(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006585
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】工具交換アーム
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B23Q3/157 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107627
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和哉
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002FF03
3C002FF07
3C002KK04
(57)【要約】
【課題】工具との衝突時の衝撃を低減させる工具交換アームを提供すること。
【解決手段】中央の回転軸を中心に工具の把持位置が対称的に構成されたアーム本体と、前記アーム本体の両端部に形成された固定爪と、前記アーム本体に揺動可能に軸支された可動爪と、前記可動爪の先端部に一端が軸着された第1連結部材と、前記第1連結部材の他端に一端が軸着され、他端が前記アーム本体に軸支された第2連結部材と、を備え、前記アーム本体の回転によって、前記第2連結部材の中間部が前記工具の進入側部に当接して押し込まれ、前記第2連結部材に軸着された前記第1連結部材を介して前記可動爪を揺動させ、前記固定爪とともに前記工具を把持する工具交換アーム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央の回転軸を中心に工具の把持位置が対称的に構成されたアーム本体と、
前記アーム本体の両端部に形成された固定爪と、
前記アーム本体に揺動可能に軸支された可動爪と、
前記可動爪の先端部に一端が軸着された第1連結部材と、
前記第1連結部材の他端に一端が軸着され、他端が前記アーム本体に軸支された第2連結部材と、を備え、
前記アーム本体の回転によって、前記第2連結部材の中間部が前記工具の進入側部に当接して押し込まれ、前記第2連結部材に軸着された前記第1連結部材を介して前記可動爪を揺動させ、前記固定爪とともに前記工具を把持する
工具交換アーム。
【請求項2】
前記可動爪を開動作する方向に付勢するためのバネ部材と、前記可動爪の閉状態を維持するロック機構と、を有する請求項1に記載の工具交換アーム。
【請求項3】
前記第2連結部材は、前記工具側に屈曲した形状である請求項1または請求項2に記載の工具交換アーム。
【請求項4】
前記アーム本体の回転によって前記第2連結部材の中間部に前記工具の進入側部が当たる位置は、前記アーム本体の停止位置まで残りの回転角度が1°分である請求項1または請求項2に記載の工具交換アーム。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記可動爪に対して前記第1連結部材とは反対側に、遊嵌された連結ピンによってスライド部材が軸着され、前記スライド部材には位置決め孔が形成され、前記可動爪の閉動作によってロック用バネに付勢されたロックピンが前記位置決め孔に嵌まり込むことでロック状態を形成する請求項1に記載の工具交換アーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転して工具を把持する際、その工具と衝突することによって発生する衝撃を低減させるようにした工具交換アームに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、工具主軸装置の工具の取り換えが可能な構成を有するものがあり、そこには自動で工具の交換を行う自動工具交換装置が設けられている。そして、自動工具交換装置には、両端部の工具チャックによって工具を把持する工具交換アームを有し、例えば180°回転させることによって工具の交換を行う構成がとられたものがある。下記特許文献1には従来の工具交換アームが開示されている。この工具交換アームは、両端部に把持爪の開閉を可能にした工具チャックが構成され、各々によって交換する工具を把持することが可能になっている。
【0003】
