(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065871
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】自走式草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
A01D34/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174944
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390029621
【氏名又は名称】ニューデルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】山下 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA11
2B083BA18
2B083CA02
2B083CA08
2B083CA27
2B083DA02
2B083HA12
2B083HA31
(57)【要約】
【課題】安全性を向上させた自走式草刈機を提供する。
【解決手段】自走式草刈機100は、走行機体10と、草刈用のブレードカッタ40と、内燃機関20と、制御部60とを備える。走行機体10は、走行装置11,12を有する。ブレードカッタ40は、走行機体10の下部に配置される。内燃機関20は、走行機体10の上部に配置されてブレードカッタ40の回転を駆動する。制御部60は、ブレードカッタ40の回転数Nが所定回転数Nth2を下回る場合に、内燃機関20の回転を強制的に低速域に変更し又は停止するように制御する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を有する走行機体と、
前記走行機体の下部に配置された草刈用のブレードカッタと、
前記走行機体の上部に配置されて前記ブレードカッタの回転を駆動する内燃機関と、
前記ブレードカッタの回転数が所定回転数を下回る場合に、前記内燃機関の回転を強制的に低速域に変更し又は停止するように制御する制御部と、
を備えた自走式草刈機。
【請求項2】
前記ブレードカッタの回転数を検知する検知部を更に備え、
前記制御部は、前記検知部の検知結果に応じて前記内燃機関の回転を制御する、請求項1に記載の自走式草刈機。
【請求項3】
遠隔操作装置との通信を実行する通信部を更に備え、
前記制御部は、前記ブレードカッタの回転数が前記所定回転数を下回る状態が所定時間以上継続した場合には、前記通信部を介した前記遠隔操作装置による制御を中断する、請求項1又は請求項2に記載の自走式草刈機。
【請求項4】
前記制御部は、前記遠隔操作装置における前記内燃機関の回転調節が低速側へ変更され又は停止されたことを条件として、前記通信部を介した前記遠隔操作装置による制御を再開する、請求項3に記載の自走式草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の自走式草刈機は、左右一対の走行装置を有する走行機体と、走行機体の下部に配置された草刈用のブレードカッタと、走行機体の上部に配置された内燃機関及び駆動モータ等とを備え、遠隔操作可能に構成されている。内燃機関はブレードカッタを、駆動モータは走行装置をそれぞれ駆動する。内燃機関は遠心クラッチを内蔵し、ブレードカッタが石等の硬いものに当たった場合には、遠心クラッチが衝撃を吸収して内燃機関の損傷を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の自走式草刈機では、刈草がブレードカッタに絡み付いてブレードカッタの回転が停止した場合、絡み付いた刈草を作業者が素手で取り外さなければならない。この際、刈草が取り外された途端に、又は作業者が再始動操作をした途端に、ブレードカッタが高速回転し始めてしまう。
【0005】
本発明は、安全性を向上させた自走式草刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自走式草刈機は、走行機体と、草刈用のブレードカッタと、内燃機関と、制御部とを備える。前記走行機体は、走行装置を有する。前記ブレードカッタは、前記走行機体の下部に配置される。前記内燃機関は、前記走行機体の上部に配置されて前記ブレードカッタの回転を駆動する。前記制御部は、前記ブレードカッタの回転数が所定回転数を下回る場合に、前記内燃機関の回転を強制的に低速域に変更し又は停止するように制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全性を向上させた自走式草刈機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る自走式草刈機の斜視図である。
【
図2】(a)は、実施形態に係る自走式草刈機の一部斜視図であり、(b)は、(a)の領域IIBの一部拡大図であり、(c)は、(a)の領域IICの一部拡大図である。
【
図3】実施形態に係る自走式草刈機において、ガード部材の一部を回動させた側面図である。
【
図4】一部の部材が除去された状態の自走式草刈機の平面図である。
【
図6】
図4の状態から更に一部の部材が除去された状態の自走式草刈機の斜視図である。
【
図7】エンジンとその周辺部材とを拡大して示す斜視図である。
【
図8】エンジンとその周辺部材とを拡大して示す他の斜視図である。
【
図9】エンジンを自走式草刈機から分解した分解斜視図である。
【
図10】自走式草刈機を
図1のX-X線で切断した断面図である。
【
図11】自走式草刈機を
図1のXI-XI線で切断した断面図である。
【
図12】
図11におけるカッタ駆動機構とその周辺部材とを拡大して示す断面図である。
【
図16】自走式草刈機の制御回路の構成を示すブロック図である。
【
図17】制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。図中に、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が示される。X軸及びY軸は水平面に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。
