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  • 特開-スプライン付きボールねじ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065857
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】スプライン付きボールねじ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20240508BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16H25/24 A
F16H25/22 C
F16H25/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174926
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】水口 淳二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA38
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA12
3J062BA27
3J062BA35
3J062CD04
3J062CD25
3J062CD45
3J062CD54
3J062CD75
(57)【要約】
【課題】軽量化及び低慣性化を促進して、良好な作動性を得ることができ、製造コストも低減することができるスプライン付きボールねじを提供する。
【解決手段】ボールねじ軸と、ボールねじナットと、ボールスプラインナットと、転動路に沿って転動する複数のボールねじ用ボールと、スプライン用転動路、及びスプライン用戻し路に沿って転動する複数のボールスプライン用ボールと、を有するスプライン付きボールねじであって、ボールスプラインナットは、筒状の金属部と、該金属部に内装又は外装される樹脂部と、軸方向端部に取付けられるエンドキャップと、を備え、金属部と樹脂部との組合せにより、スプライン用戻し路の少なくとも一部が形成され、樹脂成形されたエンドキャップは、方向転換路が形成され、エンドキャップと樹脂部とは、一方側に形成された複数の突起部と、他方側に形成された複数の係止部とによって、固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状に形成された内ボールねじ溝及び前記外周面に軸線方向に形成された内ボールスプライン溝を備えたボールねじ軸と、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールねじ溝に対向する外ボールねじ溝を備えたボールねじナットと、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールスプライン溝に対向する外ボールスプライン溝及び、貫通孔からなるスプライン用戻し路を備えたボールスプラインナットと、
前記内ボールねじ溝と前記外ボールねじ溝とにより形成される転動路に沿って転動する複数のボールねじ用ボールと、
前記内ボールスプライン溝と前記外ボールスプライン溝とにより形成されるスプライン用転動路、及び前記スプライン用戻し路に沿って転動する複数のボールスプライン用ボールと、を有するスプライン付きボールねじであって、
前記ボールスプラインナットは、筒状の金属部と、該金属部に内装又は外装される樹脂部と、軸方向端部に取付けられるエンドキャップと、を備え、
前記金属部と前記樹脂部との組合せにより、前記スプライン用戻し路の少なくとも一部が形成され、
樹脂成形された前記エンドキャップは、前記スプライン用転動路と前記スプライン用戻し路との間を接続する方向転換路が形成され、
前記エンドキャップと前記樹脂部とは、一方側に形成された複数の突起部と、他方側に形成された複数の係止部とによって固定される
スプライン付きボールねじ。
【請求項2】
前記ボールスプラインナット内の軸方向端部側に、潤滑剤含有部材が収容される収容スペースを設け、
前記収容スペース内に収容された前記潤滑剤含有部材を、前記ボールねじ軸側に押圧する押圧手段を設けた
請求項1に記載のスプライン付きボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプライン付きボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
スカラー型ロボットのZ-θ軸アクチュエータを構成する主要構成部品として、たとえば、スプライン付きボールねじが知られている。この種のボールねじにおいては、ボールねじ軸の外周面に形成されたボールねじ溝とボールねじナットの内周面に形成されたボールねじ溝との間に多数のボール(以下「ボールねじ用ボール」とも称す)を配設するとともに、ボールねじ軸の外周面に形成されたボールスプライン溝とボールスプラインナットの内周面に形成されたボールスプライン溝との間に多数のボール(以下「ボールスプライン用ボール」とも称す)を配設している。
