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特開2024-65820接続構造、半導体装置および絶縁内蔵基板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065820
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】接続構造、半導体装置および絶縁内蔵基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20240508BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240508BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20240508BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
H05K3/38 E
H05K1/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174870
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩重 朝仁
【テーマコード(参考)】
5E338
5E343
5F136
【Fターム(参考)】
5E338AA16
5E338AA18
5E338EE02
5E343AA02
5E343AA23
5E343BB21
5E343CC03
5E343CC07
5E343GG02
5F136BB18
5F136BC03
5F136BC05
5F136FA02
5F136FA23
5F136FA52
5F136FA53
5F136FA55
5F136FA63
5F136FA65
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】線膨張係数等の物理特性が異なる部材同士を常温にて高熱伝導率で接続しつつ、発熱体の熱による変形や応力の緩和が可能な接続構造とする。
【解決手段】第1部材10と、第1部材10と対向配置され、第1部材10とは線膨張係数が異なる材料で構成される第2部材20と、が接続部材30により接続されている。接続部材30は、高耐熱樹脂材料31と、炭素原子により構成された炭素材料32と、空隙層33とを有してなる。第1部材10および第2部材20は、接続部材30の炭素材料32を介して熱的に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材(10)と、
前記第1部材と対向配置され、前記第1部材とは線膨張係数が異なる材料で構成される第2部材(20)と、
高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、前記第1部材と前記第2部材とを接続する接続部材(30)と、を備える、接続構造。
【請求項2】
前記炭素材料は、一端が前記第1部材に接触し、前記一端とは反対側の他端が前記第2部材に接触している、請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記炭素材料が前記第1部材と前記第2部材とを結ぶ方向を熱伝導方向(D2)として、前記炭素材料は、前記接続部材の厚み方向(D1)と前記熱伝導方向とのなす角度が14°以上70°以下の範囲内である、請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記第1部材および前記第2部材のうち前記炭素材料に接触する接触面(10a、20a)は、前記炭素材料との摩擦力を上げる凹部(11、21)を有する、請求項2に記載の接続構造。
【請求項5】
前記第1部材および前記第2部材のうち前記炭素材料に接触する接触面(10a、20a)は、前記炭素材料と接合する有機膜(12、22)が形成されている、請求項2に記載の接続構造。
【請求項6】
前記有機膜は、トリアジン環を有する有機材料により構成されている、請求項5に記載の接続構造。
【請求項7】
前記第1部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と対向配置される第3部材(40)と、
前記接続部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と前記第3部材とを繋ぐ枠体状の封止材(50)と、をさらに有する、請求項2に記載の接続構造。
【請求項8】
前記第2部材、前記第3部材および前記封止材により囲まれた空間を内部空間(200)として、前記第2部材および前記第3部材のうち少なくとも1つは、前記内部空間と外部の空間とを連通させる連通部(24、42)を有する、請求項7に記載の接続構造。
【請求項9】
前記第1部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と対向配置される第3部材(40)と、
前記接続部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と前記第3部材とを繋ぐ封止材(50)と、をさらに有し、
前記第2部材と前記第3部材との隙間に位置する空間を内部空間(200)として、前記封止材は、前記内部空間と外部の空間とを連通させる連通部(51)となる隙間が生じるように配置されている、請求項2に記載の接続構造。
【請求項10】
前記第2部材および前記第3部材の少なくとも一方は、前記封止材の一部が入り込み、前記封止材との密着が前記第2部材および前記第3部材の他の部位よりも高い凹部を有する高密着部(23、41)を備える、請求項7に記載の接続構造。
【請求項11】
前記炭素材料は、前記第1部材と接触する部位、および前記第2部材と接触する部位が化学修飾されており、前記第1部材および前記第2部材と化学結合している、請求項2ないし10のいずれか1つに記載の接続構造。
【請求項12】
前記第1部材および前記第2部材の一方を介して、前記接続部材を前記第1部材および前記第2部材の他方に押圧する加圧部材(80、90)をさらに備える、請求項2ないし10のいずれか1つに記載の接続構造。
【請求項13】
半導体素子(140)と、前記半導体素子と熱的に接続される放熱板(110)と、を有する半導体モジュール(10)と、
前記半導体モジュールのうち前記放熱板と対向配置される放熱体(20)と、
高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、前記半導体モジュールと前記放熱体とを接続する接続部材(30)と、を備える、半導体装置。
【請求項14】
導電性材料で構成された導電層(10)と、
前記導電層と対向配置され、絶縁性材料で構成された絶縁基板(20)と、
