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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065824
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】止水構造及びその止水構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 3/04 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
E03F3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174876
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000201504
【氏名又は名称】前田製管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123146
【弁理士】
【氏名又は名称】米屋 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100066094
【弁理士】
【氏名又は名称】米屋 武志
(72)【発明者】
【氏名】池田 正行
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA06
2D063BA27
2D063BA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構造が簡単であるとともに施工コストが抑えられ、施工誤差が生じた場合であっても容易に施工でき高い止水性を確保することができる止水構造及びその止水構造の構築方法を提供する。
【解決手段】隣接して敷設されたボックスカルバート2,2の対向する端面3において内側9に沿って形成された切欠き部4により接続部に装着溝7を形成し、その装着溝7に弾性及び可撓性を有するゴム製の止水用シール部材10を挿入する。止水用シール部材10は、左右の断面略長方形状の接着固定部11,11が断面略凸状の変形連結部12により連結されており、左右方向から圧縮力を受けて反発力が生じた状態で装着溝7に挿入することで、左右の接着固定部11,11の外側側面15と切欠き部4の側面5を密着させて、接着剤を介して接着させる。
【選択図】図3-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の接続部における止水構造であって、隣接して敷設されたコンクリート構造物の対向する端面において内面に沿ってそれぞれ設けられた切欠き部により形成された装着溝と、該装着溝に装着する弾性及び可撓性を有するゴム製の止水用シール部材を有し、該止水用シール部材は、断面略長方形状である左右の接着固定部と、左右の該接着固定部の間に配置された断面略凸状の変形連結部を有し、左右の前記接着固定部の下部と前記変形連結部の左右の両下部がそれぞれ連結され、前記止水用シール部材は左右方向から圧縮力を受けた状態で前記装着溝に挿入され、前記変形連結部により生じる反発力により前記止水用シール部材の左右の外側側面と前記切欠き部の側面は密着しつつ接着剤を介して接着されていることを特徴とするコンクリート構造物の接続部における止水構造。
【請求項2】
前記止水用シール部材における左右の前記接着固定部の内側側面の上部に、前記変形連結部側に向けて突出する突起部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の接続部における止水構造。
【請求項3】
前記止水用シール部材が前記装着溝に装着された際に、前記変形連結部と左右の前記接着固定部の前記突起部が密着した状態であることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート構造物の接続部における止水構造。
【請求項4】
前記コンクリート構造物の前記切欠き部の深さが、前記止水用シール部材の高さよりも深いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコンクリート構造物の接続部における止水構造。
【請求項5】
前記止水用シール部材が前記装着溝に装着された際に、前記止水用シール部材の底面の少なくとも一部が、前記コンクリート構造物の前記切欠き部の底面と密着しつつ接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコンクリート構造物の接続部における止水構造。
【請求項6】
前記止水用シール部材が前記装着溝に装着された際に、前記止水用シール部材の底面の少なくとも一部が、前記コンクリート構造物の前記切欠き部の底面と密着しつつ接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート構造物の接続部における止水構造。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の止水用シール部材を用いた、コンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法であって、隣接して敷設されたコンクリート構造物の対向する端面において内面に沿ってそれぞれ設けられた切欠き部によりコンクリート構造物の接続部に装着溝を形成する工程と、前記切欠き部の側面に接着剤を塗布する工程と、左右方向から圧縮力を受けた状態の前記止水用シール部材を前記装着溝に挿入して前記止水用シール部材の左右の前記外側側面と前記切欠き部の前記側面を密着させつつ接着剤を介して接着させる工程と、前記止水用シール部材の左右の前記接着固定部と前記変形連結部の間に形成される溝部に、断面略コの字状のくさび部材の脚部を挿入し、前記止水用シール部材の全長に亘って前記くさび部材を互いに接するように連続してまたは所定の間隔が空くように複数設置した状態で前記接着剤を硬化させる工程と、前記接着剤の硬化後に前記くさび部材を前記止水用シール部材から取り外す工程を備えたことを特徴とするコンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の止水用シール部材を用いた、コンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法であって、隣接して敷設されたコンクリート構造物の対向する端面において内面に沿ってそれぞれ設けられた切欠き部によりコンクリート構造物の接続部に装着溝を形成する工程と、前記切欠き部の側面及び底面に接着剤を塗布する工程と、左右方向から圧縮力を受けた状態の前記止水用シール部材を前記装着溝に挿入して前記止水用シール部材の左右の前記外側側面と前記切欠き部の前記側面、前記止水用シール部材の底面の少なくとも一部と前記切欠き部の前記底面をそれぞれ密着させつつ接着剤を介して接着させる工程と、前記止水用シール部材の左右の前記接着固定部と前記変形連結部の間に形成される溝部に、断面略コの字状のくさび部材の脚部を挿入し、前記止水用シール部材の全長に亘って前記くさび部材を互いに接するように連続してまたは所定の間隔が空くように複数設置した状態で前記接着剤を硬化させる工程と、前記接着剤の硬化後に前記くさび部材を前記止水用シール部材から取り外す工程を備えたことを特徴とするコンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法。
