(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065775
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240508BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240508BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174797
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】安達 玄紀
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA18
2H199DA22
2H199DA28
2H199DA30
2H199DA42
2H199DA46
2H199DA48
3D344AA03
3D344AA19
3D344AA27
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】外光による画像照射部の温度上昇を抑制しつつ、部品点数の減少と小型化を図ることが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置(100)であって、第1画像光および第2画像光を照射する画像照射部(10)と、表示部を介して第1画像光および第2画像光を照射する照射光学部を備え、照射光学部は第1画像光と第2画像光の間で虚像の結像位置に差を生じさせる反射プリズム(20)を備え、反射プリズム(20)は第1入射部と第2入射部と第1反射部と第2反射部と第1出射部と第2出射部とを備え、第1画像光は第1入射部から入射し、第1反射部および第2反射部で反射され、第1出射部から出射され、第2画像光は第2入射部から入射し、第2出射部から出射され、反射プリズム(20)の何れかの面に、光を選択的に反射または透過する光選択部を設けた画像投影装置(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、
第1画像光および第2画像光を照射する画像照射部と、
前記表示部を介して前記第1画像光および前記第2画像光を照射する照射光学部を備え、
前記照射光学部は、前記第1画像光と前記第2画像光の間で虚像の結像位置に差を生じさせる反射プリズムを備え、
前記反射プリズムは、第1入射部と、第2入射部と、第1反射部と、第2反射部と、第1出射部と、第2出射部とを備え、
前記第1画像光は、前記第1入射部から入射し、前記第1反射部および前記第2反射部で反射され、前記第1出射部から出射され、
前記第2画像光は、前記第2入射部から入射し、前記第2出射部から出射され、
前記反射プリズムの何れかの面に、光を選択的に反射または透過する光選択部を設けたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記光選択部は、前記第1反射部または前記第2反射部に設けられ、前記第1画像光の偏光を反射し、前記第1画像光の偏光と直交する偏光を透過する反射型偏光部材であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記光選択部は、前記第1反射部または前記第2反射部に設けられ、赤外光または紫外光を透過し、可視光を反射する波長選択ミラーであることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記光選択部は、前記第1入射部、前記第2入射部、前記第1出射部または前記第2出射部に設けられ、前記第1画像光および前記第2画像光の偏光を透過し、前記第1画像光および前記第2画像光の偏光と直交する偏光を吸収する吸収型偏光部材であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記光選択部は、前記第1入射部、前記第2入射部、前記第1出射部または前記第2出射部に設けられ、赤外光または紫外光を反射または吸収し、可視光を透過するバンドパスフィルターであることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部は、前記第1画像光を照射する第1領域と、前記第2画像光を照射する第2領域を備え、
前記反射プリズムは、前記第1入射部が前記第1領域に対向して配置され、前記第2入射部が前記第2領域に対向して配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記虚像の結像位置は、前記第1画像光のほうが前記第2画像光よりも視点位置から遠いことを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)も提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
