(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065855
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】触覚センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/1623 20200101AFI20240508BHJP
【FI】
G01L5/1623
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174924
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 隆憲
(72)【発明者】
【氏名】笹川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 和弘
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB07
2F051BA07
2F051DA03
(57)【要約】
【課題】基材間の固定強度を確保しつつ、検出精度も高い触覚センサを提供する。
【解決手段】第1基材と、第1基材の一方面に設けられ、第1基材側から順に、第1電極と、導電性を有する第1樹脂層とを有する第1積層体と、第1基材の一方面と対向する第2基材と、第2基材の第1基材と対向する面の第1積層体と対向する位置に設けられ、第2基材側から順に、第2電極と、導電性を有する第2樹脂層とを有する第2積層体と、第1積層体及び第2積層体を取り囲むように設けられ、第1基材及び第2基材の対向する面同士を接着して固定する固定層と、を備え、第1樹脂層及び第2樹脂層の重なり面積に応じた第1電極及び第2電極間の電気抵抗値に基づいて、所定方向のずり力を検出可能であり、第2基材における固定層の内側、かつ、第2積層体と離間した位置に、所定方向への第2基材の移動を緩和するスリットが設けられる、触覚センサ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、
前記第1基材の一方面に設けられ、前記第1基材側から順に、第1電極と、導電性を有する第1樹脂層とを有する第1積層体と、
前記第1基材の前記一方面と対向する第2基材と、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面の前記第1積層体と対向する位置に設けられ、前記第2基材側から順に、第2電極と、導電性を有する第2樹脂層とを有する第2積層体と、
前記第1積層体及び前記第2積層体を取り囲むように設けられ、前記第1基材及び前記第2基材の対向する面同士を接着して固定する固定層と、を備え、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の重なり面積に応じた前記第1電極及び前記第2電極間の電気抵抗値に基づいて、所定方向のずり力を検出可能であり、
前記第2基材における前記固定層の内側、かつ、前記第2積層体と離間した位置に、前記所定方向への前記第2基材の移動を緩和するスリットが設けられる、触覚センサ。
【請求項2】
2つの前記第1積層体と、2つの前記第2積層体とを備え、
前記第1積層体の一方及びこれに対向する前記第2積層体の一方を用いて第1方向のずり力を検出可能であり、前記第1積層体の他方及びこれに対向する前記第2積層体の他方を用いて前記第1方向と直交する第2方向のずり力を検出可能であり、
前記第2基材には、2つの前記第2積層体を取り囲む矩形状の領域の各辺に沿って4本の前記スリットが設けられる、請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項3】
2つの前記第1積層体と、2つの前記第2積層体とを備え、
前記第1積層体の一方及びこれに対向する前記第2積層体の一方を用いて第1方向のずり力を検出可能であり、前記第1積層体の他方及びこれに対向する前記第2積層体の他方を用いて前記第1方向と直交する第2方向のずり力を検出可能であり、
前記第2基材には、前記第2積層体の一方を挟んで前記第2方向に延びる一対のスリットと、前記第2積層体の他方を挟んで前記第1方向に延びる一対のスリットとが設けられる、請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項4】
前記第1基材の一方面に設けられ、前記第1基材側から順に、第3電極と、導電性を有する第3樹脂層とを有する第3積層体と、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面の前記第3積層体と対向する位置に設けられ、前記第2基材側から順に、第4電極と、導電性を有する第4樹脂層とを有する第4積層体とを更に備え、
前記第3樹脂層及び前記第4樹脂層の重なり面積に応じた前記第3電極及び前記第4電極間の電気抵抗値に基づいて、圧力を検出可能である、請求項1~3のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項5】
前記触覚センサに外力が加えられていない状態における前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との接触率が、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とが完全接触した場合の接触率の0.01~0.1倍である、請求項4に記載の触覚センサ。
【請求項6】
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の縦弾性係数が前記第1基材及び前記第2基材よりも高い、請求項4に記載の触覚センサ。
