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特開2024-6583清掃パス計画装置、ロボット、清掃パス計画方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006583
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】清掃パス計画装置、ロボット、清掃パス計画方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240110BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A47L9/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107622
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆哉
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 政典
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 毅
(72)【発明者】
【氏名】浅野 忠明
【テーマコード(参考)】
3B057
5H301
【Fターム(参考)】
3B057DE02
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB11
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH01
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】直角多角形の清掃エリア内の物体を排出エリアまで押し出す清掃パスを計画する。
【解決手段】押出機構を有するロボットによる清掃エリアの清掃パスを計画する清掃パス計画装置であって、清掃エリアを含む環境地図を取得する環境地図取得部と、環境地図から、清掃エリアと、清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出するエリア抽出部と、清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に排出エリアまで押し出す清掃パスを生成する清掃パス生成部と、を備える、清掃パス計画装置が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機構を有するロボットによる清掃エリアの清掃パスを計画する清掃パス計画装置であって、
前記清掃エリアを含む環境地図を取得する環境地図取得部と、
前記環境地図から、前記清掃エリアと、前記清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出するエリア抽出部と、
前記清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの前記清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に前記排出エリアまで押し出す前記清掃パスを生成する清掃パス生成部と、
を備える、清掃パス計画装置。
【請求項2】
前記清掃パス生成部は、
前記環境地図から抽出された前記清掃エリアの形状を識別し、
前記清掃エリアの形状が矩形または直角多角形以外の場合には、前記清掃エリアを直角多角形に近似し、
直角多角形の清掃エリアまたは前記直角多角形に近似した清掃エリアを矩形の清掃区画に分割し、
指定された清掃モードに基づいて、前記清掃区画の清掃順序を決定し、前記清掃パスを生成する、請求項1に記載の清掃パス計画装置。
【請求項3】
前記清掃パス生成部は、前記直角多角形の清掃エリアまたは前記直角多角形に近似した清掃エリアを、前記排出エリアに近い範囲から矩形の清掃区画に分割する、請求項2に記載の清掃パス計画装置。
【請求項4】
前記清掃パス生成部は、
前記排出エリアと隣接する前記清掃エリアの線分を抽出して、前記線分を矩形の一辺とする第1の清掃区画を設定し、
前記清掃エリアのすべての範囲に対して前記清掃区画が設定されるまで、第nの清掃区画(nは自然数)と隣接し、かつ、前記清掃エリアの輪郭ではない線分を抽出して、抽出した前記線分それぞれについて、当該線分を矩形の一辺とする第n+1の清掃区画を設定する処理を繰り返す、請求項3に記載の清掃パス計画装置。
【請求項5】
前記清掃パス生成部は、
前記排出エリアと隣接していない清掃区画それぞれに対して、他の1つの清掃区画を仮の排出エリアとして設定し、
前記清掃区画の清掃順序に基づいて、前記清掃区画から物体を前記仮の排出エリアに押し出すパスを連結し、前記清掃パスを生成する、請求項2~4のいずれか1項に記載の清掃パス計画装置。
【請求項6】
物体を押し出す押出機構と、
自走機構と、
複数の清掃区画からなる清掃エリアにおいて、それぞれの前記清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に前記清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアまで押し出す清掃パスに基づいて、前記自走機構を走行させる制御部と、
を備える、ロボット。
【請求項7】
押出機構を有するロボットによる清掃エリアの清掃パスを計画する清掃パス計画方法であって、
前記清掃エリアを含む環境地図を取得する環境地図取得ステップと、
前記環境地図から、前記清掃エリアと、前記清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出するエリア抽出ステップと、
前記清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの前記清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に前記排出エリアまで押し出す前記清掃パスを生成する清掃パス生成ステップと、
を含む、清掃パス計画方法。