【請求項9】
前記くさび部材は、前記脚部の上端部における左右方向の幅が、前記止水用シール部材を前記装着溝に挿入した際の左右の前記接着固定部の前記内側側面の幅と略同一であり、前記脚部は下方に行くに従って左右方向に広がることを特徴とする請求項7に記載のコンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法。
【請求項10】
前記くさび部材は、前記脚部の上端部における左右方向の幅が、前記止水用シール部材を前記装着溝に挿入した際の左右の前記接着固定部の前記内側側面の幅と略同一であり、前記脚部は下方に行くに従って左右方向に広がることを特徴とする請求項8に記載のコンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物の接続部における止水構造及びその止水構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水路として利用されるコンクリート構造物として、U型開水路やボックスカルバート等の函型暗渠がある。特にプレキャスト製品のU型開水路等は、耐久性に優れ、主に下水道等の幹線用資材として広く使用されている。
【0003】
プレキャスト製品は、施工現場における養生が不要であることから施工性に優れるが、一方で水路として使用される場合は、プレキャスト製品同士の接続部の止水性が問題となり易いため、止水用シール材をその接続部に配しながら敷設される。
【0004】
また、プレキャスト製品同士の接続部は、上載荷重や長期的な不同沈下、短期的な地震等によって生ずる地盤変位の影響を受けやすいため、その接続部に損傷が生じないよう、その接続部に使用する止水用シール材は可撓性を有するものであることが望ましい。
【0005】
そこで特許文献1では、ボックスカルバートAの連結側の端面近傍に、連結孔を穿設した連結金具1を一体に設け、該連結金具1に、可撓体5及びその両端面に連結部材6を一体に設けた可撓連結体Bの一側をボルト8により取り付け、その可撓連結体Bの他側に、隣接する他のボックスカルバートAをボルト8により連結し、更に可撓連結体Bの両側に配置したパッキング材7、及び可撓体5の内外周に隣接して設けたバックアップ材9により防水性と耐久性を確保するボックスカルバートの連結工法が提案されている。
【0006】
また特許文献2では、相対向するコンクリート構造体1の接続部端面11内側に装着溝12を形成し、この装着溝12に装着する可撓性のあるゴム製等の止水用シール材20を、装着溝12の側面に外側面が押圧される一対の中空部を有する側面押圧部21と、これら一対の側面押圧部21を連結して装着溝12の側面に押圧されて内側開口を塞ぐ中空部を有する開口閉塞部22を略V字状に連結して構成し、圧縮反力により大きな固定強度を確保可でき止水用シール材20を一体に成形可能なコンクリート構造体接続部の止水構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-032089号
【特許文献2】特開2008-156833号
【0008】
しかし、特許文献1に係る連結工法は、ボックスカルバートAの端面近傍の複数個所に連結金具1を埋設する必要があるため、部品数が多くなり、2つのボックスカルバートAの間に介在させる可撓連結体Bの取り付け施工作業に手間がかかるという問題が生じていた。また、可撓連結体Bは多くの部材により構成されているため、可撓連結体B自体の製造に手間がかかるとともに、コストが高くなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に係る止水構造は、止水用シール材20の開口閉塞部22が、コンクリート函体1,1の接続部端面11内側に形成された装着溝12の狭幅部13の幅及び深さに対応する幅と高さを有する略矩形とされているため、地震等により装着溝12の狭幅部13の幅が広がった場合に、止水用シール材20の開口閉塞部22の外側面22aが装着溝12の側面から離れて隙間が生じ、止水性が低下する恐れがある。
【0010】
また、止水用シール材20は、その一対の側面押圧部21、21の間隔を狭めるようにして装着溝12に装着するが、コンクリート函体1,1の全長が長くなり施工誤差が生じることによって装着溝12の幅に変動が生じた場合には、側面押圧部21、21間の圧縮反力が変化するとともに、側面押圧部21の外側面21aと装着溝12の側面が密着する面積も変化するため、装着溝12に止水用シール材20を固定する際には工夫や調整が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、上記従来技術が有する問題点を解消するため、構造が簡単であるとともに施工コストが抑えられ、施工誤差によりコンクリート構造物の接続部において軸方向や軸直角方向にズレが生じた場合であっても容易に施工できるとともに高い止水性を確保することができ、施工後に地震等によりコンクリート構造物の接続部において軸方向変位や軸直角方向変位、更には屈曲変位が生じた場合であっても、高い止水性を確保することができるコンクリート構造物の接続部における止水構造及びその止水構造の構築方法を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、コンクリート構造物の接続部における止水構造であって、隣接して敷設されたコンクリート構造物の対向する端面において内面に沿ってそれぞれ設けられた切欠き部により形成された装着溝と、該装着溝に装着する弾性及び可撓性を有するゴム製の止水用シール部材を有し、該止水用シール部材は、断面略長方形状である左右の接着固定部と、左右の該接着固定部の間に配置された断面略凸状の変形連結部を有し、左右の前記接着固定部の下部と前記変形連結部の左右の両下部がそれぞれ連結され、前記止水用シール部材は左右方向から圧縮力を受けた状態で前記装着溝に挿入され、前記変形連結部により生じる反発力により前記止水用シール部材の左右の外側側面