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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065830
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】手すりのエンドキャップ
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174885
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 正則
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 雄太
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301KK04
(57)【要約】
【課題】エンドキャップ内に滞留した水を除去するための水抜き性が向上した手すりのエンドキャップを実現する。
【解決手段】一方向に延びる棒状の手すり本体の端部を覆って端部の露出を防止し手すり本体とともに手すりを構成する手すりのエンドキャップ10において、手すり本体の端部の端面に対向して配置されて端面を覆う底板部4と、手すり本体の端部の外周面に対向して配置されて外周面を覆い、底板部4の周縁に接続する筒形状の筒状部3と、を備え、底板部4が、筒状部3との接続箇所において、手すり本体の端部の端面から遠ざかる方向に凹んだ凹部5を有するものであり、筒状部3および底板部4のうちの少なくとも一方が、凹部5に連通するとともに筒状部3あるいは底板部4を貫通してエンドキャップ10の外表面に開口する連通孔2を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる棒状の手すり本体の端部を覆って前記手すり本体とともに手すりを構成する手すりのエンドキャップにおいて、
前記手すり本体の前記端部の端面に対向して配置されて該端面を覆う底板部と、
前記手すり本体の前記端部の外周面に対向して配置されて該外周面を覆い、前記底板部の周縁に接続する筒形状の筒状部と、を備え、
前記底板部が、前記筒状部との接続箇所において、前記手すり本体の前記端部の前記端面から遠ざかる方向に凹んだ凹部を有するものであり、
前記筒状部および前記底板部のうちの少なくとも一方が、前記凹部に連通するとともに前記筒状部あるいは前記底板部を貫通して前記エンドキャップの外表面に開口する連通孔を有するものである手すりのエンドキャップ。
【請求項2】
前記凹部は、該凹部の底部に向かって傾斜する傾斜面を有する請求項1に記載の手すりのエンドキャップ。
【請求項3】
前記底板部は、前記凹部が存在する箇所を除く前記筒状部との接続箇所において、前記手すり本体の前記端部の前記端面に向かって突出して該端面に当接する段差部を有するものである請求項2に記載の手すりのエンドキャップ。
【請求項4】
前記底板部は、前記手すり本体の前記端部に対向する内面側に、前記筒状部が延びている軸方向に垂直な仮想平面に対して前記凹部の側に傾斜している底面を有するものである請求項3に記載の手すりのエンドキャップ。
【請求項5】
前記エンドキャップは、前記手すり本体の前記端部にねじ止めされることで前記手すり本体の前記端部に固定されるものであり、
前記筒状部は、該筒状部を貫通するねじ止め用のねじ孔を有するとともに、前記筒状部を周回する周回方向について前記ねじ孔と同じ位置に前記連通孔を有するものである請求項1~4のいずれか一項に記載の手すりのエンドキャップ。
【請求項6】
前記エンドキャップは、前記手すり本体の前記端部にねじ止めされることで前記手すり本体の前記端部に固定されるものであり、
前記筒状部は、該筒状部を貫通するねじ止め用のねじ孔を有するとともに、前記筒状部を周回する周回方向について前記ねじ孔と反対側の位置に前記連通孔を有するものである請求項1~4のいずれか一項に記載の手すりのエンドキャップ。
【請求項7】
前記手すり本体と、請求項1~4のいずれか一項に記載の手すりのエンドキャップと、を備えた手すり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手すり本体の端部を覆う手すりのエンドキャップに関する。特に屋外で使用される手すりのエンドキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