【請求項8】
コンピュータを、押出機構を有するロボットによる清掃エリアの清掃パスを計画する清掃パス計画装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記清掃エリアを含む環境地図を取得する環境地図取得部と、
前記環境地図から、前記清掃エリアと、前記清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出するエリア抽出部と、
前記清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの前記清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に前記排出エリアまで押し出す前記清掃パスを生成する清掃パス生成部と、
を備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃パス計画装置、ロボット、清掃パス計画方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブルドーザ等のブレード等の押出機構を有するロボットを用いた清掃の自動化が進んでいる。ロボットの清掃パス計画により排出量が変化することから、従来から、清掃パス計画を立案するための手法が検討されている。例えば、非特許文献1には、押出機構を有するロボットの清掃パスを計画する技術が開示されている。非特許文献1の技術は、矩形の清掃エリアを清掃する際の清掃パスを計画するものであるが、清掃エリアの形状は矩形ではないことも多い。このため、直角多角形のような、より複雑な形状の清掃エリアについても、自動的に清掃パスを計画するための技術が望まれている。
【0003】
清掃エリアが直角多角形である場合、直角多角形は矩形の組み合わせにより表せることから、直角多角形を矩形に分割し、非特許文献1の技術を適用して、清掃パスを計画することが考えられる。
【0004】
直角多角形を矩形に分割する技術としては、例えば、特許文献1には、直角凹凸多角形領域を、x座標の小さい方から順に矩形に分割する技術が開示されている。また、特許文献2には、直角多角形を最小数の矩形に分割する技術が開示されている。さらに、非特許文献2には、穴のある直角多角形を最小数の矩形に分割する際に、より短い計算時間で直角多角形を分割する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01-183782号公報
【特許文献2】特開2002-313917号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】発明推進協会公開技報公技番号2021-501219号
【非特許文献2】Hwi Kim、外2名、“Rectangular Partitions of a Rectilinear Polygon”、[online]、2021年11月3日、arXiv:2111.01970、[令和4年6月6日検索]、インターネット〈URL:https://arxiv.org/abs/2111.01970〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1、2及び非特許文献2に記載の技術では、直角多角形を矩形に分割することは可能であるが、清掃エリア内の矩形区画それぞれを非特許文献1の技術を適用して清掃できたとしても、最終的に清掃エリア内の物体を排出エリアに押し出せるとは限らない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、直角多角形の清掃エリア内の物体を排出エリアまで押し出す清掃パスを計画することが可能な、清掃パス計画装置、清掃パス計画方法及びコンピュータプログラム、及び、計画清掃パスに基づき清掃エリアを清掃するロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、押出機構を有するロボットによる清掃エリアの清掃パスを計画する清掃パス計画装置であって、清掃エリアを含む環境地図を取得する環境地図取得部と、環境地図から、清掃エリアと、清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出するエリア抽出部と、清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に排出エリアまで押し出す清掃パスを生成する清掃パス生成部と、を備える、清掃パス計画装置が提供される。
【0010】
清掃パス生成部は、環境地図から抽出された清掃エリアの形状を識別し、清掃エリアの形状が矩形または直角多角形以外の場合には清掃エリアを直角多角形に近似し、直角多角形の清掃エリアまたは直角多角形に近似した清掃エリアを矩形の清掃区画に分割し、指定された清掃モードに基づいて、清掃区画の清掃順序を決定し、清掃パスを生成してもよい。
【0011】
清掃パス生成部は、直角多角形の清掃エリアまたは直角多角形に近似した清掃エリアを、排出エリアに近い範囲から矩形の清掃区画に分割してもよい。
【0012】
清掃パス生成部は、排出エリアと隣接する清掃エリアの線分を抽出して、線分を矩形の一辺とする第1の清掃区画を設定し、清掃エリアのすべての範囲に対して清掃区画が設定されるまで、第nの清掃区画(nは自然数)と隣接し、かつ、清掃エリアの輪郭ではない線分を抽出して、抽出した線分それぞれについて、当該線分を矩形の一辺とする第n+1の清掃区画を設定する処理を繰り返してもよい。
【0013】
