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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006582
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】養殖貝の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/54 20170101AFI20240110BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240110BHJP
   B08B 3/06 20060101ALI20240110BHJP
   B08B 1/32 20240101ALI20240110BHJP
【FI】
A01K61/54
B08B3/02 C
B08B3/06
B08B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107621
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】597116621
【氏名又は名称】エラ機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】江良 一二三
【テーマコード(参考)】
2B104
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
2B104AA25
2B104AA26
2B104DA08
3B116AA46
3B116AB01
3B116BA01
3B116BB22
3B116BB33
3B201AA46
3B201AB01
3B201BA01
3B201BB22
3B201BB33
3B201BB92
(57)【要約】      (修正有)
【課題】養殖した稚貝から成貝までを一台の洗浄装置で効率よく安全確実に洗浄を行う。
【解決手段】脚部3と洗浄ドラム10を軸着した揺動軸5を軸支してなる架台2と、洗浄する養殖貝の大きさにより孔の大きさを変えた複数の洗浄面を反転させて複数の洗浄面を切り替える切替部20と、揺動軸5を正逆回転可能な駆動部30と、揺動する洗浄ドラム内を移動する養殖貝に海水を噴射させて洗浄する洗浄部40とを備え、洗浄ドラム10の入口側から養殖貝を投入し、駆動部により洗浄ドラムを揺動させて養殖貝が揺動しながら洗浄ドラム内を移動し、洗浄ドラム内で養殖貝が互いに擦れ合うことにより表面に付着した付着物を孔から外に排出すると共に、洗浄部から噴射される海水圧により養殖貝を洗浄して洗浄ドラムの出口側から排出させる洗浄装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と、
洗浄ドラムを軸着した揺動軸を軸支してなる架台と、
洗浄する養殖貝の大きさにより孔の大きさを変えた複数の洗浄面を反転させて前記複数の洗浄面を切り替える切替部と、
前記揺動軸を正逆回転可能な駆動部と、
揺動する洗浄ドラム内を移動する養殖貝に海水を噴射させて洗浄する洗浄部と、
を備える洗浄装置において、
前記洗浄ドラムの入口側から養殖貝を投入し、前記駆動部により前記洗浄ドラムを揺動させて養殖貝が揺動しながら前記洗浄ドラム内を移動し、前記洗浄ドラム内で養殖貝が互いに擦れ合うことにより表面に付着した付着物を前記孔から外に排出すると共に、前記洗浄部から噴射される海水圧により養殖貝を洗浄して前記洗浄ドラムの出口側から排出させることを特徴とする養殖貝の洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄ドラムは、入口側と出口側に設けた一対の環状部と、該環状部に前記揺動軸を軸心方向に軸着する軸支持部と、前記一対の環状部を互いに連結する補強部とからなる基枠部と、断面半円状でそれぞれ前記孔の大きさの異なる一対の前記洗浄面と、を備え、前記洗浄面の一方は、養殖貝の大きさが2~3cmの稚貝が落下しない網目孔、格子孔または小孔からなる小孔面からなり、他方の前記洗浄面は、大きさが6~8cmに生育した半生貝が落下しない網目孔、格子孔または孔からなる大孔面を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の養殖貝の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄ドラムは、入口側の環状部下側にホッパーを着脱可能に取付け、前記洗浄ドラムを反転させるときに前記ホッパーを取外し、前記洗浄ドラムを反転させた後、再度、下側環状部に前記ホッパーを取付け可能とすることを特徴とする請求項1に記載の養殖貝の洗浄装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記架台の外側に延伸させた前記揺動軸の一端に設けた切替ハンドルと、前記揺動軸の軸部に固着した固定フランジと、前記揺動軸に挿通した遊動フランジと、前記固定フランジと前記遊動フランジとを着脱可能に連結する連結ボルトと、を備えてなり、
前記固定フランジと前記遊動フランジとを連結ボルトで連結して前記固定フランジと前記揺動軸と前記洗浄ドラムとを一体に揺動可能にし、
前記洗浄ドラムの反転は、前記固定フランジと前記遊動フランジを連結している連結ボルトを外した後、切替ハンドルを操作し、前記揺動軸を回動させて前記洗浄ドラムの前記大孔面を下側に位置させた後、再度、前記固定フランジと前記遊動フランジを前記連結ボルトで連結することにより、前記洗浄ドラムの洗浄面を切替可能にしたことを特徴とする請求項1または2記載の養殖貝の洗浄装置。
【請求項5】
前記駆動部は、モータと、モータ軸に軸支した回転板に偏心軸支した偏心軸と、該偏心軸に一端を軸支し、他端を前記切替部の前記遊動フランジに設けた作動軸に軸支した連動アームとからなり、前記モータの駆動による前記偏心軸の偏心回転により、前記偏心軸と前記遊動フランジとの間に軸支した前記連動アームの枢動により前記遊動フランジを揺動させることにより、前記遊動フランジに連結させた前記固定フランジと、前記揺動軸に軸着してある前記洗浄ドラムとを揺動させて前記洗浄ドラム内の養殖貝同士を擦り合わせて養殖貝の表面に付着した付着物を落とすことを特徴とする請求項4の養殖貝の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帆立貝、牡蠣などの養殖貝の洗浄装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帆立貝や牡蠣などの二枚貝(以下、養殖貝という。)の養殖方法は多種多様である。その代表的な吊籠式による帆立て貝の養殖方法は、養殖貝の卵や幼生を採取器内に付着させて成育させた稚貝(約3cm)を採取し、その稚貝を育成籠に移し替えて再度、海中に戻し育成させ、さらに、2~3ヵ月育成後、半生貝(約6cm)に生育させた後、さらに大きな籠に入れ変えて海中に戻し、再度、育成させて成貝(約10cm)にして出荷する方法である。このような吊籠式の養殖方法は、砂地で生育させる養殖方法に比べ、養殖貝が砂を含まないことから広く行われている。
【0003】
養殖貝は、稚貝の養殖を始めてから出荷するまでには通常2年から3年間海中で生育させる。その間、養殖貝は海中に吊るされたままの状態で動かないため、養殖貝の表面に海中で浮遊するイガイやふじつぼ、赤皿貝、または、各種の海草などが付着し養殖貝の生育と共にこの付着物も一緒に成長する。
【0004】
