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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006587
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20240110BHJP
   B25C 1/06 20060101ALI20240110BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25C7/00 B
B25C1/06
B25C1/04
B25C7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107629
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴士
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 光司
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC02
3C068CC07
3C068DD11
3C068EE03
3C068JJ20
(57)【要約】
【課題】射出部と相手材との相対位置を変更する従来の方法とは異なる構成で、止具の打込み深さを変更可能な作業機を提供する。
【解決手段】作業機は、第1方向B1に移動可能であり、第1方向の一方側に移動することで止具を打撃するピストン部40と、ピストン部を第1方向の一方側に付勢する第1空気室と、ピストン部40が第1方向の一方側に移動する移動エネルギーを、内部の気体の圧力によって緩衝する第2空気室46と、を備え、第2空気室は、内部を外部に連通させる通気路32aを有し、通気路の流路面積を変更可能な調節部50を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に移動可能であり、前記第1方向の一方側に移動することで止具を打撃する打撃部と、
前記打撃部を前記第1方向の一方側に付勢する付勢部と、
前記打撃部が前記第1方向の一方側に移動する移動エネルギーを、内部の気体の圧力によって緩衝する緩衝用空気室と、を備え、
前記緩衝用空気室は、内部を外部に連通させる通気路を有し、
前記通気路の流路面積を変更可能な調節部を備える、作業機。
【請求項2】
前記第1方向に延びる筒形状のシリンダを含む、中空状のケース部を有し、
前記打撃部は、前記シリンダの内部で前記第1方向に移動可能であり、前記ケース部の内部を第1空気室と第2空気室とに仕切るピストン部であり、
前記付勢部は、内部の気体の圧力によって前記ピストン部を前記第1方向の一方側に付勢する前記第1空気室であり、
前記緩衝用空気室は、前記第2空気室である、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記ケース部は、前記シリンダの前記第1方向の一方側を閉塞し、該シリンダ及び前記ピストン部と協働して前記第2空気室を画定する底壁部材を有し、
前記通気路は、前記底壁部材に設けられる、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第2空気室の内部に設けられ、前記ピストン部が前記底壁部材に衝突する衝撃を緩衝するバンパを備え、
前記バンパは、前記通気路に繋がる貫通孔を有する、請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記調節部は、前記第1方向と交差する第2方向に移動可能な遮蔽板である、請求項1に記載の作業機。
【請求項6】
前記調節部は、作業者の操作により前記遮蔽板の移動量を調節可能な操作部を有する、請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記遮蔽板は、前記通気路の流路面積の90%以上を閉塞可能である、請求項5に記載の作業機。
【請求項8】
前記ピストン部は、ピストンと、該ピストンの前記第1方向の一方側に設けられ、前記止具を打撃するブレードと、を有し、
前記ブレードは、前記通気路を貫通する、請求項2に記載の作業機。
【請求項9】
前記調節部は、前記ブレードが挿通可能な挿通路を有する、請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記通気路は、前記シリンダの周壁を径方向に貫通する、請求項2に記載の作業機。