と前記切欠き部の側面は密着しつつ接着剤を介して接着されていることを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項2に係る発明は、前記止水用シール部材における左右の前記接着固定部の内側側面の上部に、前記変形連結部側に向けて突出する突起部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項3に係る発明は、前記止水用シール部材が前記装着溝に装着された際に、前記変形連結部と左右の前記接着固定部の前記突起部が密着した状態であることを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項4に係る発明は、前記コンクリート構造物の前記切欠き部の深さが、前記止水用シール部材の高さよりも深いことを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項5及び請求項6に係る発明は、前記止水用シール部材が前記装着溝に装着された際に、前記止水用シール部材の底面の少なくとも一部が、前記コンクリート構造物の前記切欠き部の底面と密着しつつ接着剤を介して接着されていることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項7に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の止水用シール部材を用いた、コンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法であって、隣接して敷設されたコンクリート構造物の対向する端面において内面に沿ってそれぞれ設けられた切欠き部によりコンクリート構造物の接続部に装着溝を形成する工程と、前記切欠き部の側面に接着剤を塗布する工程と、左右方向から圧縮力を受けた状態の前記止水用シール部材を前記装着溝に挿入して前記止水用シール部材の左右の前記外側側面と前記切欠き部の前記側面を密着させつつ接着剤を介して接着させる工程と、前記止水用シール部材の左右の前記接着固定部と前記変形連結部の間に形成される溝部に、断面略コの字状のくさび部材の脚部を挿入し、前記止水用シール部材の全長に亘って前記くさび部材を互いに接するように連続してまたは所定の間隔が空くように複数設置した状態で前記接着剤を硬化させる工程と、前記接着剤の硬化後に前記くさび部材を前記止水用シール部材から取り外す工程を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項8に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の止水用シール部材を用いた、コンクリート構造物の接続部における止水構造の構築方法であって、隣接して敷設されたコンクリート構造物の対向する端面において内面に沿ってそれぞれ設けられた切欠き部によりコンクリート構造物の接続部に装着溝を形成する工程と、前記切欠き部の側面及び底面に接着剤を塗布する工程と、左右方向から圧縮力を受けた状態の前記止水用シール部材を前記装着溝に挿入して前記止水用シール部材の左右の前記外側側面と前記切欠き部の前記側面、前記止水用シール部材の底面の少なくとも一部と前記切欠き部の前記底面をそれぞれ密着させつつ接着剤を介して接着させる工程と、前記止水用シール部材の左右の前記接着固定部と前記変形連結部の間に形成される溝部に、断面略コの字状のくさび部材の脚部を挿入し、前記止水用シール部材の全長に亘って前記くさび部材を互いに接するように連続してまたは所定の間隔が空くように複数設置した状態で前記接着剤を硬化させる工程と、前記接着剤の硬化後に前記くさび部材を前記止水用シール部材から取り外す工程を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項9及び請求項10に係る発明は、前記くさび部材は、前記脚部の上端部における左右方向の幅が、前記止水用シール部材を前記装着溝に挿入した際の左右の前記接着固定部の前記内側側面の幅と略同一であり、前記脚部は下方に行くに従って左右方向に広がることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記より、請求項1に係る発明によれば、構造が簡単であるため、容易に施工することができる。また、止水用シール部材は左右方向の圧縮力を受けた状態で装着溝に挿入され、変形連結部により生じる反発力により止水用シール部材の左右の外側側面と切欠き部の側面が密着しつつ接着剤を介して接着されている構造であるため、止水用シール部材の外側側面がコンクリート構造物の切欠き部の側面に常に押し付けられて強く密着する状態が保たれ、高い止水性を確保することができる。
【0021】
また、止水用シール部材は可撓性を有するため、隣接して敷設されたコンクリート構造物の接続部において、施工誤差により軸方向にズレが生じた場合や、止水構造の施工後に地震等の地盤変動により軸方向変位や屈曲変位が生じた場合であっても、そのズレや変位に対して追従可能でるため、高い止水性を確保することができる。
【0022】
また、本願請求項2に係る発明によれば、止水用シール部材における左右の接着固定部の内側側面の上部に変形連結部に向けて突出する突起部が形成されている構造であるため、装着溝に接着剤を介して止水用シール部材を接着させる工程において、止水用シール部材の左右の接着固定部と変形連結部の間に形成される溝部にくさび部材の脚部を挿入した際に、くさび部材の脚部が接着固定部の突起部を左右方向に押し退けようとする力が働いて、止水用シール部材の外側側面がコンクリート構造物の切欠き部の側面に押し付けられて強く密着した状態となるため、装着溝に止水用シール部材を確実に接着し固定することができる。
【0023】
また、請求項3に係る発明によれば、止水用シール部材が装着溝に装着された際に、変形連結部と左右の接着固定部の突起部が密着した状態となる構造であるため、隣接して敷設されたコンクリート構造物の対向する端面同士の隙間(目地部)から地下水等が侵入して止水用シール部材の変形連結部に水圧がかかった場合においては、変形連結部が外側に向けて膨張して密着する突起部を左右方向に押し退けようとする力が働き、止水用シール部材の外側側面がコンクリート構造物の切欠き部の側面に押し付けられて強く密着した状態となるため、より高い止水性を確保することができる。
【0024】
また、請求項4に係る発明によれば、コンクリート構造物の切欠き部の深さが止水用シール部材の高さよりも深い構造であるため、隣接して敷設されたコンクリート構造物の接続部において施工誤差により軸直角方向にズレが生じた場合であっても、軸直角方向にズレが生じていない場合と同様の工程により容易に止水構造を施工することができるとともに、高い止水性を確保することができる。
