(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065850
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】構造部品
(51)【国際特許分類】
B60G 7/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B60G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174917
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田畑 亮
(72)【発明者】
【氏名】大塚 研一郎
(72)【発明者】
【氏名】河内 毅
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA68
3D301AA69
3D301CA09
3D301DA90
3D301DA94
(57)【要約】
【課題】バーリング部を含む構造部品の疲労耐久性を向上させる。
【解決手段】構造部品(100,200)は、部品本体(10)と、ブッシュを取り付けるための取付け部(20)とを備える。取付け部(20)は、部品本体(10)に連続して設けられる。構造部品(100,200)は、天板(30)と、側壁(40)と、貫通孔(51)と、筒状のフランジ(52)と、ビード(60)とを含む。貫通孔(51)は、取付け部(20)において天板(30)に形成されている。フランジ(52)は、貫通孔(51)の周縁部(511)から側壁(40)と同じ側に突出する。ビード(60)は、天板(30)において部品本体(10)側で貫通孔(51)に隣接するように設けられる。ビード(60)は、側壁(40)側に凹の形状を有する。ビード(60)は、周縁部(511)に凹の形状が形成されるように貫通孔(51)に連続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部品であって、
部品本体と、
前記部品本体に連続して設けられ、ブッシュを取り付けるための取付け部と、
を備え、
前記構造部品は、
前記部品本体及び前記取付け部にわたって延在する天板と、
前記天板の両側に配置され、前記天板から板厚方向の一方側に起立し、前記部品本体から前記取付け部に向かって延在する側壁と、
前記取付け部において前記天板に形成された貫通孔と、
前記貫通孔の周縁部から前記側壁と同じ側に突出する、筒状のフランジと、
前記天板において前記部品本体側で前記貫通孔に隣接するように設けられ、前記側壁側に凹の形状を有するビードと、
を含み、
前記ビードは、前記周縁部に凹の形状が形成されるように前記貫通孔に連続する、構造部品。
【請求項2】
請求項1に記載の構造部品であって、
前記周縁部の全長をL0、前記周縁部のうち前記ビードによって凹の形状となっている部分の長さをLとしたとき、0.1L0≦L≦0.5L0である、構造部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の構造部品であって、
前記ビードは、前記取付け部から前記部品本体にわたって延在している、構造部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車体等の構造物は、構造部品を用いて形成される。構造部品には、ブッシュを介して他の部品と接続されるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動車用のサスペンションロッドが開示されている。特許文献1では、2つのロッドハーフが接合されてサスペンションロッドが形成されることにより、サスペンションロッドが閉断面を有する。このサスペンションロッドの長手方向の両端部には、ブッシュが取り付けられる。より具体的には、サスペンションロッドの一端部において、2つのロッドハーフは接合されずに分岐している。ブッシュは、分岐したロッドハーフ間に収容される。サスペンションロッドの他端部において、各ロッドハーフの天板にはバーリング加工によって貫通孔及び筒状のフランジが形成されている。ブッシュは、貫通孔及びフランジに挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にも記載されているように、構造部品がブッシュを介して他の部品と接続される場合、バーリング加工により、貫通孔及びフランジを含むバーリング部が構造部品に形成されることがある。バーリング部にはブッシュが挿入されるため、構造部品の剛性はバーリング部の位置で大きくなる。一方、構造部品のうちバーリング部に隣接する部位の剛性は、バーリング部と比較して小さい。すなわち、バーリング部に隣接する部位とバーリング部との境界で構造部品の剛性が急変している。そのため、構造部品に荷重が入力された際に当該境界で応力集中が発生しやすく、構造部品の疲労耐久性が低下する可能性がある。特に、構造部品が軽量化のために高強度且つ薄肉の板材で形成されている場合、荷重が入力された際に構造部品に発生する応力が大きくなるため、構造部品の疲労耐久性が低くなりやすい。
【0006】