工具交換アームの工具チャックは、固定の把持爪(固定爪)に対して把持爪(可動爪)が揺動可能に軸支された工具チャックが構成されている。可動爪の端にはカムフォロアーが取り付けられ、圧縮コイルバネによって付勢された揺動可能な押圧部材に当接している。押圧部材を介して伝達される圧縮コイルバネの付勢力は、可動爪が固定爪との関係では開く方向に作用している。従って、工具交換の際には、工具交換アームが回転し、可動爪が開いた把持部に工具が当たり、それによって可動爪が閉じて工具が把持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工具交換アームは、回転することによって工具を把持することになるが、可動爪に対して工具が相対的に衝突することになる。その際、工具が可動爪に衝突する位置が工具交換アームの回転を停止する位置から遠く、回転速度が落ちる前に衝突が生じてしまっていた。そのため、工具交換アームが受ける衝撃も大きくなってしまい、そのときの衝撃音が大きくなるほか、繰り返し行われる把持動作によって破損を引き起こすことで寿命を短くしてしまうこともあった。一方で、衝撃を小さくするには回転速度を落とすことも考えられるが、工具交換にかける時間を短縮することが望ましいため、一定程度の速度になってしまい解決が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、工具との衝突時の衝撃を低減させる工具交換アームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工具交換アームは、中央の回転軸を中心に工具の把持位置が対称的に構成されたアーム本体と、前記アーム本体の両端部に形成された固定爪と、前記アーム本体に揺動可能に軸支された可動爪と、前記可動爪の先端部に一端が軸着された第1連結部材と、前記第1連結部材の他端に一端が軸着され、他端が前記アーム本体に軸支された第2連結部材と、を備え、前記アーム本体の回転によって、前記第2連結部材の中間部が前記工具の進入側部に当接して押し込まれ、前記第2連結部材に軸着された前記第1連結部材を介して前記可動爪を揺動させ、前記固定爪とともに前記工具を把持するものである。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、中央の回転軸を中心に対称的に構成されたアーム本体が回転することにより、その両端部に構成された固定爪と可動爪からなる把持部によって工具を把持することができるが、その際、把持部内に相対的に進入した工具はその進入側部が第2連結部材の中間部に当接し、工具が衝突した第2連結部材の揺動が第1連結部材および可動爪に伝達されて工具が把持される。そして、回転する工具交換アームの停止位置直前で工具が第2連結部材に当接するため、衝撃を低減させることができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ツールチェンジャの一例を示した斜視図である。
【
図4】
図3に示す閉動作時の工具チャックを拡大して示した斜視図である。
【
図5】工具チャックのロック機構を示した
図2のN-N断面図である
【
図7】可動爪の閉動作における変位を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る工具交換アームの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の工具交換アームは、工作機械においてツールマガジンの工具を自動で交換する自動工具交換装置に組み込まれたものであり、特に工具主軸装置に対する直接の工具交換を行うツールチェンジャを構成するものである。
図1は、そのツールチェンジャの一例を示した斜視図である。このツールチェンジャ1では、ツールマガジンから運ばれた新たな工具と、それまで工具主軸装置で使用された工具との移し換えが行われる。
【0011】
ツールチェンジャ1は、工具の着脱が可能な一対の工具チャック11を両端部に設けた工具交換アーム3が回転可能に取り付けられたものであり、その工具交換アーム3を回転させるカム装置5および、そのカム装置5に回転を出力するサーボモータ7などによって構成されている。カム装置5は、上方に入力軸13が突出し、サーボモータ7の出力軸との間に、各軸のプーリを介してタイミングベルト12が掛け渡されている。
【0012】
カム装置5は、入力軸13に与えられた回転が、下方に突き出した出力軸14から所定の運動が出力できるように設計されている。すなわち、入力側13の回転に従って出力軸14が回転するほか上下方向にも変位するように、溝カムやグロボイダルカムなどから構成されている。従って、ツールチェンジャ1は、サーボモータ7の回転制御により、工具交換アーム3における回転角度と上下方向の位置を調整することが可能となっている。
