fj)@Vi、S12c(fj)@Vi、S21c(fj)@ViおよびS22c(fj)@Viは電圧セットVi=Vgsi、Vdsiに対応付けられている。
【0061】
ステップS39において、例えば、プロセッサ32は、図11のSm(fj)@V1~Vnと、対応する図12のSc(fj)@V1~Vnと、の差を算出する。プロセッサ32が算出する差は、例えば|S11m(fj)@Vi-S11c(fj)@Vi|+|S12m(fj)@Vi-S121c(fj)@Vi|+|S21m(fj)@Vi-S21c(fj)@Vi|+|S22m(fj)@Vi-S22c(fj)@Vi|のi=1からnまでの和である。差は、|S11m(fj)@Vi-S11c(fj)@Vi|+|S12m(fj)@Vi-S121c(fj)@Vi|+|S21m(fj)@Vi-S21c(fj)@Vi|+|S22m(fj)@Vi-S22c(fj)@Vi|のi=1からnまでの和(すなわち平方和)でもよいし、各差に重み付けを行った後に加算してもよい。
【0062】
図10に戻り、プロセッサ32は、OKか判定する(ステップS40)。例えば、プロセッサ32は、ステップS39において行った比較によりRhkおよびXhkが最適化されたか判定し、最適化されたときYes、最適化されていないときNoと判定する。例えば、プロセッサ32は、ステップS39において算出した差が目標の範囲内のときYesと判定し、差が目標の範囲以外のときNoと判定する。Noのとき、プロセッサ32は、インピーダンス素子ZhkのインピーダンスのパラメータRhkおよびXhkを再設定する(ステップS41)。例えば、プロセッサ32は、ステップS39において算出した差を目的関数とし、目的関数が最適化に近づくようにインピーダンス素子ZhkのインピーダンスのパラメータRhkおよびXhkを最適化してもよい。
【0063】
ステップS33に戻り、プロセッサ32は、再設定したパラメータRhkおよびXhkを用い、ステップS33からS38を繰り返すことで、図12のようなSc(fj)@V1~Vnを算出する。ステップS40において、プロセッサ32は、OKか判定する(ステップS40)。Yesと判定したとき、ステップS32またはS41において最後に設定したパラメータRhkおよびXhkを抽出する(ステップS42)。
【0064】
図13は、実施例1における抽出されたRhkおよびXhkを示すデータテーブルである。図13は、周波数fj(jは1からm)に対応付けされたRhkおよびXhkとして、R14(fj)、R25(fj)、R36(fj)、X14(fj)、X25(fj)、X36(fj)、R12(fj)、R23(fj)、R13(fj)、X12(fj)、X23(fj)、X13(fj)、R45(fj)、R56(fj)、R46(fj)、X45(fj)、X56(fj)およびX46(fj)を示している。図13に示すように、周波数fがf1のときのRhkおよびXhkとしてRhk(f1)およびXhk(f1)として抽出される。
【0065】
図10に戻り、プロセッサ32は、j<mか判定する(ステップS43)。j=1のときはYesである。Yesのとき、プロセッサ32は、j=j+1に設定する(ステップS44)。j=2となる。ステップS31に戻り、ステップS32からS40を繰り返す。ステップS40においてYesのとき、図13のように、プロセッサ32は、周波数fがf2のときのRhkおよびXhkとしてRhk(f2)およびXhk(f2)を抽出する。
【0066】
図10に戻り、ステップS31からステップS44を繰り返す。これにより、図13のように、コンピュータは、周波数がf1~fmにおけるRhk(f1)およびXhk(f1)からRhk(fm)およびXhk(fm)を抽出する。図10に戻り、j=mとなると、ステップS43において、プロセッサ32はNoと判定し、終了する。
【0067】
[Sパラメータの例]
ステップS40において、Yesと判定されたSm(fj)@V1~VnおよびSc(fj)@V1~Vnの例を示す。図14は、実施例1におけるS11m(fj)@V1~VnおよびS11c(fj)@V1~Vnの例を示すスミスチャートである。図15は、実施例1におけるS12m(fj)@V1~VnおよびS12c(fj)@V1~Vnの例を示す極座標である。図16は、実施例1におけるS21m(fj)@V1~VnおよびS21c(fj)@V1~Vnの例を示す極座標である。図17は、実施例1におけるS22m(fj)@V1~VnおよびS22c(fj)@V1~Vnの例を示すスミスチャートである。FET10はGaN HEMTであり、fj=4.8GHzの例である。図14から図17において、測定されたSm(fj)@V1~Vnは黒丸であり、算出された、Sc(fj)@V1~Vnは白丸である。
【0068】
図14に示すように、S11m(fj)@V1~VnとS11c(fj)@V1~Vnとは、ほぼ一致している。図15に示すように、S12m(fj)@V1~VnとS12c(fj)@V1~Vnとは、ほぼ一致している。図16に示すように、S21m(fj)@V1~VnとS21c(fj)@V1~Vnとは、ほぼ一致している。図17に示すように、S22m(fj)@V1~VnとS22c(fj)@V1~Vnとは、ほぼ一致している。このように、分布定数回路24におけるインピーダンス素子ZhkのインピーダンスをRhk(fj)およびXhk(fj)とすることで、FET10をモデル化することができる。
【0069】
[イントリンシック回路20のモデルの作成方法]
図6のステップS12において、取得するイントリンシック回路20のモデルの作成方法について説明する。まず、図8と同様に、VgsおよびVds並びに周波数fを変え、Sm(fj)@Viを測定する。なお、測定するときの各周波数fj、ゲート電圧Vgsiおよびドレイン電圧Vdsiは、図8の測定のときの値と同じでもよいし、異なっていてもよい。これにより、図9と同様のデータテーブルが作成できる。
【0070】
次に、FET10の等価回路として図3のような集中定数回路を仮定する。電圧セットVi=(Vgsi、Vdsi)のiが1からnの各々について、集中定数素子であるCgs、Cgd、Cds、Ri、Rs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLdの素子の値を抽出する。
【0071】
