(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065851
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】操作装置および台車
(51)【国際特許分類】
G05G 5/04 20060101AFI20240508BHJP
G05G 25/00 20060101ALI20240508BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G05G5/04 Z
G05G5/04 A
G05G5/04 B
G05G25/00 Z
B62B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174918
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3D050
3J070
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD01
3D050KK14
3J070AA03
3J070AA13
3J070BA10
3J070BA51
3J070CB02
3J070CB37
3J070CC12
3J070CC45
3J070CD13
3J070CD15
3J070DA14
3J070EA12
(57)【要約】
【課題】操作者に対して操作している実感を与えられる操作装置を提供する。
【解決手段】操作装置(10)は、操作対象を移動させるために操作者が行った操作を受け付ける。操作装置は、操作部(11)と、第1部材(14、15)と、第2部材(120)と、力覚センサ(12)とを備える。操作部は、傾動操作および回転操作の一方または両方が可能である。第1部材は、操作部に機械的に連結され、操作部の操作量(θ)に応じて変位する。第2部材は、第1部材を所定の停止位置で停止させる。力覚センサは、第2部材が第1部材を停止させているときに、第2部材に加わる力またはモーメントを検出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象を移動させるために操作者が行った操作を受け付ける操作装置であって、
傾動操作および回転操作の一方または両方が可能な操作部と、
前記操作部に機械的に連結され、前記操作部の操作量に応じて変位する第1部材と、
前記第1部材を所定の停止位置で停止させる第2部材と、
前記第2部材が前記第1部材を停止させているときに、前記第2部材に加わる力またはモーメントを検出する力覚センサと、
を備える操作装置。
【請求項2】
前記第1部材は、ピニオンギアと、前記ピニオンギアと噛み合うラックギアと、第1端が前記ラックギアに回転可能に連結されるカム部と、を含み、
前記操作部の傾動角に応じて前記ピニオンギアが回転することにより前記ラックギアが変位し、前記ラックギアの変位に応じて前記カム部が傾動し、
前記操作部の前記傾動角が所定角度に達すると、前記第1端と異なる前記カム部の第2端が前記第2部材に当接し、前記ラックギアの変位を停止させ、
前記力覚センサは、前記ラックギアの変位を停止させているときに、前記カム部の前記第2端から前記第2部材に加わるモーメントを検出する、請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記ラックギアを前記傾動角の所定の初期値に対応する位置に押し戻す方向に前記カム部を付勢する第1付勢部を更に備える、請求項2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記所定角度は、5度以上15度以下である、請求項2に記載の操作装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第2部材の上に設置され、前記操作部の回転角に応じて回転する回転部を含み、
前記第2部材は、前記回転部が設置された面から停止部が突出し、
前記操作部の前記回転角が所定角度に達すると、前記回転部が前記停止部に当接し、前記回転部の回転を停止させ、
前記力覚センサは、前記停止部が前記回転部の回転を停止させているときに、前記停止部に加わるモーメントを検出する、請求項1に記載の操作装置。
【請求項6】
前記回転部と前記停止部との間に設けられ、前記操作部の回転角を初期値に戻す方向に前記回転部を付勢する第2付勢部を更に備え、
前記回転部および前記停止部は、前記回転部が前記停止部に当接しているときに前記第2付勢部を収容する凹部を有する、請求項5に記載の操作装置。
【請求項7】
前記所定角度は、15度以上25度以下である、請求項5に記載の操作装置。
【請求項8】