【0010】
まず、
図1を参照して、実施形態に係る自走式草刈機100の外観について説明する。
図1は、自走式草刈機100の斜視図である。
【0011】
図1に示されるように、自走式草刈機100は、走行機体10と、前バンパ13と、後バンパ14と、ガード部材15と、カバー体17と、ロック解除レバー8と、エンジン20とを備える。エンジン20は、「内燃機関」の一例に相当する。
【0012】
走行機体10は、左クローラ11と、右クローラ12とを有する。左クローラ11及び右クローラ12は、「走行装置」の一例に相当する。左クローラ11は、スプロケット11aと、テンションローラ11bと、複数のローラ11cとを含む。スプロケット11aは、走行用左モータ21(
図4参照)の動力を左クローラ11に伝えるとともに、左クローラ11の後端を支持する。テンションローラ11bは、左クローラ11の前端を支持するとともに、左クローラ11のテンションを維持する。複数のローラ11cは、左クローラ11の接地側を支持する。図示は省略するが、右クローラ12も、スプロケットと、テンションローラと、複数のローラとを含む。
【0013】
前バンパ13は、走行機体10の前部から前方に向けて突出する。後バンパ14は、走行機体10の後部から後方に向けて突出する。
【0014】
カバー体17は、走行機体10を覆うように、走行機体10に着脱自在に取り付けられている。ガード部材15は、パイプ部材であって、カバー体17の上方に延在するように、走行機体10に支持されている。ガード部材15は、後端部が走行機体10に軸支され、ロック解除レバー8をスライド操作することにより前端部が走行機体10の後方に向って回動可能に構成されている(
図3参照)。ガード部材15の頂上部には、表示灯16が設けられている。カバー体17の後端部には、電源スイッチ91と、緊急停止スイッチ92とが配置されている。
【0015】
次に、
図1~
図2を参照して、自走式草刈機100の詳細構成について説明する。
図2(a)は、実施形態に係る自走式草刈機100の一部斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)の領域IIBの一部拡大図であり、
図2(c)は、
図2(a)の領域IICの一部拡大図である。
【0016】
図2(a)に示すように、自走式草刈機100において、走行機体10の後方に後バンパ14が設けられる。後バンパ14は、中央に位置する中央部14a1と、中央部14a1に対して左側に位置する第1側部14a2と、中央部14a1に対して右側に位置する第2側部14a3とを有する。中央部14a1の左側部は、第1側部14a2と連結する。中央部14a1の右側部は、第2側部14a3と連結する。ただし、第1側部14a2及び第2側部14a3は、中央部14a1から脱着可能であってもよい。
【0017】
ガード部材15は、中央に位置する中央部15a1と、中央部15a1に対して左側に位置する第1側部15a2と、中央部15a1に対して右側に位置する第2側部15a3とを有する。中央部15a1の左側部は、第1側部15a2と連結する。中央部15a1の右側部は、第2側部15a3と連結する。ただし、第1側部15a2及び第2側部15a3は、中央部15a1から脱着可能であってもよい。
【0018】
第1側部15a2は、回転軸15rと連結する。回転軸15rは、第1側部15a2の端部に位置し、第1側部15a2に対してY軸に沿って延びる。同様に、第2側部15a3は、回転軸15sと連結する。回転軸15sは、第2側部15a3の端部に位置し、第2側部15a3に対してY軸に沿って延びる。
【0019】
後バンパ14の第1側部14a2は、ガード部材15の第1側部15a2と連結する。同様に、後バンパ14の第2側部14a3は、ガード部材15の第2側部15a3と連結する。
【0020】
図2(b)に示すように、後バンパ14の第1側部14a2は、ガード部材15の第1側部15a2と接続する。連結部15bは、後バンパ14の第1側部14a2及びガード部材15の第1側部15a2とそれぞれ連結する。連結部15bは、Y軸に沿って内側から後バンパ14の第1側部14a2及びガード部材15の第1側部15a2を固定する。また、連結部15bは、X軸に沿って前方から後バンパ14の第1側部14a2を固定する。
【0021】
回転軸15rは、走行機体10の取付部10aに固定される。回転軸15rは、取付部10aに対して回転できる。
【0022】
取付部10aには、貫通孔10hが設けられる。貫通孔10hは、X軸に沿って延びる。貫通孔10hには、ロック解除レバー8が貫通する。また、連結部15bには切欠15nが設けられる。切欠15nには、ロック解除レバー8が嵌入可能である。ロック解除レバー8が切欠15nに嵌入されることにより、連結部15bの位置が固定される。
【0023】
一方、ロック解除レバー8が切欠15nから外れて、ロック解除レバー8が貫通孔10hに沿って移動すると、後バンパ14の第1側部14a2、ガード部材15の第1側部15a2及び連結部15bは、回転軸15rを中心に回動する。
【0024】
図2(c)に示すように、後バンパ14の第2側部14a3は、ガード部材15の第2側部15a3と接続する。連結部15cは、後バンパ14の第2側部14a3及びガード部材15の第2側部15a3とそれぞれ連結する。連結部15bは、Y軸に沿って内側から後バンパ14の第2側部14a3及びガード部材15の第2側部15a3を固定する。また、連結部15bは、X軸に沿って前方から後バンパ14の第2側部14a3を固定する。
【0025】
回転軸15sは、走行機体10の取付部10bに固定される。回転軸15sは、取付部10bに対して回転できる。
【0026】
取付部10bには、貫通孔10gが設けられる。貫通孔10gは、X軸に沿って延びる。貫通孔10gには、ロック解除レバー8が貫通する。また、連結部15bには切欠15mが設けられる。切欠15mには、ロック解除レバー8が嵌入可能である。ロック解除レバー8が切欠15mに嵌入されることにより、連結部15bの位置が固定される。
【0027】