清掃パス生成部は、排出エリアと隣接していない清掃区画それぞれに対して、他の1つの清掃区画を仮の排出エリアとして設定し、清掃区画の清掃順序に基づいて、清掃区画から物体を仮の排出エリアに押し出すパスを連結し、清掃パスを生成してもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、物体を押し出す押出機構と、自走機構と、複数の清掃区画からなる清掃エリアにおいて、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアまで押し出す清掃パスに基づいて、自走機構を走行させる制御部と、を備える、ロボットが提供される。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、押出機構を有するロボットによる清掃エリアの清掃パスを計画する清掃パス計画方法であって、清掃エリアを含む環境地図を取得する環境地図取得ステップと、環境地図から、清掃エリアと、清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出するエリア抽出ステップと、清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に排出エリアまで押し出す清掃パスを生成する清掃パス生成ステップと、を含む、清掃パス計画方法が提供される。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、押出機構を有するロボットによる清掃エリアの清掃パスを計画する清掃パス計画装置として機能させるコンピュータプログラムであって、清掃エリアを含む環境地図を取得する環境地図取得部と、環境地図から、清掃エリアと、清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出するエリア抽出部と、清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に排出エリアまで押し出す清掃パスを生成する清掃パス生成部と、を備える、コンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの清掃区画内の物体を排出エリアに向かって押し出す清掃パスを生成する。これにより、押出機構を有するロボットが、直角多角形の清掃エリア内の物体を排出エリアまで押し出す清掃パスを計画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ロボットにより清掃する清掃エリアと、排出エリアとを示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る清掃パス計画装置の構成例を示すブロック図である。
図3】同実施形態に係る清掃パス計画方法の一例を示すフローチャートである。
図4】同実施形態に係る清掃パス生成処理の一例を示すフローチャートである。
図5】同実施形態に係る清掃エリア分割処理の一例を示すフローチャートである。
図6】清掃エリア及び排出エリアの一例を示す説明図である。
図7図6に示す清掃エリアの分割の順序を示す説明図である。
図8】清掃パス計画装置として機能する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図9】実施例Aにて用いた直角28角形の清掃エリアと排出エリアとを含む環境地図の画像である。
図10図9の清掃エリアの分割結果を示す画像である。
図11】実施例Bにて用いた清掃エリアと排出エリアとを含む環境地図の画像である。
図12図11の清掃エリアの左(L)、中央(C)、右(R)の清掃区画それぞれに対して設定された清掃パスを示す画像である。
図13】実施例Bにて、清掃パスa~cそれぞれについてロボットにより清掃エリアを清掃させたシミュレーション結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
[1.概要]
まず、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る清掃パス計画装置による清掃パス計画の概要を説明する。図1は、ロボット50により清掃する清掃エリアAcと、排出エリアAdとを示す説明図であり、各エリアAc、Adを平面視した状態を示している。
【0021】
本実施形態に係る清掃パス計画装置は、清掃エリアAcの物体9をロボット50により排出エリアAdへ押し出す清掃パスを計画する装置である。ロボット50は、本体部51の車輪53を回転させて自走する自走機構と、物体9を押し出す押出機構55とを備える。ロボット50は、清掃パス計画装置により生成された清掃パス(すなわち、複数の清掃区画からなる清掃エリアにおいて、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアまで押し出す清掃パス)に基づき、清掃エリアAcを自走して、清掃エリアAc内に散乱する物体9を押出機構55により押し出し、排出エリアAdに移動させる。
【0022】
清掃エリアAcは、図1に示すような直角多角形である。清掃エリアAcには、設備の支柱30等のように、ロボット50の移動の障害物となるものもある。このような清掃エリアAc内の物体9をロボット50により排出エリアAdへ排出するため、本実施形態に係る清掃パス計画装置は、直角多角形の清掃エリアAcを分割し、それぞれの清掃区画を清掃する順序を決定して、清掃区画内の物体9を排出エリアに向かって押し出す清掃パスを生成する。
【0023】
以下、本実施形態に係る清掃パス計画装置とこれによる清掃パス計画方法について説明する。
【0024】
[2.清掃パス計画装置]
図2は、本発明の一実施形態に係る清掃パス計画装置100の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る清掃パス計画装置100は、図2に示すように、環境地図取得部110と、エリア抽出部120と、清掃パス生成部130と、出力部140とを有する。
【0025】
環境地図取得部110は、清掃エリアを含む環境地図を取得する。環境地図は、清掃エリアを清掃するロボット50が存在する周辺の地図情報である。環境地図から、清掃エリアがどのような環境にあるか、清掃エリアのどこにどのような障害物があるか、といった情報を把握することができる。
【0026】