図6は、そのカム装置5におけるタイミング線図である。
【0013】
このタイミング線図では、横軸にカムの回転角度を示し、(A)は縦軸に工具交換アーム3の上下方向の移動位置が示され、(B)は縦軸に工具交換アーム3の回転角度が示されている。本実施形態のツールチェンジャ1は、工具交換アーム3の待機状態を0°とした場合に、回転角度が90°と270°の位置で工具主軸装置に対する工具の着脱が行われるよう構成されている。
図6(B)に示すように変化する工具交換アーム3の回転は、例えばカムの回転角度が5°になった時点で始まり、カムの回転角度が64°になった時点で90°の回転位置に達する。
【0014】
そして、カムの回転角度が107°に達するまで工具交換アーム3の姿勢が90°のまま維持される。90°の回転で工具主軸装置から工具を取り出した工具交換アーム3は、次に180°分回転した270°の位置で新たな工具を工具主軸装置へ装着することになる。ツールチェンジャ1は、90°および270°の回転位置では
図6(A)に示すように工具交換アーム3を上下方向に変位させ、工具主軸装置に対する工具の取り外しまたは装着が行われる。
【0015】
本実施形態のツールチェンジャ1は、工具交換アーム3が工具を掴みに行く工程では、90°の回転位置で停止することになるが、その停止位置の直前で工具に工具交換アーム3の工具チャック11が当たることになる。従来は、このときの衝撃音が大きく、工場内で作業を行う作業員に不快感を与えてしまっていた。また、工具交換が行われる度に大きな衝撃を受ければ工具交換アーム3における部品の破損などが生じることなり、工具チャック11の不具合によって工具の落下を引き起こしてしまうことになる。
【0016】
そこで、本実施形態の工具交換アーム3には衝突時の衝撃を低減する構成が採られている。
図2および
図3は、工具交換アーム3を示した平面図と斜視図である。両図面とも一対の工具チャック11(11A,11B)のうち、図面右側の工具チャック11Aは工具Tを把持していない状態が示され、図面左側の工具チャック11Bは工具Tを把持した状態が示されている。そして、
図4は、
図3に示す工具チャック11Bを拡大して示した斜視図である。
【0017】
工具交換アーム3は、菱形のアーム本体20に対し、その両端部において対称的に工具チャック11が構成されている。両工具チャック11ともに同一の回転方向(反時計方向)から工具Tを受けるように構成されている。工具チャック11は、アーム本体20の両端部に一体的に固定爪21が形成され、その固定爪21に対してアーム本体20の回転軸O側に可動爪25が揺動可能に軸支されている。
【0018】
ところで、
図3に一点鎖線で示す工具Tは円柱形状で表現されているが、これはツールマガジンに収納される各種工具が収まる外郭領域を表現したにすぎない。そして、実際の工具Tはヘッド部分に工具保持具TPが取り付けられ、自動工具交換装置内では当該工具保持具TPを把持することによって移し換えが行われる。そのため、工具チャック11の固定爪21や可動爪25は、略円柱形状をした工具保持具TPの被把持部を掴むことができる形状で形成されている。
【0019】
可動爪25は、ピン26によってアーム本体20に対して軸支され、工具保持具TPを把持する先端部側にピン27を介して第1の連結部材24が軸着されている。その連結部材24は、ピン27の位置とは反対側の端部がピン28によって、第2の連結部材である閉動作レバー23と軸着されている。ピン28は、変位する連結部材24の揺動軸であり、連結部材24側に形成されてピン孔に遊嵌されている。閉動作レバー23は、ピン28の位置とは反対側の端部がピン29によってアーム本体20に軸支されている。従って、工具チャック11は、アーム本体20に軸支された開動作レバー23、連結部材24および可動爪25がリンクとなって、各ピン26,27,28,29が回り対偶を構成したクローズタイプのリンク機構である。
【0020】
工具チャック11に構成されたこのリンク機構は、
図2に示すように、閉動作レバー23の中間部81が相対的に進入してきた工具T(工具保持具TP)の進入側部82に当接し、その衝突時に受ける反力によって変位し、閉動作レバー23の動きに追随して連結部材24および可動爪25が揺動するようになっている。本実施形態では、前述した工具交換アーム3が停止する回転位置を90°とした場合に、閉動作レバー23は、残りの回転角度θが1°になる位置で工具保持具TPに当たるよう設計されている。そして、工具Tが衝突してから工具交換アーム3が停止するまでの開動作レバー23の変位量は4mm程度である。