前記操作部は、L字形またはT字形のハンドルである、請求項1に記載の操作装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の操作装置と、
載置台と、
駆動部を有し、前記駆動部から供給された駆動力により走行する走行部と、
1または複数のプロセッサを有する制御装置と、を備え、
前記1または複数のプロセッサは、前記力覚センサにより検出された力またはモーメントに応じて前記走行部を制御する処理を実行する台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置および台車に関する。
【背景技術】
【0002】
力覚センサと一体になった操作レバーにより操作されるパワーアシスト機能付き作業台車が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、力覚センサを用いた操作装置では、操作力を起歪体で検知する構造上、操作中にハンドルがほとんど動くことがない。そのため、操作者が操作している実感を得難いという問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、操作者に対して操作している実感を与えられる操作装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る操作装置は、操作対象を移動させるために操作者が行った操作を受け付ける。操作装置は、操作部と、第1部材と、第2部材と、力覚センサとを備える。操作部は、傾動操作および回転操作の一方または両方が可能である。第1部材は、操作部に機械的に連結され、操作部の操作量に応じて変位する。第2部材は、第1部材を所定の停止位置で停止させる。力覚センサは、第2部材が第1部材を停止させているときに、第2部材に加わる力またはモーメントを検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、操作者に対して操作している実感を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る台車の一構成例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る台車のシステム構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る操作装置の内部構成を示す側面図である。
【
図4】
図3のラックアンドピニオンの周辺を拡大した斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る操作装置の内部構成を示す側面図であり、操作部が前方に傾動した状態を示す。
【
図6】操作部の傾動角を初期値に戻すための付勢部材の一例を示す。
【
図7】本発明の一実施形態に係る操作装置の内部構成を示す背面図である。
【
図9】
図8の断面図から回転部を時計回りに回転させた状態を示す。
【
図10】操作部の回転角を初期値に戻すための付勢部材の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔本開示の実施形態の概要〕
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0010】
(条項1) 操作対象を移動させるために操作者が行った操作を受け付ける操作装置であって、傾動操作および回転操作の一方または両方が可能な操作部と、前記操作部に機械的に連結され、前記操作部の操作量に応じて変位する第1部材と、前記第1部材を所定の停止位置で停止させる第2部材と、前記第2部材が前記第1部材を停止させているときに、前記第2部材に加わる力またはモーメントを検出する力覚センサと、を備える操作装置。
【0011】
上記構成によれば、操作部が第1部材に機械的に連結されているため、操作内容に対応した操作反力を操作者に感じさせ、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0012】
(条項2) 前記第1部材は、ピニオンギアと、前記ピニオンギアと噛み合うラックギアと、第1端が前記ラックギアに回転可能に連結されるカム部と、を含み、前記操作部の傾動角に応じて前記ピニオンギアが回転することにより前記ラックギアが変位し、前記ラックギアの変位に応じて前記カム部が傾動し、前記操作部の前記傾動角が所定角度に達すると、前記第1端と異なる前記カム部の第2端が前記第2部材に当接し、前記ラックギアの変位を停止させ、前記力覚センサは、前記ラックギアの変位を停止させているときに、前記カム部の前記第2端から前記第2部材に加わるモーメントを検出する、条項1に記載の操作装置。