本開示は、バーリング部を含む構造部品の疲労耐久性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る構造部品は、部品本体と、ブッシュを取り付けるための取付け部とを備える。取付け部は、部品本体に連続して設けられる。構造部品は、天板と、側壁と、貫通孔と、フランジと、ビードとを含む。天板は、部品本体及び取付け部にわたって延在する。側壁は、天板の両側に配置される。側壁は、天板から板厚方向の一方側に起立する。側壁は、部品本体から取付け部に向かって延在する。貫通孔は、取付け部において天板に形成されている。フランジは、貫通孔の周縁部から側壁と同じ側に突出する。フランジは、筒状を有する。ビードは、天板において部品本体側で貫通孔に隣接するように設けられる。ビードは、側壁側に凹の形状を有する。ビードは、周縁部に凹の形状が形成されるように貫通孔に連続する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バーリング部を含む構造部品の疲労耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る構造部品を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る構造部品の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る構造部品の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、構造解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る構造部品は、部品本体と、ブッシュを取り付けるための取付け部とを備える。取付け部は、部品本体に連続して設けられる。構造部品は、天板と、側壁と、貫通孔と、フランジと、ビードとを含む。天板は、部品本体及び取付け部にわたって延在する。側壁は、天板の両側に配置される。側壁は、天板から板厚方向の一方側に起立する。側壁は、部品本体から取付け部に向かって延在する。貫通孔は、取付け部において天板に形成されている。フランジは、貫通孔の周縁部から側壁と同じ側に突出する。フランジは、筒状を有する。ビードは、天板において部品本体側で貫通孔に隣接するように設けられる。ビードは、側壁側に凹の形状を有する。ビードは、周縁部に凹の形状が形成されるように貫通孔に連続する(第1の構成)。
【0011】
第1の構成において、構造部品の天板には凹状のビードが形成されている。ビードは、ブッシュの取付け部において天板に設けられた貫通孔に部品本体側で隣接し、且つ貫通孔に対してその周縁部に凹の形状を形成するように連続する。このビードにより、構造部品において、貫通孔及びフランジを含むバーリング部に隣接する部位での剛性が高くなり、当該部位の剛性とブッシュが挿入された状態でのバーリング部の剛性との差異が小さくなる。その結果、構造部品に対して荷重が入力された際、バーリング部に隣接する部位とバーリング部との境界における応力集中が低減される。したがって、構造部品の疲労耐久性を向上させることができる。
【0012】
貫通孔の周縁部の全長をL0、周縁部のうちビードによって凹の形状となっている部分の長さをLとしたとき、0.1L0≦L≦0.5L0であることが好ましい(第2の構成)。
【0013】
第2の構成によれば、貫通孔の周縁部において、ビードによって凹の形状となる部分が十分な大きさで確保される。この場合、構造部品に対して荷重が入力された際、バーリング部に隣接する部位とバーリング部との境界での応力集中がより低減されやすい。そのため、構造部品の疲労耐久性が向上しやすくなる。
【0014】
ビードは、取付け部から部品本体にわたって延在していてもよい(第3の構成)。
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0016】
<第1実施形態>
[構造部品の構成]
図1は、第1実施形態に係る構造部品100を模式的に示す斜視図である。構造部品100は、典型的には自動車の車体に用いられる。構造部品100は、例えば、自動車のシャシー部品である。シャシー部品には、ロアアームやアッパーアーム等のサスペンションアームが含まれる。本実施形態では、構造部品100がロアアームである例について説明する。
【0017】
図1を参照して、構造部品100は、部品本体10と、取付け部20とを備える。
【0018】
本実施形態の例において、部品本体10は、平面視で屈曲又は湾曲している。部品本体10は、アーム11,12を含む。アーム11,12は、部品本体10の平面視で異なる方向に延びている。ロアアームである構造部品100が自動車に取り付けられた状態では、一方のアーム11は概ね車幅方向(左右方向)に延び、他方のアーム12は概ね車長方向(前後方向)に延びている。アーム11は、例えば、ボールジョイント及びステアリングナックル(図示略)を介し、自動車の車輪に接続される。アーム12は、取付け部20を介して自動車の車体に接続される。以下、アーム11,12の延在方向を構造部品100の長手方向という。
【0019】
取付け部20は、構造部品100においてブッシュ(図示略)を取り付けるための部分である。取付け部20は、部品本体10に連続して設けられる。より具体的には、取付け部20は、アーム12の先端に連続して設けられている。
【0020】
構造部品100は、天板30と、側壁40と、バーリング部50と、ビード60とを含む。
【0021】