【請求項7】
前記固定層の粘着力が5N/25mm以上であり、せん断接着強度が80N/cm2である、請求項4に記載の触覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力やずり力を検知する触覚センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力やせん断応力を検出する触覚センサとして、対向させた2つの電極の間に導電体層や樹脂層を挟み込んだ構造を有するものが知られている。この触覚センサは、外力によって導電体層や樹脂層が変形することによって電極間の物理量を変化させ、電極間の物理量変化に基づいて圧力やずり力(せん断応力)を検出することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、対向する2枚の基板間に、一対の導電体層と、導電体層のそれぞれを覆う一対の抵抗体層とを設け、力の入力で導電層が変形することにより電極間抵抗値が変化することを利用した抵抗式触覚センサが記載されている。
れている。
【0004】
また、特許文献2には、2枚の矩形の電極の間に、導電性及び可撓性を有する磁性ゴム体を取り付け、磁性ゴム体の変形に応じて変化する電極間の電流量変化に基づいて、接触面に平行な方向(ずり方向)に加えられたずり力を検出する触覚センサが記載されている。
【0005】
抵抗値変化を検出する場合、対向した2つの電極間に導電性を持つゴムを挟む、または導電層に直接電極を印刷する、あるいは、電極に導電層を印刷したものを二つ作りそれらの導電層同士を重ね合せることで、検知層を構成する。
【0006】
しかし、電極間に導電性ゴムを挟む方式は導電性ゴムと電極の接触状態がセンサ検出時のノイズとなりうる。また、導電層に直接電極を印刷する方式は、原理上導電層が変形することで信号検出を行うが、センサの小型化を目的として導電層を薄くした場合、加えられた外力に対して十分な変形ができず、検出精度が劣る。
【0007】
そのため、電極に導電層を印刷したものを二つ作りそれらの導電層同士を重ね合せる方法が着目されている。この構成の場合、製造が簡単であり、さらに、外力により対向する電極の距離が変化することで抵抗値が変化するため検出しやすいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3664622号公報
【特許文献2】特開2013-232293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような触覚センサは、ずり力が入力されると対向する電極の重なり面積変化し、これに伴い電極間の電圧も変化する。そのため、対向する電極の相対的なずれ量からずり力を求めることができる。
【0010】
また、このような触覚センサは、電極及び導電層を積層した2枚の基材を、基材間に形成された固定層を介して固定することで構成される。ずり力を検出する場合、対向する電極が入力されるずり力に応じて相対的にずれることが可能な構成である必要があるが、固定層の固定強度が強すぎると2枚の基材間のずれが阻害されてずり力の検出精度が低下する。一方、固定強度が弱すぎると使用時に固定層が破損し、触覚センサが壊れる恐れがある。
【0011】
それ故に、本願発明は、基材間の固定強度を確保しつつ、検出精度も高い触覚センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1基材と、第1基材の一方面に設けられ、第1基材側から順に、第1電極と、導電性を有する第1樹脂層とを有する第1積層体と、第1基材の一方面と対向する第2基材と、第2基材の第1基材と対向する面の第1積層体と対向する位置に設けられ、第2基材側から順に、第2電極と、導電性を有する第2樹脂層とを有する第2積層体と、第1積層体及び第2積層体を取り囲むように設けられ、第1基材及び第2基材の対向する面同士を接着して固定する固定層と、を備え、第1樹脂層及び第2樹脂層の重なり面積に応じた第1電極及び第2電極間の電気抵抗値に基づいて、所定方向のずり力を検出可能であり、第2基材における固定層の内側、かつ、第2積層体と離間した位置に、所定方向への第2基材の移動を緩和するスリットが設けられる、触覚センサ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基材間の固定強度を確保しつつ、検出精度も高い触覚センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る触覚センサの概略構成を示す模式図。
【
図4】触覚センサにおける検知部O及び検知部Y近傍の部分断面図。
【
図6】圧力測定時における触覚センサの積層体近傍の部分断面図。
【
図7】ずり力測定時における触覚センサの積層体近傍の部分断面図。
【
図8】ずり力が入力された状態の触覚センサを示す図。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る触覚センサの概略構成を示す模式図。
【
図11】ずり力が入力された状態の触覚センサを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。電極の形状や数は一例であり、本説明の具体例に限定されるものではない。また、説明の簡単化のため、実寸法と異なる比で図を描いているが、本発明に係る技術の主旨を損なうものではない。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る触覚センサの概略構成を示す模式図であり、より詳細には、