また、より多くの情報を提示するために、運転支援HUD装置を用いて複数の画像をウィンドシールドに投影することも提案されている。しかし、複数の画像を異なる距離に虚像として投影して結像するためには、画像照射部と投影光学系を複数備える必要があり、インストルメントパネル内に収容するためには設計の自由度が低いという問題があった。そこで本願出願人は、一つの画像照射部内に複数の画像を表示し、プリズム等の光分岐部によって各画像の光路を分岐することで、省スペース化を図った画像投影装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の画像投影装置では、表示部であるウィンドシールドを介して投影画像を投影するため、ウィンドシールドの下方から上方に向けて光を照射する投影光学部を備えている。そのため、太陽光等の外光がウィンドシールドの上方から入射した場合には、画像を表示する画像照射部まで投影光学系を介して外光が到達してしまう。このとき、投影光学部を介して画像照射部まで到達する外光は、投影光学系の光学パワーによって集光され、温度上昇による劣化を引き起こすという問題があった。
【0007】
このような温度上昇を抑制するために、ウィンドシールドと投影光学部の間に赤外光フィルタや紫外光フィルタ等の波長フィルタを配置し、画像照射部に到達する外光の可視光以外の波長をカットして温度上昇を抑制することも提案されている。しかし、外光の入射経路全体を覆うためには大面積の波長フィルタが必要であり、波長フィルタを保持するための部材や構造も必要となるため、部品点数の削減や装置の小型化が難しくなるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、外光による画像照射部の温度上昇を抑制しつつ、部品点数の減少と小型化を図ることが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、第1画像光および第2画像光を照射する画像照射部と、前記表示部を介して前記第1画像光および前記第2画像光を照射する照射光学部を備え、前記照射光学部は、前記第1画像光と前記第2画像光の間で虚像の結像位置に差を生じさせる反射プリズムを備え、前記反射プリズムは、第1入射部と、第2入射部と、第1反射部と、第2反射部と、第1出射部と、第2出射部とを備え、前記第1画像光は、前記第1入射部から入射し、前記第1反射部および前記第2反射部で反射され、前記第1出射部から出射され、前記第2画像光は、前記第2入射部から入射し、前記第2出射部から出射され、前記反射プリズムの何れかの面に、光を選択的に反射または透過する光選択部を設けたことを特徴とする。
【0010】
このような本発明の画像投影装置では、前記反射プリズムの何れかの面に、光を選択的に反射または透過する光選択部を設けているため、外光による画像照射部の温度上昇を抑制しつつ、部品点数の減少と小型化を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記光選択部は、前記第1反射部または前記第2反射部に設けられ、前記第1画像光の偏光を反射し、前記第1画像光の偏光と直交する偏光を透過する反射型偏光部材である。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記光選択部は、前記第1反射部または前記第2反射部に設けられ、赤外光または紫外光を透過し、可視光を反射する波長選択ミラーである。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記光選択部は、前記第1入射部、前記第2入射部、前記第1出射部または前記第2出射部に設けられ、前記第1画像光および前記第2画像光の偏光を透過し、前記第1画像光および前記第2画像光の偏光と直交する偏光を吸収する吸収型偏光部材である。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記光選択部は、前記第1入射部、前記第2入射部、前記第1出射部または前記第2出射部に設けられ、赤外光または紫外光を反射または吸収し、可視光を透過するバンドパスフィルターである。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部は、前記第1画像光を照射する第1領域と、前記第2画像光を照射する第2領域を備え、前記反射プリズムは、前記第1入射部が前記第1領域に対向して配置され、前記第2入射部が前記第2領域に対向して配置されている。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記虚像の結像位置は、前記第1画像光のほうが前記第2画像光よりも視点位置から遠い。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、外光による画像照射部の温度上昇を抑制しつつ、部品点数の減少と小型化を図ることが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る反射プリズム20の構造例と、第1画像光L1および第2画像光L2の照射について説明する模式図である。
【
図3】光選択部の一例である偏光部材の光反射特性を示すグラフである。
【
図4】第2実施形態に係る反射プリズム20の構造例と、第1画像光L1および第2画像光L2の照射について説明する模式図である。
【
