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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065807
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】容器詰炭酸飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20240508BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20240508BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240508BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A23L2/38 B
A23L33/16
A23L2/00 B
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174847
(22)【出願日】2022-10-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売 販売した場所:全国 公開者:株式会社 伊藤園 販売開始日:令和4年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】福島 武
(72)【発明者】
【氏名】正木 智之
(72)【発明者】
【氏名】西谷 栄盛
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD02
4B018MD03
4B018MD04
4B018ME14
4B117LC03
4B117LC04
4B117LC15
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK02
4B117LK04
(57)【要約】
【課題】 ナトリウムが高含有されている無糖・無甘味・無果汁の炭酸飲料であって、ぬるい温度帯の飲用でもおいしく飲用できる、容器詰炭酸飲料を提供する。
【解決手段】 ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料であって、ナトリウムの含有量が200ppm以上であり、ナトリウムとカリウムの含有量の和が240~1100ppmであり、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)が以下の式:(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0に示す割合で含有する、容器詰炭酸飲料。さらに本発明は、容器詰炭酸飲料の製造方法、無糖、無甘味、無果汁かつ無香料のナトリウム高含有容器詰炭酸飲料における呈味改善方法および品質保持方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料であって、
ナトリウムの含有量が200ppm以上であり、
ナトリウムとカリウムの含有量の和が240~1100ppmであり、
ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合で含有する容器詰炭酸飲料。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
【請求項2】
熱中症対策飲料である、
請求項1に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項3】
ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の製造方法であって、
ナトリウムの含有量を200ppm以上、
ナトリウムとカリウムの含有量の和を240~1100ppm、
ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を以下の式に示す割合でとなるように調整する容器詰炭酸飲料の製造方法。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
【請求項4】
ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の呈味改善方法であって、
ナトリウムの含有量を200ppm以上、
ナトリウムとカリウムの含有量の和を240~1100ppm、
ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を以下の式に示す割合でとなるように調整する容器詰炭酸飲料における呈味改善方法。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
【請求項5】
ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の品質保持方法であって、
ナトリウムの含有量を200ppm以上、
ナトリウムとカリウムの含有量の和を240~1100ppm、
ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を以下の式に示す割合でとなるように調整する容器詰炭酸飲料における品質保持方法。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱中症対策としてナトリウムが高含有されている容器詰炭酸飲料に関し、より詳細には、無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰炭酸飲料であって、ナトリウムを高含有しながらも風味の良好な容器詰炭酸飲料に関する。さらに本発明は、ナトリウムを高含有する容器詰炭酸飲料の製造方法、ナトリウムを高含有する容器詰炭酸飲料における呈味改善方法、ナトリウム高含有容器詰炭酸飲料における品質保持方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年の気候変動により、特に夏場で熱中症患者の数が増加しており、社会問題となっている。熱中症予防の水分補給として、ミネラル、特にナトリウムを高含有する飲料を摂取することが推奨されている。しかしながら、ナトリウムなどのミネラルを含有する飲料は、塩味や雑味などの異味を感じることが多く、嗜好の観点からは好ましいものとは言えない。そのため、そのような熱中症対策飲料の呈味を改善する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。また、熱中症対策飲料としてスポーツ飲料や経口補水液が提案されているが(例えば、特許文献2参照)、これらは塩分のみならず糖分が含まれており、非運動時に飲用すると、糖分過多となる場合があり、日常の生活における熱中症対策飲料に関する提案としては充分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-101699号公報
【特許文献2】特開2015-211652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱中症予防のための水分補給方法として、ナトリウムを含有する飲料をこまめに継続的に摂取することが推奨されている。熱中症予防のための飲料は、日常生活において、仕事をしながらデスクに飲み物を置き、それを長時間かけて少しずつ飲む「ちびだら飲み」の飲料の1つとして受け入れられてきている。しかしながら、「ちびだら飲み」の場合、飲料は長時間常温にさらされる場合があるため、液温がぬるくなるにつれ、ナトリウム由来の塩味や雑味などが目立ってきてしまい、飲用しづらくなることが問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、無糖・無甘味・無果汁でナトリウムが配合された炭酸飲料でありながら、液温がぬるくなっても塩味や雑味が目立たない炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明者等が鋭意検討したところ、特定の2価ミネラルと1価ミネラルの配合量を所定範囲に調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明が完成されるに至った。具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0007】
〔1〕 ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料であって、ナトリウムの含有量が200ppm以上であり、ナトリウムとカリウムの含有量の和が240~1100ppmであり、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)が以下の式に示す割合で含有する容器詰炭酸飲料。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
〔2〕 熱中症対策飲料である、〔1〕に記載の容器詰炭酸飲料。
〔3〕 ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁かつ無香料の容器詰炭酸飲料の製造方法であって、ナトリウムの含有量を200ppm以上、ナトリウムとカリウムの含有量の和を240~1100ppm、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を以下の式に示す割合でとなるように調整する容器詰炭酸飲料の製造方法。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
〔4〕 ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の製造方法であって、ナトリウムの含有量を200ppm以上、ナトリウムとカリウムの含有量の和を240~1100ppm、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を以下の式に示す割合でとなるように調整する容器詰炭酸飲料における呈味改善方法。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
〔5〕 ナトリウムを高含有する無糖、無甘味、無果汁の容器詰炭酸飲料の製造方法であって、ナトリウムの含有量を200ppm以上、ナトリウムとカリウムの含有量の和を240~1100ppm、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を以下の式に示す割合でとなるように調整する容器詰炭酸飲料における品質保持方法。
(Na+K)/(Ca+Mg)=8.0~300.0
【発明の効果】
【0008】
本発明のナトリウムを高含有する容器詰炭酸飲料は、無糖・無甘味・無果汁で、長時間に少しずつ飲用することによりぬるくなってしまった温度帯の飲用であってもナトリウム由来の塩味や雑味などが目立たずおいしく飲用できるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、無糖、無甘味、無果汁であって、ナトリウムを所定量含有するとともに、特定のミネラルの含有量が特定比率の範囲内にあるものである。
【0010】
(無糖)