図1(a)は、触覚センサの平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すA-A’線に沿う位置の断面図に相当する図 である。
図1(a)において、便宜上、電極及び配線(リード)は透過して記載する。
図2は、触覚センサの第1基材側の部分模式図であり、より詳細には、
図2(a)は、触覚センサの第1基材側の部分平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すB-B’線に沿う位置の断面図に相当する図 である。
図3は、触覚センサの第2基材側の部分模式図であり、より詳細には、
図3(a)は、触覚センサの第2基材側の部分平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すC-C’線に沿う位置の断面図に相当する図 である。
【0017】
触覚センサ100は、基材に加えられた圧力及びずり力を検出可能なセンサであり、第1基材1と、第1基材1に対向し、スリット16を備える第2基材2と、第1基材1及び第2基材2の間に設けられる第1積層体11、第2積層体12、第3積層体13、及び第4積層体14と、第1基材1及び第2基材2を固定する固定層15とを備える。圧力とは、センサ面に対して垂直方向の力成分を示し、ずり力とは基材の面方向の力成分を示す。
【0018】
(積層体)
第1積層体11は、第1基材1の一方面(第2基材2と対向する面)上に設けられており、第1基材1側から順に第1電極11aと、第1電極11a上に積層された第1樹脂層11bとを有する。第2積層体12は、第2基材2の一方面(第1基材1と対向する面)上に設けられており、第2基材2側から順に第2電極12aと、第2電極上に積層された第2樹脂層12bとを有する。第3積層体13は、第1基材1の一方面(第2基材2と対向する面)上に設けられており、第1基材1側から順に第3電極13aと、第3電極13a上に積層された第3樹脂層13bとを有する。第4積層体14は、第2基材2の一方面(第1基材1と対向する面)上に設けられており、第2基材2側から順に第4電極14aと、第4電極上に積層された第4樹脂層14bとを有する。第1積層体11及び第2積層体12は、第1基材1及び第2基材2の間においてそれぞれが互いに対向している。また、第3積層体13及び第4積層体14は、第1基材1及び第2基材2の間においてそれぞれが互いに対向している。以降において、上下で対となる積層体を纏めて検知部と呼ぶ。
【0019】
積層体は、1つの基材において1つ以上設けられていればよいが、3つ設けてもよい。すなわち、触覚センサ100において検知部は1つ以上設けられていればよいが、3つ設けてもよい。3つの場合は、圧力と二軸方向のずり力とを検出可能となる。具体的には、
図1に示すように、1つの検知部O(第3積層体13及び第4積層体14)を原点としたXY座標系において、X軸上に検知部X(第1積層体11及び第2積層体12)、Y軸上に検知部Y(第1積層体11及び第2積層体12)をそれぞれ配置する。これにより、検知部Xを用いて第1方向(
図1におけるX軸方向)のずり力の検出が可能であり、検知部Yを用いて第1方向と直交する第2方向(
図1におけるY軸方向)のずり力の検出が可能となる。また、検知部Oにより、圧力が検出可能となる。具体的には、第1基材1上の第3積層体13と第2基材2上の第4積層体14との接触状態が触覚センサ100に加えられる外力に応じて変化するため、第3電極13aと第4電極14aとの間の抵抗値変化から触覚センサ100に加えられた圧力を算出することができる。また、触覚センサ100にずり力が加えられると、第1基材1上の第1積層体11と第2基材2上の第2積層体12とが接触する接触面積が変化するため、第1電極11aと第2電極12aとの間の抵抗値変化から触覚センサ100に加えられたずり力を算出することができる。なお、検出するずり力の入力方向が1方向に決まっている場合は、積層体は1つでよい。また、積層体を増やすことでより精度よくずり力を測定することが可能になる。例えば、精度向上のために第1、第2方向と直交しない第3方向にさらに積層体を設けてもよい。積層体を増やすことは、測定対象のずり検出方向が完全に特定されている場合でも、測定解像度を上げたい場合などに有効である。
【0020】
(電極)
ずり力の検出に寄与する検知部X及び検知部Yにおける、第1電極11a及び第2電極12a(ずり力検出電極)は、長方形の小電極sを2つ並べた形状(コの字形状)を有する。具体的には、X軸方向のずり力の検出が可能な検知部Xの第1電極11aと第2電極12aは、Y軸方向に延びる一対の小電極sと、当該一対の小電極sを電気的に接続する接続部とを有する。各対の小電極sは所定の間隔を空けて平行に配置されている。また、Y軸方向のずり力の検出が可能な検知部Yの第1電極11aと第2電極12aは、X軸方向に延びる一対の小電極sと、当該一対の小電極sを電気的に接続する接続部とを有する。これにより、第1電極11a及び第2電極12aのそれぞれを1つの正方形で形成する場合に比べ、第1電極11a及び第2電極12aが上下でずれた時の面積変化が大きくなり、検出感度を向上させることができる。
【0021】