環境地図取得部110は、予め取得されている図面やオンライン上で提供されている地図情報を、環境地図として取得してもよい。あるいは、環境地図取得部110は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、SFM(Structure from Motion)、LiDAR(Light Detection and Ranging)等の技術によって環境地図を取得してもよい。また、環境地図取得部110は、清掃エリアの周辺に設置されているカメラあるいはロボット50が搭載するカメラにより撮影された画像や、LiDARにより取得された点群、清掃担当者が手動で作成した地図情報を、環境地図として取得してもよい。環境地図取得部110は、取得した環境地図をエリア抽出部120へ出力する。
【0027】
エリア抽出部120は、環境地図から、ロボット50により清掃する清掃エリアと、清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出する。エリア抽出部120は、環境地図取得部110により取得された環境地図に対して予め清掃エリア及び排出エリアが指定されている場合、環境地図から自動的に清掃エリア及び排出エリアを抽出する。あるいは、清掃担当者が手動で、環境地図に対して清掃エリア及び排出エリアを指定してもよい。エリア抽出部120は、環境地図に対して指定された清掃エリア及び排出エリアを環境地図から抽出するための情報(例えば、異なる表示色で清掃エリア及び排出エリアを表した環境地図の画像)を、清掃パス生成部130へ出力する。
【0028】
清掃パス生成部130は、清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に排出エリアまで押し出す清掃パスを生成する。清掃エリアを複数の清掃区画に分割した後、各清掃区画内の物体を排出エリアに押し出すには、清掃パスを適切に設定する必要がある。そこで、本実施形態に係る清掃パス生成部130は、清掃エリアの複数の清掃区画のうち、排出エリアと隣接していない清掃区画それぞれに対して、隣接する他の1つの清掃区画を仮の排出エリアとして設定し、清掃区画内の物体を設定した仮の排出エリアまで押し出すパスを清掃区画ごとに決定する。そして、清掃パス生成部130は、清掃区画の清掃順序に基づいて、清掃区画ごとに決定したパスを連結することにより、清掃パスを生成する。これにより、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して行き、最終的な排出先である排出エリアまで物体を押し出すことのできる清掃パスが生成される。
【0029】
なお、清掃パス生成部130による清掃パス生成処理についての詳細な説明は後述する。清掃パス生成部130は、生成した清掃パスを出力部140へ出力する。
【0030】
出力部140は、清掃パス生成部130により生成された清掃パスを、ロボット50に送信する。ロボット50は、清掃パス計画装置100から清掃パスを受信すると、当該清掃パスに従って走行するよう制御部57による走行制御が開始される。なお、ロボット50は、自動での清掃が困難な場合にも駆動可能にするため、リモートコントローラ等により、清掃車業者が手動で走行制御可能に構成されていてもよい。
【0031】
図2に示す清掃パス計画装置100の環境地図取得部110、エリア抽出部120、及び、清掃パス生成部130は、ロボット50とは別の装置にて構成されているが、本発明はかかる例に限定されない。これらの機能部は、ロボット50に搭載されていてもよい。
【0032】
[3.清掃パス計画装方法]
以下、図3図7に基づいて、本実施形態に係る清掃パス計画方法について説明する。図3は、本実施形態に係る清掃パス計画方法の一例を示すフローチャートである。図4は、本実施形態に係る清掃パス生成処理の一例を示すフローチャートである。図5は、本実施形態に係る清掃エリア分割処理の一例を示すフローチャートである。図6は、清掃エリア及び排出エリアの一例を示す説明図である。図7は、図6に示す清掃エリアの分割の順序を示す説明図である。
【0033】
(1)環境地図取得(S10)
本実施形態に係る清掃パス計画方法では、まず、図3に示すように、環境地図取得部110により、清掃エリアを含む環境地図を取得する(S10)。環境地図取得部110は、予め取得されている図面やオンライン上で提供されている地図情報、SLAM、SFM、LiDAR等の技術によって得られた環境地図、カメラにより撮影された画像、清掃担当者が手動で作成した地図情報、等を、環境地図として取得してもよい。環境地図取得部110は、取得した環境地図をエリア抽出部120へ出力する。
【0034】
(2)エリア抽出(S20)
次いで、エリア抽出部120は、環境地図から、少なくとも、ロボット50により清掃する清掃エリアと、清掃エリア内の物体の排出先である排出エリアとを抽出する(S20)。エリア抽出部120は、環境地図取得部110により取得された環境地図から、自動的に清掃エリア及び排出エリアを環境地図から抽出する。例えば、ベルトコンベア下の落鉱を清掃する場合であれば、落鉱をベルトコンベア下から大型重機が通行可能な通路まで掻き出せればよい。この場合、エリア抽出部120は、環境情報から大型重機が通行可能な通路及びベルトコンベアを認識して、ベルトコンベアの設置範囲を清掃エリアとし、大型重機が通行可能な通路を排出エリアとする。なお、清掃担当者が手動で、環境地図に対して清掃エリア及び排出エリアを指定してもよい。
【0035】
エリア抽出部120は、環境地図から少なくとも清掃エリア及び排出エリアを抽出した結果を環境地図の画像上にそれぞれ表して、抽出したエリアが表された環境地図の画像を、清掃パス生成部130へ出力する。環境地図の画像では、例えば、異なる表示色で各エリアが表示される。これにより、環境地図のどの位置に清掃エリア及び排出エリアがあるかを把握することが可能となる。
【0036】
(3)清掃パス生成(S30)
清掃パス生成部130は、清掃エリアを複数の清掃区画に分割し、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して、最終的に排出エリアまで押し出す清掃パスを生成する(S30)。以下では、清掃パス生成処理の一例として、清掃エリアを直角多角形に近似し、直角多角形に近似した清掃エリアを矩形の清掃区画に分割し、指定された清掃モードに基づいて清掃区画の清掃順序を決定し、清掃パスを生成する処理を、図4図7に基づき説明する。
