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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065866
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】穀粒判別システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20240508BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240508BHJP
   G16Y 10/05 20200101ALI20240508BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240508BHJP
【FI】
G01N21/85 A
G06Q50/02
G16Y10/05
G16Y40/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174939
(22)【出願日】2022-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 恵久
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏明
【テーマコード(参考)】
2G051
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2G051AA04
2G051AB20
2G051BA20
2G051BB02
2G051CA04
2G051CA08
2G051EB05
2G051EC01
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】従来よりも高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能な穀粒判別システムを提供すること。
【解決手段】トレー50に載置された穀粒2を撮像可能な撮像手段1と、前記撮像手段1と通信可能であるとともに、該撮像手段1から前記穀粒2の撮影画像を受信して該穀粒2の品位を判別可能なサーバと、前記サーバと通信可能であるとともに、該サーバを介して前記撮像手段1に対する撮像制御、及び、該サーバから受信した前記穀粒2の判別結果を表示出力することが可能な端末60と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーに載置された穀粒を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段と通信可能であるとともに、該撮像手段から前記穀粒の撮影画像を受信して該穀粒の品位を判別可能なサーバと、
前記サーバと通信可能であるとともに、該サーバを介して前記撮像手段に対する撮像制御、及び、該サーバから受信した前記穀粒の判別結果を表示出力することが可能な端末と、を有する
ことを特徴とする穀粒判別システム。
【請求項2】
前記サーバは、前記穀粒の品位を判別する判別手段を備え、
前記判別手段は、
学習モデルを用いた人工知能によって前記穀粒の品位を判別する第1判別方法と、単純アルゴリズムを用いて前記穀粒の品位を判別する第2判別方法とを有し、少なくとも前記第1判別方法と前記第2判別方法とのうち、少なくともいずれかの判別方法を選択可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の穀粒判別システム。
【請求項3】
前記第1判別方法は、前記穀粒の判別が容易である第1判別項目を対象とし、
前記第2判別方法は、前記穀粒の判別が困難である第2判別項目を対象とするものである
ことを特徴とする請求項2に記載の穀粒判別システム。
【請求項4】
前記判別手段は、
前記穀粒の撮影画像から所定の測定値を算出する測定値算出手段と、
前記学習モデルを用いた人工知能によって判別スコア値を算出する判別スコア値算出手段と、を備え、
前記所定の測定値又は前記判別スコア値が、判別閾値の近傍にある場合、及び/又は、所定の割合以上判別閾値を逸脱する場合に、前記端末に前記穀粒の画像を表示してユーザによる判別が可能である
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の穀粒判別システム。
【請求項5】