【請求項11】
前記調節部は、前記シリンダに外嵌されて該シリンダに対して回動し、前記通気路と連通可能な排気孔を有する遮蔽環である、請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
前記通気路は、複数設けられ、
前記遮蔽環は、複数の前記通気路の各々と連通可能な複数の前記排気孔を有する、請求項11に記載の作業機。
【請求項13】
モータと、
前記モータの駆動力によって前記打撃部を前記第1方向の他方側に移動する移動部と、を備える、請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止具を打撃して相手材に打ち込む、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の作業機では、ピストンの移動により打撃された止具が射出される射出部と、相手材との相対位置を、アジャスタによって変更することで、止具の打込み深さを変更可能な、打込み深さ調整機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-286784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の打込み深さ調整機構では、打込み深さを浅く設定すると、射出部と相手材との距離(即ち、止具をガイドしない距離)が長くなるため、打込み状態(即ち、仕上がり)が悪くなる傾向にあった。
【0005】
また、作業機では、ピストンの下死点位置に、バンパを設けるのが一般的である。ピストンが下向きに移動する際の運動エネルギーは、止具を打込むことで一部が消費されるが、余剰エネルギーが生じる。バンパは、ピストンが衝突することで、該ピストンの余剰エネルギーを吸収するものである。ここで、打込み深さを浅く設定すると、止具の打込みによって消費されるエネルギーが減少し、余剰エネルギーが増加するため、バンパが吸収するエネルギー量が増加し、バンパが破損する場合がある。一方で、バンパの耐久性の維持を図る場合、バンパを大型化したり質量が増える傾向にある。
【0006】
上記課題を鑑み、本発明の目的は、射出部と相手材との相対位置を変更する従来の方法とは異なる構成で、止具の打込み深さを変更可能な作業機を提供することである。本発明の他の目的は、止具の打込み深さを変更しても打込み状態の良い作業機を提供することである。本発明の他の目的は、耐久性を維持しつつ、小型化・軽量化を実現した作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の作業機は、第1方向に移動可能であり、前記第1方向の一方側に移動することで止具を打撃する打撃部と、前記打撃部を前記第1方向の一方側に付勢する付勢部と、前記打撃部が前記第1方向の一方側に移動する移動エネルギーを、内部の気体の圧力によって緩衝する緩衝用空気室と、を備え、前記緩衝用空気室は、内部を外部に連通させる通気路を有し、前記通気路の流路面積を変更可能な調節部を備える。
【0008】
他の実施形態の作業機は、前記第1方向に延びる筒形状のシリンダを含む、中空状のケース部を有し、前記打撃部は、前記シリンダの内部で前記第1方向に移動可能であり、前記ケース部の内部を第1空気室と第2空気室とに仕切るピストン部であり、前記付勢部は、内部の気体の圧力によって前記ピストン部を前記第1方向の一方側に付勢する前記第1空気室であり、前記緩衝用空気室は、前記第2空気室である。
【0009】
他の実施形態の作業機は、前記ケース部は、前記シリンダの前記第1方向の一方側を閉塞し、該シリンダ及び前記ピストン部と協働して前記第2空気室を画定する底壁部材を有し、前記通気路は、前記底壁部材に設けられ、前記第2空気室の内部に設けられ、前記ピストン部が前記底壁部材に衝突する衝撃を緩衝するバンパを備え、前記バンパは、前記通気路に繋がる貫通孔を有する。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態の作業機では、通気路の流路面積を調節部で変更することで、流路面積の変更量に応じて通気路からの排気により打撃部が失う抵抗負荷エネルギー量を調整し、打撃部のエネルギー量を調節可能となるため、打撃部が止具に与えるエネルギーを調節して、止具の打込み深さの調節が可能となる。従って、射出部と相手材との相対位置を変更する必要がないので、止具の打込み深さを変更しても打込み状態の良い作業機を提供することができる。
【0011】
