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特開2024-65882無人航空機および蜂の駆除方法ならびにプログラム
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  • 特開-無人航空機および蜂の駆除方法ならびにプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065882
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】無人航空機および蜂の駆除方法ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20240508BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240508BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20240508BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240508BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20240508BHJP
   B64D 1/16 20060101ALI20240508BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240508BHJP
   G06V 20/17 20220101ALI20240508BHJP
【FI】
A01M7/00 H
B64D47/08
B64C13/18 Z
B64C39/02
B64C27/04
B64D1/16
G06T7/70 A
G06V20/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174956
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 功大
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】内田 早紀
【テーマコード(参考)】
2B121
5L096
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121CB02
2B121CB07
2B121CB35
2B121CB37
2B121CB42
2B121CB47
2B121CC02
2B121CC14
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA02
2B121FA20
5L096AA02
5L096AA06
5L096AA09
5L096CA05
5L096DA02
5L096FA69
5L096HA05
(57)【要約】
【課題】モータを駆動源として飛行を行う無人航空機であって、蜂の巣の発見し、蜂の巣の近くにおいて、蜂を人のいない方向に誘導して周囲の人に対する危険を軽減し、駆除においては、蜂の個体を識別して優先度により駆除を行うことができる無人航空機を提供する。
【解決手段】蜂または当該蜂に付けられた印を検出して対象物検出部32と、蜂または蜂に付けられた印を追跡する追跡部33と、蜂の巣を検出して、大きさ、位置を特定する巣検出部34と、検出した巣の大きさ、位置の情報を移値する通知部35とを備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の映像を撮影する撮影部と、
撮影された映像から蜂または蜂に付けられた印を検出する対象物検出部と、
前記対象物検出部により検出された蜂または蜂に付けられた印を追跡する追跡制御部と、
前記追跡した蜂の巣を検出して、当該蜂の巣の大きさおよび位置を特定して記録する巣検出部と、
前記検出した蜂の巣の大きさおよび位置の情報を通知する通知部と
を備える無人航空機。
【請求項2】
請求項1に記載の無人航空機であって、
蜂が攻撃対象とする黒色を表示して蜂を人が存在しない方向に誘導するか、
前記巣検出部により検出された当該蜂の巣またはその周辺に存在する蜂の攻撃本能を刺激し、蜂が攻撃本能を刺激した際に発する物質を付着させ、その物質によって、蜂を人が存在しない方向に誘導するか、
または蜂の警戒フェロモンまたは警戒フェロモンと同等の効果を有する香水を出射し、蜂を人が存在しない方向に誘導する
誘導部を
さらに備える無人航空機。
【請求項3】
請求項2に記載の無人航空機であって、
殺虫剤を噴射する、または蜂を吸引して捕獲する駆除部をさらに備え、
前記対象物検出部は、撮影された映像から、蜂の個体を、雌の働きバチと女王バチと雄バチに識別し、
前記駆除部は、その種別で駆除する優先度を設定し、その優先順位に基づいて蜂を駆除する
無人航空機。
【請求項4】
撮影部が、周囲の映像を撮影し、
対象物検出部が、撮影された映像から蜂または蜂に付けられた印を検出し、
追跡制御部が、無人航空機で検出された蜂または蜂に付けられた印を追跡させ、