【0037】
(S300:エリア情報抽出)
図4に示すように、まず、清掃パス生成部130は、ステップS20により抽出した各エリアが表された環境地図の画像に基づいて、環境地図の画像から各エリアを示すピクセルをそれぞれ特定する(S300)。ステップS300により、環境地図の画像を構成する各ピクセルがどのエリアであるか特定される。清掃パス生成部130は、環境地図から、少なくとも清掃エリア及び排出エリアを抽出し、さらに、障害物エリア、清掃可能エリア、未知エリア等を抽出してもよい。
【0038】
例えば、環境地図において、エリア毎に表示色が異なる場合には、清掃パス生成部130は、環境地図からそれぞれのエリアの色を抽出し、各エリアに対して設定された表示色に基づき、各エリアがどのようなエリアかを特定し得る。エリアの表示色は、エリアの輪郭を表す枠の色であってもよく、エリア内を塗りつぶした色であってもよい。例えば、清掃エリアの枠は赤色、排出エリアの枠は青色、障害物エリアは黒色、清掃可能エリアは白色、未知エリアは灰色等のルールに基づいて記載されている場合、清掃パス生成部130は、画像処理により、環境地図の画像を構成する各ピクセルについて、どのエリアを表しているかを示すエリア情報を抽出する。エリア情報は、例えば、清掃エリアや排出エリアといった情報であり、環境地図の画像を構成するピクセルそれぞれに対して抽出される。
【0039】
なお、ステップS300の処理は、次のステップS310の処理負荷を軽減するために実施するものであり、必要に応じて実行すればよい。
【0040】
(S310:清掃エリア形状識別)
次いで、清掃パス生成部130は、清掃エリアの形状を識別する(S310)。エリアの形状には、例えば、直角多角形、矩形、円、楕円、台形等がある。清掃パス生成部130は、例えば、ステップS20で抽出した環境地図の画像の清掃エリアの色、ステップS300で抽出したエリア情報に基づき、その形状を識別する。例えば清掃エリアの枠が他のエリアとは異なる色の場合には、その枠の色に基づき、OpenCV(Open Source Computer Vision Library)等を用いて、画像処理により清掃エリアの形状を識別することができる。また、例えばエリア情報を用いる場合には、環境地図の画像からエリア情報が清掃エリアであるピクセルを特定することで、清掃エリアの形状を識別することができる。
【0041】
(S320~S350:清掃区画への分割)
ステップS310にて清掃エリアの形状を識別すると、清掃パス生成部130は、必要に応じて清掃エリアを清掃区画へ分割する。例えば、上記非特許文献1に記載の矩形の清掃エリアに対して清掃パスを生成する技術を利用する場合、清掃エリアの形状は矩形である必要がある。そこで、清掃パス生成部130は、清掃エリアが矩形であるか否かを判定し、矩形でない場合には、清掃エリアを複数の矩形の清掃区画に分割する。
【0042】
まず、清掃パス生成部130は、ステップS310にて識別した清掃エリアの形状が矩形であるか否かを判定する(S320)。清掃エリアの形状が矩形であれば、清掃エリアを矩形に分割する必要はないため(S320:YES)、後述のステップS360からの処理を実行する。
【0043】
一方、清掃エリアの形状が矩形でない場合には(S320:NO)、清掃パス生成部130は、清掃エリアの形状が直角多角形であるか否かをさらに判定する(S330)。清掃エリアの形状が直角多角形であれば(S330:YES)、後述のステップS350の処理を実行する。一方、清掃エリアの形状が直角多角形でない場合(すなわち、清掃エリアの形状が矩形または直角多角形以外の場合)には(S330:NO)、清掃パス生成部130は、ステップS310にて識別した清掃エリアの形状を直角多角形または矩形に近似する(S340)。清掃エリアを直角多角形または矩形に近似する手法としては、例えば、矩形法のように矩形を刻んで形状を近似する手法がある。また、清掃エリアの形状が楕円または円の場合は、例えば、これらの楕円または円に接する直角多角形に近似してもよい。その後、清掃パス生成部130は、直角多角形の清掃エリアまたは直角多角形に近似された清掃エリアを矩形の清掃区画に分割する(S350)。
【0044】
例えば、清掃パス生成部130は、図5に示す処理に基づいて、直角多角形の清掃エリアを矩形の清掃区画に分割する。まず、清掃パス生成部130は、図4のステップS340により近似した清掃エリアの形状が、矩形であるか否かを判定する(S351)。近似した清掃エリアの形状が矩形であれば(S351:YES)、図5の処理は終了する。一方、近似した清掃エリアの形状が直角多角形である場合には(S351:NO)、清掃パス生成部130は、直角多角形に近似した清掃エリアを、複数の矩形の清掃区画に分割する(S352~S356)。また、清掃パス生成部130は、清掃エリアの形状が、図4のステップS330により直角多角形であると判定された場合には、ステップS351では必ず矩形ではないと判定し(S351:NO)、同様に複数の矩形の清掃区画に分割する(S352~S356)。
【0045】
清掃エリアの分割は、排出エリアと隣接する清掃エリアの線分を抽出して、線分を矩形の一辺とする第1の清掃区画を設定し、その後、清掃エリアのすべての範囲に対して清掃区画が設定されるまで、第nの清掃区画(nは自然数)と隣接し、かつ、清掃エリアの輪郭ではない線分を抽出して、抽出した線分それぞれについて、当該線分を矩形の一辺とする第n+1の清掃区画を設定する処理を繰り返すことにより行われる。以下、具体例として、図6に示すような直角多角形の清掃エリアAc及び排出エリアAdにおいて、清掃エリアAcを矩形の清掃区画に分割する手順とともに、説明する。
【0046】
まず、清掃パス生成部130は、排出エリアに最も近接する清掃エリアの線分を抽出する(S352)。清掃パス生成部130は、排出エリアに最も近接する清掃エリアから、排出エリアの2つの頂点と対向する2つの点を結ぶ線分を抽出する。例えば、図7において、清掃パス生成部130は、排出エリアAdの2つの頂点と対向する清掃エリアAcの点A、点Bを結び線分ABを、清掃エリアAcから抽出する。
【0047】
