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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000658
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20231226BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20231226BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231226BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20231226BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20231226BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20231226BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G01N21/956 A
G01N21/88 H
G02B7/02 E
G02B7/02 Z
G03B15/00 T
G03B15/02 R
G03B15/05
G03B11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099472
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】武久 究
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 治彦
【テーマコード(参考)】
2G051
2H044
2H053
2H083
【Fターム(参考)】
2G051AA56
2G051AB02
2G051BA11
2G051CA04
2G051CB01
2H044AC04
2H044AE06
2H044AJ07
2H053CA45
2H053DA04
2H083AA06
2H083AA26
(57)【要約】
【課題】気圧の変化による収差の増大を抑制することができる検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る検査装置1は、試料80を照明する照明光L10を集光するとともに、試料80で反射した反射光R10を透過させる対物レンズ部30と、対物レンズ部30を透過した反射光R10を検出する検出部50と、対物レンズ部30に供給するパージガス36を生成するパージガス生成部70と、を備え、対物レンズ部30は、複数のレンズ32と、レンズ32とレンズ32との間にパージガス36を供給する供給路35と、を有し、パージガス生成部70は、第1のガス74aの流量を調整する第1の調整部72aと、パージガス36の屈折率を小さくする第2のガス74bの流量を調整する第2の調整部72bと、パージガス36の屈折率を大きくする第3のガス74cの流量を調整する第3の調整部72cと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を照明する照明光を集光するとともに、前記試料で反射した反射光を透過させる対物レンズ部と、
前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出する検出部と、
前記対物レンズ部に供給するパージガスを生成するパージガス生成部と、
を備え、
前記対物レンズ部は、
複数のレンズと、
前記レンズと前記レンズとの間に前記パージガスを供給する供給路と、
を有し、
前記パージガス生成部は、
前記パージガスに含まれる第1のガスの流量を調整する第1の調整部と、
前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を小さくする第2のガスの流量を調整する第2の調整部と、
前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を大きくする第3のガスの流量を調整する第3の調整部と、
を有する、
検査装置。
【請求項2】
前記対物レンズ部の近傍の気圧を検出する気圧センサをさらに備え、
前記パージガス生成部は、前記気圧センサが検出した前記気圧に基づいて、前記第1の調整部、前記第2の調整部及び前記第3の調整部を制御する制御部をさらに有し、
前記制御部は、
前記気圧が所定の気圧よりも高い場合に、前記第1のガス及び前記第2のガスを含む前記パージガスを生成し、
前記気圧が所定の気圧よりも低い場合に、前記第1のガス及び前記第3のガスを含む前記パージガスを生成する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1のガスは、窒素を含み、
前記第2のガスは、アルゴン及びヘリウムの少なくともいずれかを含み、
前記第3のガスは、二酸化炭素及び六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含む、
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記対物レンズ部は、前記パージガスを供給される供給口及び前記パージガスを排出する排出口をさらに有し、
前記排出口は、前記パージガスを、前記試料と試料上の前記レンズとの間に排出する、
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項5】