高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、前記導電層と前記絶縁基板とを接続する接続部材(30)と、を備える、絶縁内蔵基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線膨張係数が異なる複数の部材が、炭素原子によりなる炭素材料を有してなる接続部材により接続された接続構造、およびこれが適用された半導体装置並びに絶縁内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部材と樹脂部材などのように線膨張係数や弾性率が異なる部材同士を接続すると共に、少なくとも一方の部材が他の発熱体に当接し、放熱を可能とする接続構造が知られている。この種の接続構造は、反りや段差の影響を低減するために低温あるいは常温で接続されること、線膨張係数等が異なる部材同士が高熱伝導率で接続されること、および熱による変形や応力の影響を低減できることが求められる。線膨張係数等が異なる部材同士を接続する接続部材としては、例えば、はんだなどの接合部材や放熱グリスなどが挙げられる。
【0003】
しかしながら、はんだを用いた場合、異なる部材同士を高熱伝導率で接続できるものの、低温あるいは常温での接続ができず、接続された部材間での反りや応力の緩和が難しい。また、放熱グリスの場合、異なる部材同士を低温あるいは常温で接続できるものの、異なる部材同士が高熱伝導率で接続されず、接続された部材間での反りや応力の緩和が難しい。
【0004】
特許文献1に記載の接続構造は、熱可塑性樹脂材料と熱伝導率が高いグラファイトなどの炭素系材料とによりなる接続部材が用いられており、低温あるいは常温で異なる部材同士が高熱伝導率で接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-26670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の接続構造は、接続部材の一部が熱可塑性樹脂材料で構成されるため、発熱体の熱により軟化してしまい、接続された異なる部材間での反りなどの変形や応力の緩和が難しい。
【0007】
なお、この種の接続構造としては、例えば、半導体素子が樹脂封止されてなる半導体モジュールの外表面と冷却体とが接続部材により接続された半導体装置が挙げられる。他の例としては、例えば、金属材料などによる回路配線等を構成する導電層と、絶縁性材料によりなる絶縁基板とが接続部材により接続された絶縁内蔵基板などが挙げられる。ここでいう絶縁内蔵基板とは、絶縁基板の一面または両面に導電層が接続された構成の基板をいう。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、線膨張係数等の物理特性が異なる部材同士を低温あるいは常温にて高熱伝導率で接続できると共に、発熱体の熱による変形や応力の緩和が可能な接続構造、半導体装置および絶縁内蔵基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の接続構造は、第1部材(10)と、第1部材と対向配置され、第1部材とは線膨張係数が異なる材料で構成される第2部材(20)と、高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、第1部材と第2部材とを接続する接続部材(30)と、を備える。
【0010】
これによれば、高耐熱樹脂材料、炭素材料および空隙層を有してなる接続部材により、第1部材と第2部材とが熱的に接続される接続構造となる。この接続構造は、第1部材および第2部材が熱伝導率の高い炭素材料により常温にて高熱伝導率で接続されると共に、接続材料のうち樹脂材料が高耐熱樹脂材料であることで熱により軟化しないため、発熱体の熱による変形や応力の緩和が可能である。
【0011】
請求項13に記載の半導体装置は、半導体素子(140)と、半導体素子と熱的に接続される放熱板(130)と、を有する半導体モジュール(10)と、半導体モジュールのうち放熱板と対向配置される放熱体(20)と、高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、半導体素子と放熱体とを接続する接続部材(30)と、を備える。
【0012】
これによれば、高耐熱樹脂材料、炭素材料および空隙層を有してなる接続部材により、半導体モジュールと放熱体とが熱的に接続された半導体装置である。接続材料のうち熱伝導率の高い炭素材料で半導体モジュールと放熱体とが熱的に接続され、樹脂材料が高耐熱樹脂材料であるため、接続部材は熱により軟化しない。このため、半導体モジュールと放熱体とが常温にて高熱伝導率で接続されると共に、発熱体である半導体素子の熱による変形や応力の緩和が可能な半導体装置となる。
【0013】
請求項14に記載の絶縁内蔵基板は、導電性材料で構成された導電層(10)と、導電層と対向配置され、絶縁性材料で構成された絶縁基板(20)と、高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、導電層と絶縁基板とを接続する接続部材(30)と、を備える。
【0014】
これによれば、高耐熱樹脂材料、炭素材料および空隙層を有してなる接続部材により、導電層と絶縁基板とが熱的に接続された絶縁内蔵基板である。接続材料のうち熱伝導率の高い炭素材料で導電層と絶縁基板とが熱的に接続され、樹脂材料が高耐熱樹脂材料であるため、接続部材は熱により軟化しない。このため、導電層と絶縁基板とが常温にて高熱伝導率で接続されると共に、他の発熱体の熱による変形や応力が緩和された絶縁内蔵基板となる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の接続構造を示す断面図である。
図2】第1実施形態の接続構造の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を示す図である。
図3】部材の接続に用いられる前の接続部材の断面をSEMにより観察した結果を示す図である。
図4】接続部材を加圧するときの圧力、接続構造の熱抵抗、および炭素材料の傾き角度の関係を示す図である。
図5】1MPaの圧力による接続構造の断面をSEMにより観察した結果を示す図である。
図6】2MPaの圧力による接続構造の断面をSEMにより観察した結果を示す図である。
図7】12.5MPaの圧力による接続構造の断面をSEMにより観察した結果を示す図である。
図8図3に相当する図であって、炭素材料が天然黒鉛である接続部材の断面をSEMにより観察した結果を示す図である。
図9図2に相当する図であって、炭素材料が天然黒鉛である接続部材を用いた接続構造の断面をSEMにより観察した結果を示す図である。
図10図9に示す接続構造における接続部材の加圧時の圧力、接続構造の熱抵抗、および炭素材料の傾き角度の関係を示す図である。
図11】第2実施形態の接続構造を示す断面図である。
図12図11のXII領域を示す拡大断面図である。
図13図12に相当する図であって、第2実施形態の接続構造の変形例を示す拡大断面図である。
図14】第3実施形態の接続構造を示す断面図である。
図15】有機膜を用いた第1部材、接続部材の炭素材料、および第2部材の結合を説明するための説明図である。
図16】第4実施形態の接続構造を示す断面図である。
図17】封止材の別の配置例を示す断面図である。
図18】第4実施形態の接続構造の第1変形例を示す断面図である。
図19】第4実施形態の接続構造の第2変形例を示す断面図である。
図20】第4実施形態の接続構造の第3変形例を示す断面図である。
図21】第4実施形態の接続構造の第4変形例を示す断面図である。