【0025】
また、請求項5及び請求項6に係る発明によれば、止水用シール部材の底面の少なくとも一部が、コンクリート構造物の切欠き部の底面と密着しつつ接着剤を介して接着されている構造であるため、より高い止水性を確保することができる
【0026】
また、請求項7ないし請求項10に係る発明によれば、止水用シール部材を接着剤を介して装着溝に接着する際に、止水用シール部材にくさび部材を設置した状態で接着剤を硬化させることにより、止水用シール部材を装着溝に確実に接着し固定することができるため、より高い止水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る止水構造を構成する止水用シール部材の断面図である。
図2-1】ボックスカルバートの敷設概況図である。
図2-2】図2-1のI-I線断面の部分拡大矢視図である。
図3-1】本発明に係る止水構造の部分拡大図である。
図3-2】本発明に係る止水構造の部分拡大図である。
図4】本発明に係る止水構造を構築する際に使用するくさび部材の斜視図である。
図5】止水用シール部材にくさび部材を設置する工程を示す図である。
図6-1】本発明の他の実施形態に係る止水構造における止水用シール部材にくさび部材を設置する工程を示す図である。
図6-2】本発明の更に他の実施形態に係る止水構造における止水用シール部材にくさび部材を設置する工程を示す図である。
図7】本発明に係る止水構造の構築方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るコンクリ-ト構造物の接続部における止水構造(以下「止水構造」という)及びその止水構造に使用する止水用シール部材について、図1から図7に従って説明する。尚、以下では本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各図における同一の構成要素については、同一の符号を付するとともに、その説明については省略する。
【0029】
まず、本発明の第1実施形態に係る止水構造1に使用するコンクリート構造物について説明すると、図2-1に示すようなプレキャスト製の箱型のボックスカルバート2を使用する。このボックスカルバート2は、図2-2及び図3等に示すように、隣接して敷設された際に対向する端面3において内面9に沿って切欠き部4が形成されている。この切欠き部4は、断面略長方形状に切り欠かれ、側面5は端面3と略平行に、底面6は側面5側から端面3側に向けて緩く下るような傾斜が設けられている。
【0030】
そのため、図2-1に示すように、ボックスカルバート2を連続して敷設して、図2-2に示すように、隣接する2つのボックスカルバート2,2の切欠き部4の位置を合わせることにより、接続部において断面略長方形状の装着溝7が形成された状態となる。そして、装着溝7は、ボックスカルバート2の内空部8側に開口し、内面9の周方向に1周するように形成されている。
【0031】
図2-2は、ボックスカルバート2の接続部に形成された装着溝7に止水用シール部材10を装着した状態の接続部における部分拡大断面図である。尚、隣接して敷設された2つのボックスカルバート2,2は、それらの対向する端面3同士の間に、所定の幅(目地幅)が設けられるように敷設されている。
【0032】
次に、本発明に係る止水構造1に使用する止水用シール部材10について説明する。図1は、止水用シール部材10の断面図を示したものである。この止水用シール部材10は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製の硬度(JIS-A)40~70のものを用いて形成されているが、同様の硬度であるNR(天然ゴム)、CR(クロロプレンゴム)またはSBR(スチレンブタジェンゴム)などを利用してもよい。このように、比較的軽量であって、弾性・可撓性・撥水性・耐候性・耐薬品性に優れた材料で形成されていることが望ましい。
【0033】
また、止水用シール部材10は、左右に位置する2つの接着固定部11,11と、これら2つの接着固定部11,11の間に配置されるとともにそれらと連結されている変形連結部12からなり、押出成形により紐状に形成された部材である。左右2つの接着固定部11,11は断面縦長略長方形状であって、止水用シール部材10の内部に位置する面であるとともにそれぞれの接着固定部11において変形連結部12と対向する面である内側側面14における上端部に、変形連結部12側に向けて突出する突起部13が形成されている。この突起部13には、内側側面14において下方から上方に行くに従って変形連結部12側に傾斜する傾斜面部13aが形成されており、その断面は略直角三角形状となっている。
【0034】
突起部13が設けられている位置については、接着固定部11の内側側面14の上端部でなくてもよく、内側側面14の上部に設けられていればよい。また、突起部13の形状については、断面略直角三角形状でなくてもよく、変形連結部12側に向けて突出しているのであれば、断面略半円形状であっても断面略台形状であっても良く、その形状について限定はない。
【0035】
また、止水用シール部材10の左右方向の両端に位置する面である外側側面15及び底面16は、止水用シール部材10を装着溝7に挿入して装着した際に、切欠き部4の側面5及び底面6と隙間なく密着できるように平面となっている。
【0036】
また、止水用シール部材10の外側側面15の下端部には、面取り加工により外側傾斜面部18が形成されていることが望ましい。このように外側傾斜面18が形成されていることで、図3-1等に示すように、装着溝7に止水用シール部材10を挿入して、後述するように、切欠き部4の側面5及び底面6と、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16とを密着させた状態で接着剤により接着させる際に、接着固定部11と切欠き部4との間に接着剤が余分に存在する場合は、接着固定部11の外側傾斜面18と切欠き部4により形成される隙間部19にその余分な接着剤を誘導することができる。それにより、接着固定部11と切欠き部4の確実な接着を期待することができるとともに、隣接して敷設された2つのボックスカルバート2,2の端面3同士の隙間(目地部)から地下水等が侵入した場合であっても、隙間部19に誘導された接着剤により止水効果が期待できる。
【0037】
尚、図3-1に示すように、ボックスカルバート2の切欠き部4の深さ(内面9の高さから切欠き部4の底面6と端面3との交点の高さまでの上下方向の距離)の方が、止水用シール部材10の高さ(止水用シール部材10の上面23の高さから底面16の下端部の高さまでの上下方向の距離)よりも深い状態であることが望ましい。
