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特開2024-65792硬膜外麻酔支援システム、硬膜外麻酔訓練方法、及び表示装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065792
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】硬膜外麻酔支援システム、硬膜外麻酔訓練方法、及び表示装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240508BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20240508BHJP
   G09B 5/02 20060101ALI20240508BHJP
   A61B 90/00 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
G06T19/00 600
G09B9/00 Z
G09B5/02
A61B90/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174821
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100196209
【弁理士】
【氏名又は名称】松崎 義邦
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】川前 金幸
(72)【発明者】
【氏名】早坂 達哉
(72)【発明者】
【氏名】河野 和晴
(72)【発明者】
【氏名】小森谷 祐太
【テーマコード(参考)】
2C028
5B050
【Fターム(参考)】
2C028AA10
2C028BB01
2C028BC05
5B050AA02
5B050BA09
5B050CA07
5B050EA07
5B050EA19
5B050FA02
5B050FA06
(57)【要約】
【課題】盲目的な硬膜外穿刺を改善し、硬膜外穿刺の安全性及び迅速性を向上させる硬膜外麻酔支援システム等を提供する。
【解決手段】硬膜外麻酔支援システムは、硬膜外麻酔を支援するための硬膜外麻酔支援システムであって、ユーザの目の正面方向に設置された透過表示部と、ユーザが透過表示部を通して人体モデル又は患者背部を見た場合、脊椎の少なくとも一部を示す第1空中像が人体モデル又は患者背部の対応位置に表示されるように、第1空中像を透過表示部に出力する出力処理部と、を備えるゴーグル型の表示装置と、を有する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬膜外麻酔を支援するための硬膜外麻酔支援システムであって、
前記硬膜外麻酔の訓練対象となる人体の少なくとも一部を模した人体モデルと、
ユーザの目の正面方向に設置された透過表示部と、
前記ユーザが前記透過表示部を通して前記人体モデルを見た場合、脊椎の少なくとも一部を示す第1空中像が前記人体モデルの対応位置に表示されるように、前記第1空中像を前記透過表示部に出力する出力処理部と、を備えるゴーグル型の表示装置と、
を有することを特徴とする硬膜外麻酔支援システム。
【請求項2】
前記人体モデルは、前記脊椎の少なくとも一部を模した脊椎モデルを有し、
前記出力処理部は、CT装置によって取得された前記脊椎モデルのCT画像から生成された3次元オブジェクトデータに基づいて、前記第1空中像を出力する、請求項1に記載の硬膜外麻酔支援システム。
【請求項3】
前記出力処理部は、前記ユーザが前記透過表示部を通して前記人体モデルを見た場合、前記硬膜外麻酔で用いられる硬膜外針の皮膚穿刺点、前記硬膜外針の穿刺角度、及び前記硬膜外針の硬膜外腔穿刺点のうちの少なくとも一つを示す第2空中像が前記人体モデルの対応位置に表示されるように、前記第2空中像を前記透過表示部に出力する、請求項1に記載の硬膜外麻酔支援システム。
【請求項4】
前記人体モデルは、前記脊椎の少なくとも一部を模した脊椎モデルを有し、
前記出力処理部は、CT装置によって取得された、前記硬膜外針が穿刺された前記脊椎モデルのCT画像から生成された3次元オブジェクトデータに基づいて、前記第1空中像及び前記第2空中像を出力し、
前記硬膜外針は、医学的に適切な、前記皮膚穿刺点、前記穿刺角度、及び前記硬膜外腔穿刺点を満たすように、前記脊椎モデルに穿刺される、請求項3に記載の硬膜外麻酔支援システム。
【請求項5】
硬膜外麻酔を支援するための硬膜外麻酔支援システムであって、
ユーザの目の正面方向に設置された透過表示部と、
前記ユーザが前記透過表示部を通して人体を見た場合、前記人体の脊椎の少なくとも一部を示す空中像が前記人体の対応位置に表示されるように、前記空中像を前記透過表示部に出力する出力処理部と、を備えるゴーグル型の表示装置、
を有することを特徴とする硬膜外麻酔支援システム。
【請求項6】
前記ゴーグル型の表示装置は、装着した前記ユーザに前記空中像をイメージさせ、
前記ユーザは、前記空中像のイメージ後に前記ゴーグル型の表示装置を外し、通常通りの硬膜外麻酔を施行する、請求項5に記載の硬膜外麻酔支援システム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の硬膜外麻酔支援システムを用いて前記硬膜外麻酔を訓練するための硬膜外麻酔訓練方法であって、
前記ゴーグル型の表示装置を装着した前記ユーザに、前記硬膜外麻酔で用いられる硬膜外針を前記人体モデルに穿刺させるため、前記第1空中像を前記ゴーグル型の表示装置に表示するステップ、
を含む硬膜外麻酔訓練方法。
【請求項8】
前記ユーザが、前記ゴーグル型の表示装置を装着して前記第1空中像をイメージした後に前記ゴーグル型の表示装置を外し、前記硬膜外針を前記人体モデルに穿刺するステップ、