第1の直線偏光を含む前記照明光を前記対物レンズ部に向かうように反射するとともに、第2の直線偏光を含む前記反射光を透過させる偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタと前記対物レンズ部との間に配置されたλ/4波長板と、
をさらに備え、
前記λ/4波長板は、前記第1の直線偏光を含む前記照明光を第1の円偏光を含む前記照明光に変換し、
前記対物レンズ部は、前記第1の円偏光を含む前記照明光を前記試料に集光し、
前記第1の円偏光を含む前記照明光は、前記試料で反射することにより、第2の円偏光を含む前記反射光になり、
前記対物レンズ部は、前記第2の円偏光を含む前記反射光を透過させ、
前記λ/4波長板は、前記第2の円偏光を含む前記反射光を第2の直線偏光を含む前記反射光に変換し、
前記検出部は、前記λ/4波長板及び前記偏光ビームスプリッタを介して、前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出し、
前記気圧センサは、前記λ/4波長板と前記試料との間における前記対物レンズ部の近傍の前記気圧を検出する、
請求項2に記載の検査装置。
【請求項6】
パージガスを生成するステップと、
複数のレンズ及びレンズ間に前記パージガスを供給する供給路を有する対物レンズ部に前記パージガスを供給するステップと、
前記対物レンズ部によって照明光を試料に集光するとともに、前記試料で反射した反射光を前記対物レンズ部に対して透過させるステップと、
前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出するステップと、
を備え、
前記パージガスを生成するステップにおいて、
前記パージガスに含まれる第1のガスの流量、前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を小さくする第2のガスの流量、及び、前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を大きくする第3のガスの流量を調整することにより、前記パージガスを生成する、
検査方法。
【請求項7】
前記パージガスを生成するステップにおいて、
前記対物レンズ部の近傍の気圧を検出する気圧センサが検出した前記気圧に基づいて、前記第1のガスの流量、前記第2のガスの流量、及び、前記第3のガスの流量を調整する際に、
前記気圧が所定の気圧よりも高い場合に、前記第1のガス及び前記第2のガスを含む前記パージガスを生成し、
前記気圧が所定の気圧よりも低い場合に、前記第1のガス及び前記第3のガスを含む前記パージガスを生成する、
請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記パージガスを生成するステップにおいて、
前記第1のガスは、窒素を含み、
前記第2のガスは、アルゴン及びヘリウムの少なくともいずれかを含み、
前記第3のガスは、炭酸ガス及び六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含む、
請求項6または7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記パージガスを供給するステップにおいて、
前記対物レンズ部は、前記パージガスを供給される供給口及び前記パージガスを排出する排出口を有し、
前記排出口は、前記パージガスを、前記試料と試料上の前記レンズとの間に排出する、
請求項6または7に記載の検査方法。
【請求項10】
前記対物レンズ部に対して透過させるステップにおいて、
第1の直線偏光を含む前記照明光は、偏光ビームスプリッタによって前記対物レンズ部に向かうように反射し、
前記第1の直線偏光を含む前記照明光は、λ/4波長板によって第1の円偏光を含む前記照明光に変換され、
前記第1の円偏光を含む前記照明光は、前記対物レンズ部によって、前記試料に集光され、
前記試料に集光した前記照明光は、前記試料で反射することにより、第2の円偏光を含む前記反射光になり、
前記第2の前記円偏光を含む前記反射光は、前記対物レンズ部を透過し、
前記対物レンズ部を透過した前記反射光は、前記λ/4波長板によって第2の直線偏光を含む前記反射光に変換され、
前記第2の直線偏光を含む前記反射光は、前記偏光ビームスプリッタを透過し、
前記反射光を検出するステップにおいて、
前記λ/4波長板及び前記偏光ビームスプリッタを介して、前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出し、
前記パージガスを生成するステップにおいて、
前記気圧センサは、前記λ/4波長板と前記試料との間における前記対物レンズ部の近傍の前記気圧を検出する、
請求項7に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体製造工程で利用されるフォトマスク(以下、単にマスクと呼ぶ。)における欠陥を検出するためのマスクの検査装置及び検査方法に関する。本開示の検査装置及び検査方法は、例えば、回路パターンが形成されたマスクを検査対象とする。このようなマスクを、パターンを付ける前のブランクスと区別して、パターン付きマスクと呼ばれることがある。
【背景技術】
【0002】
一般に、マスクの欠陥を検査する検査装置では、検査対象であるマスクのパターン面を拡大して、CCDカメラやTDIカメラ等の二次元画像センサでパターン面を観察している。パターン面を拡大するためには、マスクの近傍に配置した対物レンズと、リレーレンズとで構成される拡大光学系が用いられる。つまり、この拡大光学系によって、パターン面の観察領域が二次元画像センサに拡大投影される。
