(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065784
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】多連式吐出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/68 20060101AFI20240508BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20240508BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B65D83/68
B65D25/20 U
B65D81/32 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174812
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【テーマコード(参考)】
3E013
3E014
3E062
【Fターム(参考)】
3E013AB08
3E013AC01
3E013AC19
3E013AD02
3E013AE02
3E013AF05
3E013AF34
3E014PA01
3E014PB05
3E014PC03
3E014PD01
3E014PE21
3E014PE30
3E014PF10
3E062AA04
3E062AB01
3E062AC02
3E062BB03
3E062BB06
3E062BB10
3E062CA05
3E062CA08
3E062FA02
3E062FB03
3E062KA01
(57)【要約】
【課題】従来の多連式吐出容器と容器形態や部品数を大きく増加させることなく、正立姿勢で安定に載置させることのできる多連式吐出容器を提供する。
【解決手段】有底筒状の複数の容器本体10と、容器本体10が並設された状態でその上部に設けられる吐出ヘッド部20と、吐出ヘッド部20の上部を覆う脱着可能なオーバーキャップ30とを備えた多連式吐出容器100であって、オーバーキャプ30を吐出ヘッド部20の上部を覆う蓋面部31aを有するキャップ本体31と、キャップ本体31の外側であって、容器本体10が並設された方向に対して交差する方向に突出する突出部31、40とを備え、キャップ本体31は、容器本体10の底部に取り付け可能に構成されており、キャップ本体31が容器本体10の底部に取り付けられたとき、突出部32、40の少なくとも一部が蓋面部31aと面一となるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の複数の容器本体と、前記容器本体が並設された状態でその上部に設けられ、各容器本体に収容された内容物を吐出口から吐出するための吐出ヘッド部と、前記吐出ヘッド部の上部を覆う脱着可能なオーバーキャップと、を備えた多連式吐出容器であって、
前記オーバーキャプは、前記吐出ヘッド部の上部を覆う蓋面部を有するキャップ本体と、前記キャップ本体の外側であって、前記容器本体が並設された方向に対して交差する方向に突出する突出部と、を備え、
前記キャップ本体は、前記容器本体の底部に取り付け可能に構成されており、
前記キャップ本体が前記容器本体の底部に取り付けられたとき、前記突出部の少なくとも一部が前記蓋面部と面一となる、多連式吐出容器。
【請求項2】
前記突出部は、前記蓋面部の一部を成し、前記キャップ本体に対して反転可能に設けられ、反転したときに前記キャップ本体の外側に突出し、前記蓋面部と面一になる面を有する反転片を有する、請求項1に記載の多連式吐出容器。
【請求項3】
前記キャップ本体及び前記反転片には、前記反転片を反転させた状態で前記キャップ本体に解除可能に係合するための係合部及び被係合部が設けられる、請求項2に記載の多連式吐出容器。
【請求項4】
前記突出ヘッド部は、前記容器本体の並設方向に対して交差する方向に突出するノズル部を有し、
前記オーバーキャップが前記吐出ヘッド部の上部に装着されたとき、前記突出部は、前記ノズル部の上部を覆う、請求項1に記載の多連式吐出容器。
【請求項5】