を更に含む、請求項7に記載の硬膜外麻酔訓練方法。
【請求項9】
請求項2又は4に記載の硬膜外麻酔支援システムを用いて前記硬膜外麻酔を訓練するための硬膜外麻酔訓練方法であって、
前記ゴーグル型の表示装置を装着した前記ユーザに、前記人体モデルに装着された前記脊椎モデルに硬膜外針を穿刺させるため、前記第1空中像を前記ゴーグル型の表示装置に表示するステップと、
前記硬膜外針が前記ユーザによって穿刺された前記脊椎モデルのCT画像を取得するステップと、
前記硬膜外針が前記ユーザによって穿刺された前記脊椎モデルにおける、当該硬膜外針の皮膚穿刺点、穿刺角度、及び硬膜外腔穿刺点を表示するステップと、
を含む硬膜外麻酔訓練方法。
【請求項10】
前記ユーザが、前記ゴーグル型の表示装置を装着して前記第1空中像をイメージした後に前記ゴーグル型の表示装置を外し、前記硬膜外針を前記人体モデルに穿刺するステップ、
を更に含む、請求項9に記載の硬膜外麻酔訓練方法。
【請求項11】
画像取得部と、記憶部と、透過表示部を備える表示装置の制御方法であって、
前記表示装置が、
特定の人体の表面の形状の少なくとも一部を示す第1の3次元オブジェクトデータと、前記特定の人体の脊椎の少なくとも一部を示す第2の3次元オブジェクトデータと、を前記記憶部に記憶し、
前記画像取得部によって取得された前記特定の人体の画像と、前記第1の3次元オブジェクトデータとに基づいて、前記第2の3次元オブジェクトデータに基づく前記特定の人体の脊椎の少なくとも一部を示す空中像を前記透過表示部に表示する、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示された実施形態は、硬膜外麻酔支援システム、硬膜外麻酔訓練方法、及び表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬膜外麻酔は、胸部、腹部、骨盤、下肢の手術の際に全身麻酔と併用して使用されるものである。硬膜外麻酔の鎮痛効果は、傍脊椎神経ブロックよりも秀でており、近年の研究によると、手術の際に硬膜外麻酔が使用された場合、術後の認知機能障害及び術後のストレス反応を軽減させる効果があることが示されている。
【0003】
他方、硬膜外麻酔は難易度の高い手技である。硬膜外麻酔を施行する臨床医は、硬膜外針の指先を指で感じ、指先を“歩かせ”ながら、硬膜外倥の位置を特定しなければならない。このように、臨床医は、“歩く”という技術を盲目的に行っている。このため、硬膜外麻酔の施行に際し、臨床医には、解剖学的知識だけではなく経験や感覚が必要となる。
【0004】
硬膜外麻酔における硬膜外カテーテルの挿入困難及び挿入不可の発生率は、約7%であり、麻酔研修医においては約26%に及ぶ。硬膜外カテーテルの挿入困難は、時間経過に伴い患者に苦痛を強いることになり、また、複数回の硬膜外穿刺は患者に局所痛を与える。さらに、患者が穿刺時に安静を保てない際は硬膜外穿刺による神経損傷のリスクが上がり、硬膜外穿刺の手技を中断せざるを得ない状況に見舞われることもある。
【0005】
このため、安全で正確な硬膜外麻酔を行うための方法は長年にわたり模索されている。例えば、特許文献1及び非特許文献1には、硬膜外穿刺の手技を習得するための硬膜外穿刺シミュレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-132138号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「腰椎・硬膜外穿刺シミュレータ ルンバールくんIIA」,[online],2022年3月18日,株式会社京都科学,[2022年9月1日検索],インターネット<URL:https://www.kyotokagaku.com/jp/products_data/m43b_02/?utm_source=YT&utm_medium=L&utm_campaign=TR>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に記載された人体モデル(硬膜外穿刺シミュレータ)は、盲目的な硬膜外穿刺の習得方法の提供にとどまるものであった。このように、従来の人体モデルは、盲目的な硬膜外穿刺を改善するものではなく、硬膜外穿刺の安全性及び迅速性を更に向上させるものではなかった。
【0009】
本明細書で開示された硬膜外麻酔支援システム、硬膜外麻酔訓練方法、及び表示装置の制御方法は、盲目的な硬膜外穿刺を改善し、硬膜外穿刺の安全性及び迅速性を向上させることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示された硬膜外麻酔支援システムは、硬膜外麻酔を支援するための硬膜外麻酔支援システムであって、硬膜外麻酔の訓練対象となる人体の少なくとも一部を模した人体モデルと、ユーザの目の正面方向に設置された透過表示部と、ユーザが透過表示部を通して人体モデルを見た場合、脊椎の少なくとも一部を示す第1空中像が人体モデルの対応位置に表示されるように、第1空中像を透過表示部に出力する出力処理部と、を備えるゴーグル型の表示装置と、を有する。
【0011】
また、開示された硬膜外麻酔支援システムにおいて、人体モデルは、脊椎の少なくとも一部を模した脊椎モデルを有し、出力処理部は、CT装置によって取得された脊椎モデルのCT画像から生成された3次元オブジェクトデータに基づいて、第1空中像を出力することが好ましい。
【0012】
また、開示された硬膜外麻酔支援システムにおいて、出力処理部は、ユーザが透過表示部を通して人体モデルを見た場合、硬膜外麻酔で用いられる硬膜外針の皮膚穿刺点、硬膜外針の穿刺角度、及び硬膜外針の硬膜外腔穿刺点のうちの少なくとも一つを示す第2空中像が人体モデルの対応位置に表示されるように、第2空中像を透過表示部に出力することが好ましい。