次いで、清掃パス生成部130は、抽出した線分をスライドして、矩形の清掃区画を設定する(S353)。清掃パス生成部130は、抽出した線分を、排出エリアと逆方向に、清掃エリアの他の辺の位置までスライドさせることで、矩形の清掃区画を設定する。例えば、図7の分割1に示すように、清掃パス生成部130は、清掃エリアAcの線分ABを、排出エリアAdと逆方向にスライドし、清掃エリアAcの他の辺と接触した位置に、スライドした線分ABと重なる線分DCを設定する。そして、清掃パス生成部130は、線分ABを一辺とし、点A、点B、点C、点Dを頂点とする矩形領域を、清掃区画TC(1)とする。排出エリアAdに隣接する清掃区画TC(1)を、第1の清掃区画とする。
【0048】
清掃パス生成部130は、清掃区画を設定すると、清掃エリアの全範囲について清掃区画が設定されたか否かを判定する(S354)。清掃エリアに清掃区画が未設定の領域が存在する場合(S354:NO)、清掃パス生成部130は、直前に設定した清掃区画を仮の排出エリアとして設定する(S355)。そして、清掃パス生成部130は、ステップS352と同様に仮の排出エリアに最も近接する清掃エリア(清掃区画が未設定の領域)の線分を抽出し(S356)。ステップS356で抽出した線分をスライドして、矩形の清掃区画を設定する(S353)。
【0049】
例えば、図7に示す例では、清掃パス生成部130は、分割1にて設定された第1の清掃区画TC(1)を仮の排出エリアとして設定する。そして、仮の排出エリアとして設定した第1の清掃区画TC(1)と隣接し、かつ、清掃エリアAcの輪郭ではない線分を清掃エリアAcから抽出する。これにより、清掃パス生成部130は、図7の分割2に示すように、線分EF、線分DG、線分DH、線分CI、線分JKの5つの線分を抽出する。そして、清掃パス生成部130は、清掃エリアAcの線分EF、線分DG、線分DH、線分CI、線分JKを、仮の排出エリア(第1の清掃区画TC(1))と逆方向に、清掃エリアAcの他の辺と接触するまでそれぞれスライドする。こうして、抽出した線分を一辺とし、仮の排出エリアとして設定した第1の清掃区画TC(1)に隣接する矩形の清掃区画TC(2)~TC(6)が設定される。清掃区画TC(2)~TC(6)を第2の清掃区画とする。
【0050】
清掃区画TC(2)~TC(6)は、排出エリアAdに隣接する第1の清掃区画TC(1)に隣接する。したがって、清掃区画TC(2)~TC(6)の物体を第1の清掃区画TC(1)に押し出せば、第1の清掃区画TC(1)を介して排出エリアAdまで物体を押し出すことができる。
【0051】
第2の清掃区画TC(2)~TC(6)の設定後もなお清掃エリアに清掃区画が未設定の領域が存在することから、清掃パス生成部130は、さらに清掃エリアAcを分割する。清掃パス生成部130は、分割2にて設定された第2の清掃区画TC(2)~TC(6)を仮の排出エリアとして設定する。そして、仮の排出エリアとして設定した第2の清掃区画TC(2)~TC(6)と隣接し、かつ、清掃エリアAcの輪郭ではない線分を清掃エリアAcから抽出する。これにより、清掃パス生成部130は、図7の分割3に示すように、線分LM、線分DN、線分OP、線分QRの4つの線分を抽出する。そして、清掃パス生成部130は、清掃エリアAcの線分LM、線分DN、線分OP、線分QRを、隣接する仮の排出エリア(第2の清掃区画TC(2)~TC(6))と逆方向に、清掃エリアAcの他の辺と接触するまでそれぞれスライドする。こうして、抽出した線分を一辺とし、仮の排出エリアとして設定した第2の清掃区画TC(2)~TC(6)に隣接する矩形の清掃区画TC(7)~TC(10)が設定される。清掃区画TC(7)~TC(10)を第3の清掃区画とする。
【0052】
清掃区画TC(7)~TC(10)は、第2の清掃区画TC(2)~TC(6)に隣接する。清掃区画TC(7)~TC(10)の物体を第2の清掃区画TC(2)~TC(6)まで押し出せば、第2の清掃区画TC(2)~TC(6)及び第1の清掃区画TC(1)を介して排出エリアAdまで物体を押し出すことができる。
【0053】
第3の清掃区画TC(7)~TC(10)の設定後もなお清掃エリアに清掃区画が未設定の領域が存在することから、清掃パス生成部130は、さらに清掃エリアAcを分割する。清掃パス生成部130は、分割3にて設定された第3の清掃区画TC(7)~TC(10)を仮の排出エリアとして設定する。そして、仮の排出エリアとして設定した第3の清掃区画TC(7)~TC(10)と隣接し、かつ、清掃エリアAcの輪郭ではない線分を清掃エリアAcから抽出する。これにより、清掃パス生成部130は、図7の分割4に示すように、第3の清掃区画TC(10)に隣接する線分STを抽出する。なお、第3の清掃区画TC(7)~TC(9)に関しては、清掃区画と隣接し、かつ、清掃エリアAcの輪郭ではない線分がないため、これより先に清掃区画は設定されない。
【0054】
そして、清掃パス生成部130は、清掃エリアAcの線分STを、隣接する仮の排出エリア(第3の清掃区画TC(10))と逆方向に、清掃エリアAcの他の辺と接触するまでスライドする。こうして、抽出した線分を一辺とし、仮の排出エリアとして設定した第3の清掃区画TC(10)に隣接する矩形の清掃区画TC(11)が設定される。清掃区画TC(11)を第4の清掃区画とする。清掃区画TC(11)は、第3の清掃区画TC(10)に隣接する。清掃区画TC(11)の物体を第3の清掃区画TC(10)まで押し出せば、第3の清掃区画TC(10)、第2の清掃区画TC(2)~TC(6)及び第1の清掃区画TC(1)を介して排出エリアAdまで物体を押し出すことができる。
【0055】
このように、清掃パス生成部130は、直角多角形の清掃エリアを、排出エリアに近い範囲から矩形の清掃区画に分割する。清掃パス生成部130は、清掃エリアのすべての範囲に対して清掃区画が設定されるまで、第nの清掃区画(nは自然数)と隣接し、かつ、清掃エリアの輪郭ではない線分を抽出して、抽出した線分それぞれについて、当該線分を矩形の一辺とする第n+1の清掃区画を設定する処理(S353~S356)を繰り返す。そして、清掃エリアの全範囲について清掃区画が設定されると(S354:YES)、清掃パス生成部130は、図5の処理を終了する。