そのため、養殖貝の表面にこれら付着物が付着すると、潮の流れが悪くなって養殖貝の生育が遅れたり、付着物の密生によりプランクトンが不足して養殖貝の生育が悪くなったり、貝が死んだりする恐れがある。さらには、貝に着いた付着物により養殖貝同士が絡まったりして養殖貝の生育効率を著しく低下させている。さらにはまた、養殖貝は、洗浄作業を怠ると出荷時に海中から養殖貝を引き上げたとき、養殖貝に付着した付着物の除去作業が大変である。そのため、吊下げ式の養殖貝の養殖では、養殖貝の籠替え時に養殖貝の表面に付いた付着物を定期的に除去する洗浄作業が何度か行われている。
【0005】
前記養殖貝の洗浄に使用される洗浄装置は多種多様であるが、その多くが、洗浄ドラムを回転させて洗浄するか、または、洗浄ドラム内に設けた仕切板や帯板からなる螺旋翼を取付けて養殖貝を洗浄することが知られている(特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002―059088号
【特許文献2】特開2004-329083号
【0007】
前記洗浄装置に使用されている洗浄ドラムは、いずれも洗浄ドラムを回転させて洗浄する洗浄装置であって、洗浄ドラムに設けた孔は半生貝や成貝など比較的大きく成長した養殖貝を洗浄するための大きな孔で、直径が2~3cmの稚貝は孔から落ちてしまうため洗浄することができなかった。また、帆立貝の養殖は、前記したごとく、稚貝から成貝になるまで何度か貝に付着した海生物を除去する洗浄を行わなければならないが、洗浄ドラムに設けた洗浄孔が大きいと、洗浄中に当該孔から落下しない大きさ以上の貝しか洗浄することができない。そのため、稚貝を洗浄するためには稚貝洗浄用の洗浄装置を必要とし大変不経済であると共に、従来の洗浄装置の洗浄ドラムは内部に仕切板やブラシ部を取付けて洗浄するため構造が複雑である。また、洗浄ドラムを回転させて洗浄するため、洗浄中に貝が洗浄ドラムの孔に嵌まったり、回転中に貝が落下して破損するおそれがあり洗浄効率が悪いという問題点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、養殖される帆立貝の大きさに関係なく稚貝から成貝までを一台の洗浄装置により洗浄可能とし、しかも、洗浄ドラムを揺動運動させて洗浄することにより、洗浄中に養殖貝が孔に詰まったり、貝が落下して破損するおそれがないため養殖貝の歩留まりを向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、脚部と、洗浄ドラムを軸着した揺動軸を軸支してなる架台と、洗浄する養殖貝の大きさにより孔の大きさを変えた複数の洗浄面を反転させて複数の洗浄面を切り替える切替部と、揺動軸を正逆回転可能な駆動部と、揺動する洗浄ドラム内を移動する養殖貝に海水を噴射させて洗浄する洗浄部と、を備える洗浄装置において、洗浄ドラムの入口側から養殖貝を投入し、駆動部により洗浄ドラムを揺動させて養殖貝が揺動しながら洗浄ドラム内を移動し、洗浄ドラム内で養殖貝が互いに擦れ合うことにより表面に付着した付着物を孔から外に排出すると共に、洗浄部から噴射される海水圧により養殖貝を洗浄して洗浄ドラムの出口側から排出させることを特徴とする。また、洗浄ドラムは、入口側と出口側に設けた一対の環状部と、環状部に揺動軸を軸心方向に軸着する軸支持部と、一対の環状部を互いに連結する補強部とからなる基枠部と、断面半円状でそれぞれ孔の大きさの異なる一対の洗浄面と、を備え、洗浄面の一方は、養殖貝の大きさが2~3cmの稚貝が落下しない網目孔、格子孔または小孔からなる小孔面からなり、他方の洗浄面は、大きさが6~8cmに生育した半生貝が落下しない網目孔、格子孔または孔からなる大孔面を設けてなることを特徴とする。さらには、洗浄ドラムは、入口側の環状部下側にホッパーを着脱可能に取付け、洗浄ドラムを反転させるときにホッパーを取外し、洗浄ドラムを反転させた後、再度、下側環状部にホッパーを取付け可能とすることを特徴とする。