本実施形態において「無糖」の飲料とは、糖類を実質的に含有しない飲料を意味する。食品表示法に基づく栄養表示のためのガイドラインにおいては、飲料100mlあたり0.5g未満であれば無糖と表示することができる。本明細書においても当該表示基準と同様に、糖類の含有量が飲料100mlあたり0.5g未満である炭酸飲料を「無糖」の炭酸飲料とする。糖類含有量は、飲料100mlあたり0.1g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、糖類とは、単糖類または二糖類であって、糖アルコールでないものを意味し、ぶどう糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖などが包含される。
【0011】
(無甘味)
本実施形態において「無甘味」の飲料とは、甘味料を実質的に含有しない飲料を意味する。本明細書においては、含有する糖類および甘味料に由来する甘味度が飲料100mlあたりショ糖として0.5g未満である炭酸飲料を「無甘味」の炭酸飲料とする。糖類および甘味料の含有量は、飲料100mlあたりショ糖として0.3g相当未満であることが好ましく、0.0g相当であることが特に好ましい。なお、甘味度とは、甘味料の甘さを示す指標であり、ショ糖の甘さを1とした相対値で示される。甘味料とは、食品に甘みを呈する成分であり、糖質系甘味料と非糖質系甘味料の2種類に分けられる。糖質系甘味料は、砂糖、でん粉由来の糖、その他の糖、糖アルコールがあり、非糖質系甘味料は、天然甘味料(ステビア等)と合成甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム等)などが包含される。
【0012】
(無果汁)
本実施形態において「無果汁」の飲料とは、果汁を実質的に含有しない飲料を意味する。本明細書においては、果汁の含有量が飲料100mlあたり1.0g(ストレート換算)未満である炭酸飲料を「無果汁」の炭酸飲料とする。果汁の含有量は、飲料100mlあたり0.5g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、「果汁」とは、果実を粉砕して搾汁、裏ごし等をし、皮、種子等を除去したものをいい、果実は日本標準商品分類による果実とする。果汁の含有量は、果実飲料の日本農林規格に定める基準により設定できる。
【0013】
(ナトリウム)
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、ナトリウムを所定量含有する。本実施形態においてナトリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはナトリウムを豊富に含む海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるナトリウムの塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてナトリウムは、これらのナトリウム塩に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含有する。本実施形態においてナトリウムは、好ましくは炭酸水素ナトリウム由来である。
【0014】
(ナトリウムの含有量)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、ナトリウムを高含有する飲料であり、高含有とはナトリウムの含有量が200ppm以上であることをいう。熱中症予防を目的として効果的に水分補給を行うには、一定量のナトリウムを含有する飲料を摂取するのが有効だからである。好ましくは300ppm以上であり、さらに好ましくは350ppm以上であり、清涼飲料工業会が2012年に制定した「熱中症対策」表示ガイドラインによれば、400ppm以上であることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が上記下限値以上であることで、飲用者にとって十分な量のナトリウムを含んだ容器詰炭酸飲料とすることができる。
また、本実施形態の容器詰炭酸飲料は、ナトリウムの含有量が800ppm以下であることが好ましく、700ppm以下であることがより好ましく、600ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が上記上限値以下であることで、無糖炭酸に由来する苦みなどの後味の悪さを改善するといった本実施形態の効果がより効果的に発揮される。
【0015】
なお、ナトリウムが高含有であると、飲料を口に含んですぐに塩味(トップの塩味)を強く感じることがあり、また、飲料を飲み込んだ後に苦みやえぐみ等(後味の雑味)を感じ、すっきりとした味わいが得られにくいことがあり、これらの傾向は、容器詰炭酸飲料の液温がぬるくなった場合に顕著なものとなる。しかし、後述するように、本実施形態によれば、特定の2価ミネラルと1価ミネラルの配合量を所定範囲に調整することにより、液温がぬるくなった場合のトップの塩味や後味の雑味が効果的に抑制され、ぬるくなった状態でも風味の良好な飲料とすることができる。
【0016】