一方、ロック解除レバー8が切欠15mから外れて、ロック解除レバー8が貫通孔10gに沿って移動すると、後バンパ14の第2側部14a3、ガード部材15の第2側部15a3及び連結部15bは、回転軸15sを中心に回動する。
【0028】
次に、
図1~
図3を参照して、自走式草刈機100の詳細構成について説明する。
図3は、実施形態に係る自走式草刈機100において、後バンパ14及びガード部材15が回動した側面図である。
【0029】
図3に示されるように、前バンパ13の左側にはU字状の連結部13xが設けられ、前バンパ13の右側にはU字状の連結部13yが設けられている。連結部13xには、Y軸方向に連通する2つの貫通孔13v1,13v2が形成されている。連結部13yには、Y軸方向に連通する2つの貫通孔13w1,13w2が形成されている。ガード部材15の前方左側の前端部15xには、Y軸方向に貫通する貫通孔15vが形成されている。ガード部材15の前方右側の前端部15yには、Y軸方向に貫通する貫通孔15wが形成されている。
【0030】
図1に示されるようにガード部材15で走行機体10を覆う場合、前端部15xは連結部13x内に挿入され、留め具(図示せず)が貫通孔15vと貫通孔13v1,13v2とを貫通することにより、前端部15xが連結部13xに固定される。同様に、前端部15yは連結部13y内に挿入され、留め具(図示せず)が貫通孔15wと貫通孔13w1,13w2とを貫通することにより、前端部15yが連結部13yに固定される。
【0031】
作業者は、メンテナンス等を行う際に、貫通孔13v1,13v2と貫通孔15vとに貫通している留め具を抜くとともに、貫通孔13w1,13w2と貫通孔15wとに貫通している留め具を抜く。これにより、ガード部材15の一方の前端部15xが連結部13xから着脱可能な状態となるとともに、他方の前端部15yが連結部13yから着脱可能な状態となる。また、作業者は、ロック解除レバー8をスライド操作する。これにより、ロック解除レバー8が切欠15m,15nから外れて、ロック解除レバー8が貫通孔10g,10hに沿って移動する。すると、後バンパ14、ガード部材15及び連結部15b,15cは、回転軸15rを中心に回動する。
【0032】
次に、
図1~
図5を参照して、自走式草刈機100の詳細構成について説明する。
図4は、ガード部材15及びカバー体17を含む一部の部材が除去された状態の自走式草刈機100の平面図である。
図5は、同状態の自走式草刈機100の背面図である。
【0033】
走行機体10は、上側のカバー体17と、カバー体17に対向する下側の底板39と、前後左右を囲む壁板とを含む。左壁板の内側には側板34が配置され、右壁板の内側には側板35が配置されている。走行機体10の内部において、前方に第1横桟36が配置され、後方に第2横桟37が配置されている。第1横桟36の一端部と第2横桟37の一端部とは、側板34に固定されている。第1横桟36の他端部と第2横桟37の他端部とは、側板35に固定されている。
【0034】
走行機体10の内部空間は、バッテリボックス100aと、伝達機構ボックス100bと、モータボックス100cとを有する。バッテリボックス100aは、走行機体10の内部空間における第1横桟36よりも前方空間である。伝達機構ボックス100bは、走行機体10の内部空間における第1横桟36から第2横桟37までの中央空間である。モータボックス100cは、走行機体10の内部空間における第2横桟37よりも後方空間である。
【0035】
図5に示されるように、自走式草刈機100は、走行機体10の下部に、草刈用のロータリカッタ40を更に備える。ロータリカッタ40は、端部に刈刃42が着脱自在に取り付けられた細い板状部を有し、板状部の中央で回転軸41の周りに回転駆動される。ロータリカッタ40は、「ブレードカッタ」の一例に相当する。
【0036】
走行機体10は、走行機体10の上方からロータリカッタ40にアクセスするための刈刃交換窓18を有する。これにより、メンテナンス性が向上する。刈刃交換窓18は、走行機体10の底板39における左右一側方(実施形態では、左側方)に配置されている。また、刈刃交換窓18は、走行機体10の第1横桟36と第2横桟37との間(すなわち、伝達機構ボックス100b)に配置されている。底板39に開口した刈刃交換窓18は、窓閉塞板18aにより閉塞される。作業者は、ロータリカッタ40のメンテナンス時、窓閉塞板18aを取り外し、刈刃交換窓18を介してロータリカッタ40にアクセスする。それ以外においては刈刃交換窓18が窓閉塞板18aによって閉塞されるため、走行機体10内部に刈草等が侵入することを抑制できる。
【0037】
図4に示されるように、自走式草刈機100は、走行機体10の上部において、エンジン20に加えて、走行用左モータ21と、走行用右モータ22と、オルタネータ23と、第1バッテリ24と、第2バッテリ25とを更に備える。また、自走式草刈機100は、走行機体10の上部において、第1アクチュエータ26と、第2アクチュエータ27と、第3アクチュエータ28と、制御ボックス30とを更に備える。
【0038】
エンジン20は、走行機体10の後部に配置されて、ロータリカッタ40の回転を駆動する。
【0039】
走行用左モータ21は左クローラ11を、走行用右モータ22は右クローラ12をそれぞれ駆動する。走行用左モータ21及び走行用右モータ22は、走行機体10の後部、モータボックス100cに配置されている。エンジン20は、平面視で少なくとも一部が走行用左モータ21と重なるように配置されている。
【0040】
オルタネータ23は、走行機体10の後部に配置されて、エンジン20により駆動される。
図4に示されるように、オルタネータ23とエンジン20とは、左右に並べて配置される。オルタネータ23は、第1ブラケット23aと第2ブラケット23bとにより、走行機体10に取り付けられている。第1ブラケット23aは、第2横桟37に取り付けられている。第2ブラケット23bは、側板35と第1縦桟31とに取り付けられている。
【0041】
第1バッテリ24及び第2バッテリ25は、互いに直列接続されて、走行用左モータ21及び走行用右モータ22を並列に駆動する。第1バッテリ24及び第2バッテリ25は、走行機体10の前部、バッテリボックス100aに配置されている。第1バッテリ24及び第2バッテリ25は、オルタネータ23により充電される。