前記撮像手段は、個々の撮像手段固有の固有識別情報を有し、
前記端末は、前記固有識別情報を入力可能であるとともに、前記撮像手段と紐付け該撮像手段を制御することが可能である
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の穀粒判別システム。
【請求項6】
前記撮像手段は、個々の撮像手段固有の固有識別情報を有し、
前記端末は、前記固有識別情報を入力可能であるとともに、前記撮像手段と紐付け該撮像手段を制御することが可能である
ことを特徴とする請求項4に記載の穀粒判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末及びサーバを利用した穀粒判別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安価に穀粒を判別することを目的に、特許文献1に開示されているような穀粒検査システムが知られている。当該穀粒検査システムは、カメラや表示部、通信手段を搭載したスマートフォンなどの携帯端末と、当該携帯端末とインターネットを介して接続される管理装置とから構成され、管理装置はクラウド上で運用されるものである。
【0003】
上記穀粒検査システムで穀粒サンプルの品位を判別する際は、携帯端末に搭載されたカメラで穀粒サンプルを撮像し、撮像して得られた穀粒サンプル画像を管理装置に送信している。管理装置に送信された穀粒サンプル画像は管理装置で処理され、AIを用いた判別手法で穀粒の品位が判別される。得られた判別結果は管理装置から携帯端末に送信されて、携帯端末に搭載される表示部に表示される。
【0004】
したがって、ユーザは、スマートフォンなどの汎用の携帯端末を所有していればそれ以外の装置を導入する必要がなく、安価に穀粒の品位判別を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-018322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、装置を用いた穀粒の判別において、ユーザが独自の判別基準を設定することがある。例えば、穀粒の長さ、幅又は厚みといった任意の数値は、判別基準としてユーザが品種別に現場で設定することがある。したがって、判別閾値を設ける単純アルゴリズムによる判別方法にあっては設定変更が容易であるという利点がある。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の穀粒検査システムのように、学習モデルを用いたAIによる判別方法においては、上記のような設定変更をユーザが容易に行うことが困難であるという問題がある。
【0008】
加えて、スマートフォンなどの携帯端末に搭載されるカメラは、スマートフォンのメーカ、型式、機種によって解像度や画像の色味などの仕様が異なり、それらによって撮像された穀粒の画像から、一定精度の判別結果を得ることは難しい。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、従来よりも高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能な穀粒判別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明は、トレーに載置された穀粒を撮像可能な撮像手段と、前記撮像手段と通信可能であるとともに、該撮像手段から前記穀粒の撮影画像を受信して該穀粒の品位を判別可能なサーバと、前記サーバと通信可能であるとともに、該サーバを介して前記撮像手段に対する撮像制御、及び、該サーバから受信した前記穀粒の判別結果を表示出力することが可能な端末と、を有することを特徴とする穀粒判別システムの構成とした。
【0011】
(2)前記サーバは、前記穀粒の品位を判別する判別手段を備え、前記判別手段は、学習モデルを用いた人工知能によって前記穀粒の品位を判別する第1判別方法と、単純アルゴリズムを用いて前記穀粒の品位を判別する第2判別方法とを有し、少なくとも前記第1判別方法と前記第2判別方法とのうち、少なくともいずれかの判別方法を選択可能である。
【0012】
(3)前記第1判別方法は、前記穀粒の判別が容易である第1判別項目を対象とし、
前記第2判別方法は、前記穀粒の判別が困難である第2判別項目を対象とするものである。
【0013】