巣検出部が、追跡した蜂の巣を検出して、当該蜂の巣の大きさおよび位置を特定して記録し、
通知部が、検出した蜂の巣の大きさおよび位置の情報を通知する、
ことを特徴とする蜂の駆除方法。
【請求項5】
コンピュータに、
周囲の映像を撮影するステップと、
撮影された映像から蜂または蜂に付けられた印を検出するステップと、
無人航空機で、検出された蜂または蜂に付けられた印を追跡させるステップと、
追跡した蜂の巣を検出して、当該蜂の巣の大きさおよび位置を特定して記録するステップと、
検出した蜂の巣の大きさおよび位置の情報を通知するステップと、
を含む処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機および蜂の駆除方法ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
攻撃的で毒性を有する蜂等の駆除の要請が多い。特にスズメバチは攻撃的で毒性が強く、スズメバチによる死亡事故も報じられており、スズメバチの巣を発見した場合には、自治体などに連絡し、自治体などから委託された業者が現場に出向いてスズメバチの駆除、巣の撤去に当たっている。また、巣を発見して個別に専門の業者に連絡し駆除してもらう事例もある。
【0003】
特にスズメバチの巣は、高所に作られることもあり、スズメバチの駆除に安価で手軽に操作できる無人航空機を用いる提案がなされている。特許文献1は、無人航空機に、薬剤が充填された薬剤機供給部を搭載して、スズメバチの巣に噴射してスズメバチを駆除する発明が提案されている。また、特許文献2には、スズメバチの巣の中に薬剤を噴霧するだけではなく、巣を損傷破壊して巣の再利用をさせないようにする無人航空機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-104063号公報
【特許文献2】国際公開2020/095884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献に記載の無人航空機によるスズメバチの巣の駆除の提案では、スズメバチの巣を探索発見することについては、開示がない。従来は、人が巣を発見してから駆除を要請するものであった。
【0006】
また、無人航空機で、スズメバチを駆除したり、巣を損傷破壊して、巣の駆除を行うと、スズメバチは、巣を防衛するために、巣の周辺を飛来して、攻撃的になる。巣の駆除を行う作業員には、たとえ、防護服を着ていたとしても、危害が及ぶ可能性がある。また、住宅地に巣があって、これを駆除しようとするときに、攻撃的になったスズメバチが近所にいる住民に対して攻撃して、危害が及ぶ可能性がある。上述の特許文献記載の無人航空機による蜂の巣の駆除では、このような駆除に伴って攻撃的になったスズメバチによる人への影響が考慮されていない。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、無人航空機によって、蜂を追跡してその巣を発見し、巣の駆除を支援する無人航空機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る無人航空機は、周囲の映像を撮影する撮影部と、撮影された映像から蜂または蜂に付けられた印を検出する対象物検出部と、対象物検出部により検出された蜂または蜂に付けられた印を追跡する追跡制御部と、追跡した蜂の巣を検出して、当該蜂の巣の大きさおよび位置を特定して記録する巣検出部と、検出した蜂の巣の大きさおよび位置の情報を通知する通知部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の蜂の駆除方法の一側面は、撮影部が、周囲の映像を撮影し、対象物検出部が、撮影された映像から蜂または蜂に付けられた印を検出し、追跡制御部が、検出された蜂または蜂に付けられた印を追跡し、巣検出部が、追跡した蜂の巣を検出して、当該蜂の巣の大きさおよび位置を特定して記録し、通知部が、検出した蜂の巣の大きさおよび位置の情報を通知する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のプログラムの一側面は、コンピュータに、周囲の映像を撮影するステップと、撮影された映像から蜂または蜂に付けられた印を検出するステップと、検出された蜂または蜂に付けられた印を追跡するステップと、追跡した蜂の巣を検出して、当該蜂の巣の大きさおよび位置を特定して記録するステップと、検出した蜂の巣の大きさおよび位置の情報を通知するステップと、を含む処理を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、帰巣する蜂を追跡して、巣を発見して、駆除を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施の形態のドローン装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、ドローン装置の外観を示す図である。
図3図3は、ドローン装置が行う蜂の追跡の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[一実施の形態]