手すりの分野では、一方向に延びる棒状の手すり本体の端部を覆う部材として手すりのエンドキャップが従来から知られている(たとえば特許文献1の図1および特許文献2の図2参照)。手すりのエンドキャップは、手すり本体の端部の露出を防止する役割を果たしており、手すり本体とともに手すりを構成する構成要素の1つである。
【0003】
手すり本体としては、金属等の剛体材料からなる芯材の周りを、樹脂材料からなる被覆材で覆った内部構造を有するものや、このような被覆材を有しておらず鋼管で構成されたもの等、様々なものが知られている。手すり本体の端部をエンドキャップが覆うことで、端部から異物が侵入する等といった外界の影響を手すり本体内部が受けることが抑えられる。特に、屋外で使用される屋外用の手すりは、外界の影響に常時さらされているため異物が侵入するリスクが高く、手すり本体の端部を覆うエンドキャップは特に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-046943号公報
【特許文献2】実用新案登録第3167262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、屋外用の手すりのように雨水や結露にさらされる環境で使用される手すりでは、エンドキャップが備えられているといえども手すり本体の端部とエンドキャップとの間のわずかな隙間から水が少しずつ侵入してエンドキャップ内に滞留することがある。こうした状態が長期間続くと、手すり本体やエンドキャップに、錆や腐食の発生といった好ましくない影響を及ぼすことになるため、滞留した水を除去する機構が必要となる。
【0006】
こうした機構としては、単純には、エンドキャップを貫通する水抜き用の孔を設けてそこから水が外部に流れ出るようにすることが考えられる。しかしながら、水滴状の水はその表面張力のため流れにくく、水抜き用の孔を設けるだけでは十分な水抜き性が発揮できないことが多い。このため、エンドキャップ内に滞留した水を除去するためにはさらなる工夫が求められる。
【0007】
上記の事情を鑑み、本発明は、エンドキャップ内に滞留した水を除去するための水抜き性が向上した手すりのエンドキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の手すりのエンドキャップを提供する。
【0009】
[1] 一方向に延びる棒状の手すり本体の端部を覆って前記手すり本体とともに手すりを構成する手すりのエンドキャップにおいて、前記手すり本体の前記端部の端面に対向して配置されて該端面を覆う底板部と、前記手すり本体の前記端部の外周面に対向して配置されて該外周面を覆い、前記底板部の周縁に接続する筒形状の筒状部と、を備え、前記底板部が、前記筒状部との接続箇所において、前記手すり本体の前記端部の前記端面から遠ざかる方向に凹んだ凹部を有するものであり、前記筒状部および前記底板部のうちの少なくとも一方が、前記凹部に連通するとともに前記筒状部あるいは前記底板部を貫通して前記エンドキャップの外表面に開口する連通孔を有するものである手すりのエンドキャップ。
【0010】
ここで、「一方向に延びる」は、手すり本体が一次元的に延びていることを指す概念であり、手すり本体が一直線状に延びている場合に限定されるものではない。たとえば、「一方向に延びる」は、手すり本体の一部または全体が屈曲状に延びている場合や湾曲状に延びている場合も含んでいる。
【0011】
[2] 前記凹部は、該凹部の底部に向かって傾斜する傾斜面を有する[1]に記載の手すりのエンドキャップ。
【0012】
[3] 前記底板部は、前記凹部が存在する箇所を除く前記筒状部との接続箇所において、前記手すり本体の前記端部の前記端面に向かって突出して該端面に当接する段差部を有するものである[2]に記載の手すりのエンドキャップ。
【0013】
[4] 前記底板部は、前記手すり本体の前記端部に対向する内面側に、前記筒状部が延びている軸方向に垂直な仮想平面に対して前記凹部の側に傾斜している底面を有するものである[3]に記載の手すりのエンドキャップ。
【0014】
[5] 前記エンドキャップは、前記手すり本体の前記端部にねじ止めされることで前記手すり本体の前記端部に固定されるものであり、前記筒状部は、該筒状部を貫通するねじ止め用のねじ孔を有するとともに、前記筒状部を周回する周回方向について前記ねじ孔と同じ位置に前記連通孔を有するものである[1]~[4]のいずれかに記載の手すりのエンドキャップ。