第1電極11aの小電極sの長辺は、第2電極12aの小電極sの長辺よりも長く形成されており、X軸方向及びY軸方向のいずれにもずり力が入力されていない状態において、第2電極12aの小電極sの長辺方向における両端は、第1電極11aの小電極sの長辺方向における両端よりも内側に位置する。具体的には、検知部Xにおいては、第1電極11aのY軸正方向側の端部が第2電極12aのY軸正方向側の端部よりY軸正方向側に位置し、また、第1電極12aのY軸負方向側の端部が第2電極12aのY軸正負向側の端部よりY軸負方向側に位置する。同様に、検知部Yにおいては、第1電極11aのX軸正方向側の端部が第2電極12aのX軸正方向側の端部よりX軸正方向側に位置し、また、第1電極12aのX軸負方向側の端部が第2電極12aのX軸正負向側の端部よりX軸負方向側に位置する。このように第1電極11aは第2電極12bに対して、検知部XにおいてはY軸方向に、検知部YにおいてはX軸方向にそれぞれマージンを有しており、当該マージン部分が長辺方向(X軸方向あるいはY軸方向)に許容される基材の移動量(ずれ量)以上であることが好ましい。これにより、例えばY軸方向にずり力が入力されて第1電極11aと第2電極12aとがずれた場合でも、検知部Xにおいては、第1電極11aと第2電極12aとの間で重複面積に変化が生じない。そのため、検知部XはX軸方向のずり力のみを検出でき、検知部YはY軸方向のずり力のみを検出できる。
【0022】
また、触覚センサ100を指に貼って使用することを想定した場合、各小電極sが4mm×4mmを超えない大きさにすると小電極sを指の腹に複数配置することができるため好ましい。なお、第1電極11a及び第2電極12aの形状やその大きさは、測定対象の大きさにより自由に選択でき、例えば正方形でもよい。この場合、基材に対する第1電極11a及び第2電極12aの位置合わせが単純化できるため製造難易度を下げることができる。
【0023】
図4は、触覚センサにおける検知部O及び検知部Y近傍の部分断面図である。ずり力検出電極は、ずり力を入力していない状態において、
図4に示すように、検出可能なずり力の方向に対して互いにずれている(一部重複しない)。そして、検知部Oを原点としたXY座標系において、ずり力が正の方向に入力されると対応するずり力検出電極の重複面積が増加し、負の方向に入力されると減少するように配置される。これにより、ずりの方向及びずり力を検出することができる。検知部X及び検知部Yにおけるずり検出電極はいずれも、一方の小電極sの重複面積S1と、他方の小電極sの重複面積S2との合計が、圧力検出電極(第3電極13a及び第4電極14a)の重複面積Sと等しくなる。そのため、圧力を入力した時の圧力検出電極の出力と、ずり力検出電極の出力とが等しくなり、ずり力の入力方向に小電極sがずれて重複面積が変化した時の出力変化を純粋なずり力の変化としてとらえることができる。
【0024】
Y軸方向にずり力が入力されると仮定して検知部Yの電極に着目すると、第2電極12aがY軸方向における正の方向(
図4における右方向)にずれた場合に小電極sの重複面積が増加し、第2電極12aがY軸方向における負の方向(
図4にける左方向)にずれた場合に、小電極sの重複面積が減少する。ずり力が入力されていないときの重複面積を1とすると、重複面積の変化量は、減少方向に最小0.25倍まで、増加方向に最大1.75倍まで許容される。このとき、検知部Xにおいては、第1電極11aのY軸方向の長さが第2電極11aよりも長いため、Y軸方向にずり力が入力された場合、X軸方向のずり力に対応する検知部Xにおける小電極sの重複面積は変化しない。そのため、1つの電極からのみずり力の信号変化を取り出すことができ、検出精度が向上する。なお、X軸方向にずり力が入力された場合の検知部Xの各小電極sの重複面積の増減も同様である。また、ずり力の入力によってずり力検出電極の重複面積が増減するのに対し、圧力検出電極は重複面積が変化しない。
【0025】
圧力検出に寄与する検知部Oにおける第4電極14aは、平面視において第3電極13aよりも大きく形成される。これにより、ずり力の入力によって第1基材1と第2基材2とが相対的にずれた時にも、電極の重複面積の変化はずり力検出電極(第1電極11a及び第2電極12a)のみで起こり、圧力検出電極(第3電極13a及び第4電極14a)の重複面積の変化は起こらない。そのため、ずり力が入力されても圧力検出電極の抵抗値変化が起こらず、ずり力の検出精度が向上する。なお、第3電極13aは、ずり力検出電極の1つの小電極sと同一面積であればよく、例えば、
図2に示すように、小電極sと同一形状(長方形)とすることができる。
【0026】
電極は、数マイクロメートルから数十ナノメートルの貴金属粉末を熱硬化性樹脂に混合したペーストを用いて形成されるのが一般的であるが、カーボンやアルミ、或いは合金やこれらの混合物を用いてもよい。電極の抵抗値は低い方が後述の感圧層による抵抗値の検出が良好となるため、形成後の体積抵抗が5×10-5Ωcm以下となるものが好ましい。このような条件でかつ、コストや耐酸化性を考慮すると銀ペーストが好適である。また、電極は、スクリーン印刷やグラビアオフセット印刷など公知の印刷方法を用いて形成することができる。また、めっき、スパッタリングされた膜をエッチングして形成してもかまわない。また図示しないが、電極の形成のために、基材上に位置合わせ用のマークを付してもよい。マークの形状や大きさは特に限定されない。
【0027】
電極には配線(リード)が接続されており、リードの端部から信号を取り出す(図においてリード端部は図示しない)。リードの形成される経路は、リード同士が途中で交わらない限りどのような引き回しでも許容されるが、触覚センサ100の小型化を考慮すると、基材の端部の一箇所に集約することが好ましい。また、図示しないが、リードを製造工程中及び使用中のキズや湿気から保護するために絶縁材料を塗布して保護してもよい。
【0028】
電極は、
図1~4に示すように、中央部が盛り上がった形状に形成しても良い。この場合、各電極上の樹脂層も、電極の表面に沿って中央が盛り上がった形状に形成されるが、図においては簡略化して平坦面として記載する。なお、中央が盛り上がったような形状とすることで上下電極を対向させた状態で上下の樹脂層同士の接触がとりやすくなる。
【0029】
(樹脂層)