以下に、本発明の実施の形態に係るドローン装置1について説明する。図1は、ドローン装置1の構成例を示すブロック図である。図2は、ドローン装置1の外観を示す図である。
【0014】
無人航空機であるドローン装置1は、自律飛行が可能な飛行体であり、複数のプロペラを有するマルチコプターであり、前進、後進、左右への移動、上昇、下降などの各種移動動作が可能である。ドローン装置1は、ホバリング位置制御も可能である。ドローン装置1は、蜂を検出して追跡することで蜂の巣の場所を検出する巣探索処理等を実行する。なお、本実施の形態では、対象となる蜂については、特に攻撃的で毒性が強いスズメバチを追跡し誘導駆除する対象とした例で説明する。
【0015】
ドローン装置1は、図1に示すように、撮影部11、距離計測部12、方位計測部13、位置測定部14、表示部15、噴射部16、通信部17、駆動部18、制御部19、および記憶部20を備えている。なお、図1は、ドローン装置1における蜂の巣探索、駆除、および誘導に関わる部分を表しており、ドローン装置としての飛行駆動装置や飛行制御に関わる部分の図示は省略している。
【0016】
撮影部11は、例えばカメラであり、飛行する周辺を撮影する。撮影部11により撮影された映像からスズメバチ、スズメバチの巣が検出される。
【0017】
距離計測部12は、例えば赤外線センサ、超音波センサあるいはステレオカメラなどで構成される。距離計測部12は、検出対象として検出されたスズメバチや巣、巣が作られている木の枝や軒などの支持体からドローン装置1までの距離を測定する。
【0018】
方位計測部13は、例えば地磁気センサなどで構成され、方位を計測し、ドローン装置1の飛行方向を検出する。
【0019】
位置測定部14は、例えばGPS(Global Positioning System)であり、ドローン装置1の位置および高度を測定する。また、加速度センサ、ジャイロセンサによって、現在位置を求めるシステムを用いてもよい。
【0020】
表示部15は、ディスプレイを有し、向きを変えることができる構成を有している。表示部15には、スズメバチが攻撃対象として認識しやすい黒色の画像が表示される。
【0021】
噴射部16は、液体を噴射するノズルを有し、噴射方向を変えることができる構成を有している。噴射部16からは、スズメバチの駆除のための駆除剤が噴射、噴霧される。また噴射部16からは、スズメバチの攻撃本能を刺激する警戒フェロモンと同等の効果を有する香水が噴射、噴霧される。香水、駆除剤は、それぞれ図示せぬタンクに貯められている。
【0022】
通信部17は、外部装置との情報のやりとりを行う通信インタフェースである。例えば、撮影したスズメバチの巣の映像、巣の位置の情報を外部装置に送信される。また、外部の母機からの遠隔操縦信号が受信される。
【0023】
駆動部18は、ドローン装置1の飛行駆動部であり、エンジン、バッテリ、モータやプロペラなどからなる。駆動部18は、制御部19の制御によって飛行駆動装置を駆動し、ドローン装置1の自律飛行を実現する。
【0024】
制御部19は、その図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)、ハードウェアを含む、その他の要素から構成される。制御部19は、ドローン装置1の各種制御を行う。
【0025】
制御部19は、記憶部20に記憶されているアプリケーションプログラム44を実行することで、飛行制御部31、対象物検出部32、追跡部33、巣検出部34、通知部35、駆除部36、および誘導部37として機能する。制御部19は、ハードウェアによって、これらの機能の一部または全部を実現してもよい。
【0026】
飛行制御部31は、駆動部18を制御してドローン装置1の飛行制御を行う。スズメバチの帰巣の追跡においては、追跡部33の制御に基づいて、ドローン装置1の前後左右、旋回、上昇、下降などの制御を行う。また、巣を駆除する際のスズメバチの誘導においては、人の存在しない方向へスズメバチを誘導するように、ドローン装置1を飛行させる。
【0027】
対象物検出部32は、記憶部20に記憶されているスズメバチ識別用データ41を参照して、撮影部11により撮影された映像からスズメバチを検出する。スズメバチは、独特の模様があり、特に腹の模様は、人間でも一見して識別可能であるので、撮影部11で撮影した映像で周囲から識別可能である。また、スズメバチに付けられた白い軽いプラスチック片のような目印などからスズメバチを検出することもできる。スズメバチ自体の形状、模様と相まって、周囲からより識別し易くなるので、より確実にスズメバチを検出できる。また、検出したスズメバチが、女王バチか、働きバチか、雄バチであるかの種別を識別する。
【0028】
追跡部33は、飛行制御部31を制御して、ドローン装置1による対象物検出部32により検出されたスズメバチの追跡を実行する。
【0029】