天板30は、部品本体10及び取付け部20にわたって延在している。天板30は、構造部品100の長手方向の全体にわたって延在している。側壁40は、天板30の両側に配置されている。側壁40の各々は、天板30から、当該天板30の板厚方向に起立している。各側壁40は、部品本体10から取付け部20に向かって延在する。すなわち、各側壁40は、天板30に沿い、構造部品100の長手方向に延在している。
【0022】
バーリング部50は、取付け部20に設けられている。バーリング部50は、貫通孔51と、フランジ52とを含む。貫通孔51は、取付け部20において天板30に形成されている。貫通孔51は、天板30をその板厚方向に貫通している。フランジ52は、筒状を有している。フランジ52は、貫通孔51の周縁部511から天板30の板厚方向に突出する。フランジ52は、各側壁40と同じ側に突出している。
【0023】
貫通孔51及びフランジ52は、天板30の板厚方向に沿って見て、実質的に円形を有している。貫通孔51及びフランジ52には、図示しないブッシュが挿入される。ブッシュは、貫通孔51及びフランジ52に圧入されて構造部品100に固定される。ブッシュは、典型的には円筒状であるが、略円筒状とみなせる多角筒状等であってもよい。
【0024】
ビード60は、天板30に形成されている。ビード60は、側壁40側に凹の形状を有している。ビード60は、部品本体10側で取付け部20の貫通孔51に隣接するように天板30に設けられている。本実施形態において、ビード60は、取付け部20から部品本体10にわたって延在している。より具体的には、ビード60は、部品本体10のアーム11,12に跨って設けられ、且つ取付け部20へと延在している。
図1に示す構造部品100では、天板30に単一のビード60が設けられている。
【0025】
図2は、構造部品100の取付け部20及びその近傍部分の拡大図である。
図2を参照して、ビード60は、バーリング部50に連続するように設けられている。より具体的には、ビード60は、バーリング部50の貫通孔51に連続して周縁部511に凹の形状を形成する。すなわち、貫通孔51の周縁部511の一部は、ビード60と連続することにより、周縁部511の他の部分と比較してフランジ52を侵食するように凹んでいる。
【0026】
図3は、部品本体10において、構造部品100を長手方向に対して垂直な面に沿って切断した横断面図(
図1のIII-III断面図)である。
図4は、バーリング部50の近傍において、構造部品100を長手方向に対して垂直な面に沿って切断した横断面図(
図1のIV-IV断面図)である。
図3は、構造部品100の切断面のみを示す。
図4は、構造部品100の切断面とともに、当該切断面の奥に配置されているバーリング部50を示す。
【0027】
図3を参照して、天板30は、天板本体31と、天板本体31の両側に設けられた稜線部32とを含んでいる。稜線部32の各々は、天板本体31と側壁40との間のコーナー部である。各稜線部32は、構造部品100の横断面視で実質的に円弧状を有していてもよい。各稜線部32には、側壁40が連続して設けられている。
【0028】
天板本体31には、構造部品100の縦断面視で、天板本体31の中間部を側壁40側に凹ませるようにビード60が形成されている。ビード60の両側縁61は、天板本体31のうちビード60の両側に配置された部分に対して滑らかに連続する。各側縁61は、構造部品100の横断面視で実質的に円弧状を有していてもよい。
【0029】
ビード60は、バーリング部50の貫通孔51の周縁部511を部分的に凹ませる。すなわち、
図4に示すように、貫通孔51の周縁部511は凹部512を含む。凹部512は、周縁部511の他の部分513と同一平面上に位置しない。凹部512の両端部512aは、周縁部511の他の部分513に対して滑らかに連続されていてもよい。
【0030】
凹部512の深さをD、バーリング部50のフランジ52の高さをHとしたとき、フランジ高さHに対する凹部512の深さDの比:D/Hは、例えば、0.2以上、0.7以下であってもよい。凹部512の幅をW、貫通孔51の周縁部511の全長(周長)をL0としたとき、周長L0に対する凹部512の幅Wの比:W/L0は、例えば、0.1以上、0.5以下であってもよい。深さDは、フランジ52の軸方向に沿って測定される凹部512の深さの最大値である。幅Wは、フランジ52の周方向に沿って測定される凹部512の幅の最大値である。フランジ高さHは、天板本体31の表面からフランジ52の開放端までのフランジ52の軸方向における距離である。
【0031】
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る構造部品100は、部品本体10において天板30の反対側が開口した開断面を有している。構造部品100は、取付け部20の近傍でも天板30の反対側が開口した開断面を有している。本実施形態の例において、構造部品100は、その全体にわたり開断面を有している。
【0032】
図2に戻り、貫通孔51の周縁部511の全長をL
0、凹部512の長さをLとしたとき、L≧0.1L
0であることが好ましく、L≧0.2L
0であることがより好ましい。凹部512の長さLは、例えばL≦0.5L
0を満たすように設定され、好ましくはL≦0.4L
0を満たすように設定される。凹部512の長さLは、その両端部512a(