また、第2空気室内に設けられるバンパへの負荷が低減され、耐久性の向上が見込めるため、該バンパの小型化を図ることが可能となり、耐久性を維持しつつ、小型化・軽量化を実現した作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る作業機を示す側面断面図である。
図2】通気路の流路面積が最も広い状態を示す図であり、(A)は正面断面図、(B)はA-A断面図である。
図3】通気路の流路面積が最も狭い状態を示す図であり、(A)は正面断面図、(B)はB-B断面図である。
図4】第2実施形態に係る作業機の、通気路の流路面積が最も広い状態を示す図であり、(A)は正面断面図、(B)はC-C断面図、(C)はD矢視図である。
図5】第2実施形態に係る作業機の、通気路の流路面積が最も狭い状態を示す図であり、(A)は正面断面図、(B)はE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る作業機を、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る作業機10は、ピストンが止具を打撃して相手材Wに打ち込む打込機であり、本例では釘を打ち込む釘打機である。まず、図1を参照して、作業機10の概要について説明する。作業機10は、金属及び合成樹脂で構成されるハウジング11を備えている。ハウジング11には、本体部12、ハンドル13、モータケース14、マガジン15、装着部16、射出部18、プッシュレバー19、アジャスタ20(図2(A)を参照)、コントローラ24,トリガ25等が設けられている。
【0015】
本体部12には、内部にシリンダ30、ヘッドカバー31、テールカバー32、バンパ33、ピストン部40、ホイール23等が収容されている。シリンダ30の中心線A1に沿った方向を、第1方向と称し、上下方向とも称する。第1方向の一方側は下側とも称し、第1方向の他方側は上側とも称する。また、図1の右側を前側と称し、図1の左側を後ろ側と称する。本体部12は、第1方向に延びる筒形状である。
【0016】
本体部12の中央部から後ろ側に向けて、ハンドル13が伸びており、本体部12の下部から後ろ側に向けて、モータケース14が延びている。モータケース14には、モータの一例である電動モータ21と、減速機22とが収容されている。電動モータ21と減速機22は、中心線A2に沿って配置されており、電動モータ21が後ろ側、減速機22が前側に配置されている。電動モータ21と減速機22は、同軸である。
【0017】
ハンドル13には、作業者に操作されるトリガ25が支持されている。ハンドル13の内部には、トリガスイッチ26が設けられている。トリガスイッチ26は、トリガ25の動作を検知する。ハンドル13の後ろ側には、装着部16が設けられている。装着部16には、電池パック17が装着されている。電池パック17は、電動モータ21に電力を供給する。ハンドル13の後端部の内部には、コントローラ24が収容されている。コントローラ24は制御部の一例であって、マイコンを有し、トリガスイッチ26等から受ける信号に応じて、電動モータ21の駆動を制御する。
【0018】
モータケース14の下側には、マガジン15が装着されている。マガジン15の内部には、複数の止具が保持されている。本体部12の下側には、マガジン15から供給される止具が射出される、射出部18が設けられている。射出部18に隣接して、上下方向に延びるプッシュレバー19が設けられている。プッシュレバー19は、上下方向に移動可能である。
【0019】
作業者によりプッシュレバー19の最下端(先端部)が相手材Wに当接されると、該プッシュレバー19の動作(上方向への移動)がプッシュレバースイッチ(図示外)で検知され、該プッシュレバースイッチからコントローラ24に対して、プッシュレバー動作信号が送信される。また、作業者によりトリガ25が引かれると、該トリガ25の動作がトリガスイッチ26で検知され、該トリガスイッチ26からコントローラ24に対して、トリガ動作信号が送信される。コントローラ24は、プッシュレバー動作信号及びトリガ動作信号を受信すると、電動モータ21を作動させる制御を行う。
【0020】
上下方向に延びるプッシュレバー19の中間には、図2(A)に示すアジャスタ20が設けられている。アジャスタ20は、特許文献1に記載されたアジャスタに相当する。アジャスタ20は回動可能であり、該アジャスタ20を回動させると、プッシュレバー19の先端部と射出部18との距離が変化する。これにより、プッシュレバー19の先端部が相手材に当接されていない状態での、射出部18と相手材Wとの相対位置が変更されて、止具の打込み深さが変更される。具体的には、アジャスタ20を一方向に回動させると、プッシュレバー19の先端部と射出部18とが離れて、止具の打込み深さが浅くなる。これに対し、アジャスタ20を他方向に回動させると、プッシュレバー19の先端部と射出部18とが近づいて、止具の打込み深さが深くなる。