(4)前記第1判別項目は、胴割粒、青未熟、砕粒、青死米、全面着色粒、茶米のうちの少なくともいずれかを含み、前記第2判別項目は、乳白粒、基部未熟粒、背腹白粒、白死米、部分着色粒、整粒、奇形粒、発芽粒、芽くされ粒、前記青未熟及び前記基部未熟粒以外の判別が困難な未熟粒のうちの少なくともいずれかを含む。
【0014】
(5)前記判別手段は、前記穀粒の撮影画像から所定の測定値を算出する測定値算出手段と、前記学習モデルを用いた人工知能によって判別スコア値を算出する判別スコア値算出手段と、を備え、前記所定の測定値又は前記判別スコア値が、判別閾値の近傍にある場合、及び/又は、所定の割合以上判別閾値を逸脱する場合に、前記端末に前記穀粒の画像を表示してユーザによる判別が可能である。
【0015】
(6)前記撮像手段は、個々の撮像手段固有の固有識別情報を有し、前記端末は、前記固有識別情報を入力可能であるとともに、前記撮像手段と紐付け該撮像手段を制御することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)に係る発明によれば、穀粒を撮像可能な撮像手段と、穀粒の撮影画像に基づいて当該穀粒の品位を判別可能なサーバと、当該サーバを介して前記撮像手段に対する撮像制御や、穀粒の判別結果を表示出力することが可能な端末とによって穀粒判別システムが構成されている。これにより、従来のスマートフォン搭載のカメラによる画像に比べ、同一仕様の撮像手段で穀粒を撮像することができるので、均一な画像品質を有する穀粒の画像を得ることが可能となる。
【0017】
加えて、端末において、撮像手段に対する撮像制御から穀粒の判別結果の表示出力までユーザの手元で行うことが可能であるため、従来に比べて高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能となる。
【0018】
上記(2)に係る発明によれば、学習モデルを用いた人工知能によって穀粒の品位を判別する第1判別方法と、単純アルゴリズムを用いて穀粒の品位を判別する第2判別方法とを有して、少なくともいずれかの判別方法を選択可能に構成したので、穀粒の判別項目に応じて高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能となる。
【0019】
上記(3)に係る発明によれば、判別項目ごとの判別の難易度に応じて、上記第1判別方法又は上記第2判別方法を選択することが可能である。これにより、穀粒の判別項目に応じて、従来よりも高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能となる。
【0020】
上記(4)に係る発明によれば、上記第1判別方法による第1判別項目は、胴割粒、青未熟、砕粒、青死米、全面着色粒、茶米のうちの少なくともいずれかを含み、上記第2判別方法による第2判別項目は、乳白粒、基部未熟粒、背腹白粒、白死米、部分着色粒、整粒、奇形粒、発芽粒、芽くされ粒、上記青未熟及び上記基部未熟粒以外の判別が困難な未熟粒のうちの少なくともいずれかを含むように構成したので、判別項目ごとの判別の難易度に応じて、従来よりも高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能となる。
【0021】
上記(5)に係る発明によれば、穀粒の撮影画像から算出された所定の測定値又は学習モデルを用いた人工知能によって算出された判別スコア値が、判別閾値の近傍にある場合、及び/又は、所定の割合以上判別閾値を逸脱する場合に、端末に穀粒の画像を表示してユーザによる判別を可能にしている。このような構成により、判別が困難な穀粒に対して、ユーザが目視確認して判別することが可能となり、高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能となる。
【0022】
上記(6)に係る発明によれば、端末は、撮像手段の固有識別情報が入力されることで、上記撮像手段との紐付けが行われ、当該撮像手段を制御することが可能となる。したがって、ユーザが個々に所有する端末(例えば、スマートフォン)で、任意の撮像手段と適宜接続して制御することが可能となり、安価なシステム構成で高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態における穀粒判別システムの概略構成図である。
図2】本実施形態における撮像手段の断面図である。
図3】本実施形態におけるクラウドサーバの管理手段の概略ブロック図である。
図4】本実施形態における穀粒の判別態様を説明するフロー図である。
