(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065806
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】バット
(51)【国際特許分類】
A63B 59/56 20150101AFI20240508BHJP
A63B 102/18 20150101ALN20240508BHJP
【FI】
A63B59/56
A63B102:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174846
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】世良 範幸
(72)【発明者】
【氏名】草川 公一
(57)【要約】
【課題】弾性部材の厚みに拘わらず、打ち損じになりにくくすることが可能なバットを提供する。
【解決手段】打球部5が、棒状の芯材7と、芯材7の外側に取り付けられた弾性部材13と、弾性部材13の内部あるいは弾性部材の外面13bに接する位置に配置され弾性部材13よりも伸縮性が低く弾性部材13と共に変形可能な可撓性を有する伸び抑制材15と、径方向の最外部に位置する表皮材21とを備える。これにより、弾性部材13の厚みに拘わらず、打ち損じになりにくくすることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の芯材と、
該芯材の外側に取り付けられた弾性部材と、
前記弾性部材の内部又は前記弾性部材の外面に接する前記弾性部材の径方向外側に配置され前記弾性部材よりも伸縮性が低く前記弾性部材と共に変形可能な可撓性を有する伸び抑制材と、
最外部に位置する表皮材と、
を備える、
バット。
【請求項2】
請求項1のバットであって、
前記弾性部材は、前記芯材の外周を覆う筒状であり、
前記伸び抑制材は、環状に配置された、
バット。
【請求項3】
請求項2のバットであって、
前記伸び抑制材は、筒状体である、
バット。
【請求項4】
請求項1~3の何れかのバットであって、
前記伸び抑制材は、
相対的に剛性が高い複数の高剛性部と、
該高剛性部間を連結する相対的に剛性が低い低剛性部と、
を備える、
バット。
【請求項5】
請求項1~3の何れかのバットであって、
前記伸び抑制材は、空隙部を有する多孔部材からなり、前記空隙部に前記弾性部材が入り込んで一体化された、
バット
【請求項6】
請求項5のバットであって、
前記伸び抑制材は、網状体、穴あきフィルム材、又は3次元網状体である、
バット。
【請求項7】
請求項1又は2のバットであって、
前記伸び抑制材は、隣接間に隙間を有して周方向に配置された複数の帯片からなる、
バット。
【請求項8】
請求項1~3の何れか一項のバットであって、
前記伸び抑制材は、前記弾性部材の前記内面及び前記外面間の中間部よりも前記外面側に位置する、
バット。
【請求項9】
請求項1~3の何れか一項のバットであって、
前記伸び抑制材は、少なくとも一部が前記弾性部材の外面から10mm以内に位置する、
バット。
【請求項10】
請求項1~3の何れか一項のバットであって、
前記伸び抑制材は、反発弾性率が50%以上、且つ比重2以下である、
バット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材を打球部に備える球技用のバットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種のバットとしては、例えば特許文献1のように、棒状の芯材に円筒状の弾性部材を一体化したものがある。
【0003】
この従来のバットは、打球時に弾性部材が変形することでボールの変形を抑制すると共に、弾性部材が復元するときにボールに反発力を付与することにより、打球の飛距離や速度を向上することができる。
【0004】
近年では、打球の飛距離等をさらに向上するために、芯材を細くして、弾性部材をより厚くすることが行われている。
【0005】
しかし、かかるバットでは、バット幅の中心部付近から外れてボール進行方向に対して斜めにボールを捉えると、ポップフライや打球速度の低い力のないゴロのような打ち損じになりやすく、打率が低下していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、弾性部材を厚くすると打ち損じになりやすい点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、棒状の芯材と、該芯材の外側に取り付けられた弾性部材と、前記弾性部材の内部又は前記弾性部材の外面に接する前記弾性部材の径方向外側に配置され前記弾性部材よりも伸縮性が低く前記弾性部材と共に変形可能な可撓性を有する伸び抑制材と、前記径方向の最外部に表皮材とを備える、バットを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、弾性部材の厚みに拘わらず、打ち損じになり難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係るバットを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に係る横断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の変形例に係るバットを示す横断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の他の変形例に係るバットを示す横断面図である。
【
図6】
図6は、打球時の伸び率を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施例1及び比較例1の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図8】
図8は、実施例1及び比較例1のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図9】
図9は、実施例1及び比較例1の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図10】
図10は、実施例1及び比較例1のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図11】
図11は、実施例1及び比較例1の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図12】
図12は、実施例1及び比較例1のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図13】
図13は、実施例1及び比較例1の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図14】