前記突出部が、前記キャップ本体の外側であって、前記容器本体が並設された方向に対して交差する方向の両側に設けられる、請求項1に記載の多連式吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容器本体を備えた多連式吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を液化ガスなどの噴射剤とともに容器本体に収容したエアゾール容器(吐出容器)が知られている。エアゾール容器は第一液と第二液とを混合して使用する染毛剤用の吐出容器として用いられることも多く、例えば、特許文献1には、2つの容器本体を左右に並設し、これらを一体的に結縛した2連式エアゾール容器(多連式吐出容器)が開示されている。この2連式エアゾール容器には、吐出レバー、ノズル等を備えるアクチュエータが設けられており、吐出レバーを押下すると、各容器本体内に挿入されたステムが押し込まれ、それによりステムに取り付けられたバルブが開放し、噴射剤の力によりノズルから各容器に収容された内容物がノズルの吐出口から同時に噴出するように構成されている。
【0003】
エアゾール容器では、流通過程等において吐出レバーの誤操作を防止するためのオーバーキャップが装着されている場合が多い。オーバーキャップの天面は、製造工程において使用される吸着搬送機の吸着面としても利用されている。吸着搬送機により搬送されたアクチュエータは、内容物が充填され、且つ、左右に並べて配置された容器本体の上方に搬送され、容器本体の口部にアクチュエータが装着されることで製品が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の多連式吐出容器では、各容器本体が軸方向に細長く形成されており、軸方向の長さに対して載置面となる底面積が小さく構成されている。また、複数の容器本体が左右方向に並設されるため、多連式吐出容器全体でみると左右方向に幅が広く、前後方向(奥行き方向)に厚みの薄い形態となる。そして、アクチュエータが上部に配置されるため、容器自体の重心は上方に位置することになる。そのため、内容物の残量が少なくなってくると、例えば、
図9に示すように、前後方向に力が加わるとそれが軽い力であっても多連式吐出容器は前後方向に転倒しやすくなる。なお、
図9は従来の多連式吐出容器200を例示したものである。
【0006】
内容物が染毛剤などである場合、使用時に吐出容器が転倒すると、吐出口に付着した内容物によって載置面が汚れてしまう場合がある。転倒を防止するには、多連式吐出容器を横向きにして各容器本体の胴部を載置面に載置しておくことが考えられる。しかしながら、内容物を吐出させる際には多連式吐出容器を都度持ち上げる必要があり、使い勝手が悪くなる上に、多連式吐出容器を持ち上げる際にビニル手袋等を装着した手が載置面に触れ、ビニル手袋等に付着した内容物によってやはり載置面が汚れてしまうおそれがある。
【0007】
そこで多連式吐出容器を正立姿勢で載置したときに転倒を防止するための容器形態を検討する必要があるが、容器全体の形態を大きく変更せず、また部品数の増加を招かないものであることが求められる。本発明の課題は、従来の多連式吐出容器と容器形態や部品数を大きく増加させることなく、正立姿勢で安定に載置させることのできる多連式吐出容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る多連式吐出容器は、有底筒状の複数の容器本体と、前記容器本体が並設された状態でその上部に設けられ、各容器本体に収容された内容物を吐出口から吐出するための吐出ヘッド部と、前記吐出ヘッド部の上部を覆う脱着可能なオーバーキャップと、を備えた多連式吐出容器であって、前記オーバーキャプは、前記吐出ヘッド部の上部を覆う蓋面部を有するキャップ本体と、前記キャップ本体の外側であって、前記容器本体が並設された方向に対して交差する方向に突出する突出部と、を備え、前記キャップ本体は、前記容器本体の底部に取り付け可能に構成されており、前記キャップ本体が前記容器本体の底部に取り付けられたとき、前記突出部の少なくとも一部が前記蓋面部と面一となる、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る多連式吐出容器において、前記突出部は、前記蓋面部の一部を成し、前記キャップ本体に対して反転可能に設けられ、反転したときに前記キャップ本体の外側に突出し、前記蓋面部と面一になる面を有する反転片を有する、ことが好ましい。
【0010】
上記の場合において、前記キャップ本体及び前記反転片には、前記反転片を反転させた状態で前記キャップ本体に解除可能に係合するための係合部及び被係合部が設けられる、ことも好ましい。
【0011】
本発明に係る多連式吐出容器において、前記突出ヘッド部は、前記容器本体の並設方向に対して交差する方向に突出するノズル部を有し、前記オーバーキャップが前記吐出ヘッド部の上部に装着されたとき、前記突出部は、前記ノズル部の上部を覆う、ことも好ましい。