【0015】
[6] 前記エンドキャップは、前記手すり本体の前記端部にねじ止めされることで前記手すり本体の前記端部に固定されるものであり、前記筒状部は、該筒状部を貫通するねじ止め用のねじ孔を有するとともに、前記筒状部を周回する周回方向について前記ねじ孔と反対側の位置に前記連通孔を有するものである[1]~[4]のいずれかに記載の手すりのエンドキャップ。
【0016】
[7] 前記手すり本体と、[1]~[4]のいずれかに記載の手すりのエンドキャップと、を備えた手すり。
【発明の効果】
【0017】
本発明の手すりのエンドキャップでは、凹部が存在しない従来のエンドキャップに比べ、エンドキャップ内に滞留した水を除去するための水抜き性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である手すりのエンドキャップが適用された手すりを表した図である。
図2図1の手すりにおけるエンドキャップ周辺の拡大図である。
図3】手すり本体に取り付けられた状態のエンドキャップの側面図である。
図4図3のPP’線に沿った断面図である。
図5】水がエンドキャップ内に侵入する別の要因を説明する説明図である。
図6】本実施形態のエンドキャップを開口側から見た外観斜視図である。
図7図6のエンドキャップを開口側から見た上面図である。
図8図6のエンドキャップの側面図である。
図9図7のAA’線および図8のBB’線を通る面での図6のエンドキャップの断面図である。
図10図1図9のエンドキャップが、斜め下向きの手すり本体の端部に取り付けられている様子を示す図である。
図11】手すり本体20に取り付けられた本発明の別の実施形態のエンドキャップの断面図である。
図12図11のエンドキャップの拡大断面図である。
図13】底板部が連通孔を有する本発明のさらに別の実施形態のエンドキャップの断面図である。
図14】ねじ孔が筒状部には形成されていないエンドキャップが手すり本体に取り付けられる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である手すりのエンドキャップ10が適用された手すり100を表した図、図2は、図1の手すり100におけるエンドキャップ10周辺の拡大図である。
【0021】
図1の手すり100は、雨水や結露等の水にさらされることの多い環境で使用される手すりである。このような環境の典型例としては、屋外環境を挙げることができる。
【0022】
図1に示すように手すり100は、一方向に延びる棒状の手すり本体20と、エンドキャップ10と、を備えている。手すり本体20は外形が断面略円形であり、複数の支柱40のそれぞれの先端に取り付けられたブラケット30により支持されている。図1では、手すり本体20全体のうち、2本の支柱40先端のブラケット30に支持された部分が一例として示されている。手すり本体20は、図2に示すエンドキャップ10周辺では曲がっているが、残りの部分(たとえば、2本のブラケット30の間の部分)ではまっすぐ直線状に延びている。ここで、手すり本体20の残りの部分(たとえば、2本のブラケット30の間の部分)が延びている方向が水平方向であって、この水平方向に垂直な、支柱40に沿った方向が鉛直方向である。
【0023】
図2に示すように手すり本体20は、エンドキャップ10周辺では、水平な状態から鉛直方向下向きに曲がりながら延びており、その鉛直方向下向きの端部に本実施形態のエンドキャップ10が取り付けられている。
【0024】
図3は、手すり本体20に取り付けられた状態のエンドキャップ10の側面図であり、図4は、図3のPP’線に沿った断面図である。
【0025】
エンドキャップ10は、手すり本体20の端部を覆って手すり本体20とともに図1および図2の手すり100を構成する構成要素の1つである。エンドキャップ10を構成する材料としては、屋外環境での風雨や温度変化に耐えられる十分な耐久性のある材料であれば特に限定されないが、こうした耐久性のある材料としては、たとえば金属材料や硬質の樹脂材料を用いることができる。
【0026】