【0038】
上記のように、切欠き部4の深さを止水用シール部材10の高さよりも深くして、深さに余裕を持たせることで、図3-2に示すように、隣接する2つのボックスカルバート2,2の間で軸直角方向である垂直方向や水平方向に施工誤差が生じて、切欠き部4の位置がずれた場合であっても、止水用シール部材10を他のものに交換することなく装着溝7内に装着することができるとともに、図3-1に示す施工誤差がない場合の止水用シール部材10の装着状態の断面形状と同一の断面形状で、止水用シール部材10を装着溝7内に装着することができるため、施工が容易となる。
【0039】
一方、ボックスカルバート2の切欠き部4の深さが、止水用シール部材10の高さと略等しくても良い。また、通常は止水用シール部材10がボックスカルバート2の内面9から内空部8側に突出することは避けるべきであるが、そのように突出する状態であっても、後述するように、止水用シール部材10を装着溝7に挿入して、切欠き部4の側面5及び底面6と、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16とを密着させた状態で接着剤により接着させることで、止水構造1が高い止水性を確保することができる状態であれば、ボックスカルバート2の切欠き部4の深さが、止水用シール部材10の高さより浅くても良い。
【0040】
変形連結部12は、その肉厚が接着固定部11よりも薄く、略直線状の立上がり部12aと湾曲する湾曲部12bからなり、断面略U字形状となっており、上方へ向けて突出している。また、左右の立上がり部12a,12aの下端部と、左右の接着固定部11,11の内側側面14側の下端部が、それぞれ断面略V字状に連結され、変形連結部12が変形可能な状態となっている。
【0041】
尚、変形連連結部12は、上方へ向けて突出する断面略凸状であればよいため、その断面形状が略V字状であってもよいし略Ω状であってもよく、特に限定はないが、上部が湾曲する形状であることが望ましい。また、変形連結部12の左右の立上がり部12a,12aの下端部は、左右の接着固定部11,11の内側側面14側の下端部に連結されていることが望ましいが、接着固定部11の内側側面14側の下部に連結されていてもよい。
【0042】
上記構造により、止水用シール部材10は、その全体が断面略W字形状となっており、左右2つの接着固定部11,11と変形連結部12の間には、後述するくさび部材30の脚部32を挿入可能な上方に開口する溝部22がそれぞれ形成された状態となっている。また、変形連結部12には、下方に開口する中空部24が形成されている。
【0043】
また、止水用シール部材10の左右の外側側面15,15を変形連結部12側に押し込む(止水用シール部材10の左右方向の幅を狭くする)ことで、変形連結部12が変形し、左右の接着固定部11,11の内側側面14と変形連結部12の左右の立上がり部12a,12aの上部が接近するとともに、左右の立上がり部12a,12aの下部同士が互いに接近した状態となる。それにより、変形連結部12には元の形状に戻ろうとする反発力が生じる。
【0044】
また、止水用シール部材10の左右の外側側面15,15を変形連結部12側に更に押し込む(止水用シール部材10の左右方向の幅を更に狭くする)ことで、変形連結部12が更に変形して、左右の接着固定部11,11の内側側面14と変形連結部12の左右の立上がり部12aの上部が更に接近し、接着固定部11の突起部13の傾斜面部13aが変形連結部12と密着した状態となる(図3-1参照)。そして更に押し込むことで、左右の接着固定部11,11の内側側面14も変形連結部12と密着し、変形連結部12が左右から押し込まれた状態となる(図6-2参照)。それにより、変形連結部12には元の形状に戻ろうとする更なる反発力が生じる。
【0045】
尚、止水用シール部材10の左右の外側側面15,15を変形連結部12側に押し込んだ際に、接着固定部11は変形させずに、変形連結部材12だけを変形させることができるように、変形連結部12の肉厚は接着固定部材11の肉厚よりも薄いことが望ましい。また、変形連結部12を変形させた際に十分に反発力が生じ、その反発力を左右2つの接着固定部11,11へ的確に伝えることができるように、変形連結部12はある程度の肉厚を有することが望ましく、変形連結部12の立上がり部12aと湾曲部12bは肉厚が略均等であることが望ましい。
【0046】
図4は、キャップ型のくさび部材30を示したものであり、止水用シール部材10を装着溝7に挿入して接着固定する際に使用する部材である。このくさび部材30は、天板部31及び脚部32よりなり、正面視略コの字状であるとともに、前後方向に所定の長さを有する部材である。詳述すると、天板部31の両端より下方に延びる脚部32がそれぞれ設けられており、その脚部32は、下方に行くに従って緩やかに左右方向(外方向)に広がるように設けられている。
【0047】
このくさび部材30は、以下で詳述するように、止水用シール部材10を装着溝7に装着した際に、左右2つの接着固定部11,11と変形連結部12との間に形成される左右の溝部22,22に、その脚部32をそれぞれ挿入して使用するものであるため、2つの脚部32,32の上端部における左右方向(幅方向)の外寸である上部幅c1が、止水用シール部材10を装着溝7に装着した際の左右2つの接着固定部11,11の内側側面14の左右方向の幅C1(図3-1等参照)と略同一となるものを使用する。
【0048】
また、くさび部材30の2つの脚部32,32の長さである脚部長d1は、左右2つの接着固定部11,11と変形連結部12との間に形成される溝部22の深さD1と略等しいか、それよりもやや長いものを使用する。また脚部32は、溝部22に挿入しやすいように、その厚さは薄く形成されており、また、その下端部32aは研削加工により面取り加工が施されている。尚、くさび部材30の前後方向の長さについては特に限定はない。
【0049】
また、くさび部材30は弾性を要する部材であるため、金属製であっても良いが、止水用シール部材10の溝部22にその脚部32を挿入する際に、止水用シール部材10を損傷させないようにする必要があるため、ゴム製または樹脂製のものであることが望ましい。具体的には、止水用シール部材10の硬度よりも高い硬度(硬度(JIS-A)70~90)を有するゴム製または樹脂製のものであることが望ましい。
【0050】
上記構造により、くさび部材30は、くさび部材30の2つの脚部32,32の下端部32a付近の外側側面32bを内側へ向けて押し込み、2つ脚部32,32の下端部32aの左右方向の幅を狭めた状態に変形させることで、脚部32が元の状態(2つの脚部32,32の下端部32aの左右方向の幅が外側に向けて広がった状態)に戻ろうとする反発力が生じる。