【0003】
一方、半導体製造工程の進歩による微細化と共に、許容できない欠陥サイズが年々小さくなっている。よって、欠陥検出感度を高めるために、対物レンズの開口数(NA:Numerical Aperture)を高める必要がある。理由としては、式(1)に示したように、解像性能を示す解像限界値Rは、NAに反比例するからである。なお、式(1)におけるλは波長を示す。
【0004】
R=0.25・λ/NA (1)
【0005】
実際のマスクの検査装置では、0.8程度のNAの対物レンズが広く利用されている。これまでのマスクの検査装置に関しては、例えば、下記非特許文献1及び2に具体的な構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-110538号公報
【特許文献2】特開2005-317626号公報
【特許文献3】特開2006-080535号公報
【特許文献4】特開平06-208056号公報
【特許文献5】特開平11-067651号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】佐久間純「半導体検査装置用DUV光源開発の進展」レーザー研究、第41巻第9号第697-702頁、2013年
【非特許文献2】William Broadbent, Gregg Inderhees, Tetsuya Yamamoto, Isaac Lee and Phillip Lim, "EUV Reticle Inspection with a 193nm Reticle Inspector", Proc. of SPIE Vol. 8701 87010W-1-11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マスク検査装置の欠陥検出能力、すなわち、感度を高めるためには、対物レンズの高NA化が有効である。しかしながら、特に、NAが0.8を超すような高NA対物レンズを用いると、対物レンズの温度変化や周辺の気圧の変化によって、レンズの収差の増大が問題になってくる。温度変化に対しては、検査装置が設置される周囲の温度(設置場所の空気の温度)を一定にすることは技術的に容易である。しかし、周囲の気圧の変化の影響を受けないようにするのは困難である。理由としては、例えば、装置全体を気密容器で覆うような大規模な改造が必要になるだけでなく、マスクの出し入れや、メンテナンス時の装置内へのアクセスが不便になるからである。
【0009】
ところで、対物レンズの内部を清浄化するために用いられるパージガスには、窒素ガスが一般的に用いられている。対物レンズ内のパージガスの気圧は、周囲の気圧とほぼ等しいため、図4に示したように、気圧が変化すると屈折率が変化する。すなわち、気圧が高くなるほど屈折率が高くなり、気圧が低くなるほど屈折率が低くなる。このような対物レンズ内部に満たされる気体の屈折率の変化が、レンズの収差を特に増大させる要因になっている。
【0010】
本開示の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、高NA対物レンズを搭載したマスク等の検査装置において、装置が配置された環境の気圧を一定にすることなく、気圧の変化による収差の増大を抑制することができる検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る検査装置は、試料を照明する照明光を集光するとともに、前記試料で反射した反射光を透過させる対物レンズ部と、前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出する検出部と、前記対物レンズ部に供給するパージガスを生成するパージガス生成部と、を備え、前記対物レンズ部は、複数のレンズと、前記レンズと前記レンズとの間に前記パージガスを供給する供給路と、を有し、前記パージガス生成部は、前記パージガスに含まれる第1のガスの流量を調整する第1の調整部と、前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を小さくする第2のガスの流量を調整する第2の調整部と、前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を大きくする第3のガスの流量を調整する第3の調整部と、を有する。
【0012】
上記検査装置では、前記対物レンズ部の近傍の気圧を検出する気圧センサをさらに備え、前記パージガス生成部は、前記気圧センサが検出した前記気圧に基づいて、前記第1の調整部、前記第2の調整部及び前記第3の調整部を制御する制御部をさらに有し、前記制御部は、前記気圧が所定の気圧よりも高い場合に、前記第1のガス及び前記第2のガスを含む前記パージガスを生成し、前記気圧が所定の気圧よりも低い場合に、前記第1のガス及び前記第3のガスを含む前記パージガスを生成してもよい。
【0013】
上記検査装置では、前記第1のガスは、窒素を含み、前記第2のガスは、アルゴン及びヘリウムの少なくともいずれかを含み、前記第3のガスは、二酸化炭素及び六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0014】
上記検査装置では、前記対物レンズ部は、前記パージガスを供給される供給口及び前記パージガスを排出する排出口をさらに有し、前記排出口は、前記パージガスを、前記試料と前記試料上の前記レンズとの間に排出してもよい。
【0015】