【0056】
なお、清掃エリアは、必ずしも矩形の清掃区画に分割しなくともよい。例えば、清掃エリアを分割した清掃区画の形状は、台形等であってもよい。
【0057】
(S360:清掃順序決定)
図4の説明に戻り、清掃エリアが矩形の清掃区画に分割されると、清掃パス生成部130は、分割された矩形の清掃区画の清掃順序を決定する(S360)。清掃順序は、例えば指定されている清掃モードに基づいて決定してもよい。清掃モードとしては、時間をかけて清掃エリアを清掃するモード(長めモード)、短時間で清掃するモード(短めモード)等がある。
【0058】
例えば、短時間で清掃するモードでは、各清掃区画は1度のみ清掃し、清掃区画間の移動距離が最短となるように、清掃区画の清掃順序が決定される。また、例えば、清掃エリアの清掃割合を高くしたい場合やロボット50の1回の押出量を少なくしたい場合は、時間をかけて清掃エリアを清掃するモードとする。かかるモードでは、例えば、まず、排出エリアに隣接する清掃区画(第1の清掃区画)の物体を排出し、その後、他の清掃区画の物体を第1の清掃区画を介して順次排出エリアに排出するように、清掃区画の清掃順序が決定される。
【0059】
清掃順序の決定の仕方は、清掃エリアを清掃可能な時間、求められる清掃エリアの清掃度合い等に応じて、清掃担当者によって適宜設定し得る。
【0060】
(S370:清掃パス生成)
また、清掃パス生成部130は、清掃エリアの矩形の領域(清掃エリアまたは清掃エリアを分割した複数の清掃区画)に対して、清掃パスを生成する(S370)。矩形の領域内の清掃パスの生成は、既存の手法を用いて生成すればよい。
【0061】
例えば、清掃パス生成部130は、上記非特許文献1に記載の手法を用いて、各矩形の領域内の清掃パスを生成し得る。具体的には、清掃パス生成部130は、まず、清掃エリア内における排出エリアから最も遠い辺の端から端まで一定間隔で排出エリアまで直線的に押し出す簡易パスを計画する。このとき、事前に障害物の形状と位置が把握できる場合は、清掃パス生成部130は、A*法等の手法を用いて障害物との接触を回避するようなパスを計画する。なお、事前に障害物の形状と位置が把握できない場合は、ロボット50に搭載されている自律移動機能を用いて障害物を回避すればよい。次いで、清掃パス生成部130は、障害物の回避により障害物付近に残存する物体を集積するため、簡易パスと交差する簡易交差パスを生成する。さらに、清掃パス生成部130は、簡易交差パスにより集積された物体を最後に排出エリアへ押し出す残物体清掃パスを生成する。そして、清掃パス生成部130は、簡易パス、簡易交差パス及び残物体清掃パスを連結し、矩形の領域内の清掃パスを生成する。
【0062】
(S380:清掃パス結合)
その後、清掃パス生成部130は、清掃区画の清掃順序に基づいて、清掃区画から物体を仮の排出エリアに押し出すパスを連結し、清掃エリアの清掃パスを生成する(S380)。清掃パス生成部130は、ステップS360にて決定した清掃区画の清掃順序で、ステップS370にて生成した各清掃区画の清掃パスを連結することにより、清掃エリアの清掃パスを生成する。清掃パス生成部130は、生成した清掃パスを、出力部140を介してロボット50へ出力する。
【0063】
(4)ロボットによる清掃(S40)
図3の説明に戻り、ステップS30にて清掃パス計画装置100により清掃パスが生成されると、ロボット50は、当該清掃パスに基づき、清掃エリアを清掃する(S40)。ロボット50は、本体部51の車輪53を回転させて自走する自走機構と、物体9を押し出す押出機構55とを備える。押出機構55は、例えば、ストレートドーザやUドーザ、バケットドーザ等を含むブレード、あるいは、ロボット50に装備されている板等である。また、ロボット50は、清掃エリアの障害物を回避するため、自律移動機能を備えていてもよい。自律移動のためには、ロボット50は、自己位置推定とパスプランニングを行う必要がある。自己位置推定には、例えばLiDARやIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、エンコーダ、カメラ、Real Time Kinematic(RTK:動的干渉)等を使用すればよい。パスプランニングには、例えばA*法やダイクストラ法、Dynamic Window Approach等を使用すればよい。
【0064】
ロボット50は、清掃パス計画装置100により生成された清掃パスに基づき、清掃エリアを自走して、清掃エリア内に散乱する物体を押出機構55により押し出し、排出エリアに移動させる。
【0065】
以上、本実施形態に係る清掃パス計画装置100とそれによる異常検知方法について説明した。本実施形態によれば、清掃エリアの複数の清掃区画のうち、排出エリアと隣接していない清掃区画それぞれに対して、隣接する他の1つの清掃区画を仮の排出エリアとして設定し、清掃区画内の物体を設定した仮の排出エリアまで押し出すパスを清掃区画ごとに決定する。そして、清掃パス生成部130は、清掃区画の清掃順序に基づいて、清掃区画ごとに決定したパスを連結することにより、清掃パスを生成する。これにより、それぞれの清掃区画内の物体を隣接する他の清掃区画に順次押し出して行き、最終的な排出先である排出エリアまで物体を押し出すことのできる清掃パスを生成することができる。
【0066】
[4.ハードウェア構成]
図8に基づいて、本実施形態に係る清掃パス計画装置100のハードウェア構成について説明する。図8は、本実施形態に係る清掃パス計画装置100として機能する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901等の1または複数のハードウェアプロセッサ、RAM(Random Access Memory)905、ROM(Read Only Memory)903等の1または複数のメモリを具備し、メモリに格納される1または複数のプログラムが1または複数のハードウェアプロセッサにより実行されることで各種の演算を実行する。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0068】