【0051】
ここで、本発明の第1実施形態に係る止水構造1の構築方法(施工方法)について説明する。図7は、コンクリート構造物であるボックスカルバート2の接続部における止水構造1の構築方法の工程を示したものである。まず、図2-1に示すように、連続して一直線に複数のボックスカルバート2を敷設し、図2-2に示すように、隣接する2つのボックスカルバート2,2の切欠き部4を合わせることによって、その接続部に装着溝7を形成する。
【0052】
次に、切欠き部4の側面5及び底面6(装着溝7)にあらかじめ接着剤(図示せず)を塗布しておく。ここで使用する接着剤として、具体的には変性シリコーン系シーリング材などを使用する。そして、その接着剤を、シールガンなどを用いて切欠き部4の側面5及び底面6に塗布し、ヘラなどで均す。
【0053】
次に、図3-1に示すように、止水用シール部材10の左右の外側側面15,15を変形連結部12側へ向けて押し込んでその左右方向の幅を狭めた状態にして、止水用シール部材10を底面16側から装着溝7の全体に押し込むことで、止水用シール部材10を装着溝7に挿入する。
【0054】
それにより、変形連結部12には上記のように反発力が生じ、止水用シール部材10の左右2つの接着固定部材11,11を左右方向に押し広げて元の形状に戻ろうとする力が働くため、外側側面15が切欠き部4の側面5に押しつけられて密着した状態となる。
【0055】
また、止水用シール部材10の上面23は、ボックスカルバート2の内面9よりも下方に位置しており、切欠き部4の底面6と止水用シール部材10の底面16が接した状態となっている。
【0056】
このとき、左右2つの接着固定部11,11の突起部13の傾斜面部13aが、変形連結部12の湾曲部12bに密着して、左右の溝部22,22が突起部13により塞がれた状態となっており、また、変形連結部12により形成されている中空部24は、隣接して敷設された2つのボックスカルバート2,2により形成される端面3同士の隙間(目地部)に向けて開口した状態となっていることが望ましい。
【0057】
次に、図5に示すように、装着溝7に挿入した止水用シール部材10の左右の溝部22,22に、くさび部材30の2つの脚部32,32をそれぞれ挿入して、止水用シール部材10にくさび部材30を設置する。このとき、くさび部材30の2つの脚部32,32の下端部32a付近の外側側面32bを内側へ向けて押し込み、2つの下端部32a,32aの左右方向の幅を狭めた状態にして、2つの脚部32,32を、左右2つの接着固定部11,11の突起部13の傾斜面部13aと変形連結部12の湾曲部12bの間から差し込み、左右の溝部22,22にそれぞれ挿入する。そして、脚部32の下端部32aが溝部22の底部22aに接するまでくさび部材30を押し込み、接した後も更にくさび部材30を下方へ強く押し込む。
【0058】
このようにくさび部材30を設置することで、脚部32が元の状態に戻ろうとする反発力が生じるため、止水用シール部材10の左右2つの接着固定部11,11の内側側面14の下部においては、接着固定部11を左右方向に押し広げようとする力が働く。また、止水用シール部材10の左右2つの接着固定部11,11の内側側面14の上部においては、脚部32の上部が接着固定部11の突起部13を左右方向に押し退けようとする力が働く。
【0059】
上記押し広げようとする力等により、止水用シール部材10の左右の外側側面15は、切欠き部4の側面5に強く押し付けられて密着した状態となる。また、止水用シール部材10の底面16は、くさび部材30を下方へ強く押し込む力により、切欠き部4の底面6に強く押し付けられて密着した状態となる。
【0060】
よって、止水用シール部材10を装着溝7に挿入した際に、接着する切欠き部4の側面5と止水用シール部材10の外側側面15との間、及び切欠き部4の底面6と止水用シール部材10の底面16との間に、接着剤とともに気泡が入り込んでいた場合であっても、上記のように止水用シール部材10の外側側面15及び底面16が切欠き部4の側面5及び底面6に強く押し付けられて密着した状態とすることで、それらの接着する面の間から気泡を外に排出させることができる。
【0061】
また、切欠き部4の側面5や底面6に接着剤が余分に塗布されていた場合であっても、上記のように止水用シール部材10の外側側面15及び底面16が切欠き部4の側面5及び底面6に強く押し付けられて密着した状態とすることで、それらの接着する面の間に存在する余分な接着剤を外へ排出することができるとともに、隙間部19に誘導することができる。
【0062】
このように、止水用シール部材10を装着溝7に押し込んで挿入した際に、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16と切欠き部4の側面5及び底面6との間の接着状態が不十分であったとしても、上記のようにくさび部材30を設置して、それらの接着する面の間から気泡や余分な接着剤を排出することにより、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16と切欠き部4の側面5及び底面6との間の確実な接着状態を確保することができる。そのため、止水構造1の高い止水性を確保することができる。
【0063】
また、上記のように止水用シール部材10を装着溝7に装着することで、隣接して敷設された2つのボックスカルバート2,2により形成される端面3同士の隙間(目地部)から地下水等が侵入して、変形連結部12により形成される中空部24に水圧がかかった場合、変形連結部12が外側に向けて膨張し、変形連結部12と密着する左右2つの接着固定部11,11の突起部13を左右方向に押し退けようとする力が働く。
【0064】
よって、地下水等の水圧により、接着剤で接着した止水用シール部材10の底面16と切欠き部4の底面6が剥離して、それらの間から地下水等の侵入を許した場合であっても、隙間部19に収容されて固化した接着剤により、更には止水用シール部材10の外側側面15が上記のように切欠き部4の側面5に強く押し付けられて密着することにより、止水構造1からボックスカルバート2の内空部8への地下水等の侵入を確実に防止することができる。
【0065】
また、止水用シール部材10は可撓性を有し変形追従性に優れるため、止水構造1の施工後に地震等の地盤変動により隣接する2つのボックスカルバート2,2の接続部において軸方向変位や軸直角方向変位、更には屈曲変位が生じた場合であっても、変形連結部12が変形することで、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16と切欠き部4の側面5及び底面6との間の接着状態を維持することができるため、止水構造1からボックスカルバート2の内空部8への地下水等の侵入を確実に防止することができる。
