(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065870
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】複合型不織布シート
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4382 20120101AFI20240508BHJP
A47L 13/16 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
D04H1/4382
A47L13/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174943
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074AB05
4L047AA13
4L047AA19
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB06
4L047BA04
4L047CA12
4L047CA19
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】合成繊維とパルプ繊維を含み、エンボス加工が施された複合型不織布のシートにおいて、拭き取り性、製品の交換頻度及び収納性に優れ、意匠性も良好である複合型不織布シートを提供する。
【解決手段】合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のシートであって、複合型不織布の坪量が40g/m
2以上150g/m
2以下、シートの厚さが0.50mm以上1.50mm以下であり、シートの両面には、エンボスの凸部及び凹部がシートの表裏で相対応する単位エンボスがパターン状に加工され、単位エンボスによって形成される、エンボス1個当たりの空間の体積が4.8mm
3以上20mm
3以下であり、単位エンボスにおけるエンボスエッジ率が0.50mm/mm
2以上0.80mm/mm
2以下であることを特徴とする、複合型不織布シートを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のシートであって、
前記複合型不織布の坪量が40g/m2以上150g/m2以下、シートの厚さが0.50mm以上1.50mm以下であり、
シートの両面には、エンボスの凸部及び凹部がシートの表裏で相対応する単位エンボスがパターン状に加工され、
前記単位エンボスによって形成される、エンボス1個当たりの空間の体積が4.8mm3以上20mm3以下であり、
前記単位エンボスにおけるエンボスエッジ率が0.50mm/mm2以上0.80mm/mm2以下であることを特徴とする、複合型不織布シート。
【請求項2】
前記単位エンボスの深さが350μm以上900μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布シート。
【請求項3】
前記単位エンボスの面積が5mm2以上35mm2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布シート。
【請求項4】
シートにおける、単位面積当たりのエンボス面積率が28%以上76%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布シート。
【請求項5】
前記単位エンボスにおいて、エンボス断面は角度を持つことを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布シート。
【請求項6】
シートがペーパータオルシートとして、ポップアップ形式で取り出せるように積層された、ペーパータオルであることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布シート。
【請求項7】
シートがペーパータオルシートとして、ロール状に巻き取られた、ペーパータオルであることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス加工された複合型不織布シートに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布製のペーパータオルには、キッチン周りの油汚れ掃除、水拭き、食品の水切り等、様々な用途が存在し、水及び油に対する優れた吸収性、掃除用途に使用した際にも簡単に破れずに継続使用に耐える強度や優れた拭き取り性が求められている。
【0003】
そのような強度や拭き取り性を満たすための不織布の製造技術として、合成繊維の不織布にパルプを水流交絡する技術が開発されている。
【0004】
また、強度や拭き取り性とは別に、不織布に厚みや意匠性を付与するための技術としては、不織布に一定のパターンからなるエンボス加工を施すことはよく知られている。
【0005】