図5】本実施形態における撮像手段の撮像態様の一例を説明するフロー図である。
図6】実施形態における判別方法別の判別項目を示した説明図である。
図7】本実施形態における穀粒の判別態様を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の穀粒判別システムの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
図1には、本実施形態における穀粒判別システム100の概略構成図が示されいる。図示されるように、穀粒判別システム100は、トレー50に載置された穀粒2を撮像可能な撮像手段1と、撮像手段1と通信可能であるとともに、当該撮像手段1から穀粒2の撮影画像を受信して当該穀粒2の品位を判別可能なクラウドサーバ70と、クラウドサーバ70と通信可能であるとともに、当該クラウドサーバ70を介して撮像手段1に対する撮像制御、及び、クラウドサーバ70から受信した穀粒2の判別結果を表示出力することが可能な端末60とから少なくとも構成されている。なお、本実施形態におけるトレー50は、特許第6094186号に記載されているような穀物鑑定皿を使用している。この穀物鑑定皿は透明な底面を有するものである。また、トレー50に、カルトンと呼ばれる穀粒鑑定皿を使用することもできる。
【0026】
より詳細に説明すると、ユーザが所有するスマートフォンを端末60として利用することが可能であり、予め端末60にダウンロードしたwebアプリケーションによって穀粒2の品位判別を行うことが可能である。
【0027】
なお、端末60はスマートフォンに限定されるものではなく、PDAやタブレット端末、ノート型PC、デスクトップPCなどを利用することが可能である。特に可搬性に優れたものが好適に利用可能である。
【0028】
ユーザは穀粒2のサンプルの品位判別に先立って、使用する撮像手段1と端末60との紐付けを行う。すなわち、撮像手段1は、個々の撮像手段固有の固有識別情報を有しており、端末60に固有識別情報を入力することによって、撮像手段1との紐付けが行われ、これにより、端末60によって撮像手段1を制御することが可能となる。
【0029】
なお、端末60への固有識別情報の入力方法としては、端末60に搭載されたカメラによって、撮像手段1に表示された二次元コードを読み取るようにしてもよいし、撮像手段1に個別に付与されたIDを端末60にキー入力するようにしてもよい。加えて、端末60に表示される予め登録されている複数の撮像手段1から、選択操作するようにしてもよい。
【0030】
続いて、ユーザは端末60のwebアプリケーションを利用して判別対象の穀粒2の種類や品種、サンプル情報などを入力して、撮像手段1による撮像開始の指示等を行う。撮像開始の指示等は、クラウドサーバ70を介して撮像手段1に送信される。撮像手段1で撮像した撮影画像は、クラウドサーバ70へ送信され、後述する品位判別が行われる。その後、穀粒2の判別結果等は端末60へ送信される。なお、先に穀粒2を撮像し、撮像して得た画像に穀粒2の種類や品種、サンプル情報を入力するように構成してもよい。また、本実施形態ではクラウドサーバ70を利用しているが、必ずしも、このようなクラウドコンピューティング技術の利用に限定されるものではなく、例えば、端末60を使用する事業所内や、関係企業内に設置された通常のサーバを利用することも可能である。
【0031】
図2には、本実施形態における撮像手段1の断面図が示されている。撮像手段1は、穀粒2に光を照射し、当該穀粒2を上方及び下方から撮像することが可能である。撮像手段1は、米、麦、豆類、コーンなどの穀粒の品質を判別するために使用することができる。なお、本実施形態における穀粒判別システム100は、米、麦、豆類、コーンなどの粒状物を判別するものである。
【0032】
撮像手段1は、図示されるように、上部筐体12と、下部筐体13とから主に構成されている。判別対象となる穀粒2は、皿形状の透明なトレー50に入れられ、当該トレー50は開口する円形載置部14に載置される。そして、上部筐体12の内部には、穀粒2を上方から撮像可能な上方カメラ3aが取り付けられている。下部筐体13の内部には、穀粒2を下方から撮像可能な下方カメラ3bが取り付けられている。さらに、下方カメラ3bの上方には下部開口15が形成されている。
【0033】