巣検出部34は、記憶部20に記憶されている巣識別用データ42を参照して、撮影部11により撮影された映像からスズメバチの巣を検出する。撮影部11により撮影された映像からスズメバチの巣の画像を抽出して検出する。スズメバチの巣は、独特の模様があり、その形、模様からスズメバチの巣であることを検出できる。また、スズメバチが出入りする穴の映像から、スズメバチの巣があることを検出することもできる。
【0030】
また、巣検出部34は、発見したスズメバチの巣の高度、位置を特定する。また、巣検出部34は、例えば、位置測定部14によるセンシングしたデータにより、ドローン装置1が現在どの位置および高度にあるかを特定し、距離計測部12により検出されたスズメバチの巣との距離情報からスズメバチの巣の位置情報および高度情報を特定する。巣検出部34は、また、スズメバチの巣の大きさを計測する。
【0031】
通知部35は、通信部17を介して、巣検出部34により特定されたスズメバチの巣の映像、位置、高度、大きさを外部に通知する。
【0032】
駆除部36は、噴射部16の噴射方向を制御し、噴射部16から、スズメバチの駆除のための駆除剤を噴射させる。
【0033】
誘導部37は、表示部15に黒色の画像を表示させたり、噴射部16の噴射方向を制御し、噴射部16から、スズメバチの攻撃本能を刺激する警戒フェロモンと同等の効果を有する香水を噴射させる。
【0034】
記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)やSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)である。記憶部20には、スズメバチ識別用データ41、巣識別用データ42、検出巣データ43、制御部19が実行するアプリケーションプログラム44などが記憶されている。
【0035】
スズメバチ識別用データ41は、予め撮影されたスズメバチの画像データ(白い目印が付けられたスズメバチ、女王バチ、働きバチ、雄バチの画像データも含む)、その画像データの特徴量などである。巣識別用データ42は、予め撮影されたスズメバチの巣の画像データ、その特徴量などである。
【0036】
[巣探索処理]
次に、スズメバチの巣探索処理を、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
ドローン装置1が自律飛行している所定のタイミングにおいてスズメバチの巣探索処理が開始されると、ステップS1において、制御部19の対象物検出部32は、スズメバチの検出を開始する。
【0038】
ステップS2において、追跡部33は、対象物検出部32によりスズメバチが検出されるまで待機し、スズメバチが検出されると、ステップS3において、ドローン装置1によるスズメバチの追跡を開始する。この追跡は、対象物検出部32により検出されたスズメバチが撮影部11により撮影された映像の中心に位置するように、ドローン装置1の飛行が制御される。これは地上を移動したり飛行するものを追尾する場合に行われる追尾制御技術を用いる。また、ドローン装置1は、飛行するスズメバチより高い高度をとることになるので、撮影された映像は、例えば、斜め上空から地上を撮ったものとなる。
【0039】
ステップS4において、巣検出部34は、スズメバチの巣の検出を開始する。
【0040】
巣の検出では、木の枝に巣が作られたり、軒下に巣が作られたりなど、地上から高い位置に巣がある場合、スズメバチの巣は、丸い形をとっており、独特の模様があるので、認識されやすい。このため、地上から高い位置に作られた巣は、その模様、色、形でスズメバチの巣であると識別できるので、撮影部11で撮影した映像と、記憶部20の巣識別用データ42と比較することで、巣があるかを判定することができる。このように、地上にあり、巣の形や模様、色で判定できる巣を検出したときは、その巣の位置(高さを含む)、大きさ等の形状を測定し、画像、形状情報、位置情報、高度情報が、記憶部20に検出巣データ43として記憶される。
【0041】
スズメバチは、地上に丸い形の巣を作るだけでなく、地下に巣を作ったり、あるいは木の洞などに巣を作ったりする。この場合は、巣の形や模様を認識することはできないので、スズメバチが出入りする穴を検出することで、巣を検出することができる。この場合、穴の周辺に複数のスズメバチが同時に存在する、あるいは、所定時間内に複数のスズメバチが出入りするとの基準などで、巣の入口があると判定できる。判定した穴の位置(高さを含む)、大きさ等の形状を測定し、画像、形状情報、位置情報、高度情報は、記憶部20に検出巣データ43として記憶される。
【0042】
ステップS5において、通知部35は、巣検出部34によりスズメバチの巣が検出されるまで待機し、スズメバチの巣が検出されると、ステップS6において、スズメバチの巣の大きさおよび位置の情報を外部の例えば、駆除業者の端末装置などに通知する。通知部35は、巣検出部34により検出されたスズメバチの巣の画像、形状情報、位置情報、高度情報の少なくともいずれかを、通信部17を介して外部の端末装置などに通知する。その後処理は終了する。
【0043】
<巣検出のタイミング>
ステップS4における巣の検出処理は、ステップS3の後に開始するだけではなく、別途平行して実施されてもよく、また検出されたスズメバチの飛行が停止したり、地面に下りたりして、移動しなくなったことが検出されたタイミングで開始することができる。