図5】第3実施形態に係る反射プリズム20の構造例と、第1画像光L1および第2画像光L2の照射について説明する模式図である。
【
図6】反射プリズム20の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
図1に示すように、画像投影装置100は、画像照射部10と、反射プリズム20と、第1ミラー30と、第2ミラー40を備えている。
図1に示すように、画像投影装置100から投影された第1画像光L1と第2画像光L2は、ウィンドシールド(表示部)WSで反射されて運転者の視点位置に照射される。運転者は、第1画像光L1と第2画像光L2が入射してきた光路の延長上に結像された虚像P1,P2を視認する。
【0020】
図1に示した画像投影装置100では、各部と情報通信可能に接続された制御部を用いて、各部を制御している。制御部の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備えるものが挙げられる。制御部は、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御し、画像を含んだ情報(画像情報)を画像照射部10に送出する。
【0021】
画像照射部10は、制御部からの画像情報に基づいて、画像を含んだ光照射する部分である。画像照射部10の具体的構成は限定されず、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、レーザ光源と光変調素子の組み合わせ等の従来公知のものを用いることができる。
図2に示した例では、液晶表示装置の背面側から発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)により光を照射するものを用いている。画像照射部10は、遠方画像と近方画像をそれぞれ表示する遠方表示領域(第1領域)と近方表示領域(第2領域)を含んで構成されている。
【0022】
反射プリズム20は、画像照射部10から照射される画像の光を第1画像光L1と第2画像光L2に分岐するとともに、両者の光路長に差を生じさせる光学部材である。
図1に示した例では、遠方表示領域で表示される第1画像を第1画像光L1とし、近方表示領域で表示される第2画像を第2画像光L2として分岐する。反射プリズム20の詳細な構造については後述する。
【0023】
図1に示した例では反射プリズム20を画像照射部10の遠方表示領域と近方表示領域に重ねて配置している。ここで、反射プリズム20を画像照射部10に重ねて配置するとは、平面視において反射プリズム20を配置した領域が画像照射部10の画像表示領域と重複することを意味している。また、反射プリズム20と画像照射部10が接触している場合も非接触の場合も重ねて配置に含まれるものとする。また、反射プリズム20と画像照射部10の間に光を透過する光学部材や、両者の間隔を維持するための保持部材を介在させている場合も、重ねて配置に含まれる。
【0024】
第1ミラー30は、反射プリズム20から出射された第1画像光L1および第2画像光L2が入射し、第1画像光L1および第2画像光L2を第2ミラー40方向に反射する光学部材である。
図1に示した例では、第1ミラー30として第1画像光L1および第2画像光L2を虚像P1,P2として投影するために必要な光学設計された凹面形状の自由曲面ミラーを示している。
【0025】
第2ミラー40は、第1ミラー30で反射された第1画像光L1および第2画像光L2が入射し、第1画像光L1および第2画像光L2をウィンドシールドWS方向に反射する光学部材である。
図1に示した例では、第2ミラー40として第1画像光L1および第2画像光L2を虚像P1,P2として投影するために必要な光学設計された凹面形状の自由曲面ミラーを示している。
【0026】
第1ミラー30および第2ミラー40の反射面は、ウィンドシールドWSを介して第1画像光L1および第2画像光L2を虚像P1,P2として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。反射プリズム20、第1ミラー30および第2ミラー40の組み合わせは、ウィンドシールドWSを介して第1画像光L1および第2画像光L2を投影する機能を有しており、本発明における照射光学部に相当している。
【0027】
図1では、第1画像光L1と第2画像光L2の光路を一本の直線として描いている。しかし、実際の第1画像光L1と第2画像光L2は、画像照射部10において所定の面積で表示されたものであり、進行方向に垂直な方向に所定の面積をもっている。また、第1画像光L1と第2画像光L2は、第1ミラー30で反射されて光径が縮小されながら進行し、第1ミラー30と第2ミラー40の間の中間結像位置F(図示省略)において中間結像されるとしてもよい。
【0028】
第1ミラー30で反射された第1画像光L1と第2画像光L2を中間結像位置Fで結像させる場合には、第1画像光L1と第2画像光L2の通過する断面積は、第1ミラー30と第2ミラー40の間の中間結像位置Fで最小となる。また
図1では、第1画像光L1と第2画像光L2の光路は、第1ミラー30と第2ミラー40の間における交差位置において交差している。
【0029】