図22】第5実施形態の接続構造を示す断面図である。
図23】第5実施形態の接続構造の第1変形例を示す断面図である。
図24】第5実施形態の接続構造の第2変形例における封止材の配置例を示す上面レイアウト図である。
図25】第5実施形態の第2変形例における封止材の他の配置例を示す上面レイアウト図である。
図26】第5実施形態の第2変形例における封止材の他の配置例を示す上面レイアウト図である。
図27】第6実施形態の接続構造を示す断面図である。
図28】第6実施形態の接続構造の第1変形例を示す断面図である。
図29】第6実施形態の接続構造の第2変形例を示す断面図である。
図30】実施形態に係る接続構造を用いた半導体装置の一例を示す断面図である。
図31】実施形態に係る接続構造を用いた絶縁内蔵基板の一例を示す断面図である。
図32】第1部材がグラファイト放熱板である場合における第1部材と接続部材との配置関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1では、後述する接続部材30を分かり易くするため、デフォルメしたものを示している。
【0019】
〔接続構造〕
本実施形態に係る接続構造は、例えば図1に示すように、第1部材10と、第2部材20と、第1部材10と第2部材20との間に配置され、これらを熱的に接続する接続部材30とを有してなる。この接続構造は、例えば、第1部材10が電子部品などの他の発熱体に接続され、当該発熱体の熱を第1部材10から接続部材30を経由して第2部材20側に拡散させるのに適した構成となっている。この接続構造は、例えば図2に示すように、接続部材30を構成する後述の炭素材料32が厚み方向に対して傾いた状態となっており、炭素材料32を介して第1部材10と第2部材20とが高熱伝導率で接続されている。
【0020】
第1部材10は、例えば、少なくとも接続部材30に接触する部分が金属材料などの熱伝導率が高い高熱伝導材料で構成される。第1部材10は、例えば、金属板、絶縁基板の両面に金属層が接合された絶縁内蔵基板、半導体素子がヒートシンクに接続され、樹脂封止された半導体モジュールなどとされるが、これらに限定されない。
【0021】
第2部材20は、少なくとも第1部材10とは線膨張係数や弾性率が異なる材料で構成される任意の部材である。ここでいう「第1部材10とは線膨張係数や弾性率が異なる」とは、第1部材10が複数の構成材料を有してなる複合部材である場合には、第1部材10全体としての線膨張係数や弾性率が異なることを意味する。このような場合としては、例えば、第1部材10が複合部材であって、第2部材20と向き合う部分が第2部材20の構成材料と同一であっても、第1部材10の他の部分に第2部材20とは線膨張係数や弾性率が異なる材料を有する場合などが挙げられる。第2部材20は、第1部材10と対向配置され、接続部材30を介して第1部材10と熱的に接続される。第2部材20は、例えば、セラミックなどで構成された絶縁基板、Al(アルミニウム)などの熱伝導率が高い金属材料やその合金材料などで構成された放熱板あるいは冷却器などとされるが、これらに限定されない。第2部材20は、例えば、第1部材10よりも平面サイズが大きく、第1部材10の全域を外郭内側に納めるように配置される。
【0022】
接続部材30は、例えば図1に示すように、高耐熱樹脂材料31と、炭素材料32と、空隙層33とを有してなり、炭素材料32により異なる部材10、20を熱的に接続する部材である。接続部材30は、例えば、複数の炭素材料32が互いに隙間を隔てて規則的に配置され、これらの隙間に高耐熱樹脂材料31が部分的に配置され、当該隙間の残部が空隙層33となっている。接続部材30は、例えば、第1部材10と第2部材20との間に配置され、部材10、20により常温あるいは150℃以下の低温で加圧されることで、熱伝導率が高い炭素材料32が部材10、20のそれぞれに当接し、部材10、20間の熱伝導を担う。接続部材30は、例えば図3に示すように、異なる2つの部材を熱的に接続する前の状態では、炭素材料32が接続部材30の厚み方向D1に沿って配置され、空隙層33が接続時よりもその幅が広い構成となっている。接続部材30は、柔軟性を有しており、第1部材10と第2部材20とを熱的に接続しているとき、複数の炭素材料32が厚み方向D1に対して略一様に傾いた状態となっている。この炭素材料32の傾き角度については後述する。
【0023】
なお、接続部材30は、例えば、鱗片状の黒鉛が規則的に配列されてなる黒鉛シートを用意し、黒鉛シートに高耐熱樹脂材料31を構成する材料自体または当該材料を含んだ溶液を塗布した後、溶液を塗布した面を加圧した状態で加熱することで得られる。黒鉛シートは、例えば、粉末状あるいは鱗片状の黒鉛を1MPa以上で加圧してシート状にし、得られたシート状の黒鉛を減圧や自然乾燥等の任意の方法で乾燥させた後、100℃~400℃、10MPa~40MPaで加圧加熱することで得られる。また、接続部材30は、高耐熱樹脂材料31および炭素材料32のほか、必要に応じて、柔軟性を損なわない程度に金属粒子やスペーサーなどの他の材料を含んでいてもよい。接続部材30は、例えば、第1部材10と第2部材20とを熱的に接続した状態において、厚みが100μm~1mm程度とされるが、この範囲に限定されない。また、接続部材30は、複数の炭素材料32が例えば千鳥状などの所定のパターンで規則的に配列されたものに限定されるものではなく、複数の炭素材料32の一部または全部が不規則に配置された構成であってもよい。
【0024】
高耐熱樹脂材料31は、距離を隔てて規則的に配列された複数の炭素材料32のバインダーとして機能する。高耐熱樹脂材料31は、熱硬化性樹脂材料、もしくは融点が200℃以上の熱可塑性樹脂材料、あるいはこれらを併用したものである。高耐熱樹脂材料31は、例えば、熱硬化性樹脂の場合、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂等の硬化した状態で柔軟性を有する任意の熱硬化性の材料が用いられるが、これらに限定されない。高耐熱樹脂材料31は、例えば、熱可塑性樹脂の場合、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなどの任意の熱可塑性の材料であって、融点が200℃以上のものが用いられるが、これらに限定されない。接続部材30は、高耐熱樹脂材料31がバインダーとなることで、柔軟性を確保しつつ、加熱した状態で過度に軟化することが抑制される。
【0025】
炭素材料32は、第1部材10および第2部材20のそれぞれと接触し、これらを所定以上の高熱伝導率で熱的に接続する。炭素材料32は、例えば、人造黒鉛(熱伝導率:約1700W/(m・K))、天然黒鉛(熱伝導率:約400~500W/(m・K))やカーボンナノチューブ(熱伝導率の理論値:約6000W/(m・K))などの炭素原子によりなる材料で構成される。炭素材料32は、接続部材30のうち第1部材10との接触面、および第2部材20との接触面において、外部に露出している。炭素材料32は、例えば、接続部材30の接触面に対する法線方向から見て、当該接触面における一方向に沿って並べられると共に、当該一方向に対して直交する方向に沿って隙間を隔てて配置される。以下、説明の便宜上、上記した接続部材30の接触面における一方向を「整列方向」、整列方向に対して直交する方向を「配列方向」と称することがある。炭素材料32は、異なる2つの部材間で接続部材30が加圧されることで、配列方向に沿って略一様に傾きつつ、一端が第1部材10と、当該一端とは反対側の他端が第2部材20と、それぞれ当接する。なお、接続部材30全体としての熱伝導率は、例えば、炭素材料32が人造黒鉛の場合には約800W/(m・K)、炭素材料32が天然黒鉛の場合には約250W/(m・K)となるが、これらに限定されない。