【0003】
また、スプライン付きボールねじの一タイプとして、軸受一体型スプライン付きボールねじが知られている(例えば、特許文献1参照)。軸受一体型スプライン付きボールねじを、図4を参照して簡単に説明する。軸受一体型スプライン付きボールねじ10は、ボールねじ軸1と、ボールねじナット2と、ボールスプラインナット3と、玉軸受4、5と、を備える。
【0004】
ボールねじ軸1の外面には、所定のリードを持つ螺旋状の内ボールねじ溝1aと、軸方向に延びる直線状の内ボールスプライン溝1bとが形成されている。
【0005】
ボールねじナット2は、玉軸受4により回転自在に支持されている。玉軸受4の外輪4aは略円筒状であり、その軸方向の一端部にはフランジ4bを有する。外輪4aの内面には外輪溝4cが2列形成されている。一方、玉軸受4の内輪を兼ねるボールねじナット2の外面には、外輪溝4cに対向して内輪溝2aが形成されている。外輪溝4cと内輪溝2aとの間には、玉4dが転動自在に配設されている。
【0006】
ボールねじナット2の内周には、内ボールねじ溝1aに対向して螺旋状に外ボールねじ溝2bが形成されており、内ボールねじ溝1aと外ボールねじ溝2bとで、転動路6Aを形成する。ボールねじナット2の内部には、軸方向に貫通する戻し路6Bが形成され、戻し路6Bの両端にはエンドキャップ6C,6Dが接続されている。ボールねじナット2とボールねじ軸1とが相対回動すると、転動路6Aに沿って一端まで転動したボールねじ用ボール3Aが、エンドキャップ6C,6Dの一方に掬い上げられ、戻し路6Bを通過し、エンドキャップ6C,6Dの他方を介して転動路6Aの他端に戻されるようになっている。
【0007】
ボールスプラインナット3は、玉軸受5により回転自在に支持されている。玉軸受5の外輪5aは略円筒状であり、その軸方向の一端部には、例えばZ-θ軸アクチュエータのハウジングに取り付けられるフランジ5bを有する。外輪5aの内面には外輪溝5cが2列形成されている。一方、玉軸受5の内輪を兼ねるボールスプラインナット3の外面には、外輪溝5cに対向して内輪溝3aが形成されている。外輪溝5cと内輪溝3aとの間には、玉5dが転動自在に配設されている。
【0008】
ボールスプラインナット3の内周には、内ボールスプライン溝1bに対向して軸方向に外ボールスプライン溝3bが形成されており、内ボールスプライン溝1bと、ボールスプラインナット3の外ボールスプライン溝3bとで、転動路7Aを形成する。ボールスプラインナット3の両端部には、エンドキャップ8A,8Bが取り付けられる。転動路7Aの両端は、エンドキャップ8A,8Bに形成された方向転換路7C,7Dを介して、ボールスプラインナット3の内部に形成された戻し路7Bの両端に接続されている。ボールスプラインナット3とボールねじ軸1とが軸線方向に相対移動すると、転動路7Aに沿って一端まで転動したボールスプライン用ボール3Bが、エンドキャップ8A,8Bの一方を介して戻し路7Bに進入し、戻し路7Bを通過した後、エンドキャップ8A,8Bの他方を介して転動路7Aの他端に戻されるようになっている。
なお、図4では、転動路7A、戻し路7B、方向転換路7C,7Dは、それぞれの通路内を移動するボールスプライン用ボール3Bによって示されている。
【0009】
このようなスプライン付きボールねじ10によれば、例えば所定位置にあるボールねじナット2がボールねじ軸1に対して相対回転すると、ボールねじ軸1が軸線方向に移動するが、ボールスプラインナット3は、ボールねじ軸1の軸線方向相対移動を許容する。一方、ボールスプラインナット3が回転すると、それに連れてボールねじ軸1が同方向に回転する。このため、スプライン付きボールねじ10は、スカラー型ロボットのZ-θ軸アクチュエータとして好適に用いられる。
【0010】
このようなスプライン付きボールねじを有するスカラー型ロボットは、タクトタイム向上のために高速での移動及び回転が求められるため、スプライン付きボールねじ自体の軽量化及び低慣性化が重要な要素となる。
【0011】
さらに、特許文献2には、ナット本体と、ナット本体に取付けられ且つ螺旋状軌道路とリターン路とを連通する方向転換路を備えたエンドキャップと、エンドキャップに配設された含油部材と、エンドキャップの連通孔に配設された油供給部材とを備え、方向転換路を転走するボールに油を供給することにより、メンテナンスフリーを実現したボールねじが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2019/107122号公報