【0012】
本発明に係る多連式吐出容器において、前記突出部が、前記キャップ本体の外側であって、前記容器本体が並設された方向に対して交差する方向の両側に設けられる、ことも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る多連式吐出容器は、有底筒状の複数の容器本体を並設し、その上部に吐出ヘッド部が設けられており、容器本体の軸方向の長さが長いと、容器自体の重心が上方に位置しやすい構成となっている。しかしながら、本発明に係る多連式容器では、吐出ヘッド部の上部に着脱可能に装着されるオーバーキャップのキャップ本体を、容器本体の底部に取り付けることができる。そして、キャップ本体には、容器本体が並設された方向に対して交差する方向に突出する突出部が設けられている。突出部の少なくとも一部はキャップ本体の蓋面部と面一になっている。そのため、キャップ本体を容器本体の底部側に取り付けて、多連式吐出容器を載置面に載置すると、キャップ本体の外側に突出された突出部が蓋面部と共に載置面に当接し、容器本体の並設方向と交差する方向において当該多連式吐出容器の載置面との接触面積を増大することができる。そのため、多連式吐出容器を正立姿勢で載置したときに、安定して載置面に載置することができ、当該多連式吐出容器の転倒を抑制することができる。さらに、本件発明ではキャップ本体に突出部を設けるだけでよく、従来からの多連式吐出容器の形態を大きく変更せず、部品数の増加も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る多連式吐出容器の一実施形態を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【
図2】
図1の多連式吐出容器を示す図であり、(a)はオーバーキャップを
図4(a)のA-A断面で表した正面図であり、(b)はオーバーキャップを
図4(a)のB-B断面で表した側面図である。
【
図3】(a)は
図1の多連式吐出容器からオーバーキャップを取り外したときの上面図であり、(b)はオーバーキャップを装着させたときにその内側の一部が見えるように示した上面図であり、(c)は反転片を反転させた状態で多連式吐出容器の底部に取り付けたときの下面図である。
【
図4】
図1の多連式吐出容器のオーバーキャップを説明するための図であり、(a)は上面図であり、(b)は(a)のB-B断面図であり、(c)は(b)の一部拡大図である。
【
図5】
図1の多連式吐出容器のオーバーキャップにおいて反転片が反転した状態を説明するための図であり、(a)は上面図であり、(b)は(a)のC-C断面図であり、(c)は(b)の一部拡大図である。
【
図6】
図1の多連式吐出容器のオーバーキャップを説明するための図であり、(a)は反転片部分を示す斜視図であり、(b)は
図3(a)の一部拡大図である。
【
図7】
図1の多連式吐出容器においてオーバーキャップが底部に取り付けられた状態を示す正面図であり、オーバーキャップは
図5(a)のD-D断面で表している。
【
図8】
図1の多連式吐出容器においてオーバーキャップが底部に取り付けられた状態を示す側面図であり、オーバーキャップは
図5(a)のC-C断面で表している。
【
図10】
図1の多連式吐出容器の変形例を説明するための図であり、(a)は他のオーバーキャップを示す上面図であり、(b)は(a)のE-E断面図であり、(c)は(a)のF-F断面図である。
【
図11】
図2に示すオーバーキャップにおいて反転片を反転させた状態を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は(a)のG-G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る多連式吐出容器の一実施形態について説明する。
図1は本実施の形態の多連式吐出容器100を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)の側面図である。
図1に示すように、本実施の形態の多連式吐出容器100は、複数の容器本体10を並設し、これらを一体的に結縛したものである。より具体的には、
図1には2つの容器本体10を左右に並設した二連式エアゾール容器を示している。当該多連式吐出容器100では、この容器本体10に収容された内容物を吐出するためのアクチュエータとしての吐出ヘッド部20を備え、吐出ヘッド部20の上部にはオーバーキャップ30が脱着可能に装着されている。以下、多連式吐出容器100を