例えば、CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス、PCI Express(登録商標)などの外部バスに接続されている。
【0069】
なお、演算処理装置及び制御装置は、CPU901以外に、PLC(Programmable Logic Controller)によって実現してもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0070】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0071】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0072】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0073】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0074】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、eSATA(external Serial Advanced Technology Attachment)、SAS(Serial Attached SCSI(Small Computer System Interface))ポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。例えば接続ポート917を介して、アラーム情報を通知するための回転灯等のアラーム通知装置を接続してもよい。また、外部機器927として、NAS(Network Attached Storage)を接続し、記憶装置として用いてもよい。
【0075】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。例えば、通信装置919を介して、情報処理装置900を操作するためのコンピュータを接続することもできる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0076】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【実施例0077】
[実施例A(清掃エリアの分割)]
まず、図5に示した本発明の清掃エリアの分割処理について、直角多角形の清掃エリアが矩形の清掃区画に分割されることを確認した。ここでは、図9に示すような直角28角形の清掃エリアAcと、排出エリアAdとを含む環境地図の画像を用いて、図5に示した本発明の清掃エリアの分割処理に基づき、清掃エリアAcを矩形の清掃区画に分割した。その結果、図10に示すように、直角28角形の清掃エリアAcは、破線の枠で示す13個の矩形の清掃区画に分割された。これより、本発明の手法により、直角多角形の清掃エリアを矩形の清掃区画に分割できることが確認できた。
【0078】
[実施例B(清掃エリアの清掃)]
次に、図4に示した本発明の清掃エリアの清掃パス生成処理に基づき生成された清掃パスにより、清掃エリアをどの程度清掃可能かをシミュレーションにより検証した。シミュレーションでは、図11に示すような、清掃エリアAc及び排出エリアAdを設定した。図5に示した本発明の清掃エリアの分割処理により、清掃エリアAcは、左(L)、中央(C)、右(R)の3つの清掃区画に分割されている。左(L)の清掃区画には90個、中央(C)の清掃区画には180個、右(R)の清掃区画には90個の物体9が存在するとした。また、左(L)、中央(C)、右(R)の清掃区画それぞれに対して、図12に示すような清掃パスLpが設定されている。これらの清掃パスLpは、上記特許文献1に記載の基づき生成されたものである。なお、図12において、左(L)の清掃区画及び右(R)の清掃区画では、中央(C)の清掃区画が仮の排出エリアとして設定されている。
【0079】
図4に示した本発明の清掃エリアの清掃パス生成処理により、左(L)、右(R)、中央(C)の清掃順序で清掃区画を清掃する清掃パス(清掃パスb)、左(L)、中央(C)、右(R)、中央(C)の清掃順序で清掃区画を清掃する清掃パス(清掃パスc)の2つの清掃パスが生成された。清掃パスbは、短時間で清掃するモード(短めモード)で生成された清掃パスであり、清掃パスcは、時間をかけて清掃エリアを清掃するモード(長めモード)で生成された清掃パスである。また、これらとの比較として、清掃エリアを複数の清掃区画に分割できず、中央(C)の1つの清掃区画のみを清掃する清掃パス(清掃パスa)も生成した。
【0080】
図13に、清掃パスa~cそれぞれについて、ロボット50により清掃エリアAcを清掃させたシミュレーション結果を示す。また、ロボット50による清掃開始前に清掃エリアAcにあった物体9の総数(360個)に対する、排出エリアAdに押し出された物体9の数の割合を、清掃割合として求めた。
【0081】
図13に示すように、清掃パスaでは、左(L)の清掃区画及び右(R)の清掃区画の物体9は排出エリアAdに押し出されず、清掃割合は35%となった。これに対して、清掃パスbでは清掃割合は61%、清掃パスcでは清掃割合は66%となった。また、清掃パスbの清掃時間は35分程度、清掃パスcの清掃時間は50分程度であった。かかる結果より、本発明の清掃エリアの清掃パス生成処理により、清掃エリア内でロボット50をもれなく走行させ、清掃エリアAc内の物体9を60%以上排出エリアAdに排出できることがわかった。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0083】
9 物体
30 支柱
50 ロボット
51 本体部
53 車輪
55 押出機構
57 制御部
100 清掃パス計画装置
110 環境地図取得部
120 エリア抽出部
130 清掃パス生成部
140 出力部
900 情報処理装置
Ac 清掃エリア
Ad 排出エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13