【0013】
また、開示された硬膜外麻酔支援システムにおいて、人体モデルは、脊椎の少なくとも一部を模した脊椎モデルを有し、出力処理部は、CT装置によって取得された、硬膜外針が穿刺された脊椎モデルのCT画像から生成された3次元オブジェクトデータに基づいて、第1空中像及び第2空中像を出力し、硬膜外針は、医学的に適切な、皮膚穿刺点、穿刺角度、及び硬膜外腔穿刺点を満たすように、脊椎モデルに穿刺されることが好ましい。
【0014】
開示された硬膜外麻酔支援システムは、硬膜外麻酔を支援するための硬膜外麻酔支援システムであって、ユーザの目の正面方向に設置された透過表示部と、ユーザが透過表示部を通して人体を見た場合、人体の脊椎の少なくとも一部を示す空中像が人体の対応位置に表示されるように、空中像を透過表示部に出力する出力処理部と、を備えるゴーグル型の表示装置、を有する。
【0015】
また、開示された硬膜外麻酔支援システムにおいて、ゴーグル型の表示装置は、装着したユーザに空中像をイメージさせ、ユーザは、空中像のイメージ後にゴーグル型の表示装置を外し、通常通りの硬膜外麻酔を施行することが好ましい。
【0016】
開示された硬膜外麻酔訓練方法は、開示された硬膜外麻酔支援システムを用いて硬膜外麻酔を訓練するための硬膜外麻酔訓練方法であって、ゴーグル型の表示装置を装着したユーザに、硬膜外麻酔で用いられる硬膜外針を人体モデルに穿刺させるため、第1空中像をゴーグル型の表示装置に表示するステップ、を含む。
【0017】
開示された硬膜外麻酔訓練方法は、開示された硬膜外麻酔支援システムを用いて硬膜外麻酔を訓練するための硬膜外麻酔訓練方法であって、ゴーグル型の表示装置を装着したユーザに、人体モデルに装着された脊椎モデルに硬膜外針を穿刺させるため、第1空中像をゴーグル型の表示装置に表示するステップと、硬膜外針がユーザによって穿刺された脊椎モデルのCT画像を取得するステップと、硬膜外針がユーザによって穿刺された脊椎モデルにおける、当該硬膜外針の皮膚穿刺点、穿刺角度、及び硬膜外腔穿刺点を表示するステップと、を含む。
【0018】
また、開示された硬膜外麻酔訓練方法において、ユーザが、ゴーグル型の表示装置を装着して第1空中像をイメージした後にゴーグル型の表示装置を外し、硬膜外針を前記人体モデルに穿刺するステップ、を更に含むことが好ましい。
【0019】
開示された制御方法は、画像取得部と、記憶部と、透過表示部を備える表示装置の制御方法であって、表示装置が、特定の人体の表面の形状の少なくとも一部を示す第1の3次元オブジェクトデータと、特定の人体の脊椎の少なくとも一部を示す第2の3次元オブジェクトデータと、を記憶部に記憶し、画像取得部によって取得された特定の人体の画像と、第1の3次元オブジェクトデータとに基づいて、第2の3次元オブジェクトデータに基づく特定の人体の脊椎の少なくとも一部を示す空中像を透過表示部に表示する。
【発明の効果】
【0020】
開示された硬膜外麻酔支援システム、硬膜外麻酔訓練方法、及び表示装置の制御方法によって、盲目的な硬膜外穿刺を改善し、硬膜外穿刺の安全性及び迅速性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】硬膜外麻酔支援システムの概要の一例を説明するための模式図である。
図2】人体モデルの概略構成の一例を示す図である。
図3】硬膜外針が穿刺された腰椎モデルの生成方法の一例を示す模式図である。
図4】(a)は、ウェアラブル装置の外観の一例を示す斜視図であり、(b)は、ウェアラブル装置の概略構成の一例を示す図である。
図5】(a)は、3次元オブジェクトの一例を示す模式図であり、(b)は、ウェアラブル装置において表示される空中像の一例を示す図である。
図6】硬膜外針の穿刺訓練の結果画像を説明するための模式図である。
図7】硬膜外麻酔訓練方法の動作フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0023】
(硬膜外麻酔支援システム1の概要)
図1は、硬膜外麻酔支援システム1の概要の一例を説明するための模式図である。硬膜外麻酔支援システム1は、人体モデル2とウェアラブル装置3とを含む。人体モデル2は、人体を模した本体部21と、人体の背面の皮膚の少なくとも一部を模した皮膚部22とを有する。本体部21は、脊椎の少なくとも一部を模した脊椎モデル24を収容する収容部23を有する。
【0024】
ウェアラブル装置3は、ユーザ(医師又は研修医等)の頭部に着用可能なゴーグル型の表示装置である。ウェアラブル装置3には、着用したユーザの目の正面方向に位置するように透過表示部が設置される。ウェアラブル装置3は、各種の空中像を透過表示部に表示するMR(Mixed Reality)機能を有する。
【0025】
図1(b)に示されるように、ウェアラブル装置3は、脊椎モデル24の空中像A1を、当該ウェアラブル装置3を着用したユーザが透過表示部を通して人体モデル2を見た場合における人体モデル2の対応位置に表示する。例えば、ウェアラブル装置3は、人体モデル2の表面の形状を示す3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータと、脊椎モデル24の表面の形状を示す3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータとを記憶する。また、ウェアラブル装置3は、3次元オブジェクトD1と3次元オブジェクトD2との相対的な位置関係を記憶する。ウェアラブル装置3は、3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータを読み出し、公知のMR機能を用い、人体モデル2の形状を認識し、人体モデル2の現実空間の位置を特定する。ウェアラブル装置3は、人体モデル2の現実空間の位置、3次元オブジェクトD1と3次元オブジェクトD2との相対的な位置関係、及び3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータとに基づいて、空中像A1を透過表示部に表示させる。例えば、空中像A1は、3次元オブジェクトD2に対応するホログラム(立体映像)であり、第1空中像の一例である。