図1に示す正立姿勢で載置面に載置したときの中心軸Oに沿う方向を軸方向と称し、当該軸方向において、吐出ヘッド部20が配置される側を上方とし、多連式吐出容器100の底部(容器本体10の底面部11)側を下方と称する。また、容器本体10が並設される方向を当該多連式吐出容器100の幅方向、当該幅方向に対して直交する方向を前後方向とし、吐出口21bが配置される側、すなわち内容物が吐出される側を「前」側とし、その反対側を「後」側とする。オーバーキャップ30についても同様であり、オーバーキャップ30の後述する第一の突出部32が配置される側を「前」側とし、その反対側を「後」側とする。
【0016】
まず、
図1を参照しながら容器本体10の構成を説明する。各容器本体10は、上記底面部11、胴部12、図示しない口部を有し、有底筒状に構成され、いずれも同じ形態を有する。
図1(a)に示すように、本実施の形態において、二つの容器本体10は、互いの中心軸が平行になるように胴部12同士を接近配置又は当接させた状態で連結される。なお、この二つの容器本体10の中心軸と、当該多連式吐出容器100の中心軸Oは平行であり、この二つの容器本体10の間に当該多連式吐出容器100の中心軸Oが位置する。
【0017】
本実施の形態の容器本体10は、液状の内容物と共に、例えば、液化ガス(LPG、DME等)や圧縮ガス(窒素ガス、炭酸ガス等)などの噴射剤を収容し、口部を頂壁で覆うことで密閉容器としたエアゾール容器(エアゾール缶)として構成されている。但し、本発明に関し、容器本体10は、内容物の減少に伴い減容する収容空間を有する内袋(内層体)と、この内袋を収容する外袋(外層体)とを備えた二重容器等と構成されていてもよい。また、本件発明に係る多連式吐出容器は噴射剤の力により内容物を吐出させるエアゾール容器に限らず、ポンプ機構を利用して内容物を吐出させるポンプ容器であってもよい。
【0018】
ここでは図示は省略するが、各容器本体10の口部内には、上方付勢状態で押し下げ可能にステムが立設されている。ステムには吐出弁が設けられており、ステムが立設された状態で容器本体10の口部は閉塞されている。ステムに装着されたヘッド部21が容器本体10に対して軸方向下方に押し込まれると吐出弁が開き、容器本体10内の内容物がヘッド部21の内部流路を通過して、吐出口21bにより外部に吐出される。本実施の形態では、容器本体10には、染毛剤の1液(酸化染料とアルカリ剤)と2液(酸化剤)などのそれぞれ異なる内容物が収容されている。
【0019】
次に、
図1~
図3を参照しながら、吐出ヘッド部20について説明する。
図2(a)、(b)はそれぞれ
図1(a)、(b)に示す多連式吐出容器100においてオーバーキャップ30を断面で表したものである。
図3(a)はオーバーキャップ30を取り外したときの多連式吐出容器100の上面図であり、(b)はオーバーキャップ30が装着されたときの上面図であり、その内側の一部(吐出レバー22と、嵌合用縦リブ34)を示した図である。なお、
図3(c)については後述する。
【0020】
図2及び
図3(a)に示すように、吐出ヘッド部20は、ヘッド部21を軸方向下方に押し込むための吐出レバー22と、カバー体23とを備え、いわゆるアクチュエータとして構成されている。
【0021】
ヘッド部21は、当該多連式吐出容器100の幅方向略中央位置において前方に突出するノズル部21aを有し、ノズル部21aの先端は内容物を吐出するための吐出口21bとなっている。ノズル部21aには、ヘッド部21の内部流路にそれぞれ連通する流路が設けられている。各容器本体10から吐出された内容物はこれらの内部流路を通過して、吐出口21bの出口手前で合流し、外部に吐出される。
【0022】
カバー体23は、
図2(a)、(b)に示すように、筒状に構成された側周壁部23aと、側周壁部23aの上部に設けられる天部カバー部23bを有する。
なお、カバー体23は、図示しない内部カバー体を備え、この内部カバーに脱着可能に装着される外装カバー体として構成されている。このとき、内部カバー体は容器本体10の口部に取り付けられ、容器本体10を並列配置した状態で一体的に結縛する。これらの構成は従来公知の構成を適宜採用することができる。
【0023】
また、
図2(a)、(b)に示すように、側周壁部23aの下端部には、並列配置された容器本体10の胴部12が挿入されており、容器本体10の胴部12の上部はカバー体23により被覆される。側周壁部23aの内側にはヘッド部21が収容される。側周壁部23aの前面にはノズル開口23cが形成されており、ノズル部21aがこのノズル開口23cから前方に突出するように配置される。