各抽出された電圧セットViにおける集中定数素子の値に基づき、大信号モデルを作成する。作成された大信号モデルは、例えばCgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)、Cgs(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds)である。このように、イントリンシック回路20のモデルが作成される。この例では、イントリンシック回路20のモデルに、寄生回路22におけるRs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLdの値は用いない。
【0072】
[Sパラメータ行列の算出方法]
コンピュータ30が抽出された分布定数回路24のパラメータを用いFET10のSパラメータ行列を算出する算出方法を説明する。図18は、実施例1におけるコンピュータがパラメータRhkおよびXhkを用いSパラメータを算出する算出方法を示すフローチャートである。なお、図18におけるnおよびmの値、Vgsi、Vdsiおよびfjの値は、図10における値と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
図18に示すように、プロセッサ32は、i=1に設定する(ステップS50)。プロセッサ32は、VgsをVgsi(すなわちVgs1)に設定し、VdsをVdsi(すなわちVds1)に設定する(ステップS51)。プロセッサ32は、VgsiおよびVdsiを外部装置から入出力装置36を介し取得してもよい。VgsiおよびVdsiは予めメモリ34に記憶されており、プロセッサ32は、VgsiおよびVdsiをメモリ34から取得してもよい。
【0074】
プロセッサ32は、イントリンシック回路20の集中定数素子の素子値を設定する(ステップS52)。例えば、イントリンシック回路20のモデル(Cgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)、Cgs(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds))は、予めメモリ34に格納されている。プロセッサ32は、Cgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)、Cgs(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds)にVgsiおよびVdsiを代入する。これにより、プロセッサ32は、Cgd、Cds、CgsおよびRiの値を設定する。
【0075】
プロセッサ32は、j=1に設定する(ステップS53)。プロセッサ32は、周波数fをfj(すなわちf1)に設定する(ステップS54)。プロセッサ32は、fjを外部装置から入出力装置36を介し取得してもよい。fjは予めメモリ34に記憶されており、プロセッサ32は、fjをメモリ34から取得してもよい。
【0076】
プロセッサ32は、周波数fjに対応するインピーダンス素子ZhkのインピーダンスのパラメータRhkおよびXhkを設定する(ステップS56)。例えばパラメータRhkおよびXhkは周波数fjに対応付けられた図13のようなデータ構造としてメモリ34に記憶されている。プロセッサ32は、周波数fjに対応するパラメータRhkおよびXhkをメモリ34から取得する。図13にステップS54における周波数fjに対応する周波数がない場合には、図13において周波数fjを挟む周波数をfj1およびfj2としたとき、周波数fj1に対応するパラメータRhk(fj1)およびXhk(fj1)と周波数fj2に対応するパラメータRhk(fj2)およびXhk(fj2)とから補間してパラメータRhk(fj)およびXhk(fj)を算出してもよい。
【0077】
プロセッサ32は、ステップS52において設定した、図4のイントリンシック回路20におけるCgs、Cgd、CdsおよびRiの値、およびステップS56において設定した図7のインピーダンス素子ZhkのパラメータRhkおよびXhkに基づき、ポートP1とP2とのSパラメータ行列Sc(f1)@Viを算出する(ステップS57)。
【0078】
プロセッサ32は、j<mか判定する(ステップS58)。j=1のときはYesである。Yesのとき、プロセッサ32は、j=j+1に設定する(ステップS59)。j=2となる。ステップS54に戻る。ステップS54において、プロセッサ32は、周波数fをf2に設定する。ステップS56において、プロセッサ32は、周波数fがf2におけるパラメータRhkおよびXhkを設定する。ステップS57において、プロセッサ32は、Sc(f2)@V1を算出する。ステップS54からS59を繰り返すことにより、周波数fがf1からfmにおけるSc(f1)@V1からSc(fm)@V1が算出される。
【0079】
ステップS58において、Noのとき、j≧mである。このとき、プロセッサ32は、i<nか判定する(ステップS60)。i=1のときはYesである。Yesのとき、プロセッサ32は、i=i+1に設定する(ステップS61)。ステップS51に戻り、ステップS51からS61を繰り返す。これにより、コンピュータ30は、電圧セットがV1~Vnおよび周波数fがf1~fmにおけるSc(fj)@Vi(jは1からmの整数、iは1からnの整数)を算出する。
【0080】
ステップS60においてNoのとき、i≧nである。このとき、プロセッサ32は、Sc(fj)@Vi(jは1からmの整数、iは1からnの整数)を、入出力装置36を介し外部に出力する(ステップS62)。mおよびnとして2以上の整数を例に説明したが、mおよびnの少なくとも一方は1でもよい。
【0081】
[分布定数回路の別の例]
図19は、実施例1における分布定数回路の別の例1を示す回路図である。図20は、実施例1における分布定数回路の別の例2を示す回路図である。図19に示すように、分布定数回路24は、インピーダンス素子Z45、Z56およびZ46を備えてなくてもよい。図20に示すように、分布定数回路24は、インピーダンス素子Z12、Z23およびZ13を備えてなくてもよい。図19および図20では、分布定数回路24のインピーダンス素子の個数を6個にできる。このため、図10の演算が簡略化できる。
【0082】
[比較例1]