ウィンドシールドWSは、車両の運転席前方に設けられて可視光を透過する部分である。ウィンドシールドWSは、車両の内側面では第2ミラー40から入射した第1画像光L1および第2画像光L2を視点方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点方向に対して透過するため、本発明における表示部に相当している。ここでは表示部としてウィンドシールドWSを用いた例を示したが、ウィンドシールドWSとは別に表示部としてコンバイナーを用意し、第2ミラー40からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0030】
虚像P1,P2は、ウィンドシールドWSで反射された第1画像光L1および第2画像光L2が運転者等の視点(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される画像である。虚像P1,P2が結像される位置は、画像照射部10から照射された光が、第1ミラー30、第2ミラー40およびウィンドシールドWSで反射された後に視点方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。
【0031】
画像投影装置100では、画像照射部10の遠方表示領域に表示された遠方画像が第1画像光L1として照射され、近方表示領域に表示された近方画像が第2画像光L2として照射される。遠方表示領域に表示される遠方画像としては、注意喚起の画像や緊急情報等の運転に関する補助的な情報が挙げられる。また、近方表示領域に表示される近方画像としては、速度と音量インジケータ、進行方向ガイド等が挙げられる。
【0032】
第1画像光L1と第2画像光L2は、反射プリズム20に入射して、第1画像光L1と第2画像光L2の光路差が生じ、第1ミラー30に到達して反射される。第1ミラー30で反射された第1画像光L1は、反射プリズム20を介して第2ミラー40に到達する。また、第1ミラー30で反射された第2画像光L2も第2ミラー40に到達する。第2ミラー40で反射された第1画像光L1と第2画像光L2は、それぞれウィンドシールドWSで反射されて運転者の視点に到達する。第1画像光L1および第2画像光L2は、第1ミラー30および第2ミラー40によって光径が拡大して視点に到達するため、運転者は第1画像光L1および第2画像光L2による虚像P1,P2が所定距離に結像されているように視認する。ここで、虚像P1,P2の結像位置は、第1画像のほうが第2画像よりも視点位置から遠いものとなっている。
【0033】
図2は、本実施形態に係る反射プリズム20の構造例と、第1画像光L1および第2画像光L2の照射について説明する模式図である。
図2では簡便のために、画像照射部10のうち画像を表示する画像表示部11のみを示している。また、図中の破線は画像表示部11の遠方表示領域から照射された第1画像光L1の光路を示し、図中の実線は画像表示部11の近方表示領域から照射された第2画像光L2の光路を示している。
【0034】
反射プリズム20としては、透光性材料で構成された断面が平行四辺形の部材が挙げられる。反射プリズム20を構成する材料は限定されず、可視光を良好に透過するとともに屈折率が高いガラスや樹脂などの材料を用いることができる。平行四辺形の対向する一対の面は光の入射面21aおよび出射面21bであり、入射面21aと出射面21bに隣接する一対の面は、入射した光が全反射する角度で切り出されて反射面21c、21dが形成されている。ここでは反射プリズム20として、反射面21c、21dが第1画像光L1を全反射する角度で切り出された例を示しているが、反射面21c、21dでの反射は全反射でなくともよい。
【0035】
反射プリズム20の入射面21aは、画像表示部11に対向して配置される面であり、画像表示部11から照射された第1画像光L1と第2画像光L2が入射する光入射面とされている。
図2に示した例では、入射面21aのうち遠方表示領域と対向する領域が第1入射部であり、近方表示領域と対向する領域が第2入射部である。また出射面21bのうち、第1画像光L1と第2画像光L2が外部に出射する領域がそれぞれ第1出射部と第2出射部である。また、第1入射部と第2出射部に挟まれた反射面21cが第1反射部であり、第2入射部と第1出射部に挟まれた反射面21dが第2反射部である。
【0036】
また、
図2に示した例では、反射面21cに波長選択ミラー23が設けられ、反射面21dに反射型偏光部材24が設けられている。波長選択ミラー23は、赤外光または紫外光を透過し、可視光を反射する光学特性を有する光学部材である。反射型偏光部材24は、特定方向の偏光を反射し、当該特定方向と直交する方向の偏光を透過する光学特性を有する光学部材である。ここで、波長選択ミラー23と反射型偏光部材24は、それぞれ反射プリズム20の面に設けられて、光を選択的に反射または透過する機能を有しているため、本願発明における光選択部に相当している。
【0037】