【0013】
上記構成によれば、操作部がピニオンギア、ラックギア、カム部に機械的に連結されているため、操作内容に対応した操作反力を操作者に感じさせ、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0014】
(条項3) 前記ラックギアを前記傾動角の所定の初期値に対応する位置に押し戻す方向に前記カム部を付勢する第1付勢部を更に備える、条項2に記載の操作装置。
【0015】
上記構成によれば、操作者が傾動操作を中断したとき、操作部を傾動操作の初期位置に戻すことができる。また、操作角に応じた付勢力を操作者に感じさせることにより、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0016】
(条項4) 前記所定角度は、5度以上15度以下である、条項2または条項3に記載の操作装置。
【0017】
上記構成によれば、操作部を傾けたことを操作者が実感できる角度まで傾動させたときに、力覚センサにより力のモーメントが検出されるため、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0018】
(条項5) 前記第1部材は、前記第2部材の上に設置され、前記操作部の回転角に応じて回転する回転部を含み、前記第2部材は、前記回転部が設置された面から停止部が突出し、前記操作部の前記回転角が所定角度に達すると、前記回転部が前記停止部に当接し、前記回転部の回転を停止させ、前記力覚センサは、前記停止部が前記回転部の回転を停止させているときに、前記停止部に加わるモーメントを検出する、条項1から条項4のいずれか1項に記載の操作装置。
【0019】
上記構成によれば、操作部が回転部、停止部に機械的に連結されているため、操作内容に対応した操作反力を操作者に感じさせ、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0020】
(条項6) 前記回転部と前記停止部との間に設けられ、前記操作部の回転角を初期値に戻す方向に前記回転部を付勢する第2付勢部を更に備え、前記回転部および前記停止部は、前記回転部が前記停止部に当接しているときに前記付勢部を収容する凹部を有する、条項5に記載の操作装置。
【0021】
上記構成によれば、操作者が回転操作を中断したとき、操作部を回転操作の初期位置に戻すことができる。また、回転角に応じた付勢力を操作者に感じさせることにより、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0022】
(条項7) 前記所定角度は、15度以上25度以下である、条項5または条項6に記載の操作装置。
【0023】
上記構成によれば、操作部を回転させたことを操作者が実感できる角度まで回転させたときに、力覚センサにより力のモーメントが検出されるため、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0024】
(条項8) 前記操作部は、L字形またはT字形のハンドルである、条項1から条項7のいずれか1項に記載の操作装置。
【0025】
上記構成によれば、操作者は、操作部を用いて傾動操作および回転操作の両方を容易に実施することができる。
【0026】
(条項9) 条項1から8のいずれか一項に記載の操作装置と、載置台と、駆動部を有し、前記駆動部から供給された駆動力により走行する走行部と、1または複数のプロセッサを有する制御装置と、を備え、前記1または複数のプロセッサは、前記力覚センサにより検出された力またはモーメントに応じて前記走行部を制御する処理を実行する台車。
【0027】
力覚センサを用いた操作装置を備える台車では、力の検知を起歪体の歪み量等で検知する構造上、操作中に操作部がほとんど動くことがない。そのため、操作者は操作している実感を得られず、操作に馴染み難かった。上記構成によれば、操作内容に対応した操作反力を操作者に感じさせ、操作者に操作している実感を与えることができる。
【0028】
(台車の構成)
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る台車の一構成例を示す図である。本発明の一実施形態に係る台車1は、操作装置10と、載置台20と、走行部30と、制御装置40とを有する。以下、
図1の矢印で示されるように、台車1の上下方向、前後方向、及び左右方向を定義する。
【0029】
操作装置10は、本発明の一実施形態に係る操作装置の一例である。載置台20の上面には、操作装置10の操作者と、搬送対象とを載せることができる。操作装置10は、操作部11を有し、台車1を移動させるための操作を受け付ける。