また、水流交絡により製造したワイパーの先行技術文献として、例えば、特許文献1には、パルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる不織布ワイパーであって、パルプ繊維ウエブに含まれるパルプ繊維の平均繊維長が1.0~5.0mmであり、当該不織布ワイパーの坪量が20~42g/m2であり、構成比がパルプ繊維ウエブ70~50質量%、合成繊維ウエブ30~50質量%である、ことを特徴とする不織布ワイパーが開示されている。
エンボス加工を施したワイパーの先行技術文献として、例えば、特許文献2には、不織布からなり、凹凸形状を有する清掃用ワイパーであって、凹部が熱圧着によって形成されており、凸部が多数の不連続な直線状及び/又はドット状の凹部により六角形の連続模様を呈することを特徴とする清掃用ワイパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-193634号公報
【特許文献2】特開2005-245913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載されるような凹凸形状は、意匠性の他に、掃除用途にシートを使用した際に汚れなどの拭き取り性を向上させる効果もある。凹凸形状によって拭き取り性が向上する要因として、エンボスの凹凸の境目に形成されるエッジの数を多くすることや凹凸1つ当たりの空間を大きくする(体積を大きくする)ことが知られている。
【0008】
しかし、エッジの数を多くしすぎると、エンボス1つ当たりの面積及び形成される空間が少なくなり、結果的に拭き取り性に劣ることがある。逆に、単位エンボスによって形成される空間が大きすぎると、今度は紙厚が高くなりすぎてしまい、製品としたときに同枚数では製品が嵩張り、収納性に劣る。
また、単位エンボスによって形成される空間が小さすぎると、製品としての嵩張りは小さくなるが、汚れの拭き取り性(かき取り性)に劣る。
【0009】
以上の様に、従来のエンボス加工が施された不織布シートでは、掃除用途に使用した際の汚れ等の拭き取り性とシートの厚み、意匠性、収納性、交換頻度を全て高水準で満たすことが困難であった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、合成繊維とパルプ繊維を含み、エンボス加工が施された複合型不織布のシートにおいて、拭き取り性、製品の交換頻度及び収納性に優れ、意匠性も良好である複合型不織布シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のシートにおいて、不織布の坪量及びシートの厚さを所定の数値範囲内に調整し、シートの両面を、エンボスの凸部及び凹部がシートの表裏で相対応する単位エンボスによってパターン状に加工し、かつ、単位エンボスによって形成される、エンボス1個当たりの空間の体積と、単位エンボスにおけるエンボスエッジ率をそれぞれ所定の数値範囲内に調整することで、拭き取り性、製品の交換頻度及び収納性に優れ、意匠性も良好である複合型不織布シートとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のシートであって、前記複合型不織布の坪量が40g/m2以上150g/m2以下、シートの厚さが0.50mm以上1.50mm以下であり、シートの両面には、エンボスの凸部及び凹部がシートの表裏で相対応する単位エンボスがパターン状に加工され、前記単位エンボスによって形成される、エンボス1個当たりの空間の体積が4.8mm3以上20mm3以下であり、前記単位エンボスにおけるエンボスエッジ率が0.50mm/mm2以上0.80mm/mm2以下であることを特徴とする、複合型不織布シートである。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の複合型不織布シートであって、前記単位エンボスの深さが350μm以上900μm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の複合型不織布シートであって、前記単位エンボスの面積が5mm2以上35mm2以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の複合型不織布シートであって、シートにおける、単位面積当たりのエンボス面積率が28%以上76%以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載の複合型不織布シートであって、前記単位エンボスにおいて、エンボス断面は角度を持つことを特徴とするものである。
【0017】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載の複合型不織布シートであって、シートがペーパータオルシートとして、ポップアップ形式で取り出せるように積層された、ペーパータオルであることを特徴とするものである。