【0021】
ところで、工具チャック11が直接把持する工具保持具TPは、周方向の4箇所に嵌合凹部101が形成されている。工具チャック11は、固定爪21と可動爪25とに嵌合部211,251が形成され、それらが2箇所の嵌合凹部101に嵌ることによって、工具保持具TPを確実に把持できるようになっている。
図2に示すように、工具チャック11を工具Tの相対的な進入方向から見た場合、その奥側(
図7下側)で固定爪21の嵌合部211が嵌まり込み、工具入口側(
図7上側)で可動爪25の嵌合部251が嵌り込むようになっている。
【0022】
図7は、アーム本体20に軸支された閉動作レバー23、連結部材24および可動爪25を棒状のリンク23L,24L,25Lに置き換えてその動きを表現した図である。工具チャック11のリンク機構は、各リンク23L,24L,25Lが、細線で示す開状態位置から太線で示す閉状態の位置に変位する。すなわち、リンク23Lの揺動によってピン28を介してリンク24Lが工具チャック11の奥側に引かれ、これによりリンク25Lの揺動端側のピン27が工具Tへ近づけられ、更にそのリンク25Lがピン26を支点に揺動することによりその揺動端が工具Tへと近づけられる。
【0023】
工具チャック11は、閉動作レバー23が工具Tから受ける反力によって閉状態になるが、そのとき工具Tが閉動作レバー23の位置まで他の部材に衝突せず進入できるようにすることが必要である。そこで、通常時の工具チャック11がある程度開くように、可動爪25を開方向に付勢するためのスプリング31が設けられている。工具交換アーム11のアーム本体20には、その長手方向に直線移動するスライド32が組み込まれている。スライド32は、その一端部に形成された長孔に、可動爪25に固定されたピン33が遊嵌されている。
【0024】
ピン33は、可動爪25の揺動軸となるピン26を挟んで、ピン27とは反対側の端部に位置している。スプリング31の付勢力は、スライド32に固定されたブロック34を介してピン33に伝わり、可動爪25は、常に工具チャック11の外側方向すなわち
図2における反時計方向に力を受けて開状態が維持されている。また、スライド32は、ピン33が入る連結用の長孔とは反対の回転軸O側端部に、変位方向に沿って長孔321が形成され、そこにロックピン35が挿入されている。
【0025】
図5は、工具チャック11のロック機構を示した
図2のN-N断面図である。図示する左右のロック機構は同じ構造であり、図面右側は工具チャック11Aに対応したアンロック状態が表現され、図面左側が工具チャック11Bに対応したロック状態が表現されている。まず、ロックピン35は、径寸法が3段階に変化するように形成され、大きい径の案内部351と、中間位置のロック部352と、小さい径の作用部353とが形成されている。アーム本体241の下面側には椀型のガイドキャップ36が固定され、そこにロックピン35の案内部351が摺動可能に挿入されている。
【0026】
ロックピン35は、案内部351に下からあけられた穴にロック用バネ37が入れられ、ガイドキャップ36に支えられて上方に付勢されている。ロックピン35は、その作用部353が長孔321を貫通し、更にアーム本体20の上面側に固定されたガイド筒38内に挿入され、先端部が突き出している。長孔321は、下面側にロック部352の一部が入り込むロック凹部325が形成され、ロック状態が切り換えられるようになっている。そうした長孔321とロックピン35の関係が、
図5の一点鎖線で囲った箇所に平面的に示されている。
【0027】
長孔321は、その長手方向の中央部分に円弧状に幅が広がったロック凹部325が形成されている。工具チャック11が開状態の通常時は、図面右側に示すようにスライド32が矢印で示す回転軸Oから離れる方向に付勢された位置にあり、ロック部352がスライド32の下面に当たっている。一方で、工具チャック11が閉状態に切り換えられた場合には、図面左側のスライド32が矢印で示す回転軸Oに近づく方向に移動し、ロック部352が長孔321のロック凹部325に相対的に入り込むことになる。これによりスライド32の移動が拘束され、これに連結された可動爪25の閉状態が維持されることになる。
【0028】