図21は比較例1におけるFETの分布定数を用いた等価回路を示す図である。図21に示すように、比較例1では、イントリンシック回路20は、イントリンシック回路20c、可変容量26a、26bおよび26cを備えている。イントリンシック回路20cは電流源Idと抵抗Riを備えている。可変容量26aはゲート・ソース容量Cgs、可変容量26bはドレイン・ソース容量Cds、可変容量26cはゲート・ドレイン容量Cgdである。
【0083】
イントリンシック回路20cはポートP4、P5およびP6を備え、可変容量26aはポートP7およびP8を備え、可変容量26bはポートP9およびP10を備え、可変容量26cはポートP11およびP12を備える。分布定数回路24cの回路網がポートP1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10、P11およびP12間の全ての間に144個のインピーダンス素子Zhk(hおよびkは1から12の整数)が接続されているとした場合、分布定数回路24cのインピーダンス素子Zhkのパラメータは、288個の実数のパラメータRhkおよびXhkとなる。比較例1では、パラメータが多すぎ図10の演算が複雑化する。
【0084】
実施例1におけるインピーダンス素子Zhkのパラメータを抽出する算出プログラムおよび算出方法では、図6のステップS14のように、コンピュータ30は、n個(N個:Nは2以上の整数である)のSパラメータ行列を取得する。図9のように、n個のSパラメータ行列は、各々ポートP1およびP2を含む回路網の行列であり、S11、S12、S21およびS22を要素とする。n個のSパラメータ行列は、ポートP1に印加されるゲート電圧Vgs(第1電圧)とポートP2に印加されるドレイン電圧Vds(第2電圧)とのn個のセット(Vgsi、Vdsi)(iは1からnの整数)にそれぞれ対応する。
【0085】
イントリンシック回路20の等価回路モデルである第1モデルは、VgsおよびVdsの少なくとも一方の電圧の関数で表される。例えば、第1モデルは、Cgd(Vgs、Vds)、Cds(Vgs、Vds)、Cgs(Vgs、Vds)およびRi(Vgs、Vds)で表される。第1モデルは周波数fの関数では表されない。分布定数回路24の等価回路である第2モデルは、L/2個(Lは2以上の偶数である)のインピーダンス素子Zhkの各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータ(例えばRhkおよびXhk)を含むL個のパラメータの値により表される。各々のインピーダンス素子Zhkは、ポートP1、P2、P3、P4、P5およびP6のいずれか1つのポートに接続される第1端と、ポートP1、P2、P3、P4、P5およびP6のうち他のポートに接続される第2端と、を備えている。パラメータRhkおよびXhkの個数L個は、図4の分布定数回路24では、72個であり、図7の分布定数回路24では18個であり、図19および図20の例では12個である。図6のステップS16および図10のように、第1モデルおよび第2モデルを用いN個のSパラメータ行列に基づきL個のパラメータの値を抽出する。
【0086】
これにより、寄生回路22の等価回路を集中定数回路とする場合に比べ、精度の高い寄生回路22のパラメータを抽出することができる。また、比較例1に比べ抽出するパラメータRhkおよびXhkの個数を減らすことができるため、図10の演算が簡略化できる。
【0087】
また、抽出されたインピーダンス素子Zhkを用いた行列の算出方法では、図18のステップS52のように、コンピュータ30は、ポートP1に印加されるゲート電圧Vgs(第1電圧)とポートP2に印加されるドレイン電圧Vds(第2電圧)を取得し、ステップS54のように高周波信号の周波数fを取得する。ステップS57のように、第1モデルおよび第2モデルを用い、取得したVgs、Vdsおよび周波数fに基づき、Sパラメータ行列Sc(fj)@Viを算出する。
【0088】
これにより、寄生回路22の等価回路を集中定数回路とする場合に比べ、精度の高いFEE10のSパラメータ行列を算出することができる。また、比較例1に比べパラメータRhkおよびXhkの個数を減らすことができるため、Sパラメータ行列を算出する演算が簡略化できる。
【0089】
図10のステップS39のように、n個のSパラメータ行列Sc(fj)@V1~Vnと、n個のSパラメータ行列Sm(fj)@V1~Vnと、に基づきL個のパラメータRhkおよびXhkを抽出する。n個のSパラメータ行列Sc(fj)@V1~Vnは、ステップS36において第1モデルと第2モデルとから算出され、n個の電圧セットVi(iは1からn)にそれぞれ対応する。n個のSパラメータ行列Sm(fj)@V1~Vnは、図6のステップS14において取得されている。これにより、L個のパラメータRhkおよびXhkを精度よく抽出できる。
【0090】
ステップS36では、n個のSパラメータ行列Sc(fj)@V1~Vnと、n個のSパラメータ行列Sm(fj)@V1~Vnと、の差を算出し、ステップS40およびS41において、差が小さくなるようにL個のパラメータRhkおよびXhkを最適化することにより、ステップS42において、L個のパラメータRhkおよびXhを抽出する。これにより、L個のパラメータRhkおよびXhkをより精度よく抽出できる。
【0091】
図9のように、n個のSパラメータ行列は、m個(M個:Mは2以上の整数)の周波数fに対応付けられたM個のSパラメータ行列を各々含む。すなわち、Sパラメータ行列はn個×m個である。図10のように、m個の周波数fj(jは1からmの整数)各々について、第1モデルおよび第2モデルを用いn個のSパラメータ行列に基づきL個のパラメータRhkおよびXhkの値を抽出する(図13参照)。これにより、異なる周波数f1からfmごとにパラメータRhkおよびXhkを抽出できる。パラメータRhkおよびXhkを周波数fごとに設定できる。このため、寄生回路22の等価回路を集中定数回路とする場合に比べ、モデルの精度を向上できる。
【0092】
回路網を表す行列としてSパラメータ行列を例に説明したが、Z(インピーダンス)パラメータ行列、Y(アドミッタンス)パラメータ行列またはH(ハイブリッド)パラメータ行列でもよい。Sパラメータ行列を用いることで、高周波回路の設計が容易となる。
【0093】