【0018】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載の複合型不織布シートであって、シートがペーパータオルシートとして、ロール状に巻き取られた、ペーパータオルであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、合成繊維とパルプ繊維を含み、エンボス加工が施された複合型不織布のシートにおいて、拭き取り性、製品の交換頻度及び収納性に優れ、意匠性も良好である複合型不織布シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る複合型不織布シートを積層又は巻き取ったペーパータオルの斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る複合型不織布シートの単位エンボスの拡大図である。
【
図4】
図2の単位エンボスの模式図及び断面線D
1-D
1の断面図である。
【
図5】単位エンボスの面積の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0022】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
<複合型不織布シート>
本実施形態に係る複合型不織布シート1は、合成繊維とパルプ繊維を含む、複合型不織布のシートである。
複合型不織布シート1の用途は特に限定されないが、ペーパータオルやキッチンタオルの用途で用いられることが好ましく、ペーパータオルの用途で用いられることがより好ましい。
【0024】
図1は、本実施形態に係る複合型不織布シート1を積層又は巻き取ったペーパータオル10の斜視図である。ペーパータオル10の形態は特に限定されず、
図1(a)に示すように複合型不織布シート1がペーパータオルシートとして、ポップアップ形式で取り出せるように積層されていてもよく、
図1(b)に示すように複合型不織布シート1がロール状に巻き取られていてもよいが、ポップアップ形式で取り出せるように積層される方が好ましい。このような形態であることにより、本願のような収納性に優れたペーパータオル10とすることができる。また、
図1(a)に示すように、ペーパータオル10はフィルムやカートン等の包装体20に包装されていてもよい。
【0025】
なお、
図1(a)のペーパータオル10における複合型不織布シート1の収容の形態は、ポップアップ形式で取り出せる形態であれば特に限定されないが、V字折やZ字折、変形Z字状折(折線に直交する断面がZ字状となり、かつ、上側辺が下側辺よりも長い折り方)のいずれかであることが好ましく、V字折であることがより好ましい。
【0026】
(シート)
複合型不織布シート1に用いる複合型不織布に含まれる合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレンから選択される一種類以上の合成繊維を含むことが好ましいが、中でもポリプロピレンを含むことがより好ましい。
また、複合型不織布に含まれるパルプ繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維(木材パルプ)を用いることができるが、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。なお、合成繊維とパルプ繊維を含む複合型不織布の製造方法に関しては後述する。
【0027】
このとき、複合型不織布における合成繊維の割合(含有割合)が5%以上50%以下であることが好ましく、9%以上41%以下であることがより好ましく、12%以上28%以下であることが更に好ましい。合成繊維の割合が5%未満であると、エンボスの定着性に劣るため、使用時の拭き取り性に劣る。合成繊維の割合が50%を超えると、吸水性に劣り、交換頻度が高くなる。
また、複合型不織布におけるパルプ繊維の割合(含有割合)が50%以上95%以下であることが好ましく、59%以上91%以下であることがより好ましく、72%以上88%以下であることが更に好ましい。パルプ繊維の割合が50%未満であると、吸水性に劣り、交換頻度が高くなる。パルプ繊維の割合が95%を超えると、エンボスの定着性に劣るため、使用時の拭き取り性に劣る。
【0028】
さらに、複合型不織布は、一般的な湿潤紙力剤を含有することが好ましい。湿潤紙力剤(固形分(有効成分)換算)の含有率は、パルプ繊維(絶乾)に対して、0.05%以上1.0%以下が好ましく、0.10%以上0.5%以下がより好ましく、0.20%以上0.40%以下が更に好ましい。湿潤紙力剤の含有率を上記の数値範囲内にすることで、本願のような、拭き取り性に優れたペーパータオル10を得ることができる。
また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、複合型不織布に耐熱安定剤、滑剤等を配合することができる。耐熱安定剤としては、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)等のフェノール系安定剤等が挙げられる。
【0029】
複合型不織布の坪量は、40g/m2以上150g/m2以下であり、50g/m2以上130g/m2以下であることが好ましく、60g/m2以上100g/m2以下であることがより好ましい。坪量が40g/m2未満であると、結果としてシートの厚さが低くなりすぎてしまい、拭き取り性に劣り、交換頻度も高くなる。坪量が150g/m2を超えると、結果としてシートの厚さが厚くなりすぎてしまい、同じ枚数の既製品と比べて収納性に劣る。