【0026】
空隙層33は、配列方向に沿って隣接する炭素材料32同士の隙間である。空隙層33は、接続部材30が異なる2つの部材により加圧されたときのクッション性を担保する役割を果たす。
【0027】
以上が、本実施形態に係る接続構造の基本的な構成である。この接続構造は、例えば、半導体モジュールと冷却器とを接続部材30で接続した半導体装置、導電層あるいはグラファイト放熱板とセラミック基板とを接続部材30で接続した絶縁内蔵基板などに適用されると好適であるが、勿論、他の用途にも適用されうる。
【0028】
〔炭素材料の傾き角度と熱抵抗〕
次に、第1部材10および第2部材20による接続部材30の加圧時の圧力と、これにより得られる接続構造の熱抵抗、および炭素材料32の傾き角度との関係について説明する。
【0029】
以下、説明の便宜上、例えば図5ないし図7に示すように、炭素材料32のうち第1部材10と接触する一端と、第2部材20と接触する他端とを繋ぐ直線に沿った方向を「熱伝導方向D2」と称する。また、炭素材料32の「傾き角度」とは、接続部材30の厚み方向D1と熱伝導方向D2とのなす角度を意味する。なお、厚み方向D1は、第1部材10のうち接続部材30との接触面10a、または第2部材20のうち接続部材30との接触面20aに対する法線方向に沿った方向ともいえる。
【0030】
本発明者らの鋭意検討によれば、例えば図4に示すように、接続部材30を常温あるいは150℃以下の低温で加圧する時の圧力に応じて炭素材料32の傾き角度が変化すると共に、得られる接続構造の熱抵抗がこの傾き角度に応じて変化することが判明した。具体的には、炭素材料32は、圧力が1MPaの場合、例えば図5に示すように、傾き角度が45°であった。また、炭素材料32は、圧力が2MPaの場合、例えば図6に示すように、傾き角度が47°であった。また、炭素材料32は、圧力が12.5MPaの場合、例えば図7に示すように、傾き角度が69°であった。そして、更なる検討の結果、接続構造は、炭素材料32の傾き角度が14°以上70°以下の範囲R1内にあるとき、熱抵抗が1.6℃/W以下と小さくなる一方、範囲R1外にあるときには熱抵抗が2.2℃/Wを超えた。つまり、接続部材30は、炭素材料32の傾き角度が14°以上70°以下の範囲においては、炭素材料32の一端と第1部材10、および他端と第2部材20のそれぞれが良好な接触状態となり、部材10、20を高熱伝導率で熱的に接続できる。
【0031】
なお、炭素材料32の傾き角度が14°未満の場合、圧力不足により、接続部材30の炭素材料32と、第1部材10および第2部材20との接触が不十分となったことで、熱抵抗が下がらなかったと考えられる。また、炭素材料32の傾き角度が70°を超える場合、圧力過剰により、接続部材30の炭素材料32が部材10、20を繋ぐ方向に対して傾き過ぎることや炭素材料32自体の破損に起因して熱抵抗が下がらなかったと考えられる。また、炭素材料32の傾き角度が70°を超える場合、両端が第1部材10および第2部材20に接触しない状態となった炭素材料32の割合、すなわち、炭素材料32と部材10、20との非接触の領域が増えることで熱抵抗が下がらなかったとも考えられる。
【0032】
また、炭素材料32の傾き角度については、接続部材30の加圧前の厚みと加圧後の厚みとの差により算出することができる。例えば、接続部材30の加圧前の厚みが300μmであるとき、炭素材料32が傾斜する前の厚みが300μmとみなすことができる。そして、接続部材30の加圧後の厚みが200μmであるとき、厚み300μmの炭素材料32が変形せずに倒れ込み、炭素材料32の一端から他端までの高さが200μmになる傾き角度をθとして、当該θを三角関数により算出することができる。なお、図5ないし図7に示した圧力1MPa、2MPa、12.5MPaにおける傾き角度は、上記した算出方法により得られた数値と一致した。
【0033】
図4ないし図7では、炭素材料32が人造黒鉛である接続部材30を用いた接続構造(以下「第1接続構造」という)場合について示したが、炭素材料32が天然黒鉛である場合にも同様の傾向が見られた。以下、説明の簡略化のため、炭素材料32が天然黒鉛である接続部材30を用いた接続構造を「第2接続構造」と称する。
【0034】
接続部材30は、炭素材料32が天然黒鉛であって、部材10、20の接続前においては、例えば図8に示すように、1つの炭素材料32内に空隙層33とは異なる空隙が生じた状態となっている。しかしながら、第2接続構造は、例えば図9に示すように、第1接続構造と同様に、炭素材料32が略一様に傾斜し、1つの炭素材料32内の空隙がほとんど塞がった状態となっていた。また、第2接続構造は、接続部材30の加圧時の圧力と、熱抵抗および炭素材料32の傾き角度との関係が、第1接続構造と同様の傾向を示した。第2接続構造は、例えば図10に示すように、炭素材料32の傾き角度が14°以上70°以下の範囲R2内にあるとき、熱抵抗が1.6℃/W以下と小さくなる一方、範囲R2外にあるときには熱抵抗が2.2℃/Wを超えた。この結果は、炭素材料32の使用材料を変えた場合でも、炭素材料32の傾き角度が所定の範囲内となるように接続部材30を加圧することで、線膨張係数等の物理特性が異なる2つの部材を高熱伝導率で接続できることを示唆している。
【0035】
本実施形態によれば、線膨張係数等の物理特性が異なる2つの部材10、20が、高耐熱樹脂材料31、炭素材料32および空隙層33を有してなる接続部材30のうち炭素材料32を介して熱的に接続された接続構造となる。この接続構造は、2つの部材10、20により接続部材30が常温あるいは150℃以下の低温で加圧され、部材10、20が炭素材料32にそれぞれ当接して高伝導率で接続されるため、150℃を超える高温で接続する工程が不要である。また、この接続構造は、2つの部材10、20が炭素材料32により熱的に接続される一方で、はんだ等の接合材料のように部材10、20が接合されないため、外部の発熱体に起因する熱による変形や応力が緩和される。さらに、接続部材30は、炭素材料32同士のバインダーが高耐熱樹脂材料31であるため、熱によって過度に軟化することがない。よって、この接続構造は、第1部材10および第2部材20が熱伝導率の高い炭素材料32により常温あるいは低温にて高熱伝導率で接続されつつ、接続部材30が熱により軟化せず、外部の発熱体の熱による変形や応力の緩和が可能となっている。
【0036】
(1)炭素材料32の一端が第1部材10に、当該一端とは反対側の他端が第2部材20に、それぞれ当接することで、高熱伝導率の炭素材料32により第1部材10と第2部材20とが熱的に接続されるため、接続構造の熱抵抗を下げることができる。
【0037】