波長選択ミラー23の具体的な構成は限定されず、反射面21cとシート状の波長選択ミラー23の間に接着層を設けて、波長選択ミラー23を貼り付ける構成とすることができる。また、反射型偏光部材24の具体的な構成は限定されず、反射面21dとシート状の反射型偏光部材24の間に接着層を設けて、反射型偏光部材24を貼り付ける構成とすることができる。ここで、反射型偏光部材24が反射する特定方向の偏光は、画像照射部10から照射される第1画像光L1の偏光である。反射型偏光部材24が反射する偏光方向と第1画像光L1の偏光方向は厳密に一致しなくともよく、両者の偏光方向が数度程度の角度差をもって配置されているとしてもよい。反射型偏光部材24の一例としては、旭化成株式会社製の反射型偏光フィルムWGFや、スリーエムジャパン株式会社製の反射型偏光板フィルム等を用いることができる。
【0038】
また、
図2では反射面21cに波長選択ミラー23を設け、反射面21dに反射型偏光部材24を設けた例を示したが、反射面21cに反射型偏光部材24を設け、反射面21dに波長選択ミラー23を設けるとしてもよい。さらに、反射面21c,21dの両方に反射型偏光部材24を設けるとしてもよい。この場合には、反射面21cに設けた反射型偏光部材24と、反射面21dに設けた反射型偏光部材24とで、それぞれ反射率が高い偏光方向を数度から30度程度異ならせるとしてもよい。二つの反射型偏光部材24で反射率が高い偏光方向が異なっていることで、第1画像光L1と外光に対する反射率を任意に変更することができる。
【0039】
図3は、光選択部の一例である偏光部材の光反射特性を示すグラフである。
図3は、反射型偏光部材24の光学特性を一例として示しており、図中の実線はs偏光に対する反射率の波長依存性を示し、破線はp偏光に対する反射率の波長依存性を示している。
図3に示したように、s偏光に対しては波長400~800nm程度の可視光の範囲において高い反射率を有し、800nm以上の赤外光の波長では反射率が低下する。また、p偏光に対しては波長400~800nm程度の可視光の範囲および800nm以上の赤外光の波長で反射率が低い。
【0040】
図2に示すように、第1画像光L1は可視光であり、入射面21aの第1入射部から反射プリズム20に入射して、波長選択ミラー23で反射される。また第1画像光L1はs偏光で照射され、反射型偏光部材24の反射率が高い偏光方向がs偏光に適合されているため、第1画像光L1は反射型偏光部材24で反射される。これにより、第1画像光L1は、波長選択ミラー23および反射型偏光部材24で反射されて、出射面21bの第1出射部から第1ミラー30方向に照射される。
【0041】
第2画像光L2は、入射面21aの第2入射部から反射プリズム20に入射し、反射プリズム20の内部を透過して出射面21bの第2出射部から第1ミラー30方向に照射される。このとき第1反射部および第2反射部が第1入射部および第2出射部に対して45度傾斜している場合には、光入射面と光出射面の間隔をDとし、幅をWとすると、反射プリズム20内部での第1画像光L1の光路長がD+Wとなるのに対して、第2画像光L2の光路長はDとなる。したがって、反射プリズム20を介した第1画像光L1と第2画像光L2の照射では、第1画像光L1のほうがWだけ光路長が長い画像投影となる。
【0042】
本実施形態の画像投影装置100では、外部から入射した外光は、第1ミラー30および第2ミラー40で反射されて反射プリズム20まで到達する。しかし、第1出射部から反射面21d方向に入射した外光は、s偏光の可視光のみが反射型偏光部材24で反射されて反射面21cまで到達する。このとき、外光のうちp偏光は反射型偏光部材24を透過するため、反射型偏光部材24で反射される外光のエネルギーは半減する。また、反射面21cまで到達した外光は、可視光のみが波長選択ミラー23で反射されて画像表示部11の遠方表示領域に到達する。このとき、外光のうち紫外光と赤外光は波長選択ミラー23を透過するため、遠方表示領域まで到達する外光のエネルギーはさらに低減される。
【0043】
本実施形態では、第2出射部から反射プリズム20に入射して、第2入射部を介して近方表示領域に到達する外光については、光量を低減していない。しかし、画像投影装置100では、遠方表示領域から照射された第1画像光L1の光路を逆行する外光のほうが、画像表示部11の表面において集光されやすく、画像表示部11の温度上昇を引き起こしやすい。そのため、反射面21c、21dにそれぞれ波長選択ミラー23と反射型偏光部材24を設けるだけでも、画像表示部11の温度上昇とそれによる劣化を効果的に抑制することができる。また、反射プリズム20の反射面21c、21dに波長選択ミラー23と反射型偏光部材24を貼り付けているため、波長選択ミラー23と反射型偏光部材24の面積を小さくするとともに、別途保持部材を設ける必要が無く、部品点数の減少と小型化を図ることが可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る反射プリズム20の構造例と、第1画像光L1および第2画像光L2の照射について説明する模式図である。
【0045】