【0026】
脊椎モデル24が腰椎を模したものである場合、ウェアラブル装置3は、腰椎を示す空中像A1を、当該ウェアラブル装置3を着用したユーザが透過表示部を通して人体モデル2を見た場合における人体モデル2内に収容された脊椎モデル24の位置に表示する。これにより、ウェアラブル装置3を着用したユーザは、透過表示部を通して、人体モデル2内に収容された脊椎モデル24に対応する位置に表示された空中像A1を視認することができる。
【0027】
なお、空中像A1は、脊椎モデル24の表面の形状を示す3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータに基づいて表示されるものに限らない。例えば、3次元オブジェクトデータの生成アプリケーションプログラムが実行可能な情報処理装置(PC(Personal Computer)等)を、訓練担当者が操作することによって生成された脊椎の少なくとも一部の表面の形状を示す3次元オブジェクトデータに基づいて、空中像A1が表示されてもよい。訓練担当者は、研修医等の訓練対象者に対して硬膜外穿刺の訓練を提供する者である。
【0028】
以上、図1を参照しつつ説明したとおり、硬膜外麻酔支援システム1は、人体モデル2の脊椎の少なくとも一部に対応する位置に、当該脊椎の少なくとも一部を示す空中像A1が表示されるウェアラブル装置3を有する。このように、硬膜外麻酔支援システム1によって、硬膜外穿刺の対象となる部位を可視化することができ、盲目的な硬膜外穿刺を改善し、硬膜外穿刺の安全性及び迅速性を向上させることが可能となる。
【0029】
なお、上述した図1の説明は、本発明の内容への理解を深めるための説明にすぎない。本発明は、具体的には、次に説明する各実施形態において実施され、且つ、本発明の原則を実質的に超えずに、さまざまな変形例によって実施されてもよい。このような変形例はすべて、本発明および本明細書の開示範囲に含まれる。
【0030】
(人体モデル2)
図2は、人体モデル2の概略構成の一例を示す図である。人体モデル2は、脊椎モデル24、皮膚部22、コード部25等を有する。
【0031】
図2に示される本体部21は、人体の腰の部分を模した腰部を有する。本体部21は腰部に限定されず、人体の背中を模した背中部、及び/又は、人体の臀部を模した臀部をさらに有するものでもよい。また、本体部21は、背中部及び臀部のうちのいずれか一つのみを有するものでもよい。また、本体部21には、人体の他の部位を模したモデル(例えば、首を模した頸部、上腕を模した上腕部、及び/又は大腿を模した大腿部等)が含まれてもよい。
【0032】
皮膚部22は、皮膚及び皮下組織を模した軟質合成樹脂であり、ユーザが触診した場合の柔らかさ及び触感が、人体の皮膚と同様となるように構成されている。収容部23は、人体モデル2の背中の面に設けられた凹溝であり、脊椎モデル24を収容する。
【0033】
脊椎モデル24は、少なくとも棘突起及び硬膜外腔を模したものである。図2(b)に示される脊椎モデル24は、脊椎のうちの腰椎を模したモデルである。脊椎モデル24は、腰椎を模したものに限定されず、頚椎、胸椎、又は仙椎を模したモデルでもよい。また、脊椎モデル24は、頚椎、胸椎、腰椎、及び仙椎のうちの2つ以上を模したモデルでもよい。
【0034】
脊椎モデル24は、ユーザから視認できないように、収容部23内に収容され(図2(b))、皮膚部22に覆われる(図2(a))。ウェアラブル装置3を着用しないユーザは、脊椎モデル24を視認することができないため、人体モデル2を用いた盲目的な硬膜外穿刺手技の訓練を行う。このように、人体モデル2は、硬膜外麻酔の訓練対象となる人体の少なくとも一部を模したモデルであり、脊椎モデル24は、当該人体モデル2に収容され且つ硬膜外麻酔における硬膜外穿刺の対象となる脊椎の少なくとも一部を模したモデルである。なお、脊椎モデル24の詳細は後述する。
【0035】
コード部25は、例えばQRコード(登録商標)であり、3次元オブジェクトD1及び3次元オブジェクトD2のそれぞれの3次元オブジェクトデータと関連付けられている。コード部25として、ARマーカ等の他のバーコード情報が用いられてもよい。コード部25の使用方法については後述する。
【0036】
人体モデル2のうちコード部25以外の構成要素として、例えば、公知の硬膜外穿刺シミュレータ(「腰椎・硬膜外穿刺シミュレータ ルンバールくんIIA」,2022年3月18日,株式会社京都科学,[2022年9月1日検索],インターネット<URL:https://www.kyotokagaku.com/jp/products_data/m43b_02/?utm_source=YT&utm_medium=L&utm_campaign=TR>)が用いられてもよい。
【0037】
(硬膜外針Nが穿刺された脊椎モデル24)
図3は、硬膜外針Nが穿刺された脊椎モデル24の生成方法の一例を示す模式図である。硬膜外針Nが穿刺された脊椎モデル24は、3次元オブジェクトデータを作成するために用いられる。脊椎モデル24に穿刺された硬膜外針Nは、硬膜外針Nの皮膚穿刺点、硬膜外針Nの穿刺角度、及び硬膜外針Nの硬膜外腔穿刺点のうちの少なくとも一つを示す空中像A2を表示するための3次元オブジェクトデータに対応する。硬膜外針Nが穿刺された脊椎モデル24は、訓練担当者によって作成される。なお、空中像A2は、第2空中像の一例である。
【0038】