上記検査装置では、第1の直線偏光を含む前記照明光を前記対物レンズ部に向かうように反射するとともに、第2の直線偏光を含む前記反射光を透過させる偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタと前記対物レンズ部との間に配置されたλ/4波長板と、をさらに備え、前記λ/4波長板は、前記第1の直線偏光を含む前記照明光を第1の円偏光を含む前記照明光に変換し、前記対物レンズ部は、前記第1の円偏光を含む前記照明光を前記試料に集光し、前記第1の円偏光を含む前記照明光は、前記試料で反射することにより、第2の円偏光を含む前記反射光になり、前記対物レンズ部は、前記第2の円偏光を含む前記反射光を透過させ、前記λ/4波長板は、前記第2の円偏光を含む前記反射光を第2の直線偏光を含む前記反射光に変換し、前記検出部は、前記λ/4波長板及び前記偏光ビームスプリッタを介して、前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出し、前記気圧センサは、前記λ/4波長板と前記試料との間における前記対物レンズ部の近傍の前記気圧を検出してもよい。
【0016】
本開示に係る検査方法は、パージガスを生成するステップと、複数のレンズ及びレンズ間に前記パージガスを供給する供給路を有する対物レンズ部に前記パージガスを供給するステップと、前記対物レンズ部によって照明光を試料に集光するとともに、前記試料で反射した反射光を前記対物レンズ部に対して透過させるステップと、前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出するステップと、を備え、前記パージガスを生成するステップにおいて、前記パージガスに含まれる第1のガスの流量、前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を小さくする第2のガスの流量、及び、前記パージガスに混合させることにより前記パージガスの屈折率を大きくする第3のガスの流量を調整することにより、前記パージガスを生成する。
【0017】
上記検査方法では、前記パージガスを生成するステップにおいて、前記対物レンズ部の近傍の気圧を検出する気圧センサが検出した前記気圧に基づいて、前記第1のガスの流量、前記第2のガスの流量、及び、前記第3のガスの流量を調整する際に、前記気圧が所定の気圧よりも高い場合に、前記第1のガス及び前記第2のガスを含む前記パージガスを生成し、前記気圧が所定の気圧よりも低い場合に、前記第1のガス及び前記第3のガスを含む前記パージガスを生成してもよい。
【0018】
上記検査方法では、前記パージガスを生成するステップにおいて、前記第1のガスは、窒素を含み、前記第2のガスは、アルゴン及びヘリウムの少なくともいずれかを含み、前記第3のガスは、炭酸ガス及び六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0019】
上記検査方法では、前記パージガスを供給するステップにおいて、前記対物レンズ部は、前記パージガスを供給される供給口及び前記パージガスを排出する排出口を有し、前記排出口は、前記パージガスを、前記試料と前記試料上の前記レンズとの間に排出してもよい。
【0020】
上記検査方法では、前記対物レンズ部に対して透過させるステップにおいて、第1の直線偏光を含む前記照明光は、偏光ビームスプリッタによって前記対物レンズ部に向かうように反射し、前記第1の直線偏光を含む前記照明光は、λ/4波長板によって第1の円偏光を含む前記照明光に変換され、前記第1の円偏光を含む前記照明光は、前記対物レンズ部によって、前記試料に集光され、前記試料に集光した前記照明光は、前記試料で反射することにより、第2の円偏光を含む前記反射光になり、前記第2の前記円偏光を含む前記反射光は、前記対物レンズ部を透過し、前記対物レンズ部を透過した前記反射光は、前記λ/4波長板によって第2の直線偏光を含む前記反射光に変換され、前記第2の直線偏光を含む前記反射光は、前記偏光ビームスプリッタを透過し、前記反射光を検出するステップにおいて、前記λ/4波長板及び前記偏光ビームスプリッタを介して、前記対物レンズ部を透過した前記反射光を検出し、前記パージガスを生成するステップにおいて、前記気圧センサは、前記λ/4波長板と前記試料との間における前記対物レンズ部の近傍の前記気圧を検出してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、気圧の変化による収差の増大を抑制することができる検査装置及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係る検査装置を例示した構成図である。
図2】実施形態1に係る対物レンズ部の構成を例示した断面図である。
図3】実施形態1に係るパージガス生成部を例示した構成図である。
図4】実施形態1に係る窒素ガスの屈折率の圧力依存性を例示したグラフであり、横軸は、気圧を示し、縦軸は、屈折率を示す。
図5】実施形態1に係るアルゴン及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおけるアルゴンの混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。
図6】実施形態1に係る二酸化炭素及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおける二酸化炭素の混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。