図4に示した例では、入射面21aに吸収型偏光部材25が設けられ、出射面21bにバンドパスフィルター26が設けられている。吸収型偏光部材25は、特定方向の偏光を透過し、当該特定方向と直交する方向の偏光を吸収する光学特性を有する光学部材である。バンドパスフィルター26は、赤外光または紫外光を反射または吸収し、可視光を透過する光学特性を有する光学部材である。ここで、吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26は、それぞれ反射プリズム20の面に設けられて、光を選択的に反射または透過する機能を有しているため、本願発明における光選択部に相当している。
【0046】
吸収型偏光部材25の具体的な構成は限定されず、入射面21aとシート状の吸収型偏光部材25の間に接着層を設けて、吸収型偏光部材25を貼り付ける構成とすることができる。また、バンドパスフィルター26の具体的な構成は限定されず、出射面21bとシート状のバンドパスフィルター26の間に接着層を設けて、バンドパスフィルター26を貼り付ける構成とすることができる。ここで、吸収型偏光部材25が透過する特定方向の偏光は、画像照射部10から照射される第1画像光L1および第2画像光L2の偏光である。吸収型偏光部材25が透過する偏光方向と第1画像光L1および第2画像光L2の偏光方向は厳密に一致しなくともよく、両者の偏光方向が数度程度の角度差をもって配置されているとしてもよい。
【0047】
また、
図4では入射面21aに吸収型偏光部材25を設け、出射面21bにバンドパスフィルター26を設けた例を示したが、入射面21aにバンドパスフィルター26を設け、出射面21bに吸収型偏光部材25を設けるとしてもよい。
【0048】
図4に示すように、第1画像光L1はs偏光で照射され、吸収型偏光部材25の透過軸はs偏光に適合されているため、第1画像光L1は吸収型偏光部材25を透過して第1入射部から反射プリズム20に入射する。第1画像光L1は反射プリズム20内で反射面21c,21dで反射されて出射面21bの第1出射部に到達する。第1画像光L1は可視光であるため、第1画像光L1はバンドパスフィルター26を透過して第1出射部から第1ミラー30方向に照射される。
【0049】
また第2画像光L2もs偏光で照射され、吸収型偏光部材25の透過軸はs偏光に適合されているため、第2画像光L2は吸収型偏光部材25を透過して第2入射部から反射プリズム20に入射する。第2画像光L2は反射プリズム20内を透過して出射面21bの第2出射部に到達する。第2画像光L2は可視光であるため、第2画像光L2はバンドパスフィルター26を透過して第2出射部から第1ミラー30方向に照射される。
【0050】
本実施形態の画像投影装置100では、外部から入射した外光は、第1ミラー30および第2ミラー40で反射されて反射プリズム20まで到達する。しかし、第1出射部および第2出射部に到達した外光は、バンドパスフィルター26で紫外光または赤外光が吸収されて可視光のみが透過する。よって、バンドパスフィルター26を透過して出射面21bから反射プリズム20内に到達する外光のエネルギーは低減される。
【0051】
第1出射部から反射プリズム20内に入射した外光は、反射面21d,21cで反射されて第1入射部に到達する。また第2出射部から反射プリズム20内に入射した外光は、反射プリズム20内を透過して第2入射部に到達する。第1入射部および第2入射部に到達した外光は、それぞれ吸収型偏光部材25に入射し、p偏光が吸収されてs偏光が透過するため、吸収型偏光部材25を透過して画像表示部11まで到達する外光のエネルギーは半減する。
【0052】
本実施形態では、第1出射部および第2出射部から反射プリズム20に入射した外光のどちらも、吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26で一部が吸収されて、画像表示部11まで到達する外光のエネルギーが低減される。これにより画像表示部11の温度上昇とそれによる劣化を効果的に抑制することができる。また、反射プリズム20の入射面21aと出射面21bに吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26を貼り付けているため、吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26の面積を小さくするとともに、別途保持部材を設ける必要が無く、部品点数の減少と小型化を図ることが可能となる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る反射プリズム20の構造例と、第1画像光L1および第2画像光L2の照射について説明する模式図である。
【0054】
図5に示した例では、入射面21aの第1入射部に吸収型偏光部材25が設けられ、出射面21bの第1出射部にバンドパスフィルター26が設けられている。また、入射面21aの第2入射部と、出射面21bの第2出射部には、吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26は設けられていない。本実施形態でも、吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26は、それぞれ反射プリズム20の面に設けられて、光を選択的に反射または透過する機能を有しているため、本願発明における光選択部に相当している。
【0055】