図14は、実施例1及び比較例1のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図15】
図15は、実施例1の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図16】
図16は、実施例1のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図18】
図18は、本発明の実施例2に係るバットを示す横断面図である。
【
図20】
図20は、実施例2の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図21】
図21は、実施例2のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図22】
図22は、本発明の実施例3に係るバットを示す横断面図である。
【
図24】
図24は、実施例3の変形例に係るバットに用いられる伸び抑制材の一部を示す展開図である。
【
図25】
図25は、実施例3の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図26】
図26は、実施例3のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図27】
図27は、本発明の実施例4に係るバットを示す横断面図である。
【
図29】
図29は、実施例4の変形例に係るバットを示す横断面図である。
【
図31】
図31は、実施例4及び比較例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図32】
図32は、実施例4及び比較例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図33】
図33は、実施例4及び比較例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図34】
図34は、実施例4及び比較例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図35】
図35は、実施例4及び比較例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図36】
図36は、実施例4及び比較例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図37】
図37は、実施例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図38】
図38は、実施例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図39】
図39は、実施例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図40】
図40は、実施例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図41】
図41は、実施例4及び比較例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図42】
図42は、実施例4及び比較例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図43】
図43は、実施例4及び比較例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図44】
図44は、実施例4及び比較例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図45】
図45は、実施例4及び比較例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図46】
図46は、実施例4及び比較例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図47】
図47は、実施例4及び比較例4の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図48】
図48は、実施例4及び比較例4のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【
図49】
図49は、本発明の実施例5に係るバットを示す横断面図である。
【
図51】
図51は、実施例5の変形例に係るバットを示す横断面図である。
【
図52】
図52は、実施例5及び比較例5の伸び抑制材の特性を、それらの基準値並びに弾性部材及び表皮材の特性と共に示す図表である。
【
図53】
図53は、実施例5及び比較例5のサンプルとしての特性を、それらの基準値と共に示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
弾性部材の厚みに拘わらず打ち損じになり難くするという目的を、弾性部材の内部又は外面隣する径方向外側に配置され前記弾性部材よりも伸縮性が低い可撓性の伸び抑制材を配置することにより実現した。
【0012】
すなわち、バット1(打球部5)は、芯材7と、弾性部材13と、伸び抑制材15と、表皮材21とを備える(
図2)。芯材7は、棒状であり、弾性部材13は、芯材7の外側に取り付けられている。伸び抑制材15は、弾性部材13の内部又は弾性部材の外面13bに隣接する径方向外側に配置され、弾性部材13よりも伸縮性が低く、弾性部材13と共に変形可能な可撓性を有する。径方向の最外位置には、表皮材21を有する。なお、弾性部材13と伸び抑制材15を併せた部分を、本体部23と定義する。
【0013】
伸び抑制材15と弾性部材13からなる本体部23は、伸び抑制材15が弾性部材13よりも伸縮性が低いことによって、バット幅の中心部付近から外れてボール進行方向に対して斜めにボールが当たった場合でも、本体部が大きく変形しないため、打球方向性を向上させることができる。
【0014】
この結果、ボールBが打球部5のバット幅(横断面における直径)の中心部付近に当たった場合は、弾性部材13は伸び抑制材15が無い状態と同じように圧縮され反発力を生じる。一方、ボールBが打球部5のバット幅の中心部付近を外れて当たった(打球方向におけるバット断面上部や断面下部に当たった)場合でも、本体部23が逃げ難い(変形し難い)ので、ボールBの方向性及び反発性が維持され易い。つまり、ポップフライや打球速度の低い力のないゴロのような打ち損じになり難い。
【0015】
