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  • 特開-リニアモータ 図1
  • 特開-リニアモータ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006584
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20240110BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107623
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志津 達哉
【テーマコード(参考)】
5H622
5H641
【Fターム(参考)】
5H622AA04
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB02
5H622CB03
5H622DD02
5H641BB06
5H641GG03
5H641GG04
5H641HH03
5H641HH08
5H641HH10
(57)【要約】
【課題】リニアモータにおいて永久磁石の不可逆減磁を抑制しつつ重希土類の使用量を削減する。
【解決手段】リニアモータは、固定子12と可動子11を備える。固定子12は、可動子11の移動方向に一定間隔で配列された複数の突極10を含む。可動子11は、可動子磁気ヨーク20と、可動子磁気ヨーク20から突出して移動方向に並ぶ複数のティース13,14,15と、ティースに巻回された三相交流巻線16,17,18と、ティースに形成された複数の間隙のそれぞれに配置された永久磁石22,23を含む。各ティース13,14,15において、永久磁石22,23は、隣り合う永久磁石22,23と磁化方向が逆向きとなるように間隙に配置されている。各ティース13,14,15において、複数の永久磁石22,23のうち、移動方向において端から2番目に位置する永久磁石23は、その他の永久磁石22よりも保磁力が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、前記固定子に対向して配置されて前記固定子に対して移動可能である可動子と、を備えるリニアモータであって、
前記固定子は、前記可動子の移動方向に一定間隔で配列された複数の突極を含み、
前記可動子は、
可動子磁気ヨークと、
前記可動子磁気ヨークから前記固定子に向かって突出し、前記移動方向に並ぶ複数のティースと、
前記ティースに巻回された三相交流巻線と、
前記ティースに形成された、前記移動方向に並ぶ複数の間隙と、
前記ティースの複数の前記間隙のそれぞれに配置された永久磁石と、を含み、
前記各ティースにおいて、前記永久磁石は、隣り合う前記永久磁石と磁化方向が逆向きとなるように前記間隙に配置されており、
前記各ティースにおいて、複数の前記永久磁石のうち、前記移動方向において端から2番目に位置する前記永久磁石は、その他の前記永久磁石よりも保磁力が高い、
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
固定子と、前記固定子に対向して配置されて前記固定子に対して移動可能である可動子と、を備えるリニアモータであって、
前記固定子は、前記可動子の移動方向に一定間隔で配列された複数の突極を含み、
前記可動子は、
可動子磁気ヨークと、
前記可動子磁気ヨークから前記固定子に向かって突出し、前記移動方向に並ぶ複数のティースと、
前記ティースに巻回された三相交流巻線と、
前記ティースに形成された、前記移動方向に並ぶ複数の間隙と、
前記ティースの複数の前記間隙のそれぞれに配置された永久磁石と、を含み、
前記各ティースにおいて、前記永久磁石は、隣り合う前記永久磁石と磁化方向が逆向きとなるように前記間隙に配置されており、
前記各ティースにおいて、複数の前記永久磁石のうち、前記移動方向において端から2番目に位置する前記永久磁石は、その他の前記永久磁石よりも磁化方向の寸法が大きい、
ことを特徴とするリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の産業機械で使用されるリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械等の産業機械では、高速、高精度化を実現するための手段としてリニアモータが使用されている。特に移動距離が長ストロークの機械において、高価な永久磁石を可動子側に配置することで、永久磁石の使用量を少なくして、モータの低コスト化を実現したリニアモータが知られている。特許文献1には、リニアモータの構成例が開示されている。
【0003】
図3は、従来技術のリニアモータを示す図である。リニアモータは、固定子12と可動子111を備える。図3において、固定子12は例えば電磁鋼板を積層して形成され、表面には固定子磁気ヨーク21より突出するように、ピッチPの間隔で突極10が配置されている。可動子111も、固定子12と同様に、例えば電磁鋼板を積層して形成されている。可動子111は、可動子磁気ヨーク20と、U,V,W相のティース13,14,15を含む。ティース13,14,15はそれぞれが突極10に対して、X軸方向に相対的に電気角で120度に相当するP/3だけずらして配置されている。ティース13,14,15には、それぞれU,V,W相の三相交流巻線16,17,18が巻回されている。ティース13,14,15はそれぞれ、複数のティース要素13E,14E,15Eを含む。各ティース要素13Eは、ピッチP/2で配列されており、各ティース要素13Eの間には永久磁石19が配置されている。各ティース要素14Eおよび各ティース要素15Eも同様の構成である。各ティース13,14,15において、永久磁石19は隣り合う永久磁石19と磁化方向が逆向きとなるように配置されている。図3において、矢印の方向は永久磁石19の磁化方向を示している。