L/2個のインピーダンス素子ZhkのL個のパラメータとして、パラメータRhkおよびXhkを例に説明したが、L個のパラメータは、インピーダンスを極座標またはスミスチャートで表したときの振幅に関するパラメータgおよび位相に関するパラメータpでもよい。
【0094】
図19および図20のように、分布定数回路24は、第1インピーダンス素子Z14、第2インピーダンス素子Z25および第3インピーダンス素子Z36を備える。第1端がポートP1に接続され第2端がポートP4に接続されたインピーダンス素子Z14により、ポートP1からポートP4に入力される高周波信号の経路のインピーダンスを表現できる。第1端がポートP2に接続され第2端がポートP5に接続されたインピーダンス素子Z25により、ポートP5からポートP2に出力される高周波信号の経路のインピーダンスを表現できる。第1端がポートP3に接続され第2端がポートP6に接続されたインピーダンス素子Z36により、ポートP3とP6との間における高周波信号の経路のインピーダンスを表現できる。
【0095】
分布定数回路24は、さらに、第4インピーダンス素子Z12またはZ45、第5インピーダンス素子Z23またはZ56、および第6インピーダンス素子Z13またはZ46を備える。第1端がポートP1とP4との間の第1ノードに接続され第2端がポートP2とP5との間の第2ノードに接続されたインピーダンス素子Z12またはZ45により、ソースSとドレインDとの間の寄生容量を表現できる。第1端がポートP2とP5との間の第2ノードに接続され第2端がポートP3とP6との間の第3ノードに接続されたインピーダンス素子Z23またはZ56により、ドレインDとゲートGとの間の寄生容量を表現できる。第1端がポートP1とP4との間の第1ノードに接続され第2端がポートP3とP6との間の第3ノードに接続されたインピーダンス素子Z13またはZ46により、ソースSとゲートGとの間の寄生容量を表現できる。
【0096】
このように、図19および図20の例では、インピーダンス素子Z14、Z25、Z36、Z12またはZ45、Z23またはZ56、および、Z13またはZ46以外のポート間のインピーダンスは大きく影響しないと仮定する。これにより、分布定数回路24のインピーダンス素子の個数を6個にできる。このため、図10の演算が簡略化できる。
【0097】
図7のように、分布定数回路24は、第4インピーダンス素子Z12、第5インピーダンス素子Z23および第6インピーダンス素子Z13を備える。第1端がポートP1に接続され第2端がポートP2に接続されたインピーダンス素子Z12により、ポートP1とP2と間の寄生容量を表現できる。第1端がポートP2に接続され第2端がポートP3に接続されたインピーダンス素子Z23により、ポートP2とP3と間の寄生容量を表現できる。第1端がポートP1に接続され第2端がポートP3に接続されたインピーダンス素子Z13により、ポートP1とP3と間の寄生容量を表現できる。
【0098】
さらに、分布定数回路24は、第7インピーダンス素子Z45、第8インピーダンス素子Z56および第9インピーダンス素子Z46を備える。第1端がポートP4に接続され第2端がポートP5に接続されたインピーダンス素子Z45により、ポートP4とP5と間の寄生容量を表現できる。第1端がポートP5に接続され第2端がポートP6に接続されたインピーダンス素子Z56により、ポートP5とP6と間の寄生容量を表現できる。第1端がポートP4に接続され第2端がポートP6に接続されたインピーダンス素子Z46により、ポートP4とP6と間の寄生容量を表現できる。
【0099】
このように、図7の例では、インピーダンス素子Z14、Z25、Z36、Z12、Z23、Z13、Z45、Z56およびZ46以外のポート間のインピーダンスは大きく影響しないと仮定する。これにより、分布定数回路24のインピーダンス素子の個数を9個にできる。このため、図10の演算が簡略化できる。また、図19および図20より、分布定数回路24をより精度よくモデル化できる。
【0100】
高周波素子としてFETを例に説明したが、トランジスタはバイポーラトランジスタ等のトランジスタでもよい。また、高周波素子はトランジスタ以外の素子でもよい。
【0101】
[実施例2]
図22は、実施例2における高周波回路を集中定数回路により示した等価回路を示す図である。図22に示すように、高周波回路では、2個のFET10aおよび10bが並列に接続されている。FET10aはソースS1、ゲートG1およびドレインD1を備え、FET10bはソースS2、ゲートG2およびドレインD2を備える。FET10aの集中定数素子であるCgs1、Cgd1、Cds1、Ri1、Rs1、Rg1、Rd1、Ls1、Lg1およびLd1は、図3のFET10のCgs、Cgd、Cds、Ri、Rs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLdにそれぞれ対応する。FET10bの集中定数素子であるCgs2、Cgd2、Cds2、Ri2、Rs2、Rg2、Rd2、Ls2、Lg2およびLd2は、図3のFET10のCgs、Cgd、Cds、Ri、Rs、Rg、Rd、Ls、LgおよびLdにそれぞれ対応する。FET10bのポートP7、P8、P9、P10、P11およびP12は、図7のFET10のポートP1、P2、P3、P4、P5およびP6にそれぞれ対応する。ポートP1とP7との間にインダクタL17が接続され、ポートP2とP8との間にインダクタL28が接続されている。
【0102】
FET10aのイントリンシック回路20aは、Cgs1、Cgd1、Cds1、Ri1およびId1を備え、FET10bのイントリンシック回路20bは、Cgs2、Cgd2、Cds2、Ri2およびId2を備える。寄生回路22aは、Rs1、Rg1、Rd1、Ls1、Lg1、Ld1、Rs2、Rg2、Rd2、Ls2、Lg2、Ld2、L17およびL28を備える。
【0103】
図23は、実施例2における分布定数回路を示す図である。図23に示すように、分布定数回路24aは、21個のインピーダンス素子を備えている。インピーダンス素子Z14、Z25、Z36、Z13、Z23、Z45、Z56およびZ46は、図7と同じである。
【0104】