【0042】
走行機体10の前部において、底板39より上方に中板38が設けられている。中板38は、バッテリボックス100aの底面を構成する。中板38の一辺は、第1横桟36に取り付けられている(
図11を参照)。第1バッテリ24及び第2バッテリ25は、中板38に取り付けられている。即ち、第1バッテリ24及び第2バッテリ25は、地面により近い底板39ではなく、地面から離れた中板38に取り付けられている。これにより、自走式草刈機100が走行する地面に凹凸又は石等が存在する場合であっても、第1バッテリ24及び第2バッテリ25が凹凸又は石等に接触することを抑制でき、第1バッテリ24及び第2バッテリ25を保護できる。さらに、バッテリボックス100aの底面を、中板38と底板39とで構成される二重底とすることにより、刈刃42が路面に落ちている石を跳ね上げて第1バッテリ24、第2バッテリ25、及び制御ボックス30等に当たることを防止できる。
【0043】
第1アクチュエータ26~第3アクチュエータ28は、走行機体10の右側方に配置されている。すなわち、刈刃交換窓18は走行機体10の左側方に、第1アクチュエータ26~第3アクチュエータ28は右側方にそれぞれ配置されている。反対に、刈刃交換窓18が走行機体10の右側方に、第1アクチュエータ26~第3アクチュエータ28が左側方にそれぞれ配置されてもよい。このように、刈刃交換窓18は走行機体10の左右一側方に、第1アクチュエータ26~第3アクチュエータ28は他側方にそれぞれ配置されているため、刈刃交換窓18の周囲に障害物が存在しない。そのため、ロータリカッタ40のメンテナンス性が向上する。第1アクチュエータ26は、ロータリカッタ40を上下動させるためのアクチュエータである。第2アクチュエータ27は、エンジン20のアクセル(より具体的にはスロットルバルブ)を操作するためのアクチュエータである。第2アクチュエータ27は、ロータリカッタ40のブレーキ作動用アクチュエータを兼ねる。第3アクチュエータ28は、ロータリカッタ40のためのVベルト用テンションクラッチを操作するアクチュエータである。
【0044】
第1アクチュエータ26~第3アクチュエータ28は、板状の取付座19に取り付けられている。第1アクチュエータ26~第3アクチュエータ28と一体になった取付座19は、底板39に取り付けられている。この構成により、第1アクチュエータ26、第2アクチュエータ27、及び第3アクチュエータ28を個別に底板39に取り付ける作業が不要となり、取付作業性が向上する。
【0045】
制御ボックス30は、走行用左モータ21、走行用右モータ22、及びエンジン20の動作を制御する。制御ボックス30は、走行機体10の前部、バッテリボックス100aに配置されている。本実施形態では、制御ボックス30は、第1バッテリ24及び第2バッテリ25とともにバッテリボックス100aの中板38に取り付けられている。
【0046】
次に、
図6~
図8を参照して、自走式草刈機100の詳細構成について更に説明する。
図6は、
図4の状態から更にエンジン20が除去された状態の自走式草刈機100の斜視図である。
図7は、エンジン20とその周辺部材とを拡大して示す斜視図である。
図8は、エンジン20とその周辺部材とを拡大して示す他の斜視図である。
図9は、エンジン20を自走式草刈機100から分解した分解斜視図である。
【0047】
図6に示されるように、自走式草刈機100は、第1縦桟31と、第2縦桟32と、プーリ130を含むカッタ駆動機構139(
図7等を参照)と、第1連結フレーム51と、第2連結フレーム52と、エンジン伝動機構53とを更に備える。
【0048】
第1縦桟31及び第2縦桟32は、走行機体10の前後方向に沿って延びるように、走行機体10の幅方向に延びる第1横桟36及び第2横桟37に固定されている。
【0049】
第1連結フレーム51及び第2連結フレーム52は、各々U字状に屈曲したパイプ部材であって、走行機体10の左右両端から立設されている。取付台94は、第2連結フレーム52に固定されている。取付台94には、ブザー93及びU字部材96が取り付けられている。U字部材96には支持部材95が取り付けられている。支持部材95は、電源スイッチ91及び緊急停止スイッチ92(
図1等を参照)を、カバー体17から露出した状態に支持する部材である。
【0050】
図7及び
図8に示されるように、エンジン伝動機構53は、エンジン20の下方に配置されている。エンジン伝動機構53は、第1Vベルト54を介してエンジン20の動力をオルタネータ23へ伝達する。また、エンジン伝動機構53は、第2Vベルト55を介してエンジン20の動力を、カッタ駆動機構139へ伝達する。カッタ駆動機構139は、ロータリカッタ40を回転駆動する。本実施形態においては、第1Vベルト54の下方に第2Vベルト55が配置されている。
【0051】
エンジン20は、内燃機関と、燃料タンクと、遠心クラッチとが一体化された部材である。遠心クラッチ(図示せず)は、内燃機関の出力軸と、エンジン伝動機構53との間に介在する。遠心クラッチは、内燃機関がアイドリング状態にあるときには遮断状態となり、内燃機関のトルクをエンジン伝動機構53に伝達しない。一方、内燃機関の回転数がアイドリング状態の回転数よりも上昇すると、接続状態となってエンジン伝動機構53にトルクを伝達する。また、遠心クラッチは、ロータリカッタ40が石等の硬いものに当たった衝撃で回転が停止した場合に遮断状態となることで内燃機関の損傷を回避する。
【0052】
図9に示されるように、エンジン20は、第1ブラケット56及び一対の第2ブラケット57a,57bを介して、第1連結フレーム51及び第2連結フレーム52の上に支持される。より具体的には、第2ブラケット57aは、第1連結フレーム51に取り付けられる。第2ブラケット57bは、第2連結フレーム52に取り付けられる。第1ブラケット56の一端側が第2ブラケット57aに取り付けられ、第1ブラケット56の他端側が第2ブラケット57bに取り付けられる。第1ブラケット56の上側にはエンジン20が取り付けられる。エンジン伝動機構53は、第1ブラケット56に取り付けられ、かつ、第1ブラケット56を貫通する。なお、第1ブラケット56とエンジン20との間に、ゴム等の防振部材が介在してもよい。