なお、複合型不織布の坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。
【0030】
また、複合型不織布の比容積は、5cm3/g以上17cm3/g以下であることが好ましく、7cm3/g以上15cm3/g以下であることがより好ましく、9cm3/g以上14cm3/g以下であることが更に好ましい。比容積が上記の数値範囲内であることにより、拭き取り性、製品の交換頻度及び収納性に優れる複合型不織布シート1とすることができる。
なお、複合型不織布の比容積は、複合型不織布の厚さを坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表す。
【0031】
複合型不織布シート1の厚さは0.5mm以上1.50mm以下であり、0.6mm以上1.3mm以下であることが好ましく、0.7mm以上1.2mm以下であることがより好ましい。厚さが0.5mm未満であると、複合型不織布シート1が拭き取り性に劣り、厚さが1.50mmを超えると、同枚数の既製品と比べて収納性に劣り、また、同体積の既製品と比べて交換頻度が高くなる。
なお、複合型不織布シート1の厚さはシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定する。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。また、測定を10回繰り返して測定結果を平均する。なお、測定は3枚の複合型不織布シート1を重ねて測定し、値を1/3にして、紙厚の値とする。
【0032】
複合型不織布シート1のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度(DMDT)は8N/25mm以上80N/25mm以下であることが好ましく、13N/25mm以上70N/25mm以下であることがより好ましく、20N/25mm以上55N/25mm以下であることが更に好ましい。また、複合型不織布シート1のJIS P 8113に基づく乾燥時のCD方向の引張強度(DCDT)は4N/25mm以上50N/25mm以下であることが好ましく、6N/25mm以上40N/25mm以下であることがより好ましく、10N/25mm以上30N/25mm以下であることが更に好ましい。
DMDTが8N/25mm未満であるか、又はDCDTが4N/25mm未満であると、複合型不織布シート1が使用時に破れやすくなり、交換頻度が高くなる。DMDTが80N/25mmを超えるか、又はDCDTが50N/25mmを超えると、複合型不織布シート1の坪量が大きくなりすぎてしまい、結果的に厚さが厚くなって同枚数の既製品と比べて収納性に劣る。
【0033】
さらに、複合型不織布シート1のJIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTは5.5N/25mm以上64N/25mm以下であることが好ましく、8.5N/25mm以上53N/25mm以下であることがより好ましく、14N/25mm以上41N/25mm以下であることが更に好ましい。GMTが5.5N/25mm未満であると、複合型不織布シート1が使用時に破れやすくなり、交換頻度が高くなる。GMTが64N/25mmを超えると、複合型不織布シート1の坪量が大きくなりすぎてしまい、結果的に厚さが厚くなって同枚数の既製品と比べて収納性に劣る。
【0034】
なお、シートのDMDT及びDCDTは、上述したようにJIS P 8113に基づいて測定するが、測定条件として、速度は300m/min、試験片幅は25mm、つかみ具間の距離は100mmとする。なお、ミシン目の間隔、シート幅の関係でつかみ具間の距離を100mm確保できない場合は、適宜短くしてよい。また、それぞれの方向の強度であるDMDT及びDCDTの積の平方根からGMTを算出する。この場合におけるMD方向とは、シート(複合型不織布)の製造時における製造方向(流れ方向)を意味する。
【0035】
(単位エンボス)
本実施形態に係る複合型不織布シート1において、シートの両面には、エンボスの(エンボス)凸部21及び(エンボス)凹部22がシートの表裏で相対応する単位エンボス2がパターン状に加工されており、その周囲が非エンボス領域3となっている。単位エンボス2が加工されていないと、複合型不織布シート1が拭き取り性、意匠性に劣る。
図2は、本実施形態に係る複合型不織布シート1の単位エンボス2の拡大図であり、
図3は、
図2をシートの裏面側から見た図である。また、
図4(a)は
図2における単位エンボス2の模式図であり、
図4(b)は断面線D
1-D
1の断面図である。以下、
図2、
図3及び
図4を参照しつつ、本実施形態に係る複合型不織布シート1に施された単位エンボス2について詳細に説明する。
【0036】
単位エンボス2の形状は、三角形、四角形、又は五角形から十角形までのいずれかの多角形から選択される多角形の形状であることが好ましいが、中でも