手すり本体20の端部へのエンドキャップ10の取り付け手法としては、様々なものが考えられるが、たとえば、図3に示すように、ねじ11によって手すり本体20の端部へエンドキャップ10をねじ止めすることが考えられる。図4に示すように、手すり本体20は、金属等の剛体材料からなる芯材21の周りを、樹脂材料からなる被覆材22で覆った内部構造を有しており、エンドキャップ10を貫通したねじ11は、手すり本体20の被覆材22を貫いて芯材21と係合する。このとき、ねじ11のヘッドは、エンドキャップ10に形成されたねじ止め用のねじ孔1に嵌り込み、これによりエンドキャップ10は手すり本体20に押し付けられる。このようにして、エンドキャップ10が手すり本体20にねじ止めされる。
【0027】
エンドキャップ10が手すり本体20の端部を覆うことで、端部から異物が侵入する等といった外界の影響を手すり本体20内部が直接受けることが抑えられる。特に、手すり本体20が屋外で使用される屋外用の手すりである場合は、外界の影響に常時さらされているため異物が侵入するリスクが高く、手すり本体20の端部を覆うエンドキャップ10は特に有用である。
【0028】
しかしながら、屋外用の手すりでは、エンドキャップ10が備えられているといえども手すり本体20の端部とエンドキャップ10との間のわずかな隙間から雨水等の水が少しずつ侵入してエンドキャップ10内に滞留してしまうことがある。
【0029】
たとえば、エンドキャップ10が金型を使って成型される場合には、金型からエンドキャップ10を取り外しやすいように、エンドキャップ10の形状として、エンドキャップ10の内周面がその開口側に近づくにつれて少し広がっていくような、勾配を持つ形状(以下では単に「抜き勾配」と呼ぶ)が採用されることがある。この場合、手すり本体20へのエンドキャップ10の取り付け時に手すり本体20の端部とエンドキャップ10との間に隙間ができやすくなり、水がエンドキャップ10内に侵入して滞留する要因の1つとなる。
【0030】
図5は、水がエンドキャップ10内に侵入する別の要因を説明する説明図である。
【0031】
手すり本体20の端部にエンドキャップ10がねじ止めされる際には、ねじ止めによりエンドキャップ10のねじ側の内周面が手すり本体20に押付けられて、エンドキャップ10のねじ側の内周面が手すり本体20に沿うこととなる。このような状況において、エンドキャップ10の内周面に抜き勾配が形成されていると、その抜き勾配に応じた角度でエンドキャップ10が傾きやすくなる。具体的には、図5に示すように、ねじ11(ねじ孔1)とは反対側において、手すり本体20の端部とエンドキャップ10との間の隙間Sが大きくなり、この隙間Sに水が侵入してエンドキャップ10内に滞留することがある。
【0032】
以上説明したように、水がエンドキャップ10内に侵入して滞留する要因には様々なものがある。このように水が滞留した状態が長期間続くと、手すり本体20やエンドキャップ10に、錆や腐食の発生といった好ましくない影響を及ぼすことになる。
【0033】
本実施形態のエンドキャップ10には、このようにエンドキャップ10内に滞留した水を、効果的に除去する工夫が備えられている。以下、エンドキャップ10について詳しく説明する。
【0034】
図6は、本実施形態のエンドキャップ10を開口側から見た外観斜視図である。また、図7は、図6のエンドキャップ10を開口側から見た上面図であり、図8は、図6のエンドキャップ10の側面図であり、図9は、図7のAA’線および図8のBB’線を通る面での図6のエンドキャップ10の断面図である。
【0035】
図6図9に示すように、エンドキャップ10は、底板部4および筒状部3を備えている。底板部4は、図4の手すり本体20の端部の端面20aに対向して配置されてその端面20aを覆う部位である。本実施形態では、底板部4は、一例として円板状に形成されている。一方、筒状部3は、手すり本体20の端部の外周面20bに対向して配置されてその外周面20bを覆い、底板部4の周縁に接続する筒形状の部位である。本実施形態では、筒状部3は、底板部4の形状に対応して円筒状に形成されている。
【0036】
ここで、底板部4は、図6図7,および図9に示すように、筒状部3との接続箇所において、手すり本体20の端部の端面20aから遠ざかる方向(図4の下方向)に凹んだ凹部5を有している。凹部5は、凹部5の底部51に向かって傾斜する傾斜面53を有している。また、凹部5は、傾斜面53を持つ傾斜部分を削る谷間の態様でその傾斜部分の中に形成された溝52も有しており、溝52は底部51とつながっている。
【0037】
一方、筒状部3は、図6図9に示すように、凹部5に連通するとともに筒状部3を貫通してエンドキャップ10の外表面に開口する連通孔2を有している。より詳しく言えば、連通孔2は凹部5の溝52と連通しており、溝52を介して凹部5の底部51と連通している。