さらには、また、切替部は、架台の外側に延伸させた揺動軸の一端に設けた切替ハンドルと、揺動軸の軸部に固着した固定フランジと、揺動軸に挿通した遊動フランジと、固定フランジと遊動フランジとを着脱可能に連結する連結ボルトと、を備えてなり、固定フランジと遊動フランジとを連結ボルトで連結して固定フランジと揺動軸と洗浄ドラムとを一体に揺動可能にし、洗浄ドラムの反転は、固定フランジと遊動フランジを連結している連結ボルトを外した後、切替ハンドルを操作し、揺動軸を回動させて洗浄ドラムの大孔面を下側に位置させた後、再度、固定フランジと遊動フランジを連結ボルトで連結することにより、洗浄ドラムの洗浄面を切替可能にしたことを特徴とする。また、駆動部は、モータと、モータ軸に軸支した回転板に偏心軸支した偏心軸と、偏心軸に一端を軸支し、他端を切替部の遊動フランジに設けた作動軸に軸支した連動アームとからなり、モータの駆動による偏心軸の偏心回転により、偏心軸と遊動フランジとの間に軸支した連動アームの枢動により遊動フランジを揺動させることにより、遊動フランジに連結させた固定フランジと、揺動軸に軸着してある洗浄ドラムとを揺動させて洗浄ドラム内の養殖貝同士を擦り合わせて養殖貝の表面に付着した付着物を落とすことを特徴とする。
【0010】
したがって、前記洗浄装置は、架台にそれぞれ径が異なる洗浄面を有する洗浄ドラムを揺動可能に取付けてなり、洗浄する養殖貝の大きさが2~3cmの稚貝から6~8cmに生育した半生貝または成貝を一台の洗浄装置で洗浄可能にしたことにより、経済的で洗浄効率の向上を図ることができる。また、養殖貝を洗浄する洗浄ドラムに取付けた洗浄面は、稚貝が洗浄孔から落ちない小洗浄面と、半生貝が落下しない大洗浄面を有してなり、洗浄する養殖貝の大きさにより洗浄面を切替部を介して洗浄ドラムを反転させるだけの簡単な操作で養殖貝を効率的に洗浄することができる。さらには、駆動部による揺動運動(振り子運動)により洗浄ドラムを揺動させることにより養殖貝が洗浄ドラム内で跳ねたり飛んだり引っかかったりすることがなく養殖貝同士が擦れる摩擦運動により洗浄をするため効率よく汚れを落とすことができ、且つ、洗浄中に養殖貝が割れたり傷んだりすることがないため、洗浄時における養殖貝の歩留まりを向上させることができる。さらには、養殖貝から剥がれた汚れや付着物は洗浄部による海水の高圧噴射により、効率よく汚れを落とすことができる。さらにはまた、洗浄ドラムに取付けたホッパーは、揺動ドラムと一体に揺動するためホッパー内の養殖貝が振動により自動的に洗浄ドラム内に移送させることができ便利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかる洗浄装置で養殖貝の洗浄状態を示す斜視図である。
図2】洗浄装置の正面図である。
図3】洗浄装置の左側面図である。
図4】洗浄装置の右側面である。
図5】洗浄ドラムの分解斜視図である。
図6】洗浄ドラムに取付ける洗浄面の第二実施例を示す正面図(a)および洗浄ドラムに取付ける洗浄面の第三実施例を示す正面図(b)である。
図7】洗浄ドラムの切替部を示す一部破断した要部拡大断面図である。
図8】切替部の固定フランジと遊動フランジを連結した連結ボルトを外した状態の一部破断した斜視図(a)、切替部のハンドル部を作動させて洗浄ドラムを反転させる状態を示す一部破断した斜視図(b)、および切替部を作動させて洗浄ドラムを反転させた状態を示す一部破断した斜視図(c)である。
図9】ホッパーに投入した養殖貝が洗浄ドラムの揺動により移動する状態を示す要部拡大断面図である。
図10】第2洗浄ドラムを取付けた第2洗浄装置の正面図である。