図3(a)に示されるように、脊椎モデル24は、棘突起部241、透過部242、及び硬膜外腔部243を有する。棘突起部241は、棘突起を模したものであり、棘突起と同様の硬度を有する合成樹脂である。透過部242は、硬膜外針Nが穿刺された場合に、棘間靭帯と同様の抵抗感を生じさせるように構成された透明シリコン等であり、穿刺された硬膜外針Nを視認することができる。なお、硬膜外針Nが透過部242に穿刺された場合における、透過部242の上面の硬膜外針Nの穿刺位置を皮膚穿刺点と称する場合がある。硬膜外腔部243は、硬膜外腔を構成する中空の管状体である。図3に示される例では、硬膜外腔部243の上側は、黄靭帯を模しており、透過部242に穿刺された硬膜外針Nが硬膜外腔部243の上側に到達した点が、硬膜外腔穿刺点となる。
【0039】
次に、図3(b)に示されるように、訓練担当者は、硬膜外針Nを脊椎モデル24に穿刺する。硬膜外針Nは、医学的に適切な、皮膚穿刺点、穿刺角度、及び硬膜外腔穿刺点を満たすように、脊椎モデル24に穿刺される。穿刺角度は、皮膚穿刺点及び硬膜外腔穿刺点を通過する直線と図3(b)の上方向を通過する軸との乖離角度θ等である。
【0040】
次に、図3(c)に示されるように、訓練担当者は、硬膜外腔部243の上側から延びている硬膜外針Nを切断することにより、硬膜外針Nが穿刺された脊椎モデル24が完成する。なお、硬膜外針Nが穿刺された脊椎モデル24は、切断する前の硬膜外針Nが穿刺された状態のもの(図3(b))でもよい。
【0041】
(3次元オブジェクトデータ)
以下、3次元オブジェクトデータの作成方法の一例について説明する。訓練担当者は、硬膜外針Nが穿刺された脊椎モデル24を人体モデル2に収容し、CT(Computed Tomography)装置(図示せず)を用いて、当該人体モデル2のCT画像を取得する。
【0042】
次に、訓練担当者は、3次元オブジェクトデータの生成アプリケーションプログラムが実行可能なPC等の情報処理装置(図示せず)を用いて、人体モデル2のCT画像から、3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータ、3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータを生成する。3次元オブジェクトデータの生成アプリケーションプログラムとして、公知のアプリケーションプログラム(「Unity Pro」(登録商標))が用いられてもよい。
【0043】
例えば、情報処理装置は、人体モデル2の各CT画像について、本体部21及び皮膚部22のサーフェイスに対応するピクセルP1、脊椎モデル24の棘突起部241及び/又は硬膜外腔部243のサーフェイスに対応するピクセルP2、硬膜外針Nのサーフェイスに対応するピクセルP3を特定する。次に、情報処理装置は、全てのCT画像において特定したピクセルP1~P3を用いて、公知の変換処理によって、3次元オブジェクトデータを生成する。3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータは、ピクセルP1に基づいて生成され、3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータは、ピクセルP2に基づいて生成される。また、硬膜外針Nの表面の形状を示す3次元オブジェクトD3の3次元オブジェクトデータが、ピクセルP3に基づいて生成される。
【0044】
3次元オブジェクトD3は、硬膜外針N自体の表面の形状を示すものに限定されない。例えば、3次元オブジェクトD3は、硬膜外針Nの皮膚穿刺点に対応する球状のオブジェクトでもよく、硬膜外針Nの硬膜外腔穿刺点を示す球状のオブジェクトでもよい。また、硬膜外針Nに対応する線分状態のオブジェクトを、矢印のデザインとしてもよい。この場合の矢印の方向は穿刺方向である。3次元オブジェクトD3は、上述で例示した各オブジェクトを複数備えるものでもよい。
【0045】
(ウェアラブル装置3)
図4(a)は、ウェアラブル装置3の一例を示す斜視図であり、図4(b)は、ウェアラブル装置3の概略構成の一例を示す図である。ウェアラブル装置3は、ユーザの頭部に着用可能なゴーグル型の表示装置であり、着用したユーザの目の正面方向(x方向)に設置されたハーフミラー部36に各種の空中像を表示するMR(Mixed Reality)機能を有する。ウェアラブル装置3は、このような機能を実現するため、通信I/F31、記憶部32、センサ取得部33、映像出力部34、処理部35、ハーフミラー部36、環境センサ37、深度センサ38等を備える。ウェアラブル装置3として、公知のMR用のHMD(Head Mounted Display)(例えば、「Microsoft HoloLens 2」,[2022年9月1日検索],インターネット<URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens/>)が用いられてもよい。
【0046】
通信I/F31は、図示しない無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントとの間でIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11規格の無線通信方式に基づいて無線通信を行う通信インターフェース回路を備える。通信I/F31は、情報処理装置から無線通信により送信された3次元オブジェクトデータを受信する。また、通信I/F31は、図示しない基地局により割り当てられるチャネルを介して、基地局との間でLTE(Long Term Evolution)方式、第5世代(5G)移動通信システム等による無線信号回線を確立し、基地局との間で通信を行ってもよい。また、通信I/F31は、Bluetooth(登録商標)等の通信方式に従った近距離無線通信を行うためのインターフェース回路を有し、情報処理装置からの電波を受信してもよい。また、通信I/F31は、有線LANの通信インターフェース回路を備えてもよい。これにより、ウェアラブル装置3は、通信I/F31を介して情報処理装置から3次元オブジェクトデータ(3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータ、3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータ、及び3次元オブジェクトD3の3次元オブジェクトデータ)を取得することができる。