【0030】
図1に示す操作部11は、T字形のハンドルである。操作部11は、載置台20に乗った操作者が操作し易い高さに設けられている。操作者は、操作部11を前後方向に傾動させる傾動操作と、ステアリングシャフト110を中心に操作部11を回転させる回転操作とを行うことができる。操作装置10については、後に詳述する。
【0031】
走行部30は、載置台20を下方から支持する。走行部30は、駆動部31を有し、駆動部31から供給された駆動力により車輪32を駆動する。制御装置40は、操作装置10により受け付けられた操作に基づいて走行部30を制御する。
【0032】
図2は、台車1のシステム構成図である。操作装置10は、力覚センサ12を有する。力覚センサ12は、自身に作用する力およびモーメントの方向および大きさを検出する。力覚センサ12は、互いに直交する3軸(X軸,Y軸,Z軸)の各方向に作用する力の大きさ(FX,FY,FZ)と、各軸回りのモーメントの大きさ(MX,MY,MZ)とを検出する6軸力覚センサである。
【0033】
制御装置40は、プロセッサ41と、一次メモリ42と、二次メモリ43と、入出力インタフェース(I/F)44とを有する。プロセッサ41と、一次メモリ42と、二次メモリ43と、入出力インタフェース(I/F)44は、バス45を介して相互に接続されている。
【0034】
二次メモリ43には、台車1の動作を制御する処理をプロセッサ41に実行させるためのプログラムが格納されている。プロセッサ41は、二次メモリ43に記憶されているプログラムを一次メモリ42上に展開する。プロセッサ41は、一次メモリ42上に展開されたプログラムに含まれる命令に従って、台車1の動作を制御する処理を実行する。
【0035】
プロセッサ41として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ41は、「演算装置」と呼ばれることがある。
【0036】
一次メモリ42として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ42は、「主記憶装置」と呼ばれることがある。
【0037】
二次メモリ43として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ43は、「補助記憶装置」と呼ばれることがある。
【0038】
(操作装置の構成と受付可能な操作)
図3は、本発明の一実施形態に係る操作装置10の内部構成を示す側面図である。
図3に示すように、操作装置10は、操作部11と、力覚センサ12と、基台13と、ラックアンドピニオン14と、カム部15とを有する。以下、
図3の矢印で示されるように、力覚センサ12にて検出される力とモーメントの軸方向を定義する。
【0039】
操作部11は、回転軸111を中心にして前後方向に傾動させることができる。
図3に示す操作部11は、ステアリングシャフト110が上下方向に延在する初期位置にある。このとき、操作部11の傾動角θは初期値の0度である。
【0040】
図4は、
図3に示すラックアンドピニオン14の周辺を拡大した斜視図である。ラックアンドピニオン14は、傾動操作に関する第1部材に含まれる。ラックアンドピニオン14は、ピニオンギア141と、ラックギア142とを含む。ピニオンギア141は、基台13に設けられた回転軸111を中心にして操作部11の傾動角θに応じて回転する。ラックギア142は、ピニオンギア141と噛み合い、前後方向に水平移動することができる。ラックギア142は、操作部11が前方へ傾動した場合は後方へ移動し、操作部11が後方へ傾動した場合は前方へ移動する。
【0041】
図3に示すとおり、ラックギア142の前端143にはロッドエンドベアリング145が設けられている。また、ラックギア142の後端144にはロッドエンドベアリング146が設けられている。
【0042】
ラックギア142の前端143および後端144には、それぞれカム部15が配置されている。カム部15は、傾動操作に関する第1部材に含まれる。以下では、ラックギア142の前端143側のカム部15をカム部15aと称し、ラックギア142の後端144側のカム部15をカム部15bと呼ぶことがある。
【0043】
カム部15aは、第1端151が回転可能に前端143側のロッドエンドベアリング145に連結されている。一方、カム部15bは、第1端151が回転可能に後端144側のロッドエンドベアリング146に連結されている。
【0044】
カム部15aおよび15bは、第1端151と対向する位置に第2端152を有する。カム部15aおよび15bの第2端152は、回転軸132を中心に回転可能となるように、基台13のブラケット131に連結されている。