図11】第2洗浄ドラムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明にかかる洗浄装置で養殖貝の洗浄状態を示す斜視図、図2は洗浄装置の正面図、図3は洗浄装置の左側面図、図4は洗浄装置の右側面、図5は洗浄ドラムの分解斜視図である。本発明の洗浄装置1は、吊下ネットで成育させた稚貝(約3cm)から半生貝(約6cm)および成貝(約10cm)までを一台で洗浄可能にし、伸縮可能な脚部3を有した架台2の長手方向の中央に洗浄ドラム10を揺動可能に軸着した揺動軸5を軸支し、該揺動軸の一方を架台2から延伸させて設けた延伸軸部6に洗浄ドラム10の洗浄面を反転させて洗浄面を切り替える切替部20と、前記前記洗浄ドラム10を揺動させる駆動部30とを取付け、前記架台2の一側に洗浄ドラム10の揺動により内部を移動する養殖貝Xに海水を噴射させて汚れを落とす複数の噴射ノズル43を有した洗浄部40を洗浄ドラム10と平行に取付けてある。
【0013】
前記洗浄装置1を構成する架台2は、上方軸心方向に設けた軸受部4に洗浄ドラムを軸着した揺動軸5を回動可能に軸支し、該架台の脚部3は、洗浄する養殖貝Xをスムースに移動させるため、洗浄ドラム10の入口側の脚部を高く、出口側の脚部を低くして洗浄ドラム全体を傾斜可能に取付けてある。また、脚部3は、脚を同じ高さに上下動させることにより、洗浄ドラム10の高さ(位置)を調節可能にして洗浄作業の効率化を図ることもできる。
【0014】
前記洗浄ドラム10は、図5に示すごとく、全体を筒状に形成した基枠部11の表面にそれぞれ洗浄孔の大きさが異なる一対の洗浄面17a、17bを取付けてなり、前記基枠部11は、長手方向両端に設けた環状部12と、該環状部の直径方向に洗浄ドラム10を軸支する軸支持部13と、前記環状部を互いに連結する補強部15とからなり、前記軸支持部13の軸心方向に設けた軸孔14に前記揺動軸5を軸着し、該揺動軸と洗浄ドラム10とを一体に揺動可能に取付けてある。
【0015】
前記洗浄ドラム10に取付けた一対の洗浄面の一方小洗浄面17aは、断面半円状の板状に形成し、略全体に養殖貝の大きさが2~3cmの稚貝が落下しない程度の洗浄孔18aを設け、他方の大洗浄面17bは、大きさが6~8cmに生育した半生貝が落下しない程度の洗浄孔18bを略全体に設けてある。
【0016】
前記洗浄面は、図6(a)に示すごとく、所望の径を亀甲状の網目を有する金網により形成した半月状の網板18や、さらには、図6(b)に示すごとく、針金を格子状で所望の格子径を設けた半月状の格子板19で形成してもよい。前記網板18または格子板19は板材に比べコストが安価で、且つ、洗浄ドラム10の軽量化を図ることができる。
【0017】
前記切替部20は、図7,8に示すごとく、洗浄ドラム10を揺動させる揺動軸5の一方を架台2から延伸させた延伸軸部6に一対の固定フランジ21と遊動フランジ24とハンドル部28と、前記固定フランジ21と遊動フランジ24を着脱可能に連結する連結ボルト27とを備えてなり、前記固定フランジ21は、軸部6に固着し、ハンドル部28は延伸軸部6の先端に固着され、遊動フランジ24は延伸軸部6に遊嵌してある。したがって、遊動フランジ24は、連結ボルト27で固定フランジ21に連結されているときのみ延伸軸部6を介して揺動軸5と一体に揺動する。
【0018】
この切替部20の固定フランジ21と遊動フランジ24は、少なくとも二以上の連結ボルト27で着脱可能に連結し、後記する駆動部30による偏心運動は、揺動アーム37を介して遊動フランジ24に取付けてある伝達部26から固定フランジ21を介して揺動軸5に伝達される。
【0019】
前記揺動軸5を揺動させることにより、揺動軸に固着してある洗浄ドラム10が一体に揺動(振り子運動)する。この洗浄ドラム10の揺動(振り子運動)は、軸径が細い揺動軸5を介して重量がある洗浄ドラム10を揺動させるため、揺動時の反作用が大きく、固定フランジ21と揺動軸5との軸着部分が揺動力による反作用で負荷がかかり故障しやすい。そこで固定フランジ21にボス部22を設けて揺動軸5との固着面積を広げることにより強度を強化して揺動力の反作用による故障を防止している。このボス部は、固定フランジだけでなく、揺動軸と軸着してある洗浄ドラムの軸支持部にボス部を設けて軸着することができるのは勿論である。