図2に示すような横菱型形の四角形状であることがより好ましい。
また、
図4(b)に示すように、単位エンボス2において、エンボス断面は角度を持つことが好ましい。エンボス断面が角度を持つことにより、複合型不織布シート1が拭き取り性及び意匠性に優れることになる。
【0037】
また、単位エンボス2の深さ(エンボス深さ)は350μm以上900μm以下であることが好ましく、450μm以上750μm以下であることがより好ましく、500μm以上700μm以下であることが更に好ましい。単位エンボス2の深さが350μm未満であると、単位エンボス2によって形成される空間が小さくなり、拭き取り性に劣る。単位エンボス2の深さが900μmを超えると、紙厚が高くなりすぎてしまい、同枚数の既製品と比べて収納性に劣り、また、同体積の既製品と比べて交換頻度が高くなる。
単位エンボス2の深さは、3Dマイクロスコープを用いて計測する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マイクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。測定方法及び算出方法は、例えば特開2022-066267号公報に詳細に記載されている。なお、測定の対象となる箇所は、
図3の長さL1の部分における深さである。
【0038】
さらに、単位エンボス2の面積(エンボス面積)が5mm2以上35mm2以下であることが好ましく、10mm2以上25mm2以下であることがより好ましく、15mm2以上22mm2以下であることが更に好ましい。面積が5mm2未満であると、単位エンボス2によって形成される空間が小さくなり、複合型不織布シート1が拭き取り性に劣る。面積が35mm2を超えると、後述するエンボスエッジ率が小さくなり、複合型不織布シート1が汚れの拭き取り性(かき取り性)に劣る。
【0039】
エンボス面積は、3Dマイクロスコープを用いて計測する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マイクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。倍率および視野面積は、対象となる単位エンボスの大きさによって適宜変更できる。
まず、
図5に示す単位エンボス2の測定画像において、計測対象領域Aを設定する。計測対象領域Aは、計測対象となる単位エンボス2が1つ以上入るように設定すれば特に制限はない。
【0040】
次に、単位エンボス2の面積を算出するための、高さしきい値を設定する。これは、前述したエンボス深さの中央(高さ方向の中心点)を横切るように水平に引く。このようにして得られた、計測対象の単位エンボス断面積を暫定的な面積とする。
同様の方法で、単位エンボス2の10個について計測を行い、得られた単位エンボス2の断面積の平均値を、単位エンボス2の面積として最終的に採用する。なお、面積測定時に計測対象となる単位エンボス2が他の隣接する単位エンボス2と繋がり、1つの領域として計測される場合は、その値は採用せず、別の領域について同様の測定を行う。
【0041】
そして、単位エンボス2によって形成される、エンボス1個当たりの空間の体積が4.8mm
3以上20mm
3以下であり、7mm
3以上14.5mm
3以下であることが好ましく、9mm
3以上11.5mm
3以下であることがより好ましい。体積が4.8mm
3未満であると、複合型不織布シート1が拭き取り性に劣り、体積が20mm
3を超えると、拭き取り性は良好だが、紙厚が大きくなりすぎてしまい、同枚数の既製品と比べて収納性に劣り、また、同体積の既製品と比べて交換頻度が高くなる。
エンボス1個当たりの空間の体積は、前述したエンボス深さおよびエンボス面積を基に、下記式によって算出する。
空間の体積(mm
3)=エンボス深さ(μm)×エンボス面積(mm
2)/1000。
なお、エンボス1個当たりの空間の体積を測定する単位エンボス2は、具体的には
図3(エンボス凹部22が存在する面)における単位エンボス2を指す。
【0042】
なお、単位エンボス2におけるエンボスエッジ率は0.50mm/mm
2以上0.80mm/mm
2以下であり、0.50mm/mm
2以上0.70mm/mm
2以下であることが好ましく、0.50mm/mm
2以上0.60mm/mm
2以下であることがより好ましい。エンボスエッジ率が0.50mm/mm
2未満であると、複合型不織布シート1が汚れの拭き取り性(かき取り性)に劣る。エンボスエッジ率が0.80mm/mm
2を超えると、単位エンボス2の1つ当たりの面積及び形成される空間が少なくなり、結果として不織布シート1が拭き取り性に劣る。
エンボスエッジ率は、
図4(a)に示す単位エンボス2の一辺の長さをdとした場合に、100mm×100mmの複合型不織布シート1内に含まれるエンボスn個の周長の総長を複合型不織布シート1の面積で割ることにより算出され、式で表すと(エンボスエッジ率)=(d×4×n)/(複合型不織布シート1の面積)(mm/mm