図4)まで含めた長さである。貫通孔51の周縁部511の全長L
0は、凹部512及びその他の部分513を合わせた貫通孔51の周長である。例えば、周縁部511が天板30とフランジ52とを滑らかに接続するように円弧状の横断面を有する場合、L,L
0は、周縁部511の天板30側のR止まりに沿って測定されてもよい。
【0033】
構造部品100は、典型的には金属板から形成される。金属板は、例えば、鉄(Fe)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、又はこれらの合金等で構成されていてもよい。構造部品100は、好ましくは、鉄合金板(鋼板)から形成される。構造部品100は、高張力鋼板又は超高張力鋼板から形成されていてもよい。この場合、構造部品100を薄肉化して軽量化することができる。構造部品100の板厚は、例えば、1.8mm以上、4.0mm以下である。
【0034】
構造部品100は、例えば、金属板のプレス成形によって製造されてもよい。例えば、金属板から天板30及び側壁40を金型でプレス成形するとともに天板30に金型を押し当ててビード60を形成し、その後、天板30にバーリング加工を施してバーリング部50を形成することができる。この場合、曲げ変形を主体とするプレス成形によってビード60が形成されるため、ビード60及びその近傍での過度の板厚減少は生じない。
【0035】
[効果]
本実施形態に係る構造部品100は、天板30に設けられた凹状のビード60を含んでいる。ビード60は、ブッシュ(図示略)の取付け部20において天板30に設けられた貫通孔51に部品本体10側で隣接し、且つ貫通孔51の周縁部511に凹部512を形成するように貫通孔51に連続する。このビード60により、構造部品100において、貫通孔51及びフランジ52を含むバーリング部50に隣接する部位における剛性が高くなる。より具体的には、一般に、開断面を有する構造部品のねじり剛性は当該開断面の線長及び板厚に依存するところ、本実施形態に係る構造部品100では、部品本体10側のビード60をバーリング部50に連続させることでバーリング部50に隣接する部位の断面線長が延長され、当該部位のねじり剛性が高くなっている。これにより、構造部品100のうちバーリング部50に隣接する部位の剛性と、ブッシュが挿入された状態でのバーリング部50の剛性との差異が小さくなる。そのため、構造部品100に対して荷重が入力された際、バーリング部50に隣接する部位とバーリング部50との境界での応力集中が低減される。したがって、構造部品100の疲労耐久性が向上する。
【0036】
本実施形態において、ビード60によって貫通孔51の周縁部511に形成された凹部512の長さLは、周縁部511の全長L0の0.1倍以上であることが好ましい。これにより、貫通孔51の周縁部511において凹部512の大きさが確保される。この場合、構造部品100に対して荷重が入力された際、バーリング部50に隣接する部位とバーリング部50との境界での応力集中がより低減されやすくなり、構造部品100の疲労耐久性が向上しやすい。
【0037】
凹部512の長さLは、貫通孔51の周縁部511の全長L0の0.2倍以上であることがより好ましい。この場合、バーリング部50に隣接する部位とバーリング部50との境界での応力集中がさらに低減されやすくなり、構造部品100の疲労耐久性がより向上しやすくなる。凹部512の長さLは、貫通孔51の周縁部511の全長L0の0.5倍以下であってもよく、0.4倍以下であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る構造部品100において、ビード60は、バーリング部50を含む取付け部20から部品本体10にわたって延在している。すなわち、ビード60は、部品本体10を全体的に補強しつつ、取付け部20を補強することができるように構造部品100に設けられている。本実施形態では、部品本体10と取付け部20とでビード60が分離されていない。そのため、ビード60の分離位置で応力集中が生じる可能性がなく、構造部品100の疲労耐久性が確保されやすい。また、天板30に単一のビード60を形成すればよいため、天板30に複数のビードを形成する場合と比較して構造部品100の製造が容易になる。
【0039】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る構造部品200を模式的に示す斜視図である。
図5では、構造部品200の取付け部20及びその近傍部分が示されている。本実施形態に係る構造部品200は、バーリング部50に連続するビード60が部品本体10のビード70と分離されている点で、第1実施形態に係る構造部品100と異なる。
【0040】
図5を参照して、ビード60は、第1実施形態と同様に、バーリング部50の貫通孔51に連続して周縁部511に凹部512を形成する。ただし、ビード60は、第1実施形態と異なり、バーリング部50を含む取付け部20から部品本体10にわたって延在していない。ビード60は、天板30のうちバーリング部50に隣接する部分に設けられているが、部品本体10にはほとんど延在していない。部品本体10には、ビード60とは別のビード70がアーム11,12(
図1)にわたって延在するように設けられている。
【0041】