また、トレー50の斜め上方には、上方光源30が設けられ、発光部として複数の白色LEDが設けられている。トレー50の斜め下方には、第1下方光源40と第2下方光源20が設けられている。第1下方光源40は、発光部として複数の白色LEDが下方に向けて設けられている。
【0034】
上記第2下方光源20は、発光部として複数の白色LED21がシリンドリカルレンズ22に向けて設けられている。より詳細に説明すると、断面がU型のリフレクタ内に、白色LED21とシリンドリカルレンズ22が設けられている。そして、図2に示される角度で、白色LED21からの直接光がシリンドリカルレンズ22を介してトレー50の底面に照射される。このように構成することで、トレー50の底面に載置された穀粒2に対して斜め下方から光を照射することができ、特に米粒の胴割れの検出を効果的に行うことができる。
【0035】
なお、上方光源30、第1下方光源40及び第2下方光源20は必ずしも白色LEDに限定されるものではなく、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の単色LEDを組み合わせたものとすることが可能である。
【0036】
続いて、図3には本実施形態におけるクラウドサーバ70における管理手段の概略ブロック図が図示されている。管理手段は撮像手段1から受信した撮影画像を画像処理することが可能な画像処理部71と、画像処理部71で画像処理された穀粒2の処理画像から、種々の測定値を算出するとともに、当該穀粒2の品位を判別することが可能な品位判別部72と、穀粒判別システム100を構成する各種デバイスを制御することが可能な制御部73と、通信回線と接続されるとともに、撮像手段1及び端末60から各種信号が入出力する入出力ポート74とが、少なくとも備えられている。なお、必要なデータを保存する不図示の記憶部を備えるようにしてもよい。
【0037】
続いて、図4のフロー図に基づいて、穀粒判別システム100による処理フローを説明する。まず、撮像手段1は、ユーザによる起動から所定の設定操作を経てクラウドサーバ70に接続される。併せて、ユーザによる起動から所定の設定操作を経て端末60のwebアプリケーションを利用して、クラウドサーバ70と接続される。その後、webアプリケーションから使用する撮像手段1と端末60との紐付けを行う。当該紐付け処理は、前述したように端末60に撮像手段1の固有識別情報を入力することによって行う(ステップS100)。
【0038】
続いて、端末60のwebアプリケーションを利用して、判別対象の穀粒2の種類や品種、サンプル情報などを入力して、撮像手段1による撮像開始の指示等を行う(ステップS110)。そして、撮像開始の指示を受けた撮像手段1は、ユーザによってトレー50に載置された穀粒2の撮像を実行する(ステップS120)。
【0039】
図5のフロー図に示されるように、本実施形態では、まず撮像手段1の上方光源30を点灯して上方カメラ3aによる表反射画像の撮像を行う(ステップS121)。このような撮影画像は、未熟粒、砕粒、着色粒等の判別に利用される。
【0040】
次に、撮像手段1の4つの第2下方光源20を90度毎順次点灯させて、上方カメラ3aによる4枚の胴割画像の撮像を行う(ステップS122)。このような撮影画像は、胴割粒の判別に利用される。
【0041】
次に、撮像手段1の4つの第2下方光源20を全て同時に点灯させて、上方カメラ3aによる表透過画像の撮像を行う(ステップS123)。このような撮影画像は、前述の表反射画像(ステップS121)と合わせて、未熟粒と死米の判別に利用される。
【0042】
次に、撮像手段1の4つの第2下方光源20を全て同時に点灯させて、下方カメラ3bによる裏反射画像の撮像を行う(ステップS124)。このような撮影画像は穀粒2の裏面にある着色粒の判別に利用される。
【0043】
続いて、図4に示されるように、撮像手段1では撮像された各撮影画像において色補正や歪補正が行われ、4枚の胴割画像はその際に合成される。これらの各撮影画像は画像ファイルやIniファイルなどのデータとしてクラウドサーバ70へ送信される(ステップS130)。なお、上記色補正、歪補正、胴割画像の合成は、クラウドサーバ70側で行うようにしてもよい。
【0044】