工具チャック11によって把持された工具Tを解放するには、ロックピン35を押し下げてロック凹部325からロック部352を外す必要がある。この点、工具交換アーム3は、
図6(A)に示すように回転角度によって高さが変化する。そこで、工具Tを解放するタイミングで工具交換アーム3が上昇し、ロックピン35は、その作用部353が
図1に示すように直上の押当てリング15に当たり、相対的に押し下げられることとなる。なお、押当てリング15は、カム装置5の出力軸14にラジアルベアリングによって回転可能に取り付けられている。
【0029】
続いて、本実施形態の工具交換アーム3を有するツールチェンジャ1の作用について説明する。待機状態から90°の回転によって、これまで使用された工具主軸装置の工具Tと、新たにツールマガジンから運ばれた新たな工具Tとの交換が行われる。待機状態の工具交換アーム3は工具チャック11A,11Bの両方が開状態であって、工具Tを把持する準備がとられている。そこで、工具Tを交換する場合には、サーボモータ7の駆動制御により、その回転がカム装置5を介して変換され、工具交換アーム3の回転角度と上下方向の変位として出力される。
【0030】
回転した工具交換アーム3は、90°の回転角度で停止し、工具主軸装置に装着された工具Tの把持動作が行われる。すなわち、工具交換アーム3は、0°から回転を開始して交換する工具Tに向かって工具チャック11が接近するが、停止位置直前の89°の回転位置で閉動作レバー23が工具Tに衝突する。そして、残り1°分の回転において閉動作レバー23が工具Tによって相対的に押される。このとき、閉動作レバー23は工具Tを把持する工具側にくの字に屈曲した形状であるため、工具チャック11内に進入する工具Tとの衝突を90°に近づけることができる。
【0031】
工具Tとの衝突によって押された閉動作レバー23は、ピン29を支点に揺動することで揺動端のピン28に軸着された連結部材24を引っ張ることになる。そうして連結部材24が変位することにより、可動爪25がピン26を中心に揺動し、工具Tが固定爪21と可動爪25によって把持される。このとき
図7に示す位置にある工具保持具TPの嵌合凹部101に、固定爪21と可動爪25の嵌合部211,251が嵌り込んで把持される。そして、可動爪25が閉状態になった場合には、可動爪25の揺動によってスライド32が変位し、ロックピン35によって工具チャック爪11の閉状態が維持される。その後、工具交換アーム3に180°分の回転が行われることで、両端の工具チャック11に把持された工具Tの交換が行われる。
【0032】
よって、本実施形態の工具交換アーム3によれば、連結部材24および閉動作レバー23を介して可動爪25を揺動させる構成にしたことで、90°の回転角度で停止するその直前の89°の位置で衝突させた工具Tの把持が可能である。そのため、工具Tに衝突するときの速度を従来に比べて落とすことができ、作業者が不快に感じる衝撃音を低減させることになる。また、工具Tに当たる衝撃を和らげることができ、工具交換アーム3における破損を防止することにもなる。
【0033】
本実施形態では、工具交換における工具交換アーム3の回転速度の変化を従来のままで行うため、ツールチェンジャ1のカム装置5について設計変更が必要なく、コストをかけずに衝撃緩和の効果を得ることができる。また、工具交換アーム3は、閉動作レバー23がくの字に形成されているため、ピン28を工具チャック11の工具入口側に位置することができる。そして、工具交換アーム3は、連結部材24が工具チャック11の奥側に引き込まれながら揺動するため、可動爪25の揺動角度を大きくとることができ、嵌合部251が工具保持具TPの嵌合凹部101に工具チャック11の入口側から嵌り込んで把持状態を安定させることができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、工具交換アーム3の停止位置を回転角90°で説明したがこれに限定されるわけではなく、また工具Tとの衝突位置を停止する1°前に設定したものを説明したがこれについても限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0035】
1…ツールチェンジャ1 3…工具交換アーム 5…カム装置 7…サーボモータ 11(11A,11B)…工具チャック 20…アーム本体 21…固定爪 23…閉動作レバー 24…連結部材 25…可動爪 26,27,28,29…ピン 31…スプリング 32…スライド 35…ロックピン T…工具 TP…工具保持具