【0020】
前記駆動部30は、図3に示すごとく、架台2の一側に設けたモータ台8に位置したモータ31と、該モータのモータ軸に軸支した回転板32と、該回転板に偏心軸支した偏心軸35と、該偏心軸に一端を軸支し、他端を前記切替部20の遊動フランジ24に設けた伝達部26に軸支した連動アーム37とからなり、モータ31の駆動による偏心軸35の偏心回転を連動アーム37を介して伝達部26から遊動フランジ24に揺動運動として伝動され、該動フランジの揺動運動は遊動フランジ24に連結されている固定フランジ21を介して揺動軸5と洗浄ドラム10に伝達される。この揺動軸5を中心に洗浄ドラム10を揺動(振り子運動)させると洗浄ドラム10内の養殖貝X同士が飛んだり跳ねたりすることなく貝同士が擦り合って養殖貝の表面に付着した汚れ(付着物)を落とすことができる。
【0021】
前記洗浄部40は、図1,2に示すごとく、架台2の上方一側で洗浄ドラム10と平行に配置した送水管43と、該送水管に一定間隔に設けた複数の噴射ノズル43とからなり、該噴射ノズルによる海水の噴射により貝同士の擦り合わせにより剥がれた汚れをおとし、洗浄ドラムの下方架台2に設けた汚物を回収する廃棄シューター65と汚物収容箱67により剥離された汚物を回収して洗浄作業の効率化を図っている。
【0022】
前記洗浄部40に送水される海水は、ポンプ(図示せず)で海水を汲み上げ、該ポンプと連通する送水管43の一端に開閉バルブ(図示せず)を取付け、該送水管に取付けた噴射ノズル43から海水を噴射させ、また、開閉バルブにより洗浄水の開閉切替を可能にしてある。
【0023】
前記洗浄装置1は、図1,2に示すごとく養殖貝Xの洗浄作業の効率化を図るため、洗浄ドラム10の入口側に洗浄する養殖貝Xを投入するホッパー45を着脱可能に取付け、洗浄ドラムの出口側の架台2に洗浄された養殖貝Xを収容するシューター48と、該シューターの下方に洗浄した養殖貝を回収する回収箱49を配置してスムースに養殖貝Xを回収可能にしてある。
【0024】
また、図10に示すごとく、洗浄装置70の洗浄体75を半月状のかまぼこ型に形成し、洗浄面76の孔が相違する複数の洗浄体75を交換可能に取付けてもよい。この洗浄体75は、図11に示すごとく、洗浄体75の軸心方向に交換可能な可動軸76を軸着し、該可動軸の両端の設けた連結フランジ77,79と架台71に軸支した連結軸73とを連結ボルト80で着脱可能に連結してなり、養殖貝Xの大きさにより洗浄孔の相違する洗浄体に交換可能に形成してある。洗浄体を半月状のかまぼこ型に形成したことにより、装置の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0025】
以下、本発明に係る洗浄装置1の作用について説明すると、洗浄作業工程において、稚貝を洗浄する場合、洗浄装置1は、洗浄ドラム10の入口側の脚部3を高くし架台2全体を出口側に傾斜させて洗浄する養殖貝Xが揺動によりスムースに移動可能にしてある。次いで、図2に示すごとく、洗浄ドラム10の洗浄面17を稚貝が落下しない小さな孔を有した小孔面17aを下側に位置する。さらに、養殖網から引き揚げた洗浄する稚貝を洗浄装置1の入口側に設けたホッパー45から投入する。
【0026】
稚貝をホッパー45に投入後、洗浄装置1の駆動部30を作動させて回転板32の偏心軸35を偏心回転させて偏心運動をさせ、この偏心運動により揺動アーム37を介して切替部20の遊動フランジ34に設けた伝達部26に伝動され、該伝達部の遊動運動が遊動フランジ24と連結ボルト27により連結されている固定フランジ21に伝道し、該固定フランジと固着してある揺動軸5を揺動させることにより、該揺動軸に固着してある洗浄ドラム10が揺動軸5を中心に揺動(振り子運動)し、洗浄ドラム10内の養殖貝同士を擦り合わせて養殖貝の表面に付着した汚れ(付着物)を落とすことができる。