【0004】
このようなリニアモータにおいて、長ストロークの可動範囲を実現する場合には、安価な電磁鋼板を積層して形成した簡単な構造の固定子ブロックを繰り返し並べて配置するだけで実現できる。さらに、高価な永久磁石19を可動子111側に配置し、永久磁石の使用量を減らすことができるため、リニアモータの製作コストを低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-109639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来技術のリニアモータは、以下に説明するような課題があった。
【0007】
図3において、矢印の方向は永久磁石19の磁化方向を、矢印の本数は永久磁石19の磁束量を示している。図3に示すように、永久磁石19は隣り合う永久磁石19と磁化方向が逆向きとなるように配置されている。このような配置によって、永久磁石19は隣り合う永久磁石19と互いに磁束を弱め合い、磁束量が減らされている。永久磁石19の磁束量は、それぞれ配置される場所によって異なる。各相の巻線が巻回される各ティース13,14,15において、永久磁石19の中で最も端に位置する永久磁石19は、片側にしか隣り合う永久磁石19が存在しない。よって、最も端に位置する永久磁石19は、片側の永久磁石19からしか磁束を弱められないため、永久磁石19の中で最も磁束量が多い。一方、各ティース13,14,15において、永久磁石19の中で端から2番目に位置する永久磁石19は、最も磁束量の多い最も端に位置する永久磁石19から磁束を弱められるため、最も磁束量が少ない。このため、端から2番目に位置する永久磁石19は、リニアモータ動作時に三相交流巻線16,17,18に電流を通電した際、永久磁石19に磁化方向と逆向きの磁界が印加されると最も不可逆減磁が生じやすい。
【0008】
よって、各相の巻線が巻回される各ティース13,14,15において、端から2番目に位置する永久磁石19が不可逆減磁してしまうことを抑制できる構成が望まれている。例えば、全ての永久磁石19に一律に、重希土類を多く含む、保磁力の高い永久磁石を採用することで、不可逆減磁の問題は解消され得る。しかし、重希土類を多く含む永久磁石は、コストが高く、調達リスクが大きいという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、リニアモータにおいて、永久磁石の不可逆減磁を抑制しつつ重希土類の使用量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るリニアモータは、固定子と、前記固定子に対向して配置されて前記固定子に対して移動可能である可動子と、を備えるリニアモータであって、前記固定子は、前記可動子の移動方向に一定間隔で配列された複数の突極を含み、前記可動子は、可動子磁気ヨークと、前記可動子磁気ヨークから前記固定子に向かって突出し、前記移動方向に並ぶ複数のティースと、前記ティースに巻回された三相交流巻線と、前記ティースに形成された、前記移動方向に並ぶ複数の間隙と、前記ティースの複数の前記間隙のそれぞれに配置された永久磁石と、を含み、前記各ティースにおいて、前記永久磁石は、隣り合う前記永久磁石と磁化方向が逆向きとなるように前記間隙に配置されており、前記各ティースにおいて、複数の前記永久磁石のうち、前記移動方向において端から2番目に位置する前記永久磁石は、その他の前記永久磁石よりも保磁力が高い、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るリニアモータは、固定子と、前記固定子に対向して配置されて前記固定子に対して移動可能である可動子と、を備えるリニアモータであって、前記固定子は、前記可動子の移動方向に一定間隔で配列された複数の突極を含み、前記可動子は、可動子磁気ヨークと、前記可動子磁気ヨークから前記固定子に向かって突出し、前記移動方向に並ぶ複数のティースと、前記ティースに巻回された三相交流巻線と、前記ティースに形成された、前記移動方向に並ぶ複数の間隙と、前記ティースの複数の前記間隙のそれぞれに配置された永久磁石と、を含み、前記各ティースにおいて、前記永久磁石は、隣り合う前記永久磁石と磁化方向が逆向きとなるように前記間隙に配置されており、前記各ティースにおいて、複数の前記永久磁石のうち、前記移動方向において端から2番目に位置する前記永久磁石は、その他の前記永久磁石よりも磁化方向の寸法が大きい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各ティースにおいて、端から2番目に位置する永久磁石は、その他の永久磁石よりも、保磁力が高められている(例えば重希土類を多く含む永久磁石を採用している)か、または、磁化方向の寸法が大きくなっているため、不可逆減磁を抑制することができる。また、その他の永久磁石は、端から2番目に位置する永久磁石に比べて、保磁力が低いか、または、寸法が小さい(重希土類を不使用であるか、または少量の使用である)ため、重希土類の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るリニアモータの概略構成を示す図である。