(2)接続部材30は、炭素材料32の傾き角度が14°以上70°以下の範囲内とされることで、炭素材料32と第1部材10および第2部材20との接触を確保でき、高熱伝導率で異なる部材同士を接続することができる。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態について、図面を参照して説明する。図12図13では、見易くするため、接続部材30のうち高耐熱樹脂材料31を省略している。
【0039】
本実施形態の接続構造は、例えば図11に示すように、第1部材10の接触面10aには凹部11が形成され、第2部材20の接触面20aには凹部21が形成されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0040】
第1部材10は、本実施形態では、例えば図12に示すように、接触面10aに複数の凹部11が形成されている。凹部11は、接続部材30の炭素材料32との摩擦力を増大させ、炭素材料32とより接触しやすくするために形成される。凹部11は、例えば、レーザ光の照射や研削、切削などの機械加工といった任意の手法により、1つの炭素材料32の幅よりも小さい幅とされると共に、マイクロメートルオーダー以下の深さとされる。つまり、接触面10aは、複数の凹部11および凹部11に挟まれた凸部を有する微細な凹凸構造が形成された粗化面となっている。
【0041】
第2部材20は、本実施形態では、接触面20aに複数の凹部21が形成されている。凹部21は、凹部11と同様に、炭素材料32との摩擦力を増大させるために形成されるものであり、例えば、上記した任意の手法により凹部11と同等の幅や深さとされる。つまり、接触面20aは、例えば、接触面10aと同様に、マイクロメートルオーダーの微細凹凸が形成された粗化面とされる。
【0042】
凹部11、21は、それぞれ、例えば図13に示すように、炭素材料32の幅よりも大きくされ、炭素材料32の端部が入り込む溝状であってもよい。この場合であっても、接触面10a、20aが平滑面である場合に比べて、炭素材料32と第1部材10および第2部材20とが加圧によって接触しやすい構成となる。なお、凹部11、21を溝状とする場合における幅、深さ、配置のパターンやその配置間隔などについては、炭素材料32の幅や配置パターン等に応じて適宜変更されうる。つまり、接触面10a、20aは、微細凹凸を有する粗化面のほか、炭素材料32の配列に応じた所定パターンの凹部を複数有する構成といったように、炭素材料32が滑りにくい構成であればよい。
【0043】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる接続構造となる。また、本実施形態の接続構造は、以下の効果も得られる。
【0044】
(1)この接続構造は、第1部材10の接触面10aに凹部11、第2部材20の接触面20aに凹部21、がそれぞれ設けられることで、第1部材10および第2部材20と炭素材料32とが上記第1実施形態よりも低い圧力でより接触する構成となっている。このため、この接続構造は、第1部材10および第2部材20と炭素材料32との接触状態がより安定する効果が得られる。
【0045】
(第3実施形態)
第3実施形態について、図面を参照して説明する。図14では、構成を分かり易くするため、後述する有機膜12、22の厚みを誇張したものを示している。
【0046】
本実施形態の接続構造は、接続部材30と第1部材10との間に有機膜12が、接続部材30と第2部材20との間に有機膜22が、それぞれ介在している点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0047】
第1部材10は、本実施形態では、接触面10aに有機膜12が形成されている。有機膜12は、第1部材10の構成材料および接続部材30の炭素材料32のそれぞれと結合する任意の有機材料により構成されている。例えば、有機膜12は、図15に示すように、シランカップリング剤などに用いられるトリアジン環を有するトリアジン系化合物で構成される。図15に示す有機膜12の構成材料は、例えば、X基が末端にアミノ基を有する官能基、あるいはアジ基であり、Y基が末端にシラノール基を有する官能基とされる。これは、有機膜22についても同様である。有機膜12、22の構成材料としては、例えば、特開2020-143007号公報に記載の反応性付与化合物や特開2021-130839号公報に記載のトリアジン系化合物などが用いられうるが、他の公知のトリアジン系化合物が用いられてもよい。有機膜12は、例えば、第1部材10がCu(銅)等の金属材料で構成される場合には、接触面10aに塗布されることでアミノ基が第1部材10と相互作用して化学結合する。なお、図14では、便宜上、有機膜12が所定の厚みを有する一様な膜のように図示しているが、実際には、有機膜12は、例えば、1分子層とされ、第1部材10と炭素材料32との接触による熱抵抗の低減を阻害しない構成となっている。これは、後述する有機膜22についても同様である。
【0048】
接続部材30は、例えば、本実施形態では、部材10、20と向き合う両面に表面処理がなされ、有機膜12、22と化学結合している。例えば、接続部材30は、炭素材料32のうち第1部材10と向き合う一端321が露出する面を上面とし、第2部材20と向き合う他端322が露出する面を下面として、上面および下面の両面に任意の表面処理が施される。任意の表面処理としては、例えば、コロナ放電、大気圧プラズマ、オゾン酸化、過熱水蒸気などが挙げられるが、これらに限定されない。これにより、炭素材料32の一端321および他端322は、それぞれ、有機膜12、22と化学結合する図示しないカルボキシル基や酸素原子が表面に導入された状態となっている。そして、炭素材料32は、一端321および他端322の図示しないカルボキシル基や酸素原子と有機膜12のアミノ基とが化学結合した状態となる。
【0049】
第2部材20は、本実施形態では、接触面20aに有機膜22が形成されている。有機膜22は、第2部材20の構成材料および接続部材30の炭素材料32のそれぞれと結合する任意の有機材料により構成されている。有機膜22は、例えば、有機膜12と同様に、第2部材20の接触面20aに塗布されて形成される。第2部材20は、例えば、接触面20aがAlで構成される場合、接続部材30と同様に任意の表面処理が施され、接触面20aに図示しないヒドロキシル基が導入された状態とされる。そして、第2部材20は、例えば、接触面20aの図示しないヒドロキシル基と有機膜22のシラノール基とが脱水縮合することで、有機膜22と化学結合した状態となる。なお、有機膜12、22と、第1部材10、第2部材20、炭素材料32との結合は、分子接合とも称されうる。
【0050】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる接続構造となる。また、本実施形態の接続構造は、以下の効果も得られる。
【0051】
(1)第1部材10の接触面10aに有機膜12が、第2部材20の接触面20aに有機膜22が、それぞれ設けられ、有機膜12、22が部材10または20と炭素材料32とを接合することで、これらの界面が化学的に結合された状態となる。このため、第1部材10-炭素材料32-第2部材20間が強固に接続され、これらの界面における接触がより安定する効果が得られる。また、有機膜12、22が1分子層であることで、炭素材料32と第1部材10または第2部材20との界面における熱抵抗の増大を抑制することができる。