2)となる。エンボス形状が横菱型形状でない場合は、単位エンボスの周長を測定し、総周長を算出する。なお、エンボスエッジ率を測定する単位エンボス2は、具体的には
図3(エンボス凹部22が存在する面)における単位エンボス2を指す。
【0043】
また、複合型不織布シート1における、単位面積当たりのエンボス面積率は28%以上76%以下であることが好ましく、36%以上70%以下であることがより好ましく、45%以上64%以下であることが更に好ましい。エンボス面積率が28%未満であると、複合型不織布シート1が拭き取り性に劣る。エンボス面積率が76%を超えると、複合型不織布シート1が意匠性に劣る。
単位面積当たりのエンボス面積率は、100mm×100mmの複合型不織布シート1内に含まれるエンボスn個の面積の割合から算出する。
【0044】
<複合型不織布シートの製造方法>
本実施形態に係る複合型不織布シート1(ペーパータオル10)の製造方法としては、特に制限はなく、公知の不織布製品の製造方法により製造することができる。
そのような製造方法としては、例えば、(1)複合型不織布の製造、(2)エンボス加工、(3)裁断及び折り畳み(ロールの場合は巻き取り)、(4)包装、といった手順が挙げられるが、一部の手順が前後してもかまわない。なお、(2)エンボス加工は合成繊維面にエンボスロールの凸部が押されるように施され、その面を複合不織布シート1の裏面(
図3に示す、エンボス凹部22が存在する面)とする。このとき、合成繊維面は、複合不織布シート1の表裏において合成繊維の割合が多い面を示す。
【0045】
また、(1)複合型不織布の製造において、複合型不織布は合成繊維とパルプ繊維を含むが、それらを一体化する方式は、特に限定されないが、水流交絡が好ましい。水流交絡による一体化の工程に関しては、例えば、特許第6758116号公報に詳細に記載されている。
【実施例0046】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0047】
パルプ繊維と合成繊維を含む複合型不織布を原反として、表1及び表2に示す各条件において、実施例1~11及び比較例1~9のそれぞれの複合型不織布シートを作製して折り畳み、折り畳んだシートをポリエチレン等のフィルムに包装してペーパータオル製品とした後、以下の評価を行った。なお、単位エンボスの形状は比較例1が六角形状、比較例2が四角(矩形)形状であり、それ以外の各実施例及び各比較例は全て横菱形形状とした。また、比較例3はエンボス加工を施さなかった。
シートの折り畳み方は、各実施例及び各比較例のいずれも、変形Z字状折に折り畳み、ポップアップ形式とした。
【0048】
(汚れ拭き取り(かき取り)性)
モニター30名が製品の複合型不織布シートで凹面の汚れを拭き取った(かき取った)ときの、汚れ拭き取り(かき取り)性を評価し、汚れを除去しやすいと感じた人数によって4段階で評価した。
◎:汚れが除去しやすく、拭き取り(かき取り)性に優れると感じた人数が28人以上
〇:汚れが除去しやすく、拭き取り(かき取り)性に優れると感じた人数が25人以上27人以下
△:汚れが除去しやすく、拭き取り(かき取り)性に優れると感じた人数が21人以上24人以下
×:汚れが除去しやすく、拭き取り(かき取り)性に優れると感じた人数が20人以下
【0049】
(交換頻度)
モニター30名が製品の複合型不織布シートの製品を1パック(1包装体)使い切ったときの、交換頻度評価し、交換頻度が少ないと感じた人数によって4段階で評価した。
◎:交換頻度が少ないと感じた人数が28人以上
〇:交換頻度が少ないと感じた人数が25人以上27人以下
△:交換頻度が少ないと感じた人数が21人以上24人以下
×:交換頻度が少ないと感じた人数が20人以下
【0050】
(収納性)
モニター30名が製品の複合型不織布シートの製品を1パック(1包装体)使用した際の収納性について評価し、収納性に優れると感じた人数によって4段階で評価した。
◎:1パックあたりの紙厚や製品枚数が適切で、収納性に優れると感じた人数が28人以上
〇:1パックあたりの紙厚や製品枚数が適切で、収納性に優れると感じた人数が25人以上27人以下
△:1パックあたりの紙厚や製品枚数が適切で、収納性に優れると感じた人数が21人以上24人以下
×:1パックあたりの紙厚や製品枚数が適切で、収納性に優れると感じた人数が20人以下
【0051】
(意匠性)
モニター30名が製品の複合型不織布シートのエンボス意匠性を評価し、意匠性に優れると評価した人数によって4段階で評価した。
◎:意匠性に優れると感じた人数が28人以上
〇:意匠性に優れると感じた人数が25人以上27人以下
△:意匠性に優れると感じた人数が21人以上24人以下
×:意匠性に優れると感じた人数が20人以下
【0052】
表1に、実施例1~11の条件及び評価結果を示し、表2に、比較例1~9の条件及び評価結果を示す。各評価が○以上である場合は、製品として可である。
【表1】
【0053】
【0054】
以上より、本実施例によれば拭き取り性、製品の交換頻度及び収納性に優れ、意匠性も良好である複合型不織布シートが得られることが少なくとも確認された。