撮像手段1から送信された各撮影画像は、クラウドサーバ70で判別処理が行われる。本実施形態では、表反射画像(ステップS121)、胴割画像(ステップS122)、表透過画像(ステップS123)及び裏反射画像(ステップS124)の4つの撮影画像から、(1)穀粒2の特定(各穀粒の画像の認識)とクラス分類、(2)各穀粒2のマッチング、(3)各穀粒2の判別結果より優先順位の高いクラスでの粒判定、(4)セグメンテーションデータから各穀粒2の長さ・幅・面積・白度などの算出等が行われる。なお、上記(2)は、前記4つの撮影画像において、いずれか一つの撮影画像における各穀粒2の画像を、残りの3つの撮影画像の穀粒2の画像と適合させることである。具体的には、ある穀粒Aの画像を、4つの撮影画像でそれぞれ認識させることである。また、本実施形態では、一つの穀粒2について、前記4つの撮影画像毎にクラス分類を行う。このため、一つの穀粒2が、それぞれの撮影画像で異なるクラスに分類される可能性がある。この様な場合のために、上記(3)において、各クラスに優先順位を設け、優先順位の高いクラスの判別結果を優先する仕様にしている。
【0045】
また、クラウドサーバ70では、各算出データに基づいて、全粒、クラスごとの重量比や粒数比、カテゴリ別の粒数を集計することが可能となっている。さらに、長さ・幅・面積・白度などのヒストグラム算出や、平均値と標準偏差の算出も可能となっている。そしてこれらは、不図示の記憶部に構築したデータベースに格納されるように構成されている。
【0046】
そして、上記した各算出データ等を含む判別結果は、端末60へ送信され(ステップS140)、ユーザの操作に応じて、端末60のwebアプリケーションを介して判別結果が表示出力される(ステップS150)。
【0047】
続いて、以下に、本実施形態における自動判別方法について説明する。
【0048】
本実施形態のクラウドサーバ70の品位判別部72は、穀粒2の品位を判別する方法として、学習モデルを用いた人工知能によって穀粒2の品位を判別する第1判別方法と、単純アルゴリズムを用いて穀粒2の品位を判別する第2判別方法とを併用して穀粒2を自動判別することが可能となっている。
【0049】
すなわち、図6に示されるよう、単純アルゴリズムによる自動判別と、AIにより自動判別のハイブリッド自動判別が可能となっている。そして、自動判別する判別項目に応じて、これら二つの方法のうち、いずれかの判別方法を選択することが可能である
【0050】
より詳細に説明すると、上記第1判別方法は、穀粒2の判別が容易である第1判別項目を対象としており、例えば、胴割粒、青未熟、砕粒、青死米、全面着色粒、茶米のうちの少なくともいずれかを判別することが可能である。すなわち、穀粒2の長さ、幅、厚み、色情報等を用いた単純アルゴリズムによって判別する方法である。
【0051】
一方、上記第2判別方法は、穀粒2の判別が困難である第2判別項目を対象としており、例えば、乳白粒、基部未熟粒、背腹白粒、白死米、部分着色粒、整粒、奇形粒、発芽粒、芽くされ粒、上記した青未熟及び基部未熟粒以外のうちの少なくともいずれかを判別することが可能である。このような構成により、判別項目ごとの判別の難易度に応じて、従来よりも高精度かつ効率的に穀粒2の品位判別を行うことが可能となっている。なお、上記した第1判別方法及び第2判別方法における各判別項目は、あくまでも項目分けの一例であり、それぞれの判別項目ごとに、第1判別方法と第2判別方法のどちらで判別するのかを自由に設定することが可能である。
【0052】
また、クラウドサーバ70の品位判別部72は、穀粒2の撮影画像から所定の測定値を算出する測定値算出手段と、学習モデルを用いた人工知能によって判別スコア値を算出する判別スコア値算出手段とを備えている。
【0053】
そして、上記測定値算出手段によって算出された所定の測定値は、予め設定された判別閾値である測定値の設定下限及び設定上限の間に入るか否かによって品位の判別が行われる。また、上記判別スコア値算出手段によって算出された判別スコア値は、予め設定された判別閾値である判別スコア値の設定下限及び設定上限の間に入るか否かによって品位の判別が行われる。
【0054】
続いて図7には、クラウドサーバ70における判別処理の一例がフロー図で示されている。図示されるように、撮像手段1から送信された表反射画像(ステップS121)、胴割画像(ステップS122)、表透過画像(ステップS123)及び裏反射画像(ステップS124)の4つの撮影画像は、管理手段の画像処理部71で判別処理に必要な画像処理が行われる(ステップS141)。
【0055】
続いて、各種処理画像に基づいて、前述した判別項目に応じて、各種の測定値や判別スコア値が算出される(ステップS142)。そして、算出された各種測定値や判別スコア値は、予め適正範囲として設定された判別閾値の範囲内(例えば、設定下限<測定値(判別スコア値)<設定上限)であるか否かが判定される(ステップS143)。