【0053】
図7及び
図8に示されるように、カッタ駆動機構139は、プーリ130、筒部材132、及びカッタ駆動ケース33等を含む。カッタ駆動機構139は、ブラケット58を介して、第1縦桟31及び第2縦桟32に支持される。より具体的には、筒部材132の外面に、ブラケット58が取り付けられる。ブラケット58の一端側は第1縦桟31に取り付けられ、ブラケット58の他端側は第2縦桟32に取り付けられる。
【0054】
次に、
図10を参照して、左クローラ11の左減速機110について説明する。
図10は、自走式草刈機100を
図1のX-X線で切断した断面図である。走行用左モータ21と左クローラ11との間には、左減速機110が介在する。左減速機110は、第1ギア112と第2ギア113とを含む。走行用左モータ21の出力軸21bは第1ギア112と噛み合い、第1ギア112は第2ギア113と噛み合う。第2ギア113の出力軸111は、左クローラ11のスプロケット11aに連結される。これにより、走行用左モータ21は、高トルクで左クローラ11を駆動できる。また、第1ギア112の下側に第2ギア113が位置するよう上下方向に配置することにより、走行用左モータ21を地面から離れた高さに配置することができる。これにより、走行用左モータ21より下側に、ロータリカッタ40を配置する空間が確保できる。
【0055】
走行用左モータ21と右クローラ12との間には、右減速機120が介在する(
図5を参照)。右減速機120は、左減速機110と同様の構成であり、第1ギアと第2ギアとを含む(図示せず)。右減速機120が有する第2ギアの出力軸121は、右クローラ12のスプロケット(図示せず)に連結される。これにより、走行用右モータ22は、高トルクで右クローラ12を駆動できる。また、右減速機120の第1ギアの下側に第2ギアが位置するよう上下方向に配置することにより、走行用右モータ22を地面から離れた高さに配置することができる。これにより走行用右モータ22より下側に、ロータリカッタ40を配置する空間が確保できる。
【0056】
次に、
図7、
図8、
図11及び
図12を参照して、カッタ駆動機構139について説明する。
図11は、自走式草刈機100を
図1のXI-XI線で切断した断面図である。
図12は、
図11におけるカッタ駆動機構139とその周辺部材とを拡大して示す断面図である。なお、
図7、
図8、
図11及び
図12に示されるロータリカッタ40は、上下動可能範囲における最下に位置している。
【0057】
図11及び
図12に示されるように、カッタ駆動機構139は、プーリ130と、回転軸131と、筒部材132と、軸受部材133~軸受部材136と、カッタ駆動ケース33とを含む。プーリ130と回転軸131の一端側とは連結されており、第2Vベルト55によりプーリ130が回転駆動されると、プーリ130と一体に回転軸131が回転する。回転軸131の他端側は、ロータリカッタ40の回転軸41と連結されている。回転軸131と回転軸41との連結部分にはスプライン加工が施されており、回転軸131に対して回転軸41が上下動可能、かつ、回転軸131と回転軸41とが一体に回転可能となっている。また、回転軸131の他端側は、筒部材132に対して回転可能に支持されている。軸受部材133及び軸受部材134は、回転軸131と筒部材132との間に配置され、筒部材132に対して回転軸131を回転可能に支持する。
【0058】
カッタ駆動ケース33は、略筒状の部材である。カッタ駆動ケース33は、底板39に形成された貫通孔を貫通している。カッタ駆動ケース33の筒部材132側には、筒部材132の端部132aを収容可能な凹部33aが設けられている。カッタ駆動ケース33の凹部33aが設けられた側とは逆側の端部には、軸受部材135及び軸受部材136が設けられている。軸受部材135及び軸受部材136は、回転軸41を回転可能に支持する。
【0059】
図7、
図8、
図11、及び
図12に示されるように、カッタ駆動ケース33の外面には、取付部材26eが取り付けられている。取付部材26eは、例えば、円筒状部材と、円筒状部材から突出する2つの突片とを有する。円筒状部材は、カッタ駆動ケース33の外面に溶接等により固定される。一方の突片には回転部材26cが回転可能に取り付けられ、他方の突片には回転部材26dが回転可能に取り付けられる。回転部材26cと回転部材26dとは、カッタ駆動ケース33を間に挟んで対向する。
【0060】
回転軸26bは、第1アクチュエータ26により回転駆動される。回転軸26bは、回転部材26cと回転部材26dとに連結されている。回転軸26bの回転に伴い、回転部材26cと回転部材26dとが回転することにより、カッタ駆動ケース33が上下動する。カッタ駆動ケース33の凹部33aに、筒部材132の端部132aが収容されているため、カッタ駆動ケース33は、筒部材132にガイドされながら上下動する。カッタ駆動ケース33が上下動することにより、カッタ駆動ケース33と一体に回転軸41及び刈刃42も上下動する。
【0061】
図12に示されるように、第1アクチュエータ26は、第1ギアボックス26aを有する。第1ギアボックス26aの内部にギア(図示せず)が収容されている。第1アクチュエータ26がギアを正逆回転させることにより、回転軸26bが正逆回転する。回転軸26bが正逆回転することにより、カッタ駆動ケース33が上下動する。
【0062】
次に、
図13及び
図14を参照して、第2アクチュエータ27及び第3アクチュエータ28について説明する。
図13は、第3アクチュエータ28の側面図である。
図14は、アクセルワイヤW1、ブレーキワイヤW2、及びクラッチワイヤW3の配置例を示す平面図である。
【0063】
図13に示されるように、第3アクチュエータ28は、ギア28aと、ワイヤ固定部材28cと、第1リミットスイッチ28eと、第2リミットスイッチ28gとを有する。第3アクチュエータ28は、ギア28aを、回転軸28bを中心に正逆回転させる。ギア28aには、ピン状のワイヤ固定部材28cが設けられている。ワイヤ固定部材28cには、アクセルワイヤW1とブレーキワイヤW2とが固定されている。ギア28aが正回転することによりワイヤ固定部材28cが第1リミットスイッチ28e側から第2リミットスイッチ28g側へ移動し、ギア28aが逆回転することによりワイヤ固定部材28cが第2リミットスイッチ28g側から第1リミットスイッチ28e側へ移動する。ワイヤ固定部材28cが第1リミットスイッチ28e側へ移動した状態では、アクセルワイヤW1が弛緩する一方、ブレーキワイヤW2が引っ張られる。ワイヤ固定部材28cが第2リミットスイッチ28g側へ移動し状態では、アクセルワイヤW1が引っ張られる一方、ブレーキワイヤW2は弛緩する。