(カリウム)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、カリウムを含有することが好ましい。カリウムの含有量は、40ppm以上640ppm以下であることが好ましい。本実施形態においてカリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いは塩化物を含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるカリウムとしては、例えば、塩化カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、乳酸カリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてカリウムは、これらの塩化物に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは塩化カリウムを含有する。本実施形態においてカリウムは、好ましくは塩化カリウム由来である。カリウムを所定範囲で含有することにより、後述するナトリウムとカリウムの含有量の和を所定範囲に調整しやすくなり、本実施形態の効果がより効果的に発揮される。また、カリウムを所定範囲で含有することにより、ナトリウムが高含有であることに起因した、容器詰炭酸飲料が冷えた状態(例えば、開栓直後)でのトップの塩味や後味の雑味が抑制されやすくなり、冷涼感を感じさせることができるという効果も奏する。本実施形態の容器詰炭酸飲料中のカリウムの含有量は、好ましくは60ppm以上400ppm以下、更に好ましくは80ppm以上300ppm以下である。
【0017】
(ナトリウム+カリウム)
本実施形態の容器詰炭酸飲料において、ナトリウム(Na)とカリウム(K)の含有量(ppm)の和(Na+K)は1100ppm以下であり、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下である。ナトリウムとカリウムの含有量の和が上記上限値以下であることで、後述する(Na+K)/(Ca+Mg)を所定範囲に調整することと相まって、ナトリウムが高含有であることに起因した、液温がぬるくなった場合のトップの塩味や後味の雑味が効果的に抑制され、ぬるくなった状態でも風味の良好な飲料とすることができる。さらに、ナトリウムとカリウムの含有量の和が上記上限値以下であることで、容器詰炭酸飲料が冷えた状態(例えば、開栓直後)でのトップの塩味や後味の雑味が抑制されやすくなり、風味の良好な飲料となるという効果も奏する。
また、本実施形態の容器詰炭酸飲料は、ナトリウムとカリウムの含有量の和が240ppm以上であり、300ppm以上であることが好ましく、400ppm以上であることがさらに好ましい。ナトリウムとカリウムの含有量の和が上記下限値以上であることで、液温がぬるくなった状態においても、また冷えた状態(例えば、開栓直後)においても、後味の雑味が効果的に抑制され、風味の良好な飲料とすることができる。
【0018】
(カルシウム)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、カルシウムの含有量が1ppm以上140ppm以下であることが好ましい。本実施形態においてカルシウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはカルシウムを含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるカルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム,炭酸カルシウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてカルシウムは、これらのカルシウム塩に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは天然水を含有する。本実施形態においてカルシウムは、好ましくは天然水由来である。カルシウムが多く含有していると、飲用した場合に苦い塩味を感じることがあるが、所定範囲で存在することにより、後味にかすかな甘味を感じさせ、飲み心地の良さに影響を与える。本実施形態の容器詰炭酸飲料中のカルシウムの含有量は、好ましくは2ppm以上100ppm以下、更に好ましくは5ppm以上50ppm以下である。
【0019】
(マグネシウム)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、マグネシウムの含有量が0.1ppm以上140ppm以下であることが好ましい。本実施形態においてマグネシウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはマグネシウムを含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができるマグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム,炭酸マグネシウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態においてマグネシウムは、これらのマグネシウム塩に由来することができる。本実施形態の飲料は、好ましくは天然水を含有する。本実施形態においてマグネシウムは、好ましくは天然水由来である。マグネシウムが多く含有していると、飲用した場合に苦味を感じることがあるが、所定範囲で存在することにより、後味にまろやかさとキレを与え、飲み心地の良さに影響を与える。本実施形態の容器詰炭酸飲料中のマグネシウムの含有量は、好ましくは0.5ppm以上100ppm以下、更に好ましくは1ppm以上50ppm以下である。
【0020】
((Na+K)/(Ca+Mg))