【0052】
(第4実施形態)
第4実施形態について、図面を参照して説明する。
【0053】
本実施形態の接続構造は、例えば図16に示すように、第1部材10の外周を囲む第3部材40と、第2部材20と第3部材40とを繋げる封止材50とを備える点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0054】
第3部材40は、例えば、第1部材10の側面の一部または全部を囲む形状とされ、第1部材10と共に、第2部材20と対向配置される部材である。第3部材40は、例えば、第1部材10の接触面10aとは反対の背面10b側を覆っている。第3部材40は、例えば、平面サイズが第1部材10よりも大きい一方で、第2部材20よりも小さくなっている。第3部材40は、例えば、側面の全周を囲む封止材50により第2部材20と接着されている。第3部材40は、例えば、樹脂材料、金属材料やこれらの複合材料、その他の任意の材料で構成されうる。
【0055】
封止材50は、第2部材20と第3部材40とを接着保持するものである。封止材50は、例えば、エポキシ系やアクリル系などの接着性を有する任意の樹脂材料で構成される。封止材50は、例えば、上面視にて、すなわち接触面20aに対する法線方向から見て、第3部材40の側面を連続した枠体状に囲むように配置される。封止材50は、例えば、第1部材10および第3部材40と、第2部材20とにより接続部材30を加圧した状態で塗布などにより配置されるが、加圧前に配置されてもよい。言い換えると、封止材50は、第2部材20と第3部材40とを接着保持することで、接続部材30が第1部材10と第2部材20とにより加圧された状態を維持し、これらの熱的な接続を確保する役割を果たす。また、封止材50は、第1部材10および第3部材40と、第2部材20との隙間領域を封止する。これにより、封止材50は、炭素材料32に起因して発塵が生じた場合であっても、生じた塵を密閉空間に閉じ込める役割を果たす。
【0056】
なお、封止材50は、例えば図17に示すように、第1部材10と第2部材20との隙間まで流れ込み、一部が空隙層33に入り込んだ状態であってもよい。封止材50は、第1部材10と第2部材20とにより接続部材30が加圧された状態で配置される場合には、炭素材料32と第1部材10または第2部材20との間に入り込むことはなく、部材10、20間の熱伝導を阻害しない。また、本接続構造は、接続部材30と部材10、20との接触する面積が封止材50による接着面積よりも十分に大きいため、部材10、20の線膨張係数等の違いによる変形や応力の緩和効果が損なわれることはない。
【0057】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる接続構造となる。また、本実施形態の接続構造は、以下の効果も得られる。
【0058】
(1)この接続構造は、第1部材10の外周を囲む第3部材40と、第2部材20とが封止材50により接着されることで、第1部材10および第2部材20による接続部材30の加圧状態が維持される。このため、部材10、20と炭素材料32との接触が安定した状態で維持され、部材10、20間の高熱伝導率での接続をより継続的に確保できる効果が得られる。また、接続部材30が配置された空間が封止材50により密閉されるため、炭素材料32に起因する発塵が生じた場合であっても、発生した塵が外部に拡散することを防ぐことができる。
【0059】
(第4実施形態の変形例)
第4実施形態の接続構造は、例えば図18に示すように、第1部材10が放熱板110、絶縁基板120、金属層130がこの順に積層された積層体であってもよい。この場合、例えば、第1部材10は、放熱板110および金属層130がCu、絶縁基板120がセラミック基板とされたDBC基板とされうる。DBCとは、Direct Bonded Copperの略称である。
【0060】
また、第4実施形態の接続構造は、例えば図19に示すように、第2部材20および第3部材40のうち封止材50と接触する部位に、封止材50が入り込む凹部や溝などが形成された高密着部23、41が形成されていてもよい。高密着部23は、第2部材20にレーザ光照射や機械加工等の任意の手法により形成され、封止材50の一部が入り込んでアンカー効果を生じさせることで、封止材50との密着性が他の部位よりも高められる部位である。高密着部41は、第3部材40に任意の手法により形成され、高密着部23と同様の役割を果たす部位である。高密着部23、41は、封止材50との密着性を向上させるものであればよく、そのパターン等については適宜変更されてもよい。なお、図19では、第1部材10が複合部材である例を示しているが、本変形例において、第1部材10は、単一部材であっても構わない。また、この接続構造は、第2部材20および第3部材40の一方のみが高密着部23、41を有する構成であってもよい。
【0061】
また、第4実施形態の接続構造は、例えば図20に示すように、第1部材10と第2部材20との間に第4部材60が配置され、第1部材10と第4部材60との間、第2部材20と第4部材60との間のそれぞれに接続部材30が配置されていてもよい。この場合、第4部材60は、例えば、セラミックなどの熱伝導率が高い任意の材料で構成される。
【0062】
また、第4実施形態の接続構造は、例えば図21に示すように、第2部材20と第3部材40との接着領域の全域を覆う第5部材70をさらに有し、第3部材40が第5部材70により封止された構成であってもよい。第5部材70は、例えば、任意の樹脂材料で構成される。本変形例の接続構造は、接続部材30を介した第1部材10と第2部材20との接続部分が、第3部材40および第5部材70により二重封止された構造となっているため、部材10、20と炭素材料32との接触がより安定する効果が得られる。
【0063】
上記した変形例によっても、上記第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
(第5実施形態)
第5実施形態について、図面を参照して説明する。
【0065】
本実施形態の接続構造は、例えば図22に示すように、第3部材40に連通部42が形成されている点で上記第4実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0066】
以下、説明の便宜上、第1部材10および第3部材40と、第2部材20と、封止材50とにより囲まれた空間を「内部空間200」と称する。内部空間200は、接続部材30が収容される空間ともいえる。
【0067】
第3部材40は、本実施形態では、内部空間200と外部空間とを連通させる連通部42が形成されている。連通部42は、例えば、第3部材40の厚み方向に沿って形成される貫通孔であり、穴あけ加工などにより形成される。連通部42は、内部空間200内の空気等の流体が外部の発熱体による熱で膨張した場合における通り道として機能し、内部空間200の内圧の増大を抑制する。連通部42は、内部空間200内の流体が通ることができるものであればよく、数、寸法、形状や配置等については適宜変更されてもよい。