第1樹脂層11b、第2樹脂層12b、第3樹脂層13b、及び第4樹脂層14bは、検知層としての役割を果たすものである。触覚センサ100は対向電極間の抵抗値変化を検出する必要があるため、樹脂層には導電性を持つ材料が選択される。
【0030】
樹脂層には、例えば、0.05Ωcm~1000Ωcm、より好ましくは5Ωcm~500Ωcmの抵抗率を有する材料を用いることができる。抵抗率が0.05Ωcm未満の場合、電極と電気信号的に区別がつきづらく信号変化としてとらえることが難しい。抵抗率が1000Ωcmを超える場合、検出信号にノイズが載りやすくこちらも信号変化をとらえることが難しくなる。材料としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子や、グラファイトやカーボンナノチューブを用いたカーボンペースト及びこれらにメジウムなどの調整剤を混ぜて抵抗率を調整したものを用いることができる。
【0031】
第1樹脂層11b、第2樹脂層12b、第3樹脂層13b、及び第4樹脂層14bは、第1電極11a、第2電極12a、第3電極13a、第4電極14aのそれぞれを完全に覆うように、かつ、同一基板に形成された他の電極を覆う樹脂層と離間するように形成される。同一基板上の樹脂層同士が接触すると、ノイズが発生し、検出精度が低下するため好ましくない。第1樹脂層11b及び第2樹脂層12bは、同じ大きさで形成される。これにより、第1基材1と第2基材2とが相対的にずれた時に、一方の基板上の電極が他方の基板の電極上に形成された樹脂層からはみ出してしまうのを抑制でき、信号検出が安定化する。
【0032】
樹脂層は、スクリーン印刷などの公知の印刷方法やスプレー塗布などの公知の塗工方法を使用して形成できるが、各電極付近にのみ選択的に形成するためには、一度の印刷により形成できる印刷法を採用するのが望ましい。
【0033】
樹脂層は、図においては簡略化して平坦面として記載しているが、実際は電極の表面に沿って中央が盛り上がった形状に形成される。中央が盛り上がったような形状とすることで上下電極を対向させた状態で上下の樹脂層同士の接触がとりやすくなる。
【0034】
触覚センサ100にずり力が加えられると、上下で対向する第1樹脂層11bと第2樹脂層12bとが相対的にずれて第1電極11aと第2電極12aとの間の抵抗値も変化するため、触覚センサ100は当該抵抗値変化に基づいてずり力を検出することができる。そのため、第1樹脂層11bと第2樹脂層12bとのずれに対して、ずり力の入力によって生じる第1樹脂層11b及び第2樹脂層12bの変形が大きい場合は、変形に依存したノイズも大きくなり、検出精度が低下する。そのため、樹脂層は、第1基材1及び第2基材2として選択された材料よりも縦弾性係数(ヤング率)が高いことが好ましい。後述するように基材としてポリイミド(縦弾性係数が約3GPa)が好適に用いられることから、樹脂層の縦弾性係数は、3GPa以上、好ましくは4GPa以上とすることができる。
【0035】
(基材)
第1基材1及び第2基材2は、可撓性を有していればよく、例えば、PET、PEN、ポリイミドなどのプラスチックフィルムや、紙など、印刷用のインキ、フォトリソグラフィーで形成する電極の条件やセンサとしての用途に合わせて適宜選択できる。ただし、第2基材2には後述するスリット16が形成されるため、耐熱性を有し、スリット16の形成に耐えうる材料として、ポリイミドを好適に用いることが好ましい。なお、第1基材1と第2基材2とで種類や厚みが異なるものを用いてもよい。
【0036】
(固定層)
固定層15は、第1基材1及び第2基材2の対向する面同士を接着して固定し、対向させた積層体の位置関係を維持する。固定層15は、全ての第1積層体11、第2積層体12、第3積層体13、及び第4積層体14を取り囲む領域に設けられる。固定層15の形状は特に限定されないが、外形が正方形や円形であることが好ましい。
【0037】
固定層15の材質は特に限定されるものではないが、ずり力や圧力による破損を防ぐため、粘着強度が高い方が好ましい。触覚センサ100の使用時は基材の面に対して押し込む方向にしか力をかけないが、粘着力が弱いと、測定対象から触覚センサ100を外すときにセンサにかかる曲げ応力によって破損してしまう恐れがある。そのため、圧力方向の粘着力は、25mm幅で5N以上であることが好ましい。また、触覚センサ100を測定対象から取り外す際には曲げ応力によるずり方向成分が大きいため、ずり方向の粘着力が80N/cm2であることが好ましい。粘着強度は固定層15の幅によっても変化するため、これらの数値を上回るように幅を決定すればよい。
【0038】
固定層15の厚みは、上下で対向する積層体を合わせた厚み以上とする。これにより、第1積層体11と第2積層体12(第3積層体13と第4積層体14)とを対向させたときに、固定層15が支点となって、第2基材2が垂れることにより第1樹脂層11b及び第2樹脂層12b(第3樹脂層13b及び第4樹脂層14b)が接触した状態となる(
図5)。この状態であれば上下の樹脂層に余計な応力が作用せず、ずり力によって第1樹脂層11bに対して第2樹脂層12bをずらすことが可能となる。また、圧力方向の検知において、圧力によって十分に接触率を変化させるため、圧力が入力されていないときの第1樹脂層11bと第2樹脂層12bとの接触率は完全接触を1とした時の0.01~0.1倍であることが望ましい。この状態から圧力を入力して接触率を増やしていくことで、圧力による抵抗値変化が再現よく得られる。固定層15を上下で対向する積層体を合わせた厚みより薄くしてしまうと、第1積層体11と第2積層体12、及び第3積層体13と第4積層体14が常に接触し、特に固定層15に近い部分に大きな負荷がかかるため、検出精度の低下と破損を招く。垂れ量は固定層15を支点とした梁のたわみとして近似でき、基材の厚みや硬さ、支点の距離で変わる。たわみ量Dは、支点間の距離L、荷重W(この場合基材の重さ)、断面二次モーメントI、縦弾性係数Eとして