図13では、ギア28aが逆回転することによりワイヤ固定部材28cが第1リミットスイッチ28e側へ移動し、アクセルワイヤW1が弛緩する一方、ブレーキワイヤW2が引っ張られた状態が示されている。これにより、後述するように、エンジン20のアクセルがオンのときに、ロータリカッタ40のブレーキがオフになる。一方、エンジン20のアクセルがオフのときに、ロータリカッタ40のブレーキがオンになる。
【0064】
ロータリカッタ40は、エンジン20を停止したり、エンジン20のアクセルをオフにしたりしても、慣性で回り続け、停止するまでに時間がかかる。そこで、本実施形態では、エンジン20のアクセルをオフにすると同時にロータリカッタ40のブレーキをオンにすることにより、ロータリカッタ40の回転を素早く停止させることができる。
【0065】
なお、ブレーキワイヤW2を用いたロータリカッタ40のブレーキは、エンジン20の停止と併用されてもよい。すなわち、エンジン20の停止とともにロータリカッタ40のブレーキをオンすることにより、ロータリカッタ40の回転を素早く停止させることができる。
【0066】
ギア28aの周囲には、第1リミットスイッチ28eと、第2リミットスイッチ28gとが設けられている。第1リミットスイッチ28eは、ギア28aの凸部に当接することによってギア28aの回転角度を検出するための第1当接部材28fを有する。第1リミットスイッチ28eは、第1当接部材28fにギア28aが当接したことを検知すると、第3アクチュエータ28へ回転停止信号を出力する。第2リミットスイッチ28gは、ギア28aの凸部に当接することによってギア28aの回転角度を検出するための第2当接部材28hを有する。第2リミットスイッチ28gは、第2当接部材28hにギア28aが当接したことを検知すると、第3アクチュエータ28へ回転停止信号を出力する。すなわち、第1リミットスイッチ28eと第2リミットスイッチ28gとにより、ギア28aの回転範囲が規制される。
【0067】
図14に示されるように、アクセルワイヤW1は、走行機体10内部を通って、エンジン20のスロットルバルブ開閉機構(図示せず)に連結される。アクセルワイヤW1の伸縮に応じて、エンジン20のスロットルバルブが開閉し、エンジン20が高速回転する。
【0068】
ブレーキワイヤW2は、走行機体10内部を通って、プーリ130のブレーキシュー151に連結される。ブレーキワイヤW2の伸縮に応じて、ブレーキシュー151がプーリ130のV溝に押圧したり、V溝から離間したりする。ブレーキシュー151がプーリ130のV溝に押圧することにより、プーリ130の回転にブレーキがかかり、ロータリカッタ40の回転が短時間で完全停止する。ブレーキシュー151がプーリ130のV溝から離間することにより、ブレーキ力が解除される。
【0069】
本実施形態では、回転軸152に、ブレーキシュー151とワイヤ固定部材153とが取り付けられている。ワイヤ固定部材153には、コイルバネ154を介して、ブレーキワイヤW2の端部が固定される。ブレーキワイヤW2がワイヤ固定部材153を引っ張ることにより、回転軸152を中心にブレーキシュー151が外側へ移動し、プーリ130のV溝から離間する。回転軸152は、例えばブラケット58に回転可能に取り付けられる。
【0070】
第2アクチュエータ27は、第3アクチュエータ28と同様にワイヤの伸縮を制御する。第3アクチュエータ28はアクセルワイヤW1とブレーキワイヤW2の2本のワイヤの伸縮を制御したのに対し、第2アクチュエータ27は1本のワイヤ(クラッチワイヤW3)の伸縮を制御する点で異なるが、基本構造は第3アクチュエータ28と同様である。即ち、第2アクチュエータ27は、ギアと、ワイヤ固定部材と、第1リミットスイッチと、第2リミットスイッチとを有する。ギアのワイヤ固定部材には、クラッチワイヤW3が固定される。第2アクチュエータ27がギアを正逆回転させることにより、クラッチワイヤW3が引っ張られたり、弛緩したりする。
【0071】
図14に示されるように、クラッチワイヤW3は、テンションプーリ140を含むVベルト用テンションクラッチを操作するワイヤである。クラッチワイヤW3は、走行機体10内部を通って第2Vベルト55のテンションプーリ140に連結される。クラッチワイヤW3の伸縮に応じて、テンションプーリ140が第2Vベルト55を張圧したり弛緩したりする。第2Vベルト55が張圧することにより、エンジン20の動力がプーリ130に伝達され、第2Vベルト55が弛緩することにより、エンジン20からの動力伝達が解除される。
【0072】
本実施形態では、回転軸143に、クラッチアーム141が取り付けられている。クラッチアーム141には、ワイヤ固定部材145が取り付けられている(
図8を参照)。ワイヤ固定部材145には、図示しないコイルバネを介して、クラッチワイヤW3の端部が固定される。クラッチワイヤW3がワイヤ固定部材145を引っ張ることにより、回転軸143を中心にクラッチアーム141が回動し、テンションプーリ140が第2Vベルト55から離間する方向へ移動する。回転軸143は、ブラケット142に取り付けられる。ブラケット142は、例えば、第2縦桟32に取り付けられる。
【0073】
次に、遠隔操作装置200について説明する。
図15は、遠隔操作装置200の平面図である。遠隔操作装置200の本体部201には、アンテナ202、表示部203、及び各種の操作部材が設けられている。
【0074】