【0045】
カム部15aおよび15bは、ラックギア142の水平移動に応じて傾動する。ラックギア142が前方へ水平移動した場合、カム部15aおよび15bは前方へ傾動する。ラックギア142が後方へ水平移動した場合、カム部15aおよび15bは後方へ傾動する。
【0046】
力覚センサ12は、基台13の下方に設けられている。力覚センサ12と基台13との間には、回転台120が設けられている。回転台120は、傾動操作に関する第2部材である。回転台120は、カム部15aおよび15bの第2端152に対向する。操作部11の傾動角θが初期値(0度)であるとき、カム部15aおよび15bの第2端152は、回転台120に当接していない。
【0047】
図5は、操作装置10の内部構成を示す側面図であり、操作部11が所定角度前方へ傾動した状態を示す。操作部11が前方へ傾動したため、ラックギア142が後方へ水平移動し、カム部15aおよび15bが
図3よりも後方へ傾動している。このとき、カム部15aの第2端152の先端部153が回転台120に当接する。力覚センサ12は、カム部15aの第2端152の先端部153から回転台120へ加わる力FZおよびモーメントMXを検出する。カム部15aの第2端152の先端部153が回転台120に当接すると、カム部15aがラックギア142の後方への水平移動を停止させる。なお、操作者が操作部11に対して、傾動操作と、回転操作とを同時に行った場合は、力覚センサ12は、力FZおよびモーメントMXの他にモーメントMYを更に検出することにしてもよい。
【0048】
一方、図示を省略するが、操作部11が所定角度後方へ傾動した場合は、ラックギア142が前方へ水平移動し、カム部15aおよび15bが
図3よりも前方へ傾動する。このとき、カム部15bの第2端152の先端部153が回転台120に当接する。力覚センサ12は、カム部15bの第2端152の先端部153から回転台120へ加わる力FZおよびモーメントMXを検出する。カム部15bの第2端152の先端部153が回転台120に当接すると、カム部15bがラックギア142の前方への水平移動を停止させる。
【0049】
図2に示す制御装置40は、カム部15aの第2端152の先端部153から加わるモーメントMXが検出されると、そのモーメントMXの大きさに応じて走行部30を制御して台車1を前進させる。他方で、カム部15bの第2端152の先端部153から加わるモーメントMXが検出されると、そのモーメントMXの大きさに応じて走行部30を制御して台車1を後進させる。
【0050】
操作部11が
図3に示す初期位置に戻ると、すなわち、操作部11の傾動角θが初期値に戻ると、ラックギア142の位置が初期位置に戻る。このとき、カム部15aおよび15bも、初期位置に戻り、カム部15aおよび15bの第2端152が回転台120に当接していない状態となる。力覚センサ12が検出するモーメントMXの大きさが初期値に戻るため、
図2に示す制御装置40は、走行部30を制御して台車1を停止させる。
【0051】
図6は、操作部11の傾動角θを初期値に戻すための第1付勢部の一例を示す。
図6に示すように、基台13のブラケット131には、その中央上部に突起部133を2つ有し、カム部15には第1端151と第2端152との間に突起部154を有する。ブラケット131の突起部133とカム部15の突起部154との間には引っ張りバネ134が設けられており、カム部15がブラケット131の突起部133に向けて付勢されている。突起部133は、ブラケット131を基台13に固定するための締結部でもよく、突起部133の一端がその締結部で共締めされることにしてもよい。なお、
図6では、カム部15bと、その突起部154に設けられる引っ張りバネ134の図示が省略されている。
【0052】
例えば、操作者が
図5に示す位置まで操作部11を前方へ傾動させると、ラックギア152が後方に水平移動し、カム部15bが後方へ傾動し、カム部15bとブラケット131との間の不図示の引っ張りバネ134が伸びる。引っ張りバネ134は、その伸長量に応じた付勢力により、カム部15bをブラケット131の突起部133に向けて付勢する。操作者が操作部11から手を離すと、引っ張りバネ134の付勢力によりカム部15bが前方へ傾動し、ラックギア142を前方へ押し戻す。このラックギア142の水平移動は、ピニオンギア141により操作部11に伝わり、操作部11が後方へ傾動し、傾動角θが0度に戻り、
図3に示す初期位置に復帰する。
【0053】