【0024】
天部カバー部23bは、側周壁部23aの上部に連設され、側周壁部23aの天面側を覆う略ドーム状のカバー体である。
図3(a)に示す上面視において天部カバー部23bの幅方向略中央には後方が開放する凹部23dが設けられ、当該凹部23d内に吐出レバー22が押下操作可能に収容されている。また、
図3(a)に示す上面視において、天部カバー部23bの前側は内側に凹む凹み部23eとなっている。
【0025】
次に、オーバーキャップ30について説明する。オーバーキャップ30は、
図1~
図4に示すように、吐出ヘッド部20の上部、すなわち当該多連式吐出容器100の天部を脱着可能に覆う。オーバーキャップ30は、多連式吐出容器100の天部を覆う蓋面部31aと、この蓋面部31aの外縁から垂設される周壁部31bとを有するキャップ本体31と、キャップ本体31の外側に突出する第一の突出部32と、蓋面部31aの一部を成す反転片40を有する。この反転片40は、
図5(a)、(b)に示すようにキャップ本体31に反転可能に連結されている。反転片40が反転すると、反転片40はキャップ本体31の外側に突出し、第二の突出部として機能する。
【0026】
蓋面部31aは、
図4(a)に示すように、上面視において角丸長方形状を呈し、
図4(b)に示すように側面視において厚みの薄い板状に構成されている。蓋面部31aの下面には、
図4(b)に示す嵌合用縦リブ34が下方に突出するように設けられている。
本実施の形態では嵌合用縦リブ34は軸方向に長尺な板状に構成されており、
図3(b)に示すように蓋面部31aの下面に嵌合用縦リブ34が4本設けられている。
図2(a)及び
図3(b)に示すように、これらの嵌合用縦リブ34は、天部カバー部23bの上記凹部23dと、凹み部23eに挿入され、オーバーキャップ30を吐出ヘッド部20に装着させたときに、吐出レバー22と干渉しないようにされている。
【0027】
第一の突出部32は、
図1に示すように、正面視において、T字を天地逆に配置したような形状を呈する。詳細には、第一の突出部32は、
図4(a)に示す上面視において略矩形の平板状を呈する被覆部32aと、被覆部32aの上面において幅方向略中央位置に立設される縦リブ部32bとを有している。
図1に示すように、オーバーキャップ30が吐出ヘッド部20に装着されたとき、当該被覆部32aはノズル部21aの上面とは所定の距離離間した状態で、ノズル部21aの上方に位置し、ノズル部21aの上部を覆う。
図1及び
図4(a)、(b)に示すように縦リブ部32bは正面視において幅方向の厚みが薄く、前後方向に所定の長さを有する薄板状を呈する。縦リブ部32bの上端面は蓋面部31aの上面と面一となっている。また、縦リブ部32bの後端側はキャップ本体31の周壁部31bに接合されている。
【0028】
ここで縦リブ部32bの上端面と蓋面部31aの上面とが「面一」であるとは、蓋面部31aの上面の軸方向の高さ位置と、縦リブ部32bの上端面の軸方向の高さ位置とが一致することをいう。本実施の形態では、縦リブ部32bがキャップ本体31の周壁部31bに接合されているため、縦リブ部32bの上端面と蓋面部31aの上面とは連続している。しかしながら、両者は必ずしも連続している必要はなく、その間に凹部や間隙などが存在し、両者の面の高さが不連続な部分が存在していてもよい。但し、縦リブ部32bの上端面と蓋面部31aの上面との間には軸方向上方に突出する凸部は存在しないものとする。すなわち、蓋面部31aの上面に当接する平らな基準面(仮想面)が存在し、その基準面が実質的に水平であると仮定したとき、蓋面部31aの上面と縦リブ部32bの上端面とが同時にその基準面に当接することができ、蓋面部31aの上面と縦リブ部32bの上端面とが同時にその基準面に当接しても、基準面が傾斜せず、実質的に水平を維持することができればそれでよい。
【0029】
次に、
図4及び
図6を参照して反転片40の構成を説明する。
図6(a)は、オーバーキャップ30において反転片40が設けられた部分を拡大して示す斜視図である。
図6(a)では反転片40の形状を分かりやすくするため、軸方向に延在する面に対してハッチングを付した。また、
図6(b)は
図4(a)の丸で囲んだ部分の拡大図である。但し、
図6(b)は、
図4(a)の当該部分を90度回転させた状態を示している。反転片40は、
図4(a)及び