アンテナ202は、自走式草刈機100の通信部82と通信する。表示部203は、自走式草刈機100から受信した各種情報を表示する。各種情報としては、例えば、自走式草刈機100の角度(ピッチ角及びロール角の少なくとも一方)異常、バッテリ電圧異常、モータ電流異常、ロータリカッタ40の異常、及び緊急停止スイッチ92の作動等を作業者に報知するための情報が含まれる。なお、遠隔操作装置200は、表示部203が表示する情報種別に応じて、本体部201を振動させてもよい。遠隔操作装置200を用いることにより、作業者は、自走式草刈機100の異常等を、自走式草刈機100に近づくことなく離れた場所で認識できる。
【0075】
本体部201には、操作部材の例として、左スティック204、右スティック205、左ボリューム206、右ボリューム207、第1トグルスイッチ208、第2トグルスイッチ209、第3トグルスイッチ210、第4トグルスイッチ211、第5トグルスイッチ213、及びプッシュスイッチ214が設けられている。
【0076】
左スティック204は、自走式草刈機100の前進と後退とを切り替える操作部材である。本体部201のアンテナ202側を前方、表示部203側を後方とした場合、左スティック204が前方に倒されると自走式草刈機100が前進し、左スティック204が後方に倒されると自走式草刈機100が後退する。左スティック204が中立位置にあるとき自走式草刈機100は停止する。
【0077】
右スティック205は、自走式草刈機100の左旋回と右旋回とを切り替える操作部材である。左スティック204が前進又は後退の状態にあるとき、右スティック205が左方に倒されると自走式草刈機100が左旋回し、右スティック205が右方に倒されると自走式草刈機100が右旋回する。右スティック205が中立位置にあるとき自走式草刈機100は旋回を停止する。また、左スティック204が中立位置にあるとき、右スティック205が右方又は左方に倒されると自走式草刈機100はその場で旋回する。
【0078】
左ボリューム206は、自走式草刈機100の最高速度を調整する操作部材である。右ボリューム207は、自走式草刈機100の走行時に左クローラ11又は右クローラ12のいずれかの回転速度を調整する操作部材である。例えば、右ボリューム207を少し右に回すと直進操作のみをしても自走式草刈機100が少しずつ右に曲がりながら進んでいく。より具体的な使用例として、例えば急な斜面を等高線上に走行するときに、斜面の上方向に右ボリューム207を回せば、自走式草刈機100が斜面を登る方向に徐々に曲がるため、滑り落ちる作用が曲がる動作で相殺され、自走式草刈機100が斜面に追従しやすくなり、作業者の操作が軽減される。
【0079】
第1トグルスイッチ208は、自走式草刈機100の応答性を調整する操作部材である。第2トグルスイッチ209は、ロータリカッタ40の高さを調整する操作部材である。第3トグルスイッチ210は、ロータリカッタ40の回転開始と回転停止とを切り替える操作部材である。第4トグルスイッチ211は、自走式草刈機100を自動停止させるピッチ角を設定する操作部材である。第5トグルスイッチ213は、エンジン20の停止と始動と高速回転とを切り替える操作部材である。プッシュスイッチ214は、エンジン20のセルを始動させる操作部材である。
【0080】
作業者による操作部材に対する操作の情報は、自走式草刈機100へ送信される。自走式草刈機100は、遠隔操作装置200から受信した情報に基づいて動作することが可能である。
【0081】
次に、
図1~
図16を参照して、自走式草刈機100の制御回路について説明する。
図16は、自走式草刈機100の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0082】
図16に示されるように、自走式草刈機100は、第1モータ制御回路21aと、第2モータ制御回路22aと、制御部60と、記憶部70と、カッタ回転数センサ81と、通信部82と、リセットスイッチ83とを更に備える。制御ボックス30は、制御部60、記憶部70、通信部82、及びリセットスイッチ83を有する。
【0083】
記憶部70は、半導体メモリのような記憶装置を含み、データ及びコンピュータプログラムを記憶する。
【0084】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含み、記憶部70に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、自走式草刈機100の各部の動作を制御する。
【0085】
第1モータ制御回路21aは、制御部60と走行用左モータ21との間に介在して、走行用左モータ21の回転を制御する。第2モータ制御回路22aは、制御部60と走行用右モータ22との間に介在して、走行用右モータ22の回転を制御する。
【0086】
カッタ回転数センサ81は、ロータリカッタ40の回転数Nを検知する。制御部60は、カッタ回転数センサ81の検知結果に応じて、走行用左モータ21及び走行用右モータ22の回転を制御する。また、制御部60は、カッタ回転数センサ81の検知結果に応じて、第2アクチュエータ27を介してエンジン20の回転を制御する。カッタ回転数センサ81は、「検知部」の一例に相当する。さらに、制御部60は、作業者により緊急停止スイッチ92が操作されたときに、第2アクチュエータ27を介さずに、強制的にエンジン20を停止させてもよい。例えば、制御部60は、インジェクタ(図示せず)の燃料噴射を停止させることによりエンジン20を強制的にストールさせる。
【0087】
通信部82は、遠隔操作装置200との通信を実行する。遠隔操作装置200はエンジン20のアクセルを遠隔操作するための第5トグルスイッチ213を有し、作業者はエンジン20の回転調節を実行することができる。
【0088】
リセットスイッチ83は、自走式草刈機100にエラー状態が発生したときに、エラー状態からの復帰のため作業者によって操作される。
【0089】
上記構成の制御ボックス30において、例えば、制御部60は、遠隔操作装置200が有する各種の操作部材に対する作業者の操作に従い、走行用左モータ21及び走行用右モータ22の運転、停止、及び回転調節等の制御を実行することにより、左クローラ11及び右クローラ12に前進、後退、及び左右旋回等を行わせる。また、制御部60は、遠隔操作装置200が有する各種の操作部材に対する作業者の操作に従い、エンジン20の運転、停止、及び回転調節等の制御を実行することにより、ロータリカッタ40を回転させる。この際、制御部60は、上述のようにアクセル及びブレーキとして機能する第2アクチュエータ27を介して、エンジン20の回転調節を実行する。