【0021】
図1に戻り、本体部12の内部に収容されている、シリンダ30、ヘッドカバー31、テールカバー32、バンパ33、ピストン部40等について説明する。なお、ホイール23も本体部12の内部に収容されているが、ホイール23については図2(A)を参照して後述する。
【0022】
シリンダ30は、第1方向に延びる筒形状(本例では円筒形状)の部材である。シリンダ30の内部には、ピストン部40が、第1方向に移動可能に設けられている。ピストン部40は、打撃部の一例である。
【0023】
シリンダ30の上方には、ヘッドカバー31が設けられている。ヘッドカバー31は、シリンダ30の第1方向の他方側を閉塞する。シリンダ30の下方には、テールカバー32が設けられている。テールカバー32は、底壁部材の一例であって、シリンダ30の第1方向の一方側を閉塞する。テールカバー32には、通気路32aが形成されている。通気路32aは、中心線A1と同軸である。通気路32aは、テールカバー32を上下方向に貫通している。これらシリンダ30、ヘッドカバー31、及びテールカバー32は、金属製であり、中空状のケース部を構成する。ケース部の内部は、ピストン部40により仕切られる。
【0024】
ケース部の内部のうち、ピストン部40、シリンダ30、及びヘッドカバー31が協働して画定する、該ピストン部40の後述するシールリング43よりも上側の領域が、第1空気室45である。第1空気室45は密閉されており、第1空気室45の内部には気体(本例では空気)が封入されている。第1空気室45は、付勢部の一例であって、内部の気体の圧力に追って、ピストン部40を第1方向B1の一方側に付勢する。
【0025】
ケース部の内部のうち、ピストン部40、シリンダ30、及びテールカバー32が協働して画定する、該ピストン部40の後述するシールリング43よりも下側の領域が、第2空気室46である。第2空気室46は、緩衝用空気室の一例であって、ピストン部40が第1方向B1の一方側に移動する移動エネルギーを、内部の気体の圧力によって緩衝する。
【0026】
第2空気室46の内部で、テールカバー32の上には、バンパ33が設けられている。バンパ33は、止具を打撃するピストン部40がテールカバー32に衝突する衝撃を緩衝するためのもの(即ち、下向きに移動するピストン部40の余剰エネルギーを吸収するもの)である。バンパ33は、円筒形状であって、ゴム状弾性体である。バンパ33には、貫通孔33aが形成されている。貫通孔33aは、中心線A1と同軸である。貫通孔33aは、バンパ33を上下方向に貫通しており、通気路32aに繋がる孔である。
【0027】
第2空気室46は密閉されておらず、第2空気室46の内部は、バンパ33の貫通孔33a及びテールカバー32の通気路32aを介して、ケース部の外部と連通している。
【0028】
図2(A)にも示すように、ピストン部40は、ベース部材41と、ブレード42と、シールリング43と、スライドリング44とを有する。
【0029】
ベース部材41は、第1方向に延びる柱状(本例では円柱状)の部材である。ベース部材41は、金属製である。
【0030】
ベース部材41の側壁の中央部には、嵌合溝41aが設けられている。嵌合溝41aには、環状のシールリング43が嵌合している。シールリング43は、シール部材の一例であって、シリンダ30の内壁と当接して、シール面を形成する。シールリング43は、断面形状がX形のXリングであり、ゴム製である。
【0031】
ベース部材41の側壁の上部及び下部(即ち、嵌合溝41aよりも上側と下側)には、シールリング43を挟み込むように、環状のスライドリング44が一対設けられる。スライドリング44は、摺動部材の一例であって、シリンダ30の内壁と当接して、該シリンダ30の内部でピストン部40が上下方向に移動する際の、摺動抵抗を減少させる。またスライドリング44が上下に設けられることにより、シリンダ30の内部でピストン部40が上下方向に移動する際の、該ピストン部40の傾きを減少させる。スライドリング44は、摩擦抵抗が小さく耐熱性に優れた合成樹脂製である。この合成樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂やフッ素樹脂が好適である。