インピーダンス素子Z710はポートP7とP10との間に接続され、インピーダンス素子Z811はポートP8とP11との間に接続され、インピーダンス素子Z912はポートP9とP12との間に接続されている。インピーダンス素子Z89はポートP8とP9との間に接続され、インピーダンス素子Z79はポートP7とP9との間に接続されている。インピーダンス素子Z1011はポートP10とP11との間に接続され、インピーダンス素子Z1112はポートP11とP12との間に接続され、インピーダンス素子Z1012はポートP10とP12との間に接続されている。
【0105】
ポートP1とP7との間にはノードN13が設けられ、ポートP2とP8との間にはノードN14が設けられている。インピーダンス素子Z113はポートP1とノードN13との間に接続され、インピーダンス素子Z713はポートP7とノードN13との間に接続されている。インピーダンス素子Z214はポートP2とノードN14との間に接続され、インピーダンス素子Z814はポートP8とノードN14との間に接続されている。インピーダンス素子Z1314はノードN13とN14との間に接続されている。
【0106】
図7の分布定数回路24を2個並列に接続した構成に比べ分布定数回路24aでは、インピーダンス素子Z23に相当する部分をインピーダンス素子Z113、Z713、Z214、Z814およびZ1314を用いている。インピーダンス素子Z113およびZ713により、図22のインダクタL17と、ポートP1とP7との間の寄生容量と、を表現している。インピーダンス素子Z214およびZ814により、図22のインダクタL28と、ポートP2とP8との間の寄生容量と、を表現している。インピーダンス素子Z1314によりノードN13とN14との間の寄生容量を表現している。
【0107】
実施例2では、並列接続されたFET10aおよび10bの分布定数回路24aのインピーダンス素子の数を21個にできる。これにより、FET10aと10bとの高周波特性がほぼ同じ場合、対応するインピーダンス素子を同じインピーダンス素子とすることができる。例えばインピーダンス素子Z710、Z811、Z912、Z89、Z79、Z1011、Z1112、Z1012、Z713およびZ814のインピーダンスをインピーダンス素子Z14、Z25、Z36、Z23、Z13、Z45、Z56、Z46、Z113およびZ214のインピーダンスとそれぞれ同じとする。これにより、インピーダンス素子を表す実数のパラメータの個数を22個にできる。
【0108】
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。
【0109】
上記プロセッサは、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specication Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。例えば物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。
【0110】
上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM、DVD-ROM、半導体必須メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
10、10a、10b FET
12、14 整合回路
18 増幅回路
20、20a、20b,20c イントリンシック回路
22、22a 寄生回路
24、24a、24c 分布定数回路
26a、26b、26c 可変容量
30 コンピュータ
32 プロセッサ
34 メモリ
36 入出力装置
38 内部バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出プログラムであって、
Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、
をコンピュータに実行させる算出プログラム。
【請求項2】
前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、に基づき前記L個のパラメータを抽出するステップを含む請求項1に記載の算出プログラム。
【請求項3】
前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、の差が小さくなるように、前記L個のパラメータを最適化することにより前記L個のパラメータを抽出するステップを含む請求項1に記載の算出プログラム。
【請求項4】
Mは2以上の整数であり、前記N個の行列は、M個の高周波信号の周波数に対応付けられたM個の行列を各々含み、
前記個のパラメータの値を抽出するステップは、前記M個の周波数各々について、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき前記L個のパラメータの値を抽出するステップを含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項5】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出プログラムであって、
前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、
をコンピュータに実行させる算出プログラム。
【請求項6】
前記行列は、Sパラメータ行列である請求項1、請求項2、請求項3および請求項5のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項7】
前記分布定数回路は、
第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、
第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、
第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、
第1端が前記第1端子と前記第4端子との間の第1ノードに接続され第2端が前記第2端子と前記第5端子との間の第2ノードに接続された第4インピーダンス素子と、
第1端が前記第2ノードに接続され第2端が前記第3端子と前記第6端子との間の第3ノードに接続された第5インピーダンス素子と、
第1端が前記第3ノードに接続され第2端が前記第1ノードに接続された第6インピーダンス素子と、