【0027】
したがって、洗浄中の養殖貝Xは、洗浄ドラム10内で跳ねたり飛んだり引っかかったりすることなく、養殖貝同士が擦れる摩擦運動によりスムースに洗浄をすることができるため効率よく汚れを落とすことができ、且つ、洗浄中に養殖貝Xが割れたり傷んだりすることがないため、洗浄中の養殖貝の破損効率を向上させて歩留まりをよくすることができる。
【0028】
さらには、養殖貝Xから剥がれた汚れや付着物は、洗浄部40の噴射ノズル43から海水を高圧噴射することにより、汚れを効率よく洗浄ドラム10外に落とすことができる。汚れたごみは、洗浄ドラム10の下側の架台2に設けた廃棄シューター65から廃棄ゴミ箱67に流れ落ちて効率よく回収することができる。
【0029】
また、ホッパー45は、洗浄ドラム10に着脱可能に取付けてあるため、揺動ドラム10と一体に揺動し、ホッパー45内の養殖貝Xがその振動により自動的に洗浄ドラム10内に移送させることができ便利である。
【0030】
養殖貝Xが6~8cmに成長して半生貝や成貝となった大きな養殖貝を洗浄装置10により洗浄する場合、貝が大きいと付着している付着物も大きいため洗浄面17aの孔が小さいままでと汚れを洗浄ドラムから落下させることができない。そこで、切替部20を構成する固定フランジ21と遊動フランジ24とを連結している連結ボルト27を外し、遊動フランジ24を固定フランジ21から切り離してフリーにする。次いで、ハンドル部28を操作して揺動軸5を回動させて洗浄ドラム10を反転させて大洗浄面17bを下側に位置し、再度、固定フランジ21と遊動フランジ24を連結ボルト27で連結することにより、半生貝や成貝からなる養殖貝の大きな付着物を効率的に洗浄可能してある。したがって、1台の洗浄装置1でそれぞれ大きさの異なる養殖貝Xの洗浄を効率的に行うことができ便利で経済的である。
【0031】
洗浄ドラム10を揺動させる駆動源は、モータ31から回転板32に偏心軸支した偏心軸35に揺動アーム37の一端を軸支し、他端を切替部20の遊動フランンジ24に取付けた伝達部26に枢動可能に軸支して連結させたことにより偏心運動は切替部20を介して洗浄ドラム10を揺動させる。
【0032】
洗浄ドラム10の揺動(振り子運動)は、軸径が細い揺動軸5を介して重量がある洗浄ドラム10を揺動させるため、揺動時の反作用が大きく、固定フランジ21と揺動軸5との固着部分が揺動力による反作用で負荷がかかり故障しやすい。そこで固定フランジ21や洗浄ドラムの軸着部分にボス部22を設けて揺動軸5との固着面積を広げることにより強度を増して揺動力の反作用による故障を防止している。
【0033】
前記洗浄ドラム10の揺動によりホッパー内の養殖貝Xが洗浄ドラム10内に揺動しながら移動し、互いに擦れ合う摩擦接触により表面に付着した汚れ(付着物)を擦り落とすと共に、前記洗浄部40の噴射ノズル43から噴射される海水により養殖貝Xを洗浄させて洗浄ドラム10の出口側に取付けたシューター48から排出させて収容箱に自動的に効率よく回収することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 洗浄装置
2 架台
3 脚部
4 軸受部
5 揺動軸
6 軸部
8 モータ台
10 洗浄ドラム
11 基枠
12 環状部
13 軸支自部
15 補強部
17a 小孔面
17b 大孔面
18a 小孔
18b 大孔
19a 網板
19b 格子板
20 切替部
21 固定フランジ
22 ボス部
24 遊動フランジ
25 ボス部
26 伝達部
27 連結ボルト
28 ハンドル部
30 駆動部
31 モータ
32 回転板
35 偏心軸
37 揺動アーム
40 洗浄部
41 送水管
43 噴射ノズル
45 ホッパー
48 シューター
65 廃棄シューター
X 養殖貝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11