本実施形態の容器詰炭酸飲料において、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)の含有量(ppm)に対するナトリウム(Na)とカリウム(K)の含有量(ppm)の比((Na+K)/(Ca+Mg))は8.0以上であり、好ましくは12.0以上であり、より好ましくは15.0以上である。(Na+K)/(Ca+Mg)が上記下限値以上であることで、冷えた状態で風味が良好でありながらも、長時間に少しずつ飲用することによりぬるくなってしまった温度帯の飲用であってもナトリウム由来の塩味が目立たずおいしく飲用できる飲料となる。また、(Na+K)/(Ca+Mg)は300.0以下であり、好ましくは100.0以下であり、より好ましくは80.0以下である。(Na+K)/(Ca+Mg)が上記上限値以下であることで、冷えた状態で風味が良好でありながらも、長時間に少しずつ飲用することによりぬるくなってしまった温度帯の飲用であってもナトリウム由来の雑味などの異味が目立たずおいしく飲用できる飲料となる。
【0021】
(塩化物イオン)
本実施形態の容器詰炭酸飲料は、塩化物イオンの含有量が100ppm以上450ppm以下であることが好ましい。本実施形態において塩化物イオンは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いは塩化物を含む天然水、海洋深層水、にがりや海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本実施形態で用いることができる塩化物としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態において塩化物イオンは、これらの塩化物に由来することができる。塩化物イオンが多く含有していると、飲用した場合にナトリウム由来の塩味を増強することがあるが、所定範囲で存在することにより、後味に締まりを与え、飲み心地の良さに影響を与える。本実施形態の容器詰炭酸飲料中の塩化物イオンの含有量は、好ましくは110ppm以上430ppm以下、更に好ましくは120ppm以上300ppm以下である。
【0022】
(ガスボリューム)
本実施形態の炭酸飲料は、ガスボリュームが2.0以上であり、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがさらに好ましく、4.2以上であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記下限値以上であることで、ナトリウムに由来する塩味などの後味を効果的に改善することができ、開栓後時間をおいても炭酸感を維持できる。また、ナトリウムを高含有することにより、炭酸の刺激や苦み、酸味がマイルドになり、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さを得ることができ、嗜好的に好ましい飲料とすることができる。本実施形態の炭酸飲料は、ガスボリュームが6.0以下であることが好ましく、5.8以下であることがさらに好ましく、5.5以下であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記上限値以下であることで、本実施形態の効果が効果的に発揮される。なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を炭酸飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0023】
(その他の成分)
本実施形態に係る炭酸飲料には、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、各種エステル類、着色料(色素)、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、乳化剤、保存料、調味料、香料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、ビタミン等の栄養機能成分、pH調整剤、品質安定剤等があげられる。これらを単独、又は併用して配合してもよい。本実施形態は、強い呈味を示す成分を添加しない炭酸飲料にて、より有効である。
【0024】
(水)
本実施形態に適した水としては、例えば、天然水、市水、井水、イオン交換水、脱気水等が挙げられるが、これらのうち天然水を用いるのが好ましい。天然水を用いることで、天然のシリカ等のミネラル成分を含有することができる。なお、脱気水を用いる場合、飲用に適した水の一部または全てを脱気水とすることができる。
【0025】
(容器)
本実施形態の炭酸飲料は、容器に充填して提供される。ここで、本実施形態における容器詰飲料とは、飲料を容器に詰めて密封するとともに、除菌や殺菌などの微生物制御処理を施すことで長期の保存性を与えた飲料をいう。
本実施形態において使用する容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。
【0026】
(熱中症対策飲料)
本実施形態の炭酸飲料は、熱中症対策飲料とすることができる。熱中症対策飲料とは、熱中症対策、あるいは熱中症の予防に適した飲料を意味するものである。ここで、熱中症対策とは、熱中症の発症予防、或いは熱中症の症状軽減を意味する。熱中症対策飲料であることは、商品に関するテレビCM、店頭POP、ポスター、説明会などでの説明などにより判断することができる。一般社団法人全国清涼飲料連合会の「熱中症対策」表示ガイドラインによれば、飲料100mlあたり少なくとも40~80mgのナトリウム濃度の清涼飲料水を言う。
【0027】
(製造方法)