D=WL^3/48EI
と表せる。例として長さ(固定層15間の距離)1.7cm、厚み125μm、密度1.4g/cm
3、ヤング率3.5GPaのポリイミドフィルムで計算すると、たわみ量Dは5.3μmとなる。この時、固定層15の厚みは上下で対向する積層体を合わせた厚みより5.3μm厚くすると、ちょうど上下の積層体が接する。
【0039】
固定層15は、接着剤の印刷によるパターニングや、両面テープをピナクル(登録商標)刃などで打ち抜いて固定層15の形成位置に貼ることで形成してもよい。基材に余計な熱負荷を与えたくない場合や印刷ばらつきによる粘着力のムラを避けたい場合は、両面テープが好適に使用される。
【0040】
触覚センサ100における、圧力とずり力の測定方法について説明する。
【0041】
図6は、圧力測定時における触覚センサの積層体近傍の部分断面図である。また
図6においては、樹脂層の外形を電極の形状に沿った状態で示す。
【0042】
第1基材1上の圧力検出電極(第3電極13a)と、第2基材2上の圧力検出電極(第4電極14a)とが、一対の第3樹脂層13b及び第4樹脂層14bを介して接続されている。圧力方向の負荷がない場合、第3樹脂層13b及び第4樹脂層14bの接触面積が小さいため電極間の電気抵抗値は大きい(
図6(a)参照)。圧力を加えることで第3樹脂層13b及び第4樹脂層14bの接触面積が増える(
図6(b)参照)。接触面積が増えると、上下の電極間の導通パスが増えるため、電気抵抗値が減少する。したがって、圧力検出電極間の電気抵抗値に基づいて、圧力を検出することができる。
【0043】
図7は、ずり力測定時における触覚センサの積層体近傍の部分断面図である。より具体的には、
図7(a)はずり力が入力されていない状態の触覚センサ100の状態を示し、
図7(b)はずり力が入力された状態の触覚センサ100の状態を示している。また、
図7においては、電極及び樹脂層の外形を矩形形状で示す。
【0044】
図7(a)の状態において、平面視において第1電極11aと第2電極12aとは一部のみ重複するようにずらして設置されている。そして、
図7(a)の状態から、紙面右方向にずり力を入力すると、第1電極11aと第2電極12aとの重複領域が増加し、電極間の電気抵抗値が減少するため、この抵抗値の変化に基づいてずり力を測定することができる。本実施形態においては、ずり力が入力されると第1電極11aと第2電極12aとの重なり面積が増加する構造としたが、減少する構造としてもよい。この場合、第1電極11aと第2電極12aの初期位置は、第1電極11aと第2電極12aとが完全に重複している状態とすることができる。
【0045】
(スリット)
スリット16は、第2基材2の面を打ち抜くことで形成され、第2基材2における固定層15の内側、かつ、第2積層体12と離間した位置に設けられる。スリット16を第2基材2に形成することで、第2基材2の所定方向への移動を緩和することができる。
【0046】
スリット16は、例えば、
図1及び
図3のように、第2積層体12及び第4積層体14を取り囲む矩形状の領域の各辺に沿って4本設けられる。触覚センサ100は、ずり力の入力に伴って第1電極11aと第2電極12aとが相対的にずれることによって、ずり力を検出する。しかし、第1基材1と第2基材2とを貼り合わせる必要があることから固定層15が設けられ、これによって第1電極11aと第2電極12aとのずれが阻害される恐れがある。そのため、スリット16を固定層15の内側に設けることで、固定層15より内側の領域を入力されたずり力の方向に移動させやすくすることができる。具体的には、
図8に示すようにX軸方向へのずり力が入力された場合、Y軸方向に延びる2つのスリット16のうち一方が広がり、もう一方が狭まるように変形するため、第2電極12aがずり方向に移動しやすくなる。
図8においては、ずり力がX軸の正の方向(紙面右方向)にずり力が入力された状態を示している。
【0047】
本実施形態のようにスリット16が第2積層体12及び第4積層体14を取り囲む矩形状の領域の各辺に沿って4本設けられる場合、
図3に示すように矩形の四隅に当たる部分に打ち抜きを施さない部分(非抜き打ち部)を設けることが好ましい。矩形の辺に当たる部分に非打ち抜き部を形成すると、打ち抜かれずに残った基材によりすれが妨げられてしまう。また、非抜き打ち部を対称に作ることでリードを引き回すスペースを確保するとともに、基材がつながっている部分に支えられて、ずり力がなくなった時に初期位置に戻ることができる。
【0048】
上述の通り、ずり力が入力されていないときの小電極sの重複面積を1とすると、重複面積の変化量は、減少方向に最小0.25倍まで、増加方向に最大1.75倍まで許容されるが、スリット幅d1は、小電極sが許容される重複面積の変化量分以上の幅であることが好ましい。例えば、無負荷時の小電極sの重なり幅を1mmとすると、重なり幅1mm×0.75=750μm幅のスリット16を形成することで、750μmの移動量が確保でき、好適に面積変化を得ることができる。
【0049】
スリット16と第2積層体12及び第4積層体14との距離d2は、スリット16の幅と等しい(d1=d2)。スリット16がリードに近すぎると、第2基材2変形した際にリードに干渉し、キズをつけてしまう懸念がある。遠すぎるとスリット16による効果を得られず第2基材2の移動が困難となる。
【0050】