【0032】
ブレード42は、ベース部材41の第1方向の他方側に設けられ、該第1方向に延びる棒状の部材である。ブレード42は、金属製である。ブレード42は、バンパ33の貫通孔33a及びテールカバー32の通気路32aを貫通している。ブレード42の最下端(先端部)は、マガジン15から射出部18に供給される止具を打撃する。
【0033】
本体部12の内部の、テールカバー32の下方には、ホイール23が収容されている。ホイール23は、中心線A2に沿って配置されており、減速機22の前側に配置されている。ホイール23は、電動モータ21及び減速機22と同軸である(図1を参照。)。ホイール23の前面には、周方向に所定間隔で、複数のピニオンピン23aが設けられている。ブレード42の左側面には、ラック42aが設けられている。ラック42aは、複数の凸部及び凹部を有している。
【0034】
電動モータ21が作動すると、該電動モータ21の駆動力が、減速機22により減速され、ホイール23に伝達されて、該ホイール23が反時計回りに回動する。すると、複数のピニオンピン23aがラック42aの複数の凸部に順次係合して、ブレード42及びベース部材41を含むピストン部40が上方向に移動する。これにより、第1空気室45内の空気が徐々に圧縮されて、空気圧が高まる。
【0035】
ピストン部40が上方向に移動して、上死点に到達すると、すべてのピニオンピン23aがラック42aと係合しなくなる。すると、第1空気室45内の圧縮空気の圧力によって、ピストン部40が下方向に移動し、ブレード42が止具を打撃する。その後も、ピストン部40は下方向に移動して、下死点に到達し、バンパ33に衝突する。
【0036】
ホイール23、ピニオンピン23a、及びラック42aは、移動部の一例であって、電動モータ21の駆動力によってピストン部40を第1方向の他方側に移動するものである。これらホイール23、ピニオンピン23a、及びラック42aは、金属製である。
【0037】
ピストン部40が下方向に移動すると、第2空気室46内の空気が、バンパ33の貫通孔33a及びテールカバー32の通気路32aを介して、ケース部の外部に排気されるが、本例では、該通気路32aの流路面積を変更可能な調節部50を設けている。調節部50は、遮蔽板51、ダイヤル52、及び係合ピン53を有する。
【0038】
調節部50は、本体部12に固定されたブラケット54の上に設けられる。ブラケット54の上には、ダイヤル52が設けられる。ダイヤル52は、中心線A3を中心に回動可能である。中心線A3は、中心線A1と平行である。ダイヤル52には、上面から突出する係合ピン53が設けられる。
【0039】
ダイヤル52の上には、遮蔽板51が設けられる。遮蔽板51は、第1方向B1と交差する第2方向B2に移動可能な、板状の部材である。本例では、第1方向B1は上下方向であり、第2方向B2は該第1方向B1と直交する左右方向である。遮蔽板51は、図2(B)に示すように、平面視で「コ」字形である。遮蔽板51の第2方向B2の一方側(以下、前端側と称する)の面には、他方側に向けて窪んだ挿通路51aが形成されている。遮蔽板51の第2方向B2の他方側には、長孔51bが形成されている。係合ピン53が、遮蔽板51の長孔51bに係合している。
【0040】
図2及び図3を参照して、調節部50による、通気路32aの流路面積の変更について説明する。図2は、通気路32aの流路面積が最も広い状態を示す図である。この状態では、遮蔽板51が退避位置にあり、該遮蔽板51は、前端側の一部のみが通気路32aを閉塞するので、該通気路32aの流路面積は最も広い。この状態を、100%の流路面積と定義する。
【0041】
この状態で、作業者の操作によりダイヤル52が回動されると、係合ピン53が長孔51b内を移動することにより、遮蔽板51が第2方向B2の一方側に移動して、図3の状態となる。なお、遮蔽板51は、前後方向(図2(B)の上下方向)には移動できないように構成されている。
【0042】
ダイヤル52は、操作部の一例であって、作業者の操作により遮蔽板51の移動量を調節可能なものである。遮蔽板51の移動量は、無段階、又はノッチ式で多段階に調節できる。遮蔽板51の移動量が所望量となったら、ダイヤル52の回動をロックして、所望量から変動しないようにする。
【0043】
図3は、通気路32aの流路面積が最も狭い状態を示す図である。この状態では、遮蔽板51が進出位置にあり、該遮蔽板51は、挿通路51a以外の部分が通気路32aを閉塞するので、該通気路32aの流路面積は最も狭い。この場合は、通気路32aの流路面積の90%以上が閉塞される。