【0056】
測定値や判別スコア値が設定された判別閾値の範囲内である場合は、管理手段の品位判別部72で穀粒2の自動判別が実行される(ステップS144)。その後、穀粒2の各種判別結果が出力される(ステップS145)。
【0057】
一方、ステップS143において、測定値や判別スコア値が設定された上記判別閾値の範囲外である場合は、ユーザが測定値や判別スコア値の判別閾値に対する逸脱の程度に応じて、自動判別するか否かが選択可能となっている(ステップS146)。自動判別をしない場合は、ユーザが穀粒2を目視確認するなどして判別(手動)する(ステップS147)。そして、当該判別(手動)の結果、ユーザは判別閾値の設定下限及び設定上限の変更要否を検討し(ステップS148)、必要があれば、端末60を介して、品位判別部72に対し、自動判別する際の判別閾値の設定下限及び設定上限を変更(ステップS149)することが可能となっている。
【0058】
より詳細に説明すると、上記ステップS146においては、所定の上記測定値、又は、人工知能による上記判別スコア値が、判別閾値の設定上限や、設定下限の近傍にある場合、及び/又は、所定の割合以上が判別閾値の設定上限や設定下限を逸脱する場合に、端末60に穀粒2の画像を表示して、ユーザの目視等による判別(手動)が可能となっている。このような構成により、判別が困難な穀粒2に対して、ユーザが目視確認して判別することが可能となり、高精度かつ効率的に穀粒の品位判別を行うことが可能となる
【0059】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、又は、省略が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 撮像手段
2 穀粒
3a 上方カメラ
3b 下方カメラ
11 トレー配置筐体
12 上部筐体
13 下部筐体
14 円形載置部
15 下部開口
16 上部開口
17 周囲開口
20 第2下方光源
21 白色LED
22 シリンドリカルレンズ
30 上方光源
40 第1下方光源
50 トレー
60 端末
70 クラウドサーバ
71 画像処理部
72 品位判別部
73 制御部
74 入出力ポート
100 穀粒判別システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーに載置された穀粒を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段と通信可能であるとともに、該撮像手段から前記穀粒の撮影画像を受信して該穀粒の品位を判別可能なサーバと、
前記サーバと通信可能であるとともに、該サーバを介して前記撮像手段に対する撮像制御、及び、該サーバから受信した前記穀粒の判別結果を表示出力することが可能な端末と、を有し、
前記撮像手段は、個々の撮像手段固有の固有識別情報を有し、
前記端末は、前記固有識別情報を入力可能であるとともに、前記撮像手段と紐付けて該撮像手段を制御することが可能である
ことを特徴とする穀粒判別システム。
【請求項2】
前記サーバは、前記穀粒の品位を判別する判別手段を備え、
前記判別手段は、
学習モデルを用いた人工知能によって前記穀粒の品位を判別する第1判別方法と、単純アルゴリズムを用いて前記穀粒の品位を判別する第2判別方法とを有し、少なくとも前記第1判別方法と前記第2判別方法とのうち、少なくともいずれかの判別方法を選択可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の穀粒判別システム。
【請求項3】
前記第1判別方法は、前記穀粒の判別が容易である第1判別項目を対象とし、
前記第2判別方法は、前記穀粒の判別が困難である第2判別項目を対象とするものである
ことを特徴とする請求項2に記載の穀粒判別システム。
【請求項4】
前記判別手段は、
前記穀粒の撮影画像から所定の測定値を算出する測定値算出手段と、
前記学習モデルを用いた人工知能によって判別スコア値を算出する判別スコア値算出手段と、を備え、
前記所定の測定値又は前記判別スコア値が、判別閾値の近傍にある場合、及び/又は、所定の割合以上判別閾値を逸脱する場合に、前記端末に前記穀粒の画像を表示してユーザによる判別が可能である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の穀粒判別システム。