伸び抑制材15は、反発弾性率が50%以上、且つ密度2g/cm3以下であることが好ましい。具体的な伸び抑制材15の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、66-ナイロン、芳香族ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、レーヨン、ビニロン等の樹脂が好ましい。これらの樹脂の中で、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、6-ナイロン、66-ナイロン等のポリアミドが強靭であり、発泡ポリウレタン等の弾性部材13と接着した状態で多数回の打球に対する耐久性が良好でより好ましい。
【0016】
なお、反発弾性率が50%以上と良好な樹脂は、低温でのtanδ値が低く、低温衝撃時あるいは高速衝撃時のエネルギーロスが低いため、良好な反発弾性を示すと考えられる。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂の0℃でのtanδ値は2X106、HDPE(高密度ポリエチレン)樹脂のそれは7X103、6NY(6ナイロン)樹脂のそれは4X103であり、低い値である。
【0017】
また、伸び抑制材15の材質として、コットン、レーヨン、ビニロン、ウール、ナイロン、アクリル、セルロース、ポリプロピレン等の繊維材料も例示できる。
【0018】
弾性部材13及び伸び抑制材15の形状は、任意に設定可能であるが、弾性部材13を、芯材7の外周を覆う筒状とし、伸び抑制材15を、環状に配置してもよい。
【0019】
環状の伸び抑制材15は、筒状体、或いは隣接間に隙間を有して周方向に配置された複数の帯片25であってもよい。
【0020】
また、伸び抑制材15は、複数の高剛性部27と、高剛性部間を連結する低剛性部29とを備えてもよい。高剛性部27は、相対的に剛性が高い部分であり、低剛性部29は、相対的に剛性が低い部分である。
【0021】
また、伸び抑制材15は、高剛性部27及び低剛性部29を備える構成に代えて、空隙部31を有する多孔部材からなり、空隙部31に弾性部材13が入り込んで一体化された構成としてもよい。
【0022】
この場合、伸び抑制材15は、網状体又は穴あきフィルム若しくは3次元網状体としてもよい。
【0023】
伸び抑制材15は、弾性部材の外面13bと表皮材の内面21aとの間、或いは、弾性部材の内面13aと弾性部材の外面13b間の中間部よりも弾性部材の外面13b側に位置するのが好ましい。特に、伸び抑制材15は、野球又はソフトボール用のバットにおいて、少なくとも一部が本体部23の外面23bから10mm以内に位置することが好ましい。更に好ましくは、本体部23の外面23bから5mm以内である。
【実施例0024】
[バットの構造]
図1は、本発明の実施例1に係るバットを示す斜視図である。
図2は、同バットを示す縦断面図である。
図3は、
図2のIII-III線に係る断面図である。
【0025】
本実施例のバット1は、野球やソフトボール等の球技に用いられるものであり、グリップ部3と、打球部5と、ヘッド部11とを備えている。
【0026】
グリップ部3は、打者が把持する部分であり、芯材7の一部からなっている。
【0027】
芯材7は、横断面形状が円形の中空棒状体である。ただし、芯材7は、中実棒状であってもよい。芯材7の横断面形状は、円形に限られず、楕円等の他の形状を採用することも可能である。
【0028】
本実施例において、芯材7の横断面形状は、軸方向の先端側から基端側にかけて一定である。ただし、芯材7の横断面形状は、部分的に径や肉厚を変更し、或いは部分的に楕円等の他の断面形状とすること等により、先端側から基端側にかけて一定ではない形状とすることも可能である。なお、軸方向とは、バット1の軸心に沿った方向であるが、軸心に対して僅かに傾斜した方向も含む。
【0029】
芯材7の材質は、繊維強化プラスチック(FRP)が用いられており、本実施例においては炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である。ただし、芯材7の材質は、FRPに限定されるものではなく、金属や木等を用いることも可能である。芯材7の外径は、15~55mm程度となっている。
【0030】
この芯材7は、軸方向の基端側から先端側にかけて、グリップ部3、芯材7の打球部領域9、ヘッド部11を一体に備えている。ただし、グリップ部3、芯材7の打球部領域9、及びヘッド部11の何れか一つ、二つ、或いは全てを別体の部材として構成し、それら別体の部材を相互に一体的に結合して芯材7としても良い。
【0031】
グリップ部3は、芯材7に応じ、横断面形状が円形の中空棒状に形成されている。このグリップ部3には、グリップテープ4が巻かれている。グリップ部3の基端には、径方向に張り出したグリップエンド6が一体に設けられている。ただし、グリップエンド6は、グリップ部3とは別体の部材として構成し、グリップ部3に一体的に結合してもよい。なお、径方向とは、バット1の径に沿った方向をいうが、径に対して僅かに傾斜した方向も含む。このグリップ部3の先端には、芯材7の打球部領域9が一体に設けられている。
【0032】
芯材7の打球部領域9は、打球部5内に位置する芯材7の一部であり、芯材7に応じて横断面形状が円形の中空棒状に形成されている。なお、芯材7の打球部領域9の横断面形状は、円形に限られず、他の形状とすることも可能である。例えば、芯材7の打球部領域9の横断面形状は、打球部5の中心に対する径方向の一側と他側とで非対称となる形状や楕円形状等としてもよい。この芯材7の打球部領域9の先端側にはヘッド部11が一体に設けられている。
【0033】
ヘッド部11は、中空円板状に形成されている。ただし、ヘッド部11は、中空でなくても良い。ヘッド部11は、芯材7の打球部領域9に対して径方向に膨出している。ヘッド部11の外径は、打球部5の外径とほぼ一致している。
【0034】
打球部5は、芯材7の打球部領域9と、弾性部材13と、伸び抑制材15と、表皮材21とを備えている。
【0035】
弾性部材13は、芯材の打球部領域9の外側に取り付けられ、打球時に自身の変形によりボールBの変形を抑えると共にボールBに反発力を加えることを可能とする。
【0036】
本実施例の弾性部材13は、芯材の打球部領域9の外周を覆う筒状である。これにより、弾性部材13は、打球部5全体に設けられているが、打球部5の軸方向や周方向の一部に設けてもよい。弾性部材13の形状は、例えば、芯材の打球部領域9の径方向の一側にのみ設けた断面が半円の棒や周方向の一部に設けた円弧状の板等とすることも可能である。
【0037】
弾性部材13の軸方向の先端は、芯材7のヘッド部11に突き当てられ、同基端は、カラー17によって抜け止めがなされている。この状態で、弾性部材13は、接着等の適宜の固着手段によって芯材7に固着されている。
【0038】
この弾性部材13は、周方向で厚みがほぼ均一な円筒形断面を有し、芯材7に対して同心状に配置されている。ただし、弾性部材13は、周方向で厚みを変更したり、芯材7に対して偏心して配置してもよい。厚みとは、弾性部材の内面13a及び弾性部材の外面13b間の径方向の寸法を意味する。
【0039】