【0047】
記憶部32は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ装置である。記憶部32は、処理部35における処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム及びデータ等を記憶する。記憶部32に記憶されるドライバプログラムは、通信I/F31を制御する通信デバイスドライバプログラム、映像出力部34を制御する出力デバイスドライバプログラム、環境センサ37を制御する環境センサデバイスドライバプログラム、及び、深度センサ38を制御する深度センサデバイスドライバプログラム等である。記憶部32に記憶されるアプリケーションプログラムは、MR機能を処理部35に実現させるための各種制御プログラムである。さらに、記憶部32は、情報処理装置から取得した3次元オブジェクトデータ(3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータ、3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータ、及び3次元オブジェクトD3の3次元オブジェクトデータ)を記憶する。
【0048】
センサ取得部33は、環境センサ37及び深度センサ38からの各種センサデータを取得し、処理部35に渡す機能を有する。映像出力部34は、中空像を表示するための表示データに基づいて、ホログラフィック光学素子を使ってハーフミラー部36に中空像を投影する機能を有する。
【0049】
処理部35は、記憶部32に記憶されているオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム及びアプリケーションプログラムをメモリにロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する処理装置である。処理部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の電子回路、又は各種電子回路の組み合わせである。図4(b)においては、処理部35が単一の構成要素として図示されているが、処理部35は複数の物理的に別体のプロセッサの集合であってもよい。
【0050】
処理部35は、制御プログラムに含まれる各種命令を実行することにより、認識部351、及び出力処理部352として機能する。認識部351、及び出力処理部352の機能については後述する。
【0051】
ハーフミラー部36は、ウェアラブル装置3がユーザによって着用された場合に、当該ユーザの目の正面方向に設置される透過表示部の一例である。ハーフミラー部36は、映像出力部34から投影された中空像を表示する。これにより、ユーザは、ユーザの視線方向の現実世界に重ねて、表示された中空像を視認することができる。
【0052】
環境センサ37は、光学レンズ及び撮像素子等を有する。光学レンズは、被写体からの光束を撮像素子の撮像面上に結像させる。撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等であり、撮像面上に結像した被写体像の画像を出力する。環境センサ37は、撮像素子によって生成された画像から所定のファイル形式の静止画像データを作成して環境センサデータとして出力する。環境センサ37は、環境センサ画像データを出力する際に、画像データの取得時刻を対応付けてもよい。また、環境センサ37は所定時間(例えば1秒)ごとに環境センサデータを処理部35に渡す。
【0053】
深度センサ38は、例えば一対の赤外線センサである。深度センサ38は、赤外線画像を出力し、出力した赤外線画像から公知のアクティブステレオ法を用いて物体の表面上の複数の点に対応する距離を測定して、複数の点のそれぞれに対応する深度データ(距離データ)を出力する。深度センサ38は所定時間(例えば1秒)ごとに深度データを処理部35に渡す。
【0054】
以下、認識部351、及び出力処理部352の機能の一例について説明する。
【0055】
認識部351は、環境センサ37からの環境センサデータ及び深度センサ38からの深度データを受け取るたびに、公知のSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術を用いて、自己位置を推定するとともに周囲の物体の表面の3次元メッシュデータを生成する。
【0056】
また、認識部351は、環境センサ37からの環境センサデータによって示される画像内に、コード部25が含まれているか否かを判定する。認識部351は、画像内に、コード部25が含まれていると判定した場合、コード部25に対応する3次元オブジェクトデータを取得し、出力処理部352に渡す。また、認識部351は、画像内におけるコード部25の大きさ及び形状に基づき、ウェアラブル装置3に対するコード部25の向き(例えば、3次元の単位ベクトル等)及び距離を算出する。なお、コード部25等の基準表示物の大きさ及び形状に基づいて対象物の向き及び距離を算出する処理として、公知の算出方法(例えば、特開2016-57758号公報)が用いられてもよい。
【0057】