図6(a)に示すように、前後方向に長尺であり、前端側の両角が丸められ、後端側がキャップ本体31に連結された舌片状に形成されている。蓋面部31aには反転片40の外縁に沿った形状の開口33が形成されており、反転片40はこの開口33内に配置されている。反転片40の外周面40aと、開口33の内周面33aとの間には間隙が設けられている。反転片40は蓋面部31aの一部を成す第一位置から、
図5に示す第二位置に反転可能となっている。ここで、
図4(b)に示すように、第一位置において蓋面部31aの上面と同じ方向を向く面(上面)を天面40bとし、その反対側の面(下面)を裏面40cとしたとき、反転片40が第一位置から第二位置に反転するとは、
図5(a)~(c)に示すように、第二位置では反転片40の天面40bが下方を向き、裏面40cが上方を向き、天地が逆になることをいう。
【0030】
また、
図5(a)~(c)に示すように、反転片40が反転すると、反転片40はキャップ本体31の後方に突出する。このとき、蓋面部31aの上面と、反転片40の裏面40cとは面一となる。この場合の「面一」という文言についても上記と同様に、蓋面部31aの上面に当接する平らな基準面(仮想面)が存在し、且つ、その基準面が実質的に水平であると仮定したとき、蓋面部31aの上面と反転片40の裏面40cとが同時にその基準面に当接することができ、蓋面部31aの上面と反転片40の裏面40cとが同時にその基準面に当接しても、基準面が傾斜せず、実質的に水平を維持することができればそれでよい。なお、反転片40の裏面40cと蓋面部31aの上面とは上記開口33を介して面一となっている。
【0031】
次に、
図6を参照しながら反転片40の構成をより詳細に説明する。
図6(a)では反転片40が第一位置に位置し、反転していない状態を示している。反転片40は、前後方向において、前側から順に反転突出部41、係合部42、接合部43、屈曲部44を有している。
【0032】
反転突出部41は、蓋面部31aの一部を成し、蓋面部31aの肉厚と、反転突出部41の肉厚は同じ厚みに形成されている。反転片40が反転したとき、この反転突出部41がキャップ本体31の後方に突出する。また、上述した反転片40の天面40bは当該反転突出部41の上面に相当し、反転片40の裏面40cは当該反転突出部41の下面に相当する。
【0033】
係合部42は、反転突出部41に連設されている。
図6(a)に示すように、係合部42は反転突出部41の両側部から幅方向外側にそれぞれ突出する係合凸部42aを有している。係合凸部42aは、
図4(a)に示すように、上面視において半円状を呈し、円弧部分が外側に突出している。係合凸部42aの肉厚は、反転突出部41の肉厚の1/3~1/2程度に構成されており、係合凸部42aの上面は反転突出部41の上面と面一である。また、
図4(c)に
図4(b)の一部を拡大して示すように、係合部42は断面視において、軸方向に略平行に延在する第一縦面部42bと、軸方向に略垂直に延在する平面部42cとを有する。平面部42cの上面は反転突出部41の上面より軸方向下方に位置し、平面部42cの肉厚は反転突出部41の肉厚よりも薄く構成される。つまり、反転突出部41の上面と平面部42cの上面とには段差があり、係合凸部42aの上面と平面部42cとの間にも段差がある。
【0034】
接合部43は、係合部42と屈曲部44とを接合する。
図4(c)及び
図6(a)に示すように、接合部43の上面及び下面はそれぞれ斜面となっている。また、接合部43の肉厚は、係合部42から屈曲部44に向かうにつれて肉薄となっている。
【0035】
当該反転片40において屈曲部44の肉厚は最も薄く形成されており、容易に屈折可能に構成されている。屈曲部44はキャップ本体31の後端に連結されている。したがって、例えば、蓋面部31aの下面側から指などで反転突出部41の裏面(反転片40の裏面40c)を上方に向けて押すと、前後方向において屈曲部44の略中央位置で屈曲部44が折れ曲がり、反転突出部41を反転させることができる。すなわち、屈曲部44は反転突出部41をキャップ本体31に反転可能に連結するヒンジ部として機能する。屈曲部44の後端側は肉厚に構成されており、周壁部31bの上端側から屈曲部44の後端の下面に向けて突出する支持部35に連結される。
【0036】
ところで、蓋面部31aに形成された開口33の後端部分であって、周壁部31bの上端部分は反転片40の係合部42が係合される被係合部として構成される。具体的には、次のように構成される。まず、
図4(a)、(c)及び