【0066】
尚、ボックスカルバート2の内面9の周方向に1周するように形成された装着溝7の全体に挿入された止水用シール部材10において、くさび部材30を設置する際は、止水用シール部材10の全長に亘って複数のくさび部材30を互いに接するように連続して設置しても良いし、複数のくさび部材30を所定の間隔(例えば10~30cm間隔など)が空くように設置しても良い。
【0067】
また、自重により止水用シール部材10が装着溝7から脱落しやすいボックスカルバート2の頂版の位置や、曲げて装着するために止水用シール部材10が装着溝7から浮き上がりやすいハンチ部の位置など、止水用シール部材10を装着溝7に押し込んで挿入しただけでは、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16と切欠き部4の側面5及び底面6との間の接着状態が不十分となりやすい位置においては、くさび部材30を数多く設置することが望ましい。
【0068】
次に、接着剤を養生により硬化させる。接着剤の硬化後は、くさび部材30を止水用シール部材10から取り外すことで、止水用シール部材10の装着溝7への装着作業が完了する。尚、くさび部材30を取り外す時期は、使用する接着剤の硬化時間、気温等の施工時の環境条件を考慮して決定する。また、取り外したくさび部材30は、本発明に係る止水構造1の他の施工現場において再利用することが可能である。
【0069】
図3-2は、隣接する2つのボックスカルバート2,2の間で施工誤差が生じて、位置関係がその軸直角方向である垂直方向(上下方向)や水平方向にずれた場合の止水構造40である。その場合も、上記止水構造1の構築方法(施工方法)と同様の工程により構築されるが、作業内容が少々異なる。具体的には、切欠き部4(装着溝7)にあらかじめ接着剤(図示せず)を塗布する工程において、内面9の上下方向の位置が高い方(左側)のボックスカルバート2の切欠き部4においては、側面5及び底面6に接着剤を塗布する一方、内面9の上下方向の位置が低い方(右側)のボックスカルバート2の切欠き部4においては、側面5にのみ接着剤を塗布する。
【0070】
次に、止水用シール部材10を装着溝7に挿入する工程において、止水用シール部材10の左右の外側側面15を変形連結部12側へ向けて押し込んでその左右方向の幅を狭めた状態にして、止水用シール部材10を底面16側から装着溝7に押し込むことで、止水用シール部材10を装着溝7に挿入する。このとき、内面9の上下方向の位置が高い方(左側)のボックスカルバート2の切欠き部4の底面6と、止水用シール部材10の底面16が接した状態となるまで、止水用シール部材10を押し込む。
【0071】
次に、止水用シール部材10の溝部22に、くさび部材30の脚部32を挿入して設置する工程において、くさび部材30の2つの脚部32,32の下端部32a付近の外側側面32bを内側へ向けて押し込み、2つの下端部32a,32aの左右方向の幅を狭めた状態にして、2つの脚部32,32を、左右2つの接着固定部11,11の突起部13の傾斜面部13aと変形連結部12の湾曲部12bの間から差し込み、左右の溝部22,22にそれぞれ挿入する。そして、脚部32の下端部32aが溝部22の底部22aに接するまでくさび部材30を押し込み、接した後も更にくさび部材30を下方へ強く押し込むことでくさび部材30を設置する。
【0072】
こうすることで、止水用シール部材10の左右の外側側面15は、くさび部材30の反発力により、隣接する2つのボックスカルバート2,2の切欠き部4の側面5に強く押し付けられて密着した状態となり、止水用シール部材10の底面16は、くさび部材30を下方へ強く押し込む力により、内面9の上下方向の位置が高い方(左側)のボックスカルバート2の切欠き部4の底面6に強く押し付けられて密着した状態となる。
【0073】
上記構築方法により、隣接する2つのボックスカルバート2,2の間で施工誤差が生じて、位置関係がその軸直角方向である垂直方向(上下方向)や水平方向にずれた場合であっても、止水構造1(図3-1参照)において使用した止水用シール部材10と同一のものを使用することができるため、止水構造40の施工コストを抑えることができる。また、止水構造1において装着溝7内に装着した止水用シール部材10の断面形状と同様の断面形状の状態で、止水用シール部材10を装着溝7内に装着することが可能であるため、止水構造40の施工作業が容易であるとともに、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16と切欠き部4の側面5及び底面6との間の確実な接着状態を確保することができるため、高い止水性を確保することができる。
【0074】
また、隣接して敷設された2つのボックスカルバート2,2により形成される端面3同士の隙間(目地部)から地下水等が侵入して、変形連結部12により形成される中空部24に水圧がかかった場合や、止水構造40の施工後に地震等の地盤変動により隣接する2つのボックスカルバート2,2の接続部において軸方向変位や軸直角方向変位、更には屈曲変位が生じた場合であっても、止水構造1の場合と同様に、止水構造40からボックスカルバート2の内空部8への地下水等の侵入を確実に防止することができる。
【0075】
尚、本発明の第1実施形態に係る施工誤差の無い場合の止水構造1は止水用シール部材10の底面16の全体が、垂直方向等の施工誤差を有する場合の止水構造40は止水用シール部材10の底面16の一部が、ボックスカルバート2の切欠き部4の底面6と密着しつつ接着剤を介して接着されている構造であるが、施工誤差の無い場合及び垂直方向等に施工誤差を有する場合において、止水用シール部材10の底面16の全体がボックスカルバート2の切欠き部4の底面6と密着していない構造であってもよい。
【0076】
図6-1は、本発明の第2実施形態に係る止水構造1A、及び装着溝7Aに挿入し止水用シール部材10にくさび部材30Aを設置する工程を示したものである。この止水構造1Aは、隣接する2つのボックスカルバート2,2の間で施工誤差が生じて、位置関係がその軸方向(左右方向)にずれて広がった場合(端面3同士の幅(目地幅)が標準値よりも広がった場合)の止水構造であり、上記第1実施形態に係る止水構造1の装着溝7の左右方向の幅よりも、装着溝7Aの左右方向の幅の方がやや広がっている。
【0077】