図7】実施形態1に係るヘリウム及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおけるヘリウムの混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。
図8】実施形態1に係る六フッ化硫黄及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおける六フッ化硫黄の混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。
図9】実施形態1に係る各種のガスの屈折率を例示した図である。
図10】実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本開示の好適な実施の形態を示すものであって、本開示の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0024】
(実施形態1)
実施形態1に係る検査装置を説明する。本実施形態の検査装置は、例えば、半導体製造工程で用いられるマスクの検査装置である。まず、検査装置の構成を説明する。図1は、実施形態1に係る検査装置を例示した構成図である。図1に示すように、検査装置1は、偏光ビームスプリッタ10、λ/4波長板20、対物レンズ部30、リレーレンズ40、検出部50、気圧センサ60及びパージガス生成部70を備えている。検査装置1は、これ以外の光学部材等を含んでもよい。検査装置1は、パターンが形成されたマスク等の試料80を検査する。ここで、検査装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。試料80の検査面をXY面とし、試料80の検査面に直交する方向をZ軸方向とする。
【0025】
光源LSから生成された照明光L10は、偏光ビームスプリッタ10に入射する。照明光L10は、直線偏光を含んでもよい。例えば、照明光L10は、S偏光を含んでもよい。S偏光を含む照明光L10は、偏光ビームスプリッタ10によって反射する。このように、偏光ビームスプリッタ10は、S偏光を含む照明光L10を対物レンズ部30に向かうように反射する。S偏光を第1の直線偏光と呼ぶ場合がある。対物レンズ部30に向かうように反射した照明光L10は、λ/4波長板20を通過する。
【0026】
λ/4波長板20は、偏光ビームスプリッタ10と対物レンズ部30との間に配置されている。λ/4波長板20は、S偏光を含む照明光L10を右回りの円偏光を含む照明光L10に変換する。右回りの円偏光を、第1の円偏光と呼ぶ場合がある。
【0027】
対物レンズ部30は、右回りの円偏光を含む照明光L10を試料80に集光する。照明光L10は、例えば、試料80におけるマスクのパターン面を照明する。右回りの円偏光を含む照明光L10は、試料80で反射することにより、左回りの円偏光を含む反射光R10になる。左回りの円偏光を、第2の円偏光と呼ぶ場合がある。
【0028】
対物レンズ部30は、試料80で反射された左回りの円偏光を含む反射光R10を透過させる。このように、対物レンズ部30は、試料80を照明する照明光L10を集光するとともに、試料80で反射した反射光R10を透過させる。対物レンズ部30を透過した反射光R10は、λ/4波長板20を通過する。
【0029】
λ/4波長板20は、左回りの円偏光を含む反射光R10を、P偏光を含む反射光R10に変換する。P偏光の直線偏光を、第2の直線偏光と呼ぶ場合がある。P偏光を含む反射光R10は、偏光ビームスプリッタ10に入射する。偏光ビームスプリッタ10は、P偏光を含む反射光R10を透過させる。
【0030】
なお、S偏光を第1の直線偏光、P偏光を第2の直線偏光、右回りの円偏光を第1の円偏光、左回りの円偏光を第2の円偏光としたが、これに限らず、S偏光を第2の直線偏光、P偏光を第1の直線偏光、右回りの円偏光を第2の円偏光、左回りの円偏光を第1の円偏光としてもよい。
【0031】
偏光ビームスプリッタ10を透過した反射光R10は、リレーレンズ40で集光され、画像センサ等の検出部50で検出される。このように、検出部50は、対物レンズ部30を透過した反射光R10を検出する。具体的には、検出部50は、λ/4波長板20及び偏光ビームスプリッタ10を介して、対物レンズ部30を透過した反射光R10を検出する。検出部50は、例えば、TDIを用いたカメラでもよい。
【0032】
気圧センサ60は、検査装置1内の気圧を検出する。具体的には、気圧センサ60は、対物レンズ部30の近傍の気圧を検出する。例えば、気圧センサ60は、λ/4波長板20と試料80との間における対物レンズ部30の近傍の気圧を検出してもよい。気圧センサ60は、検出した気圧情報をパージガス生成部70に出力する。
【0033】
次に、対物レンズ部30の構成を説明する。図2は、実施形態1に係る対物レンズ部30の構成を例示した断面図である。図2に示すように、対物レンズ部30は、筐体31、複数のレンズ32、供給口33、排出口34及び供給路35を有している。筐体31は、例えば、円筒等の筒状である。筐体31の+Z軸方向における端部は、レンズ32で密閉されている。筐体31の-Z軸方向における端部は、排出口34を除いてレンズ32で密閉されている。複数のレンズ32は、例えば、光軸を合わせて、光軸方向に間隔を空けて配置されている。供給路35は、レンズ32とレンズ32との間に形成されている。これにより、供給路35は、レンズ32とレンズ32との間にパージガス36を供給する。
【0034】