図6(a)、(b)に示すように、開口33の内周面33aには、当該開口33の内側に突出する凸部33bが設けられている。また、屈曲部44の後端側には、軸方向に略平行に延在する第二縦面部44aが設けられ、周壁部31bの開口33に臨む位置では、周壁部31bの上端面は反転片40の裏面40cと軸方向において同じ高さ位置となる(
図4(c)参照)。開口33の後端部分をこのように構成することで、
図5に示すように、反転片40を反転させて係合部42を軸方向下方に押し込むと、第一縦面部42bが上記第二縦面部44aに面し、平面部42cが周壁部31bの上端面に面するようにこれらが位置し、係合凸部42aが凸部33bの下方に押し込まれることで、係合部42がキャップ本体31に係合する。一方、
図5に示すように、反転片40が反転された第二位置にあるときに、下方を向く天面40bを上方に押し上げることで、係合凸部42aが凸部33bを乗り越え、係合状態が解除する。これにより、反転片40を元の第一位置に戻すことができる。
【0037】
このように構成されたオーバーキャップ30は、
図7及び
図8に示すように、多連式吐出容器100の底部に取り付けることができる。本実施の形態において、多連式吐出容器100は2つの容器本体10を有する。オーバーキャップ30を多連式吐出容器100の底部に取り付けたとき、蓋面部31aの裏面に容器本体10の底面部11がそれぞれ載置され、周壁部31bと嵌合用縦リブ34により各容器本体10が嵌合する。なお、オーバーキャップ30が多連式吐出容器100の底部に取り付けられたときの、多連式吐出容器100の下面を
図3(c)に示す。
【0038】
図3(c)及び
図5(a)~(c)に示すように、反転片40を反転させたとき、第一の突出部32と反転片40はそれぞれ前後方向に突出する。また、第一の突出部32の縦リブ部32bの上端面、蓋面部31aの上面、反転片40の裏面40cは面一である。したがって、多連式吐出容器100の底部にオーバーキャップ30を取り付けて、多連式吐出容器100を載置面に載置すると、
図7及び
図8に示すように第一の突出部32と反転片40とが蓋面部31aと共に載置面に当接し、容器本体10の並設方向と略直交(交差)する方向において当該多連式吐出容器100の載置面との接触面積を増大することができる。そのため、多連式吐出容器100を正立姿勢で載置したときに、安定して載置面に載置することができ、当該多連式吐出容器100の転倒を抑制することができる。
【0039】
これに対して、
図9に示すように従来の多連式吐出容器200の場合、当該多連式吐出容器200自体の重心は上方に位置するため、前後方向に力が加わるとそれが軽い力であっても多連式吐出容器200は前後方向に転倒しやすくなる。そのため、
図9に例示するように、例えば、多連式吐出容器200に対して前後方向後ろ側に押す力が加わると、多連式吐出容器200は後方に倒れやすくなる。特に、内容物の残量が少なくなってくると、多連式吐出容器200はより転倒しやすくなる。内容物が染毛剤などである場合、使用時に多連式吐出容器200が例えば前方に転倒すると、吐出口21bに付着した内容物によって載置面が汚れてしまう場合がある。しかしながら、上記実施の形態の多連式吐出容器100は従来の多連式吐出容器200と略同様の構成であるが、第一の突出部32及び反転片40を有するオーバーキャップ30を底部に取り付け、その際に反転片40を反転させておくという簡易な方法で多連式吐出容器100の転倒を抑制することができる。
【0040】
また、上記実施の形態では、容器本体10や吐出ヘッド部20については、従来の多連式吐出容器200(
図9参照)と共通の構成とすることができ、その形態を変更する必要がない。また、従来の多連式吐出容器200においても流通過程等における吐出レバーの誤操作防止、製造工程における吸着搬送時の吸着面確保の観点からオーバーキャプが設けられており、従来の多連式吐出容器200からの部品数の増加を抑制することができる。また、上記オーバーキャップ30では、反転片40を有するが、金型等を用いた樹脂成形により簡易に製造することができるため、製造時の組立工数の増加等も招かない。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、オーバーキャップ30を吐出ヘッド部20に装着させたとき、第一の突出部32によりノズル部21aの上方を覆うことで、例えば、上方からノズル部21aに対して不用意な力が付加されるのを防止することができる。一方、反転片40は、オーバーキャップ30を多連式吐出容器100の底部に取り付けるときにのみ反転させることができ、それ以外のときは反転片40を第一位置としておけば、反転片40がキャップ本体31の外側に突出して流通時や収納時に嵩張らないようにすることができる。