弾性部材13の材質は、熱硬化性ないし熱可塑性である発泡ポリウレタンエラストマー、発泡ポリスチレンエラストマー、発泡オレフィンエラストマー、発泡シリコーンエラストマー等である。この弾性部材13の硬度は、JIS C硬度で20~70、見掛け密度は、0.3g/cm3~0.5g/cm3である。弾性部材13の厚みは、5~30mm程度となっている。なお、弾性部材13の材質は、打球時に変形可能であれば限定されるものではない。
【0040】
弾性部材13用の発泡素材の見掛け密度は、0.3g/cm3~0.5g/cm3であり、好ましくは0.35g/cm3~0.45g/cm3である。発泡素材の見掛け密度を0.3g/cm3以上にすることで、発泡素材の強靭性が高まる。そのため、発泡素材を打球バットとして用いた場合、打球時の衝撃による破断が抑制される。
【0041】
また、発泡素材の見掛け密度を0.5g/cm3以下にすることで、発泡素材が軽量化する。そのため、発泡素材を打球バット用素材として用いた場合、軽量なバットが得られる。
【0042】
なお、見掛け密度の測定方法については後述する。
【0043】
弾性部材13の外径は、軸方向の基端側から先端側に向けて漸次大きくなっており、先端側でほぼ一定となる。この弾性部材13の外径がほぼ一定となる領域において、打球部5の最も打球の飛距離及び速度が高くなりやすいスウィート領域19が構成される。打球部5の最外部は、表皮材21によって構成されている。
【0044】
表皮材21は、円筒膜状に形成され、本体部23の外面23bに固着されている。なお、本体部23は、上記のとおり弾性部材13と伸び抑制材15を併せた部分である。固着は、接着等の適宜の固着方法によって行うことが可能である。
【0045】
この表皮材21は、弾性部材13及び伸び抑制材15を保護する役割を有する膜状部材である。従って、本実施例では、打球部5の耐久性を向上することができる。表皮材21の材質は、ポリウレタンフィルム等の熱可塑性樹脂等からなる。軟式野球ボール用又はゴムソフトボール用バットにおいて、表皮材21の厚みは、0.1mm~1.0mm程度であることが好ましい。より好ましくは、0.2mm~0.4mm程度の厚みである。
【0046】
伸び抑制材15は、弾性部材13の外面13bに接する径方向外側の位置に配置され、弾性部材13よりも伸縮性が低く、弾性部材13と共に変形可能な可撓性を有する。
【0047】
ただし、伸び抑制材15は、弾性部材13の内面13a及び弾性部材の外面13b間の中間部に位置しても良い。中間部に位置する場合、伸び抑制材15は、少なくとも一部を弾性部材13の外面13bから10mm以内に位置させるのがよい。更に好ましくは、伸び抑制材15は、弾性部材13の外面13bから5mm以内に位置させる。
【0048】
この伸び抑制材15は、伸縮性が低いことにより、打球時の弾性部材13の伸びを抑制する役割を有する。ただし、伸び抑制材15は、打球の飛距離及び速度を低減させないように、伸縮性及び可撓性によって弾性部材13の変形を許容するようになっている。
【0049】
伸び抑制材15の伸び易さについては、10%伸縮時の応力(10%引張モジュラス)の数値で評価することができる。伸び抑制材15がない場合の20mmの厚みを有する弾性部材13にボールBが衝突した場合、弾性部材13の最上部がボールBにより引き伸ばされる計算上の最大伸び率は12.8%である。同様に、15mmの厚みを有する弾性部材13においては、9.3%である。同様に、10mmの厚みを有する弾性部材13においては、6.0%である。なお、いずれもの場合も、弾性部材の見掛け密度は0.4g/cm3として計算した。
【0050】
図6は、打球時の伸び率Kを示す概略図である。以下、伸び率K計算の詳細について記載する。
【0051】
打球時は、サンプルSに対してボールBが押し付けられ、サンプルSはボールBに沿い凹む。実際には、弾性体であるボールBは変形し、サンプルSもボールBの形状通りに凹まないが、最大伸び率K計算は、ボールBは変形せず、サンプルSはボールBに追従すると仮定した。
【0052】
このときのサンプルSの凹みRの周方向の長さCを計算し、サンプルSの凹みRの表面の長さLに対する周方向の長さCの伸び率Kを式1により計算した。
【0053】
伸び率K=(周方向の長さC―表面の長さL)/表面の長さLX100 式1
【0054】
この打球時の最大凹部深さNは、サンプルSの見掛け密度が0.4g/cm3の場合で最大圧縮率60%になることから決めた。サンプル厚さJを20mm、15mm、10mmとして計算した。なお、ボールBは、直径が72mmの軟式野球M球とした。
【0055】
以上の計算で得た最大伸び率Kは、サンプル厚さJが20mmの場合、12.8%、15mmの場合、9.3%、10mmの場合、6.0%であった。この数値から、打球時の表皮材近傍の弾性部材の伸び率Kは、最大で10%前後と推定出来る。また、実際には、ボールBは変形し、サンプルSはボールBに完全に追従しないため、バット1に使用する場合の弾性部材13の伸び率Kは、10%以下になる場合が多い。以上から、本願では、10%伸長時の応力(10%モジュラス)値を、弾性部材及び伸び抑制材の伸び易さの尺度とする。
【0056】
このため、弾性部材13における10%伸長時の応力(10%モジュラス)よりも高い応力値を有する部材が伸び抑制材15として機能する。
【0057】
また、伸び抑制材15は、反発弾性率が50%以上、且つ密度2g/cm3以下であることが好ましい。また、伸び抑制材15は、最大伸び10%以上が好ましく、最大伸び20%以上であることが更に好ましい。
【0058】
具体的な伸び抑制材15の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、66-ナイロン、芳香族ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、レーヨン、ビニロン等の樹脂が好ましい。これらの樹脂の中で、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、6-ナイロン、66-ナイロン等のポリアミドが強靭であり、発泡ポリウレタン等の弾性部材13と接着した状態で多数回の打球に対する耐久性が良好でより好ましい。
【0059】
本実施例の伸び抑制材15は、筒状体であり、環状に配置された構成となっている。この伸び抑制材15は、円形断面を有し、弾性部材13及び芯材7と同心に配置されている。
【0060】
なお、伸び抑制材15は、
図4のように、弾性部材13及び芯材7に対して偏心させてもよい。また、伸び抑制材15は、
図5のように、打球部5の周方向の一部のみに設けた膜状とすることも可能である。さらに、伸び抑制材15の断面形状は、円形に限らず、楕円形、多角形等の他の幾何学形状としてもよい。
【0061】
本実施例において、伸び抑制材15は、表皮材21の下部に位置する。これにより、伸び抑制材15が直接ボールBに接触することがなく、打球部5の耐久性を向上することができる。