【0044】
このように、通気路32aの流路面積を狭くした状態で、止具の打込み作業を行うと、第2空気室46内から通気路32aを通って排出される排気の流路抵抗が大きくなることから、第2空気室46内の空気が、ピストン部40の運動エネルギーを吸収するエアクッションとして機能する。ピストン部40の運動エネルギーが減少することにより、ピストン部40が止具に与えるエネルギーも減少するため、止具の打込み深さを浅くすることができる。従って、止具の打込み深さを調節する際に射出部18と相手材Wとの相対位置を変更する必要がないので、止具の打込み深さを変更しても打込み状態の良い作業機10を提供することができる。尚、通気路32aの流路面積を広くすると、通気路32aを通って排出される排気の流路抵抗が小さくなることから、第2空気室46内の空気によって吸収されるエネルギーが減少するため、ピストン部40が止具に与えるエネルギーも増加し、止具の打込み深さは深くなる。
【0045】
また、ピストン部40の運動エネルギーが減少すると、ピストン部40が止具を打撃した後の余剰エネルギーも減少するため、ピストン部40がバンパ33に与えるエネルギーが減少する。これにより、バンパ33の負荷を低減することができるため、バンパ33の耐久性を向上させたり、小型化・軽量化を実現した作業機10を提供することができる。
【0046】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る作業機10は、第1実施形態に係る作業機10と比較して、シリンダ30、テールカバー32、バンパ33、及び調節部50に代えて、シリンダ130、テールカバー132、バンパ133、及び調節部150が設けられる点のみが相違し、その他の点は同様であるため、該相違点について説明する。
【0047】
シリンダ130は、シリンダ30と比較して、通気路130aが設けられている点が異なる。通気路130aは、図4(A)に示すように、シリンダ130の下部で、該シリンダ130の周壁(即ち、第2空気室46の側壁)を径方向に貫通して、シリンダ130の内部(即ち、第2空気室46の内部)を、シリンダ130の外部(即ち、ケース部の外部)に連通させている。通気路130aは、図4(B)に示すように、放射状に複数本(本例では7本)設けられている。シリンダ130の外壁の、通気路130aが無い部位には、長穴130bが設けられている。
【0048】
調節部150は、遮蔽環151、レバー152,軸部材153,及び係合ピン154を有する。遮蔽環151は、シリンダ130に外嵌されて、該シリンダ130に対して回動する。遮蔽環151は、通気路130aと連通可能な排気孔151aを有する。排気孔151aは、複数本の通気路130aに対応して、複数個(本例では7個)設けられている。
【0049】
シリンダ130の外壁には、軸部材153が設けられている。軸部材153には、レバー152が回動可能に軸支されている。レバー152には、係合ピン154が設けられている。係合ピン154は、遮蔽環151を貫通して、長穴130bに係合している。
【0050】
テールカバー132は、テールカバー32と比較して、通気路132aの開口面積が通気路32aの開口面積よりも小さい点が異なる。またバンパ133は、バンパ33と比較して、貫通孔133aの開口面積が貫通孔33aの開口面積よりも小さい点が異なる。これら通気路132a及び貫通孔133aの開口面積は、ブレード42が挿通可能な面積であり、第1実施形態に係る通気路32a及び貫通孔33aの開口面積よりも狭い。第2実施形態では、通気路130aの流路面積を調節部150により調節することで、止具の打込み深さを変更するため、射出部18に通じる通気路132aの開口面積は小さくした方がよいからである。
【0051】
図4及び図5を参照して、調節部150による、通気路130aの流路面積の変更について説明する。図4は、通気路130a及び通気路132aの流路面積が最も広い状態を示す図である。この状態では、通気路130aの位置と排気孔151aの位置とが一致しているので、該通気路130aの流路面積は最も広い。この状態では、止具の打込みによる第2空気室46からの排気は、通気路130a及び通気路132aから行われる。
【0052】
この状態で、図4(C)に示すように、作業者の操作によりレバー152が矢印方向(反時計回り)に回動されると、係合ピン154がシリンダ130の長穴130b内を移動することにより、係合ピン154が貫通している遮蔽環151が回動して、図5の状態となる。