【特許文献2】特開2017-180664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、スプライン付きボールねじの軽量化、低慣性化、コンパクト化を実現するためには、ボールスプラインナット外径の小径化が望まれる。特に、ボールスプラインナットに軸受を一体化させた軸受一体型のスプライン付きボールねじにおいては、高速動作が可能となるように、さらなる軽量化及び低慣性化が望まれている。
【0014】
これに対し、必要な部品を金属で一体成形すれば、ねじ等による締結部分を極力減らして全長を短くできるため、全体の軽量化及び低慣性化を実現できるが、構造上すべての部材を金属で一体成形することは困難であるとともに、結果的に全体の質量が増加するため、高速動作には不向きなものとなる。また、ナット内に潤滑剤供給部材を内装してメンテナンスフリーを実用しようとする場合、収容スペースを設けるために全体が大型化するため、結果的に質量が増加する。
【0015】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、軽量化及び低慣性化を促進して、良好な作動性を得ることができ、製造コストも低減することができるスプライン付きボールねじを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 外周面に螺旋状に形成された内ボールねじ溝及び前記外周面に軸線方向に形成された内ボールスプライン溝を備えたボールねじ軸と、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールねじ溝に対向する外ボールねじ溝を備えたボールねじナットと、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールスプライン溝に対向する外ボールスプライン溝及び、貫通孔からなるスプライン用戻し路を備えたボールスプラインナットと、
前記内ボールねじ溝と前記外ボールねじ溝とにより形成される転動路に沿って転動する複数のボールねじ用ボールと、
前記内ボールスプライン溝と前記外ボールスプライン溝とにより形成されるスプライン用転動路、及び前記スプライン用戻し路に沿って転動する複数のボールスプライン用ボールと、を有するスプライン付きボールねじであって、
前記ボールスプラインナットは、筒状の金属部と、該金属部に内装又は外装される樹脂部と、軸方向端部に取付けられるエンドキャップと、を備え、
前記金属部と前記樹脂部との組合せにより、前記スプライン用戻し路の少なくとも一部が形成され、
樹脂成形された前記エンドキャップは、前記スプライン用転動路と前記スプライン用戻し路との間を接続する方向転換路が形成され、
前記エンドキャップと前記樹脂部とは、一方側に形成された複数の突起部と、他方側に形成された複数の係止部とによって、固定される
スプライン付きボールねじ。
(2) 前記ボールスプラインナット内の軸方向端部側に、潤滑剤含有部材が収容される収容スペースを設け、
前記収容スペース内に収容された前記潤滑剤含有部材を、前記ボールねじ軸側に押圧する押圧手段を設けた
(1)に記載のスプライン付きボールねじ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軽量化を促進して、良好な作動性を得ることができ、製造コストも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るスプライン付きボールねじのボールスプラインナットの分解斜視図である。
図2】ボールねじ軸及びボールスプラインナットをボールねじ軸の軸線方向から見た模式的な断面図である。
図3】エンドキャップの取付状態を示した要部断面図である。
図4】従来のスプライン付きボールねじの部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るスプライン付きボールねじの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態のスプライン付きボールねじ10は、図4に示す従来のスプライン付きボールねじ10に対して、ボールスプラインナット3を改良したものである。そのため、スプライン付きボールねじ10の基本構成は、すでに図4において説明した従来のスプライン付きボールねじ10と同様であるので、必要に応じて同図を参照しながら、本実施形態のスプライン付きボールねじ10について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るスプライン付きボールねじのボールスプラインナットの分解斜視図であり、図2は、ボールねじ軸及びボールスプラインナットをボールねじ軸の軸線方向から見た模式的な断面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態のボールスプラインナット30は、ボールねじ軸1に外装されるように円筒状に一体成形された金属筒部31と、該金属筒部31に外装されるように円筒状に一体成形された樹脂筒部32と、樹脂製のエンドキャップ33と、ボールスプラインナット30内に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材34と、を有する。