供給口33は、筐体31の上部に設けられている。供給口33は、パージガス36を供給される。よって、パージガス36は、供給口33から筐体31の内部に供給される。筐体31の内部に供給されたパージガス36は、レンズ32間の供給路35を通りながら上方から下方へ流れる。このように、対物レンズ部30は、複数のレンズ32と、レンズ32とレンズ32との間にパージガス36を供給する供給路35と、を有している。なお、隣接するレンズ32とレンズ32との間のパージガス36が、次のレンズ32とレンズ32との間に進むことができるようにするために、各レンズ32を保持している筐体31の内側面の一部には図示しない隙間が設けられており、これによって、供給路35は空間的につながっている。
【0035】
排出口34は、筐体31の下部に設けられている。排出口34は、パージガス36を排出する。よって、筐体31の内部を流れたパージガス36は、排出口34から筐体31の外部へ排出される。排出口34は、試料80の検査面に向いている。例えば、排出口34は、試料80におけるマスクのパターン面に向いている。排出口34は、パージガス36を試料80と試料80上のレンズ32との間に排出する。よって、排出口34から排出されたパージガス36は、試料80の検査面を流れる。
【0036】
パージガス生成部70は、対物レンズ部30に供給するパージガス36を生成する。図3は、実施形態1に係るパージガス生成部70を例示した構成図である。図3に示すように、パージガス生成部70は、混合容器71、複数の調整部72a~72c、及び、制御部73を有している。複数の調整部72a~72cは、例えば、第1の調整部72a、第2の調整部72b及び第3の調整部72cを含んでいる。なお、複数の調整部72a~72cは、4個以上の調整部を含んでもよい。
【0037】
混合容器71と供給口33とは、ガス配管によって接続されている。混合容器71と、第1の調整部72a、第2の調整部72b及び第3の調整部72cとは、それぞれガス配管によって接続されている。第1の調整部72a、第2の調整部72b及び第3の調整部72cは、それぞれ、ガス配管を介して、第1のガス74a、第2のガス74b及び第3のガス74cを供給されている。各調整部72a~72cは、各ガス74a~74cの流量を調整する。また、各調整部72a~72cは、各ガス74a~74cの流量を測定する質量流量計を備えてもよい。混合容器71は、各調整部72a~72cが流量を調整した各ガス74a~74cを混合させてパージガス36を生成する。そして、混合容器71は、パージガス36を供給口33に供給する。
【0038】
制御部73は、気圧センサ60及び各調整部72a~72cに有線または無線の信号回線を介して情報伝達可能な状態に接続されている。制御部73は、気圧センサ60から気圧データを受信する。制御部73は、気圧センサ60が検出した気圧に基づいて、第1の調整部72a、第2の調整部72b及び第3の調整部72cを制御する。
【0039】
図4は、実施形態1に係る窒素ガスの屈折率の圧力依存性を例示したグラフであり、横軸は、気圧を示し、縦軸は、屈折率を示す。図4に示すように、窒素ガスの屈折率は、図に示す範囲において、気圧が大きくなるにつれて大きくなる。1気圧の場合の窒素ガスの屈折率は、略1.000344である。
【0040】
図5は、実施形態1に係るアルゴン及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおけるアルゴンの混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。図5に示すように、アルゴンの混合比が0、すなわち、窒素ガスの場合には、屈折率は、略1.000344である。アルゴンの混合比が大きくなるにつれて、混合ガスの屈折率は小さくなる。
【0041】
図6は、実施形態1に係る二酸化炭素及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおける二酸化炭素の混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。図6に示すように、二酸化炭素の混合比が0、すなわち、窒素ガスの場合には、屈折率は、略1.000344である。二酸化炭素の混合比が大きくなるにつれて、混合ガスの屈折率は大きくなる。
【0042】
図7は、実施形態1に係るヘリウム及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおけるヘリウムの混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。図7に示すように、ヘリウムの混合比が0、すなわち、窒素ガスの場合には、屈折率は、略1.000344である。ヘリウムの混合比が大きくなるにつれて、混合ガスの屈折率は小さくなる。
【0043】
図8は、実施形態1に係る六フッ化硫黄及び窒素ガスの混合ガスの屈折率を例示したグラフであり、横軸は、混合ガスにおける六フッ化硫黄の混合比を示し、縦軸は、屈折率を示す。図8に示すように、六フッ化硫黄の混合比が0、すなわち、窒素ガスの場合には、屈折率は、略1.000344である。六フッ化硫黄の混合比が大きくなるにつれて、混合ガスの屈折率は大きくなる。
【0044】
図9は、実施形態1に係る各種のガスの屈折率を例示した図である。図9に示すように、ガス種が窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、ヘリウム、六フッ化硫黄、クリプトン及びキセノンにおける波長589nmの光の屈折率は、それぞれ、1.000298、1.000271、1,000281、1.000449、1.0000344、1.000729、1.0004275及び1.0006894である。