この装着溝7Aの左右方向の幅が、止水構造1に使用する止水用シール部材10の通常の状態(図1参照)の左右方向の幅よりも狭い場合には、止水構造1Aにおいても止水用シール部材10を使用することができる。具体的には、止水用シール部材10の外側側面15を変形連結部12側へ向けて押し込んで左右方向の幅を狭めた状態にして、止水用シール部材10を底面16側から装着溝7Aに押し込むことで、止水用シール部材10を装着溝7Aに挿入する。このとき、左右2つの接着固定部11,11の突起部13の傾斜面部13aは、変形連結部12の湾曲部12bに密着しておらず、左右の溝部22,22が、ボックスカルバート2の内空部8側に開口した状態となっている。
【0078】
この場合、止水用シール部材10を装着溝7Aに装着した際の左右2つの接着固定部11,11の内側側面14の左右方向の幅C2が、止水用シール部材10を装着溝7に装着した際のその左右方向の幅C1よりも広いため、止水構造1で使用したくさび部材30を止水用シール部材10に設置しようとしても設置できなかったり、設置できたとしても止水用シール部材10の外側側面15を切欠き部4の側面5に強く押し付けることができない場合が生じる。そのため、止水用シール部材10の上記幅C2と、2つの脚部32,32の上端部における左右方向(幅方向)の外寸である上部幅が略同一であるくさび部材30Aを使用して、止水用シール部材10を装着溝7Aに装着する。
【0079】
尚、このとき使用するくさび部材30Aの構造及び材質については、上記上部幅以外はくさび部材30と同様である。
【0080】
上記構築方法により、隣接する2つのボックスカルバート2,2の間で施工誤差が生じて、位置関係がその軸方向(左右方向)にずれて広がった場合(端面3同士の幅(目地幅)が標準値よりも広がった場合)であっても、止水用シール部材10の可撓性によりその幅の変化に対して対応可能(変形追従可能)な範囲内においては、止水用シール部材10は変わらず同じものを使用することができるため、止水構造1Aの施工コストを抑えることができる。また、止水構造1の場合と同様に、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16と切欠き部4の側面5及び底面6との間の確実な接着状態を確保することができるため、止水構造1Aの高い止水性を確保することができる。
【0081】
更には、止水構造1Aの施工後に地震等の地盤変動により隣り合うボックスカルバート2,2の接続部において軸方向変位や軸直角方向変位、更には屈曲変位が生じた場合であっても、止水構造1の場合と同様に、止水構造1Aからボックスカルバート2の内空部8への地下水等の侵入を確実に防止することができる。
【0082】
図6-2は、本発明の第3実施形態に係る止水構造1B、及び装着溝7Bに挿入し止水用シール部材10にくさび部材30Bを設置する工程を示したものである。通常、ボックスカルバート2の施工においては、ライナープレートなどを使用して位置調整するため、隣接する2つのボックスカルバート2,2の端面3同士の幅(目地幅)が標準値よりも狭くなることは無いが、止水構造1Bは、そうした標準値を規定しておらず、隣接する2つのボックスカルバート2,2の間で施工誤差が生じて、位置関係がその軸方向(左右方向)にずれて狭まった場合(端面3同士の幅(目地幅)が標準値よりも狭まった場合)の止水構造であり、上記第1実施形態に係る止水構造1の装着溝7の左右方向の幅よりも、装着溝7Bの左右方向の幅がやや狭まっている。
【0083】
この装着溝7Bの左右方向の幅が、止水構造1に使用する止水用シール部材10の通常の状態(図1参照)の左右方向の幅よりも狭いため、止水構造1Bにおいても止水用シール部材10を使用することができる。具体的には、止水用シール部材10の外側側面15を変形連結部12側へ向けて押し込んで左右方向の幅を狭めた状態にして、止水用シール部材10を底面16側から装着溝7Bに押し込むことで、止水用シール部材10を装着溝7Bに挿入する。このとき、左右2つの接着固定部11,11の突起部13の傾斜面部13a及び内側側面14は、変形連結部12の湾曲部12bに密着して、左右の溝部22,22が塞がれた状態となっている。
【0084】
この場合、止水用シール部材10を装着溝7Bに装着した際の左右2つの接着固定部11,11の内側側面14の左右方向の幅C3が、止水用シール部材10を装着溝7に装着した際のその左右方向の幅C1よりも狭いため、止水構造1で使用したくさび部材30を止水用シール部材10に設置しようとしても設置できない場合が生じる。そのため、止水用シール部材10の上記幅C3と、2つの脚部32,32の上端部における左右方向(幅方向)の外寸である上部幅が略同一のくさび部材30Bを使用して、止水用シール部材10を装着溝7Bに装着する。
【0085】
尚、このとき使用するくさび部材30Bの構造及び材質については、上記上部幅以外はくさび部材30と同様である。
【0086】
上記構築方法により、隣接する2つのボックスカルバート2,2の間で施工誤差が生じて、位置関係がその軸方向(左右方向)にずれて狭まった場合(端面3同士の幅(目地幅)が標準値よりも狭まった場合)であっても、止水用シール部材10の可撓性によりその幅の変化に対して対応可能(変形追従可能)な範囲内においては、止水用シール部材10は変わらず同じものを使用することができるため、止水構造1Bの施工コストを抑えることができる。また、止水構造1の場合と同様に、止水用シール部材10の外側側面15及び底面16と切欠き部4の側面5及び底面6との間の確実な接着状態を確保することができるため、止水構造1Bの高い止水性を確保することができる。
【0087】
また、隣接して敷設された2つのボックスカルバート2,2により形成される端面3同士の隙間(目地部)から地下水等が侵入して、変形連結部12により形成される中空部24に水圧がかかった場合や、止水構造1Bの施工後に地震等の地盤変動により隣接する2つのボックスカルバート2,2の接続部において軸方向変位や軸直角方向変位、更には屈曲変位が生じた場合であっても、止水構造1の場合と同様に、止水構造1Bからボックスカルバート2の内空部8への地下水等の侵入を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B 止水構造 22 溝部
2 ボックスカルバート 22a 底部
3 端面 23 上面
4 切欠き部 24 中空部
5 側面 30,30A,30B くさび部材
6 底面 31 天板部
7,7A,7B 装着溝 32 脚部
8 内空部 32a 下端部
9 内面 32b 外側側面
10 止水用シール部材 C1,C2,C3 内側側面の幅
11 接着固定部 c1 上部幅
12 変形連結部 D1 溝部の深さ
12a 立上り部 d1 脚部長
12b 湾曲部
13 突起部
13a 傾斜面部
14 内側側面
15 外側側面
16 底面
18 外側傾斜面部
19 隙間部
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7