【0022】
金属筒部31は、軸方向に延設された筒部31aと、該筒部31aの軸方向の一端側に形成されて外周面に内輪溝3aが形成されるフランジ部31bと、を有する。金属筒部31の内周面は、ボールねじ軸1が内装され、金属筒部31のフランジ部31bは、玉軸受5により回転自在に支持されている。
【0023】
金属筒部31の内周面には、ボールねじ軸1側の内ボールスプライン溝1bに対向する軸方向の外ボールスプライン溝31cが形成されている。金属筒部31の外ボールスプライン溝31cと、ボールねじ軸1の内ボールスプライン溝1bとで、転動路7Aを形成する。
【0024】
金属筒部31の筒部31aの外周面には、戻し路7Bの内周側半部を構成する金属側内戻し溝31dが形成されている。金属筒部31のフランジ部31bには、図1に示すように、金属側内戻し溝31dの端部から連続して形成される貫通孔である戻し路7Bの一部が貫通形成されている。
【0025】
金属筒部31には、径方向に貫通する金属側固定孔31eが穿設されている。図1に示す例では、2箇所に形成されている。
【0026】
樹脂筒部32は、軸方向両端側が開放された筒状に成形され、軸方向の一端側が金属筒部31のフランジ部31bに当接され、軸方向の他端側がエンドキャップ33によって密閉される。
【0027】
樹脂筒部32の内周面には、戻し路7Bの外周側半部を構成する溝であって、金属側内戻し溝31dと対向する軸方向の樹脂側外戻し溝32aが形成されている。
【0028】
樹脂筒部32のエンドキャップ側の軸方向端部は、金属筒部31の筒部31aの軸方向長さよりも長く形成されている。このため、樹脂筒部32の内周面のエンドキャップ33側端部は、エンドキャップ33を取付固定するための一対の係止部36,36と、エンドキャップ33側のU字状の方向転換路7C,7Dが配置される一対の転換路設置部37,37と、円弧状に形成された潤滑剤供給部材34が嵌合収容される一対の収容スペース38,38と、を備える。
【0029】
樹脂筒部32には、径方向に貫通する樹脂側固定孔32bが穿設されている。図1に示す例では、樹脂側固定孔32bは、樹脂筒部32の外周面を切欠いて形成した平坦部32c上に形成されている。
【0030】
エンドキャップ33は、樹脂筒部32の軸方向端部をカバーするように取付固定される円環板状の樹脂部材であり、軸方向に延設された突起である複数の突起部41と、方向転換路7C,7Dと、が一体成形されている。図示する例では、突起部41は一対設けられている。
【0031】
上述の構成によれば、金属筒部31の外周面に、樹脂筒部32の内周面が嵌合するようにして外装すると、図2に示されるように、金属筒部31の金属側内戻し溝31dと、樹脂筒部32の樹脂側外戻し溝32aとで、戻し路7Bの一部を形成する。すなわち、図1及び図2に示されるように、ボールスプラインナット30に形成される戻し路7Bは、金属筒部31の筒部31aの外周面と、樹脂筒部32の内周面との組合せによって形成される部分と、金属筒部31のフランジ部31bに穿設された部分と、が軸方向に連続して配置されることによって形成されている。
【0032】
また、樹脂側固定孔32bと、金属側固定孔31eとに、固定ピン35を挿通することにより、金属筒部31に外装される樹脂筒部32を、所定位置で位置決めした状態で固定できる。言い換えると、図2に示されるように、金属筒部31の外周面と、樹脂筒部32の内周面との組合せで戻し路7Bを形成した状態で、金属筒部31と樹脂筒部32との間の軸回転方向の相対位置を固定できる。
【0033】
また、円弧状の収容スペース38は、樹脂筒部32のエンドキャップ33側に端部に、係止部36と、転換路設置部37,37とを設けるために成形したスペースの空きスペースを活用して設けられている。このため、一部を樹脂化したボールスプラインナット30は、ボールスプラインナット30の全長を延ばすことなく、空きスペースに合わせた円弧状の潤滑剤供給部材34を収容できる。
【0034】
収容スペース38に収容された潤滑剤供給部材34は、図1に示すように、エンドキャップ33側に設けた押圧手段42によって、径方向内側であるボールねじ軸1方向に押圧できる。本実施例では、押圧手段42として、押圧ねじ部が設けられている。該押圧ねじ部42は、図1に示されるように、押圧用のネジ42aを、エンドキャップ33の縁側と樹脂筒部32のエンドキャップ33側の端部に形成されたねじ穴42b,42cに押込むことにより、樹脂筒部32の外周面を、収容スペース38の内側に押込むことができる。すなわち、潤滑剤供給部材34をボールねじ軸1側に押して、潤滑剤を定期的にボールねじ軸1に供給できる。
【0035】