本実施形態に係る構造部品200であっても、第1実施形態に係る構造部品100と同様の効果を奏することができる。すなわち、構造部品200のうちバーリング部50に隣接する部位の剛性をビード60によって高めることができるため、バーリング部50に隣接する部位とバーリング部50との境界での応力集中が低減され、構造部品200の疲労耐久性が向上する。
【0042】
本実施形態においても、ビード60によって貫通孔51の周縁部511に形成された凹部512の長さLは、周縁部511の全長L0の0.1倍以上であることが好ましく、0.2倍以上であることがより好ましい。凹部512の長さLは、貫通孔51の周縁部511の全長L0の0.5倍以下であってもよく、0.4倍以下であってもよい。
【0043】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0044】
上記実施形態に係る構造部品100,200は、その全体にわたり、天板30の反対側が開口した開断面を有している。しかしながら、構造部品100,200は、少なくとも一部において閉断面を有していてもよい。例えば、部品本体10において天板30に対向する裏板を設けることにより、部品本体10の一部又は全部を天板30の反対側も閉じた閉断面構造とすることができる。裏板は、部品本体10から取付け部20まで延在していていてもよい。ただし、裏板が取付け部20にまで延在し、且つ裏板に天板30と同様のバーリング部50が形成されている場合、天板30のバーリング部50と裏板のバーリング部50が対向する部分及びその近傍では構造部品の剛性が十分に高くなるため、バーリング部50に隣接する部位で構造部品の剛性を高める必要性が小さくなる。ビード60を貫通孔51の周縁部511に連続させる構成は、少なくともバーリング部50に隣接する部位において天板30の反対側が開口した開断面を有する構造部品に対して適用されることが好ましい。
【0045】
上記実施形態では、天板30に単一のビード60、又は2つのビード60,70が設けられる例について説明した。しかしながら、天板30には3つ以上のビードが設けられていてもよい。
【0046】
上記実施形態に係る構造部品100,200では、アーム12の先端に設けられた取付け部20において、バーリング部50にビード60が連続し、貫通孔51の周縁部511に凹部512が形成されている。しかしながら、構造部品がブッシュの取付け部20を複数含む場合、2以上の取付け部20のバーリング部50に対し、ビード60が連続するように設けられていてもよい。ビード60は、取付け部20ごとに設けられていてもよいし、2以上の取付け部20に対して共通で設けられていてもよい。
【実施例0047】
以下、実施例によって本開示をさらに詳しく説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
本開示の効果を確認するため、上記第1実施形態において説明した形状を有する構造部品100について、市販の構造解析ソフトウェア(LS-DYNA,Livermore Software Technology Corporation製)を用いた解析を実施した。より具体的には、貫通孔51の周縁部511に形成される凹部512の条件を変更しながら自動車の前後方向の荷重の入力を想定した構造解析を実施し、構造部品100の取付け部20に生じる応力振幅を評価した。
【0049】
比較のため、
図6に示すように、ビード60が貫通孔51の周縁部511に連続しない構造部品900についても、上記と同様の構造解析を実施した。比較例に係る構造部品900では、部品本体10のビード70がバーリング部50まで延在していない。そのため、
図7に示すように、構造部品900のうちバーリング部50に隣接する部位では、横断面視で天板本体31が全体として平坦になっている。一方、実施例に係る構造部品100では、
図4に示すように、バーリング部50に隣接する部位の横断面視で、天板本体31がビード60によって凹の形状を有している。
【0050】
【0051】
【0052】
表1の応力振幅は、構造部品100,900の取付け部20で発生した最大の応力振幅である。応力振幅における正負の符号は、自動車の制動時及び発進時で構造部品100,900に対して逆向きの荷重が負荷されたことを意味している。すなわち、表1では、前向き及び後ろ向きそれぞれの応力振幅を評価指標として表示している。表1における応力振幅の絶対値が小さいほど応力集中が生じにくく、構造部品が疲労耐久性に優れることを意味する。
図8は、比較例1及び実施例1~5に関し、凹部512の寸法条件:L/L
0と応力振幅の絶対値との関係を示すグラフである。
【0053】
表1及び
図8に示すように、ビード60を貫通孔51の周縁部511に連続させた各実施例では、ビード60が貫通孔51の周縁部511に連続しない比較例と比べて応力振幅が小さかった。各実施例では、L/L
0が0.10以上確保されており、比較例に対して応力振幅が有意に低減した。特に、L/L
0が0.20以上である実施例2~8の場合、比較例に対して応力振幅が顕著に低減した。これらの実施例の応力振幅は、比較例に対して最大で40%程度低減した。
【0054】
本解析より、天板30に設けられるビード60を貫通孔51の周縁部511に連続させ、周縁部511に凹部512を形成することで、バーリング部50近傍の構造部品の剛性が向上して応力集中が低減され、構造部品の疲労耐久性が向上することが確認された。