【0044】
<スズメバチの検出、追跡の他の例>
上述の実施形態でのスズメバチの追跡では、撮影部11で飛行するスズメバチを撮影して識別するもので説明した。他のスズメバチの識別として、薄い紙状のプラスチック片に電波を受けたら固有の電波を発信する電子回路を印刷したIC(Integrated Circuits)タグを設けて、このプラスチック片をスズメバチに餌とともに持たせて、これを識別して追跡することも可能である。この場合、ドローン装置1に、ICタグに対して電波を送り、スズメバチに持たせたICタグからの電波を受信してその方位を検出するレーダ機能を持たせて追跡する。電子回路を印刷されたプラスチック片は軽く、また、ICタグが発信する電波の受信可能範囲は、かなり広くなっているので、ドローン装置1が無線を介してスズメバチを追跡することも可能である。
【0045】
<通知される情報の他の例(巣周辺に存在するスズメバチの状況)>
以上においては、スズメバチの巣の画像、形状情報、位置情報、高度情報の少なくともいずれかが外部に通知されるものとしたが、巣周辺に存在するスズメバチの状況を通知することができる。スズメバチがあまり存在しなければ、専門業者による巣の撤去の優先順位を下げることができる。
【0046】
<通知される情報の他の例>
またスズメバチの検出状況を通知することができる。例えばスズメバチが検出された場所や時間、または数等が通知される。この情報により、その地域の住民等に知らせることができる。
【0047】
[スズメバチの誘導処理]
次に、スズメバチの誘導処理について説明する。
【0048】
(黒色表示)
一般にスズメバチの巣を駆除するときには、巣を守るためにスズメバチは攻撃的になり、駆除を行う作業員を刺す行動にでる。スズメバチは、毎年、何人もの死亡事故が報告されるように、蜂の中でも危険性が高い。スズメバチの巣の駆除は、専門の業者が防護服を着て行うが、それでもスズメバチの攻撃を受けて、刺されることがある。
【0049】
このように、巣の駆除の際には、駆除の作業員がスズメバチの攻撃を受けるし、また、攻撃的になったスズメバチが飛来して、巣のある周辺の住民などが攻撃を受ける可能性がある。このため、巣の駆除の際には、攻撃的になったスズメバチを人がいない方向(例えば、人が居住している場所以外の方向)に誘導することが望ましい。
【0050】
スズメバチを誘導する方法として、ドローン装置1がスズメバチの巣に接近したタイミングにおいて、誘導部37は、ドローン装置1の表示部15に、黒色の画像を表示させるとともに、駆動部18を制御して、巣から離れる方向にドローン装置1を移動させる。
【0051】
スズメバチは、黒色のものに攻撃的になることが知られている。ドローン装置1の表示部15の色が黒色に変われば、ドローン装置1に対して攻撃的になる。そこで、ドローン装置1が移動すると、スズメバチはドローン装置1を追いかける。したがって巣から離れる方向にドローン装置1を移動することによって、スズメバチを巣から遠ざけることができる。またドローン装置1が人のいない方向に移動すれば、スズメバチを人のいない方向に誘導できる。
【0052】
黒色の表示としては、表示部15が液晶表示装置であれば、白色から黒色にその表示色を変更する。また、その大きさは、人の頭髪の面積程度以上とする。また、表示部15に黒色画像を表示する代わりに、黒色の布を別途収納していて、ドローン装置1がスズメバチの巣に対峙したときに、巣の方向に黒色の布を広げてスズメバチを誘導することも可能である。
【0053】
(警戒フェロモンの利用)
またスズメバチが出す警戒フェロモンをドローン装置1が浴びることで、スズメバチを誘導することもできる。攻撃的なスズメバチは、攻撃対象に対して攻撃することで、警戒フェロモンを攻撃対象に浴びせる。スズメバチは、この警戒フェロモンを共有することで、集団で攻撃対象に攻撃的になる性質がある。この性質を利用して、誘導部37は、駆動部18を制御して、ドローン装置1がスズメバチを威嚇するようにドローン装置1を飛行させる。その結果、スズメバチがドローン装置1に対して攻撃的になると、警戒フェロモンを攻撃対象であるドローン装置1に浴びせる。警戒フェロモンがかかったドローン装置1が人のいない方向に移動すれば、スズメバチはドローン装置1を追いかけてくるので、結果としてスズメバチを人がいない方向に誘導することができる。
【0054】
このスズメバチの警戒フェロモンを浴びる部分として、警戒フェロモンを保持できる布状の部分をドローン装置1に設けることができる。またドローン装置1の本体側の筐体の一部または全部にこのような警戒フェロモンを保持できるもので覆えばよい。
【0055】
また、スズメバチに攻撃させて警戒フェロモンを浴びるのではなく、警戒フェロモンと同等の効果があるフェロモン効果のあるものを、ドローン装置1に浴びせることでも同様にスズメバチを誘導することができる。警戒フェロモンと同等の効果があるものとして香水が知られている。そこで、ドローン装置1がスズメバチの巣に対峙したときに、誘導部37は、噴射部16から、ドローン装置1の筐体の警戒フェロモンを保持できるようにされた部分に香水を噴霧する。このことによりスズメバチの攻撃本能を刺激する。そして誘導部37は、駆動部18を制御して巣から離れる方向にドローン装置1を移動させ、スズメバチを巣から誘導させることができる。