スリット16を入れる方法は、スリット16の幅に応じて選択できる。スリット16の幅が0.6mm以上である場合はピナクル刃による打ち抜きが有効であり、それよりも小さなスリットを形成する場合はレーザーカット加工が選択できる。また、図においてはスリット16を角形状で示しているが、スリット16のエッジは曲線形状での加工が好ましい。角があるような形状だと、ずり力を繰り返し入力して第2基材2が動く際に、スリットの角に応力が集中し第2基材2が破れてしまう恐れがある。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る触覚センサ100は、第2基材2の第2積層体12及び第4積層体14を取り囲む矩形状の領域の各辺に沿って4本のスリット16が設けられている。そのため、ずり力が入力された際に、ずり力の方向に応じてスリット16が変形し、第2電極12aがずり方向に移動しやすくなる。また、スリット16は固定層15の内側に設けられるため、ずり力による第2基材2の移動を固定層15に阻害されるのを抑制できる。
【0052】
また、スリット16が設けられるため、固定層15によって十分に基材間の固定強度を確保しながらも、固定層15に起因して第2基材2のずれが阻害されるのを抑制でき、検出精度の高い触覚センサ100とすることができる。
【0053】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る触覚センサについて、第1実施形態との相違点を中心に説明する。第2実施形態に係る触覚センサ200は、スリット16の形成位置が第1実施形態に係る触覚センサ100と異なる。
図9は、本発明の第2実施形態に係る触覚センサの概略構成を示す模式図であり、より詳細には、
図9(a)は、触覚センサの平面図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すD-D’線に沿う位置の断面図に相当する図 である。
図10は、触覚センサの第2基材側の部分模式図であり、より詳細には、
図10(a)は、触覚センサの第2基材側の部分平面図であり、
図10(b)は、
図10(a)に示すE-E’線に沿う位置の断面図に相当する図 である。
図11は、ずり力が入力された状態の触覚センサを示す図である。
【0054】
第2基材2には、検知部X(第1積層体11及び第2積層体12)を挟んでY軸方向に延びる一対のスリット16aと、検知部Y(第1積層体11及び第2積層体12)を挟んでX軸方向に延びる一対のスリット16bとが設けられる。このような構成とすることで、X軸方向のずり力を検出する検知部Xの第2積層体12は、X軸方向に移動しやすくなりつつもY軸方向への移動は制限されている。また、Y軸方向のずり力を検出する検知部Yの第2積層体12は、Y軸方向に動きやすくなりつつもX方向への移動は制限される(
図11)。そのため、第1実施形態と比べると、ずり力が入力された方向に対応した電極をより選択的にずらすことができる。また、本実施形態では、ずり力検出電極(第2電極12a)の傍以外にスリット16が形成されないため、圧力検出電極(第4電極14a)が動くことを抑制できる、さらに、打ち抜きによって第2基材2の強度が低下してしまうのを防ぐことができる。また、リードの取り回しの自由度を上げることもできる。
【実施例0055】
(実施例1)
第1基材1として125μmのポリイミドフィルム(東レ:カプトン500V)を使用し、銀ペーストを用いて、
図2に示す第1電極11a及び第3電極13aを7mm×7mmの範囲内に印刷法で作製した。このとき、圧力検出電極は正方形状で作製した。また、ずり力検出電極はそれぞれコの字形状で作製し、長方形の小電極s寸法は幅それぞれ0.5mm、長さ3.2mmとし、小電極s間の距離を2.5mmとした。また第1電極11a及び第3電極13aと同時にリードも幅0.03mmで、互いに交わることが無いように配置した。第1電極11a、第3電極13a及びリードの厚みは平均5.5μmであった。
【0056】
次に、第1電極11a及び第3電極13aの上に、十条ケミカル製のカーボンインキJELCON CH-Nを印刷して第1樹脂層11b及び第3樹脂層13bを形成し、第1積層体11及び第3積層体13を作製した。CH-Nの膜厚は平均6μmであり、第1電極11a及び第3電極13a上の部分における膜厚は12.5μmであった。
【0057】
第2基材2として125μmのポリイミドフィルム(東レ:カプトン500V)を使用し、銀ペーストを用いて、
図3に示す第2電極12a、第4電極14a、及びリードを印刷法で作製した。
【0058】
次に、第2電極12a及び第4電極14aの上に、十条ケミカル製のカーボンインキJELCON CH-Nを印刷して第2樹脂層12b及び第4樹脂層14bを形成し、第2積層体12及び第4積層体14を作製した。CH-Nの膜厚は平均6μmであり、第2電極12a及び第4電極14a上の部分における膜厚は12.5μmであった。
【0059】
次に、第2基材2をレーザー加工により打ち抜くことで、幅約200μmのスリット16を形成した(
図3)。スリット16は、第2積層体12の端部から外側に200μm離れた位置に形成された。
【0060】
次に、第1樹脂層11bと第2樹脂層12b、及び、第3樹脂層13bと第4樹脂層14bとが対向するように第1基材1と第2基材2とを固定層15を介して貼り合わせて固定することで、実施例1に係る触覚センサ100を得た(
図1)。このとき、第1電極11aの小電極sと第2電極12aの小電極sとは、平面視における重なり幅が250μmであった。また、固定層15としては、寺岡製の厚み30μmの両面テープ707#4を幅1.5mmの正方形状に打ち抜かれたものを用い、固定層15の各辺が基材の中心から1.4cmとなるよう配置した。
【0061】