【0045】
第1のガス74aは、例えば、窒素ガスを含む。第1の調整部72aは、パージガス36に含まれる第1のガス74aの流量を調整する。第2のガス74bは、例えば、アルゴンを含む。第2のガス74bは、パージガス36に混合させることによりパージガス36の屈折率を小さくする。第2の調整部72bは、パージガス36に含まれる第2のガス74bの流量を調整する。第3のガス74cは、例えば、二酸化炭素を含む。第3のガス74cは、パージガス36に混合させることによりパージガス36の屈折率を大きくする。第3の調整部72cは、パージガス36に含まれる第3のガス74cの流量を調整する。
【0046】
制御部73は、気圧センサ60が検出した気圧が所定の気圧よりも高い場合に、第1のガス74a及び第2のガス74bを含むパージガス36を生成する。第1のガス74aは、例えば、窒素ガスであり、第2のガス74bは、例えば、アルゴンである。なお、第2のガス74bは、ヘリウムでもよい。すなわち、第2のガス74bは、アルゴン及びヘリウムの少なくともいずれかを含んでもよい。所定の気圧は、例えば、1気圧である。
【0047】
制御部73は、気圧センサ60が検出した気圧が所定の気圧よりも低い場合に、第1のガス74a及び第3のガス74cを含むパージガス36を生成する。第1のガス74aは、例えば、窒素ガスであり、第3のガス74cは、例えば、二酸化炭素である。なお、第3のガス74cは、六フッ化硫黄でもよい。すなわち、第3のガス74cは、炭酸ガス及び六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含んでもよい。また、第3のガス74cは、クリプトン及びキセノンの少なくともいずれかを含んでもよい。
【0048】
次に、本実施形態の検査方法を説明する。図10は、実施形態1に係る検査方法を例示したフローチャート図である。図10のステップS11に示すように、パージガス36を生成する。具体的には、パージガス36を生成するステップS11において、パージガス36に含まれる第1のガス74aの流量、第2のガス74bの流量、及び、第3のガス74cの流量を調整することにより、パージガス36を生成する。第2のガス74bは、パージガス36に混合させることにより、パージガス36の屈折率を小さくする。第3のガス74cは、パージガス36に混合させることにより、パージガス36の屈折率を大きくする。
【0049】
例えば、パージガス36を生成するステップS11において、対物レンズ部30の近傍の気圧を検出する気圧センサ60が検出した気圧に基づいて、第1のガス74aの流量、第2のガス74bの流量、及び、第3のガス74cの流量を調整してもよい。この際に、気圧が所定の気圧よりも高い場合に、第1のガス74a及び第2のガス74bを含むパージガス36を生成してもよい。一方、気圧が所定の気圧よりも低い場合に、第1のガス74a及び第3のガス74cを含むパージガス36を生成してもよい。
【0050】
ここで、第1のガス74aは、窒素を含み、第2のガス74bは、アルゴン及びヘリウムの少なくともいずれかを含み、第3のガス74cは、炭酸ガス及び六フッ化硫黄の少なくともいずれかを含んでもよい。また、気圧センサ60は、λ/4波長板20と試料80との間における対物レンズ部30の近傍の気圧を検出する。
【0051】
次に、ステップS12に示すように、対物レンズ部30にパージガス36を供給する。例えば、対物レンズ部30は、複数のレンズ32及びレンズ32間にパージガス36を供給する供給路35を有する。よって、供給路35を介してレンズ32間にパージガス36を供給する。パージガス36を供給するステップS12において、対物レンズ部30は、パージガス36を供給される供給口33及びパージガス36を排出する排出口34を有してもよい。また、排出口34は、パージガス36を試料80と試料80上のレンズ32との間に排出してもよい。
【0052】
次に、ステップS13に示すように、対物レンズ部30によって照明光L10を試料80に集光するとともに、試料80で反射した反射光R10を対物レンズ部30に対して透過させる。ステップS13において、S偏光を含む照明光L10は、偏光ビームスプリッタ10によって対物レンズ部30に向かうように反射する。そして、S偏光を含む照明光L10は、λ/4波長板20によって右回りの円偏光を含む照明光L10に変換される。
【0053】
右回りの円偏光を含む照明光L10は、対物レンズ部30によって試料80に集光される。試料80に集光した照明光L10は、試料80で反射することにより、左回りの円偏光を含む反射光R10になる。左回りの円偏光を含む反射光R10は、対物レンズ部30を透過する。対物レンズ部30を透過した反射光R10は、λ/4波長板20によってP偏光を含む反射光R10に変換される。P偏光を含むR10反射光は、偏光ビームスプリッタ10を透過する。
【0054】
次に、ステップS14に示すように、対物レンズ部30を透過した反射光R10を検出する。具体的には、反射光R10を検出するステップにおいて、λ/4波長板20及び偏光ビームスプリッタ10を介して、対物レンズ部30を透過したR10反射光を検出する。このようにして、試料80を検査する。