【0068】
本実施形態によっても、上記第4実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の接続構造は、以下の効果も得られる。
【0069】
(1)第3部材40に連通部42が形成されていることで、内部空間200内の流体が熱により膨張した場合であっても、連通部42を介して外部に逃がすことができ、内圧の増大を抑制することができる。
【0070】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態の接続構造は、例えば図23に示すように、第3部材40に代わって、第2部材20側に内部空間200と外部の空間を連通させる連通部24が形成された構成であってもよい。連通部24は、連通部42と同様に、任意の手法により形成されるが、内部空間200と外部の空間とを繋げ、流体が通ることができればよく、その数、形状、寸法や配置等については適宜変更されうる。
【0071】
また、第5実施形態の接続構造は、例えば図24に示すように、封止材50を複数に分割して配置し、封止材50同士の間に隙間が生じさせ、当該隙間が連通部51として機能する構成であってもよい。この場合、第2部材20および第3部材40は、連通部を有した構成とする必要はない。
【0072】
なお、図24では、封止材50の配置例を分かり易くするため、断面を示すものではないが、封止材50にハッチングを施している。また、図24は、図示しない第2部材20の接触面20aに対する法線方向から見た上面レイアウトを示したものである。これらは、図25図26でも同様である。
【0073】
封止材50は、例えば図24に示すように、2つの略U字状のパターンで分割配置されると共に、大きい略U字状のパターンの内側に、小さい略U字状のパターンが逆向きに入り込むパターン配置とされうる。この場合、2つの略U字状パターン同士の隙間が連通部51として機能する。また、封止材50は、例えば図25に示すように、略同一の大きさとされた2つの略U字状のパターンで分割配置されると共に、これら2つのパターンが逆向きで互い違いに配置されてもよい。また、封止材50は、例えば図26に示すように、四隅の角を構成するように互いに離れて配置された略L字状の4つのパターンと、4つの略L字状パターンよりも内側に配置された4つの直線状パターンと、を有する配置であってもよい。この場合、直線状パターンは、それぞれ、隣接する略L字パターン同士の隙間よりも長くされ、当該隙間の全域と隣接するように配置される。また、この場合、直線状パターンと略L字状パターンとの隙間が連通部51として機能する。なお、封止材50を分割配置するパターン形状は、上記した例に限定されるものでなく、適宜変更されてもよい。
【0074】
上記した変形例によっても、上記第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
(第6実施形態)
第6実施形態について、図面を参照して説明する。
【0076】
本実施形態の接続構造は、例えば図27に示すように、第3部材40のうち第1部材10が露出する側とは反対面に接して配置され、第3部材40ごと第1部材10を第2部材20に向かって押圧する締結部材80をさらに有する点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0077】
締結部材80は、第3部材40を第2部材20に締結固定し、第1部材10と第2部材20とによる接続部材30の加圧状態を維持するための部材である。締結部材80は、例えば、第3部材40よりも平面サイズが大きく、第1部材10が露出する側の面とは反対面に当接する基部81と、基部81に形成されたネジ穴に挿入されるネジ82とを有した構成とされる。締結部材80は、ネジ82を第2部材20のネジ穴25に挿入することで、基部81が第3部材40ごと第1部材10を押圧した状態で第2部材20に固定される。これにより、接続部材30の加圧状態が維持され、部材10、20と炭素材料32との接触状態を良好に維持することができる。つまり、締結部材80は、部材10、20に挟持された接続部材30の加圧部材として機能する。なお、基部81は、例えば、第3部材40からはみ出す部分にネジ穴が形成される。
【0078】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる接続構造となる。また、本実施形態の接続構造は、以下の効果も得られる。
【0079】
(1)締結部材80を有することで第1部材10が第2部材20に固定され、接続部材30を押圧した状態が維持されるため、この接続構造は、第1部材10および第2部材20と炭素材料32との接触状態がより安定する効果が得られる。
【0080】
(第6実施形態の変形例)
第6実施形態の接続構造は、例えば図28に示すように、締結部材80がネジ82のみで構成され、ネジ82が第3部材40を貫通し、第2部材20と第3部材40とをネジ止めする構成であってもよい。
【0081】
第6実施形態の接続構造は、例えば図29に示すように、締結部材80に代わって、第3部材40ごと第1部材10を加圧する加圧部材90を有する構成であってもよい。加圧部材90は、例えば、第3部材40に当接する板状部材91と、板状部材91を対向配置される対向部材92と、板状部材91および対向部材92の間に配置される弾性体93とを有する。加圧部材90は、例えば、弾性体93が縮められた状態で板状部材91および対向部材92の間に配置され、復元力により板状部材91を押圧する構成とされる。対向部材92は、例えば、何らかに固定された任意の部材であり、弾性体93の復元力により変形等をしない構成となっている。このような構成であっても、接続部材30は、第3部材40ごと第1部材10および第2部材20により加圧された状態が維持される。なお、加圧部材90は、樹脂材料、金属材料、これらの複合材料や他の任意の材料で構成されうる。
【0082】
上記した変形例によっても、上記第6実施形態と同様の効果が得られる接続構造となる。
【0083】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0084】
(1)上記各実施形態では、接続構造は、例えば図30に示すように、第1部材10が半導体モジュールであってもよい。例えば、半導体モジュールは、半導体素子140と、放熱板110、絶縁基板120および金属層130の積層体と、半導体素子140および積層体の一部を覆うモールド樹脂150とを有した構成とされる。また、半導体モジュールは、例えば、半導体素子140が金属層130に図示しないはんだ等により接合され、放熱板110がモールド樹脂150から露出した構成とされる。半導体素子140は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistorの略)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistorの略)などの発熱体であり、図示しないワイヤや金属クリップなどが接続されている。そして、半導体モジュールは、放熱板110が接続部材30と熱的に接続される。この場合、例えば、第2部材20は、Alなどで構成された冷却器などの放熱体とされる。図30では、上記第4実施形態の接続構造が半導体素子と冷却器とが接続部材30を介して接続された半導体装置とされた例を示しているが、他の実施形態も半導体装置に適応されうる。