【0062】
なお、伸び抑制材15が弾性部材13及び芯材7に対して偏心する場合、伸び抑制材15の一部のみが弾性部材の外面13bから10mm以内に位置することも可能である。
【0063】
伸び抑制材15の内面15aは、弾性部材13に固着され、伸び抑制材15の外面15bは、弾性部材13或いは表皮材21に固着されて一体化されている。固着手段は、接着等の適宜のものを採用すればよい。伸び抑制材15の厚みは、0.05mm~1mm程度であることが好ましい。更に好ましくは、0.1mm~0.5mmの厚みである。
【0064】
軸方向において、伸び抑制材15は、弾性部材13の全域にわたって伸びている。ただし、伸び抑制材15は、弾性部材の軸方向の一部にのみ設けることも可能である。この場合、伸び抑制材15は、スウィート領域19に位置させるのが好ましい。
【0065】
本実施例の伸び抑制材15は、樹脂素材のフィルムの円筒状にしたものが用いられている。この伸び抑制材15には、発泡ポリウレタン等の弾性部材13との接着性向上のため、伸び抑制材15にはプラズマ照射やコロナ放電処理等の表面処理をすることが好ましい。
【0066】
[バットの作用]
本実施例のバット1では、打球部5での打球時に、本体部23の変形によってボールBの変形が抑制されると共にボールBに対する反発力が発生する。
【0067】
すなわち、ボールBが打球部5のバット幅の中心部付近で捉えられる場合
図3の2点鎖線、本体部23がボールBにより径方向に押圧され、その本体部23の押圧部分が圧縮される。このとき、ボールBが本体部23を介して芯材7で受けられ、ボールBに反発力を確実に与えることができる。従って、打球の飛距離や速度を向上することができる。
【0068】
また、ボールBが打球部5のバット幅の中心部付近を外れて捉えられる場合(
図3の1点鎖線でボールBの方向のみ示す)は、本体部23が衝突直前のボールBの進行方向の後方側に変形して伸びる(逃げる)ことが伸び抑制材15により抑制され、打ち損じを抑制される。
【0069】
すなわち、伸び抑制材15は、本体部23のボールBによる押圧部分を中心に伸びながら本体部23の圧縮を許容する。これにより、ボールBと打球部5とが接触する面積が増加する。
【0070】
一方で、伸び抑制材15は、本体部23の押圧部分以外の部分で伸びて突っ張ることにより変形を抑制できる。本実施例の伸び抑制材15は、筒状体であるため、本体部23の押圧部分での伸びによって、本体部23の押圧部分以外の部分での伸びの許容量が減少するか無くなる。このため、本体部23の押圧部分以外では、伸び抑制材15を突っ張りやすくすることができ、打球部5の変形を確実に抑制できる。
【0071】
従って、本実施例では、打球部5とボールBとの接触状態を維持してボールBを確実に捉え、打球方向性を向上することができると共にボールBに打球部5の反発力を確実に与えることができる。このため、本実施例のバット1では、弾性部材13の厚みに拘わらず、ポップフライや打球速度の低い力のないゴロになるような打ち損じを低減することができる。
【0072】
また、伸び抑制材15は、少なくとも一部が本体部23の外面23bから10mm以内に位置するため、打ち損じを抑制できる。すなわち、打球部5のバット幅の両端10mm程度の端部領域では、一般的にボールBを捉えても打ち損じなく飛ばすことが困難であるため、打球部5の弾性部材の外面13bから10mm以内に位置させておけば、表皮材21直下と同様の効果が得られる。
【0073】
また、弾性部材13の厚みの中間部付近までは、伸び抑制材15の効果が減少傾向にはなるものの、十分な効果が得られる。
【0074】
なお、本実施例では、打球部5の全域に伸び抑制材15が存在するため、打球部5の全域で同様の効果が得られる。
【0075】
[素材特性の測定方法]
実施例1及び比較例1のサンプルについて、密度(見掛け密度)、反発弾性率、10%モジュラス、最大伸び、及び打球方向性の測定を行った。
【0076】
具体的には、実施例1のサンプルとして、ポリウレタン製打球部(実施例の打球部5に相当する100mmX100mmの板)を下記の手順で作製した。
【0077】
予め50℃に加温した下記のポリオール成分をポリカップに精秤し、プライミクス(株)製「高速乳化・分散機 T.K.ホモディスパー2.5型(DH-2.5/1001)」にて、3000rpmで1分間撹拌し、ポリオール成分含有溶液を調製した。
【0078】
(ポリオール成分)
・ポリオール: ポリテトラメチレングリコール「PTMG3000(三菱化学(株)製、官能基数f=2、Mn=2953、OHv=38.0)」 100質量部
・セルオープナー:PL910: ポリエーテルグリコール「サンニックス PL910(三洋化成工業(株)製、PO/EO(モル比)=84/16、官能基数f=2、Mn=898、OHv=125) 2質量部
・整泡剤: 非反応性シリコーン整泡剤「DOW CORNING TORAY SZ‐1642(東レ・ダウコーニング(株)製)」 1質量部
・触媒: アミン系触媒「DABCO 33-LV(エアー・プロダクツジャパン(株)製)」 0.1質量部、イミダゾール系触媒「カオーライザーNo.120(花王(株)製)」 0.2質量部
・発泡剤: 蒸留水 0.9質量部
【0079】
次に、得られたポリオール成分含有溶液に、予め加温したイソシアネート液33.36部(Index=90相当)を投入し、プライミクス(株)製「高速乳化・分散機 T.K.ホモディスパー2.5型(DH-2.5/1001)」にて、5000rpmで10秒間撹拌し、ウレタン原料液を調整した。
【0080】
(イソシアネート成分)
・MDI: モノメリックMDI「ミリオネートMT(東ソー(株)製、NCO%=33.58質量%)」16.68部
・MDIプレポリマー:PTMG3000とミリオネートMTのプレポリマー NCO%=5.45質量%)16.68部
【0081】
MDIプレポリマーの合成は以下の手順で準備した。
【0082】
攪拌機、温度計、及びオイルバスを備えた容量2リットルのガラス製反応器に、下記のポリオール及びジイソシアネートを仕込み、反応器の空間部を窒素ガスで置換して反応器を加熱し、75~85℃に温度を保ちながら、ポリオールとジイソシアネートとを反応させた。
【0083】
・ポリオール;PTMG3000 (三菱化学(株)製) 500g
官能基数f=2、Mn=2953、OHv=38.0
・ジイソシアネート;ミリオネートMT(東ソー(株)製) 147.6g
モノメリックMDI、NCO%=33.58質量%
【0084】
開始から2時間後、加熱を止めた。得られたMDIプレポリマーの末端イソシアネート基濃度を測定し、NCO%=5.45質量%を得た。
【0085】
NCO%の測定は、JIS K 1603-1:2007(ISO14896:2000)に準拠して行った。
【0086】