図5に示すように、第1画像光L1はs偏光で照射され、吸収型偏光部材25の透過軸はs偏光に適合されているため、第1画像光L1は吸収型偏光部材25を透過して第1入射部から反射プリズム20に入射する。第1画像光L1は反射プリズム20内で反射面21c,21dで反射されて出射面21bの第1出射部に到達する。第1画像光L1は可視光であるため、第1画像光L1はバンドパスフィルター26を透過して第1出射部から第1ミラー30方向に照射される。第2画像光L2は、入射面21aの第2入射部から反射プリズム20に入射し、反射プリズム20の内部を透過して出射面21bの第2出射部から第1ミラー30方向に照射される。
【0056】
本実施形態の画像投影装置100では、外部から入射した外光は、第1ミラー30および第2ミラー40で反射されて反射プリズム20まで到達する。しかし、第1出射部に到達した外光は、バンドパスフィルター26で紫外光または赤外光が吸収されて可視光のみが透過する。よって、バンドパスフィルター26を透過して出射面21bから反射プリズム20内に到達する外光のエネルギーは低減される。第1出射部から反射プリズム20内に入射した外光は、反射面21d,21cで反射されて第1入射部に到達する。第1入射部に到達した外光は、吸収型偏光部材25に入射し、p偏光が吸収されてs偏光が透過するため、吸収型偏光部材25を透過して画像表示部11まで到達する外光のエネルギーは半減する。
【0057】
本実施形態でも、遠方表示領域から照射された第1画像光L1の光路を逆行する外光のほうが、画像表示部11の表面において集光されやすく、画像表示部11の温度上昇を引き起こしやすい。そのため、第1入射部にのみ吸収型偏光部材25を設け、第1出射部にのみバンドパスフィルター26を設けるだけでも、画像表示部11の温度上昇とそれによる劣化を効果的に抑制することができる。また、反射プリズム20において入射面21aの第1入射部と出射面21bの第1出射部に吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26を貼り付けているため、吸収型偏光部材25とバンドパスフィルター26の面積をさらに小さくするとともに、別途保持部材を設ける必要が無く、部品点数の減少と小型化を図ることが可能となる。
【0058】
(変形例)
図6は、反射プリズム20の変形例を示す模式図である。第1実施形態および第2実施形態では、反射プリズム20の複数の面に光選択部である波長選択ミラー23、反射型偏光部材24、吸収型偏光部材25、バンドパスフィルター26を貼り付けた例を示したが、何れか一つの面に反射型偏光部材24または吸収型偏光部材25を設けるとしてもよい。また、反射プリズム20の表面ではなく、反射プリズム20自体を、可視光を透過し、赤外線または紫外線を吸収する材料で構成してもよい。
【0059】
図6(a)では、反射面21cにのみ反射型偏光部材24を貼り付けた例を示している。
図6(b)では、反射面21dにのみ反射型偏光部材24を貼り付けた例を示している。どちらの場合にも、第1画像光L1は入射面21aの第1入射部から反射プリズム20に入射し、反射面21c,21dと反射型偏光部材24で反射されて出射面21bの第1出射部から第1ミラー30方向に照射される。第1出射部から反射プリズム20に入射した外光は、s偏光の可視光のみが反射面21cまたは反射面21dに設けられた反射型偏光部材24で反射されて画像表示部11まで到達する。このとき、外光のうちp偏光は反射型偏光部材24を透過するため、反射型偏光部材24で反射される外光のエネルギーは半減する。
【0060】
図6(c)では、入射面21aにのみ吸収型偏光部材25を貼り付けた例を示している。
図6(d)では、出射面21bにのみ吸収型偏光部材25を貼り付けた例を示している。どちらの場合にも、第1画像光L1および第2画像光L2はs偏光で照射され、吸収型偏光部材25の透過軸はs偏光に適合されているため、第1画像光L1および第2画像光L2は吸収型偏光部材25を透過して、出射面21bの第1出射部および第2出射部から第1ミラー30方向に照射される。反射プリズム20の第1出射部および第2出射部に到達した外光は、バンドパスフィルター26で紫外光または赤外光が吸収されて可視光のみが透過する。よって、バンドパスフィルター26を透過して画像表示部11に到達する外光のエネルギーは低減される。
【0061】
本変形例でも、反射プリズム20の何れかの面に反射型偏光部材24または吸収型偏光部材25を貼り付けることで、画像表示部11まで到達する外光のエネルギーを低減して、画像表示部11の温度上昇とそれによる劣化を抑制することができる。また、反射型偏光部材24または吸収型偏光部材25の面積をさらに小さくするとともに、別途保持部材を設ける必要が無く、部品点数の減少と小型化を図ることが可能となる。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
100…画像投影装置
10…画像照射部
20…反射プリズム
30…第1ミラー
40…第2ミラー
11…画像表示部
21a…入射面
21b…出射面
21c,21d…反射面
23…波長選択ミラー
24…反射型偏光部材
25…吸収型偏光部材
26…バンドパスフィルター