【0085】
(2)上記第4実施形態の接続構造は、例えば図31に示すように、第1部材10が金属板あるいはグラファイト放熱板などの導電層とされ、第2部材20がセラミックス基板とされた絶縁内蔵基板を構成しうる。この場合、絶縁内蔵基板は、第1部材10と第2部材20との主な熱的な接続が接続部材30とされ、接合された領域が封止材50による部位のみのため、第1部材10の厚みを大きくしても応力の影響を低減された構造となる。また、この接続構造が適用された絶縁内蔵基板は、ろう材により導電層と絶縁層との大部分が接続された従来の構成に比べて、接合領域が少なく、応力が低減されているため、設計の自由度が高い構成となっている。また、第1部材10がグラファイト放熱板である場合、接続部材30は、例えば図32に示すように、平面における熱伝導方向が、グラファイト放熱板である第1部材10の平面における熱伝導方向と交差する配置とされることが好ましい。例えば、図32の紙面左右方向をx方向とし、x方向に直交する方向をy方向とし、xy平面に直交する方向をz方向とする。例えば、第1部材10は、複数のグラファイト13がy方向に沿って延設され、x方向において平行配置された構成である場合、その熱伝導方向がyz方向となる。この場合、第1部材10は、xy平面における熱伝導方向がy方向である。このような場合、接続部材30は、例えば、炭素材料32がx方向に延設された配置、すなわちxy平面における熱伝導方向がx方向となる配置とされることが好ましい。これにより、xy平面における熱伝導の効率がより向上する構成となる。
【0086】
なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0087】
(本発明の特徴)
[請求項1]
第1部材(10)と、
前記第1部材と対向配置され、前記第1部材とは線膨張係数が異なる材料で構成される第2部材(20)と、
高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、前記第1部材と前記第2部材とを接続する接続部材(30)と、を備える、接続構造。
[請求項2]
前記炭素材料は、一端が前記第1部材に接触し、前記一端とは反対側の他端が前記第2部材に接触している、請求項1に記載の接続構造。
[請求項3]
前記炭素材料が前記第1部材と前記第2部材とを結ぶ方向を熱伝導方向(D2)として、前記炭素材料は、前記接続部材の厚み方向(D1)と前記熱伝導方向とのなす角度が14°以上70°以下の範囲内である、請求項1または2に記載の接続構造。
[請求項4]
前記第1部材および前記第2部材のうち前記炭素材料に接触する接触面(10a、20a)は、前記炭素材料との摩擦力を上げる凹部(11、21)を有する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続構造。
[請求項5]
前記第1部材および前記第2部材のうち前記炭素材料に接触する接触面(10a、20a)は、前記炭素材料と接合する有機膜(12、22)が形成されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続構造。
[請求項6]
前記有機膜は、トリアジン環を有する有機材料により構成されている、請求項5に記載の接続構造。
[請求項7]
前記第1部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と対向配置される第3部材(40)と、
前記接続部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と前記第3部材とを繋ぐ枠体状の封止材(50)と、をさらに有する、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の接続構造。
[請求項8]
前記第2部材、前記第3部材および前記封止材により囲まれた空間を内部空間(200)として、前記第2部材および前記第3部材のうち少なくとも1つは、前記内部空間と外部の空間とを連通させる連通部(24、42)を有する、請求項7に記載の接続構造。
[請求項9]
前記第1部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と対向配置される第3部材(40)と、
前記接続部材の外周部分を囲むと共に、前記第2部材と前記第3部材とを繋ぐ封止材(50)と、をさらに有し、
前記第2部材と前記第3部材との隙間に位置する空間を内部空間(200)として、前記封止材は、前記内部空間と外部の空間とを連通させる連通部(51)となる隙間が生じるように配置されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の接続構造。
[請求項10]
前記第2部材および前記第3部材の少なくとも一方は、前記封止材の一部が入り込み、前記封止材との密着が前記第2部材および前記第3部材の他の部位よりも高い凹部を有する高密着部(23、41)を備える、請求項7ないし9のいずれか1つに記載の接続構造。
[請求項11]
前記炭素材料は、前記第1部材と接触する部位、および前記第2部材と接触する部位が化学修飾されており、前記第1部材および前記第2部材と化学結合している、請求項2ないし10のいずれか1つに記載の接続構造。
[請求項12]
前記第1部材および前記第2部材の一方を介して、前記接続部材を前記第1部材および前記第2部材の他方に押圧する加圧部材(80、90)をさらに備える、請求項2ないし10のいずれか1つに記載の接続構造。
[請求項13]
半導体素子(140)と、前記半導体素子に熱的に接続される放熱板(110)と、を有する半導体モジュール(10)と、
前記半導体モジュールのうち前記放熱板の側と対向配置される放熱体(20)と、
高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、前記半導体モジュールと前記放熱体とを接続する接続部材(30)と、を備える、半導体装置。
[請求項14]
導電性材料で構成された導電層(10)と、
前記導電層と対向配置され、絶縁性材料で構成された絶縁基板(20)と、
高耐熱樹脂材料(31)と、炭素原子により構成された炭素材料(32)と、空隙層(33)とを有してなり、前記導電層と前記絶縁基板とを接続する接続部材(30)と、を備える、絶縁内蔵基板。
【符号の説明】
【0088】
10・・・第1部材(半導体素子、導電層)、10a、20a・・・接触面、
11、21・・・凹部、12、22・・・有機膜、
20・・・第2部材(放熱体、絶縁基板)、23、41・・・高密着部、
24、42、51・・・連通部、30・・・接続部材、31・・・高耐熱樹脂材料、
32・・・炭素材料、33・・・空隙層、40・・・第3部材、50・・・封止材、
80、90・・・加圧部材、110・・・放熱板、140・・・半導体素子、
200・・・内部空間、D1・・・厚み方向、D2・・・熱伝導方向
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