次に、混合で得られたウレタン原料液を、予め50℃に加温しておいたアルミ製の枠型(内寸法;縦100mm×横100mm×厚さ10mm)、表皮材(シーダム(株)製ウレタンシート ハイグレスDUS605 厚さ0.29mm)、その内側の伸び抑制材(詳細については後述する)、下板(厚さ10mm)からなる長方形の窪みに所定量(約44g)を投入する。ウレタン原料液の投入後、素早く上蓋(アルミ製、厚さ10mm)を載せ、万力で4箇所固定した。なお、事前に、表皮材と伸び抑制材(コロナ放電処理したもの)とを可撓性の反応型接着剤(セメダイン(株)製スーパーXクリア強力型)にて接着しておいた。
【0087】
アルミ製の型枠及び上蓋の内面(ウレタン原料液との接触面)は、硬化後に剥離が可能となる様に、事前に離型剤「リムリケイN848(中京油脂(株)製)」を塗付し、100℃で30分間加温した。
【0088】
次に、万力で固定したアルミ製容器(枠型と上蓋とからなる容器)を50℃のオーブンに10分間保持した後、オーブンから取り出し10分間室温冷却した。その後、万力を外し、上蓋及び下板を取り、枠型から表皮材と伸び抑制材とポリウレタン発泡体がくっ付いた複合体を取り出した。その後、反応完結の目的で、50℃のオーブンに8時間入れた。
【0089】
実施例1及び比較例1のサンプルSは、下記の伸び抑制材15を適用した。
【0090】
実施例1-1~1-3;東レ(株)製 二軸延伸PETフィルム ルミラーT60。なお、表皮材と接着加工する前に、接着面をコロナ放電処理した。
【0091】
実施例1-4~1-6;帝人フィルムソリューション(株)製 二軸延伸PENフィルムPENフィルムQ51。なお、表皮材と接着加工する前に、接着面をコロナ放電処理した。
【0092】
実施例1-7~1-9;イーストマン・ケミカル・カンパニー製 PCTAフィルム PCTAトライタン。PCTAは、PCT(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)の酸成分の一部をIPA(イソプロピルアルコール)で置き換えた樹脂。なお、表皮材と接着加工する前に、接着面をコロナ放電処理した。
【0093】
実施例1-10~1-11;(株)コクゴ製 6ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0094】
実施例1-12~1-13;(株)コクゴ製 66ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0095】
実施例1-14;日本発條(株)製 ポリウレタン製シート 摺動シート、厚み0.93mm。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0096】
比較例1-1は、表皮材及び伸び抑制材を使用せず、ウレタン原料のみで作製した。
【0097】
比較例1-2は、伸び抑制材を使用せず、表皮材のみをセットしてウレタン原料を投入した。
【0098】
比較例1-3;ニッケル100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0099】
比較例1-4;アルミニウム100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0100】
比較例1-5;アルミニウム箔10μmシート。
【0101】
比較例1-6;銅100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0102】
比較例1-7;銅箔70μmシート。
【0103】
比較例1-8~1-10;ステンレスシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0104】
次に、サンプル厚さ20mmの実施例1及び比較例1を作製した。伸び抑制材の仕様は、サンプル厚さ10mmの場合と同じとし、実施例1-15~1-27、比較例1-11~1-20を作製した。
【0105】
実施例1-15~1-17;東レ(株)製 二軸延伸PETフィルム ルミラーT60。なお、表皮材と接着加工する前に、接着面をコロナ放電処理した。
【0106】
実施例1-18~1-20;帝人フィルムソリューション(株)製 二軸延伸PENフィルムPENフィルムQ51。なお、表皮材と接着加工する前に、接着面をコロナ放電処理した。
【0107】
実施例1-21~1-22;イーストマン・ケミカル・カンパニー製 PCTAフィルム PCTAトライタン。PCTAは、PCT(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)の酸成分の一部をIPA(イソプロピルアルコール)で置き換えた樹脂。なお、表皮材と接着加工する前に、接着面をコロナ放電処理した。
【0108】
実施例1-23~1-24;(株)コクゴ製 6ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0109】
実施例1-25~1-26;(株)コクゴ製 66ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0110】
実施例1-27;日本発條(株)製 ポリウレタン製シート 摺動シート、厚み0.93mm。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0111】
比較例1-11は、表皮材及び伸び抑制材を使用せず、ウレタン原料のみで作製した。
【0112】
比較例1-12は、伸び抑制材を使用せず、表皮材のみをセットしてウレタン原料を投入した。
【0113】
比較例1-13;ニッケル100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0114】
比較例1-14;アルミニウム100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0115】
比較例1-15;アルミニウム箔10μmシート。
【0116】
比較例1-16;銅100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0117】
比較例1-17;銅箔70μmシート。
【0118】
比較例1-18~1-20;ステンレスシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0119】
次に、サンプル厚さ20mmで、外側から表皮材/弾性部材5mm/伸び抑制材/弾性部材15mmの構成からなる実施例1及び比較例1を作製した。この構成においては、表皮材と伸び抑制材を接着する必要はなく、弾性部材製作工程のウレタン硬化時に接着がなされる。
【0120】
具体的な手順は、まず、表皮材/弾性部材5mm/伸び抑制材(作製時の上下順)の部分を作製し、次にこの部分を逆向きに(伸び抑制材が上になるように)枠の下面にセットし弾性部材15mを作製する。なお、シートが厚い場合は、表皮材/弾性部材5mm/伸び抑制材の部分を作製工程にて枠内に納まるようにカットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料の量を調整した。以上のようにして、実施例1-28~1-37、比較例1-21~1-28を作製した。