を備える請求項1、請求項2、請求項3および請求項5のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項8】
前記分布定数回路は、
第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、
第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、
第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、
第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第2端子に接続された第4インピーダンス素子と、
第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第3端子に接続された第5インピーダンス素子と、
第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第1端子に接続された第6インピーダンス素子と、
第1端が前記第4端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第7インピーダンス素子と、
第1端が前記第5端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第8インピーダンス素子と、
第1端が前記第6端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第9インピーダンス素子と、
を備える請求項1、請求項2、請求項3および請求項5のいずれか一項に記載の算出プログラム。
【請求項9】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出方法であって、
Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、
を含む算出方法。
【請求項10】
高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出方法であって、
前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、
イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、
Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、
分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、
前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、
を含む算出方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出プログラムであって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出プログラムであって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出方法であって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、を含む算出方法である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出方法であって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、を含む算出方法である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
図1図1は、実施例1におけるFETが用いられる増幅回路の回路図である。
図2図2は、FETにおけるドレイン電圧Vdsに対するドレイン電流Ids(Ids-Vds特性)を示す図である。
図3図3は、FETにおける集中定数回路を用いた等価回路を示す図である。
図4図4は、FETにおける分布定数回路を用いた等価回路を示す図である。
図5図5は、実施例1におけるコンピュータのブロック図である。
図6図6は、実施例1におけるパラメータを抽出する算出方法を示すフローチャートである。
図7図7は、実施例1における分布定数回路の例を示す回路図である。
図8図8は、実施例1におけるSパラメータ行列を測定する方法を示すフローチャートである。
図9図9は、実施例1における測定されるSパラメータ行列を示すデータテーブルである。
図10図10は、図6のステップS16において、コンピュータがパラメータRhkおよびXhkを抽出する方法を示すフローチャートである。
図11図11は、実施例1における取得したSm(fj)@V1~Vnを示すデータテーブルである。
図12図12は、実施例1における算出したSc(fj)@V1~Vnを示すデータテーブルである。
図13図13は、実施例1における抽出されたRhkおよびXhkを示すデータテーブルである。
図14図14は、実施例1におけるS11m(fj)@V1~VnおよびS11c(fj)@V1~Vnの例を示すスミスチャートである。
図15図15は、実施例1におけるS12m(fj)@V1~VnおよびS12c(fj)@V1~Vnの例を示す極座標である。
図16図16は、実施例1におけるS21m(fj)@V1~VnおよびS21c(fj)@V1~Vnの例を示す極座標である。
図17図17は、実施例1におけるS22m(fj)@V1~VnおよびS22c(fj)@V1~Vnの例を示すスミスチャートである。
図18図18は、実施例1におけるコンピュータがパラメータRhkおよびXhkを用いSパラメータを算出する算出方法を示すフローチャートである。
図19図19は、実施例1における分布定数回路の別の例1を示す回路図である。
図20図20は、実施例1における分布定数回路の別の例2を示す回路図である。
図21図21は比較例1におけるFETの分布定数回路を用いた等価回路を示す図である。
図22図22は、実施例2における高周波回路を集中定数回路により示した等価回路を示す図である。