【0038】
本実施形態のエンドキャップ10は、エンドキャップ内に滞留した水を外部に排出するための水抜き用の孔として連通孔2を有していることに加え、底板部4における筒状部3との接続箇所に連通孔と連通する凹部5を有している。エンドキャップ10が図1および図2に示すように手すり本体20の端部に取り付けられる際には、エンドキャップ10において凹部5は鉛直方向下側に位置することとなる。このため、エンドキャップ10内に滞留した水は凹部5に集まりやすくなる。このように凹部5に集まった水は、凹部5が存在せずに水滴状のまま分散している水と比べ、表面張力の影響が小さく連通孔2を通って外部に流れ出やすい。このため、本実施形態のエンドキャップ10では、凹部5が存在しない従来のエンドキャップに比べ、エンドキャップ内に滞留した水を除去するための水抜き性が向上している。
【0039】
特に、凹部5が傾斜面53を有することで底部51に向かって水が集まりやすくなっており、集まった水は、溝52および連通孔2を通って外部に流れ出ることとなる。なお、連通孔2と凹部5の底面が同一面上にあるか、あるいは、凹部5の底面よりも連通孔2の底面が低いことが好ましい。
【0040】
ここで、図7および図9に示すように、底板部4が、凹部5が存在する箇所を除く筒状部3との接続箇所において、手すり本体20の端部の端面20a(図4参照)に向かって突出してその端面20aに当接する段差部6を有することが好ましい。本実施形態では、段差部6は、底板部4の周縁に沿って連続的に設けられているが、本発明では、底板部4の周縁に沿って断続的に設けられていてもよい。
【0041】
このような形態によれば、底板部4のうち、図9に示す段差dを持つ段差部6だけが手すり本体20の端部の端面20a(図4参照)に当接することで、手すり本体20の端部の端面20aと底板部4との間に、エンドキャップ10内の水が流れるスペースができ(図4参照)、水が凹部5に集まりやすくなる。
【0042】
ここで、本実施形態では、筒状部3は、筒状部3を貫通するねじ止め用のねじ孔1を有するとともに、図6図9に示すように、筒状部3を周回する周回方向についてねじ孔1と同じ位置に連通孔2を有している。このような場合には、底板部4が、手すり本体20の端部の端面に対向する内面側に、図9に示すように、筒状部3が延びている軸方向(図9の上下方向であって図8のBB’線の方向)に垂直な仮想平面に対して凹部5の側に傾斜している底面7を有することが好ましい。このような底面7の下り傾斜の形状は、たとえば、底板部4の厚さTが、図9に示すように、凹部5から遠い部分ほど厚く凹部5に近い部分ほど薄くなるように、凹部5に向かって底板部4の厚さTが小さくなっていく場合に実現される。ここで、底面7の傾斜角度は、筒状部3の内周面における抜き勾配の勾配角度より大きいことが好ましく、底面7の傾斜角度が0.5度以上であることが好ましい。なお、凹部5の傾斜面53の傾斜は底面7の傾斜よりも急峻である。
【0043】
上記の形態によれば、図9に示すような、凹部5の側に傾斜している底面7が存在することで、エンドキャップ10内に水が侵入しても、凹部5に向かう方向(図9のX方向)に水は流れて凹部5に集まりやすくなる。特に、エンドキャップ10がねじ止めによって傾いていても(図5参照)、予め底面7を傾斜させているので底面7上の水は凹部5に向かって流れやすい。
【0044】
以上が本実施形態におけるエンドキャップ10の働きの説明である。
【0045】
以上の説明では、エンドキャップ10は、図1および図2に示すように手すり本体20における鉛直方向下向きの端部に取り付けられていた。しかしながら、エンドキャップ10は、鉛直方向下向きではない手すり本体の端部、たとえば、斜め下向きの手すり本体の端部や水平方向向きの手すり本体の端部に取り付けられていてもよい。
【0046】
図10は、図1図9のエンドキャップ10が、斜め下向きの手すり本体20’の端部に取り付けられている様子を示す図である。
【0047】