このセンサに指で圧力をかけたところ、入力する力に応じて圧力検出電極の抵抗値変化が確認された。また、このセンサに指でずり力をかけたところ、ずり力の入力方向に第2基材2がずれ、対応するずり力検出電極の抵抗値変化が確認された。ずり力の入力をやめると、基材の位置が戻った。
【0062】
(実施例2)
第1基材1として125μmのポリイミドフィルム(東レ:カプトン500V)を使用し、銀ペーストを用いて、
図2に示す第1電極11a及び第3電極13aを7mm×7mmの範囲内に印刷法で作製した。このとき、圧力検出電極は正方形状で作製した。また、ずり力検出電極はそれぞれコの字形状で作製し、長方形の小電極s寸法は幅それぞれ0.5mm、長さ3.2mmとし、小電極s間の距離を2.5mmとした。また第1電極11a及び第3電極13aと同時にリードも幅0.03mmで、互いに交わることが無いように配置した。第1電極11a、第3電極13a及びリードの厚みは平均5.5μmであった。
【0063】
次に、第1電極11a及び第3電極13aの上に、十条ケミカル製のカーボンインキJELCON CH-Nを印刷して第1樹脂層11b及び第3樹脂層13bを形成し、第1積層体11及び第3積層体13を作製した。CH-Nの膜厚は平均6μmであり、第1電極11a及び第3電極13a上の部分における膜厚は12.5μmであった。
【0064】
第2基材2として125μmのポリイミドフィルム(東レ:カプトン500V)を使用し、銀ペーストを用いて、
図3に示す第2電極12a、第4電極14a、及びリードを印刷法で作製した。
【0065】
次に、第2電極12a及び第4電極14aの上に、十条ケミカル製のカーボンインキJELCON CH-Nを印刷して第2樹脂層12b及び第4樹脂層14bを形成し、第2積層体12及び第4積層体14を作製した。CH-Nの膜厚は平均6μmであり、第2電極12a及び第4電極14a上の部分における膜厚は12.5μmであった。
【0066】
次に、第2基材2をレーザー加工により打ち抜くことで、検知部Xを挟んでY軸方向に延びる一対のスリット16aと、検知部Yを挟んでX軸方向に延びる一対のスリット16bとを形成した(
図10)。スリット16は、第2積層体12の端部から200μm離れた位置にスリット幅約200μmで形成された。
【0067】
次に、第1樹脂層11bと第2樹脂層12b、及び、第3樹脂層13bと第4樹脂層14bとが対向するように第1基材1と第2基材2とを固定層15を介して貼り合わせて固定することで、実施例2に係る触覚センサ100を得た(
図9)。このとき、第1電極11aの小電極sと第2電極12aの小電極sとは、平面視における重なり幅が250μmであった。また、固定層15としては、寺岡製の厚み30μmの両面テープ707#4を幅1.5mmの正方形状に打ち抜かれたものを用い、固定層15の各辺が基材の中心から1.4cmとなるよう配置した。
【0068】
このセンサに指で圧力をかけたところ、入力する力に応じて圧力検出電極の抵抗値変化が確認された。このセンサに指でずり力をかけたところ、X軸方向へのずり力に対しては検知部Xのずり力検出電極が上下でずれ、抵抗値変化が確認された。また、Y軸方向へのずり力に対しては検知部Yのずり力検出電極が上下でずれ、抵抗値変化が確認された。ずり力の入力をやめると電極の位置が戻った。
【0069】
(比較例1)
第1基材1として125μmのポリイミドフィルム(東レ:カプトン500V)を使用し、銀ペーストを用いて、
図2に示す第1電極11a及び第3電極13aを7mm×7mmの範囲内に印刷法で作製した。このとき、圧力検出電極は正方形状で作製した。また、ずり力検出電極はそれぞれコの字形状で作製し、長方形の小電極s寸法は幅それぞれ0.5mm、長さ3.2mmとし、小電極s間の距離を2.5mmとした。また第1電極11a及び第3電極13aと同時にリードも幅0.03mmで、互いに交わることが無いように配置した。第1電極11a、第3電極13a及びリードの厚みは平均5.5μmであった。
【0070】
次に、第1電極11a及び第3電極13aの上に、十条ケミカル製のカーボンインキJELCON CH-Nを印刷して第1樹脂層11b及び第3樹脂層13bを形成し、第1積層体11及び第3積層体13を作製した。CH-Nの膜厚は平均6μmであり、第1電極11a及び第3電極13a上の部分における膜厚は12.5μmであった。
【0071】
第2基材2として125μmのポリイミドフィルム(東レ:カプトン500V)を使用し、銀ペーストを用いて、
図3に示す第2電極12a、第4電極14a、及びリードを印刷法で作製した。
【0072】
次に、第2電極12a及び第4電極14aの上に、十条ケミカル製のカーボンインキJELCON CH-Nを印刷して第2樹脂層12b及び第4樹脂層14bを形成し、第2積層体12及び第4積層体14を作製した。CH-Nの膜厚は平均6μmであり、第2電極12a及び第4電極14a上の部分における膜厚は12.5μmであった。
【0073】
次に、第1樹脂層11bと第2樹脂層12b、及び、第3樹脂層13bと第4樹脂層14bとが対向するように第1基材1と第2基材2とを固定層15を介して貼り合わせて固定することで、比較例1に係る触覚センサ100を得た。このとき、第1電極11aの小電極sと第2電極12aの小電極sとは、平面視における重なり幅が250μmであった。また、固定層15としては、寺岡製の厚み30μmの両面テープ707#4を幅1.5mmの正方形状に打ち抜かれたものを用い、固定層15の各辺が基材の中心から1.4cmとなるよう配置した。
【0074】
このセンサに指で圧力をかけたところ、入力する力に応じて圧力検出電極の抵抗値変化が確認された。しかし、このセンサに指でずり力をかけたところ、第2基材2のずれが生じず、対応するずり力検出電極の抵抗値変化が確認できなかった。