図23図23は、実施例2における分布定数回路を示す図である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出プログラムであって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。これにより、モデルの精度を向上できる。
(2)上記(1)において、前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、に基づき前記L個のパラメータを抽出するステップを含んでもよい。
(3)上記(1)において、前記L個のパラメータの値を抽出するステップは、前記第1モデルと前記第2モデルとから算出された前記N個のセットにそれぞれ対応するN個の行列と、前記取得されたN個の行列と、の差が小さくなるように、前記L個のパラメータを最適化することにより前記L個のパラメータを抽出するステップを含んでもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、Mは2以上の整数であり、前記N個の行列は、M個の高周波信号の周波数に対応付けられたM個の行列を各々含み、前記個のパラメータの値を抽出するステップは、前記M個の周波数各々について、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき前記L個のパラメータの値を抽出するステップを含んでもよい。
(5)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出プログラムであって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、をコンピュータに実行させる算出プログラムである。これにより、モデルの精度を向上できる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記行列は、Sパラメータ行列でもよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記分布定数回路は、第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、第1端が前記第1端子と前記第4端子との間の第1ノードに接続され第2端が前記第2端子と前記第5端子との間の第2ノードに接続された第4インピーダンス素子と、第1端が前記第2ノードに接続され第2端が前記第3端子と前記第6端子との間の第3ノードに接続された第5インピーダンス素子と、第1端が前記第3ノードに接続され第2端が前記第1ノードに接続された第6インピーダンス素子と、を備えてもよい。
(8)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記分布定数回路は、第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第1インピーダンス素子と、第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第2インピーダンス素子と、第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第3インピーダンス素子と、第1端が前記第1端子に接続され第2端が前記第2端子に接続された第4インピーダンス素子と、第1端が前記第2端子に接続され第2端が前記第3端子に接続された第5インピーダンス素子と、第1端が前記第3端子に接続され第2端が前記第1端子に接続された第6インピーダンス素子と、第1端が前記第4端子に接続され第2端が前記第5端子に接続された第7インピーダンス素子と、第1端が前記第5端子に接続され第2端が前記第6端子に接続された第8インピーダンス素子と、第1端が前記第6端子に接続され第2端が前記第4端子に接続された第9インピーダンス素子と、を備えてもよい。
(9)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子のパラメータを抽出する算出方法であって、Nは2以上の整数であり、各々の行列は前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列であり、各々のセットは前記第1端子に印加される第1電圧と前記第2端子に印加される第2電圧とのセットであり、N個の前記セットにそれぞれ対応するN個の前記行列を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記N個の行列に基づき、前記L個のパラメータの値を抽出するステップと、を含む算出方法である。これにより、モデルの精度を向上できる。
(10)本開示の一実施形態は、高周波信号が入力する第1端子と、高周波信号を出力する第2端子と、基準電位が供給される第3端子と、を有する高周波素子における前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出する算出方法であって、前記第1端子に印加される第1電圧と、前記第2端子に印加される第2電圧と、高周波信号の周波数と、を取得するステップと、イントリンシック回路の第1モデルは、前記第1電圧および前記第2電圧の少なくとも一方の電圧の関数で表され、Lは2以上の偶数であり、L/2個のインピーダンス素子の各々は、前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記イントリンシック回路に高周波信号が入力する第4端子と前記イントリンシック回路から高周波信号が出力する第5端子と前記イントリンシック回路に基準電位を供給する第6端子とのいずれか1つの端子に接続される第1端と前記第1端子と前記第2端子と前記第3端子と前記第4端子と前記第5端子と前記第6端子とのうち前記いずれか1つの端子以外の端子に接続される第2端と、を備え、分布定数回路の第2モデルは、前記L/2個のインピーダンス素子の各々のインピーダンスに関する2個の実数パラメータを含むL個のパラメータの値により表され、前記第1モデルおよび前記第2モデルを用い前記第1電圧、前記第2電圧および前記周波数に基づき、前記第1端子および前記第2端子を含む回路網の行列を算出するステップと、を含む算出方法である。これにより、モデルの精度を向上できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
[増幅回路の例]