同様に、操作者が操作部11を後方へ傾動させると、ラックギア152が前方に水平移動し、カム部15aが前方へ傾動し、カム部15aとブラケット131との間の引っ張りバネ134が伸びる。引っ張りバネ134は、その伸長量に応じた付勢力により、カム部15aをブラケット131の突起部133に向けて付勢する。操作者が操作部11から手を離すと、引っ張りバネ134の付勢力によりカム部15aが後方へ傾動し、ラックギア142を後方へ押し戻す。このラックギア142の水平移動は、ピニオンギア141により操作部11に伝わり、操作部11が前方へ傾動し、傾動角θが0度に戻り、
図3に示す初期位置に復帰する。
【0054】
カム部15aまたはカム部15bがラックギア142の水平移動を停止させるときの操作部11の傾動角θの大きさは、約10度である。より詳細には、カム部15aまたはカム部15bがラックギア142の水平移動を停止させるときの操作部11の傾動角θの大きさは、5度以上15度以下の値であり、8度以上12度以下の値であることが好ましい。カム部15の第2端152の形状は、操作部11の傾動角θの絶対値の増加に応じて力覚センサ12が検出するモーメントMXがリニアに増加するように最適化すると、操作者に違和を感じさせない。
【0055】
操作部11、ラックアンドピニオン14およびカム部15は、少なくとも作業者の操作により弾性変形しない程度の剛性を有することが好ましい。操作部11、ラックアンドピニオン14およびカム部15が人力では弾性変形しないことにより、操作部11を傾動させるために加えられた力と、力覚センサ12が検出する力およびモーメントとの間の相関関係がリニアなものとなる。
【0056】
操作部11は、ここまでに説明した傾動操作の他に回転操作を受け付けることができる。
図7から
図10を用いて操作部11の回転操作について説明する。
【0057】
図7は、操作装置10の内部構成を示す背面図である。
図8は、
図7のA-A断面図である。
図8に示すとおり、回転台120は、円筒形状を有する。回転台120の中心近傍には、回転操作の回転軸160を有する。回転軸160には、回転台120の上に設置された回転部161が回転可能に連結されている。回転部161の端部は、ブラケット131に連結されている。
【0058】
回転部161は、回転操作に関する第1部材である。操作者がステアリングシャフト110を中心にして操作部11を回転させると、基台13と、ラックアンドピニオン14と、カム部15とが回転軸160を中心にして操作部11と同一の方向に回転する。回転部161は
図8に示す位置が初期位置である。回転部161が初期位置にあるとき、操作部11の回転角φは初期値の0度である。
【0059】
回転台120は、回転部161が設置されている面から停止部162が突出している。停止部162は、回転操作に関する第2部材である。停止部162は、回転台120に固定されている。停止部162は、第1突出部162aと第2突出部162bとを有する。操作者が操作部11を初期位置から時計回りに回転角φ回転させると回転部161が時計回りに回転角φ回転する。操作者が操作部11を初期位置から反時計回りに回転角φ回転させると回転部161が反時計回りに回転角φだけ回転する。
【0060】
操作部11が初期位置から時計回りに所定角度回転すると、
図9に示すように回転部161が第1突出部162aに当接し、回転部161の回転を停止させる。また、操作部11が初期位置から反時計回りに所定角度回転すると、回転部161が第2突出部162bに当接し、回転部161の回転を停止させる。
【0061】
力覚センサ12は、回転部161が第1突出部162aまたは第2突出部162bに当接したとき、回転台120の停止部162を介して回転部161から加わるモーメントMZを検出する。
【0062】
図2に示す制御装置40は、力覚センサ12が検出したモーメントMZに基づいて、操作部11の回転方向を判断し、そのモーメントMZの大きさに応じて走行部30を制御して台車1の進行方向を変化させる。力覚センサ12により回転部161から第1突出部162aに加わるモーメントが検出された場合、制御装置40は、台車1の進行方向を右に曲げるように走行部30を制御する。力覚センサ12により回転部161から第2突出部162bに加わるモーメントが検出された場合、制御装置40は、台車1の進行方向を左に曲げるよう走行部30を制御する。
【0063】
図10は、操作部11の回転角φを初期値に戻すための第2付勢部の一例を示す。
図10に示すように、回転部161は、両側面164に凹部165を有し、凹部165の底部に圧縮バネ163の一端が固定されている。また、停止部162は、回転部161の両側面164に対向する面166に凹部167を有し、凹部167の底部に圧縮バネ163の他端が固定されている。操作部11の回転操作により回転部161が回転し、停止部162に当接するとき、凹部165と凹部167との隙間に圧縮された圧縮バネ163が収容される。