出力処理部352は、認識部351から取得した3次元オブジェクトデータに基づく3次元オブジェクトD1であって、認識部351から取得したコード部25の向き及び距離に基づいて回転させて大きさを変更した3次元オブジェクトD1、3次元オブジェクトD2、及び3次元オブジェクトD3を算出する。図5(a)は、3次元オブジェクトD1、3次元オブジェクトD2、及び3次元オブジェクトD3の一例を示す模式図である。なお、図5(a)には、説明のためコード部25が含まれているが、取得した3次元オブジェクトデータに、コード部25に対応するオブジェクトデータが含まれていなくてもよい。
【0058】
出力処理部352は、認識部351から出力された、人体モデル2に対応する物体の表面の3次元メッシュデータと、特定した3次元オブジェクトD1との位置合わせを断続的に実行しつつ、3次元オブジェクトD2に対応する空中像A1及び3次元オブジェクトD3に対応する空中像A2の表示データ(投影データ)を映像出力部34に渡す。
【0059】
ユーザは、このように作成された表示データ(投影データ)に基づく空中像A1及び空中像A2をハーフミラー部36において視認しつつ、前方の現実世界を見ることができる。図5(b)は、ハーフミラー部36において表示された空中像A1及びA2の一例を示す図である。以降、断続的に認識部351によって実行される、人体モデル2に対応する物体の表面の3次元メッシュデータと特定した3次元オブジェクトD1との位置合わせの結果に応じて、空中像A1及び空中像A2が移動表示及び/又は回転表示される。
【0060】
ユーザは、空中像A1及び空中像A2が表示されたウェアラブル装置3を装着しつつ、硬膜外針Nを人体モデル2に穿刺する訓練を行う。訓練の終了後、訓練担当者は、ユーザによる硬膜外針Nの穿刺後に、穿刺された脊椎モデル24を人体モデル2から取り出して、CT装置を用いてCT画像を取得する。そして、訓練担当者は、情報処理装置を用いて、医学的に適切な、皮膚穿刺点、穿刺角度、及び硬膜外腔穿刺点を満たす硬膜外針Nの像R1と、ユーザによって穿刺された硬膜外針Nの像R2との両者を含む穿刺訓練の結果画像を生成して表示する。
【0061】
図6は、硬膜外針Nの穿刺訓練の結果画像を説明するための図である。図6(a)は、脊椎モデル24の上面を示す図であり、皮膚穿刺点を示す位置が表示される。図6(a)において、「×」の位置が、像R1の皮膚穿刺点を示す位置であり、「〇」の位置が、像R2の皮膚穿刺点を示す位置である。図6(b)は、脊椎モデル24の側面から見た図であり、穿刺角度が表示される。図6(b)において、硬膜外針Nの像R1と硬膜外針Nの像R2とが表示される。図6(c)は、硬膜外腔部243の上側の面を示す図であり、硬膜外腔穿刺点を示す位置が表示される。図6(c)において、「×」の位置が、像R1の硬膜外腔穿刺点を示す位置であり、「〇」の位置が、像R2の硬膜外腔穿刺点を示す位置である。このように、医学的に適切な、皮膚穿刺点、穿刺角度、及び硬膜外腔穿刺点を満たす硬膜外針Nの像R1と、ユーザによって穿刺された硬膜外針Nの像R2とを対比して、ユーザに提示することが可能となる。
【0062】
図7は、硬膜外麻酔訓練方法の動作フローの一例を示す図である。
【0063】
まず、ユーザが、ウェアラブル装置3を装着した後にハーフミラー部36を通して人体モデル2を見た場合、ハーフミラー部36に、空中像A1及び/又は空中像A2が表示される(ステップS101)。
【0064】
次に、ユーザは、空中像A1及び空中像A2が表示されたウェアラブル装置3を装着したまま、硬膜外針Nを人体モデル2に穿刺する1回目の訓練を行う(ステップS102)。1回目の訓練時に、ユーザは、ウェアラブル装置3によって表示された空中像A1及び/又は空中像A2をイメージする。
【0065】
次に、訓練担当者は、ユーザによる硬膜外針Nの1回目の穿刺後に、穿刺された脊椎モデル24を人体モデル2から取り出して、CT装置を用いてCT画像を取得する(ステップS103)。
【0066】
次に、ユーザは、ウェアラブル装置3を装着せずに、硬膜外針Nを人体モデル2に穿刺する2回目の訓練を行う(ステップS104)。
【0067】
次に、訓練担当者は、ユーザによる硬膜外針Nの2回目の穿刺後に、穿刺された脊椎モデル24を人体モデル2から取り出して、CT装置を用いてCT画像を取得する(ステップS105)。
【0068】
そして、訓練担当者は、情報処理装置を用いて、医学的に適切な、皮膚穿刺点、穿刺角度、及び硬膜外腔穿刺点を満たす硬膜外針Nの像R1と、ユーザによって穿刺された硬膜外針Nの像R2との両者を含む穿刺訓練の結果画像を生成して表示し(ステップS105)、硬膜外麻酔訓練方法が終了する。
【0069】
以上、詳述したとおり、本実施形態の硬膜外麻酔支援システム1は、人体モデル2の脊椎に対応する位置に当該脊椎を示す空中像A1が表示されるウェアラブル装置3を有する。このように、硬膜外麻酔支援システム1によって、硬膜外穿刺の対象となる部位を可視化することができ、盲目的な硬膜外穿刺を改善し、硬膜外穿刺の安全性及び迅速性を向上させることが可能となる。
【0070】
(変形例1)
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、硬膜外麻酔支援システム1には、人体モデル2が含まれなくてもよい。この場合、ウェアラブル装置3は、人体モデル2に替えて、患者等の人体の脊椎の少なくとも一部に対応する位置に、当該人体の脊椎の少なくとも一部を示す空中像A1が表示されるように、ハーフミラー部36に空中像A1を投影する。
【0071】