図1は、実施例1におけるFETが用いられる増幅回路の回路図である。図1に示すように、増幅回路18は、FET10、整合回路12および14を備えている。FETは、例えばGaN HEMT(Gallium Nitride High Electron Mobility Transistor)である。FET10のソースSはグランドに接続され、ゲートGは整合回路12を介し入力端子Tinに接続されている。FET10のドレインDは整合回路14を介し出力端子Toutに接続されている。整合回路12は、入力端子TinとFET10との間に接続され、入力端子TinとゲートGとの間に直列接続されたインダクタL11およびL12と、インダクタL11とL12との間のノードにおいてシャント接続されたキャパシタC11と、を備えている。整合回路14は、FET10と出力端子Toutとの間に接続され、ドレインDと出力端子Toutとの間に直列接続されたインダクタL21およびL22と、インダクタL21とL22との間のノードにおいてシャント接続されたキャパシタC21と、を備えている。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
RhkおよびXhkは、周波数f、ドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧Vgsの関数である。そこで、周波数f、ドレイン電圧Vdsおよびゲート電圧VgsのときのRhkおよびXhkを、電圧セットViを用いそれぞれRhk(f)@ViおよびXhk(f)@Viと表す。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
j<mか判定する(ステップS25)。Yesのときj=j+1に設定する(ステップS26)。=2となる。その後ステップS23に戻る。ステップS23において、ゲートGに周波数fがf2である高周波信号を出力する。ステップS24において、周波数f2においてSパラメータ行列S11m(f2)@V1、S12m(f2)@V1、S21m(f2)@V1、およびS22m(f2)@V1)、が測定される。ステップS23からS26を繰り返すことにより、Vgs1およびVds1における周波数がf1からfmのSパラメータ行列、S11m(fj)@V1、S12m(fj)@V1、S21m(fj)@V1、およびS22m(fj)@V1、jは1からmの整数が測定される。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
ステップS25において、Noのとき、j≧mである。このとき、i<nか判定する(ステップS27)。Yesのときi=i+1に設定する(ステップS28)。i=2となる。その後ステップS21に戻る。ステップS21において、ゲートGおよびドレインDにそれぞれVds2およびVgs2を印加する。ステップS22において、j=1に設定する。ステップS23において、ゲートGに周波数fがf1である高周波信号を出力する。ステップS24において、Sパラメータ行列が測定される。i=2のときに、i=1のときと同様に、ステップS23からS26を繰り返すことで、Vgs2およびVds2における周波数がf1からfmのSパラメータ行列、S11m(fj)@V2、S12m(fj)@V2、S21m(fj)@V2、およびS22m(fj)@V2、jは1からmの整数、が測定される。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
ステップS39において、例えば、プロセッサ32は、図11のSm(fj)@V1~Vnと、対応する図12のSc(fj)@V1~Vnと、の差を算出する。プロセッサ32が算出する差は、例えば|S11m(fj)@Vi-S11c(fj)@Vi|+|S12m(fj)@Vi-S121c(fj)@Vi|+|S21m(fj)@Vi-S21c(fj)@Vi|+|S22m(fj)@Vi-S22c(fj)@Vi|のi=1からnまでの和である。差は、|S11m(fj)@Vi-S11c(fj)@Vi|+|S12m(fj)@Vi-S12c(fj)@Vi|+|S21m(fj)@Vi-S21c(fj)@Vi|+|S22m(fj)@Vi-S22c(fj)@Vi|のi=1からnまでの和(すなわち平方和)でもよいし、各差に重み付けを行った後に加算してもよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
図13は、実施例1における抽出されたRhkおよびXhkを示すデータテーブルである。図13は、周波数fj(jは1からm)に対応付けされたRhkおよびXhkとして、R14(fj)、R25(fj)、R36(fj)、X14(fj)、X25(fj)、X36(fj)、R12(fj)、R23(fj)、R13(fj)、X12(fj)、X23(fj)、X13(fj)、R45(fj)、R56(fj)、R46(fj)、X45(fj)、X56(fj)およびX46(fj)を示している。図13に示すように、周波数fがf1のときのRhkおよびXhkとしてRhk(f1)およびXhk(f1)抽出される。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
[比較例1]
図21は比較例1におけるFETの分布定数回路を用いた等価回路を示す図である。図21に示すように、比較例1では、イントリンシック回路20は、イントリンシック回路20c、可変容量26a、26bおよび26cを備えている。イントリンシック回路20cは電流源Idと抵抗Riを備えている。可変容量26aはゲート・ソース容量Cgs、可変容量26bはドレイン・ソース容量Cds、可変容量26cはゲート・ドレイン容量Cgdである。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
また、抽出されたインピーダンス素子Zhkを用いた行列の算出方法では、図18のステップS51のように、コンピュータ30は、ポートP1に印加されるゲート電圧Vgs(第1電圧)とポートP2に印加されるドレイン電圧Vds(第2電圧)を取得し、ステップS54のように高周波信号の周波数fを取得する。ステップS57のように、第1モデルおよび第2モデルを用い、取得したVgs、Vdsおよび周波数fに基づき、Sパラメータ行列Sc(fj)@Viを算出する。