図10に示すように、図1図9のエンドキャップ10は、図1および図2の手すり本体20とは異なり鉛直方向下向きに曲がらずに斜め下向きに延びている手すり本体20’に対しても使用可能である。ただし、この場合、水を外部に出すために、エンドキャップ10における上述の凹部5および連通孔2が、図10のエンドキャップ10においてなるべく鉛直方向下側(図10の下側)に位置するようにエンドキャップ10を手すり本体20’に取り付けることが必要となる。このようにエンドキャップ10を取り付ければ、図6図9で上述したのと同様の理由で、エンドキャップ10内に滞留した水を、効果的に除去することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のエンドキャップ10は、底板部4が下側に位置する場合(たとえば図2参照)、および、筒状部3が下側に位置する場合(たとえば図10参照)のいずれの場合でも十分な水の除去が可能である。
【0049】
以上の図1図10の説明では、筒状部3は、筒状部3を周回する周回方向についてねじ孔1と同じ位置に連通孔2を有していた。しかしながら、本発明では周回方向についての連通孔の位置は、ねじ孔1の位置とは異なっていてもよい。以下、そのような本発明の別の実施形態について説明する。なお、この別の実施形態においては、図1および図2のエンドキャップ10と同様に鉛直方向下向きの手すり本体20の端部に取り付けられるものとして説明を行う。
【0050】
図11は、手すり本体20に取り付けられた本発明の別の実施形態のエンドキャップ10Aの断面図であり、図12は、図11のエンドキャップ10Aの拡大断面図である。
【0051】
図11および図12において、図5および図9と同じ構成要素については同じ符号を付すこととしてその重複説明は省略する。以下では、図1図10のエンドキャップ10とは異なる点に焦点を絞って説明を行う。
【0052】
図11のエンドキャップ10Aも図1図10のエンドキャップ10と同様に、手すり本体20の端部にねじ止めされることで手すり本体の20の端部に固定されるエンドキャップである。このため、エンドキャップ10Aの筒状部3Aも、筒状部3Aを貫通するねじ止め用のねじ孔1Aを有している。ただし、図11に示すように筒状部3Aは、図6の筒状部3とは異なり、筒状部3Aを周回する周回方向についてねじ孔1Aと反対側の位置に連通孔2を有している。これに対応してエンドキャップ10Aの底板部4Aも、連通孔2と連通する凹部5を、ねじ孔1Aと反対側の位置に有している。
【0053】
手すり本体20の端部にエンドキャップ10Aがねじ止めされる際には、ねじ止めによりエンドキャップ10Aのねじ側の内周面が手すり本体20に押付けられて、筒状部3Aの内周面の抜き勾配に応じた角度でエンドキャップ10Aが傾きやすくなる。この場合、図11に示すように、ねじ11(ねじ孔1)とは反対側において、手すり本体20の端部とエンドキャップ10との間の隙間Sが大きくなり、この隙間Sに水が侵入することがある。しかしながら、図12のエンドキャップ10Aでは、ねじ孔1Aの反対側に連通孔2や凹部5が存在するため、水は、筒状部3Aを伝ってそのまま凹部5や連通孔2に向かうこととなる。そこで、図12のエンドキャップ10Aの底板部4Aは、図9のエンドキャップ10の底板部4とは異なり、筒状部3Aが延びている軸方向に垂直な仮想平面に対して平行な底面7Aを有しており、このような底面7Aを持つ底板部4Aであっても、滞留した水を十分に凹部5に集めることができる。なお、このような底面7Aの形状は、たとえば、底板部4の厚さT’が、図12に示すように、凹部5からの距離に関係なく一定の厚さとなっている場合に実現される。
【0054】
ただし、手すり本体に取り付けられる際のエンドキャップ10Aの傾き具合によっては、より水が凹部5に集まりやすくするために、筒状部3Aが延びている軸方向に垂直な仮想平面に対して傾斜するように底面7Aを形成してもよい。
【0055】
図11および図12に示すようにねじ孔1Aと反対側に連通孔2が位置するエンドキャップ10Aも、エンドキャップ10Aに滞留した水を凹部5や連通孔2により効果的に除去することができる。このため、凹部5が存在しない従来のエンドキャップに比べ、エンドキャップ内に滞留した水を除去するための水抜き性が向上している。
【0056】
この別の実施形態のエンドキャップ10Aにおいても、底板部4が下側に位置する場合、および、筒状部3Aが下側に位置する場合のいずれの場合でも十分な水の除去が可能である。
【0057】
以上の説明では、筒状部が連通孔を有していたが、本発明では、底板部が連通孔を有するものであってもよい。以下では、底板部が連通孔を有するさらに別の実施形態について説明する。なお、このさらに別の実施形態においても、図1および図2のエンドキャップ10と同様に鉛直方向下向きの手すり本体20の端部に取り付けられるものとして説明を行う。
【0058】