例えば、訓練担当者は、CT装置(図示せず)を用いて、当該人体(患者)のCT画像を取得する。次に、訓練担当者は、3次元オブジェクトデータの生成アプリケーションプログラムが実行可能なPC等の情報処理装置(図示せず)を用いて、人体のCT画像から、人体の表面の形状の少なくとも一部(例えば、胴体部(背中部、腰部、及び臀部)等)を示す3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータ、人体の脊椎の少なくとも一部の形状を示す3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータを生成する。この場合、訓練担当者は、3次元オブジェクトD3の3次元オブジェクトデータを手動操作で生成する。記憶部32は、情報処理装置から取得した、3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータ、3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータ、及び3次元オブジェクトD3の3次元オブジェクトデータを記憶する。
【0072】
記憶部32は、3次元オブジェクトD1の形状と、人体の背面の部位に配置されたシート部材に表示されたコード部25とを互いに関連付けて記憶する。なお、人体にコード部25が表示されたシート部材が設けられない場合では、記憶部32は、3次元オブジェクトD1の形状と、人体の椎体の少なくとも一部の特徴箇所の位置とを互いに関連付けて記憶する。なお、3次元オブジェクトD1の3次元オブジェクトデータは、第1の3次元オブジェクトデータの一例であり、3次元オブジェクトD2の3次元オブジェクトデータは、第2の3次元オブジェクトデータの一例である。また、3次元オブジェクトD1の形状と関連付けられる人体の椎体の少なくとも一部の特徴箇所は、例えば、第7頚椎(隆椎)及び上前腸骨棘等である。
【0073】
人体に、コード部25が表示されたシート部材が配置された場合、認識部351は、環境センサ37からの環境センサデータによって示される画像内におけるコード部25の大きさ及び形状に基づき、ウェアラブル装置3に対するコード部25の向き(例えば、3次元の単位ベクトル等)及び距離を公知の算出方法を用いて算出する。そして、出力処理部352は、認識部351から取得した3次元オブジェクトデータに基づく3次元オブジェクトD1であって、認識部351から取得したコード部25の向き及び距離に基づいて回転させて大きさを変更した3次元オブジェクトD1、3次元オブジェクトD2、及び3次元オブジェクトD3を算出する。
【0074】
人体に、コード部25が表示されたシート部材が配置されない場合、認識部351は、人体の椎体の少なくとも一部の特徴箇所の位置を認識し、当該特徴箇所と人体の胴体部の表面の形状との相対位置とに基づいて、人体の識別を行う。例えば、認識部351は、環境センサ37からの環境センサデータによって示される画像内に、人体の椎体の少なくとも一部の特徴箇所が含まれているか否かを判定する。なお、環境センサ37は、画像取得部の一例である。認識部351は、画像内に、人体の椎体の少なくとも一部の特徴箇所が含まれていると判定した場合、当該特徴箇所の位置に関連付けられた3次元オブジェクトD1を取得し、出力処理部352に渡す。また、認識部351は、椎体の少なくとも一部の特徴箇所の画像内での位置に基づき、ウェアラブル装置3に対する当該特徴箇所の向き(例えば、3次元の単位ベクトル等)及び距離を公知の算出方法を用いて算出する。出力処理部352は、認識部351から取得した3次元オブジェクトデータに基づく3次元オブジェクトD1であって、認識部351から取得した特徴箇所の向き及び距離に基づいて回転させて大きさを変更した3次元オブジェクトD1、3次元オブジェクトD2、及び3次元オブジェクトD3を算出する。
【0075】
以降、出力処理部352は、認識部351から出力された、人体モデル2に対応する物体の表面の3次元メッシュデータと3次元オブジェクトD1との位置合わせを断続的に実行しつつ、3次元オブジェクトD2に対応する空中像A1及び/又は3次元オブジェクトD3に対応する空中像A2の表示データ(投影データ)を映像出力部34に渡す。このように、硬膜外麻酔支援システム1及びウェアラブル装置3は、人体の脊椎に対応する空中像A1及び/又は空中像A2を当該人体に重畳表示でき、ユーザに対して、当該人体の脊椎の形状等の理解を促すとともに、ウェアラブル装置3によって表示された空中像A1及び/又は空中像A2をイメージさせることを可能とする。そして、ユーザは、空中像A1及び/又は空中像A2のイメージ後にウェアラブル装置3を外し、通常通りの硬膜外麻酔を施行することができる。
【0076】
また、変形例1において、人体(患者)が腰部の表面を変形する行動(「腰をひねる」、「腰を曲げる」等)を行った場合、当該人体の腰部表面の変更に応じて、対応する脊椎の3次元オブジェクトD2を変形させてもよい。例えば、3次元オブジェクトD2の複数の点と、各点の直近の3次元オブジェクトD1の位置とを関連付け、出力処理部352は、人体の腰部の変形に同期させて3次元オブジェクトD1を変形し、3次元オブジェクトD1の変形に追従するように、対応する3次元オブジェクトD2の複数の点を移動させ、これにより脊椎に対応する空中像A1を変形させてもよい。
【0077】
(変形例2)
図7に示される硬膜外麻酔訓練方法のステップS104において、ユーザは、空中像A1及び空中像A2が表示されたウェアラブル装置3を装着したまま、硬膜外針Nを人体モデル2に穿刺する2回目の訓練を行ってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 硬膜外麻酔支援システム
2 人体モデル
21 本体部
22 皮膚部
23 収容部
24 脊椎モデル
241 棘突起部
242 透過部
243 硬膜外腔部
25 コード部
3 ウェアラブル装置
31 通信I/F
32 記憶部
33 センサ取得部
34 映像出力部
35 処理部
351 認識部
352 出力処理部
36 ハーフミラー部
37 環境センサ
38 深度センサ
N 硬膜外針
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7