【0064】
圧縮バネ163は、操作部11の回転角φを初期値に戻す方向に回転部161を付勢する。例えば、操作部11を初期位置から時計回りに回転する回転操作が行われている場合は、圧縮バネ163は、操作部11を反時計回りに回転させる方向に回転部161を付勢する。一方、操作部11を初期位置から反時計回りに回転する回転操作が行われている場合は、圧縮バネ163は、操作部11を時計回りに回転させる方向に回転部161を付勢する。操作者が操作部11から手を離すと、圧縮バネ163の付勢力により回転部161が回転し、
図8に示す初期位置に戻る。
【0065】
第1突出部162aまたは第2突出部162bが回転部161の回転を停止させるときの操作部11の回転角φは約20度である。より詳細には、第1突出部162aまたは第2突出部162bが回転部161の回転を停止させるときの操作部11の回転角φは15度以上25度以下の値であり、18度以上22度以下の値であることが好ましい。
【0066】
〔変形例〕
上記実施形態では、操作装置10を台車1に適用した例を示したが、操作装置10の操作対象は台車だけに限定されない。例えば、自動車等の移動体の操縦をシミュレートするゲーム装置、ドローン等の操作を行うための操作装置にも適用することができる。
【0067】
上記実施形態に係る操作装置10では、操作部11は、T字形のハンドルとしたが、これだけに限定されない。例えば、操作部11は、L字形のハンドルとしてもよい。
【0068】
上記実施形態に係る操作装置10は、操作部11を前後方向に傾動させる傾動操作と、ステアリングシャフト110を中心に操作部11を回転させる回転操作とを受け付けることができるものとしたが、これだけに限定されない。例えば、操作装置は、傾動操作および回転操作のいずれか一方のみを受け付けることができるものとしてもよいし、傾動操作および回転操作以外の操作を更に受け付けることにしてもよい。
【0069】
上記実施形態に係る操作装置10では、操作部11が回転軸111を中心にして前後方向に傾動し、ピニオンギア141が同じ回転軸111を中心にして回転することにした。しかし、操作部11の傾動と、ピニオンギア141の回転との回転軸は、同じでなくてもよい。例えば、操作部11の傾動の回転軸111と、ピニオンギア141の回転の回転軸との間に1つ以上の変速ギアを介在させてもよい。
【0070】
上記実施形態に係る操作装置10では、操作部11がステアリングシャフト110を中心にして回転角φ回転すると、回転部161が時計回りに回転角φ回転することにした。しかし、操作部11が回転する角度と、回転部161が回転する角度とは同じでなくてもよい。例えば、操作部11の回転が1つ以上の変速ギア等を介在させて回転部161に伝わることにしてもよい。
【0071】
上記実施形態に係る操作装置10では、ブラケット131の突起部133とカム部15の突起部154との間に引っ張りバネ134を設け、カム部15がブラケット131の突起部133に向けて付勢されることにした。しかし、ブラケット131の突起部133とカム部15の突起部154との間に設ける付勢部は、引っ張りバネ134だけに限定されない。例えば、ブラケット131の突起部133とカム部15の突起部154との間に設ける付勢部を、ゴム等の弾性を有する高分子材料等で構成してもよい。
【0072】
また、上記実施形態に係る操作装置10では、回転部161の凹部165と、停止部162の凹部167との間に圧縮バネ163とを設けることにした。しかし、回転部161の凹部165と、停止部162の凹部167との間に設ける付勢部は、圧縮バネ163だけに限定されない。例えば、回転部161の凹部165と、停止部162の凹部167との間に設ける付勢部を、ゴム等の弾性を有する高分子材料等で構成してもよい。
【0073】
上記実施形態に係る台車1では、駆動部31から供給された駆動力により車輪32を駆動したが、駆動部31から供給された駆動力により駆動される対象は車輪32に限定されない。例えば、駆動部31から供給された駆動力により無限軌道を駆動することにしてもよい。
【0074】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 台車
10 操作装置
11 操作部
12 力覚センサ
13 基台
14 ラックアンドピニオン
15、15a、15b カム部
20 載置台
30 走行部
31 駆動部
32 車輪
40 制御装置
41 プロセッサ
120 回転台
134 引っ張りバネ
141 ピニオンギア
142 ラックギア
161 回転部
162 停止部
163 圧縮バネ
162a 第1突出部
162b 第2突出部
θ 傾動角
φ 回転角