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、ナトリウムの含有量が所定範囲となるようナトリウム源を添加するとともに、カリウム、カルシウム及びマグネシウムを調整する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、所定量炭酸水素ナトリウムを添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌・溶解し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。また、殺菌など微生物制御の方法は飲料の配合内容や容器により適宜選択可能であり、容器充填前の飲料原液のフィルタによるろ過滅菌や加熱殺菌、容器充填後の加熱殺菌などを、単一で或いは組み合わせて採用できる。
【0028】
<用語の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。また、「X以上」或いは「Y以下」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意味を包含する。
【0029】
以上の容器詰炭酸飲料は、ナトリウムを所定量含有し、さらに無糖、無甘味、無果汁でありながら、ナトリウム由来の塩味が抑制された、風味の良好なものとなる(本発明に係るナトリウムを高含有する容器詰炭酸飲料における呈味改善方法に該当)。また、以上の容器詰炭酸飲料は、長時間に少しずつ飲用することによりぬるくなってしまった温度帯の飲用であってもナトリウム由来の塩味や雑味などの異味が目立たずおいしく飲用できるものとなる(本発明に係るナトリウムを高含有する容器詰炭酸飲料における品質保持方法に該当)。
【0030】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0031】
以下、製造例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の製造例、試験例等に何ら限定されるものではない。
【0032】
<容器詰炭酸飲料の調製、製造方法>
[試料1~17]下記の各原料を表1に示す配合で混合、溶解し、調合液を得た後、0.45μmのセルロースアセテートフィルタ(アドバンテック東洋社製)によるろ過滅菌を行った。得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが表1に示す値になるよう、カーボネーターで二酸化炭素を混合した後、洗浄殺菌済みの500mL容PETボトルに502±1mLとなるように充填し、容器詰炭酸飲料を得た。
【0033】
塩化ナトリウム:精製塩(日本食塩製造社製)
炭酸水素ナトリウム:重炭酸ナトリウム(トクヤマ社製)
塩化カリウム:塩化カリウム(多木食品社製)
塩化カルシウム:粒状塩化カルシウム(トクヤマ社製、二水和物)
塩化マグネシウム:クリスタリン(赤穂化成社製、六水和物)
天然水1:千葉県で採取された天然水(ナトリウム21.7ppm、カリウム3.2ppm、カルシウム23.0ppm、マグネシウム11.0ppm、塩化物イオン(Cl-)29.0ppm)
天然水2:山口県で採取された天然水(ナトリウム6.7ppm、カリウム1.4ppm、カルシウム8.3ppm、マグネシウム1.2ppm、塩化物イオン(Cl-)7.0ppm)
天然水3:フランスで採取された天然水(ナトリウム7.0ppm、カリウム1.0ppm、カルシウム80.0ppm、マグネシウム26.0ppm、塩化物イオン(Cl-)182.0ppm)
【0034】
<試験例1>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1~17の各容器詰炭酸飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、FREE SHAKE V-CARBO(ビクスル社製,型式:DGV-1)を用いてガスボリュームを測定した。結果を表1に示す。
【0035】
<試験例2>ミネラル量の測定
(ナトリウム,カリウム)各試料で得た飲料(サンプル)容器詰炭酸飲料を脱気して、原子吸光分光光度計「A A240FS」(Agilent Technologies社製)にて、ナトリウム(Na)、カリウム(K)の含有量を測定した。
(カルシウム,マグネシウム)各試料で得た飲料(サンプル)容器詰炭酸飲料を脱気して、ICP発光分光分析装置(ICP-OES)「Vista-PRO」(Agilent Technologies社製)にて、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)の含有量を測定した。
(塩化物イオン)塩化物イオン(Cl-)各実施例及び比較例で得た飲料(サンプル)容器詰炭酸飲料を脱気して、イオンクロマトグラフ「ICS-1000」(Thermo Scientific社製)にて塩化物イオン(Cl-)の含有量を測定した。
イオンクロマトグラフの分析条件
カラム:IonPac AS22 4×250mm
ガードカラム:IonPac AG22 4×50mm
移動相:4.5mmol/L Na2CO3/1.4mmol/L NaHCO3
流速:1.2mL/min
注入量:25μL
検出器:電気伝導度検出器
【0036】
<試験例3>官能評価
試料1~17の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された5人のパネラーにより、サンプル30mLを試飲することにより行った。(a)開栓直後 トップの口当たり、(b)開栓直後 後味のスッキリ感、(c)開栓から2時間後 トップの口当たり、(d)開栓から2時間後 後味のスッキリ感の4項目に関し、それぞれ示す対照、保管条件および評価基準にて、5段階にて評価した。評価人数の多かった点数を評点として採用し、評価人数が同数の場合はパネラー間の協議により評点を決定した。また、下記基準にて総合評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