【0042】
(変形例)
次に、上記実施の形態の多連式吐出容器100の変形例について説明する。上記実施の形態の多連式吐出容器100では、
図1~
図8に示すように、第一の突出部32と、一つの反転片40とを有するオーバーキャップ30を備えるものとした。しかしながら、オーバーキャップ30の構成は上記実施の形態で説明した態様に限定されるものではなく、例えば、
図10及び
図11に示すオーバーキャップ50を採用してもよい。なお、以下、上記実施の形態で説明した各構成要素と同様の機能及び構成を有する要素は同じ名称を付して、その説明を省略する。
【0043】
図10及び
図11に示すオーバーキャップ50は、キャップ本体51と、キャップ本体51の外側において前後方向両側にそれぞれ突出する二つの反転片52とを有する。但し、
図10は各反転片52が第一位置にある状態を示し、
図11は各反転片52が反転して第二位置にある状態を示している。当該オーバーキャップ50は第一の突出部32の代わりに、第一の突出部としても反転片52を用いた点を除いて、上記実施の形態のオーバーキャップ30と略同じ構成を有し、係合凸部52a、凸部52b、屈曲部52c、嵌合用縦リブ53等を備え、これらはそれぞれ上述した係合凸部42a、凸部33b、屈曲部44、嵌合用縦リブ34等と同様の構成及び機能を有する。また、反転片52は、それぞれ蓋面部51aの一部を成し、蓋面部51aには、各反転片52の外形に沿った開口54が形成されている。その他についても同様であり、ここでは説明を省略する。
【0044】
当該変形例においても、
図10に示す第一位置から反転片52を反転させた状態で、オーバーキャップ50を多連式吐出容器100の底部に取り付けると、
図11に示すように、反転片52が蓋面部51aと共に載置面に当接する。これにより、容器本体10の並設方向と略直交(交差)する方向において当該多連式吐出容器100の載置面との接触面積を増大することができる。そのため、多連式吐出容器100を正立姿勢で載置したときに、安定して載置面に載置することができ、当該多連式吐出容器100の転倒を抑制することができる。
【0045】
以上説明した実施の形態は本発明の一態様であり、本発明は上記多連式吐出容器100及びその変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。例えば、上記実施の形態では、2つの容器本体10を備える二連式エアゾール容器を例に挙げて説明したが、容器本体10の数は2つに限定されるものではく、3つ以上であってもよい。また、上述のとおりエアゾール容器に限定されるものではない。容器本体10、吐出ヘッド部20、オーバーキャップ30(オーバーキャップ50)の具体的な構成や形状は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
なお、1つの容器本体に対してアクチュエータ等の吐出ヘッド部を備えた吐出容器(エアゾール容器等)についても上記オーバーキャップ30と同様のオーバーキャップを適用してもよい。底面積に対して容器本体の胴部が軸方向に長いと、上記多連式吐出容器100と同様に、容器自体の重心が上方に位置する。従って、上述したオーバーキャップ30と同様のオーバーキャップを設けることで、そのような重心位置が上方に位置する吐出容器の転倒を抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 :容器本体
11 :底面部
12 :胴部
20 :吐出ヘッド部
21 :ヘッド部
21a :ノズル部
21b :吐出口
22 :吐出レバー
23 :カバー体
23a :側周壁部
23b :天部カバー部
23c :ノズル開口
23d :凹部
23e :凹み部
30 :オーバーキャップ
31 :キャップ本体
31a :蓋面部
31b :周壁部
32 :第一の突出部
32a :被覆部
32b :縦リブ部
33 :開口
33a :内周面
33b :凸部
34 :嵌合用縦リブ
35 :支持部
40 :反転片
40a :外周面
40b :天面
40c :裏面
41 :反転突出部
42 :係合部
42a :係合凸部
42b :第一縦面部
42c :平面部
43 :接合部
44 :屈曲部
44a :第二縦面部
50 :オーバーキャップ
51 :キャップ本体
51a :蓋面部
52 :反転片
52a :係合凸部
52b :凸部
52c :屈曲部
53 :嵌合用縦リブ
54 :開口
100 :多連式吐出容器
200 :(従来の)多連式吐出容器
O :中心軸