なお、押圧手段42は、収容スペース38内の潤滑剤供給部材34をボールねじ軸1側に押圧可能な構成であれば良く、押圧ねじ部に代えて、潤滑剤供給部材34を押圧する板ばね等を設けた構成としても良い。
【0036】
次に、図1~3に基づいて、エンドキャップ33を樹脂筒部32に取付固定する、係止部36と、突起部41の構成を説明する。図3は、エンドキャップの取付状態を示した要部断面図である。
【0037】
樹脂筒部32側の係止部36は、突起部41を案内する軸方向の筒体36aと、筒体36a内において樹脂筒部32の外周面を貫通する径方向の係止孔36bと、エンドキャップ33が樹脂筒部32に取付けられた際に突起部41が当接する筒側接触部36cと、を有している。
【0038】
エンドキャップ33側の突起部41の延設端側は、軸方向端部側に向かうにつれて径方向外側に傾斜する傾斜部41aと、筒側接触部36c側に当接するキャップ側接触部41bと、を有し、突起部41全体が係止孔36b側に引っ掛かる爪状に形成されている。また、突起部41は、基端側の径方向外側に貫通孔41cが穿設されることにより、径方向内側に向けて大きく弾性変形可能に構成されている。
【0039】
上記構成によれば、エンドキャップ33は、傾斜部41aを樹脂筒部32の端部側に当接させることによって、突起部41を軸方向内側に弾性変形させながら押込むことができる。エンドキャップ33が、取付位置まで押し込まれると、突起部41の弾性変形が開放されて、係止爪状の突起部41が係止孔36b側に係止される(図3参照)。
【0040】
このとき、筒側接触部36cは、軸方向に対して直交する方向に形成される一方で、キャップ側接触部41bと、突起部41の径方向外側のうち軸方向に延設された延設部分41dとの間の角度は、直角よりも若干広い鈍角となるように形成されている(図3参照)。該構成により、複数形成された各突起部41が、各係止部36側に均等に接触し易くなる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変更、改良などが可能である。
【0042】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 外周面に螺旋状に形成された内ボールねじ溝及び前記外周面に軸線方向に形成された内ボールスプライン溝を備えたボールねじ軸と、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールねじ溝に対向する外ボールねじ溝を備えたボールねじナットと、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールスプライン溝に対向する外ボールスプライン溝及び、貫通孔からなるスプライン用戻し路を備えたボールスプラインナットと、
前記内ボールねじ溝と前記外ボールねじ溝とにより形成される転動路に沿って転動する複数のボールねじ用ボールと、
前記内ボールスプライン溝と前記外ボールスプライン溝とにより形成されるスプライン用転動路、及び前記スプライン用戻し路に沿って転動する複数のボールスプライン用ボールと、を有するスプライン付きボールねじであって、
前記ボールスプラインナットは、筒状の金属部と、該金属部に内装又は外装される樹脂部と、軸方向端部に取付けられるエンドキャップと、を備え、
前記金属部と前記樹脂部との組合せにより、前記スプライン用戻し路の少なくとも一部が形成され、
樹脂成形された前記エンドキャップは、前記スプライン用転動路と前記スプライン用戻し路との間を接続する方向転換路が形成され、
前記エンドキャップと前記樹脂部とは、一方側に形成された複数の突起部と、他方側に形成された複数の係止部とによって、固定される
スプライン付きボールねじ。
本構成によれば、ボールスプラインナットの大部分を樹脂成形化することができるため、軽量化を促進して、良好な作動性を得ることができ、製造コストも低減できる。
【0043】
(2) 前記ボールスプラインナット内の軸方向端部側に、潤滑剤含有部材が収容される収容スペースを設け、
前記収容スペース内に収容された前記潤滑剤含有部材を、前記ボールねじ軸側に押圧する押圧手段を設けた
(1)に記載のスプライン付きボールねじ。
本構成によれば、ボールスプラインナットの一部を樹脂成形したことにより生じるスペースを活用して、収容スペースを確保できるため、ボールスプラインナットの全長を変えることなく、ボールスプラインナット内に潤滑剤供給部材を収容できる。また、収容スペースに収容された潤滑剤供給部材をボールねじ軸側に押圧することにより、ボールねじ軸に潤滑剤を定期的に供給できるため、メンテナンスフリーも実現できる。
【符号の説明】
【0044】
1 ボールねじ軸
1a 内ボールねじ溝
1b 内ボールスプライン溝
2 ボールねじナット
2b 外ボールねじ溝
7A 転動路
30 ボールスプラインナット
31 金属筒部(金属部)
32 樹脂筒部(樹脂部)
33 エンドキャップ
図1
図2
図3
図4