=(a)開栓直後 トップの口当たり=
陰性対照:試料1
陽性対照:試料10(採点前の事前評価により決定)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、開栓直後に官能評価。
評価基準:
5点:トップの塩味が感じられない。おいしく感じる。陽性対照と同様。
4点:陽性対照と比べると、トップの塩味を弱く感じるものの、口に多く含むことに抵抗はない。陰性対照と比べて塩味、雑味がかなり和らぎ、おいしく感じる。
3点:陽性対照と比べるとトップの塩味を感じるものの、口に多く含むことに抵抗は少ない。陰性対照と比べて塩味、雑味が若干和らいでいる。
2点:陽性対照と比べると、トップの塩味を感じ、口に多く含むことに抵抗を感じる。陰性対照と比べて塩味、雑味がわずかに和らいでいる。
1点:陰性対照と比べると、同程度に塩味が強く、少量しか口に含めない、雑味がする。
【0038】
=(b)開栓直後 後味のスッキリ感=
陰性対照:試料2
陽性対照:試料10(採点前の事前評価により決定)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、開栓直後に官能評価。
評価基準:
5点:後味にエグ味や厚味は感じられず、スッキリ感がある。陽性対照と同様。
4点:陽性対照と比べると、後味に若干厚味を感じるが、スッキリ感は有している。
3点:陽性対照と比べると、後味にエグ味や厚味を若干感じるが、スッキリ感は保っている。
2点:陽性対照と比べると、後味にエグ味や厚味を感じ、スッキリ感が弱い。
1点:陰性対照と比べると、同程度に後味にエグ味や厚味を感じ、スッキリ感が感じられない。
【0039】
=(c)開栓から2時間後 トップの口当たり=
陰性対照:試料1(開栓直後)
陽性対照:試料10(採点前の事前評価により決定)(開栓直後)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、開栓後に約100mLを排出して再栓した。その後25℃に置き、30分毎の50mLの排出・再栓を繰り返し、開栓後2時間の時点で飲用した。なお、陰性対照および陽性対象は、常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却したサンプルを、開栓直後に飲用した。
評価基準:
5点:トップの塩味が感じられない。おいしく感じる。陽性対照と同様。
4点:陽性対照と比べると、トップの塩味を弱く感じるものの、口に多く含むことに抵抗はない。陰性対照と比べて塩味、雑味がかなり和らぎ、おいしく感じる。
3点:陽性対照と比べるとトップの塩味を感じるものの、口に多く含むことに抵抗は少ない。陰性対照と比べて塩味、雑味が若干和らいでいる。
2点:陽性対照と比べると、トップの塩味を感じ、口に多く含むことに抵抗を感じる。陰性対照と比べて塩味、雑味がわずかに和らいでいる。
1点:陰性対照と比べると、同程度に塩味が強く、少量しか口に含めない、雑味がする。
【0040】
=(d)開栓から2時間後 後味のスッキリ感=
陰性対照:試料2(開栓直後)
陽性対照:試料10(採点前の事前評価により決定)(開栓直後)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、開栓後に約100mLを排出して再栓した。その後25℃に置き、30分毎の50mLの排出を繰り返し、開栓後2時間の時点で飲用した。なお、陰性対照および陽性対象は、常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却したサンプルを、開栓直後に飲用した。
評価基準:
5点:後味にエグ味や厚味は感じられず、スッキリ感がある。陽性対照と同様。
4点:陽性対照と比べると、後味に若干厚味を感じるが、スッキリ感は有している。
3点:陽性対照と比べると、後味にエグ味や厚味を若干感じるが、スッキリ感は保っている。
2点:陽性対照と比べると、後味にエグ味や厚味を感じ、スッキリ感が弱い。
1点:陰性対照と比べると、同程度に後味にエグ味や厚味を感じ、スッキリ感が感じられない。
【0041】
=変動評価=
開栓直後の評価(a+b)に対する開栓から2時間後の評価(c+d)の比率を変動評価((c+d)/(a+b))とした。
【0042】
=総合評価=
評価基準:
◎:開栓直後の評価(a+b)が10点以上であり、かつ変動評価((c+d)/(a+b))が0.8以上。
〇:◎に該当せず、開栓直後の評価(a+b)が6点以上であり、かつ変動評価((c+d)/(a+b))が0.7以上。
△:◎、〇に該当せず、開栓直後の評価(a+b)が5点以上であり、かつ変動評価((c+d)/(a+b))が0.6以上。
×:◎、〇、△のいずれにも該当しない。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、ナトリウムや他のミネラルの含有量が所定範囲にある容器詰炭酸飲料は、無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰炭酸飲料であっても風味の良好な飲料であり、長時間に渡り少しずつ飲用した場合であっても、風味の変化が少ない飲料となった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の容器詰炭酸飲料は、無糖・無甘味・無果汁でありながら、ナトリウムやミネラル由来の塩味や雑味が抑制され、風味の良好な炭酸飲料を提供するものである。熱中症対策として長時間にわたり飲用する、いわゆる「ちびだら飲み」をした場合であっても、冷却時からぬるい温度帯の飲用まで大きな風味の変化をすることなくおいしく飲用できる飲料を提供するものである。