【0055】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、気圧センサ60が検出した気圧が所定の気圧(例えば、1気圧)よりも高い場合には、パージガス36の屈折率を小さくするために、例えば、アルゴンガスを窒素ガスに加えた混合ガスをパージガス36として対物レンズ部30に供給する。その結果、図5に示したように、アルゴンガスの混合比率に比例して、パージガス36の屈折率が小さくなる。これにより、窒素ガスのみのパージガス36の場合に、気圧の上昇で屈折率が大きくなることと相殺されて、一定の屈折率に保つことができる。
【0056】
一方、気圧センサ60が検出した気圧が所定の気圧(例えば、1気圧)よりも低い場合には、パージガス36の屈折率を大きくするために、例えば、二酸化炭素ガスを窒素ガスに加えた混合ガスをパージガス36として対物レンズ部30に供給する。その結果、図6に示したように、二酸化炭素ガスの混合比率に比例して、パージガス36の屈折率が大きくなる。これにより、窒素ガスのみのパージガス36の場合に、気圧の低下で屈折率が小さくなることと相殺されて、一定の屈折率に保つことができる。
【0057】
このように、本実施形態の検査装置1は、高NAの対物レンズ部30を搭載し、マスク等の検査において、装置が配置された環境の気圧を一定にすることなく、気圧の変化による収差の増大を抑制することができる。
【0058】
また、図7に示したように、パージガス36の屈折率を小さくするガスとして、ヘリウムを用いると、混合比が小さくても、所望の屈折率を得ることができる。さらに、図8に示すように、パージガス36の屈折率を大きくするガスとして、六フッ化硫黄を用いると、混合比が小さくても、所望の屈折率を得ることができる。
【0059】
なお、パージガスの屈折率を小さくするガスとして、人体に無害で無臭のものには、酸素も該当する。しかしながら、酸素は、紫外光の吸収によって、検査装置に有害なオゾンを発生させる。このため、酸素をパージガスに含めることは適さない。一方、パージガスの屈折率を大きくするガスとして、人体に無害で無臭のものには、キセノンやクリプトンも該当するが、これらは高価であることから、ランニングコストの点で好ましくない。
【0060】
本実施形態によれば、対物レンズ部30等の装置内において、気圧の変化があっても、対物レンズ部30内のパージガス36の屈折率を一定にすることができる。これにより、パージガス36の流路を周囲空間から分離して、パージガス36を一定の圧力(すなわち一定の屈折率)に保てる気密構造にする必要がない。したがって、検査装置1を構造的に簡素化することができる。
【0061】
これに対して、例えば、露光装置の縮小投影光学系では、収差を抑制するために、光学系内の空間に一定の圧力でガスが満たされるように、光学系内を気密構造にする必要がある。よって、そのような露光装置は、構造的に複雑になっている。なお、露光装置の縮小投影光学系のパージ機構に関しては、例えば、特許文献1~5に示されている。
【0062】
本実施形態の検査装置1は、気密構造にする必要がないため、対物レンズ部30内に注入したパージガス36を、マスク等の試料80上の空間に排出することができる。このため、対物レンズ部30と試料80との間を、空気を含まないパージガス36で満たすことができる。気密構造としない構成では、空気に含まれる酸素が紫外光の照射によってオゾンを発生することがある。しかしながら、本実施形態では、対物レンズ部30と試料80との間の空間にパージガス36を排出するため、オゾンの発生を抑制することができる。よって、オゾンによるレンズ32表面のコーティングの劣化等を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態の照明光L10及び反射光R10は、直線偏光及び円偏光を含む。λ/4波長板20は、S偏光を右回りの円偏光に変換し、左回りの円偏光をP偏光に変換する。偏光ビームスプリッタ10は、S偏光を反射し、P偏光を透過させる。よって、偏光ビームスプリッタ10は、ハーフミラーと異なり、反射した照明光L10と同量の反射光R10を透過させる。このような構成の場合には、検出部50で検出される反射光R10の光量が大きいので、仮に屈折率に変化がある場合には屈折率の変化の影響が大きい。しかしながら、本実施形態の検査装置1は、屈折率の変化を抑制するので、検出部50の検出精度を向上させることができる。
【0064】
また、様々な偏光状態が混在した無偏光の照明光を用いると、屈折率の変化が平均化される。一方、直線偏光及び円偏光は、屈折率の変化が平均化されないので、影響が大きくなる。本実施形態では、例えば、λ/4波長板20と試料80との間の気圧に基づいて、パージガス36の屈折率を調整している。これにより、円偏光の照明光L10及び反射光R10が通過する部分の屈折率の変化を抑制することができ、気圧の変化による収差の増大を抑制することができる。
【0065】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。また、実施形態1における各構成は、適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 検査装置
10 偏光ビームスプリッタ
20 λ/4波長板
30 対物レンズ部
31 筐体
32 レンズ
33 供給口
34 排出口
35 供給路
36 パージガス
40 リレーレンズ
50 検出部
60 気圧センサ
70 パージガス生成部
71 混合容器
72a 第1の調整部
72b 第2の調整部
72c 第3の調整部
73 制御部
74a 第1のガス
74b 第2のガス
74c 第3のガス
80 試料
L10 照明光
LS 光源
R10 反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10