【0090】
次に、
図1~
図17を参照して、制御部60の処理について説明する。
図17は、制御部60の処理を示すフローチャートである。
【0091】
ステップS101:
図17に示されるように、制御部60は、ロータリカッタ40の回転数Nが第1所定回転数Nth1を下回る状態が所定時間以上継続したか否かを判定する。回転数Nが第1所定回転数Nth1を下回る状態が所定時間以上継続したと制御部60が判定した場合(ステップS101でYes)には、制御部60の処理がステップS103へ進む。回転数Nが第1所定回転数Nth1を下回る状態が所定時間以上継続していないと制御部60が判定した場合(ステップS101でNo)には、制御部60の処理がステップS101に留まる。
【0092】
ステップS103:制御部60は、第1モータ制御回路21a及び第2モータ制御回路22aを介して、走行用左モータ21及び走行用右モータ22の回転数を強制的に下げる。これにより、エンジン20の負荷が軽減される。ステップS103の処理が完了すると、制御部60の処理がステップS105へ進む。
【0093】
ステップS105:制御部60は、ロータリカッタ40の回転数Nが第2所定回転数Nth2(<Nth1)を下回る状態が所定時間以上継続したか否かを判定する。回転数Nが第2所定回転数Nth2を下回る状態が所定時間以上継続したと制御部60が判定した場合(ステップS105でYes)には、制御部60の処理がステップS107へ進む。回転数Nが第2所定回転数Nth2を下回る状態が所定時間以上継続していないと制御部60が判定した場合(ステップS105でNo)には、制御部60の処理がステップS106へ進む。
【0094】
ステップS106:制御部60は、ロータリカッタ40の回転数Nが第1所定回転数Nth1以上に回復したか否かを判定する。回転数Nが第1所定回転数Nth1以上に回復したと制御部60が判定した場合(ステップS106でYes)には、制御部60の処理がステップS101へ戻る。回転数Nが第1所定回転数Nth1以上に回復していないと制御部60が判定した場合(ステップS106でNo)には、制御部60の処理がステップS105へ戻る。
【0095】
ステップS107:制御部60は、第2アクチュエータ27を介して、エンジン20の回転数を強制的に下げる。エンジン20の回転が強制的に低速域に変更され又は停止されることにより、エンジン20がアイドリング状態へ移行して、遠心クラッチが切れる。これにより、ロータリカッタ40は、回転を完全に停止する。ステップS107の処理が完了すると、制御部60の処理がステップS109へ進む。
【0096】
ステップS109:制御部60は、安全確保のため、通信部82を介した遠隔操作装置200による制御を中断する。制御部60は、自走式草刈機100にエラー状態が発生したことを作業者に伝えるように、表示灯16を点滅させてもよい。
【0097】
ステップS111:制御部60は、安全確認のため、作業者がリセット操作を実行したか否かを判定する。作業者がリセット操作を実行したと制御部60が判定した場合(ステップS111でYes)には、制御部60の処理がステップS113へ進む。作業者がリセット操作を実行していないと制御部60が判定した場合(ステップS111でNo)には、制御部60の処理がステップS109へ戻る。
【0098】
リセット操作は、作業者がリセットスイッチ83を押下する操作を含む。また、リセット操作は、作業者が遠隔操作装置200におけるエンジン20の回転調節を低速側へ変更し又は停止する操作を含む。
【0099】
ステップS113:制御部60は、通信部82を介した遠隔操作装置200による制御を再開する。ステップS113の処理が完了すると、制御部60の処理がステップS101へ戻る。
【0100】
実施形態によれば、制御部60は、ロータリカッタ40の回転数Nが第2所定回転数Nth2を下回る場合に、エンジン20の回転を強制的に低速域に変更し又は停止するように制御するので、安全性を向上させた自走式草刈機100が提供される。
【0101】
なお、
図17のフローチャートでは、第1所定回転数Nth1として1つの値を用いたが、複数の値を用いてもよい。例えば、制御部60は、ロータリカッタ40の単位時間当たりの回転数Nが2200を下回る状態が所定時間以上継続した場合、走行用左モータ21及び走行用右モータ22の単位時間当たりの回転数(以下、「モータ回転数」と称する)を100%(例えば、2150)から90%(例えば、1935)に下げる。また、制御部60は、回転数Nが2100を下回る状態が所定時間以上継続した場合、モータ回転数を80%に下げる。さらに、制御部60は、回転数Nが2050を下回る状態が所定時間継続した場合にモータ回転数を70%に下げ、2000を下回る状態が所定時間継続した場合にモータ回転数を60%に下げ、1950を下回る状態が所定時間継続した場合にモータ回転数を50%に下げ、1900を下回る状態が所定時間継続した場合にモータ回転数を40%に下げ、1850を下回る状態が所定時間継続した場合にモータ回転数を30%に下げ、1800を下回る状態が所定時間継続した場合にモータ回転数を20%に下げる。さらに、制御部60は、回転数Nが1000を下回る状態が所定時間継続した場合、エンジン20の回転数を強制的に下げ、自走式草刈機100の走行を停止させてエンジン20をアイドリング状態へ移行させる。なお、回転数N及びモータ回転数は、上記数値例に限定されない。
【0102】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の個数等は、図面作成の都合から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、自走式草刈機の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 走行機体
11 左クローラ(走行装置)
12 右クローラ(走行装置)
20 エンジン(内燃機関)
40 ロータリカッタ(ブレードカッタ)
60 制御部
81 カッタ回転数センサ(検知部)
82 通信部
100 自走式草刈機