【0121】
実施例1-28~1-30;東レ(株)製 二軸延伸PETフィルム ルミラーT60。
【0122】
実施例1-31~1-33;帝人フィルムソリューション(株)製 二軸延伸PENフィルムPENフィルムQ51。
【0123】
実施例1-34~1-35;(株)コクゴ製 6ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0124】
実施例1-36~1-37;(株)コクゴ製 66ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0125】
比較例1-21;ニッケル100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0126】
比較例1-22;アルミニウム100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0127】
比較例1-23;アルミニウム箔10μmシート。
【0128】
比較例1-24;銅100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0129】
比較例1-25;銅箔70μmシート。
【0130】
比較例1-26~1-28;ステンレスシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0131】
次に、サンプル厚さ20mmで、外側から表皮材/弾性部材10mm/伸び抑制材/弾性部材10mmの構成からなる実施例1及び比較例1を作製した。
【0132】
まず、表皮材/弾性部材10mm/伸び抑制材の部分を作製し、次にこの部分を伸び抑制材が上になるように下面にセットし弾性部材10mを作製する。なお、シートが厚い場合は、表皮材/弾性部材10mm/伸び抑制材の部分を作製工程にて枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。以上のようにして、実施例1-38~1-47、比較例1-29を作製した。
【0133】
実施例1-38~1-40;東レ(株)製 二軸延伸PETフィルム ルミラーT60。
【0134】
実施例1-41~1-43;帝人フィルムソリューション(株)製 二軸延伸PENフィルムPENフィルムQ51。
【0135】
実施例1-44~1-45;(株)コクゴ製 6ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0136】
実施例1-46~1-47;(株)コクゴ製 66ナイロン製シート。樹脂シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0137】
比較例1-29;ニッケル100μmシート。金属シートが厚いため、枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。
【0138】
次に、サンプル厚さ20mmで、外側から表皮材/弾性部材15mm/伸び抑制材/弾性部材5mmの構成からなる実施例1を作製した。
【0139】
まず、表皮材/弾性部材15mm/伸び抑制材の部分を作製し、次にこの部分を伸び抑制材が上になる様に下面にセットし弾性部材5mを作製する。なお、シートが厚い場合は、表皮材/弾性部材15mm/伸び抑制材の部分を作製工程にて枠内に納まる様カットし、密度が同じになるよう投入するウレタン原料量を調整した。以上の様にして、実施例1-48~1-50を作製した。
【0140】
実施例1-48~1-50;東レ(株)製 二軸延伸PETフィルム ルミラーT60。
【0141】
(密度及び見掛け密度)
密度及び見掛け密度は、次の方法により測定した。まず、実施例1に使用した表皮材、伸び抑制材及び実施例1・比較例1のサンプル(概寸:縦100mm×横100mm×厚さmm)の質量を、精密天秤にて1/1000g精度で測定する。次に、デジタルゲージを使用し、直径10mmの測定子を用い、荷重約0.6Nにてサンプルの厚さ寸法を1/1000mm精度で9個所測定し、平均値を求めた。サンプルの縦寸法及び横寸法は、デジタルノギスを用いて、それぞれ3箇所測定し、平均を求める。得られた各寸法から、サンプルの体積を算出した。なお、サンプルは、表皮材及び伸び抑制材分を差し引いた。そして、以下の式1にて密度(見掛け密度)を求めた。
【0142】
密度(見掛け密度)=質量/体積 式2
【0143】
【0144】
図7、
図9、
図11、
図13、及び
図15のように、実施例1では、何れも密度(見掛け密度)の基準値を下回っていたのに対し、比較例1では、何れも密度(見掛け密度)の基準値を上回っていた。
【0145】
(反発弾性率)
反発弾性率は、JIS K 6400(1997/A法)に準拠して測定される。実施例1及び比較例1のサンプル(概寸:縦100mm×横100mm×厚さ10mm)を23±3℃の環境に1日以上保管する。なお、表皮材及び伸び抑制材など厚さが10mmに満たない場合は、積層により厚さ10mm以上にする。23±3℃の環境にて、高分子計器(株)製「FR-1型」を用いて行った。
【0146】
なお、ポリウレタン発泡体において、イソシアネートインデックスが低いサンプルは、樹脂自体がタックを有しているため、タックが原因で正確な反発弾性率を測定することができない場合がある。従って、サンプル表面にタルク粉(日本タルク(株)製、ミクロエース C-3)を振り掛けた後、布で軽く拭き取ったのち測定試験を行う。
【0147】
【0148】
なお、サンプル反発弾性率の基準値は、伸び抑制材が無い場合の比較例(つまり、表皮材と弾性部材からなるサンプル)の反発弾性率の95%以上とした。これは、打球方向性が良好なバットであっても、本来目的である 「打球時の飛距離と速度の性能」を犠牲にしてはならない為で、僅かな飛び低下(マイナス5%)が本願で許容出来る範囲である。具体的には、10mm厚さのサンプルでは、比較例1-2のサンプル反発弾性率78%X0.95である反発弾性率74%が基準値となる。また、20mm厚さのサンプルでは、比較例1-12のサンプル反発弾性率81%X0.95である反発弾性率77%が基準値となる。
【0149】
図7、
図9、
図11、
図13、及び
図15のように、実施例1では、反発弾性率(単独反発弾性率)が何れも基準値を上回っていたのに対し、比較例1では、何れも基準値を下回っていた。また、反発弾性率(サンプル反発弾性率)は、
図8、
図10、
図12、
図14、及び
図16のように、実施例1において何れも基準値を上回っていたのに対し、比較例1では、伸び抑制材を有しない比較例1-1、1-2、1-11、及び1-12のみが基準値を上回っていた。
【0150】