【0056】
(誘導のタイミング)
ススメバチの誘導は、スズメバチの巣を駆除するタイミングで行うことに限定されない。例えば、その巣の駆除を人が行う場合において、直ぐに駆除に取り掛かることができない場合、巣が除去されるまでの間は巣の周りにススメバチが存在し、その近くを通る人にとって危険である。そこで、巣の駆除を直ぐに行うことができない場合でも、上述したように、ススメバチを人がいない方向に誘導することができる。
【0057】
[スズメバチの駆除処理]
次に、スズメバチの駆除処理について説明する。
【0058】
スズメバチは、女王バチ、働きバチ、雄バチにより、その攻撃性が異なる。また、女王バチ、働きバチ、雄バチの大きさ、動きも異なっており、外観、動きにより、女王バチか、働きバチか、雄バチであるかは識別可能である。
【0059】
蜂の駆除において、優先度が高いのは、女王バチである。女王バチが生き残って他所に移動してしまえば、また、コロニーを作れるので、女王バチを捕獲駆除することが必要である。また、雄バチは、通常、女王バチや働きバチに比べて小型で、また、攻撃性もないので、駆除をするまでもないといえる。したがって、女王バチ、働きバチ、雄バチの順で、駆除の優先順位付けを行うことが可能である。
【0060】
ドローン装置1では、対象物検出部32が、撮影部11で撮影したスズメバチの画像と、記憶部20のスズメバチ識別用データ41を比較しながら、個々のスズメバチが女王バチか、働きバチか、雄バチかを識別する。この識別は、また、スズメバチの画像をディープラーニングすることでも識別することができる。
【0061】
駆除部36は、対象物検出部32による個体検出結果に基づいて、女王バチ、働きバチ、雄バチの順で、駆除の優先順位付けを行い、優先順位に基づいて噴射部16の向きを制御して、噴射部16から駆除剤を噴射させる。例えば女王バチが検出された場合にはその女王バチに向けて駆除剤が噴射される。
【0062】
[実施形態の補足説明]
上述した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態の順序、フローチャートにおける処理の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0063】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0064】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0065】
[効果のまとめ]
ドローン装置1は、周囲の映像を撮影する撮影部11と、撮影された映像から蜂または蜂に付けられた印を検出する対象物検出部32と、対象物検出部32により検出された蜂または蜂に付けられた印を追跡する追跡部33と、追跡した蜂の巣を検出して、当該蜂の巣の大きさ、位置を特定して記録する巣検出部34と、検出した蜂の巣の大きさおよび位置の情報を通知する通知部35とを備える、ことを特徴とする。
【0066】
このような構成を有するようにしたので、蜂を追跡して蜂の巣を検出して通知することができるので、蜂の駆除を支援することができる。
【0067】
さらに、蜂が攻撃対象とする黒色を表示して蜂を人が存在しない方向に誘導するか、巣検出部34により検出された当該蜂の巣またはその周辺に存在する蜂の攻撃本能を刺激し、蜂が攻撃本能を刺激した際に発する物質を付着させ、その物質によって、蜂を人が存在しない方向に誘導するか、または蜂の警戒フェロモンまたは警戒フェロモンと同等の効果を有する香水を出射し、蜂を人が存在しない方向に誘導する誘導部37をさらに備える、ことを特徴とする。
【0068】
このような構成を有するようにしたので、蜂を人が存在しない方向に誘導することができるので、より安全に蜂の巣を駆除することができる。
【0069】
また、殺虫剤を噴射する、または蜂を吸引して捕獲する駆除部36をさらに備え、対象物検出部は32、撮影された映像から、蜂の個体を、雌の働きバチと女王バチと雄バチに識別し、駆除部36は、その種別で駆除する優先度を設定し、その優先順位に基づいて蜂を駆除することを特徴とする。
【0070】
このような構成を有するようにしたので、駆除の優先度の高い蜂から駆除することができるので、駆除の効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ドローン装置
11 撮影部
12 距離計測部
13 方位計測部
14 位置測定部
15 表示部
16 噴射部
17 通信部
18 駆動部
19 制御部
20 記憶部
31 飛行制御部
32 対象物検出部
33 追跡部
34 巣検出部
35 通知部
36 駆除部
37 誘導部
41 スズメバチ識別用データ
42 巣識別用データ
43 検出巣データ
44 アプリケーションプログラム
図1
図2
図3