【0053】
レバー152は、操作部の一例であって、作業者の操作により遮蔽環151の移動量を調節可能なものである。遮蔽環151の移動量は、無段階、又はノッチ式で多段階に調節できる。遮蔽環151の移動量が所望量となったら、レバー152の回動をロックして、所望量から変動しないようにする。
【0054】
図5は、通気路130a及び通気路132aの流路面積が最も狭い状態を示す図である。この状態では、通気路130aの位置と排気孔151aの位置とが一致しておらず、通気路130aは遮蔽環151の周壁により完全に閉塞されている。この状態では、止具の打込みによる第2空気室46からの排気は、通気路132aのみから行われる。
【0055】
このように、通気路130aの流路面積を狭くした状態で、止具の打込み作業を行うと、第2空気室46内から通気路130a及び通気路132aを通って排出される排気の流路抵抗が大きくなることから、第2空気室46内の空気が、ピストン部40の運動エネルギーを吸収するエアクッションとして機能する。ピストン部40の運動エネルギーが減少することにより、ピストン部40が止具に与えるエネルギーも減少するため、止具の打込み深さを浅くすることができる。従って、止具の打込み深さを調節する際に射出部18と相手材Wとの相対位置を変更する必要がないので、止具の打込み深さを変更しても打込み状態の良い作業機10を提供することができる。尚、通気路130a及び通気路132aの流路面積を広くすると、通気路130a及び通気路132aを通って排出される排気の流路抵抗が小さくなることから、第2空気室46内の空気によって吸収されるエネルギーが減少するため、ピストン部40が止具に与えるエネルギーも増加し、止具の打込み深さは深くなる。
【0056】
また、ピストン部40の運動エネルギーが減少すると、ピストン部40が止具を打撃した後の余剰エネルギーも減少するため、ピストン部40がバンパ133に与えるエネルギーが減少する。これにより、バンパ133の負荷を低減することができるため、バンパ33の耐久性を向上させたり、小型化・軽量化を実現した作業機10を提供することができる。
【0057】
以上に説明した、第1実施形態又は第2実施形態に係る作業機10では、アジャスタ20を併用することができる。例えば、調節部50又は調節部150により通気路32a又は通気路130aの流路面積を最も狭くしても、なお所望の打込み浅さとならない場合には、アジャスタ20を併用して、所望の打込み浅さとすることができる。この併用による場合には、調節部50又は調節部150による調節を行うことによって、アジャスタ20による調節量は少なくできる。よって、第1実施形態又は第2実施形態に係る作業機10によれば、特許文献1に記載されたような、アジャスタ20のみにより調節する場合と比べて、打ち込み状態(仕上がり)を良くすることができる。
【0058】
なお、アジャスタ20は、設けなくてもよい。
[変形例]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
止具である釘の形状は、ステープル形状でも棒形状でもアーチ形状でもよい。止具は、釘には限られず、タッカや鋲であってもよい。
【0060】
作業機10は、第1空気室45内に封入された空気を圧縮するものではなく、第1空気室45内に外部から圧縮空気を供給するものであってもよい。
【0061】
第1実施形態において、調節部50が通気路32aの流路面積を変更する構成は、例えばカメラレンズの絞り機構のように、中心部が開放されるように複数の絞り羽根を組み合わせ、該複数の絞り羽根を動作することにより、中心部の開放面積が変更されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…作業機、12…本体部、18…射出部、19…プッシュレバー、20…アジャスタ、21…電動モータ、23…ホイール、23a…ピニオンピン、25…トリガ、30…シリンダ、31…ヘッドカバー、32…テールカバー、32a…通気路、33…バンパ、33a…貫通孔、40…ピストン部、41…ベース部材、42…ブレード、42a…ラック、45…第1空気室、46…第2空気室、50…調節部、51…遮蔽板、51a…挿通路、52…ダイヤル、130…シリンダ、130a…通気路、132…テールカバー、133…バンパ、150…調節部、151…遮蔽環、151a…排気孔、152…レバー、B1…第1方向、B2…第2方向
図1
図2
図3
図4
図5