(10%モジュラス)
モジュラスは、規定した伸び率での引張応力値であり、原則として100%以上の伸び率に適用されるが、前述した通り、本実施例の軟式野球バット1の打球時伸び率は、最大でも10%程度と推定される。
【0151】
従って、本実施例では、伸び率10%時の引張応力(10%モジュラス)値にて、伸び性(伸び抑制性)を比較する。具体的には、ダンベル状の2号形状に打抜いた試験片を、引張速度200mm/minで伸ばしていき、伸び率10%時の応力を求めた。なお、試験片は、実施例1・比較例1の弾性部材、伸び抑制材から得ることができる。また、方向性を有するフィルム等については、縦方向(MD;Machine Direction)に伸ばして測定を行なった。
【0152】
図7、
図9、
図11、
図13、及び
図15の表に、実施例1と比較例1との10%モジュラスを示す。実施例1では、何れも10%モジュラスの基準値を上回っていたのに対し、比較例1では、比較例1-7及び1-17を除き、測定不可であった。
【0153】
(最大伸び)
最大伸びは、JIS K 6400-5(2012年)に準じて測定する。具体的には、ダンベル状2号 形状に打抜いた試験片を、引張速度200mm/minで引っ張っていき、試験片破断時の最大伸びを求めた。最大伸びが大きくないと、打撃時の衝撃に耐えることができない。
【0154】
図7、
図9、
図11、
図13、及び
図15の表に、実施例1と比較例1との最大伸びを示す。実施例1では、何れも最大伸びの基準値を上回っていたのに対し、比較例1では、比較例1-7を除き、測定不可又は基準値を下回っていた。
【0155】
(打球方向性試験)
実施例1と比較例1とのサンプルについて、以下のように打球方向試験を行った。
【0156】
【0157】
打球方向性試験では、上方に鋼球Iを保持し、下方にサンプルSを鉄板P上に保持し、開閉扉Dを開くことで鋼球Iを自由落下させる。落下した鋼球Iは、サンプルSに衝突し、サンプルSの保持角度に応じて反発する。この保持角度によりバット幅の中心部付近から外れてボール進行方向に対して斜めにボールを捉える打球位置を疑似的に再現している。
【0158】
なお、鋼球Iは、JIS B 1501-2009で規定される鋼球(等級G40、呼び直径16±0.5mm、重量16.8±1.5g)で、その実測重量は、16.9gであり、鋼球IからサンプルSまでの距離(鋼球下部と鋼球垂直落下のサンプル表面位置)は、500mmとし、鋼球I垂直落下のサンプル表面位置と記録シートRSとの水平距離を100mmとした。また、サンプルSの保持角度は、45°とした。また、伸び抑制材15が方向性を有するフィルム等のサンプルについては、縦方向(MD;Machine Direction)が保持角度と同じになるようにセットし測定を行なった。
【0159】
反発した鋼球Iは、カーボンシートCSを介して記録シートRSにて反発位置が記録される。そして、打球方向性試験では、鋼球Iの落下を実施例1と比較例1について30回行い、鋼球垂直落下のサンプル表面位置と記録シートRSとの水平位置を基準とした反発位置の平均を求めた。つまり、
図17の記録シートRSの水平点線の位置がゼロ点で、それより重力方向(下方向)をマイナス数字で表記する。
【0160】
図8、
図10、
図12、
図14、及び
図16の表に、打球方向性試験の結果を示す。
図8のように、例えば、実施例1―1では、水平基準より-5.1mmの位置に平均があるのに対し、伸び抑制材が無い比較例1-2では、-7.1mmに平均があることがわかる。
【0161】
打球方向性試験は、鋼球を自由落下させて45°傾斜させたサンプルに当てて反射させる試験なので、記録シートに付いた位置は、方向性の要素と反発性の要素で決まる。つまり、方向性が良好でも反発性が極度に低下する場合は、水平方向で100mm移動する際に重力の影響で下方向に向かう。
【0162】
つまり、この打球方向性試験の数値が高いと言うことは、方向性に優れ且つ反発弾性率が極度に低下していないと言うことである。この観点から、打球方向性試験の合格値は、ブランクとするサンプル(10t厚さのサンプルにおいては、比較例1-2)の数値を基準値として、これを上回る値とした。
【0163】
図8、
図10、
図12、
図14、及び
図16の表のように、打球方向は、実施例1において何れも基準値を上回っていたのに対し、比較例1において何れも基準値を下回っていた。
複数の帯片25は、全体として環状に配置されている。ただし、帯片25を打球部5の周方向の一部にのみ設けてもよい。これら複数の帯片25は、それぞれ同一形状であり、軸方向に延設された矩形板状に形成されている。また、本実施例の帯片25は、同一の曲率で湾曲している。
帯片25の幅は、任意であり、線材のように細くしてもよい。帯片25の厚みは、実施例1の伸び抑制材15よりも厚く、0.5mm~3mm程度となっている。これにより、各帯片25は、実施例1の伸び抑制材15よりも剛性が高くなっている。ただし、帯片25の厚みは、実施例1の伸び抑制材15の厚みと同程度としてもよい。
これら帯片25は、打球部5の本体部23の表面に埋設されている。帯片25の隣接間は、等間隔であり、打球部5の本体部23に位置している。なお、帯片25の隣接間の間隔は、一部又は全部が異なってもよい。
帯片25と隣接する帯片25間の打球部5の本体部23とは、面一に構成されている。ただし、打球部5の本体部23及び帯片25の一方が他方に対して径方向に突出してもよい。
かかる実施例2では、打球時において、ボールBにより帯片25が弾性部材13と共に変形する。このとき、帯片25の周方向両側に柔軟な弾性部材13が位置しているので、打球部5の柔軟性を確保することができ、ボールBと打球部5の接触する面積を増加させることができると共にボールBに対する反発力を確実に生じさせることができる。
その他の帯片25は、芯材7のように機能し、打球直前のボールBの進行方向へ弾性部材13が伸びることを抑制する。結果として、本実施例のバット1では、ボールBを確実に捉えて、打球の飛距離や速度を向上しながら打球方向性をも向上することができる。
実施例2-1;東レ(株)製 二軸延伸PETフィルム ルミラーT60 180μmを表面コロナ放電処理した後、1mm幅の短冊状にカットした。表皮材(シーダム(株)製ウレタンシート ハイグレスDUS605 厚さ0.29mm)に短冊状の伸び抑制材を3mm間隔で可撓性の反応型接着剤(セメダイン(株)製スーパーXクリア強力型)にて接着した。
実施例2-2;(株)コクゴ製 6ナイロン製シート 300μmを1mm幅の短冊状にカットした。表皮材(シーダム(株)製ウレタンシート ハイグレスDUS605 厚さ0.29mm)に短冊状の伸び抑制材を3mm間隔で可撓性の反応型接着剤(セメダイン(株)製スーパーXクリア強力型)にて接着した。
実施例2-1及び2-2のサンプルについて、実施例1と同様にして、密度(見掛け密度)、反発弾性率、10%モジュラス、最大伸び、及び打球方向性の測定を行った。