図2】別の実施形態に係るリニアモータの概略構成を示す図である。
図3】従来技術のリニアモータの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るリニアモータの概略構成を示す図である。リニアモータは、固定子12と可動子11を備える。固定子12は、例えば電磁鋼板を積層して形成されている。固定子12は、固定子磁気ヨーク21と、複数の突極10を含む。突極10は、固定子磁気ヨーク21の表面より突出して、X軸方向(図1参照)にピッチPの間隔で配置されている。なお、固定子12は、左右方向(X軸方向)に延在しており、図1には一部のみが表れている。
【0016】
可動子11は、固定子12に対向して配置されて、固定子12に対してX軸方向に移動可能となっている。X軸方向は、可動子11の移動方向である。可動子11の各部材の形状、配置は、図3の可動子111のそれと同様である。可動子11は、例えば電磁鋼板を積層して形成されている。可動子11は、可動子磁気ヨーク20と、可動子磁気ヨーク20から固定子12に向かって突出したU,V,W相のティース13,14,15を含む。ティース13,14,15は、X軸方向に並んでいる。ティース13,14,15はそれぞれが突極10に対して、X軸方向に相対的に電気角で120度に相当するP/3だけずらして配置されている。ティース13,14,15には、それぞれU,V,W相の三相交流巻線16,17,18が巻回されている。
【0017】
ティース13,14,15はそれぞれ、複数のティース要素13E,14E,15Eを含む。図1の例では、ティース13は、可動子磁気ヨーク20から突出する6つのティース要素13Eを含む。なお、図1では、一部のティース要素に対する符号13E(14E,15E)が省略されている。ティース13と同様に、ティース14は、6つのティース要素14Eを含み、ティース15は、6つのティース要素15Eを含む。各ティース要素13Eは、ピッチP/2で配列されており、各ティース要素13Eの間は、間隙となっている。各ティース要素14Eおよび各ティース要素15Eも同様の構成である。このように、可動子11は、X軸方向(移動方向)に並ぶ複数の間隙を含む。
【0018】
各ティース13,14,15の複数の間隙のそれぞれには、永久磁石22,23が配置されている。ティース13において、永久磁石22,23は、隣り合う永久磁石22,23と磁化方向が逆向きとなるように間隙に配置されている。ティース14、15においても同様である。図1において、矢印の向きは永久磁石22,23の磁化方向を、矢印の本数は永久磁石22,23の磁束量を示している。
【0019】
ここで、ティース13において、複数の永久磁石22,23のうち、X軸方向(移動方向)において端から2番目に位置する永久磁石23は、その他の永久磁石22よりも保磁力が高くなっている。すなわち、永久磁石23は、永久磁石22に比べて、例えば重希土類を多く含む永久磁石(保磁力の高い永久磁石)を採用している。これは、ティース14、15においても同様である。これにより、各ティース13,14、15において、端から2番目に位置する永久磁石23が不可逆減磁してしまうことを抑制することができる。
【0020】
リニアモータは、三相交流巻線16,17,18に電流を印加すると、可動子11と固定子12の相対位置に応じてそれらの間に磁気吸引力が生じる。これにより、可動子11にX軸方向の推力が発生し、可動子11が固定子12に対して移動することになる。
【0021】
以上説明した実施形態によれば、最も磁束量が少なく不可逆減磁の生じやすい永久磁石23のみに保磁力の高い材質(例えば重希土類を多く含む材質)を選定し、その他の永久磁石22には比較的、保磁力の低い材質(例えば重希土類を含まないか、少量だけ含む材質)を選定することになる。よって、重希土類の使用量を減らすことができ、コストや調達リスクを低減することができる。
【0022】
図2は、本発明の別の実施形態に係るリニアモータの概略構成を示す図である。図2のリニアモータは、図1のリニアモータにおける永久磁石23(各ティースの端から2番目に位置する永久磁石)を、磁化方向の寸法が大きい永久磁石23aに置き換えたものである。図2において、永久磁石23aは、永久磁石22よりも、磁化方向の寸法が大きくなっている。ここで、永久磁石23aは、永久磁石22と同じく保磁力の低い材質(例えば重希土類を含まないか、少量だけ含む材質)であってよい。永久磁石23aは、磁化方向の寸法を大きくすることで減磁耐量が高くなっているため、保磁力の低い材質であっても不可逆減磁を抑制することができる。この実施形態の場合、さらに重希土類の使用量を低減することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 突極、11,11a,111 可動子、12 固定子、13,14,15 ティース、13E,14E,15E ティース要素、16,17,18 三相交流巻線、19 永久磁石、20 可動子磁気ヨーク、21 固定子磁気ヨーク、22,23,23a 永久磁石。
図1
図2
図3