図13は、底板部が連通孔を有する本発明のさらに別の実施形態のエンドキャップ10Bの断面図である。
【0059】
図13において、図9と同じ構成要素については同じ符号を付すこととしてその重複説明は省略する。図13には、ねじ孔1、連通孔2B、および凹部5Bを通る面でのエンドキャップ10Bの断面の様子が示されており、以下では、図6図9とは異なる点に焦点を絞って説明を行う。
【0060】
エンドキャップ10Bでは、底板部4Bが、凹部5Bに連通するとともに底板部4Bを貫通してエンドキャップ10Bの外表面に開口する連通孔2Bを有している。このようにエンドキャップ10Bでは、筒状部3Bではなく底板部4Bが連通孔2Bを有している点が図6図9のエンドキャップ10とは異なっており、それ以外の点は図9のエンドキャップ10と同じである。このため、エンドキャップ10Bは、凹部5Bが存在しない従来のエンドキャップに比べ、エンドキャップ内に滞留した水を除去するための水抜き性が向上している。
【0061】
特に図13のエンドキャップ10Bでは、連通孔2Bは、凹部5Bから鉛直方向にそのまま延びているため、鉛直方向下向きの手すり本体20の端部(図1および図2参照)に取り付けられた場合には、凹部5Bに滞留した水が流れ出しやすいという利点がある。
【0062】
以上の各実施形態の説明ではエンドキャップでは、筒状部にねじ孔が形成されていたが、本発明は、ねじ孔が筒状部には形成されていないエンドキャップであってもよい。
【0063】
図14は、ねじ孔が筒状部には形成されていないエンドキャップ10Cが手すり本体20Cに取り付けられる様子を示す図である。
【0064】
図14において、図1図10と同じ構成要素については同じ符号を付すこととしてその重複説明は省略する。以下では、図1図10とは異なる点に焦点を絞って説明を行う。
【0065】
図14の手すり本体20Cでは、金属等の剛体材料からなる芯材21C、および、樹脂材料からなる被覆材22Cは互いに別部品であって、これらを組み合わせることで手すり本体20Cが構成される。ここで、エンドキャップ10Cは、底板部4に立設したボスに取り付けられた嵌合部8Cを有している。エンドキャップ10Cは、嵌合部8Cを芯材21Cの中空部に差し込み、嵌合部8Cのねじ孔1Cにねじ11を挿通し、芯材21Cにねじ11を螺合することで、手すり本体20Cに固定される。
【0066】
以上が本発明の実施形態の説明である。
【0067】
以上の各実施形態の説明では連通孔は1つであったが、本発明は複数の連通孔を有するものであってもよい。たとえば、図9あるいは図12のように筒状部に形成された連通孔と、図13のように底板部に形成された連通孔との2つの連通孔を有するものであってもよい。また、図12のエンドキャップ10Aにおいて連通孔2の代わりに図13のエンドキャップ10Bの連通孔2Bを有するものであってもよい。
【0068】
また、以上の各実施形態の説明ではエンドキャップは、金属等の剛体材料からなる芯材の周りを、樹脂材料からなる被覆材で覆った内部構造を有する手すり本体の端部に取り付けらえていたが、本発明は、手すり本体の内部構造の詳細とは無関係に適用できる。たとえば、単一の剛体材料からなる中空の手すり本体や、中実の木製の手すり本体に適用されてもよい。
【0069】
また、以上の各実施形態の説明ではエンドキャップは円筒状であったが、手すり本体の外形形状には楕円形、三角形、四角形など様々なものがあり、エンドキャップの外形形状も、手すり本体の外形形状に応じた様々な形状を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、エンドキャップ内に滞留した水を除去するための水抜き性の向上に有用である。
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1C:ねじ孔、
2,2B:連通孔、
3,3A,3B:筒状部、
4,4A,4B:底板部、
5,5B:凹部、
6:段差部、
7,7A:底面、
8C:嵌合部、
10,10A,10B,10C:エンドキャップ、
20,20C:手すり本体、
20a:端面、
20b:外周面、
21,21C:芯材、
22,22C:被覆材、
30:ブラケット、
40:支柱、
51:底部、
52:溝、
53:傾斜面、
100:手すり、
d:段差、
T,T’:厚さ、
S:隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14